(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825811
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】タービンエンジンにおける先端クリアランスの算出に関する方法、システム及び装置
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20151112BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
F02C7/00 A
F01D25/00 V
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-65106(P2011-65106)
(22)【出願日】2011年3月24日
(65)【公開番号】特開2011-214574(P2011-214574A)
(43)【公開日】2011年10月27日
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】12/751,378
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・トロイ・ハフナー
【審査官】
佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−162231(JP,A)
【文献】
特開2001−289006(JP,A)
【文献】
特開2008−303873(JP,A)
【文献】
特開2007−271625(JP,A)
【文献】
特開2003−214114(JP,A)
【文献】
特開2007−051634(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0204900(US,A1)
【文献】
米国特許第4999991(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/063509(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0069683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01D 11/00−10
F02C 7/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側タービンシェル(102)及び外側タービンシェル(103)と、ブレード先端(106)を有するロータブレード(16)の列と、ブレード先端(106)のすぐ外側の位置でロータブレード(16)の列を囲繞してブレード先端(106)との間の先端クリアランスを定める周囲の静止構造体(109)とを備える燃焼タービンエンジン(10)において、燃焼タービンエンジン(10)の作動中に先端クリアランスを算出する方法であって、
燃焼タービンエンジン(10)の非作動中に、コールド先端クリアランス及びコールドシェル間距離を測定するステップと、
燃焼タービンエンジン(10)の作動中に、燃焼タービンエンジン(10)内の複数の所定位置での温度を測定するステップと、
燃焼タービンエンジン(10)の作動中に、近接センサ(22)を用いてシェル間距離を測定するステップと、
コールド先端クリアランス測定値及び複数の所定位置での温度測定値に基づいて先端クリアランスを算出するステップと、
コールドシェル間距離測定値及び複数の所定位置での温度測定値に基づいてシェル間距離を算出するステップと、
近接センサ(22)のシェル間距離測定値をシェル間距離算出値と比較するステップと、
近接センサ(22)のシェル間距離測定値とシェル間距離算出値との比較に基づいて算出した先端クリアランス算出値を較正するステップと
を含む方法。
【請求項2】
複数の所定位置での温度測定とシェル間距離測定が略同時に起こり、複数の所定位置での温度測定が、燃焼タービンエンジン(10)の複数の様々な動作条件での温度測定を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
当該方法が、
外側タービンシェル(103)上の所定位置に近接センサ(22)を位置付けて近接センサ(22)を内側タービンシェル(102)に向け、近接センサ(22)が内側タービンシェル(102)と外側タービンシェル(103)との間の距離を含むシェル間距離を測定するようにするステップと、
内側タービンシェル(102)上にターゲット面(111)を形成するステップと
を更に含んでいて、近接センサ(22)を内側タービンシェル(102)に向けるステップが、近接センサ(22)をターゲット面(111)に向けることを含み、ターゲット面(111)が、軸方向に実質的に整列した実質的に平坦な面を含み、コールド先端クリアランス及びコールドシェル間距離を測定するステップが、タービンの中心軸(105)からのブレード先端高さ、内側タービンシェル(102)直径及び外側タービンシェル(103)直径を測定することを含み、温度が測定される燃焼タービンエンジン(10)内の複数の所定位置が、内側タービンシェル(102)の温度に関する1つの位置、外側タービンシェル(103)の温度に関する1つの位置及びロータブレード(16)が装着されるロータディスクの温度に関する1つの位置を少なくとも含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
当該方法が、
複数の所定位置での温度測定値に基づいて燃焼タービンエンジン(10)内の複数の所定位置における動作温度を算出するステップを更に含んでいて、所定位置が、内側タービンシェル(102)の温度に関する1つの位置、外側タービンシェル(103)の温度に関する1つの位置、ロータブレード(16)の列が装着されるロータディスクの温度に関する1つの位置及びロータブレード(16)の列の温度に関する1つの位置を少なくとも含み、
先端クリアランスを算出するステップが、
ロータディスクの温度に基づいてロータディスクの熱膨張を算出するステップと、
ロータブレード(16)の列の温度に基づいてロータブレード(16)の列の熱膨張を算出するステップと、
内側タービンシェル(102)の温度に基づいて内側タービンシェル直径の熱膨張を算出するステップと、
を含み、シェル間距離を算出するステップが、外側タービンシェル(103)の温度に基づいて外側タービンシェル直径の熱膨張を算出するステップと
を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
燃焼タービンエンジン(10)の作動中に近接センサ(22)を用いてシェル間距離を測定するステップが、燃焼タービンエンジン(10)の作動中に少なくとも2つの近接センサ(22)を用いてシェル間距離を測定することを含み、少なくとも2つの近接センサ(22)が、略同じ軸方向位置にて外側タービンシェル(103)の円周周りに間隔を置いて配置され、円周周りの間隔を置いて配置することが90度のオフセットを含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
内側タービンシェル(102)及び外側タービンシェル(103)と、ブレード先端(106)を有する少なくとも1つのロータブレード(16)を備えたロータブレード(16)の列と、ブレード先端(106)との間に先端クリアランスが定められるようにブレード先端(106)のすぐ外側の位置でロータブレード(16)の列を囲む周囲の静止構造体(109)とを各々備える1以上の燃焼タービンエンジン(10)において、燃焼タービンエンジン(10)の作動中に先端クリアランスを算出する方法であって、
第1の燃焼タービンエンジン(10)の高温ガス通路内の所定位置に第1の近接センサ(22)を位置付けて、第1の近接センサ(22)が先端クリアランスを測定するようにするステップと、
第1の燃焼タービンエンジン(10)の高温ガス通路の外部の所定位置に第2の近接センサ(22)を位置付けて、第2の近接センサ(22)が内側タービンシェル(102)及び外側タービンシェル(103)間に定められるシェル間距離を測定するようにするステップと、
第1の燃焼タービンエンジン(10)において、第1の燃焼タービンエンジン(10)の作動中に、第1の近接センサ(22)を用いて先端クリアランスを測定し、先端クリアランス測定値を記録するステップと、
