(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設定手段は、連写中、前記追尾手段で行われた追尾結果の信頼度が高いと前記判定手段により判定されていない場合には、前記測光センサで撮像された画像に基づいて必要な露光量を算出し、該露光量を得るための露出制御値を、前記次の駒を撮像するための露出制御値として設定することを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
●(カメラ100の構成)
まず、本発明の実施形態にかかる撮像装置の一例としてのデジタル一眼レフカメラ(以下、単にカメラという)100の構成例を、主に光学系についての構成を示す
図1と、制御に関わる構成を示す
図2とを参照して説明する。
【0015】
カメラ100は、本体110と撮像レンズ105から構成される。
撮像レンズ105は、被写界光を撮像素子の一例としてのCCD106上に結像させる。本実施形態において、CCD106は約1000万(3888×2592)の有効画素を有するものとする。
【0016】
なお、
図1においては、撮像レンズ105が有するレンズを便宜的に1枚のレンズ105aとして表現している。しかし、実際にはフォーカスレンズを含む複数のレンズを有しており、レンズ駆動部131によってフォーカスレンズを光軸に沿って前後に移動させることにより、撮像レンズ105の焦点位置を調整することが可能である。
【0017】
焦点検出板(以下、ピント板という)128は、主ミラー126で反射される光軸上で、CCD106の結像面と等価の位置に配置され、
図1に示すミラーダウン状態において、被写界像は主ミラー126で反射されてピント板128に1次結像する。
【0018】
ユーザはピント板128に結像された被写界像を、ペンタプリズム127、接眼レンズ121を通じて見ることができる。ピント板128、ペンタプリズム127、及び接眼レンズ121はいわゆるTTL方式の光学ファインダを構成する。
【0019】
また、ピント板128近傍に配置されたファインダ視野枠123によって被写体光束の周辺部を遮光することによって、CCD106にて撮像される領域を光学ファインダを通じてユーザに視認させる。パラメータ表示部115は、導光プリズム、ペンタプリズム127、接眼レンズ121を介して、絞り値やシャッタ速度など、カメラ100の各種撮像情報を光学ファインダ内でユーザが視認可能にする。
【0020】
ピント板128の近傍に配置された焦点検出領域表示部112は、例えば高分子分散液晶(PN液晶)パネルからなり、前述した焦点検出動作の状態表示や焦点検出領域の表示を、被写界像とともに光学ファインダ内で視認可能にする。
【0021】
主ミラー126は半透過ミラーであり、透過した一部の光束はサブミラー122を通じて焦点検出制御部119に導かれる。焦点検出制御部119は焦点検出用の一対のラインCCDセンサを有し、ラインCCDセンサの出力の位相差(デフォーカス量)を算出する。焦点検出制御部119はまた、ラインCCDセンサの蓄積時間とAGC(オートゲインコントロール)の制御も行う。
【0022】
CPU(中央演算処理装置)101は、焦点検出制御部119が検出したデフォーカス量に基づいて焦点位置を算出し、撮像レンズ105のレンズ駆動部131を通じてフォーカスレンズを駆動する。このように、本実施形態のカメラ100は、位相差検出方式の自動焦点検出(オートフォーカシング)が可能である。
【0023】
本実施形態のカメラ100は、自動焦点検出のモードとして、静止している被写体の撮像に適したワンショットAFと、動いている被写体に適しているAIサーボAF(コンティニュアスAF)を有している。ワンショットAFは、ユーザが任意に選択した焦点検出領域、もしくはカメラ100が自動選択した焦点検出領域において自動焦点検出を行い、焦点位置にフォーカスレンズを移動させて、フォーカスレンズの駆動を停止する。一方、AIサーボAFは、焦点位置にフォーカスレンズを移動させた後も、焦点検出領域を拡大(使用する焦点検出領域の数を増加)して主被写体の動きを検出する。そして、動きが検出された場合には、他の焦点検出領域で検出されたデフォーカス量に従ってフォーカスレンズを駆動することを継続して実行する。
