(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。
【0003】
ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源から車載の蓄電装置を充電可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられた電源コンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置を充電可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド車」が知られている。
【0004】
一方、送電方法として、電源コードや送電ケーブルを用いないワイヤレス送電が近年注目されている。このワイヤレス送電技術としては、有力なものとして、電磁誘導を用いた送電、電磁波を用いた送電、および共鳴法による送電の3つの技術が知られている。
【0005】
このうち、共鳴法は、一対の共鳴器(たとえば一対の自己共振コイル)を電磁場(近接場)において共鳴させ、電磁場によって送電する非接触の送電技術であり、数kWの大電力を比較的長距離(たとえば数m)送電することも可能である。
【0006】
特開2009−106136号公報(特許文献1)は、共鳴法によって車両外部の電源からワイヤレスで充電電力を受電し、車両に搭載された蓄電装置を充電する技術が開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
共鳴法を用いた非接触による電力伝送においては、上述のように電磁場を用いて電力が送電される。共鳴法においては、送電距離が比較的長距離であるため、発生する電磁場の範囲は、電磁誘導を用いた場合と比較して広範囲となることが考えられる。
【0009】
この自己共振コイルを含むコイルユニットの周囲に発生する電磁場は、他の電気機器などに対しては電磁ノイズとなる場合があり、たとえばラジオなどの雑音の原因になり得る。また、電磁場内に導電体が有る場合には、電磁場による電磁誘導によって導電体が加熱される場合があり、温度上昇によって機器の故障の原因にもなり得る。
【0010】
そのため、共鳴法を用いた電力伝送においては、それぞれ対向するコイルユニットの方向以外については、発生する電磁場を遮蔽することが望ましく、コイルユニットの周囲に電磁遮蔽材(シールド)が配置される場合がある。
【0011】
このシールドでは、電界および磁界を遮蔽することが必要であるが、選択するシールドの種類によっては、電力の伝送効率に影響を及ぼすことがある。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、共鳴法による非接触給電システムに用いられるシールドについて、電力の伝送効率の低下を抑制しつつ、電磁場の漏洩を防止することができるシールド構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるシールドは、電磁共鳴による電磁場によって、電力の送電および受電の少なくとも一方を行なうための非接触電力伝達に用いられるコイルのシールドであって、磁界の低減が可能な第1の遮蔽材と、第2の遮蔽材とを備える。第2の遮蔽材は、第1の遮蔽材と比べて、損失は大きいがより多くの電界および磁界の両方の低減が可能である。そして、第1の遮蔽材は、第2の遮蔽材よりもコイルに近い側に配置される。
【0014】
好ましくは、第1の遮蔽材は磁性材を含んで構成される。
好ましくは、第2の遮蔽材は銅を含む導電体である。
【0015】
好ましくは、シールドは、コイルを内部に収納可能であり、一方向がシールドされていない容器状に形成される。
【0016】
好ましくは、第1の遮蔽材および第2の遮蔽材は、互いに接するように配置される。
本発明による車両は、送電装置との間で、電磁共鳴による電磁場によって非接触で電力の受電が可能な車両であって、送電装置からの電力を受電するためのコイルと、コイルの周囲に設けられ、電磁場の遮蔽が可能なシールドとを備える。シールドは、磁界の低減が可能な第1の遮蔽材と、第1の遮蔽材と比べて、損失は大きいがより多くの電界および磁界の両方の低減が可能な第2の遮蔽材とを含む。そして、第1の遮蔽材は、第2の遮蔽材よりもコイルに近い側に配置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるシールド構造を共鳴法の非接触給電システムに適用することによって、給電時における電力の伝送効率の低下を抑制しつつ、電磁場の漏洩を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に従うシールドを有する、非接触給電システムの全体構成図である。
図1を参照して、非接触給電システムは、車両100と、給電装置200とを備える。車両100は、二次自己共振コイル110と、二次コイル120と、整流器130と、DC/DCコンバータ140と、蓄電装置150と、コイルケース190とを含む。また、車両100は、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」とも称する。)160と、モータ170と、車両ECU(Electronic Control Unit)180とをさらに含む。
【0021】
なお、車両100の構成は、蓄電装置を搭載し、モータにより駆動される車両であれば、
図1に示される構成に限らない。たとえば、モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両や、燃料電池を備える燃料電池自動車などを含む。
【0022】
二次自己共振コイル110は、たとえば車体下部に設置される。二次自己共振コイル110は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、給電装置200の一次自己共振コイル240(後述)と電磁場によって共鳴することにより給電装置200から電力を受電する。なお、二次自己共振コイル110の容量成分は、コイルの浮遊容量としてもよいが、所定の容量を得るために別途コンデンサ(図示せず)をコイルの両端に接続してもよい。