第1の燃焼タービンエンジン(10)において、第1の燃焼タービンエンジン(10)の作動中に、第2の近接センサ(22)を用いてシェル間距離を測定し、シェル間距離測定値を記録するステップと、
記録した先端クリアランス測定値及び記録したシェル間距離測定値に基づいて、第1の燃焼タービンエンジン(10)においてシェル間距離測定値と先端クリアランス測定値との間の相関関係を構築するステップと、
相関関係を用いて、1以上の燃焼タービンエンジン(10)におけるシェル間距離測定値に基づいて先端クリアランスを算出するステップと
を含む方法。
【請求項7】
1以上の燃焼タービンエンジン(10)が単一の燃焼タービンエンジン(10)を含み、当該方法が更に、シェル間距離測定値を用いて第1の近接センサ(22)が機能していないときに構築された相関関係に基づいて先端クリアランスを算出するステップを含んでいる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
1以上の燃焼タービンエンジン(10)が第1の燃焼タービンエンジン(10)と第2の燃焼タービンエンジン(10)との少なくとも2つの燃焼タービンエンジン(10)を含み、当該方法が更に、
第2の燃焼タービンエンジン(10)の高温ガス通路の外部の所定位置に第3の近接センサ(22)を位置付けて、第3の近接センサ(22)が第2の燃焼タービンエンジン(10)のシェル間距離を測定するようにするステップと、
第2の燃焼タービンエンジン(10)において、第2の燃焼タービンエンジン(10)の作動中に、第3の近接センサ(22)を用いてシェル間距離を測定し、シェル間距離測定値を記録するステップと、
第1の燃焼タービンエンジン(10)において構築された相関関係を用いて、第2の燃焼タービンエンジン(10)のシェル間距離測定値に基づいて第2の燃焼タービンエンジン(10)における先端クリアランスを算出するステップと
を含んでいる、請求項6記載の方法。
【請求項9】
第1の燃焼タービンエンジン(10)及び第2の燃焼タービンエンジン(10)の設計が同一である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第1の燃焼タービンエンジン(10)における先端クリアランス測定が、第1の燃焼タービンエンジン(10)におけるシェル間距離測定と実質的に同時に起こり、先端クリアランス測定及びシェル間距離測定が複数の異なる動作条件で行われ、第1の燃焼タービンエンジン(10)の高温ガス通路の外部の所定位置に第2の近接センサ(22)を位置付けることが、第1の燃焼タービンエンジン(10)の高温ガス通路の外部の2つの所定位置に少なくとも2つの近接センサ(22)を位置付けることを含み、2つの所定位置が、略同じ軸方向位置で外側タービンシェル(103)の円周周りに間隔を置いて配置される位置を含み、円周周りに間隔を置いて配置することが90度のオフセットを含む、請求項6記載の方法。
【請求項11】
外側タービンシェル(103)上に第2の近接センサ(22)を位置付けて第2の近接センサ(22)を内側タービンシェル(102)に向けるステップと、
外側タービンシェル(103)上に第3の近接センサ(22)を位置付けて第3の近接センサ(22)を内側タービンシェル(102)に向けるステップと
を更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
第1の燃焼タービンエンジン(10)の内側タービンシェル(102)上にターゲット面(111)を形成するステップを更に含み、第2の近接センサ(22)を内側タービンシェル(102)に向けるステップが、第2の近接センサ(22)をターゲット面(111)に向けることを含み、ターゲット面(111)が、軸方向に実質的に整列した実質的に平坦な面を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
第2の燃焼タービンエンジン(10)の内側タービンシェル(102)上にターゲット面(111)を形成するステップを更に含み、第3の近接センサ(22)を内側タービンシェル(102)に向けるステップが、第3の近接センサ(22)をターゲット面(111)に向けることを含み、ターゲット面(111)が、軸方向に実質的に整列した実質的に平坦な面を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
第1の近接センサ(22)を用いた先端クリアランスの測定と第2の近接センサ(22)を用いたシェル間距離の測定は略同時に起こる、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全体的に、回転機械の静止部品と可動部品との間のクリアランスに関する方法、システム及び装置に関する。より具体的には、限定ではないが、本願は、燃焼タービンエンジンにおける回転タービンブレードと周囲の静止構造体との間のブレード先端クリアランスの測定に関連する方法、システム及び装置に関する。本明細書で使用される場合、別途記載のない限り、燃焼タービンエンジンは、ガスタービンエンジン、航空機エンジン、蒸気タービンエンジンを含むタービン又は回転エンジンの全てのタイプを含む。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジン(以下で検討するように、本発明の例示的な応用を示すのに用いることができる)は、圧縮機、燃焼器及びタービンを含む。圧縮機及びタービンは一般に、各段で軸方向にスタックされたブレードの列を含む。各段は、固定される円周方向に離間したステータブレードの列と、中心軸又はシャフトの周りを回転するロータブレード16の列とを含む。作動時には、一般に、圧縮機ロータブレード16は、シャフトの周りを回転し、ステータブレードと協働して機能し、空気流を加圧する。次いで、供給加圧空気が、供給燃料を燃焼させるために燃焼器で使用される。次に、結果として燃焼により得られる高温膨張ガス、すなわち作動流体の流れがエンジンのタービンセクションを通って膨張される。タービンを通る作動流体の流れは、ロータブレード16の回転を誘起する。ロータブレード16は、中心シャフトに接続され、ロータブレード16の回転によりシャフトを回転させるようにする。このようにして、燃料内に含有されるエネルギーは、回転シャフトの機械的エネルギーに変換され、これを用いて、例えば、圧縮機のロータブレード16を回転させて、燃焼に必要とされる供給加圧空気が生成されるようにし、更に、発電機のコイルを回転させて電力を生成するようにすることができる。作動時には、高温ガス通路の過酷な温度、作動流体の速度及びエンジンの回転速度に起因して、ロータブレード16は、過度の機械的及び熱的負荷により高応力を受ける。
【0003】
ガスタービンエンジンの効率は、ロータブレード16の外側半径方向先端と周囲の静止構造体との間のクリアランスによって大きな影響を受けることは当業者には自明であろう。このクリアランスは、本明細書では「先端クリアランス」と呼ぶ。このクリアランスが狭くなるほどロータブレード16の周りの漏出流が減少し、エンジン効率が向上する点は理解されるであろう。しかしながら、特に先端クリアランスは一般に動作条件に基づいて変化することを考えると、先端クリアランスが狭くなるほど、エンジンの幾つかの動作モードのうちの1つの間に回転部品が非回転部品と接触又は擦れる危険が益々大きくなる。このことは、主として、エンジン部品のうちの多くの熱膨張特性が異なることに起因する。勿論、作動中に回転部品と静止部品とが摩擦又は接触することは、エンジンへの多大な損傷又は特定の部品の故障を引き起こす可能性があるので極めて望ましくない。加えて、摩擦は、摩擦を引き起こした事象の後のクリアランスの増大をもたらす場合がある。他方、エンジンは、より緩いクリアランスで設計し、部品の摩擦の可能性を低減することができる。しかしながら、これは一般により多くの漏出を許容し、これによりエンジン効率が低下するので望ましいことではない。
【0004】
多くのより新しいガスタービンは、狭く且つ摩擦のないクリアランスが維持されるように、多数の動作条件中にクリアランスを管理するためアクティブクリアランスを利用している。これらのシステムは、クリアランス制御システムの完全な恩恵を受けるために、定期的で最新且つ正確な先端クリアランスデータを必要とする点は理解されるであろう。従来の測定システムは、高温ガス通路内に位置付けられた近接センサを用いて先端クリアランスを測定する。通常、これらのプローブは、ロータブレード16のすぐ上に位置付けられ、ブレードが通過するときにプローブとロータブレード16のブレード先端との間の距離を測定する。
