【実施例1】
【0015】
図1は、本実施例に示す画像形成装置の構成図である。
図1に示す画像形成装置は、エンジン10とコントローラ11からなる。エンジン10は、中間転写ベルト101に沿って、中間転写ベルト101回転方向R1の上流から、CMYK各色の画像形成部100a、100b、100c、100d、濃度センサ120、二次転写装置102、中間転写ベルトクリーニング装置104を有する。また、二次転写装置102の下流側には、定着装置103が配置されている。
【0016】
シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y),ブラック(K)各色の画像形成部100a、100b、100c、100dは、同様の処理を行う。画像形成部100aは、感光体ドラム1001a、帯電装置1002a、露光装置1003a、現像装置1004a、一次転写装置1005a、クリーニング装置1006a、回転位相取得部121aを有する。画像形成部100b、100c、100dについても同様である。
【0017】
以下に、画像形成装置の動作を詳細に説明する。
【0018】
まず、画像形成装置が行う画像形成処理について説明する。
【0019】
画像形成部100a、100b、100c、100dは、各色トナーを使用してそれぞれの感光体上にトナー像を形成し、中間転写ベルト101に順次一次転写する。画像形成装置で用いられるトナーは一般に、CMYKの4色である。本実施例では、画像形成部100aはCトナー、画像形成部100bはMトナー、画像形成部100cはYトナー、画像形成部100dはKトナーを使用する。なお、画像形成部及び使用する色は4種類に限らない。例えば、淡トナーやクリアトナーがあってもよい。また、各色の画像形成部の順番も本実施例に限定されるものではなく、任意でよい。
【0020】
トナー像形成は、画像形成部100a、100b、100c、100dの順に一定時間ずつタイミングをずらし、並行して実施される。
【0021】
まず、画像形成部100aが有する感光体ドラム1001aは、外周面に帯電極性が負極性である有機光導電体層を有し、矢印R3方向に回転する。
【0022】
(帯電)
帯電装置1002aは、負極性の電圧を印加され、感光体ドラム1001aの表面に帯電粒子を照射することにより、感光体ドラム1001aの表面を一様な負極性の電位に帯電する。帯電された感光体ドラム1001aは、矢印R3方向に回転する。
【0023】
(露光)
露光装置1003aは、コントローラから取得する制御信号にもとづいてレーザ光を駆動し、感光体ドラム1001a上にレーザ光を走査する。これにより、帯電した感光体ドラム1001aの表面に静電潜像を形成する。
【0024】
(現像)
現像装置1004aは、略等速度で回転する現像ローラーを用いて、負極性に帯電させたトナーを感光体ドラム1001aへ供給する。これにより、感光体ドラム1001a上の静電潜像にトナーを付着させ、静電潜像を反転現像する。
【0025】
(一次転写)
一次転写装置1005aは、正極性の電荷を印加された転写ローラーを用いて、負極性に帯電している感光体ドラム1001a上に担持されたトナー像を中間転写ベルト101へ一次転写する。
【0026】
(クリーニング)
クリーニング装置1006aは、一次転写装置1005aを通過した感光体ドラム1001a上に残留した残トナー像を除去する。
【0027】
ここまでは、Cの画像形成部100aをについて説明したが、画像形成部100b、100c、100dについても同様である。カラー画像を形成する場合、これまでの帯電、露光、現像、一時転写、クリーニングの各工程は、各色の画像形成部100a、100b、100c、100dにおいて順次進められる。その結果、中間手転写ベルト上には、4色のトナー像が重なった画像が形成される。
【0028】
(二次転写)
二次転写装置102は、中間転写ベルト101に担持されたトナー像を、矢印R2方向に移動する記録媒体Pへ二次転写する。
【0029】
(定着)
定着装置103は、トナー像を二次転写された記録媒体Pに加圧加熱などの処理を施し、画像を定着させる。
【0030】
(ベルトクリーニング)
中間転写ベルトクリーニング装置104は、二次転写装置102を通過した中間転写ベルト101上に残留した残トナーを除去する。
【0031】
以上、画像形成処理について説明した。
【0032】
