(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0009】
液体を流動させるチューブと、
回転するカムと、
前記チューブと前記カムとの間で摺動可能に保持される複数のフィンガーであって、湾曲したフィンガーを少なくとも1つ含む複数のフィンガーと、
前記複数のフィンガーが接触する側と対向する側から前記チューブを保持するチューブ案内枠と、を備え、
前記カムが回転することにより、前記複数のフィンガーが、該フィンガーと前記チューブ案内枠との間の前記チューブを、前記液体の流入口部から吐出口部に向かって順次閉塞し、前記チューブ内の液体を流動させる、マイクロポンプ。
このようにすることで、液体を輸送するチューブの配置に自由度をもたせることができる。
【0010】
かかるマイクロポンプであって、前記複数のフィンガーは、複数並ぶフィンガーの中央のフィンガーに向かう方向にそれぞれ湾曲することが望ましい。また、前記複数のフィンガーのうち少なくとも1つのフィンガーは直線状のフィンガーであり、該直線状のフィンガー以外のフィンガーは、前記直線状のフィンガーに向かう方向にそれぞれ湾曲することが望ましい。また、前記カムは、回転する回転板の平面にカム溝が形成された平面溝カムであり、前記カム溝に摺動可能に配置される複数のガイドピンを備え、前記複数のガイドピンに前記複数のフィンガーが取り付けられていることが望ましい。また、前記フィンガーの先端が前記チューブとの接触面で接着され、前記チューブと前記チューブの案内枠は前記複数のフィンガーが接触する側と対向する側において接着されることが望ましい。
【0011】
また、前記フィンガーは、弾性体であることが望ましい。また、前記チューブは、該チューブの中心軸を含む面が前記カムを構成する回転板の面と平行となる位置に配置されることが望ましい。また、前記チューブは、該チューブの中心軸を含む面が前記カムを構成する回転板の面と交差する位置に配置されることが望ましい。
【0012】
このようにすることで、液体を輸送するチューブの配置に自由度をもたせることができる。
【0013】
===第1実施形態===
図1は、第1実施形態におけるマイクロポンプの概略構成を示す斜視図である。
図1において、マイクロポンプ10は、チューブユニット11と制御ユニット12と、チューブユニット11と制御ユニット12とを結合する結合部材13と、から構成されている。チューブユニット11は、チューブ50と、チューブ50を押圧する複数のフィンガー(図示せず)と、チューブ50とから構成される。また、制御ユニット12は、駆動源としてのモータと、カム軸に駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、モータの駆動制御をする制御回路部と(いずれも図示せず)と、から構成されている。本実施形態におけるチューブ50は、後述するフィンガーにより変形が可能であれば弾性体でなくてもよい。例えば、ビニル素材のようなもので形成されたチューブであってもよい。
【0014】
チューブユニット11に装着されるチューブ50は、液体を収容するリザーバ(図示せず)から液体を流入する流入口部52と、吐出する吐出口部53とを有し、それぞれがチューブユニット11から突設されている。なお、リザーバをチューブユニット11の内部に設け、チューブユニット11の内部で流入口部52と接続する構造としてもよい。チューブユニット11と制御ユニット12とは、積み重ねられて結合部材13によって密接固定される。従って、マイクロポンプ10は、チューブ50の流入口部52及び吐出口部53以外の内部は防水性構造となっている。
【0015】
図2は、第1実施形態に係るマイクロポンプのチューブユニット11の平面図である。
図3は、第1実施形態におけるチューブユニット11の部分断面図である。
図4は、
図3におけるB−B断面図である。
【0016】
チューブユニット11は、ほぼ中央部に平面溝カム20とカム保持枠65とを収容する空間を有する。また、チューブユニット11は、平面溝カム20と、複数のフィンガー41〜48(
図3では、フィンガー44を例示)と、複数のガイドピン31〜38(