【0005】
このようしてセンサを位置付けることの欠点は、高温のガス流路の過度な温度にセンサが曝されることである。これらの条件に耐えることができると共に、正確な測定値を提供するセンサは高価である。それでも高温ガス通路の過酷な条件に起因して、これらのセンサの耐用年数は短く、コスト及び保守要件が増大する。また、これらのセンサは通常、圧縮機からブリードされるか又は補助供給源から供給できる供給冷却空気を必要とする。このようにして冷却空気を提供することでエンジンシステムの複雑さが増し、冷却目的で空気が供給されることにより燃焼用に使用できる供給空気が減少し、エンジンの効率が低下する点は理解されるであろう。
【0006】
結果として、タービンエンジンにおいて先端クリアランスを正確に算出及び監視するコスト効果のあるシステムに関連する装置、方法及びシステムの改善に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7215129号明細書報
【発明の概要】
【0008】
内側タービンシェル及び外側タービンシェルと、ブレード先端を有するロータブレードの列と、ブレード先端のすぐ外側の位置でロータブレードの列を囲繞してブレード先端との間の先端クリアランスを定める周囲の静止構造体とを備える燃焼タービンエンジンにおいて、本願は、燃焼タービンエンジンの作動中に先端クリアランスを算出する方法を記載する。本方法は、燃焼タービンエンジンの非作動中に、コールド先端クリアランス及びコールドシェル間距離を測定するステップと、燃焼タービンエンジンの作動中に、動作パラメータを測定するステップと、燃焼タービンエンジンの作動中に、近接センサを用いてシェル間距離を測定するステップと、コールド先端クリアランス測定値及び動作パラメータ測定値に基づいて先端クリアランスを算出するステップと、コールド先端クリアランス測定値及び動作パラメータ測定値に基づいてシェル間距離を算出するステップと、近接センサのシェル間距離測定値をシェル間距離算出値と比較するステップと、近接センサのシェル間距離測定値とシェル間距離算出値との比較に基づいて算出した先端クリアランス算出値を較正するステップと、を含むことができる。
【0009】
幾つかの実施形態では、動作パラメータ測定とシェル間距離測定は略同時に起こる。幾つかの実施形態では、動作パラメータ測定が複数の動作パラメータ測定値を含み、複数の動作パラメータ測定値が、燃焼タービンエンジンの少なくとも1つの複数の様々な動作条件にわたる動作パラメータ測定値を含む。
【0010】
幾つかの実施形態では、本方法は更に、外側タービンシェル上の所定位置に近接センサを位置付けて近接センサを内側タービンシェルに向け、近接センサが内側タービンシェルと外側タービンシェルとの間の距離を含むシェル間距離を測定するようにするステップと、内側タービンシェル上にターゲット面(111)を形成するステップと、を含む。近接センサを内側タービンシェルに向けるステップが、近接センサをターゲット面(111)に向けることを含む。ターゲット面(111)は、軸方向に実質的に整列した実質的に平坦な面を含む。コールド先端クリアランス及びコールドシェル間距離を測定するステップが、ブレード先端高さ、内側タービンシェル直径及び外側タービンシェル直径を測定することを含む。また、動作パラメータを測定するステップが、燃焼タービンエンジン内の複数の所定位置における温度を測定することを含み、所定位置が、内側タービンシェルの温度に関する1つの位置、外側タービンシェルの温度に関する1つの位置及びロータブレード(16)のロータが装着されるロータディスクの温度に関する1つの位置を少なくとも含む。
【0011】
幾つかの実施形態では、本方法は更に、測定された動作パラメータ温度に基づいて燃焼タービンエンジン内の複数の所定位置における動作温度を算出するステップを含み、所定位置が、内側タービンシェルの温度に関する1つの位置、外側タービンシェルの温度に関する1つの位置、ロータブレード(16)の列が装着されるロータディスクの温度に関する1つの位置及びロータブレード(16)の列の温度に関する1つの位置を少なくとも含む。幾つかの実施形態では、先端クリアランスを算出するステップが、ロータディスクの温度に基づいてロータディスクの熱膨張を算出するステップと、ロータブレードの列の温度に基づいてロータブレードの列の熱膨張を算出するステップと、内側タービンシェルの温度に基づいて内側シェル直径の熱膨張を算出するステップと、を含む。幾つかの実施形態では、シェル間距離を算出するステップが、外側タービンシェルの温度に基づいて外側シェル直径の熱膨張を算出するステップを含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、燃焼タービンエンジンの作動中に近接センサを用いてシェル間距離を測定するステップが、燃焼タービンエンジンの作動中に少なくとも2つの近接センサを用いてシェル間距離を測定することを含み、少なくとも2つの近接センサが、略同じ軸方向位置にて外側タービンシェルの円周周りに間隔を置いて配置され、円周周りの間隔を置いて配置することが略90度のオフセットを含む。
【0013】
本願は更に、内側タービンシェル及び外側タービンシェルと、ブレード先端を有する少なくとも1つのロータブレードを備えたロータブレードの列と、ブレード先端との間に先端クリアランスが定められるようにブレード先端のすぐ外側の位置でロータブレードの列を囲む周囲の静止構造体と、を各々が含む1以上の燃焼タービンエンジンにおいて、燃焼タービンエンジンの作動中に先端クリアランスを算出する方法を記載しており、本方法が、第1の燃焼タービンエンジンの高温ガス通路内の所定位置に第1の近接センサを位置付けて、第1の近接センサが先端クリアランスを測定するようにするステップと、第1の燃焼タービンエンジンの高温ガス通路の外部の所定位置に第2の近接センサを位置付けて、第2の近接センサが内側タービンシェル及び外側タービンシェル間に定められるシェル間距離を測定するようにするステップと、第1の燃焼タービンエンジンにおいて、第1の燃焼タービンエンジンの作動中に、第1の近接センサを用いて先端クリアランスを測定し、先端クリアランス測定値を記録するステップと、第1の燃焼タービンエンジンにおいて、第1の燃焼タービンエンジンの作動中に、第2の近接センサを用いてシェル間距離を測定し、シェル間距離測定値を記録するステップと、記録した先端クリアランス測定値及び記録したシェル間距離測定値に基づいて、第1の燃焼タービンエンジンにおいてシェル間距離測定値と先端クリアランス測定値との間の相関関係を構築するステップと、相関関係を用いて、1以上の燃焼タービンエンジンにおけるシェル間距離測定値に基づいて先端距離を算出するステップと、を含む。
【0014】
幾つかの実施形態では、1以上の燃焼タービンエンジンが単一の燃焼タービンエンジンを含み、シェル間距離測定値を用いて第1の近接センサが機能していないときに構築された相関関係に基づいて先端クリアランスを算出し、1以上の燃焼タービンエンジンが少なくとも2つの燃焼タービンエンジン、すなわち第1の燃焼タービンエンジン及び第2の燃焼タービンエンジンを含む。幾つかの実施形態では、本方法は更に、第2の燃焼タービンエンジンの高温ガス通路の外部の所定位置に第3の近接センサを位置付けて、第3の近接センサが第2の燃焼タービンエンジンのシェル間距離を測定するようにするステップと、第2の燃焼タービンエンジンにおいて、第2の燃焼タービンエンジンの作動中に、第3の近接センサを用いてシェル間距離を測定し、シェル間距離測定値を記録するステップと、第1の燃焼タービンエンジンにおいて構築された相関関係を用いて、第2の燃焼タービンエンジンのシェル間距離測定値に基づいて第2の燃焼タービンエンジンにおける先端クリアランスを算出するステップと、を含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、第1の燃焼タービンエンジン及び第2の燃焼タービンエンジンの設計は実質的に類似している。
【0016】
