特許第5825503号(P5825503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825503
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】異方導電性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 177/00 20060101AFI20151112BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20151112BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20151112BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20151112BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   C09J177/00
   C09J9/02
   C09J11/04
   H05K3/32 B
   H05K1/14 J
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-291073(P2009-291073)
(22)【出願日】2009年12月22日
(65)【公開番号】特開2011-132304(P2011-132304A)
(43)【公開日】2011年7月7日
【審査請求日】2012年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】314000279
【氏名又は名称】スリーボンドファインケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】久保山 俊史
(72)【発明者】
【氏名】長田 誠之
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−222941(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119324(WO,A1)
【文献】 特開2007−062126(JP,A)
【文献】 特開2008−165034(JP,A)
【文献】 特開昭61−032085(JP,A)
【文献】 特開2003−268344(JP,A)
【文献】 特開2010−168510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 177/00
C09J 9/02
C09J 11/04
H05K 1/14
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(C)成分を含み、エラストマーは(A)成分のみ含む非反応型異方導電性接着剤。
(A)成分:融点が90℃〜140℃のポリアミドエラストマー
(B)成分:球状の導電性粉体
(C)成分:溶剤
【請求項2】
(A)成分が、不飽和脂肪酸の重合反応により合成された1分子に2以上のカルボキシル基を有する化合物を原料として合成されたポリアミドエラストマーからなる請求項1に記載の非反応型異方導電性接着剤。
【請求項3】
(B)成分が有機粒子をコアとするメッキ粉である請求項1または2のいずれかに記載の非反応型異方導電性接着剤。
【請求項4】
さらに、タルク粉を含む請求項1〜3のいずれかに記載の非反応型異方導電性接着剤
【請求項5】
フレキシブルプリントサーキットに請求項1〜4のいずれかに記載の非反応型異方導電性接着剤をスクリーン印刷または塗布した後、(C)成分を揮発させるフレキシブルプリントサーキット部材の製造方法
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の非反応型異方導電性接着剤をスクリーン印刷または塗布した後、(C)成分を揮発させることで形成された塗膜の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異方導電性接着剤(以下、ACPとも呼ぶ。)は、絶縁性の高い接着剤中に導電粒子を均一分散させた材料であり、電子部品の相対する電極間の電気的接続と、隣接電極間の絶縁性、及び固定の目的に使用されている。特許文献1の様に、フレキシブルプリントサーキット(以下、FPCと呼ぶ)に溶剤を含んだACPを印刷して加熱乾燥するとFPCにACPの塗膜が形成される。塗膜を含むFPCはヒートシールコネクタ部材として知られている。表示素子の電極部とヒートシールコネクタ部材の電極部を位置合わせしたうえで、加熱圧着することにより各電極を選択的に接続することができる。また、ACPの塗膜を形成したFPCの状態で輸送されることもある。
【0003】
