【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
[実施例1〜6]
異方導電性接着剤を調製するために下記成分を準備した。また、(A)成分および(A’)成分のTG/DTAによる融点の測定結果を表1にまとめた。
【0030】
(A)成分:ポリアミドエラストマー
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(TPAE−32 富士化成工業株式会社製)
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(TPAE−31 富士化成工業株式会社製)
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(PA−201 富士化成工業株式会社製)
・ポリアミドエラストマー(固形分100%)(PA−200 富士化成工業株式会社製)
(B)成分:球状の導電性粉体
・平均粒径30μmの球状メッキ粉(ブライト6GNR30−BHB 日本化学工業株式会社製)
(C)成分:溶剤
・工業用トルエン(トルエン 日本アルコール販売株式会社製)
・工業用メタノール(メタノール 三菱ガス化学株式会社製)
その他の成分:充填剤
・タルク粉(ミクロエースP−2 日本タルク株式会社製)
・アモルファスシリカ(アエロジルR972 日本アエロジル株式会社製)
【0031】
[比較例1〜7]
異方導電性接着剤を調製するために下記成分を準備した。(A’)成分以外の成分は実施例と同様の原料を使用した。
【0032】
(A’)成分:(A)成分以外のエラストマー
・ポリウレタンエラストマー(固形分100%)(パンテックスT−5202 大日本インキ工業株式会社製)
・ポリウレタンエラストマー(固形分100%)(パンテックスT−5210 大日本インキ工業株式会社製)
・ポリウレタンエラストマー(固形分100%)(ミラクトランP22SRNAT )
・ポリエステルエラストマー(固形分60%)(ニチゴーポリエスターTP−290 日本合成化学工業株式会社製)
・ポリエステルエラストマー(固形分60%)(ニチゴーポリエスターTP−293 日本合成化学工業株式会社製)
・SEBSゴムエラストマー(固形分100%)(クレイトンFG1901X クレイトンポリマージャパン株式会社製)
(C)成分:溶剤
・工業用イソホロン(イソホロン ゴードー溶剤株式会社製)
【表1】
【0033】
[融点測定方法]
表1におけるTG/DTAによる融点の測定条件は次の通り。アルミニウムカップに1mg〜10mgのサンプルを入れ、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/minにて、−40℃〜150℃の温度範囲で測定を行い、示差熱量(DTA)が減少する温度もしくは微分示差熱量(DDTA)値が急激に減少する変化点の温度を「融点(℃)」とする。融点が確認できない場合、例えばDTA、DDTAが徐々に変動するため明確な変化点がわからない時は、「無し」と表記する。
装置メーカー:Seiko Instruments Inc.
装置:EXSTAR6000 TG/DTA6200
アルミニウムカップ:Open Sample Pan φ5
【0034】
実施例1〜6および比較例1〜7の製造方法例は次の通り。(C)成分が入った容器に(A)成分または(A’)成分を少しづつ前記容器に添加する。全ての(A)成分または(A’)成分を添加後、3時間撹拌する。(A)成分が溶け残った場合は撹拌時間を延長して溶け残りが無くなるまで撹拌する。または、加熱しながら撹拌を行う。次に、(B)成分および、その他の成分である充填剤を添加して1時間撹拌した後、40μmのクリアランス調整をした三本ロールミルに2回通す。詳細な調製量は表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【表2】
【0035】
実施例1〜6および比較例1〜7の異方導電性接着剤に対して、テストピース作成方法に従ってテストピースを作成し、はく離強度試験、クリープ試験、導電性試験を実施した。その結果を表3にまとめた。
【0036】
[テストピース作成方法(スクリーン印刷、乾燥、加熱圧着)]
異方導電性接着剤をFPCに対して以下の条件でスクリーン印刷を行う。
メッシュ規格:SUSメッシュ#80
印刷速度:40mm/sec
印圧:0.2MPa