幾つかの実施形態では、第1の燃焼タービンエンジンにおける先端クリアランス測定値が、第1の燃焼タービンエンジンにおけるシェル間距離測定値と実質的に同時に起こり、先端クリアランス測定値及びシェル間距離測定値が少なくとも複数の異なる動作条件にわたって発生し、第1の燃焼タービンエンジンの高温ガス通路の外部の所定位置に第2の近接センサを位置付けることが、第1の燃焼タービンエンジンの高温ガス通路の外部の2つの所定位置に少なくとも2つの近接センサを位置付けることを含み、2つの所定位置が、略同じ軸方向位置で外側タービンシェルの円周周りに間隔を置いて配置される位置を含み、円周周りに間隔を置いて配置することが略90度のオフセットを含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、本方法は更に、外側タービンシェル上に第2の近接センサを位置付けて第2の近接センサを内側タービンシェルに向けるステップと、外側タービンシェル上に第3の近接センサを位置付けて第3の近接センサを内側タービンシェルに向けるステップとを含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、本方法は更に、第1の燃焼タービンエンジンの内側タービンシェル上にターゲット面(111)を形成するステップを更に含む。幾つかの実施形態では、第2の近接センサを内側タービンシェルに向けるステップが、第2の近接センサをターゲット面(111)に向けることを含み、ターゲット面(111)が、軸方向に実質的に整列した実質的に平坦な面を含む。
【0019】
幾つかの実施形態では、本方法は更に、第2の燃焼タービンエンジンの内側タービンシェル上にターゲット面(111)を形成するステップを含み、第3の近接センサを内側タービンシェルに向けるステップが、第3の近接センサをターゲット面(111)に向けることを含み、ターゲット面(111)が、軸方向に実質的に整列した実質的に平坦な面を含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、第1の近接センサを用いた先端クリアランスの測定と第2の近接センサを用いたシェル間距離の測定は略同時に起こる。
【0021】
本願のこれら及び他の特徴は、図面及び請求項を参照しながら以下の好ましい実施形態の詳細な説明を精査することによって明らかになるであろう。
【0022】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を詳細に検討することによって完全に理解され認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願の特定の実施形態を用いることができる例示的なタービンエンジンの概略図。
【
図2】
図1のガスタービンエンジンの圧縮機セクションの断面図。
【
図3】
図1のガスタービンエンジンのタービンセクションの断面図。
【
図4】従来設計による先端クリアランスシステムの概略図。
【
図5】本願の例示的な実施形態による先端クリアランスシステムの概略図。
【
図6】本願の代替の実施形態による先端クリアランスシステムの概略図。
【
図7】本願の例示的な実施形態による論理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に、本願の発明を明確に伝えるために、タービンエンジン及び関連システムの特定の部品又は機械部品に言及しこれを説明する用語を選択する必要がある。可能な限り、一般的な工業用語はその受け入れられた意味と同じ意味で使用及び利用される。しかしながら、このような用語は広義に与えられ、本明細書で意図する意味及び添付の請求項の範囲が不当に制限されるような狭義に解釈されない。当業者であれば、特定の部品が複数の異なる名称で呼ばれる場合が多いことは理解されるであろう。加えて、本明細書で単一の部品として説明できる事柄は、別の状況では複数の部品を含み、又は複数の部品からなるものとして言及することができ、或いは、本明細書で複数の部品を含むものとして説明できる事柄は、単一部品に構築され、場合によっては単一の部品として言及することができる。従って、本明細書で記載される本発明の範囲の理解では、提供される用語及び説明にのみ留意するのではなく、本明細書で記載される部品の構造、構成、機能及び/又は使用に対しても留意すべきである。
【0025】
加えて、本明細書では幾つかの記述上の用語を定常的に使用する場合があり、この点についてこれらの用語を定義することが有用とすることができる。本明細書で使用するこれらの用語及びその定義は、次の通りである。特に別途指定のない限り、「ロータブレード」という用語は、圧縮機又はタービンの何れかの回転ブレードを意味する表現であり、この回転ブレードには、圧縮機ロータブレード16及びタービンロータブレード16の両方が含まれる。特に別途指定のない限り、「ステータブレード」という用語は、圧縮機又はタービンの何れかの静止ブレードを意味する表現であり、この静止ブレードには、圧縮機ステータブレード及びタービンステータブレードの両方が含まれる。本明細書では、「ブレード」という用語は、何れかのタイプのブレードを意味するのに使用することになる。従って、特に別途指定のない限り、「ブレード」という用語は、圧縮機ロータブレード16、圧縮機ステータブレード、タービンロータブレード16及びタービンステータブレードを含む全てのタイプのタービンエンジンブレードを包含する。更に、本明細書で使用する場合、「下流側」及び「上流側」、並びに「前方」及び「後方」とは、タービンを通る作動流体の流れに対する方向を示す用語である。従って、「下流側」という用語は、一般的に作動流体の流れの方向に対応する方向を意味し、「上流側」又は「前方」という用語は一般的に、作動流体の流れの方向の反対方向を意味する。「トレーリング(後)」又は「後方」及び「リーディング(前)」又は「前方」という用語は一般的に、作動流体の流れに関する位置を意味している。場合によっては、本明細書を考慮して明確になるように、「トレーリング(後)」及び「リーディング(前)」という用語は、回転部品の回転方向を意味することがある。これが当てはまる場合、回転部品の「リーディングエッジ(前縁)」は、部品が回転している方向を鑑みた前部又は前方の縁部であり、回転部品の「トレーリングエッジ(後縁)」は、部品が回転している方向を鑑みた後部又は後方の縁部である。
【0026】
「半径方向」という用語は、軸線に対して垂直方向の移動又は位置を意味する。「半径方向」という用語は、軸線に関して異なる半径方向位置にある部分を記述するために必要となることが多い。このようなケースでは、第1の部品が第2の部品よりも軸線に対してより近接して存在する場合には、本明細書では、第1の部品が、第2の部品の「半径方向内向き」又は「内寄り」にあると記述することができる。これに対して、第1の部品が第2の部品よりも軸線から更に遠くに存在する場合には、本明細書では、第1の部品が、第2の部品の「半径方向外向き」又は「外側寄り」にあると記述することができる。「軸方向」という用語は、軸線に平行な移動又は位置を意味する。最後に、「円周方向」という用語は、軸線周りの移動又は位置を意味する。
【0027】
背景技術として、ここで図面を参照すると、
図1から
図3は、本願の実施形態を使用することができる例示的なガスタービンエンジンを示している。本発明がこのタイプでの使用に限定されるものではないことは、当業者には分かるであろう。上述したように、本発明は、発電及び航空機で使用するエンジンのようなガスタービンエンジン、蒸気タービンエンジン及びその他のタイプの回転エンジンで使用することができる。
図1は、ガスタービンエンジン10の概略図である。一般に、ガスタービンエンジンは、加圧空気ストリーム内で燃料を燃焼させることで発生する加圧高温ガス流からエネルギーを取り出すことによって作動する。
図1に示すように、ガスタービンエンジン10は、共通シャフト又はロータによって下流側のタービンセクションすなわちタービン11に対して機械的に結合された軸流圧縮機11と、軸流圧縮機11及びタービン12間に位置付けられた燃焼器13とを備えるように構成することができる。
【0028】
図2は、