2種類の部材をACPで接続した電子部品は信頼性試験によりその耐久性が確認される。試験項目としては、接着力を確認する方法としては加熱状態で加重をかけるクリープ試験、電気的接続を確認する方法としては回路の抵抗値を測定することが知られており、初期の抵抗値と高温放置試験やヒートサイクル試験などの信頼性試験後の抵抗値を比較することで導通の安定性を確認する。
【0004】
ACPの構成成分としては、特許文献2の様なゴムを溶剤に溶かしたワニスを接着剤に使用することが知られている。その他にもエラストマー、熱可塑性樹脂などの非反応型が多く流通している。しかしながら、溶剤を揮発させて形成させた塗膜は、ホットメルト型接着剤であるため、加熱圧着しても反応型接着剤より接着力が低い。初期接着性が発現したとしても、信頼性試験には耐えることができない。剥離試験用のテストピースを剥離方向に加重をかけた状態で85℃放置するクリープ試験では、ホットメルト型であるため放置時に軟質化して被着体が剥離する事が多い。
【0005】
また、信頼性向上を目的に無溶剤型・反応型のACPが知られている。特許文献3の様なエポキシ樹脂を使用したACPや特許文献4の様なウレタン樹脂を使用したACPがある。昨今はFPCにポリエチレンテレフタレート(PET)等が使用されるため、被着体の耐熱温度が低温化している。そのため、反応が開始する温度まで加熱することが困難になると共に反応が終了する時間を確保すると生産性の低下を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−170177号公報
【特許文献2】特開平5−247424号公報
【特許文献3】特表平8−511570号公報
【特許文献4】特開昭61−47760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のACPでは、クリープ試験に対して耐久性が低く、回路抵抗を安定させることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、ポリアミドエラストマーを接着剤に用いたACPにより特異的に信頼性を向上することを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、(A)〜(C)成分からなる異方導電性接着剤である。
(A)成分:ポリアミドエラストマー
(B)成分:球状の導電性粉体
(C)成分:溶剤
【0010】
本発明の第二の実施態様は、(A)成分が不飽和脂肪酸の重合反応により合成された1分子に2以上のカルボキシル基を有する化合物を原料として合成されたポリアミドエラストマーからなる請求項1に記載の異方導電性接着剤である。
【0011】
本発明の第三の実施形態は、(A)成分の融点が90℃〜140℃の請求項1または2に記載の異方導電性接着剤である。
【0012】
本発明の第四の実施形態は、(B)成分が有機粒子をコアとするメッキ粉である請求項1〜3に記載の異方導電性接着剤である。
【0013】
本発明の第五の実施形態は、フレキシブルプリントサーキットに請求項1〜4に記載の異方導電性接着剤をスクリーン印刷または塗布した後、(C)成分を揮発させたフレキシブルプリントサーキット部材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明ではクリープ特性および導通性が良好な非反応型のACPを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は剥離強度試験の測定方法である。
図2図2はクリープ試験の測定方法である。
図3図3は導通性試験の測定方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A)成分としては、アミド結合を有するポリアミドエラストマーである。特に好ましくは、不飽和カルボン酸のラジカル重合反応により合成された1分子に2以上のカルボキシル基を有する化合物を原料とする、ポリアミドエラストマーが好ましい。1分子に2以上のカルボキシル基を有する化合物の合成方法の例としては化1が挙げられるが、これに限定されない。一般的なポリアミド樹脂としてナイロンが周知であるが、ラクタムを重縮合反応により合成される場合や、飽和脂肪族ジアミンと飽和脂肪族ジカルボン酸の縮合反応で合成される場合が一般的である。ナイロンは側鎖を有さない直鎖状の樹脂であるため(A)成分とは異なる。
【化1】
(RおよびR’は重合開始剤の有機基を示す。)
【0017】