以上のような電子写真方式を用いて画像を形成する画像形成装置では、各種の原因によってバンディングが発生する。以下に、露光時、現像時、一次転写時に発生するバンディングについてそれぞれの例を示す。なお、各画像形成部と各画像形成部が有する構成に付随する符号a、b、c、dは省略する。例えば、画像形成部100は、画像形成部100a、100b、100c、100dを示す。
【0033】
まず、露光時に発生するバンディングの要因として、感光体ドラム1001の回転速度の変動が挙げられる。感光体ドラムの回転速度が高いときは走査間隔が大きくなるため、単位面積当たりの露光量が少なくなる。従って、このとき形成された画像は、本来形成したい画像の濃度よりも薄くなる。また、感光体ドラムの回転速度が低いときは走査間隔が小さくなるため、単位面積当たりの露光量が多くなる。従って、このとき形成された画像は、本来形成したい画像の濃度よりも濃くなる。
【0034】
また現像時に発生するバンディングの原因として、現像ローラーの回転軸のずれと回転速度変動が挙げられる。現像処理において、現像装置1004が感光体ドラム1001との間で現像が行われる領域(接触現像の場合は現像ニップ、非接触現像の場合は現像ギャップ)へ供給するトナー量は、単位時間当たりに一定となることが望ましい。そのため一般に、現像ローラーは断面が真円の円柱であって、2つの底面の重心を通る直線を軸にして等速回転するように制御される。ところが、現像ローラーにおける各原因によってトナーの供給量が変動してしまうことがある。
図2は現像ローラーの回転軸のずれを示す模式図である。
図2(a)は現像ローラー表面と感光体表面が遠い状態を示し、
図2(b)は現像ローラー表面と感光体表面が近い状態を示す。現像ローラーの回転軸にずれがある場合、
図2(a)の状態と
図2(b)の状態とが、現像ローラーの回転周期に同期して交互に繰り返される。すると、現像領域に供給されるトナーの量は、前者では少なくなり、後者では多くなる。また、現像ローラーを駆動するモータの速度むらや、現像ローラーとモータを連結するギアの不良などによって現像ローラーの回転速度変動が生じることがある。この場合、現像領域に供給されるトナーの量は、現像ローラーの回転速度が高い時には多くなり、低い時には少なくなる。この様に現像ローラーの回転軸ずれや回転速度変動によって現像領域へのトナー供給量が変わることで、バンディングが生じてしまう。
【0035】
一次転写時に発生するバンディングの原因として、転写ローラーの回転軸のずれと転写ローラー表面の硬さの不均一性が挙げられる。転写処理において、転写ローラーの回転軸のずれがある場合、感光体ドラムと転写装置間の圧力が変わるため、転写されるトナー像のつぶれ方が変わってしまう。また、転写ローラーの表面の硬さが不均一であった場合も、感光体ドラムと転写装置の接触面積が変化し、転写されるトナー像のつぶれ方に変動が起こる。このように転写によるトナー像のつぶれ方が変動すると、意図しない画像の濃淡を発生させバンディングとなってしまう。
【0036】
以上、露光時、現像時、一時転写時に発生するバンディングについて例を示したが、これら以外にも周期性を持った変動が各所に存在し、バンディングの原因となる。
【0037】
本実施例では、感光体ドラム、現像ローラー、転写ローラー3つのモジュールが原因となって発生したバンディングに対してバンディング補正処理を行う。その際、入力画像データの階調によりバンディングの特性が異なるため、階調に応じた補正処理を行う。さらにバンディングの階調特性は、モジュールにより異なるため、モジュールに応じた補正処理を行う。
【0038】
以下に、バンディング補正処理について説明する。
図3(a)は、バンディング補正処理を行う構成を示したブロック図である。
【0039】
濃度センサ120は、画像形成部100a、100b、100c、100dを通過して中間転写ベルト101上に一次転写されたトナー像の濃度を検出する。検出した濃度は、バンディング波形算出部1101へ出力する。
【0040】
回転位相取得部121a、121b、121c、121dは、対象とする各モジュールの回転位相を取得する。ここで各モジュールは、感光体ドラム1001a、1001b、1001c、1001d、現像装置1004a、1004b、1004c、1004dそれぞれが有する現像ローラー、一次転写装置1005a、1005b、1005c、1005dそれぞれが有する転写ローラーである。回転位相取得部121は、各モジュールの回転位相をバンディング波形算出部1101とバンディング補正部112に出力する。
【0041】