図1のガスタービンエンジンで使用することができる例示的な多段式軸流圧縮機11の図を示している。図示するように、軸流圧縮機11は複数の段を含むことができる。各段は、圧縮機ロータブレード16、14の列及びその後に続く圧縮機ステータブレード15の列を含むことができる。従って、第1段は、中心シャフトの周りで回転する圧縮機ロータブレード16、14の列と、これに続いて運転中に静止状態を維持する圧縮機ステータブレード15の列とを含むことができる。圧縮機ステータブレード15は一般に、互いに円周方向に間隔を置いて配置され、且つ回転軸線の周りに固定される。圧縮機ロータブレード16、14は、円周方向に間隔を置いて配置され且つシャフトに取付けられ、運転時にシャフトが回転すると、圧縮機ロータブレード16、14は、シャフトの周りを回転する。当業者には分かるように、圧縮機ロータブレード16、14は、シャフトの周りで回転すると、圧縮機11を通って流れる空気又は流体に運動エネルギーを与えるように構成される。圧縮機11は、
図2に示した段以外の他の段を有することができる。付加的な段は、複数の円周方向に間隔を置いて配置された圧縮機ロータブレード16、14と、これに続いて、複数の円周方向に間隔を置いて配置された圧縮機ステータブレード15とを含むことができる。
【0029】
図3は、
図1のガスタービンエンジンで使用することができる例示的なタービンセクションつまりタービン11の部分図を示している。タービン11はまた複数の段を含むことができる。3つの例示的な段を示しているが、それよりも多い又は少ない段をタービン11内に設けることができる。第1段は、運転時にシャフトの周りで回転する複数のタービンバケットつまりタービンロータブレード16、16と、運転時に静止状態を維持する複数のノズルつまりタービンステータブレード17とを含む。タービンステータブレード17は一般に、互いに円周方向に間隔を置いて配置され且つ回転軸線の周りに固定される。タービンロータブレード16、16は、タービンホイール(図示せず)上に取付けてシャフト(図示せず)の周りで回転するようにすることができる。また、タービン11の第2段も示されている。第2段も同様に、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンステータブレード17と、これに続いて、タービンホイール上に同様に取付けられて回転する複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンロータブレード16、16とを含む。第3段もまた示されており、同様に複数のタービンステータブレード17及びロータブレード16、16を含む。タービンステータブレード17及びタービンロータブレード16、16はタービン11の高温ガス通路内に位置していることが分かるであろう。高温ガス通路を通る高温ガスの流れの方向は、矢印によって示している。当業者には分かるように、タービン11は、
図3に示した段以外の他の段を有することができる。各付加的な段は、タービンステータブレード17の列と、これに続いて、タービンロータブレード16、16の列とを含むことができる。
【0030】
使用時には、軸流圧縮機11内での圧縮機ロータブレード16、14の回転は、空気の流れを加圧することができる。燃焼器13において、加圧空気が燃料と混合されて点火されると、エネルギーを放出することができる。次に、作動流体とも呼ぶことができる結果として得られる燃焼器13からの高温ガスの流れは、タービンロータブレード16、16上に案内され、作動流体の流れは、シャフトの周りでタービンロータブレード16、16の回転を引き起こす。これによって、作動流体の流れのエネルギーは、回転ブレード及びロータブレードとシャフトとの間の連結により回転シャフトの機械的エネルギーに変換される。次にシャフトの機械的エネルギーを使用して、圧縮機ロータブレード16、14の回転を駆動して加圧空気の必要な供給をもたらし、更に、例えば発電機を駆動して電気を発生させることができる。
【0031】
図4は、タービンエンジンが作動しているときの先端クリアランスを求めるのに用いることができる従来設計による先端クリアランスシステム20を示している。システム20は、タービンロータブレード16、16の段の外周の周りに間隔を置いて配置された1以上の従来の近接センサ22を含むことができる。具体的には、近接センサ22は、外側の位置からロータブレード16、16を囲む静止構造体内に装着することができる。このようにして、近接センサ22は、外向きの半径方向位置からタービンロータブレード16、16の段に面するように位置付けることができる。この位置から、近接センサ22は、近接センサ22からタービンロータブレード16、16の外寄り先端までの距離を測定することができ、これは一般に、回転部品(すなわち、ロータブレード16、16)とこれらを囲む静止構造体との間のクリアランスを示す。
【0032】
使用時には、
図4のシステム20は、タービンブレード16の外側半径方向先端と静止構造体との間の距離が既知となり又は算出できるように、定期的な測定値を取得することができる。これらの測定値に関連するデータは、アクティブクリアランス制御システム(図示せず)に送ることができ、ここでこのデータを用いて、性能を向上させるようにブレード先端クリアランスを制御又は操作することができる。すなわち、近接センサ22により取得された測定値が得られると、クリアランス制御システムは、狭く且つ摩擦のないクリアランスが維持されるように、多数の動作条件においてクリアランスを管理することができる。この性質のクリアランス制御システムは、この利用の完全な恩恵を受けるために、定期的で正確な先端クリアランスデータを必要とする点は理解されるであろう。
【0033】
このようにして近接センサ22を位置付けた下流側では、近接センサ22は高温ガス流路の高い温度に曝される。これらの条件に耐えることができると共に、正確な測定値を提供するセンサは高価である。それでも高温ガス通路の過酷な条件に起因して、これらのセンサの耐用年数は短く、コスト及び保守要件が増大する。センサの耐用年数を延ばすために、これらのセンサに冷却供給空気を提供し低温を維持することができる。この空気は、圧縮機又は何らかの補助供給源から提供することができる。冷却空気を提供することでエンジンシステムの複雑さが増し、また、冷却目的で供給される空気により燃焼用に使用できる供給空気が減少し、何らかの補助供給源の作動を必要とするので、こうした使用法はエンジンの効率を低下させる点は理解されるであろう。
【0034】
図5は、タービンエンジンが作動しているときの先端クリアランスを求めるのに用いることができる、本発明の1つの実施形態による先端クリアランスシステム100を示している。先端クリアランスシステム100は、部分的に断面図で示された例示的な燃焼タービンエンジンのタービンにおいて利用できるように示されている。先端クリアランスシステム100はまた、異なる構成及び/又は部品を有するタービンエンジンでも使用できる点は理解されるであろう。先端クリアランスシステム100は、少なくとも内側タービンシェル102及び外側タービンシェル103を含むタービンアーキテクチャに対して用いることができる。
【0035】
図示のように、
図5は幾つかの寸法を参照しており、これらはシステム100の作動を説明するのに役立たせることができる。第1の寸法は、「ブレード先端高さ104」として本明細書で言及され且つ
図5で参照される。この寸法は、タービンの中心軸105からタービンロータブレード16、14の外側半径方向先端(本明細書では「ブレード先端106」と呼ばれる)までの距離を表す。ブレード先端高さ104は通常、タービンホイール107の半径(タービンロータブレード16、16が装着される)と、ロータブレード16、14の半径方向高さ(すなわち、ロータブレード16、14がタービンホイール107を越えて延びる範囲)とから構成される点は理解されるであろう。
【0036】
第2の寸法は、「先端クリアランス108」として本明細書で言及され且つ
図5で参照される。上述のように、先端クリアランス108は、ブレード先端106とブレード先端106を囲む静止構造体との間の距離である。ブレード先端106を囲む静止構造体は、「周囲の静止構造体109」として本明細書で言及され且つ
図5で参照され、ブレード先端106のすぐ外側の位置からブレード先端106に最も近くに存在する何れかの静止部品又は構造体を含む。
図5に示すように、周囲の静止構造体109は、静止シュラウドを含むことができる。従って、
図5に示す構成では、先端クリアランス108は、ブレード先端106と静止シュラウドとの間の距離である。