【0024】
ワンショットAFとAIサーボAFは、通常、ユーザが選択可能であるが、本実施形態においては、動きのある主被写体を想定しているため、AIサーボAFが選択されているものとする。また、本明細書では、後述する、被写体追尾動作の情報を用いるAIサーボAFを第1の自動焦点検出動作、被写体追尾動作の情報を用いない従前のAIサーボAFを第2の自動焦点検出動作と呼ぶ。
【0025】
測光光学系を構成する測光用光学素子(以下、測光レンズという)129および測光用受光素子(以下、測光センサという)130について説明する。測光レンズ129は、ピント板128に結像された被写界像を測光センサ130に2次結像させる。本実施形態では測光レンズ129は2枚のレンズ129a,129bで構成され、レンズ129aはペンタプリズム127から出射する光束を上方に光路変換し、測光レンズ129bが測光センサ130に被写界像を2次結像する。
【0026】
測光センサ130は例えば画素ピッチが約6μmの横640×縦480画素のCCDであり、ベイヤーもしくはストライプ配列にR、G、Bの3色のカラーフィルターが画素上に配置されている。測光センサ130の出力するアナログ信号をCPU101によってA/D変換し、例えば8ビットデジタル信号に変換した後、RGB→YUV変換処理することにより、被写界の輝度情報及び色情報を取得することができる。
【0027】
一方、測光レンズ129の結像倍率は例えば0.15倍であり、測光レンズ129によって、測光センサ130は
図3に示すようにファインダ視野枠123より少し内側の測光領域134の光束を受光する。測光センサ130は、測光領域134を横20個×縦20個の領域に分割し、各領域に含まれる画素(32×24画素)の出力値から領域毎の輝度値を算出する。CPU101は、測光領域134内の輝度値の和や平均値を求め、装着されているピント板128の拡散特性に応じた輝度値の補正を行う。また、CPU101は、撮像レンズ105の明るさを示すFno.(実行Fno.)の値の補正も行う。
【0028】
CPU101は、測光領域134内の各領域の輝度値から、主被写体が適正な露出となるよう、主被写体に対応する焦点検出領域(例えば
図3の焦点検出領域112a)を中心とした所定の重みづけ演算により露光量を算出する。そして、CPU101は、露出制御値として、撮像レンズ105内の開口絞り(不図示)の制御値、フォーカルプレーンシャッタ133のシャッタ速度制御値、及び撮像感度(CCD出力信号に対してCCD制御部107で適用するゲインの値)を設定する。
【0029】
本実施形態においては、
図3に示すように、撮像範囲の中央、上下左右に19点の焦点検出領域が配置され、その位置は、表示制御部111の制御に従って焦点検出領域表示部112が表示する。なお、例えば19点のうち1つの焦点検出領域が選択されていれば、表示制御部111は焦点検出領域表示部112に選択されている焦点検出領域(例えば焦点検出領域112a)のみを表示させ、他の18点の焦点検出領域は非表示とする。これにより、ユーザは選択した焦点検出領域112aのみを視認する。
【0030】
なお、本実施形態のように焦点検出領域が複数ある場合には、ユーザが任意の焦点検出領域を選択する任意選択と、複数の焦点検出領域の各々で焦点状態を検出し、各焦点検出領域の焦点状態の検出結果からカメラが焦点検出領域を選択する自動選択とが可能である。
【0031】
CPU101は、不揮発性メモリであるEEPROM101aを有し、ROM(リードオンリーメモリ)102が記憶している制御プログラムをRAM(ランダムアクセスメモリ)103に展開して実行し、本実施形態で説明するカメラ100の動作を制御する。
【0032】