また、(A)成分は加熱する信頼性試験において耐性を有するためには、融点が80℃以上が好ましく、特に好ましくは90℃以上である。また、加熱圧着時に(A)成分が溶融するにあたり、被着体の耐熱性を考慮すると(A)成分の融点は140℃以下であることが特に好ましい。エラストマーの中には融点が確認できないタイプも有るが、これは室温以上の雰囲気では温度を上げればそれだけ軟質化することを示すため、本発明には適さないこともある。融点を確認する方法としては、示差走査熱量計(DSC)、TG/DTA(示差熱天秤)などが上げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の(A)成分としては、ポリエーテルやポリエステルなどとポリアミドのブロック共重合体などを用いても良く、官能基としてアミノ基やカルボキシル基などが残留していても良い。また、2種類以上の(A)成分を混合しても良い。(A)成分の具体例としては、富士化成工業株式会社製のトーマイドPAシリーズ、TPAEシリーズが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0019】
本発明で使用することができる(B)成分としては、球状の導電性粒子が使用できる。球状とは、真球状の粒子や表面に凹凸がある球状の粒子も含む。材質は、金、銀、白金、ニッケル、パラジウムなどの金属粉や有機ポリマー粒子に金属薄膜を被覆したメッキ粒子が使用できる。
【0020】
本発明においては、軟質な有機ポリマー粒子をコアにしたメッキを使用することが好ましい。また、粒子は接続する基板の電極間におけるピッチ幅や電極の厚さによって平均粒径を使い分けることが知られている。ピッチ幅が狭くなる程、平均粒径が小さい(B)成分を使用することが好ましい。平均粒径としては1〜50μmで、粒度分布がシャープなものが特に好ましい。
【0021】
(B)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を1〜100質量部添加することが好ましく、100質量部以上では(B)成分が多すぎて電極間で絶縁性を充分に保つことができない可能性があり、1質量部以下では安定な導通性を得られない可能性がある。(B)成分は粒度分布における平均粒径やメッキ粉におけるコア材またはメッキ成分である金属の種類を変えれば比重が変わるため、(B)成分の添加量に幅がある。
【0022】
本発明で使用することができる(C)成分としては、(A)成分を溶解することができる溶剤であれば使用できる。具体例としては、メタノール、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、イソホロン、酢酸エチル、ベンジルアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、(C)成分は粘度や粘性を調整するためにも添加する。添加量が多くなれば粘度が低くなると共に粘性が低下する。また、添加量が少なければ粘度が高い状態であると共に粘性も高い状態が維持される。
【0023】
(C)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して、(C)成分を1〜1000質量部添加することが好ましく、さらに好ましくは(C)成分は50〜900質量部である。(C)成分が900質量部以上の場合、接着剤の粘性が下がりすぎて導電性粒子の沈降が激しくなり、50質量部以下の場合、粘性が有りすぎて取扱いが困難になる。
【0024】
本発明のACPの取扱いは、ディスペンス塗布やスクリーン印刷により塗布することができる。塗膜が一定になると共に溶剤が均一に揮発するため、スクリーン印刷が特に好ましい。また、電極を有する被着体に塗布されたACPを熱風乾燥炉やベルトコンベアー式IR炉などに投入して溶剤を揮発させる。乾燥させることによりACPの塗膜が形成される。もう一方の電極を有する被着体と位置あわせをして、加熱圧着をすることで接着剤成分が一度溶解すると共に、導電性粒子が両方の電極に押しつけられて電気的接続が確保され、室温に戻った状態で機械的に固定される。
【0025】
塗膜を形成する対象としては、ポリアミド樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などから製造されるFPCなどが挙げられる。塗膜を形成したFPCは輸送されて有る程度時間が経過した後に基板と合わせて加熱圧着される場合も有る。そのため、塗膜は室温において固体である必要があり、好ましくは(A)成分の融点または軟化点が室温以上である必要がある。
【0026】
本発明の特性を損なわない範囲において、(A)成分以外のエラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂などの樹脂成分、具体的には熱可塑性エラストマーであるウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エチレンビニルアセテートなどを添加しても良い。これらの添加により、樹脂強度・接着強さ・作業性・保存性等に優れた組成物および乾燥後に優れた塗膜が得られる。
【0027】
また、本発明の特性を損なわない範囲において、顔料、染料などの着色剤、金属粉、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、難燃剤、有機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により、樹脂強度・接着強さ・作業性・保存性等に優れた組成物およびその硬化物が得られる。また、導電粒子径やバインダー固形分を調整することによって、様々なピッチを持つ電極回路にも対応する組成物およびその塗膜が得られる。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