【0037】
静止部品と回転部品との間の先端クリアランス108が漏出経路を形成し、一般に、ブレード先端106及び周囲の静止構造体109はこのチャンネルを通る漏出を阻止するシールを共に形成するよう構成される点は理解されるであろう。このチャンネルをシールするために幾つかの異なるシール方式が存在するので、ブレード先端106及び周囲の構造体109は多くの形態をとることができる。従って、多くのタイプの部品及び構造体はブレード先端106及び周囲の静止構造体109に存在することができる点は理解されるであろう。例えば、一部の事例では、ロータブレード16、16は、先端シュラウド(図示せず)を有することができる。この事例において、先端シュラウドの最外領域は、多くの場合はカッタ歯であり、ブレード先端106を形成することになる。最外流路は、静止シュラウドを含むことができ、カッタ歯が切断するアブレイダブル材料を含み、これによりシールを形成する。本発明は、どのような特定のブレード先端106/周囲の静止構造体109組立体にも限定されず、
図5において説明され又は図示されたものの何れか、並びに他の構造構成と共に用いることができる点は理解されるであろう。多くの場合、先端クリアランス108は、ブレード先端106と周囲の静止構造体109との間に存在する最小距離である。先端クリアランス108はまた、回転部品と静止部品との間に望ましくない摩擦が発生する前に、ブレード先端106及び周囲の静止構造体109が互いに向かって移動しなければならない距離として説明することができる。
【0038】
第3の寸法は、内側シェル厚み110として本明細書で言及され且つ
図5で参照される。内側シェル厚み110は、その名称が示すように、内側タービンシェル102の厚みである。図示のように、内側シェル厚み110は通常、a)周囲の静止構造体109の内側半径方向境界と、b)内側タービンシェル102の外側半径方向表面上のターゲット面111、111との間の距離を含む。周囲の静止構造体109の特定の構成に応じて、内側シェル厚み110は、
図5の例示的な構成に描かれるように、静止シュラウドの厚みを含むことができる。以下でより詳細に検討するように、ターゲット面111、111は、近接センサ120を向けることができる内側タービンシェル102上の何れかの外側表面(又は、内側タービンシェル102に取り付けられた部品の外側半径方向表面)とすることができる。1つの実施形態では、
図5に示すように、ターゲット面111、111は、軸方向に傾斜した平坦面(すなわち、同じ半径方向位置から軸方向に延びる基準線に対しておよそ0°の角度を形成する面)を含むことができる。このタイプのターゲット面111、111は、内側タービンシェル102と一体化されるように内側タービンシェル102内に予め形成するか又は内側タービンシェル102内に機械加工することができ、或いは、ターゲット面111、111は、所望の構成を生成するか及び/又は近接センサ120による正確な測定値を促進する表面特性を有するように構成された取付部品とすることができる。作動中の内側タービンシェル102及び外側タービンシェル103の互いに対する僅かな軸方向移動に起因して、軸方向に整列したターゲット面111、111がシステムの精度を向上させ、他方、傾斜面は、実際にはこの結果をもたらしたのは軸方向移動であったときに、内側タービンシェル102及び外側タービンシェル103が互いに向かって又は互いから離れるように移動したことを示すことができる点は理解されるであろう。
【0039】
第4の寸法は、シェル間距離112として本明細書で言及され且つ
図5で参照される。シェル間距離112は、一般に、外側タービンシェル103と内側タービンシェル102との間の距離を表す。より具体的には、以下で詳細に検討し且つ
図5に示すように、シェル間距離は、外側タービンシェル103に固定装着される近接センサ120と内側タービンシェル102上のターゲット面111、111との間の距離を表すことができる。
【0040】
1以上の部品又は機器は、本発明によるシステムに含めることができる。
図5に示すように、システム100は、1以上の近接センサ120を含むことができる。近接センサ120は、外側タービンシェル103に固定装着することができる。近接センサ120は、シェル103(図示のように)を通して又はシェル103の内側半径方向表面に装着することができる。このようにして、近接センサ120は、内側シェル102の外側半径方向表面及び/又はその上に形成されるターゲット面111に向けるよう構成することができる。次いで、近接センサ120は、センサ120が近接センサ120から内側シェル102までの距離を測定するように向けることができ、理解されるように、これを用いて外側シェル103と内側シェル102との間の距離(すなわち、シェル間距離112)の何らかの相対変化を算出することができる。近接センサ120は、この機能を実施するのに用いることができる何れかのタイプの近接感知器を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、近接センサ120はレーザ近接プローブである。他の実施形態では、近接センサ120は、渦電流センサ、容量センサ、マイクロ波センサ、又は他の何れかの類似のタイプのデバイスとすることができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、単一の近接センサ120を用いることができる。
図5に示すような近接センサ120は、ロータブレード16、16の列の軸方向位置に近接した軸方向位置に配置することができる。よって、この単一の近接センサ120は、ロータブレード16、16の特定の列についての先端クリアランス108を算出するシステムの一部として用いることができる。他の近接センサ120は、ロータブレード16、16の他の列と一致する軸方向位置に存在することができ、その結果、これらロータブレード16、16の他の列における先端クリアランス108の算出との関連で用いることができる点は理解されるであろう。他の実施形態では、単一の近接センサ120は、ロータブレード16、16の複数の列との関連で用いることができる。この構成により、センサ120の軸方向位置から離れた位置にある列の精度の低下が僅かになる可能性がある。
【0042】
幾つかの実施形態では、先端クリアランス測定システム100は、同じ近接した軸方向位置でタービンの円周周りに間隔を置いて配置された複数の近接センサ120を含むことができる。このような配置は、特に、「ハーフシェル」ケーシング構成を有する大型のタービンにおいてシステムの精度を向上させることができる。これらのタイプのタービンにおいて、シェル構造体は通常、ボルト締め水平継手を有するように構成される。当業者には自明であろうが、この水平継手に起因して、熱膨張による「楕円化」が引き起こされる。すなわち、シェルは、水平継手に沿ってより膨張し、接合シェルが円形を維持せずに僅かな楕円形を形成する。この事例では、水平継手(或いは、水平継手付近)に沿ったシェル間距離を監視する近接センサと、水平継手(或いは、水平継手付近)から90°の位置にあるシェル間距離を監視する別の近接センサとを有することにより、楕円化に対処できる。始動又は他の過渡作動期間中には、内側タービンシェルが外側タービンシェルよりもより高い割合で加熱される(すなわち「楕円化」する)ことを考慮すると、これは重要なこととすることができる。
【0043】
加えて、代替の実施形態では、近接センサ120は、内側シェル102に装着され、内側タービンシェル102上のセンサ120の位置と外側タービンシェル103上のターゲット面111、111との間の距離を測定することによって、センサ120がシェル間距離112を測定できる。何れかの位置、すなわち外側シェル103に装着された位置又は内側シェル102に装着される位置において、近接センサ120は高温ガス通路の過酷な条件には曝されない点は理解されるであろう。従って、近接センサ120は遙かに低い温度に曝され、これによりセンサがより費用がかからないように構成され、センサ120の部品寿命が延び、センサ120を冷却するための冷却空気の使用を不要に又は削減できる。
【0044】