【0023】
二次自己共振コイル110は、給電装置200の一次自己共振コイル240との距離や、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の共鳴周波数等に基づいて、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との共鳴強度を示すQ値(たとえば、Q>100)およびその結合度を示すκ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0024】
二次コイル120は、二次自己共振コイル110と同軸上に設置され、電磁誘導により二次自己共振コイル110と磁気的に結合可能である。この二次コイル120は、二次自己共振コイル110によって受電された電力を電磁誘導により取出して整流器130へ出力する。
【0025】
コイルケース190は、二次コイル120および二次自己共振コイル110を内部に収納する。コイルケース190の内面には、二次自己共振コイル110の周囲に発生する電磁場をコイルケース190の周囲に漏洩させないために、電磁遮蔽材(以下、「シールド」とも称する。)115が貼付される。なお、シールド115によって、コイルケース190が形成されるようにしてもよい。また、車体自体に、二次コイル120および二次自己共振コイル110が収納可能な凹部を設けてコイルケース190と同等の機能を有するようにしてもよい。
【0026】
整流器130は、二次コイル120によって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ140は、車両ECU180からの制御信号に基づいて、整流器130によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。なお、車両の走行中に給電装置200から受電する場合には、DC/DCコンバータ140は、整流器130によって整流された電力をシステム電圧に変換してPCU160へ直接供給してもよい。また、DC/DCコンバータ140は、必ずしも必要ではなく、二次コイル120によって取出された交流電力が、整流器130によって整流された後に蓄電装置150に直接与えられるようにしてもよい。
【0027】
蓄電装置150は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池を含んで構成される。蓄電装置150は、DC/DCコンバータ140から供給される電力を蓄える。また、蓄電装置150は、モータ170によって発電される回生電力を蓄える。そして、蓄電装置150は、蓄えた電力をPCU160へ供給する。なお、蓄電装置150として大容量のキャパシタも採用可能であり、給電装置200から供給される電力やモータ170からの回生電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をPCU160へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。
【0028】
PCU160は、いずれも図示しないが昇圧コンバータやインバータなどを含んで構成される。PCU160は、蓄電装置150から出力される電力、あるいはDC/DCコンバータ140から直接供給される電力を用いてモータ170を駆動する。また、PCU160は、モータ170により発電された回生電力を整流して蓄電装置150へ出力し、蓄電装置150を充電する。モータ170は、PCU160によって駆動され、車両駆動力を発生して駆動輪へ出力する。また、モータ170は、駆動輪や、ハイブリッド車両の場合には図示されないエンジンから受ける回転力によって発電し、その発電した回生電力をPCU160へ出力する。
【0029】
車両ECU180は、給電装置200から車両100への給電時、DC/DCコンバータ140を制御する。車両ECU180は、たとえば、DC/DCコンバータ140を制御することによって、整流器130とDC/DCコンバータ140との間の電圧を所定の目標電圧に制御する。また、車両ECU180は、車両の走行時、車両の走行状況や蓄電装置150の充電状態(「SOC(State Of Charge)」とも称される。)に基づいてPCU160を制御する。
【0030】
一方、給電装置200は、交流電源210と、高周波電力ドライバ220と、一次コイル230と、一次自己共振コイル240と、コイルケース250とを含む。
【0031】
交流電源210は、車両外部の電源であり、たとえば商用電源である。高周波電力ドライバ220は、交流電源210から受ける電力を高周波の電力に変換し、その変換した高周波電力を一次コイル230へ供給する。なお、高周波電力ドライバ220が生成する高周波電力の周波数は、たとえば1M〜十数MHzである。
【0032】
一次コイル230は、一次自己共振コイル240と同軸上に設置され、電磁誘導により一次自己共振コイル240と磁気的に結合可能である。そして、一次コイル230は、高周波電力ドライバ220から供給される高周波電力を電磁誘導により一次自己共振コイル240へ給電する。
【0033】
一次自己共振コイル240は、たとえば地面近傍に設置される。一次自己共振コイル240は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、車両100の二次自己共振コイル110と電磁場によって共鳴することにより車両100へ電力を送電する。なお、一次自己共振コイル240の容量成分は、コイルの浮遊容量としてもよいが、所定の容量を得るために、二次自己共振コイル110と同様に別途コンデンサ(図示せず)をコイルの両端に接続してもよい。
【0034】
