特許第5825672号(P5825672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825672
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】高純度セラミド類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20151112BHJP
   C07C 233/18 20060101ALI20151112BHJP
   C07C 231/22 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   C07C231/02
   C07C233/18
   C07C231/22
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-281654(P2011-281654)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-129640(P2013-129640A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102668
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲生
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】八木 健司
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/041571(WO,A1)
【文献】 特開平10−114732(JP,A)
【文献】 特開平08−283218(JP,A)
【文献】 特開昭62−207247(JP,A)
【文献】 特開平10−218851(JP,A)
【文献】 特開平08−168392(JP,A)
【文献】 特表平09−505319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 231/00
C07C 233/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(2)
【化1】
(式中、Rは、炭素−炭素不飽和結合を有してもよい炭素原子数が13個〜17個のアルキル基を表し、*印は光学活性であることを表す。)
で表されるアミノジオールを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒中にて、水酸基を有してもよい炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステルを反応させて、次の一般式(1)
【化2】
(式中、Rは、炭素−炭素不飽和結合を有してもよい炭素原子数が13個〜17個のアルキル基を表し、Rは水酸基を有してもよい炭素原子数が11個〜23個のアルキル基を表し、*印は光学活性であることを表す。)
で表されるセラミドを製造する工程、及び前記工程の反応混合物に、炭素数1〜3のアルコールを添加して結晶を析出させる工程を含有してなる、高純度セラミド類の製造方法。
【請求項2】
高純度セラミド類の製造方法が、さらに、析出した結晶を分離する工程、及び分離された結晶を乾燥させる工程を、含有してなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭素数5〜10の炭化水素溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
セラミドを製造する工程が、一般式(2)で表されるアミノジオールに対して、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコキシド及びカリウムアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基の存在下で行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
セラミドを製造する工程が50〜130℃にて実施され、炭素数1〜3のアルコールを添加して結晶を析出させる工程が−10〜40℃の範囲で実施される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
炭素数1〜3のアルコールが、メタノール又はエタノールである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
が炭素数13〜17のアルキル基で、Rが水酸基を有してもよい炭素数15〜23のアルキル基である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
が炭素数15のアルキル基であり、立体構造がD−エリスロ体又は(2S,3R)−体である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
が炭素数17のアルキル基であり、得られるセラミドの化学純度及び光学純度が共に95〜100%である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