図4では、ガイドピン34を例示)とを有する。また、チューブユニット11は、チューブ50の一部を含む。平面溝カム20の一部と、平面溝カム20によって揺動される複数のフィンガー(
図3ではフィンガー44を例示している)と、複数のフィンガーによって押圧されるチューブ50とが、チューブ案内枠15と第2案内枠16によって構成される案内枠14によって保持されている。
【0017】
平面溝カム20を含むカム軸76は、軸上方をカム保持枠65、軸下方を機枠17によって軸支されている。カム保持枠65は、機枠17に固定されている。カム軸76は、不図示のモータを含む駆動機構70によって後述する方向(上部からみて反時計回り)に回転させられる。
【0018】
チューブ50は、チューブ案内枠15と第2案内枠16とで設けられるチューブ案内溝51内に保持される。チューブ案内溝51には、フィンガーの揺動方向のチューブ50の位置を規制するチューブ案内壁52が設けられている。チューブ案内壁52には、チューブ50が接触する部分が接着される。
【0019】
チューブ50と複数のフィンガーとが、それぞれチューブ案内枠15と第2案内枠16に形成されたチューブ案内溝51、フィンガー案内溝56の内部に装着された状態で、チューブ案内枠15と第2案内枠16とを溶着または固定螺子によって固定しチューブユニット11として一体化される。
【0020】
平面溝カム20には、カム溝21が形成されている。
図2には、仮想内円25aと仮想外円25bが示されている。これらの円の軸は平面溝カム20の回転軸と一致している。仮想内円25aは、カム溝21の平面溝カム20の中心に最も近い部分が接する円である。仮想外円25bは、カム溝21の平面溝カム20の中心に最も遠い部分が接する円である。本説明において、平面溝カム20の中心に近いときに「低い」と表現し、平面溝カム20の中心に遠いときに「高い」と表現することがある。例えば、仮想外円25bは、仮想内円25aに対して高いということになる。
【0021】
カム溝21の形状は、時計回りに見ると、低い仮想内円25aに接する高さから始まり、徐々に仮想外円25bに向かうように高さが高くなっていく。そして、仮想外円25bに接すると、その高さは、急激に仮想内円25aに接する位置にまで低くされる。このように、仮想内円25aの高さから仮想外円25bの高さにまで徐々に高くなり、その後、急に低くなるという構成が4回繰り返すように、カム溝21は平面溝カム20に形成されている。
【0022】
尚、カム溝21には、後述する突起部34aが掛かるためのせり出し部22が設けられている。このようにすることによって、フィンガー44は、カム溝21から外れにくい構造となっている。
【0023】
次に、フィンガーについて説明する。本実施形態のチューブユニット11は、複数のフィンガー41〜48を含む。これらのフィンガー41〜48において、フィンガー44を除くフィンガーは全て湾曲するように形成されている。フィンガー41〜43は、直線状のフィンガー44に向かう方向に曲げられるように湾曲する。また、フィンガー45〜48も、直線状のフィンガー44に向かうように湾曲する。これらのフィンガー41〜48は、本体部41a〜48aと、この本体部41a〜48aの先端であってチューブ50と接着される先端部41b〜48bを有する。
【0024】
湾曲するようにして形成されるフィンガー41〜48の曲率半径は、先端部41b〜48bがチューブ50に対してほぼ垂直に接触するような曲率半径とされている。このようにすることによって、後述するようにチューブ50にかかる負担を軽減することができるようになっている。
【0025】
フィンガー41〜48には、ガイドピン31〜38が一体的に形成される。ガイドピン31〜38は、平面溝カム20の面に関して垂直方向を軸として回転可能なピンである。そして、ガイドピン34には、カム溝21から外れないようにするための突起部34aが設けられている。
【0026】
また、
図4に示されるように、フィンガー44の断面形状は矩形形状となっている。また、チューブ案内枠15と第2案内枠16のフィンガー案内壁57によって構成されるフィンガー案内溝56の断面形状も同様に矩形形状となっている。このような構造となっているので、フィンガー44は、その軸心回りに回転しない。このため、ガイドピン34は、カム溝21から外れないようになっている。