CPU101には、データ格納部104、画像処理部108、表示制御部111、レリーズSW114、電池116から電源を供給するためのDC/DCコンバータ117、測光センサ130、フォーカルプレーンシャッタ133が各々接続されている。
【0033】
電池116は2次電池あるいは1次電池である。また、DC/DCコンバータ117は、電池116からの電源供給を受け、昇圧、レギュレーションを行うことにより複数の電源を作り出し、CPU101を初めとする各ブロックに必要な電圧の電源を供給する。DC/DCコンバータ117はCPU101からの制御信号により、各々の電圧供給の開始、停止を制御可能である。
【0034】
例えば、CPU101は、画像処理部108から出力された撮像画像データを読み込み、RAM103へ転送したり、RAM103より表示制御部111へ表示用の画像データを転送したりする。また、CPU101は画像データを例えばJPEG形式で符号化し、画像ファイルとしてデータ格納部104へ記録したり、CCD106、CCD制御部107、画像処理部108、表示制御部111等にデータ取り込み画素数や画像処理内容等を設定したりする。CPU101は、測光センサ130の蓄積時間やゲインの制御も行う。
【0035】
また、レリーズSW114の操作に伴う撮像動作の指示も、CPU101が行う。
レリーズSW114は、押込量によって第一段階(半押し)と第二段階(全押し)の検知が可能である。以下、レリーズSW114の第一段階をSW1、第二段階をSW2と呼ぶ。レリーズSW114をユーザがSW1まで押し込むと、CPU101が撮像準備動作指示の入力と認識し、焦点検出動作と露出制御動作を開始して、撮像レンズ105の焦点調節と露出制御値の設定を行う。レリーズSW114がSW2まで押し込まれると、CPU101は本撮像指示の入力と認識し、本撮像(記録用撮像)動作を開始する。CPU101は主ミラー126をアップさせて撮像レンズ105からの光束がCCD106に到達するようにし、設定された露出制御値に従って撮像レンズ105の絞り値とフォーカルプレーンシャッタ133のシャッタ速度を制御し、CCD106を露光する。
【0036】
CCD106は撮像レンズ105によって結像された被写体像を光電変換し、アナログ電気信号を出力する。CCD106は、CPU101よりの解像度設定に従って、水平方向および垂直方向に画素数を間引いた出力が可能である。CCD制御部107は、CCD106に転送クロック信号やシャッタ信号を供給するためのタイミングジェネレータ、CPU101よりの解像度設定に従った、画素間引き処理を行うための回路等を含んでいる。CCD制御部107は、露光が終了するとCCD106からアナログ電気信号の読み出し、アナログ電気信号に対してノイズ除去、ゲイン処理を行う。また、CCD制御部107は、アナログ電気信号を10ビットデジタル信号(画像データ)に変換して、画像処理部108に出力する。
【0037】
画像処理部108は、CCD制御部107より出力された画像データに、色補間処理、ガンマ変換、色空間(RGB→YUV)変換、ホワイトバランス処理、フラッシュ補正等の画像処理を行い、YUV(4:2:2)形式の8ビット画像データを出力する。
【0038】
CPU101は、この画像データをRAM103に転送する。RAM103は、画像処理部108よりCPU101が転送してきた画像データや、データ格納部104から読み出されたJPEG画像データを一時的に格納するためのテンポラリバッファとして使用される。また、RAM103は、画像データの符号化および復号処理のためのワークエリアや各種プログラムのためのワークエリアなどとしても用いられる。
【0039】
CPU101は、RAM103に転送した画像データをJPEG形式で符号化し、所定の情報を有するヘッダ付加した画像ファイルを生成してデータ格納部104に格納する。データ格納部104には例えば半導体メモリカードのような着脱可能な記録媒体が装着されており、画像ファイルは記録媒体に格納される。
【0040】
一方、表示制御部111は、RAM103に転送された画像データを、表示用の解像度に変換(間引き)して、YUV→RGB変換して例えばカラー液晶表示装置である外部表示部113に出力する。