炭素数5〜10の炭化水素溶媒がヘプタンであり、炭素数1〜3のアルコールがメタノールである、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド類の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、スフィンゴイド(炭素数16〜20の長鎖アミノアルコール類)と脂肪酸が結合したものであり、セラミドに糖が結合したものがスフィンゴ糖脂質である。スフィンゴ糖脂質は、動物の主な糖脂質であり、主として細胞膜に局在している物質である。また、セラミドは皮膚の角質層の細胞間脂質中にラメラ構造として存在し、皮膚の水浸透性バリヤーとして重要な機能を果たしているとされており、乾燥皮膚の防止や皮膚の老化防止などに有用であるとされている(特許文献1参照)。
セラミド類の製造方法としては、突然変異株の微生物による発酵法によりテトラアセチルフィトスフィンゴシン(TAPS)を製造する方法(特許文献1参照)や、ブタノールなどのアルコール溶媒中で、カルボン酸エステル交換にて光学活性セラミドを製造する方法(特許文献2参照)、酢酸エチル中でリノレイン酸とフィトスフィンゴシンをp−トルエンスルホン酸クロライドを用いてアミド化させてN−リノレニルフィトスフィンゴシンを製造する方法(特許文献3参照)などが報告されている。また、カルボン酸エステルとして水酸基を有するカルボン酸エステルを用いて特許文献2に記載の方法と同様な方法により、水酸基を有するカルボン酸でアシル化されたセラミドを製造することができることも報告されている(特許文献4参照)。
しかし、特許文献2に記載の方法では、反応容器から粗セラミドを取り出して冷却し、析出した結晶をメタノールで洗浄・乾燥しているが、結晶分離効率が悪く、また溶媒のブタノールが残存し当該ブタノール及び/又はブタノール臭気の除去は非常に困難であった。また、特許文献3に記載の方法では、溶媒として酢酸エチルを使用し、反応後に煩雑な洗浄操作を繰り返さなければならず、さらに収率も非常に低く、工業的に有利な方法とはいえない。特許文献4に記載の方法も、メタノールで再結晶しており、工業的に有利な方法ではない。
このように高純度のセラミドを工業的に有利な方法で大量に生産できる方法は確立されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−168392号公報
【特許文献2】特開平10−114732号公報
【特許文献3】特表平9−505319号公報
【特許文献4】特開平10−218851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光学活性アミノジオールのN−アシル化(アミド化)反応によって光学活性セラミド類を製造する方法において、生成された粗製セラミド類を工業的に有利な方法により精製する方法を提供するものであり、収率よく、かつ高純度で高いジアステレオ純度のセラミド類を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するべく検討を重ねた結果、溶媒として脂肪族炭化水素及びアルコールを用いることにより粗製セラミド類を精製することができ、簡単な操作で高収率、高純度かつ高いジアステレオ純度のセラミド類が得られることを見出した。また、光学活性アミノジオールのN−アシル化(アミド化)反応によって光学活性セラミド類を製造する工程において、脂肪族炭化水素を溶媒としても高収率でアミド化を行うことができることを見出した。さらに、脂肪族炭化水素を溶媒として光学活性アミノジオールのN−アシル化(アミド化)反応を行い、その反応溶液にアルコールを加え晶析させることにより、簡単な操作で高収率、高純度かつ高いジアステレオ純度のセラミド類を製造できることを見出した。
即ち、本発明は、次の一般式(1)
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、Rは、炭素−炭素不飽和結合を有してもよい炭素原子数が13個〜17個のアルキル基を表し、Rは水酸基を有してもよい炭素原子数が11個〜23個のアルキル基を表し、*印は光学活性であることを表す。)
で表される粗セラミドを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒に溶解し、この溶液に炭素数1〜3のアルコール類を添加する工程を含有してなる高純度セラミド類の製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、次の一般式(2)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、Rは、炭素−炭素不飽和結合を有してもよい炭素原子数が13個〜17個のアルキル基を表し、*印は光学活性であることを表す。)
で表されるアミノジオールを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒中にて、水酸基を有してもよい炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステルを反応させて、前記一般式(1)で表されるセラミドを製造する方法に関する。
【0011】