幾つかの実施形態では、先端クリアランス測定システム100は、熱電対又は他のデバイスとすることができる1以上の温度センサ124を含むことができる。温度センサ124を用いて、先端クリアランスが算出されており且つこの算出で使用される区域において、タービンエンジン内の複数の部品の温度に関するデータを取得することができる。例えば、温度センサ124は、外側シェル103の内側及び外側半径方向表面の一方又は両方に沿った温度測定値を含むことができる、外側シェル103の温度と、内側シェル102の内側及び外側半径方向表面の一方又は両方に沿った温度測定値とを含むことができる、内側シェル102の温度とを求めるように位置付けることができる。内側タービンシェル102と外側タービンシェル103との間のキャビティの温度はまた、温度センサ124の1つによって取得することができる。
【0045】
従来手段による近接センサ120及び/又は温度センサ124は、制御システム125に接続されるように構成することができる。これらの接続は
図5の破線で示される。制御システム125は、複数のセンサに電気的に通信するコンピュータ実装デバイスとすることができ、プログラム命令並びに受信するロジック及びデータに基づいて算出を行うよう構成される。例えば、制御システム125は、全体のシステムレベルの制御を目的としたメイン又は中央プロセッサセクションと、中央プロセッサセクションの制御下で種々の異なる特定の組合せ、機能及び他のプロセスを実施する専用の別個のセクションとを有する、ASICのような単一の特定用途集積回路として実装することができる。当業者であれば、制御システムはまた、個別素子回路もしくはPLD、PAL、PLA又は同様のものなどのプログラマブルロジックデバイスを含む、ハードワイヤード電子回路又は論理回路などの様々な別個の専用又はプログラム可能な集積回路又は他の電子回路もしくはデバイスを使用して実施できる点は理解されるであろう。制御システム125はまた、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどの好適なプログラムド汎用コンピュータ、或いは、CPU、MPUなどの他のプロセッサデバイスを単独で、或いは1以上の周辺データ及び信号処理装置と共に使用して実施することもできる。
【0046】
加えて、燃焼タービンエンジンの作動を監視及び制御するのに使用される多くの従来のコンピュータ制御システムと同様に、制御システム125は、複数の動作パラメータに関連する計算を行うコンピュータモデル及びアプリケーションを含むことができる。例えば、制御システム125は、負荷、周囲条件、燃料特性、その他などの動作パラメータに基づいてタービン12を通じた作動温度を算出するプログラムドロジックを含むことができる。制御システム125はまた、ホイール107、ロータブレード16、16、内側タービンシェル102の厚み、外側タービンシェル103の厚み、内側タービンシェル102の直径及び/又は外側タービンシェル103の直径の熱膨張を算出するプログラムドモデル及びロジックを含むことができる。これらの算出は、測定温度に基づくか、或いは、当業者には自明であろうが、他の測定動作パラメータ及び条件に基づく制御システム125によって算出された温度に基づくことができる。
【0047】
制御システム125及び複数のセンサ120、124は、電気的に通信するよう構成することができる。特定の実施形態では、制御システム125は、近接センサ120及び温度センサ124それぞれから収集された近接データ及び温度データに基づく算出値を受け取り、格納し、算出することができる点は理解されるであろう。制御システム125はまた、ロータブレード16の先端クリアランスに影響を及ぼす電気機械システムの制御を含むことができる、従来のアクティブ先端クリアランス制御システムと併せて作動するよう構成することができる。このようにして、本発明の先端クリアランス108の算出値は、性能向上又は所望の方法で先端クリアランスを操作する従来のアクティブ先端クリアランス制御システムにより使用することができる。
【0048】
使用時には、先端クリアランスシステム100は、タービンの高温ガス通路において近接センサを連続して作動させる費用を発生させることなく先端クリアランス108データを正確に算出するのに用いることができる。すなわち、先端クリアランスシステム100は、タービンの高温ガス通路の外部にある近接センサ120によって行われる測定に基づいて先端クリアランス108データを正確に算出するのに用いることができる。本発明は、外側シェル103と内側シェル102との間の距離で生じる変化を測定することによって先端クリアランス変動を正確に算出できるという知見を活用する。高温ガス通路内で先端クリアランスを直接測定する(従来技術のシステムが教示するように)と、若干はより正確な結果がもたらされる可能性があるが、本発明は、精度とコスト効果とをうまく両立させ、多様な用途において魅力的で有益なものとなる。すなわち、本発明が提供するコスト節減(すなわち、高価ではない近接センサの使用、より長い近接センサの部品寿命、近接センサ用の冷却空気の低減又は排除、その他)を考慮すると、本発明による先端クリアランス測定システムは、多くの場合、高温ガス通路において作動している近接センサに比較的高いコストを支払いたくないシステム管理者に対し魅力的な代替手段を提供する。
【0049】
図6は、本発明の代替の実施形態を示す。図示のように、
図6は、高温ガス通路内の近接センサ22と、外側タービンシェル103に装着された近接センサ120とを含み、この両方は、上述のように構成され作動することができる。この組合せシステムの作動は、
図8に関する検討において以下に提供する。
【0050】
本発明の2つの異なる実施形態の作動は、
図7及び8の論理フロー図に関連して説明される。
図7を参照すると、プロセス200がブロック202で開始することができる。この最初のステップにおいて、関連寸法の「コールド」(すなわち、非作動及び静止)測定値を得ることができる。このステップは、一般に従来のタービン組立体及び保守定期作業中に既に実施されている点は理解されるであろう。これらの測定値は、コールド測定ブレード先端高さ104、コールド測定先端クリアランス108、コールド測定内側シェル厚み110及びコールド測定シェル間距離112を含むことができる。これらのコールド寸法の測定は1回実施され、その後、延長期間の間に使用することができる。コールド寸法の測定はまた、タービンエンジンが作動していないときはいつでも定期的に更新することができ、本方法の精度を向上させることができる。
【0051】
本プロセスは、ブロック202からブロック204に進むことができる。このステップでは、制御システム125は、作動中にタービンエンジンの複数の動作パラメータを監視することができる。これらの動作パラメータは、種々のシステムセンサの何れかにより行われた測定を含むことができ、センサは、近接センサ120、温度センサ124、並びにその他を含むことができる。システムが測定し監視できる他の動作パラメータは、例えば、負荷レベル、周囲条件、シェル間距離、高温ガス通路温度、内側タービンシェル温度、外側タービンシェル温度、燃料条件、圧力レベル及びその他を含むことができる。
【0052】
本プロセスは、ブロック204からブロック206に進むことができる。このステップにおいて、本プロセスは、ブロック204から測定パラメータに基づいて他のタービンエンジン動作パラメータを算出することができる。例えば、タービンを通る温度レベルは、当業者には自明であろうが、既知の式、物理的法則、材料特性、燃焼タービンエンジン作動に関する履歴データ及び他の関連情報を用いて開発された従来のタービン動作プログラム及びモデルを上述のように用いて近似又は算出することができる。例えば、これらの従来のプログラム及びモデル、並びに測定又は既知のエンジン動作パラメータを用いて、ブレード先端高さ104の変化を算出することができる。このような算出は通常、ホイール107及びロータブレード16、16の熱膨張に基づいており、熱膨張は、高温ガス通路を通る現在及び最近の温度レベル(すなわち、タービンホイール107及びタービンロータブレード16、16により生じる現在及び最近の温度)に起因することが分かっている。同様に、ステップ206において、実際の温度データ又は他の測定タービン動作特性を考慮して行われた算出に基づいた温度を用いて、内側シェル厚み110の熱膨張、内側タービンシェル102の直径の熱膨張、外側タービンシェル103の厚みの熱膨張及び外側タービンシェル103の直径の熱膨張もまた算出することができる。熱膨張は従来の方法を用いて算出できる点は理解されるであろう。1つのこのような方法において、熱膨張に関連する材料特性は、摂氏温度変化を乗じたときに特定の部品についての熱膨張の距離をもたらす乗数を含む。