【0041】
データ格納部104に格納されている画像ファイルを再生する場合には、CPU101が画像ファイルを復号してRAM103に転送した画像データに対して表示制御部111が同様の処理を行って外部表示部113に出力する。
【0042】
●(被写体追尾動作)
次に、本実施形態のカメラ100における被写体追尾動作について説明する。カメラ100は、自動露出制御に用いられる測光センサ130の出力から主被写体の領域(被写体領域)を設定し、被写体領域の移動先を探索することで、被写体追尾を行う。
【0043】
このように、測光センサ130の出力を用いて被写体追尾を行うため、撮像範囲全体ではなく、
図3に示した測光領域134が被写体追尾範囲となる。なお、測光時には測光センサ130を横32画素×縦24画素の領域単位で扱ったが、被写体追尾動作時は被写体を細かく認識させるため、画素単位(横640×縦480画素)で取り扱う。つまり、測光センサ130を、約30万画素の画像センサとして用いる。また、測光センサ130で異なる時刻に撮像された複数の画像間の相関に基づいて被写体追尾を行うため、測光センサ130での撮像間隔はある程度短く設定する。例えば、測光センサ130では、連写中、個々の記録用画像を撮像するための露出制御値の算出するタイミングの前に1フレームの画像を取得する。また、レリーズSW114がSW1まで押し込まれてから、SW2まで押し込まれるまでの間、連続的に画像フレームを取得してもよい。
【0044】
被写体追尾を行う場合、まず、CPU101は、測光センサ130から取得した縦640×横480画素のアナログ電気信号を読み出し、A/D変換、ガンマ変換、色変換等を行い、輝度信号と色信号を抽出する。そして、CPU101は、測光領域134内の、選択された焦点検出領域112aを中心とした、例えば横30×縦30画素の部分領域を追尾対象枠135として設定する。そして、CPU101が、追尾対象枠135に対応する画素の輝度信号に基づく輝度情報及び色信号に基づく色情報を、その後撮像された画像内で被写体領域を探索するための画像パターンとして例えばRAM103に保存する。
【0045】
そして、CPU101は、その後に測光センサ130で撮像された画像の中で、保存された画像パターンと輝度情報と色情報の相関値が最も高くなる部分領域(被写体領域)を探索し、探索された被写体領域の相関値と位置情報をRAM103に保存する。追尾対象枠135と探索された被写体領域の位置情報とから、主被写体を追尾することができる。また、探索された被写体領域(追尾対象枠135を含む)の位置情報の変化から、主被写体が動いたか否か判定可能である。
【0046】
本実施形態では、追尾対象枠135を、探索された部分領域で順次更新するものとする。あるいは、過去の所定期間内に測光センサ130で撮像した複数フレームで検出した相関値が最も高い部分領域の相関値と位置情報を例えばRAM103に保存しておき、追尾動作の信頼性が低くなった場合に補助情報として用いても良い。
【0047】
被写体追尾動作によって得られた主被写体の位置情報に基づいて、焦点調節を行う焦点検出領域を複数の焦点検出領域の中から自動的に選択することで、移動した後の主被写体に対して的確に焦点調節を行うことが可能となる。同様に、露出演算の重みづけにおいて重みを大きくする範囲を被写体領域に追従させ続ける事で、移動後の主被写体に対して最適な露出条件を算出することができる。
【0048】
次に、被写体追尾結果の信頼度算出について説明する。前述したように、本実施形態における被写体追尾は、追尾対象枠135に対応する部分領域と相関値が最も高い部分領域を被写体領域と見なして新たな追尾対象枠とする動作を繰り返すものである。このような被写体追尾動作において被写体領域として検出した部分領域の相関値と、あらかじめ定められた閾値との比較を基に、被写体追尾結果の信頼度を判定する。
【0049】