さらに、本発明は、前記一般式(2)で表されるアミノジオールを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒中にて、水酸基を有してもよい炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステルを反応させる工程、及び前記工程で生成した一般式(1)で表される粗セラミドが溶解している反応混合物中に炭素数1〜3のアルコール類を添加する工程、を含有してなる高純度セラミド類の製造方法に関する。
【0012】
より詳細には、本発明は以下の[1]〜[29]の内容を含むものである。
[1]前記一般式(1)で表される粗セラミドを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒に溶解して炭化水素溶液とする工程、及び、この溶液に炭素数1〜3のアルコール類を添加して結晶を析出させる工程を含有してなる高純度セラミド類の製造方法。
[2]高純度セラミド類の製造方法が、さらに、析出した結晶を分離する工程、及び分離された結晶を乾燥させる工程を、含有してなる前記[1]に記載の方法。
[3]前記一般式(1)で表される粗セラミドを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒に溶解した炭化水素溶液が、前記一般式(2)で表されるアミノジオールを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒中にて、水酸基を有してもよい炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステルを反応させて、前記一般式(1)で表されるセラミドを生成させた反応混合物である、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]炭素数5〜10の炭化水素溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]炭素数1〜3のアルコールが、メタノール又はエタノールである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]Rが炭素数13〜17のアルキル基で、Rが水酸基を有してもよい炭素数15〜23のアルキル基である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]Rが炭素数15のアルキル基であり、立体構造がD−エリスロ体又は(2S,3R)−体である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]Rが炭素数17のアルキル基であり、得られるセラミドの化学純度及び光学純度が共に95〜100%であることを特徴とする、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]炭素数5〜10の炭化水素溶媒がヘプタンであり、炭素数1〜3のアルコールがメタノールである、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
【0013】
[10]前記一般式(2)で表されるアミノジオールを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒中にて、水酸基を有してもよい炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステルを反応させて、前記一般式(1)で表されるセラミドを製造する工程、及び前記工程の反応混合物に、炭素数1〜3のアルコールを添加して結晶を析出させる工程を含有してなる、高純度セラミド類の製造方法。
[11]高純度セラミド類の製造方法が、さらに、析出した結晶を分離する工程、及び分離された結晶を乾燥させる工程を、含有してなる前記[10]に記載の方法。
[12]炭素数5〜10の炭化水素溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる、前記[10]又は[11]に記載の方法。
[13]セラミドを製造する工程が、一般式(2)で表されるアミノジオールに対して、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコキシド及びカリウムアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基の存在下で行われる、前記[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]セラミドを製造する工程が50〜130℃にて実施され、炭素数1〜3のアルコールを添加して結晶を析出させる工程が−10〜40℃の範囲で実施される、前記[10]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]炭素数1〜3のアルコールが、メタノール又はエタノールである、前記[10]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]Rが炭素数13〜17のアルキル基で、Rが水酸基を有してもよい炭素数15〜23のアルキル基である、前記[10]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]Rが炭素数15のアルキル基であり、立体構造がD−エリスロ体又は(2S,3R)−体である、前記[10]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]Rが炭素数17のアルキル基であり、得られるセラミドの化学純度及び光学純度が共に95〜100%である、前記[10]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]炭素数5〜10の炭化水素溶媒がヘプタンであり、炭素数1〜3のアルコールがメタノールである、前記[10]〜[18]のいずれかに記載の方法。