【0027】
フィンガー41〜48は、それぞれ対応するフィンガー案内溝56内を摺動して進退可能である。これらのフィンガー案内溝56は、それぞれ湾曲したフィンガーの曲率半径と同じ曲率半径を有する形状を有している。
【0028】
このような構造となっているので、平面溝カム20が回転すると、フィンガー44は、カム溝21の形状に合わせて揺動する。また、先端部44bがチューブ50の接触部において接着されている。よって、仮に、チューブ50が弾性力を有さないチューブであったとしても、揺動するフィンガー44にあわせてチューブ50は、押しつぶされたり、拡げられたりする。すなわち、元の形状に戻りにくいチューブ50(弾性力に欠けるチューブ)を用いた場合であっても、適切にチューブ50内の液体を輸送することができる。
【0029】
図5は、平面溝カム20の回転後におけるチューブユニット11の平面図である。ここでは、
図5と前述の
図2を参照しつつ、上述のチューブユニット11を用いた液体の輸送について説明する。
【0030】
図2において、平面溝カム20は、モータを含む駆動機構70を介して回転される(図示、矢印L方向)。回転する平面溝カム20のカム溝21に沿ってフィンガー44が移動する。そうすると、フィンガー44は、フィンガー案内溝56に沿って摺動する。
【0031】
フィンガー41からフィンガー47のガイドピン31〜37の位置は、平面溝カム20において時計回りに徐々に高い位置となっている。また、図には、フィンガー41〜47の先端部41b〜48bの位置も平面溝カム20の中心から徐々に高い位置となっていることが示されている。つまり、フィンガー41からフィンガー47につれて、チューブ50をより押しつぶしている。具体的には、フィンガー46、47は、チューブ50をほぼ完全に押しつぶし、閉塞させている。一方、フィンガー41は、まだチューブ50を押しつぶし始めたところであり、閉塞を開始させたばかりである。
【0032】
一方、フィンガー48のガイドピン38は、カム溝21において最も低い位置にある。フィンガー48の先端部48bも、チューブ50に接着されているので、フィンガー48のガイドピン38がカム溝21の最も低い位置に落ち込んだ場合には、チューブ50を拡げるように作用する。よって、フィンガー48の先端部48bにおいて、チューブ50はその断面が最も拡大された状態となる。
【0033】
この位置から、さらに平面溝カム20を矢印L方向に回転すると(
図5)、カム溝21によって、各フィンガーの位置の高さが変化させられる。これにより、フィンガー44、45は、チューブ50を押しつぶし、閉塞するようになる。一方、
図2においてチューブ50を閉塞していたフィンガー46、47は、チューブ50の流路を拡大するようになる。そして、流路が拡大された位置には、液体が流入することになる。
【0034】
このように、フィンガー41からフィンガー48は、フィンガー41、42、43、44の順に順次押動していき、チューブ50を閉塞したフィンガーから順番にチューブ50の流路を拡大していく。そして、閉塞を完了したフィンガーから順番にその閉塞を解除する。このとき、いずれかのフィンガーが必ずチューブ50を閉塞する構造とすることにより、液体の輸送において逆流を防止することができる。
【0035】
また、本実施形態のような構成にすることにより、カム20の中心とチューブが延在される円弧の中心とがずれた位置に存在することを許容する。すなわち、本実施形態では、チューブ50の配置に自由度を持たせることができる。
【0036】
図6は、参考例におけるフィンガーの動きを説明する図である。図には、参考例のフィンガーとして2本のフィンガー144、145が模式的に示されている。参考例におけるフィンガー144、145は湾曲しておらず直線状のフィンガーとなっている。そして、2本のフィンガー144、145は、それぞれ直線状のフィンガー位置規制壁157によってガイドされるようになっている。
【0037】