【0053】
本プロセスは、ブロック206からブロック208に進むことができる。このステップにおいて、プロセスは、現在の先端クリアランス108を算出することができる。従来のシステムにおいて、この算出は、測定及び/又は算出温度データを所与として測定コールド寸法及び算出熱膨張特性を考慮して行うことができる点は理解されるであろう。従来のシステムにおいて、このタイプの先端クリアランス108の算出は、高温ガス通路中に近接センサを配置すること及びエンジン作動中の先端クリアランス108の直接測定を行うことなく可能な限り正確である。しかしながら、本発明において1つの実施形態によれば、先端クリアランス108の算出は、実時間測定によって、算出における変動が最も有意な部品のうちの1つを取り除き、この部品を交換している間に行うことができる。より具体的には、近接センサ120を用いて、シェル間距離112の極めて正確な最新の測定値を提供し、これは勿論、外側タービンシェル103の位置に対する内側タービンシェル102の位置の変化を正確に示している。このようにして、これまでタービンエンジンモデルを用いて近似しなければならなかったものが直接正確に測定され、このことは、先端クリアランス算出の精度を較正又は向上させるのに用いることができる点は理解されるであろう。
【0054】
1つの実施形態では、ブロック208で行われたクリアランス算出は、予測シェル間距離112及び測定シェル間距離112を考慮して較正される。すなわち、外側タービンシェル103に対する内側タービンシェル102の予測される変化(すなわち、従来のシステムを用いて予測される)は、外側タービンシェル103上の近接センサ120による距離の実測定値を考慮して較正される。この較正(プロセスに対して不確かさのレベルが有意であるものを除去する)は、最大の先端クリアランス108算出の精度を向上させることができる点は理解されるであろう。先端クリアランス108が算出されると、プロセスは、ブロック204に戻り、再度プロセスを循環することができる。幾つかの実施形態(図示せず)において、プロセスは、従来のアクティブ先端クリアランス制御システムに算出した先端クリアランス108を報告することができる。
【0055】
ここで
図8を参照すると、本願の代替の実施形態を説明するロジック
図300が提供される。本方法は、
図6に示す複合システム、すなわち、先端クリアランス108を直接測定するために高温ガス通路に位置付けられた近接センサ22(
図4に関連して説明されたような)と、シェル間距離112(
図5に関連して説明されたような)を測定するよう位置付けられた近接センサ120とを組合せたシステムを用いる。以下で説明するように、この種類のシステムを用いて、測定された先端クリアランス108データと測定されたシェル間距離112データとの相関関係を構築又は導出することができる。この相関データは、単一のエンジンで構築され、次いで類似の設計エンジンに適用することができる。このようにして、高温ガス通路に位置する近接センサを有することに関連して向上した精度の大半は、多くのエンジンに適用することができ、高温ガス通路のセンサを作動させるコストは単一のエンジンにおいてのみ発生する。上述のように、シェル間距離112の変化と先端クリアランス108の変化との間に強い相関関係があることが発見されたことにより本方法の実施が可能になる。
【0056】
本プロセス300は、ブロック302で開始することができる。この最初のステップにおいて、先端クリアランス108を直接測定するための高温ガス通路近接センサ22及びシェル間距離112を測定するための近接センサ120の両方を有するタービンエンジンが作動して、データが収集される。ここでは、上記で挙げられたような動作パラメータの全てのタイプを監視すること、並びに近接センサ22、120の各々により取得された測定値を記録することを含むことができる。本ステップはまた、上述のような関連寸法の「コールド」測定値を取得することを含むことができる。本プロセスは、ブロック302からブロック304に進むことができる。
【0057】
ブロック304において、本プロセスは、測定されたシェル間距離112と測定された先端クリアランス108距離との間の相関関係を求めることができる。この一部として、本プロセスは、様々な動作条件がこの相関関係にどのように影響を及ぼす可能性があるかを確認することができる。この相関関係の精度は、動作条件の範囲を保護するより多くの作動データ量を記録すること、並びに1つよりも多い又は複数の同様のもしくは実質的に同じ設計のタービンエンジンに関する相関データを収集することによって改善できる点は理解されるであろう。
【0058】
ブロック306では、本プロセスは、ブロック304で構築された相関関係を収集したタービンエンジンに、或いは1以上のタービンエンジンに適用し、測定されたシェル間距離112に基づいて動作中に先端クリアランス108を算出することができる。収集した同じタービンに関する相関関係を用いた場合、これは、高温ガス通路における近接センサ22の作動に継続して依存することなく、極めて正確な結果が得られる点で有用とすることができることは理解されるであろう。従って、高温ガス通路の近接センサ22が機能停止すると、高温ガス通路内の近接センサ22を交換するコストを発生させる必要なく、シェル間距離112の測定値を用いて正確な先端クリアランスデータを依然として収集することができる。必要に応じて、高温ガス通路内の近接センサ22は定期的に交換又は再始動させ、システムの精度が高く維持されるように相関関係データを更新することができる。ブロック304で構築された相関関係はまた、他のタービンエンジンの作動にも適用することができる。より精度を高めるために、これらのタービンは類似の設計を有するべきである。より精度を高めるために、これらのタービンは実質的に同一の設計を有するべきである。
【0059】
図7及び8に関して検討したプロセスを全体的に又は部分的に組合せて、制御システムが各々の部品を有する組合せシステムを作動させるようにすることができる点は理解されるであろう。このようにして、システムは、1)特定の動作パラメータ及び測定されたシェル間距離112を算出する従来のモデル及びプログラムと、2)類似の又は同一のエンジンに関して構築された先端クリアランス108とシェル間距離の間の相関データとに基づいて作動中に先端クリアランス108を算出することができる。
【0060】
当業者であれば理解されるように、幾つかの例示的な実施形態に関して上述された多くの様々な特徴及び構成は、本発明の他の実施可能な実施形態を形成するよう更に選択的に適用することができる。簡潔にするため及び当業者の能力を考慮して、各々の可能な繰り返しは本明細書で詳細には述べていないが、添付の複数の請求項によって包含される全ての組合せ及び可能な実施形態は、本願の一部をなす。加えて、本発明の複数の例示的な実施形態の上記の説明から、当業者であれば改善、変更及び修正が理解されるであろう。当技術分野の範囲内にあるこのような改善、変更及び修正はまた、添付の請求項によって保護される。更に、上記のことは、本願の好ましい実施形態にのみに関連しているが、添付の請求項及びその均等物によって定められる本願の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更及び修正を本明細書において行うことができる点を理解されたい。
【符号の説明】
【0061】
10 ガスタービンエンジン
11 圧縮機
12 タービン
13 燃焼器
14 圧縮機ロータブレード
15 圧縮機ステータブレード
16 タービンロータブレード
17 タービンステータブレード
20 従来の先端クリアランスシステム
22 近接センサ
100 先端クリアランスシステム
102 内側タービンシェル
103 外側タービンシェル
104 ブレード先端高さ
105 タービン軸線
106 ブレード先端
107 ホイールホイール
108 先端クリアランス
109 周囲の静止構造体
110 内側シェル厚み
111,111 ターゲット面
112 シェル間距離
120 近接センサ
124 温度センサ
125 制御システム