【0014】
[20]前記一般式(2)で表されるアミノジオールを、炭素数5〜10の炭化水素溶媒中にて、水酸基を有してもよい炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステルを反応させて、前記一般式(1)で表されるセラミドを製造する方法。
[21]炭素数5〜10の炭化水素溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる、前記[20]に記載の方法。
[22]反応が、一般式(2)で表されるアミノジオールに対して、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコキシド及びカリウムアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基の存在下で行われる、前記[20]又は[21]に記載の方法。
[23]反応が、50〜130℃にて実施される、前記[20]〜[22]のいずれかに記載の方法。
[24]Rが炭素数13〜17のアルキル基で、Rが水酸基を有してもよい炭素数15〜23のアルキル基である、前記[20]〜[23]のいずれかに記載の方法。
[25]Rが炭素数15のアルキル基であり、立体構造がD−エリスロ体又は(2S,3R)−体である、前記[20]〜[24]のいずれかに記載の方法。
[26]Rが炭素数17のアルキル基であり、得られるセラミドの化学純度及び光学純度が共に95〜100%である、前記[20]〜[25]のいずれかに記載の方法。
[27]炭素数5〜10の炭化水素溶媒がヘプタンであり、炭素数1〜3のアルコールがメタノールである、前記[20]〜[26]のいずれかに記載の方法。
【0015】
[28]かさ密度が0.30g/mL〜0.4g/mLの範囲で、粉末状である高純度セラミド。
[29]化学純度及び光学純度が共に95〜100%である、前記[28]に記載の高純度セラミド。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によれば、ヘプタン中で脂肪酸アルキルエステルと分子内に一級アルコール性水酸基と二級アルコール性水酸基を有するアミノジオールであるスフィンガニンを塩基性触媒の存在下で反応させ、生成するアルコールを随時抜き出すことにより、高収率で一級アミド誘導体を製造することができる。さらに本発明の方法によると、反応系中に所望量のメタノールを添加、冷却することで界面に高収率で、高純度の一級アミド誘導体を析出させることができ、精製段階において煩雑な操作の繰り返しを必要としない。さらに、得られた一級アミド誘導体は、簡便に乾燥することが可能であり、結晶中に使用した有機溶剤が残留することもない。
したがって、本発明の方法によれば、化粧品材料などとして有用な高純度のセラミドを簡便な方法で製造することができ、実用的かつ工業的な高純度セラミドの製造方法を提供することができる。
さらに驚くべきことに、本方法にて製造した高純度セラミドは、従来の方法で製造したセラミドに較べて、かさ密度が低く、化粧品などの香粧品に添加した際や粉末のままファンデーションなどに添加した場合も、その上述製品群の製造での均一な溶解性や使用感の向上に貢献できることが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一般式(1)のRは、スフィンゴイド(炭素数16〜20の長鎖アミノアルコール類)を形成するための残基であり、スフィンゴイドを形成できるものであれば、特に制限はない。好ましいRとしては、炭素−炭素不飽和結合を有してもよい炭素原子数が13個〜17個のアルキル基が挙げられる。炭素原子数が13個〜17個のアルキル基としては、炭素数が13〜17の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、例えば、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基などが挙げられる。これらのアルキル基の炭素−炭素結合の1個以上が炭素−炭素二重結合による不飽和結合となっていてもよい。このような不飽和結合は、アルキル基中に1個〜5個、好ましくは1個〜3個存在していてもよい。好ましいアルキル基としては、ペンタデシル基が挙げられる。
【0018】