バンディング波形算出部1101は、濃度センサ120が測定したパッチ画像の濃度信号と回転位相取得部121から取得する回転位相に基づいて、モジュールごとにバンディング波形を算出する。バンディング波形とは、対象のモジュールによって発生したバンディングの特性を示す波形である。バンディング波形算出部1101は、算出した各モジュールのバンディング波形を階調特性算出部1102へ出力する。
【0042】
階調特性算出部1102は、バンディング波形算出部1101から取得した各モジュールのバンディング波形に基づいて、複数階調に応じたバンディング波形を算出し、バンディング特性格納部1103へ出力する。
【0043】
バンディング特性格納部1103は階調特性算出部1102から取得するモジュールごとの複数階調におけるバンディング波形を受け取り、格納する。
【0044】
画像入力部111は、外部から入力画像データを受け取り、YMCK各色の色画像データを生成し、バンディング補正部112に出力する。
【0045】
バンディング補正部112は、回転位相取得部121から取得した各モジュールの回転位相に基づいて画像入力部111から取得した各色の色画像データを補正する。色画像データの補正には、バンディング特性格納部1103から取得したモジュールごとの複数階調に応じたバンディング波形を用いる。バンディング補正部112は、バンディング補正した各色の画像データ(以下、バンディング補正後画像データ)を階調補正部113に出力する。
【0046】
階調補正部113は、バンディング補正部112から各色のバンディング補正後画像データを受け取り、バンディング補正後画像データに対して画像形成装置に応じた階調補正を行う。階調補正部113は、各色の階調補正した画像データ(以下、階調補正後画像データ)をハーフトーン処理部114へ出力する。ここで階調補正とは、入力される画像データと画像形成装置から出力される画像濃度が線形な関係するための補正である。
【0047】
ハーフトーン処理部114は、階調補正部113から出力される各色の階調補正後画像データに対してハーフトーン処理を施し、画像形成装置113が出力可能なハーフトーン画像データを生成する。ハーフトーン処理部114は、生成したハーフトーン画像データを画像形成制御部115へ出力する。
【0048】
画像形成制御部115は、ハーフトーン処理部114から受け取ったハーフトーン画像データに基づいてエンジン10へ制御信号を出力し、画像形成処理を行う。
【0049】
以下に、バンディング補正処理について詳細に説明する。本実施例が行うバンディング補正処理は、バンディング特性算出処理と、補正画像データ生成処理の2つからなる。
【0050】
■バンディング特性算出処理
図4(a)は、バンディング特性算出処理のフローを示す図である。バンディング特性算出処理は、画像形成部100a、100b、100c、100dそれぞれが形成する各色の画像データに対して実施する。これまでと同様に、各構成に付随する符号a、b、c、dは省略する。例えば、画像形成部100は、画像形成部100a、100b、100c、100dを示す。
【0051】
ステップS401において、パッチ形成処理を行う。
【0052】
図5(a)は、パッチ形成および読み取りの模式図である。パッチ形成処理は、前述の画像形成処理と同様に画像形成部100が形成したトナー像を中間転写ベルト101へ一次転写することで実施される。形成されるパッチ画像は、予め設定された特定階調で均一に表された画像であり、副走査方向の長さは各モジュールの周期より充分に長くなるよう設計されている。ここでは、濃度0.6のパッチ画像を形成する。なお、主走査方向の長さに関しては、後述のステップS402で用いる濃度センサ120で検知するのに足りる長さであればよい。
【0053】
また、パッチ形成処理と並行して、回転位相取得部121は、パッチ形成開始時から各モジュールの回転位相phを取得し、バンディング波形算出部1101へ出力する。回転位相の取得は、各モジュールに設置したロータリーエンコーダを用いる方法や、特定の回転角で信号を出力するホームポジションセンサと駆動時間とから算出する方法などを用いる。
【0054】
ステップS402において、パッチ読み取り処理を行う。
【0055】
濃度センサ120は、ステップS401において中間転写ベルト101上に転写されたパッチ画像を微小間隔おきに測定し、濃度信号OD(y)を出力する。なお、yはパッチ画像上の測定位置を示す。
【0056】
ステップS403において、各モジュールのバンディング波形算出処理を行う。