この一次自己共振コイル240についても、車両100の二次自己共振コイル110との距離や、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の共鳴周波数等に基づいて、Q値(たとえば、Q>100)および結合度κ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0035】
コイルケース250は、一次コイル230および一次自己共振コイル240を内部に収納する。コイルケース250の内面には、一次自己共振コイル240の周囲に発生する電磁場をコイルケース250の周囲に漏洩させないために、シールド245が貼付される。なお、シールド245によって、コイルケース250が形成されるようにしてもよい。
【0036】
図2は、共鳴法による送電の原理を説明するための図である。
図2を参照して、この共鳴法では、2つの音叉が共鳴するのと同様に、同じ固有振動数を有する2つのLC共振コイルが電磁場(近接場)において共鳴することによって、一方のコイルから他方のコイルへ電磁場によって電力が伝送される。
【0037】
具体的には、高周波電源310に一次コイル320を接続し、電磁誘導により一次コイル320と磁気的に結合される一次自己共振コイル330へ、1M〜十数MHzの高周波電力を給電する。一次自己共振コイル330は、コイル自身のインダクタンスと浮遊容量(コイルにコンデンサが接続される場合には、コンデンサの容量を含む)とによるLC共振器であり、一次自己共振コイル330と同じ共振周波数を有する二次自己共振コイル340と電磁場(近接場)を介して共鳴する。そうすると、一次自己共振コイル330から二次自己共振コイル340へ電磁場によってエネルギ(電力)が移動する。二次自己共振コイル340へ移動したエネルギ(電力)は、電磁誘導により二次自己共振コイル340と磁気的に結合される二次コイル350によって取出され、負荷360へ供給される。なお、共鳴法による送電は、一次自己共振コイル330と二次自己共振コイル340との共鳴強度を示すQ値がたとえば100よりも大きいときに実現される。
【0038】
なお、
図1との対応関係について説明すると、
図1の交流電源210および高周波電力ドライバ220は、
図2の高周波電源310に相当する。また、
図1の一次コイル230および一次自己共振コイル240は、それぞれ
図2の一次コイル320および一次自己共振コイル330に相当し、
図1の二次自己共振コイル110および二次コイル120は、それぞれ
図2の二次自己共振コイル340および二次コイル350に相当する。そして、
図1の整流器130以降が負荷360として総括的に示されている。
【0039】
図3は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
図3を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。
【0040】
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、共鳴法では、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギ(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、同じ固有振動数を有する一対の共鳴器(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、一方の共鳴器(一次自己共振コイル)から他方の共鳴器(二次自己共振コイル)へエネルギ(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギを伝播しないので、遠方までエネルギを伝播する「輻射電磁界」によってエネルギ(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギ損失で送電することができる。
【0041】
図4は、
図1に示したコイルケース190,250の構造を詳しく説明するための図である。なお、この
図4では、二次自己共振コイル110および二次コイル120を含んで構成される受電側のコイルユニット(以下「受電ユニット」とも称する。)400は、円柱状に簡略化して記載される。また、一次自己共振コイル240および一次コイル230含んで構成される送電側のコイルユニット(以下「送電ユニット」とも称する。)500についても同様に円柱状に簡略化して記載される。
【0042】
図4を参照して、コイルケース190は、最も面積の大きい面195が送電ユニットと対向するように設置される。コイルケース190は、たとえば面195が開口した箱状に形成される。そして、面195以外の5つの面には、送電ユニット500からの受電時に受電ユニット400の周囲に生成される共鳴電磁場(近接場)が周囲へ漏洩することを防止するために、シールド(図示せず)がコイルケース190の内面を覆うように貼付される。
【0043】
そして、二次自己共振コイル110および二次コイル120を含んで構成される受電ユニット400がコイルケース190内に設置され、受電ユニット400は、コイルケース190の開口部分(面195)を介して送電ユニット500から受電する。なお、最も面積の大きい面195が送電ユニット500と対向可能なように設置したのは、送電ユニット500から受電ユニット400への伝送効率をできるだけ大きくするためである。
【0044】
コイルケース250についても、最も面積の大きい面255が受電ユニット400と対向するように設置される。コイルケース250は、たとえば面255が開口した箱状に形成されている。そして、面255以外の5つの面は、送電時に送電ユニット500の周囲に生成される共鳴電磁場が周囲へ漏洩することを防止するために、シールドがコイルケース250の内面を覆うように貼付される。
【0045】