本発明の一般式(1)のRは、セラミドを形成できる脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基であり、セラミドを形成することができる脂肪酸の残基であれば特に制限はない。好ましいRとしては、炭素原子数が11個〜23個のアルキル基が挙げられ、これは炭素数が12〜24の脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基に相当するものである。炭素数が11〜23のアルキル基としては、炭素数が11〜23の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、これらのアルキル基は脂肪酸を形成する1個又はそれ以上の炭素−炭素不飽和結合を含有していてもよい。また、これらのアルキル基は、1個又はそれ以上、好ましくは1個の水酸基を含有していてもよい。水酸基を含有するアルキル基の好ましい例としては、特許文献4に記載されている2−ヒドロキシ−アルキル基などが挙げられる。本発明における特に好ましいアルキル基としては、ヘプタデカニル基が挙げられる。
【0019】
本発明の一般式(2)の化合物と反応させるエステルのエステル残基としては、アミド化反応において生成するエステル残基由来のアルコールをアミド化の反応温度において蒸留により分離できる沸点を有するものが好ましい。好ましいエステル残基としては、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。特に好ましいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
【0020】
本発明の一般式(1)で表されるセラミドは、2個又はそれ以上の不斉炭素原子を有しており、これらの不斉炭素原子は、どちらか一方の立体配置であってもよいが、これらの混合物であってもよい。本発明の一般式(1)で表されるセラミドを化粧品材料のように生体に対して使用する材料の場合には、立体配置が決められたものが好ましい。本発明の一般式(1)で表されるセラミドが、2個の不斉炭素原子を有する場合には、4種の光学異性体が存在するが、このいずれの光学異性体であってもよいし、これらの混合物であってもよい。好ましい光学異性体としては、D−エリスロ体又は(2S,3R)−体が挙げられる。
【0021】
本発明の高純度セラミドの製造方法の原料となる粗セラミドは、例えば、特許文献1〜4に開示されているような公知の各種の方法で製造することができる。また、天然から得られたセラミドを使用することもできる。本発明の方法における粗セラミドの入手方法に、特に制限はないが、本発明の方法に沿って、炭化水素を溶媒として製造されるものが特に好ましい。
本発明の高純度セラミドの製造方法において使用される炭素数5〜10の炭化水素溶媒としては、炭素数5〜10の直鎖状又は分岐状のアルカン類や、炭素数5〜10の単環式又は二環式、好ましくは単環式のシクロアルカン類が挙げられる。炭素数5〜10のアルカン類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどが挙げられ、シクロアルカン類としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。炭化水素溶媒の使用量は、一般式(1)で表されるセラミドの粗製物を溶解するに足る量であれば特に制限はない。好ましい使用量としては、一般式(1)で表されるセラミド1質量部に対して、1〜10重量部の範囲が適当である。
炭化水素溶媒に一般式(1)で表されるセラミドを溶解させる場合には加熱して溶解させるのが好ましい。溶解させる際の温度としては、室温以上から溶媒の沸点まで任意に選択することができるが、好ましくは40℃〜溶媒の沸点、より好ましくは50℃〜溶媒の沸点、さらに好ましくは70℃〜溶媒の沸点までの範囲が挙げられる。
【0022】
本発明の高純度セラミドの製造方法におけるアルコールとしては、炭素数1〜5、好ましくは1〜3の脂肪族飽和アルコールがあげられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを例示することができる。アルコール溶媒の使用量は、炭素数5〜10の炭化水素溶媒1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.5〜50質量部、より好ましくは1〜20質量部の範囲が適当である。アルコールを添加する時期は、一般式(1)で表されるセラミドが完全に溶解した後であれば、特に制限はないが、結晶の析出が始まる前が好ましく、溶液の温度が30℃以上、好ましくは40℃以上の状態で添加を開始するのが好ましい。
アルコールを添加して結晶を析出させる温度としては、−20℃〜室温、好ましくは−20℃〜+20℃程度とするのがより好ましく、さらに5℃〜+20℃の範囲が好ましい。このようにして析出させた結晶は、濾別などにより分離することができ、分離された結晶はさらに乾燥して精製することができる。乾燥は、減圧下で行うのが好ましい。
【0023】
本発明の高純度セラミドの製造方法の好ましい態様としては、例えば、
(1)粗セラミドを炭化水素溶媒に加熱溶解させる工程、
(2)得られた粗セラミドの炭化水素溶液に、アルコールを添加する工程、及び、
(3)−20℃〜+20℃の範囲に冷却して結晶を析出させる工程、
を含んでなるものである、さらに、
(4)析出した結晶を濾過して分離する工程、及び、
(5)分離された結晶を乾燥する工程、
を含んでなる方法が好ましい。
【0024】
本発明の炭化水素類を溶媒とするセラミドの製造方法の原料である一般式(2)で表される光学活性アミノジオールは、例えば以下のスキーム1に示す方法で製造することができる。