【0057】
バンディング波形算出部1101は、濃度センサ120から取得した濃度信号OD(y)と回転位相取得部121から取得した各モジュールの回転位相phから、モジュールごとにバンディング波形ΔOD(ph)を算出する。
【0058】
図6(a)は、ステップS402において濃度センサ120がパッチを測定して得られる濃度信号OD(y)をグラフで示した図である。ここでは説明を簡易にするため、パッチの測定を開始した測定位置0mmと各モジュールの回転位相における0が対応しているとする。
図6(a)が示すグラフの縦軸は濃度信号ODを示し、横軸はパッチの測定位置yを示している。各測定位置において測定された濃度に変動があるものの、平均濃度は0.6である。ここで測定された濃度変動ΔODは、感光体ドラム、現像ローラー、転写ローラーそれぞれに起因する濃度変動ΔODが重畳した結果である。
【0059】
バンディング波形算出部1101は、
図6(a)が示す濃度信号OD(y)に基づいて、各モジュールに起因したバンディング波形を算出する。つまり、本実施例では3つのバンディング波形が得られる。バンディング波形の算出方法について、感光体ドラムに起因するバンディング波形を例に説明する。バンディング波形算出部1101はまず、感光体ドラムの回転周期である70mm毎に濃度信号OD(y)を切り出す。ここでは濃度センサ120により、350mm分のパッチ測定結果があるので、感光体ドラムの周期70mmで濃度信号OD(y)を切り出すと、5つの波形が得られる。そして、切り出された5つの濃度信号ODn(ph)(n=1,2,3,4,5)の平均化を行う。この際、パッチ測定位置0は、感光体ドラムの回転位相ph0と対応づけられており、回転位相phの0から2πの区間を切り出している。切り出した5つの波形を式(1)のように平均化し、濃度信号ODave(ph)を得る。
【0060】
【数1】
【0061】
図6(b)は、
図6(a)が示す濃度信号OD(y)を切り出して得られる5つの濃度信号ODn(ph)(n=1,2,3,4,5)と、5つの波形を平均化して得られる濃度信号ODave(ph)を示す。切り出された個々の濃度信号ODn(ph)は、感光体ドラムとは異なる周期をもつ他のモジュールによる影響を受けているため、それぞれ異なる波形をしている。そこで5つの波形を平均化することにより、他のモジュールによる影響を相殺し、感光体ドラムに起因する濃度変動とほぼ同じ波形を抽出することができる。なお、感光体ドラム5周期分の信号を平均化する例を示したが、パッチサイズおよび平均化に用いる信号数は、許容されるパッチサイズおよび所望のバンディング波形算出の精度を鑑みて設定すれば良い。
【0062】
さらにバンディング波形算出部1101は、濃度信号ODave(ph)の傾き補正処理を行う。濃度信号ODave(ph)の始点(位相が0)の値と終点(位相が2π、感光体ドラムの場合70mm)の値を結ぶ直線の傾きを求め、傾きが0になるように式(2)のように濃度信号ODave(ph)を補正し、濃度信号OD’(ph)を算出する。
【0063】
【数2】
【0064】
後述する補正画像形成処理では、バンディング波形を繰り返し繋げて用いるため、傾き補正処理を行い、バンディング波形の始点と終点の間に連続性を確保することが好ましい。
【0065】
式(2)さらに、バンディング波形算出部1101は、式(3)の通りに傾き補正した濃度信号OD’(ph)の平均濃度を0にし、パッチ測定した階調におけるバンディング波形ΔOD(ph)を算出する。
【0066】
【数3】
【0067】
ここで、mean(OD’(ph))は濃度信号OD’(ph)の平均濃度を表わす。以上の手順により、感光体ドラムに起因するバンディング波形を算出できる。
【0068】
バンディング波形算出部1101は、感光体ドラムに続き、現像ローラー、転写ローラーそれぞれに起因するバンディング波形を算出する。現像ローラーの周期は40mm、転写ローラーの周期は30mmである。感光体ドラムの場合と同様に、
図6(a)が示す濃度信号OD(y)に基づき、各周期で切り出した複数の波形を平均化し、平均化によって算出された濃度信号ODave(ph)からモジュールごとのバンディング波形ΔOD(ph)を算出する。そして、バンディング波形算出部1101は、各モジュールに対応するバンディング波形ΔOD(ph)を階調特性算出部1102に出力する。なお、各モジュールに対応するバンディング波形を算出する順序は任意で良い。
【0069】