そして、一次自己共振コイル240および一次コイル230を含んで構成される送電ユニット500がコイルケース250内に設置され、送電ユニット500は、コイルケース250の開口部分(面255)を介して受電ユニット400へ送電する。なお、最も面積の大きい面255が受電ユニットと対向可能なように設置したのも、送電ユニット500から受電ユニット400への伝送効率をできるだけ大きくするためである。
【0046】
上述のように、コイルユニットを収納するコイルケースには、電磁場の漏洩を防止するために内面にシールドが貼付される。このシールドの材質については、様々なものが知られているが、このシールドの材質および構造をどのようにするかによって、給電時の電力の伝送効率が大きく影響される。
【0047】
一般に、電磁場を形成する電磁波は、電界と磁界とが相互に影響しながら伝播する。そのため、シールドの機能としては、電界および磁界を遮蔽することが必要となる。
【0048】
磁界を遮蔽する磁界シールドとしては、たとえばフェライトやパーマロイなどの、高透磁率の強磁性体を含んだものが一般的に用いられる。一方、電界を遮蔽する電界シールドとしては、たとえば銅やアルミなどの、電気抵抗が小さい導電体を含んだものが一般的に用いられる。
【0049】
図5は、シールドの有無およびシールドの種類による、シールドの特性の一例を説明するための図である。
図5には、シールドを用いない場合、およびシールドとして銅、磁性シートを用いた場合において、それぞれ共鳴法による非接触給電を行なったときの、電磁界強度、シールドによる損失および伝送効率が示される。なお、電磁界強度については、シールドを用いない場合を1.0としたときの比率で表わされ、この電磁界強度が小さいほど、シールド効果が高いことを示している。また、損失としては、送電ユニットから送電された電力のうち、インピーダンスのずれなどによって受電されずに反射されて戻ってくる反射電力や、電気抵抗などによって消費される消費電力などが含まれる。
【0050】
シールドのない場合は、シールドによる影響がないので、損失が比較的小さくなる。そのため、給電時の伝送効率は比較的高くなる。
【0051】
シールドに銅を用いた場合には、電磁界強度については、シールドがない場合と比べて電界とともに磁界の強度も小さくなっておりシールド効果は高くなる。銅は電気抵抗の小さい導電性の金属であるので、上述のように、電界シールドとしての効果は高いが、銅は非磁性体であるので、磁性材のように低損失で磁界を吸収することは困難である。しかし、銅に作用する磁界の変動が発生すると、電磁誘導によって銅の表面付近において渦電流が発生する。そして、この渦電流によって発生する磁界が銅に作用する磁界を妨げる方向に作用する。これによって、磁界の強度が低減されるので、銅は非磁性体であっても磁界シールドとしても機能する。ただし、このとき、渦電流によってジュール熱が発生するため、これによるエネルギ損失が増加する。そのため、銅を用いたシールドでは、シールド効果は高いが、渦電流による損失(渦電流損)のために結果として伝送効率が低下する場合がある。
【0052】
一方、シールドに磁性シートを用いた場合は、電界に比べて磁界のシールド効果が高くなるが、銅ほどのシールド効果は生じない。しかしながら、磁性シートを用いた場合は、反射電力が小さくできるので、シールドによる損失はシールドのない場合とほぼ同程度とすることができる。そのため、磁性シートを用いた場合には、伝送効率の低下は銅シールドの場合と比較して小さくなる。
【0053】
そこで、本実施の形態においては、コイルユニットのシールドについて、最外層に銅などの導電体の金属シールドを配置するとともに、その内側(すなわち、コイルユニットに近い側)に低損失の磁性体を配置するような、層構造を有するシールドとする。このような構造とすることによって、磁性体によって低損失で磁界成分を低減することができるので、最外層の金属シールドに作用する磁界が低減されて渦電流損を低減することができる。その結果、給電時の伝送効率の低下を抑制しつつ、電磁場の漏洩を防止することが期待できる。
【0054】
図6は、本実施の形態に従う、シールドの具体的な構造を説明するための図である。
図6および後述する
図7,
図8においては、車両100側の受電ユニット400についてのシールド115を例に説明するが、送電ユニット500についてのシールド245についても同様に適用可能である。なお、理解を容易にするために、
図6〜
図8では、コイルケース190については記載を省略している。
【0055】
図6を参照して、シールド115は、銅シールド191と、磁性シート192とを含む。銅シールド191は、図示しないコイルケースの内側に配置される。そして、磁性シート192は、銅シールド191の内側に、銅シールド191に接するように配置される。
【0056】
または、磁性シート192を、
図7に示すように、銅シールド191との間に空間を有した状態で配置するようにしてもよい。あるいは、
図8に示すように、磁性シート192と銅シールド191との間に、たとえば樹脂193などの他の物質を挟んで配置するようにしてもよい。
【0057】
なお、上述の例では、銅シールドと磁性シートを用いた場合について示したが、それ以外の種類の電界シールド、磁界シールドを用いて、上述のように層構造のシールドとしてもよい。また、3つ以上の種類のシールドを用いて、多層構造とするようにしてもよい。
【0058】
図9は、シールドを用いない場合、銅シールドのみを用いた場合、および本実施の形態で説明した層構造のシールドを用いた場合について、共鳴法による給電を行なったときのそれぞれの場合の電力の伝送効率の一例を示す図である。
【0059】
図9からわかるように、磁性シートと銅シールドを層状に配置する構造とすることによって、銅シールドのみを用いた場合と比較して、給電時の伝送効率が向上している。
【0060】
なお、本実施の形態の磁性シート192および銅シールド191は、それぞれ本発明の「第1の遮蔽材」および「第2の遮蔽材」の一例である。
【0061】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。