スキーム1に示す方法について説明する。まず、(i)β−ケトエステルのα位をイミノ基やオキシム基などの含窒素基にし、次いでこれを還元するなどして中間体化合物(A)を製造し、(ii)続いてケト基を選択的に不斉水素化を行って化合物(B)を製造し、(iii)水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いてエステル基の還元を行い、(iv)続いて脱アセチル化を行うことにより製造することができる。また、β位のケト基から誘導される水酸基は反転反応を行うことにより所望の立体の水酸基配置の化合物に変換することができる。
【0025】
【化3】
【0026】
(式中、Rはアルキル基などのエステル残基を示す。Rは前記で説明したものと同じである。)
すなわち、化合物(A)は例えばShapiro et al., J. Am. Chem. Soc., 80, 2170(1958)、G.I. Gregory et al., J. Chem. Soc., 2453(1951)に記載の方法などに従い、β−ケトエステルを原料として二段階の反応を行い製造できる。
また化合物(B)は、例えば出発物質である化合物(A)を、溶媒中、ルテニウム錯体存在下で不斉水素化することにより製造することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のプロトン性溶媒が好適である。またはこれらプロトン性溶媒とテトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸メチル、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等との混合溶媒も好ましい。特に塩化メチレンとメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のプロトン性溶媒との混合溶媒はより好ましい。化合物(A)を上記溶媒中に溶解させたうえで不斉水素化反応させることがより好適である。
【0027】
反応に用いられるルテニウム錯体は、化合物(A)に対して1/100〜1/100000倍モル、さらに好ましくは1/200〜1/10000倍モルとなるように添加すると不斉水素化反応が好ましく進行する。
不斉水素化反応は、水素圧0.1〜10MPa、さらに好ましくは1〜5MPaであり、反応温度は0〜150℃、好ましくは20〜100℃に設定し、1〜48時間撹拌することにより実施できる。得られたシン体の光学活性な化合物(B)は必要に応じβ位水酸基の立体配置を反転させてアンチ体の光学活性な化合物(B)に誘導することができる。
不斉水素化反応に好適に使用されるルテニウム錯体としては、次のものが挙げられる。
【0028】
[Ru2Cl4 (SEGPHOS)2](NEt3)(SEGPHOSは[4,4'−ビス−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス(ジフェニルホスフィン)をいう。)、[Ru2Cl4 (p-Tol-SEGPHOS)2](NEt3)(p-Tol-SEGPHOSは[4,4'−ビス−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス[ジ−p−トリルホスフィン]をいう。)、[Ru2Cl4 (DM-SEGPHOS)2](NEt3)(DM-SEGPHOSは[4,4'−ビス−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス[ジ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン]をいう。)、[RuCl(benzene)(SEGPHOS)]Cl、[RuBr(benzene)(SEGPHOS)]Br、[RuI (benzene)(SEGPHOS)]I、[RuCl(p-cymene)(SEGPHOS)]Cl、[RuBr(p-cymene)(SEGPHOS)] Br、[RuI(p-cymene)(SEGPHOS)]I、[RuCl(benzene)(p-Tol-SEGPHOS)]Cl、[RuBr(benzene)(p-TolSEGPHOS)]Br、[RuI(benzene)(p-Tol-SEGPHOS)]I、[RuCl(p-cymene) (p-Tol-SEGPHOS)]Cl、[RuBr(p-cymene)(p-Tol-SEGPHOS)]Br、[RuI(p-cymene)(p-Tol-SEGPHOS)]I、[RuCl(benzene)(DM-SEGPHOS)]Cl、[RuBr(benzene)(DM-SEGPHOS)]Br、[RuI(benzene)(DM-SEGPHOS)]I、[RuCl(p-cymene)(DM-SEGPHOS)]Cl、[RuBr(p-cymene)(DM-SEGPHOS)]Br、[RuI(p-cymene)(DM-SEGPHOS)]I、[Ru(OAc)2(SEGPHOS)](OAcはアセトキシ基を表わす。)