[実施例1〜6]
異方導電性接着剤を調製するために下記成分を準備した。また、(A)成分および(A’)成分のTG/DTAによる融点の測定結果を表1にまとめた。
【0030】
(A)成分:ポリアミドエラストマー
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(TPAE−32 富士化成工業株式会社製)
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(TPAE−31 富士化成工業株式会社製)
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(PA−201 富士化成工業株式会社製)
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(PA−200 富士化成工業株式会社製)
(B)成分:球状の導電性粉体
・平均粒径30μmの球状メッキ粉(ブライト6GNR30−BHB 日本化学工業株式会社製)
(C)成分:溶剤
・工業用トルエン(トルエン 日本アルコール販売株式会社製)
・工業用メタノール(メタノール 三菱ガス化学株式会社製)
その他の成分:充填剤
・タルク粉(ミクロエースP−2 日本タルク株式会社製)
・アモルファスシリカ(アエロジルR972 日本アエロジル株式会社製)
【0031】
[比較例1〜7]
異方導電性接着剤を調製するために下記成分を準備した。(A’)成分以外の成分は実施例と同様の原料を使用した。
【0032】
(A’)成分:(A)成分以外のエラストマー
・ポリウレタンエラストマー(固形分100%)(パンテックスT−5202 大日本インキ工業株式会社製)
・ポリウレタンエラストマー(固形分100%)(パンテックスT−5210 大日本インキ工業株式会社製)
・ポリウレタンエラストマー(固形分100%)(ミラクトランP22SRNAT )
・ポリエステルエラストマー(固形分60%)(ニチゴーポリエスターTP−290 日本合成化学工業株式会社製)
・ポリエステルエラストマー(固形分60%)(ニチゴーポリエスターTP−293 日本合成化学工業株式会社製)
・SEBSゴムエラストマー(固形分100%)(クレイトンFG1901X クレイトンポリマージャパン株式会社製)
(C)成分:溶剤
・工業用イソホロン(イソホロン ゴードー溶剤株式会社製)
【表1】
【0033】
[融点測定方法]
表1におけるTG/DTAによる融点の測定条件は次の通り。アルミニウムカップに1mg〜10mgのサンプルを入れ、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/minにて、−40℃〜150℃の温度範囲で測定を行い、示差熱量(DTA)が減少する温度もしくは微分示差熱量(DDTA)値が急激に減少する変化点の温度を「融点(℃)」とする。融点が確認できない場合、例えばDTA、DDTAが徐々に変動するため明確な変化点がわからない時は、「無し」と表記する。
装置メーカー:Seiko Instruments Inc.
装置:EXSTAR6000 TG/DTA6200
アルミニウムカップ:Open Sample Pan φ5
【0034】
実施例1〜6および比較例1〜7の製造方法例は次の通り。(C)成分が入った容器に(A)成分または(A’)成分を少しづつ前記容器に添加する。全ての(A)成分または(A’)成分を添加後、3時間撹拌する。(A)成分が溶け残った場合は撹拌時間を延長して溶け残りが無くなるまで撹拌する。または、加熱しながら撹拌を行う。次に、(B)成分および、その他の成分である充填剤を添加して1時間撹拌した後、40μmのクリアランス調整をした三本ロールミルに2回通す。詳細な調製量は表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【表2】
【0035】
実施例1〜6および比較例1〜7の異方導電性接着剤に対して、テストピース作成方法に従ってテストピースを作成し、はく離強度試験、クリープ試験、導電性試験を実施した。その結果を表3にまとめた。
【0036】
[テストピース作成方法(スクリーン印刷、乾燥、加熱圧着)]
異方導電性接着剤をFPCに対して以下の条件でスクリーン印刷を行う。
メッシュ規格:SUSメッシュ#80
印刷速度:40mm/sec
印圧:0.2MPa
異方導電性接着剤を印刷したPETフィルムまたはFPCを熱風乾燥炉に入れて、120℃×10分で乾燥させて(C)成分を揮発させて、PETフィルムまたはFPCの表面に均一な組成物の塗膜を形成させる。塗膜を形成したPETフィルムまたはFPCと基板の位置を調整した後、剥離強度試験、クリープ試験、導通性試験で作成するテストピースは、以下の条件で加熱圧着することで接着を行う。テストピース作成に際しては適宜最適な条件設定で行う。