このような参考例の構成において、仮にフィンガーが低い位置に移動したときには、これら2本のフィンガーの先端部144b、145b間の距離はW1となる。一方、仮に、フィンガー144、145が高い位置に移動したときには、これら2本のフィンガーの先端部144b、145b間の距離はW2となる。フィンガーの先端部144b、145bにはチューブが接触することになるが、このようにフィンガーの位置によって先端部間の距離が変わることとなると、チューブの長手方向にフィンガー先端が移動しようとする力が働く。フィンガーの先端部144b、145bがチューブに対して滑らないと仮定したとすれば、チューブはその長手方向に変形させられることになる。一方、フィンガーの先端部144b、145bがチューブに対して滑りを生ずると仮定したとすれば、チューブにはその長手方向に摩擦力を生じさせられる。すなわち、いずれの状況においても、チューブには、フィンガー144、145により負担を生じさせられることになる。
【0038】
これに対し、上述の実施形態によれば、フィンガー41〜48は、それぞれチューブ50の面に対してほぼ垂直に接する。このようにすることにより、参考例に示したようなチューブに対する負担を減らすことができる。
【0039】
===第2実施形態===
図7は、第2実施形態におけるチューブユニット11の概略斜視図である。図には、カム220と、チューブ250と、フィンガー241〜247と、フィンガー位置規制部材257−1〜257−7が示されている。
フィンガー241〜247は、例えば、変形可能な弾性体によって形成されている。フィンガー241〜247には、それぞれチューブ250に接触する先端部241b〜247bが設けられている。また、フィンガー241〜247には、それぞれカム220と接触する後端部241c〜247cが設けられている。
【0040】
フィンガー位置規制部材257−1〜257−7は、連通する管状の部材である。それぞれのフィンガー位置規制部材は湾曲した形状として形成されている。フィンガー位置規制部材257−1〜257−7は、それぞれチューブユニット11において所定の位置に固定される。フィンガー位置規制部材257−1〜257−7の内部は、対応する各フィンガーが通る。フィンガー241〜247は弾性体であるため、フィンガー位置規制部材は、それぞれ各フィンガーを所定方向にガイドする。
【0041】
前述の第1実施形態では、チューブ50は、カム20の面と平行な位置に配置されたのに対し、第2実施形態では、チューブ250は、カム220の面と交差する位置に配置される。すなわち、第2実施形態におけるチューブユニット11は、チューブ250とカム軸276の方向が一致している。このように、カム220の面と交差する方向がチューブの長手方向となるように配置できるように、フィンガー位置規制部材257−1〜257〜7は湾曲させられている。
【0042】
次に、カム220の形状について説明する。図には、仮想内円225aと仮想外円225bが示されている。これらの円の軸はカム軸276と一致している。仮想内円225aは、カム220の最も低い部分が接する円である。仮想外円225bは、カム220の最も高い部分が接する円である。
【0043】
フィンガーの後端部241c〜247cが当接する面の形状は、カム220の回転方向とは反対方向に見ると、仮想内円225aの高さから始まり、徐々に仮想外円225bに向かうように高さが高くなっていく。そして、仮想外円225bに接すると、その高さは、急激に仮想内円225aに接する位置にまで低くされる。このように、仮想内円225aの高さから仮想外円225bの高さにまで徐々に高くなり、その後、急に低くなると言う構成が6回繰り返すように、カム220の外形は形成されている。
【0044】
このような構成において、カム220が図の矢印の方向に回転させられると、フィンガー241からフィンガー247にかけて徐々にチューブ250を閉塞する。このように、フィンガーが湾曲する構成となっているので、チューブ250の配置に自由度を持たせることができる。また、フィンガーの先端部をチューブ250に垂直に接触させることができるので、チューブ250にかかる負担を軽減できるという利点も有する。
【0045】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。