例えば輝度情報と色情報とにそれぞれ相関値の閾値を設定し、検出された被写体領域の相関値が閾値以上(信頼度高)か否かに応じて、被写体追尾結果の信頼度を決定することができる。
図4に、輝度情報と色情報の相関値が閾値以上か否かの組合せと、被写体追尾結果の信頼度との関係の例を示す。すなわち、輝度情報と色情報の両方について相関値が閾値以上であれば被写体追尾結果の信頼度が「高」、いずれも閾値未満であれば信頼度「低」、一方が閾値以上であれば信頼度「中」とする。なお、
図4の例では、信頼度を「高」、「中」、「低」の3段階で判定する例を示しているが、2つ以上の閾値を設けてより細かく信頼度を判定してもよい。また、信頼度「中」を、輝度情報の相関値だけが閾値以上の場合(「中1」)と、色情報の相関値だけが閾値以上の場合(「中2」)とに分けてもよい。なお、本実施形態において被写体追尾に用いる相関値の算出方法に特に制限はなく、画像間の類似度の指標として利用可能な任意の相関値を用いることができる。
後述するように、本実施形態では、被写体追尾結果の信頼度に応じて、露出制御値の演算を改めて行うかどうかの判定と、焦点検出領域の選択とを行う。
【0050】
次に、
図5〜
図8を参照して、被写体追尾動作と露出制御動作、焦点検出領域の選択動作についてさらに説明する。
図5(a)に、右端の焦点検出領域112aで主被写体に撮像レンズ105の焦点調節動作が行われた状態を模式的に示す。また、
図5(b)は
図5(a)の時の測光(かつ被写体追尾)領域134の輝度信号を20×20分割した時の輝度分布を模式的に示す図である。CPU101は、
図5(b)の露出演算重みづけ範囲内の輝度情報から露光量を決定し、対応する露出制御値(撮像レンズ105の絞り値とフォーカルプレーンシャッタ133のシャッタ速度、撮像感度)を決定する。決定した露出制御値は、表示制御部111を通じてパラメータ表示部115に表示され、ファインダ内で視認することができる。
【0051】
さらにCPU101は焦点検出領域112aを中心とした所定の大きさ(ここでは横30×縦30画素とする)の部分領域を追尾対象枠135として設定する(
図5(a))。
図5(a)の状態から、カメラ100は移動せず、主被写体が被写界内で左に移動した場合の、焦点検出領域と追尾対象枠の変化を、
図6(a)、
図7(a)、
図8(a)に示す。また、対応する輝度分布と露出演算重みづけ範囲を、
図6(b)、
図7(b)、
図8(b)にそれぞれ示す。
【0052】
図5(a)でピントを合わせた主被写体が
図6(a)のように動くと、CPU101は測光センサ130で得られた測光領域134の画像から、
図5(a)の追尾対象枠135内の輝度情報と色情報と相関値が最大となる部分領域を探し出す。
図6(a)では被写体追尾結果の信頼度が高いと判定されたものとする。この場合、被写体領域内の焦点検出領域112bが焦点調節に用いる焦点検出領域として選択され、表示される。
【0053】
また、CPU101は、
図6(b)に示すように、露出演算重みづけ範囲も変更後の焦点検出領域に追従して移動させるとともに、検出された被写体領域を新たな追尾対象枠135として設定する。
【0054】
続く、
図7(a)、
図8(a)でも同様に被写体追尾結果の信頼度が高いと判断されたものとする。しかしながら、
図7(b)、
図8(b)のように背景の山(低輝度部)が露出演算重みづけ範囲に多く入るようになった場合、主被写体の輝度が変化していないにも関わらず、算出される被写界輝度が低下する。従来は、このような場合、露出制御値が変化し、
図7(a)、
図8(a)のシーンを撮像して得られる画像の明るさが、特に
図5(a)のシーンを撮像して得られる画像の明るさよりも明るくなってしまっていた。本実施形態では、このような従来の問題を以下のようにして軽減もしくは解決する。
【0055】
●(撮像動作)
図9及び
図10に示すフローチャートを用いて、本実施形態のカメラ100における撮像動作について説明する。なお、カメラ100の電源がオンされ、撮像スタンバイ状態にあるものとする。また、連写モードが設定されており、レリーズSW114がSW2まで押し込まれた状態が保持されている間は連続して静止画撮像を行う。