以上、ステップS403においてバンディング波形算出部1101は、ステップS402において濃度センサ120が読み取った一つのパッチ画像から、各モジュールに起因しているバンディングをそれぞれ分離し、各モジュールのバンディング波形を算出する。
【0070】
次にステップS404において、各モジュールのバンディング波形の階調特性算出処理を行う。各モジュールにおけるバンディング波形は、階調によって異なる特性がある。
図6(c)は、モジュールごとに階調と最大濃度変動量の相関を示している。いずれのモジュールにおいても、階調に応じて最大濃度変動量が異なっていることがわかる。この例において、感光体ドラム周期の最大濃度変動量は、濃度0.9付近で最も高く、低濃度側、高濃度側になるにしたがって減少する。一方、現像ローラー周期の最大濃度変動量は、高濃度側で最大となり、平均濃度が下がるに従って減少する。
【0071】
まず感光体ドラムの場合、感光体ドラムの速度変動は露光時の露光量密度と強く関連している。感光体ドラムの回転速度が速ければ、露光量は少なくなり、感光体ドラムの回転速度が遅ければ、露光量は多くなる。ここで、
図7(a)は、電子写真方式の画像形成装置における露光量と出力画像濃度の相関を示している。
図7(a)からわかるように通常、電子写真方式の画像形成装置では、露光量と濃度の関係は非線形である。高濃度、低濃度側の領域では、露光量の変動に対して濃度変動が少なく、中濃度では、露光量の変動に対して濃度変動が大きい。つまり、感光体ドラムの速度変動により露光量変動が起こった場合、中濃度ほど最大濃度変動量が大きくなると考えられる。
【0072】
次に現像ローラーの回転速度の変動は、現像領域へのトナーの供給量と密接に関係している。前述の通り、現像ローラーの回転速度が高いと、供給されるトナー量が多くなり、現像ローラーの回転速度が遅いと、供給されるトナー量が少なくなる。感光体ドラム上に現像されるトナー量は、低濃度の画像では少なく、高濃度の画像では多い。低濃度の画像を現像する際には、現像領域へ供給されるトナー量が増減しても、現像に必要なトナー量が供給されていれば、現像されるトナー量への影響は少ない。このため、低濃度では現像ローラーの回転速度の変動が起きても、バンディング波形の振幅は低くなる。一方、高濃度の画像を現像する際には、現像領域へ供給されるトナー量が減少してしまうと、現像に必要なトナー量が不足してしまう。従って現像ローラーの回転速度の変動の影響をうけやすく、高濃度では現像ローラーの回転速度変動に起因するバンディングの最大濃度変動量大きくなってしまう。
【0073】
本実施例において、転写ローラーの回転速度の変動はトナーのつぶれと密接に関係している。転写ローラーの回転速度が遅くなるとトナーはつぶれやすく、早いとトナーはつぶれにくい。低中濃度の領域では、ドット間に距離があり、非ドット部の面積が大きい。このため、トナーがつぶれるとドット部と非ドット部の面積比率が変わり、濃度が大きく変化する。しかし、高濃度の領域では、非ドット部が少ない。よって高濃度の領域では、ドットのつぶれが変わることによる画像濃度への影響が少ない。
【0074】
以上のように、各モジュールにおける濃度変動は、形成する画像の濃度(階調)によって異なるため、それぞれのバンディング波形は、いずれも階調に依存する。そこで、階調に応じたバンディング波形をモジュールごとに算出する。以下に、階調特性に応じたバンディング波形を算出する方法を説明する。
【0075】
階調特性算出部1102は、バンディング波形算出部1101から取得した各モジュールに対応するバンディング波形ΔOD(ph)と、予め設定されているモジュール毎の階調補正係数k(ODmean)から、複数階調のバンディング波形ΔOD(ph,ODmean)を算出する。そして、階調特性算出部1102は、複数階調におけるバンディング波形をモジュールごとにバンディング特性格納部1103へ出力する。
【0076】
階調補正係数k(ODmean)は、ステップS403においてバンディング波形算出部1101が算出したバンディング振幅値と他の階調(平均濃度ODmean)おけるバンディング振幅値の比率を表わしている。この階調特性を表す階調補正係数kは、経時変動などにより大きな変化がないため、予め実験的に求めておき、設定しておく。階調特性算出部1102は、式(4)の通りにパッチ測定した階調におけるバンディング波形ΔOD(ph)に階調補正係数k(ODmean)を乗算することで、他の階調のバンディング特性ΔOD(ph,ODmean)を算出することができる。