、 [Ru(OAc)2(p-Tol-SEGPHOS)]、[Ru(OAc)2 (DM-SEGPHOS)]、[RuBr2(SEGPHOS)]、[RuBr2(p-Tol-SEGPHOS)]、[RuBr2(DM-SEGPHOS)]、[Ru(SEGPHOS)](BF4)2、[Ru(SEGPHOS)] (ClO4)2、[Ru(SEGPHOS)](PF6)2、[Ru(p-Tol-SEGPHOS)](BF4)2、[Ru(p-Tol-SEGPHOS)] (ClO4)2、[Ru(p-Tol-SEGPHOS)](PF6)2、[Ru(DM-SEGPHOS)](BF4)2、[Ru(DM-SEGPHOS)](ClO4)2、[Ru(DM-SEGPHOS)](PF6)2、[{RuCl(SEGPHOS)}2(μ-Cl)3][NH2Me2]、[{RuCl(SEGPHOS)}2(μ-Cl)3][NH2Et2]、[{RuCl(p-Tol-SEGPHOS)}2(μ-Cl)3][NH2Me2]、[{RuCl (p-Tol-SEGPHOS)}2(μ-Cl)3][NH2Et2]、[{RuCl(DM-SEGPHOS)}2 (μ-Cl)3][NH2Me2]、[{RuCl (DM-SEGPHOS)}2(μ-Cl)3][NH2Et2]、RuCl2(SEGPHOS)(DMF)n、RuCl2 (p-Tol-SEGPHOS)(DMF)n、RuCl2(DM-SEGPHOS)(DMF)n。
【0029】
これらの錯体は、例えば特開平10−182678号公報又は特開平11−269185号公報に示された方法により調製することができる。
さらに、WO2008/041571号公報記載の方法により、化合物(A)の不斉水素移動型反応により合成することも可能である。つまり、光学活性アミン錯体を触媒として、化合物(A)を不斉還元して、直接アンチ体の光学活性な化合物(B)を直接的に製造することも可能である。
この化合物(B)を必要に応じて常法により塩化チオニルを用いてβ位水酸基を分子内反転させる。次いで、水素化ホウ素リチウムや水素化リチウムアルミニウム等の還元剤によりエステル部位を還元して、塩酸等でアミド基を加水分解した後、目的とする光学活性な化合物(C)を得ることができる。
得られた一般式(2)で表されるアミノジオール誘導体に水酸基を有していてもよい炭素数12〜24のカルボン酸の炭素数1〜5のアルキルエステル、好ましくはメチル又はエチルエステルを反応させアミノ基のアミド化を行うことにより、一般式(1)で表されるセラミドを製造することができる。
【0030】
アミド化の工程において使用される炭素数5〜10の炭化水素溶媒としては、炭素数5〜10の直鎖状又は分岐状のアルカン類や、炭素数5〜10の単環式又は二環式、好ましくは単環式のシクロアルカン類が挙げられる。炭素数5〜10のアルカン類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどが挙げられ、シクロアルカン類としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。炭化水素溶媒の使用量は、一般式(2)で表されるアミノジオール誘導体1重量部に対し、1〜10重量部の範囲が適当である。
【0031】
アミド化の際は、塩基化合物を触媒として使用することができ、使用される塩基化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
アミド化は、反応温度30℃〜150℃、好ましくは50℃〜130℃、反応時間1時間〜10時間で行うことができる。
【0032】
アミド化の反応が終了した際に、反応混合物に直接炭素数が1〜5、好ましくは1〜3のアルコールを直接添加することができる。アルコールの添加から一般式(1)で表されるセラミドの分離・乾燥までの工程は、前記した本発明の高純度セラミドの製造方法における条件と同じ条件により処理することができる。
炭化水素溶媒を用いる本発明のアミド化反応に続いて、本発明の高純度セラミドを行う方法は、アミド化の反応混合物から直接高純度セラミドを製造することができるので、特に好ましい方法である。そして、この方法によれば、アミド化及び結晶化の2段階で高純度セラミドを簡便に製造することができ、特に工業化に適した方法である。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。本発明に用いた光学活性三級ジホスフィン化合物は特開2000−16997号公報又は特開平10−182678号公報に示された方法により製造し、またルテニウム−光学活性三級ジホスフィン錯体は特開平10−182678号公報に示された方法により調製した。
【0034】
なお、以下の分析機器あるいは分析手段を採用した。
(分析機器及び条件)
・高速液体クロマトグラフィー機器:ウオーターズ510 ウオーターズ(ウオーターズ社製)
検出器:UV検出器ウオーターズ484(ウオーターズ社製)
検出器:RI検出器ウオーターズ2414(ウオーターズ社製)
・核磁気共鳴スペクトル機器:AM−400型装置 400MHz(ブルッカー社製)
・内部標準物質:テトラメチルシラン
・旋光度機器:DIP−4型装置(日本分光工業株式会社製)
・元素分析機器:CHN−2400(パーキンエルマー社製)
・質量分析機器:M80B(株式会社日立製作所製)
【0035】
[合成例1]
次に示す反応式に従って、α−アミノ−β−ケトエステル誘導体の不斉還元を行った。
【0036】
【化4】
【0037】