【0056】
S201において、CPU101は、レリーズSW114がSW1まで押し込まれる(SW1がオンする)まで待機する。SW1まで押し込まれたことが検出されると、CPU101は、S202において焦点検出制御部119とレンズ駆動部131を用いた位相差検出方式の自動焦点検出を行い、撮像レンズ105を合焦位置に駆動する。
【0057】
S203でCPU101は測光センサ130から読み出した測光領域134の画像から、輝度情報と色情報を算出してRAM103に保存する。
【0058】
S204においてCPU101は、S203で保存した輝度情報を、測光領域134を20×20に分割した領域ごとに処理し、選択されている焦点検出領域112aに重みづけを行う等、所定のアルゴリズムに従って被写界輝度を算出し、露光量を決定する。そして、CPU101は、決定した露光量を得るための露出制御値を、例えば予め記憶されているプログラム線図に従って設定する。露出制御値は、撮像レンズ105の絞り値、フォーカルプレーンシャッタ133のシャッタ速度、撮像感度(CCD制御部107におけるゲイン)である。
【0059】
S205でCPU101は、S203で保存した輝度情報、色情報の中から、選択されている焦点検出領域を中心とする横30×縦30画素分の情報を追尾対象枠135の輝度情報、色情報として、別途RAM103に保存する。
【0060】
S206においてCPU101は、レリーズSW114がSW2まで押し込まれた(SW2がオンとなった)か否かを判定する。S206において、レリーズSW114がSW2まで押し込まれたと判定すると、CPU101はS207において、設定した露出制御値に基づく撮像動作を実行する。S207を最初に実行するときは、連写の1駒目の撮像となる。
【0061】
S207における撮像動作においてCPU101は、まず不図示のモータ制御部を介してモータに通電して主ミラー126をアップさせ、レンズ駆動部131を介して撮像レンズ105の絞りの開口を設定値に駆動する。その後CPU101は、フォーカルプレーンシャッタ133の先幕を開放することで被写界像によるCCD106の露光を開始する。所定のシャッタ秒時経過後、CPU101はフォーカルプレーンシャッタ133の後幕を閉じ、CCD106の露光を終了する。次にCPU101は、主ミラー126のダウン、シャッタチャージを行い、一連のシャッタレリーズシーケンスの動作(撮像動作)を終了する。このような動作によって、CCD106の各画素には被写界像に対応した電荷が蓄積される。
【0062】
S207における撮像動作によってCCD106に蓄積された電荷は、電気信号としてCCD制御部107に読み出され、画像処理部108による処理を経て画像データに変換され、CPU101によってRAM103に転送される。
【0063】
次にS208においてCPU101は、RAM103に転送した、CCD106で撮像した被写界像を表す画像データをJPEG方式で符号化し、ヘッダ情報を付加して画像ファイルの形式でデータ格納部104に格納(記録)する。
【0064】
S208で画像データを記録した後、S209においてCPU101は、レリーズSW114がSW2まで押し込まれたまま保持されているか(連写が継続しているか)判定する。CPU101は、レリーズSW114がSW2まで押し込まれたまま保持されていなければ処理をS201に戻し、押し込まれたまま保持されていれば処理をS211(
図10)に移行させる。
【0065】
S211でCPU101は、S203と同様に測光センサ130から読み出した測光領域134の画像から、輝度情報と色情報を算出してRAM103に保存する。S212でCPU101は、S211でRAM103に保存した最新の画像の輝度情報と色情報と、S205で保存した追尾対象枠内の輝度情報及び色情報とを用い、最新の画像のうち、追尾対象枠の輝度情報と色情報と相関値が最大となる部分領域を探索する。
【0066】