【0077】
【数4】
【0078】
階調補正係数k(ODmean)は、
図6(d)に例示した階調特性から得られる係数である。感光体ドラムを例に挙げると、ステップS403において算出した濃度0.6の画像を形成した時のバンディング波形ΔOD(ph)では、最大振幅値ΔOD=0.03であった。
図6(d)が示す感光体ドラムの階調特性によれば、濃度0.3の画像を形成した時に発生する濃度変動の最大振幅値ΔODは、0.015になることが推定される。そこで階調特性算出部1102は、濃度0.3における階調補正係数を0.015/0.03=0.5を係数kとして、濃度0.3の画像を形成した時に発生するバンディング波形ΔOD(ph,0.3)を算出する。ここでは、階調補正係数kとして、濃度0.3における階調補正係数および濃度1.2における階調補正係数がモジュールごとに設定されているものとする。なお、濃度0.3および1.2以外の濃度におけるバンディング特性は、線形補間によって算出することができる。
【0079】
以上のバンディング特性算出処理により、階調特性算出部1102は、各モジュールの回転位相と形成する画像濃度とに応じたバンディング特性を算出する。ここでは全部で6つのバンディング特性を算出する。階調特性算出部1102は、算出した全てのバンディング特性をバンディング特性格納部1103出力に格納する。
【0080】
■補正画像データ生成処理
次に、補正画像データ生成処理を行う。
図4(b)は、補正画像データ生成処理のフローを示す図である。
【0081】
ステップS501において、画像データ入力処理を行う。
【0082】
まず、画像データ入力部111は、外部から入力画像データを受け取る。次に画像入力部111は、受け取った入力画像データをもとに画像形成装置が持つ各色材色に対応する画像データI(x、y)を生成する。ここで、xは画像データの主走査方向の位置、yは副走査方向の位置である。
【0083】
以降のバンディング補正処理S502、階調補正処理S503、ハーフトーン画像生成処理S504は、各色の画像データI(x、y)それぞれに対して行う。
【0084】
ステップS502において、バンディング補正処理を行う。
【0085】
バンディング補正部112は、ステップS501において生成された各色の画像データI(x、y)のうち、バンディング補正処理が未実施のものを1つ選択し、選択した画像データI(x、y)に対してバンディング補正処理を行う。
【0086】
まず、バンディング補正部112は、選択した画像データI(x、y)において、副走査位置yの等しい画素群(以下、ラインと記述する)ごとに、回転位相取得部121から各モジュールにおける現在の回転位相を取得する。次に、形成する画像の処理対象ラインが現像される時点の各モジュールにおける回転位相ph(y)を算出する。処理対象ラインが現像される時点の各モジュールにおける回転位相ph(y)は、各モジュールの周期と現在の回転位相と、画像が形成されるまでの時間から容易に算出可能である。ラインごとの処理を副走査方向の画素数分繰り返す。
【0087】
次に、バンディング補正部112はバンディング特性格納部1104に格納されたバンディング特性ΔOD(ph,ODmean)を参照し、算出した各モジュールの回転位相ph(y)と画像データI(x,y)の階調に基づいて、画素ごとに補正する。全ての画素に対して画素(x、y)を表す画素値の補正を行ったあと、バンディング補正部112はバンディング補正後画像データを出力する。
【0088】
【数5】
【0089】
ここでmは、モジュールの識別番号である。実際に画像を形成する際には、各モジュールによって発生する濃度変動ΔODが重畳する。各モジュールに起因する濃度変動ΔODは、各モジュールにおけるバンディング特性ΔOD(ph,ODmean)を参照し、回転位相ph(y)と所望の濃度値I(x、y)に基づいて予測することができる。
【0090】
このため、各モジュールによって生じる濃度変動ΔODを積算し、予め画像データIから減算しておく。これにより、画像を形成する際に発生するバンディングを相殺し、バンディングによる画像の劣化を低減することができる。バンディング補正部112は全ての画素に対して、式(5)の通りにバンディング補正を施し、バンディング補正後画像データO(x、y)を階調補正部113に出力する。
【0091】
ステップS503において、階調補正部113は、階調補正処理を行う。
入力される画像データと画像形成装置から出力される画像濃度は一般に、線形な関係にならない。このため一般に、