異方導電性接着剤を印刷したPETフィルムまたはFPCを熱風乾燥炉に入れて、120℃×10分で乾燥させて(C)成分を揮発させて、PETフィルムまたはFPCの表面に均一な組成物の塗膜を形成させる。塗膜を形成したPETフィルムまたはFPCと基板の位置を調整した後、剥離強度試験、クリープ試験、導通性試験で作成するテストピースは、以下の条件で加熱圧着することで接着を行う。テストピース作成に際しては適宜最適な条件設定で行う。
ヘッド接触面積:3mm×60mm
加熱条件:110〜160℃
加圧条件:3〜5MPa
加熱圧着時間:10〜30sec
【0037】
[剥離強度試験]
PETフィルム上に印刷、乾燥し、ITOガラスへ
図1の様に加熱圧着してテストピースを作成する。接着部の寸法は3mm×10mmとする。30分放置後、は強度強度試験を行う。ITOガラスに対して90度の角度でPETフィルムを試験速度50mm/minで引張りはく離強度を測定する。4個のテストピースを測定する。最大強度(N)の平均値と幅(10mm)から計算して「剥離強度(N/m)」とする。PETフィルムとITOガラスの仕様は以下の通り。
PETフィルム:幅10mm、厚さ38μm
ITOガラス:蒸着膜付きガラスを指す。60mm×25mm×1.1mm
面積抵抗10Ω/□ (以下、ITOガラスは同様の仕様)
「剥離強度(N/m)」の評価は以下の通り行い、表2にまとめた。
○:800N/m以上
△:400〜800N/m
×:400N/m未満
【0038】
[クリープ試験]
剥離強度試験と同様のPETフィルムおよびITOガラスを用いて
図2の様に加熱圧着してテストピースを作成した。30分放置後、余分な接着部は引き剥がして3mm×50mmとして、
図2の5:加重方向に3gf/mm(幅)の割合で加重をかけてテストピースを85℃雰囲気に放置する。5個のテストピースを同時に放置する。すべてのテストピースが加重で剥離するまで測定を行い、以下の判断基準から「クリープ特性」を評価して、表2にまとめた。
○:24時間以上ですべて剥離
△:12〜24時間ですべて剥離
×:12時間ですべて剥離
【0039】
[導電性確認]
以下のFPCと剥離強度試験およびクリープ試験と同仕様のITOガラスを用いて導通性確認を行った。
図3の様に、導電性塗料の端部からFPCの圧着部までは7mmの距離を保って加熱圧着する。30分放置後、テストピースをヒートサイクル試験器に投入し、−40℃×30分+85℃×30分を1サイクルとして100時間連続してヒートサイクルを繰り返す。試験終了後、取り出して30分放置後に、テスターの電極を
図3の8:銀ペーストの塗膜と9:FPCの電極に当てて抵抗値を測定する。50本の配線の平均抵抗値を「導通性(Ω)」とする。
FPCの材質:ポリイミド
FPCの厚さ:25μm
配線:厚さ35μmの銅に金メッキ処理
配線のピッチ:0.4mm(L/S=0.2mm/0.2mm)
配線の本数:50本
銀ペースト:ThreeBond3350C(室温乾燥タイプ)
以下の判断基準から「導通性(Ω)」を評価して、表2にまとめた。
○:平均値が15Ω未満
△:平均値が15〜20Ω
×:平均値が20Ω以上
【0040】
[総合評価]
以下の点数に従い剥離強度試験、クリープ試験、導通性試験の結果を合計して「総合評価」とする。
○:2点
△:1点
×:0点
【表3】
【0041】
実施例と比較例を比較すると、比較例1〜7ではクリープ特性と導通性を共に維持する組成物が無いが、実施例におていはクリープ特性と導通性が両立されていると共に剥離強度も維持している。また、表1より実施例6の(A)成分の融点が85℃とクリープ試験における雰囲気温度85℃と同じであるため、実施例1〜5と比較しても若干特性が落ちるものの最低限の剥離強度、クリープ特性、導通性を維持している。比較例で使用している(A’)成分はACPの分野で汎用されているポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー、ゴムエラストマーを用いて試験を行っているが全ての試験項目において特性を維持しておらず、(A)成分であるポリアミドエラストマーがACPとしての特性を維持するために特異的に優位な作用をもたらしている。また、スクリーン印刷などによりACPの塗膜が形成されたFPCは、その状態で輸送される事が多く塗膜の安定性も維持される必要がある。そのため、明確な融点を有する(A)成分であるとACPの塗膜が安定する。