S213でCPU101は、探索された、相関値が最大となる部分領域(被写体領域)の相関値と位置情報をRAM103に保存する。また、CPU101は、被写体領域について算出した輝度情報の相関値と色情報の相関値を、予め設定されているそれぞれの閾値と比較し、被写体追尾結果の信頼度を輝度情報、色情報の相関値が閾値以上か否かの組合せから被写体追尾の信頼度を判定する。ここでは、
図4を参照して説明したようにして、追尾結果の信頼度を「高」、「中」、「低」の3段階で判定する。
【0067】
S214でCPU101は、判定した被写体追尾結果の信頼度が「低」でないか否か判定し、信頼度が「高」もしくは「中」の場合はS215に、「低」の場合はS223にそれぞれ処理を進める。
【0068】
まず、信頼度が「高」と「中」場合の説明を行う。S215においてCPU101は、S213で得られた主被写体の位置情報と前の駒の位置情報(追尾検出枠の位置情報)を比較し、主被写体に動きがあったか否かを判定する。CPU101は位置情報に所定画素数以上の変化があれば主被写体に動きがあったと判定し、現在の駒で検出された被写体領域の位置に対応した焦点検出領域を選択する。なお、移動先の被写体領域に複数の焦点検出領域が含まれる場合、被写体領域を分割し、追尾検出枠の対応する領域との相関度が最も高い領域に対応する焦点検出領域を選択してもよい。あるいは、主被写体が人物の顔である場合には、公知の顔認識技術を用い、人物の目に近い焦点検出領域を選択するようにしてもよい。
【0069】
S215で主被写体に動きがないと判定された場合、CPU101はS217において追尾結果の信頼度が「高」かどうか判定する。S217で信頼度が「高」である場合、主被写体に動きがなく、さらには主被写体輝度に変化がないと判定できる。そのため、CPU101はこの場合、自動焦点検出及び自動露出御制をやり直す必要がないと判定する。S220でCPU101は、S204においてRAM103に保存した前の駒の露出制御値を読み出し、次の駒の撮像で用いる露出制御値に設定する。これにより、露出制御値の演算時間を省略可能となる。
【0070】
一方、S217において、被写体追尾動作の信頼度が「中」の場合、主被写体の輝度情報または色情報の相関値が閾値未満のため、主被写体の輝度または色が変化したことが想定される。そこで、S219でCPU101は、S204と同様にして露出制御値を再度演算する。
【0071】
また、S215において、主被写体に動きがあったと判定された場合、S216でCPU101は、第1の自動焦点検出動作を実行する。すなわち、CPU101は、被写体追尾結果で得られた被写体領域に対応する焦点検出領域を選択して自動焦点検出を実行する。そして、S220において上述したように前の駒の露出制御値をRAM103から読み出し、次の駒の撮像で用いる露出制御値として設定する。
【0072】
このように、本実施形態では、被写体追尾結果の信頼度が「高」、すなわち主被写体の移動先が正しく検出されており、かつ主被写体の輝度が変化していないと考えられる場合は、前の駒の露出制御値を引き続き用い、露出制御値の演算を省略する。また、被写体追尾結果の信頼度が「中」、すなわち主被写体の輝度や色に変化があるか、検出された被写体領域の位置情報の確実性がやや劣ると考えられる場合は次の駒の撮像で用いる露出制御値を新たに演算する。
【0073】
S214に戻り、被写体追尾結果の信頼度が「低」と判定された場合、すなわち、被写体追尾結果を利用すべきでないと考えられる場合、S223でCPU101は、第2の自動焦点検出動作(従前のAIサーボAF)を行う。つまり、CPU101は、選択されていた焦点検出領域と他の焦点検出領域の信号から焦点調節動作を行う。さらに、S224においてCPU101は、S204と同様に露出制御値を演算する。
【0074】
このようにして、被写体追尾結果の信頼度に応じた焦点検出と露出制御値の設定が終了すると、S221でCPU101は、次の駒の撮像動作を実行して、処理をS208(