図7(b)に示すような露光量と濃度(階調)の関係の逆特性を持った階調補正を行う。階調補正部113は、バンディング補正後画像データOに階調補正を施し、階調補正後画像データO’を生成する。
【0092】
ステップS504において、ハーフトーン処理を行う。
【0093】
ハーフトーン処理部114は、階調補正後画像データO’にハーフトーン処理を施す。
【0094】
以上のステップS502からS504の処理を、各色の画像データ全てに対して行い、補正画像データ生成処理を終了する。
【0095】
生成された補正画像データは、画像形成制御部115へ出力され画像形成が行われる。
【0096】
以上説明したように、本実施例によれば、各モジュールに起因するバンディング特性を算出し、各モジュールにおける回転位相と入力画像の濃度に応じて、バンディング補正をする。これにより、回転周期の異なる複数のモジュールによって生じるバンディングを、階調に応じて好適に抑制することができる。
【0097】
また、各モジュールにおける複数階調のバンディング特性を1つのパッチ画像を測定した結果から算出することができるため、比較的短い処理時間で複数モジュールによる複数階調に応じたバンディングを補正することが可能である。
【実施例2】
【0098】
実施例1では、補正対象とするモジュールを感光体ドラム、現像ローラー、転写ローラーの3つであるものとして説明した。実施例2では、測定したパッチ画像の濃度に基づいて、バンディングの主要因となっているモジュールを特定する。そして主な原因として特定されたモジュールによるバンディングを補正する。
【0099】
図3(b)は、本実施例におけるバンディング補正処理を行う構成を示したブロック図である。なお、実施例1と同様の構成については同一の符号で示し、詳細な説明を省略する。
【0100】
モジュール周波数格納部1105は、
図8(b)が示すモジュールと周波数のテーブルを保持している。各モジュールはモジュール固有の周期を持っている。モジュールと周波数のテーブルは、画像形成装置の設計に依存するため、容易に事前に算出しておくことが可能である。
【0101】
モジュール選択部1104は、バンディングの主な原因となるモジュールを特定する。濃度センサ120がパッチ画像を測定した結果において、発生しているバンディングの周波数を解析する。解析した周波数から、モジュール周波数格納部115が保持するモジュールと周波数のテーブルを参照し、主な原因となるモジュールを特定する。
【0102】
図4(c)は、本実施例におけるバンディング特性算出処理のフローを示す図である。
【0103】
ステップS601において、ステップS401と同様にパッチ形成処理を行う。
【0104】
ステップS602において、パッチ読み取り処理を行う。
【0105】
濃度センサ120は、中間転写ベルト101上に転写されたパッチ画像の位置yの濃度ODを微小間隔おきに検出し、測定結果をバンディング波形算出部1101とモジュール特定部1104に出力する。
【0106】
ステップS603において、主な原因となっているモジュールを特定するモジュール特定処理を行う。
【0107】
モジュール特定部1104は、濃度センサ120から取得した濃度信号OD(y)を周波数解析し、発生しているバンディングの周波数を算出する。まず、モジュール特定部1104は、濃度信号OD(y)を高速フーリエ変換(FFT)し、複素数列Fを生成する。つづいて、得られた複素数列Fを振幅値に変換し、視覚特性VTFと積算することにより、振幅スペクトルA(ν)を求める。
【0108】
【数6】
【0109】
【数7】
【0110】
【数8】
【0111】
ここで、νは周波数、Njは濃度信号ODの標本数(測定したyの数)、DPIはステップS602において濃度センサ120から読み込んだ際の解像度、Rは観察距離である。式(8)はDooleyのVTFとして一般に知られるものであり、人間の視覚感度を示したものである。つまり、VTFの高い周波数帯に発生したバンディングは目立ちやすく、VTFの低い周波数帯に発生したバンディングは目立ちにくい。そこで式(7)による処理により、視覚的に目立ちやすい周波数帯のバンディングを抽出することができる。なお、ここでは測定して得られた濃度信号ODに対して高速フーリエ変換により複素数列Fを算出したが、離散フーリエ変換を用いてもよい。
図8(a)は、モジュール特定部1104が濃度信号OD(y)を周波数解析して得られた振幅スペクトルA(ν)である。
【0112】