500mlのハステロイ製オートクレーブに、2−N−アセトアミド−ヘキサデカノイル酢酸メチルエステル(以下、化合物(C)という場合がある。)50g(0.135モル)と[{RuCl((S)−(−)−SEGPHOS)}(μ−Cl)][MeNH]370mg(0.45ミリモル)及びCHCl:MeOH=10:1の混合溶媒250mlを加え、水素圧2.4MPa、80℃にて20時間攪拌反応を行った。反応液を室温まで冷却し、HPLC(カラム;CHIRALCEL OD-H、溶離液;Hexane/EtOH=95/5(v/v), 流速;0.5ml/min、検出波長;UV-210nm)にて不斉収率、及びジアステレオ選択性(カラム;Inertsil ODS-3V、溶離液;メタノール/水=90/10(v/v), 流速;1.5ml/min、カラム温度;40℃、検出;RI)を測定したところ、不斉収率は99%e.e.、ジアステレオ選択性は95.5%d.e.(syn体/anti体過剰率(%))であった。反応終了後、溶媒を回収し、酢酸エチルとヘキサンの混合溶液により結晶を分離、乾燥して(2R,3S)−2−N−アセトアミド−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルエステル(以下、化合物(D)という場合がある。)47.8g(収率95.3%)を得た。
【0038】
[合成例2]
次に示す反応式に従って、合成例1と同様に不斉還元を行った。
【0039】
【化5】
【0040】
触媒として[{RuCl((R)−(−)−DM−SEGPHOS)}(μ−Cl)][MeNH]を、化合物(C)に対して1/1000モルを使用した以外は、合成例1と同様の方法にて(2S,3R)−2−N−アセトアミド−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルエステルを収率96.7%で得た。不斉収率は99%e.e.、ジアステレオ選択性は95.8%d.e.であった。
【0041】
[合成例3]
次に示す反応式に従って、アミノ基の保護基であるアセチル基を加水分解した。
【0042】
【化6】
【0043】
合成例1で得られた(2R,3S)−2−N−アセトアミド−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルエステル(47.8g)と塩化チオニルとを反応させることにより、水酸基の立体配置を反転させて、(2R,3R)−体とした後、エステル部位を水素化ホウ素ナトリウムにより還元、さらにアセチル基を加水分解することにより(2S,3R)−2−アミノオクタデカン−1,3−ジオール(以下、化合物(E)という場合がある。)(40.1g)を得た(化学純度90%、95%de)。
【0044】
[実施例1]
次に示す反応式に従って、アミノ基のアミド化を行った。
【0045】
【化7】
【0046】
水抜き装置、ジムロート冷却器を装着した1L4つ口フラスコで、合成例3で得られた化合物(E)40.1gに対しヘプタン500ml、及び28%ナトリウムメトキシド溶液1.20gを仕込み、バス温110℃にて加熱攪拌した。
ここに予めヘプタン100mlに溶解したステアリン酸メチル38.85gを約1時間かけて滴下し、メタノールをヘプタン層と分離留去しながら同温にて1時間で反応を完結させた。反応終了後、メタノール200mlを徐々に滴下し、そのまま冷却すると43℃付近にてセラミド((2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール)が析出し始め、そのまま冷却を継続して10℃まで、攪拌下で冷却した。約10℃にて濾過して結晶を分離し、さらに10℃のエタノール100mlにて洗浄を行い、粉末状の結晶(64.8g)を得た。得られた粉末を減圧下乾燥(40〜50℃/20〜5mmHg)し、セラミド59.14g(化合物(D)からの収率は80.9%)を白色粉末状として得た(溶媒残存量は8.7%であった。)。得られたセラミド粉末の化学純度は99%以上で、光学純度も99%de以上であった。
【0047】
[比較例1]
実施例1のヘプタンの代わりに1−ブタノールを使用して同様の反応を行い、セラミドを90℃にて分離、メタノール100mlにて洗浄して溶媒含有粉末(94.8g)を得た。得られた粉末を実施例1と同様の条件で乾燥してセラミド48.7g(化合物(D)からの収率は66.7%)を得た。
化学純度は95.5%で、光学純度は97.2%deであったが、実施例1と比較して収率が低く、また得られた粉末はブタノール香気が残存し、乾燥前後の重量還元率からも溶媒残存量が47.5%と高いことが分かった。
【0048】
[実施例2]
化学純度89%、光学純度90%deの(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール(粗セラミド)からの高純度セラミドの製造を、次の表1に示す各溶媒を用いて行った。粗セラミド1質量部に対して、20倍容量の炭化水素溶媒に加熱溶解後、表1に示す割合のアルコールを添加して表1に示す温度まで冷却して結晶を析出させ、結晶を分離し、乾燥させて、分離の状態、その量(収率)、及び純度を測定した。
結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
run1〜5で得られた粉末のかさ密度は、それぞれ、0.38g/ml、0.36g/ml、0.35g/ml、0.34g/ml、0.37g/mlで、かつ、化学純度はいずれも98%以上であった。一方、run6で得られた粉末のかさ密度は0.43g/mlで化学純度は94.2%であった。