図9)に戻す。以後、レリーズSW114がSW2まで押し込まれ続けているか、連写枚数の上限値に達するまで、前述した動作を繰り返し行う。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、被写体追尾機能を有する撮像装置における連写時に、主被写体の輝度変化がないと判定される場合には、前の駒の撮像で用いた露出制御値を次の駒の撮像で用いる。そのため、露出制御値の演算時間を効率的に省略することができる上、連写中に主被写体の背景に大きな輝度変化が生じた場合などでも、連写で得られる画像間の露出ばらつきを効果的に抑制することが可能となる。
【0076】
また、被写体追尾を測光センサで取得した画像に基づいて行うことで、記録用画像の撮像に用いる撮像素子を被写体追尾用画像の撮像に用いる必要がない。また、測光センサに用いる撮像素子は記録用画像の撮像に用いる撮像素子よりも画素数が少ないため、被写体追尾に必要な処理量も少なくてよい。
【0077】
なお、露出制御値の演算や焦点検出処理を省略できる場合には、省略に伴って節約できる時間を、連写の撮像レートの増加や、他の処理に用いるようにしてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、
図10において、被写体追尾結果の信頼度が高い場合は露出制御値を前の駒から引き継ぐこととしたが、被写体追尾結果の信頼度が高い場合でも、再度露出演算を行うようにしてもよい。例えば、背景輝度が所定値(例えば3段)以上変化した場合など、背景の黒つぶれや白とびが懸念される場合には露出演算を再度行った方がよい場合も考えられる。そこで、
図11に示すように、S217で信頼度が高いと判定した場合にS227に進み、被写界輝度の変化が所定の閾値以上か否かを判定する。具体的には、CPU101がS203で保存した輝度情報に基づく被写界輝度とS211で保存した輝度情報に基づく被写界輝度とを比較し、被写界の輝度変化が閾値以上か否かを判定する。そして、閾値以上であればS219に進み露出制御値を再度演算するようにすればよい。このようにすることで、背景の黒つぶれや白とびを優先的に防止することができる。
【0079】
また、S205で保存した追尾対象枠を1駒目の撮像処理後に更新するようにしてもよい。
図12は、1駒目の撮像処理前に設定した追尾対象枠と各撮影駒における被写体領域との相関値を示しており、
図12(a)は色情報の相関値、
図12(b)は輝度情報の相関値を示している。例えば、
図12に示すように相関値が変化する連写撮影時では、2〜5駒目までのように輝度信号と色信号の相関値がともに高い、すなわち被写体追尾結果の信頼度が高い駒は1駒目と同じ露出制御値で制御される。
【0080】
続く5駒目から6駒目にかけては色情報は大きく変化していないが輝度信号が大きく変化しており、例えば主被写体が日向から日陰に入った場合などが考えられる。
そのため、6駒目以降は1駒目の撮像処理前に設定した追尾対象枠との相関値から判断すると、毎駒露出制御値を再演算することになる。そこで、5駒目から6駒目のように少なくとも色情報及び輝度情報の一方の相関値がある閾値よりも低くなった場合、そのときの被写体領域を追尾対象枠として再設定する。そうすることで、続く7駒目、8駒目は6駒目で再設定した追尾対象枠との相関値を算出することになり、相関値が高く6駒目で算出した露出制御値をそのまま引き継ぐことができる。このように、連写中に始めに追尾対象枠を設定したときと被写界の状況が変化した場合などに追尾対象枠を再設定することで、露出制御値の演算を省略できる機会を増やすことができる。
【0081】
なお、追尾対象枠の更新については、5駒目から6駒目のように相関値が低くなった時点で再設定してもよいし、相関値が低い駒が2駒続いたら再設定してもよい。また、上記の追尾対象枠を再設定する条件を、被写体追尾結果の信頼度が「中」または「低」となったことにしてもよい。
【0082】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。