ヘッド接触面積:3mm×60mm
加熱条件:110〜160℃
加圧条件:3〜5MPa
加熱圧着時間:10〜30sec
【0037】
[剥離強度試験]
PETフィルム上に印刷、乾燥し、ITOガラスへ図1の様に加熱圧着してテストピースを作成する。接着部の寸法は3mm×10mmとする。30分放置後、は強度強度試験を行う。ITOガラスに対して90度の角度でPETフィルムを試験速度50mm/minで引張りはく離強度を測定する。4個のテストピースを測定する。最大強度(N)の平均値と幅(10mm)から計算して「剥離強度(N/m)」とする。PETフィルムとITOガラスの仕様は以下の通り。
PETフィルム:幅10mm、厚さ38μm
ITOガラス:蒸着膜付きガラスを指す。60mm×25mm×1.1mm
面積抵抗10Ω/□ (以下、ITOガラスは同様の仕様)
「剥離強度(N/m)」の評価は以下の通り行い、表2にまとめた。
○:800N/m以上
△:400〜800N/m
×:400N/m未満
【0038】
[クリープ試験]
剥離強度試験と同様のPETフィルムおよびITOガラスを用いて図2の様に加熱圧着してテストピースを作成した。30分放置後、余分な接着部は引き剥がして3mm×50mmとして、図2の5:加重方向に3gf/mm(幅)の割合で加重をかけてテストピースを85℃雰囲気に放置する。5個のテストピースを同時に放置する。すべてのテストピースが加重で剥離するまで測定を行い、以下の判断基準から「クリープ特性」を評価して、表2にまとめた。
○:24時間以上ですべて剥離
△:12〜24時間ですべて剥離
×:12時間ですべて剥離
【0039】
[導電性確認]
以下のFPCと剥離強度試験およびクリープ試験と同仕様のITOガラスを用いて導通性確認を行った。図3の様に、導電性塗料の端部からFPCの圧着部までは7mmの距離を保って加熱圧着する。30分放置後、テストピースをヒートサイクル試験器に投入し、−40℃×30分+85℃×30分を1サイクルとして100時間連続してヒートサイクルを繰り返す。試験終了後、取り出して30分放置後に、テスターの電極を図3の8:銀ペーストの塗膜と9:FPCの電極に当てて抵抗値を測定する。50本の配線の平均抵抗値を「導通性(Ω)」とする。
FPCの材質:ポリイミド
FPCの厚さ:25μm
配線:厚さ35μmの銅に金メッキ処理
配線のピッチ:0.4mm(L/S=0.2mm/0.2mm)
配線の本数:50本
銀ペースト:ThreeBond3350C(室温乾燥タイプ)
以下の判断基準から「導通性(Ω)」を評価して、表2にまとめた。
○:平均値が15Ω未満
△:平均値が15〜20Ω
×:平均値が20Ω以上
【0040】
[総合評価]
以下の点数に従い剥離強度試験、クリープ試験、導通性試験の結果を合計して「総合評価」とする。
○:2点
△:1点
×:0点
【表3】
【0041】
実施例と比較例を比較すると、比較例1〜7ではクリープ特性と導通性を共に維持する組成物が無いが、実施例におていはクリープ特性と導通性が両立されていると共に剥離強度も維持している。また、表1より実施例6の(A)成分の融点が85℃とクリープ試験における雰囲気温度85℃と同じであるため、実施例1〜5と比較しても若干特性が落ちるものの最低限の剥離強度、クリープ特性、導通性を維持している。比較例で使用している(A’)成分はACPの分野で汎用されているポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー、ゴムエラストマーを用いて試験を行っているが全ての試験項目において特性を維持しておらず、(A)成分であるポリアミドエラストマーがACPとしての特性を維持するために特異的に優位な作用をもたらしている。また、スクリーン印刷などによりACPの塗膜が形成されたFPCは、その状態で輸送される事が多く塗膜の安定性も維持される必要がある。そのため、明確な融点を有する(A)成分であるとACPの塗膜が安定する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
非反応型ACPにとって85℃のクリープ特性を維持することは非常に困難であるが、本発明のACPはクリープ特性を維持すると共に、導通性においても安定した特性を示している。ACPをFPCに大量に印刷した後、バッチ炉により大量に乾燥を行い、短時間の加熱圧着により電子部品の大量生産が可能であると共に、反応型ACPに近いレベルの特性を維持した本発明は、現行の非反応型ACPの用途以外にも適用が可能と言える。
【符号の説明】
【0043】
1:PETフィルム
2:ITOガラス
3:接着部
4:剥離方向
5:加重方向
6:FPC
7:ITOガラスの導通面
8:銀ペーストの塗膜
9:FPCの電極
図1
図2
図3