次に、モジュール特定部1104は、振幅スペクトルA(ν)と予め設定してある閾値Thとを比較し、閾値Thより高い周波数νを算出する。ここでは、閾値Th=0.02とする。
図8(a)が示す振幅スペクトル(ν)において、閾値Thを超える周波数νは、0.400と0.769とわかる。これは、視覚的に目立つバンディングの周期を示している。
【0113】
次に、モジュール特定部1104は、モジュール周波数格納部1105に格納されているモジュールと周波数のテーブルから、算出した周波数νに該当するモジュールを特定する。図(b)に示すとおり、各モジュールはモジュール固有の周期をもっているため、振幅スペクトルAの高い周波数νから、主な原因となっているモジュールを特定することができる。本実施例において視覚的に目立つバンディングの周波数ν=0.400、0.769に該当するモジュールは、
図8(b)のテーブルからドラム駆動ギア2と現像ローラギア1である。従って、ドラム駆動ギア2および現像ローラー1がバンディングの主な原因として特定できる。モジュール特定部1104は、特定したドラム駆動ギア2と現像ローラーを補正対象のモジュールとしてバンディング波形算出部1101へ出力する。
【0114】
なお、周波数νは、解像度やフーリエ変換の際のサイズに依存した離散値であるため、モジュール周波数格納部1105が保持するテーブルの各モジュールの周波数と一致しない場合がある。この際は、最近傍の周波数の振幅値を用いる。または、近傍の複数の周波数の振幅値の重みづけ平均をとるなどする方法が考えられる。
【0115】
ステップS604において、主な原因として特定されたモジュールのバンディング波形算出処理を行う。処理内容はステップS403と同じである。
【0116】
なお、モジュールによっては、コストやスペースの面から位相を取得するためのロータリーエンコーダやホームポジションセンサを設けられない場合がある。このような場合、他のモジュールの周波数を用いて、対象となるモジュールの回転位相phおよび周期を得ることができる。S602においてバンディングの主な原因として特定されたドラム駆動ギア2の場合を説明する。ドラム駆動ギア2は、ドラム駆動モータの動力を感光体ドラムに伝達するためのギアであり、感光体ドラムの20倍の周波数の変動に寄与している。この場合、感光体ドラムの回転位相phおよび周期を利用して、ドラム軌道ギア2のバンディング波形算出処理を行う。得られた感光体ドラムのバンディング波形は、周期50mm(周波数0.020cycle/mm)であるが、ドラム駆動ギア2の周期2.5mm(周波数0.400cycle/mm)の変動を含んでいる。このように、複数のモジュールの周期もしくは周波数が整数比の関係にあれば、代表する1つのモジュールを代用することが可能である。
【0117】
以降の処理は実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0118】
以上説明したように、本実施例によれば、バンディングの主な原因となるモジュールを特定した上で、特定したモジュールに対して補正を行う。これにより、効率的にバンディングを抑制することが可能である。
【0119】
(その他の実施形態)
前述の実施例では、ステップS402において、パッチ画像を中間転写ベルト101上に形成し測定する方法を記載した。他の方法として、感光体ドラム1001上や記録媒体P上において、パッチ画像の濃度を測定してもよい。さらに、外部の読み取り装置などを利用する方法も考えられる。
【0120】
また前述の実施例では、ステップS404において用いる階調補正係数kを予め設定しておく方法について記載した。他の方法として、階調補正係数kが、画像形成装置の個体毎に異なる場合や経時変化により特性が変化する場合は、複数の階調を表すパッチ画像を測定してもよい。
図5(b)ラインセンサを示す。濃度センサではなくラインセンサ122を用いて、複数の階調を表すパッチ画像を測定し、各階調の階調特性を保持しておく方法が考えられる。また、濃度センサ120を用いて、実施例1におけるステップS402において複数のパッチ画像を形成し、複数回測定することで同様の階調補正係数k(ODmean)を得ることができる。
【0121】
前述の実施例では、ステップS404において、各階調におけるバンディングΔOD(ph,ODmean)をバンディング波形ΔOD(ph)と階調補正係数k(ODmean)を乗算することで算出した。あるモジュールに対する特定階調のバンディング波形とその他の階調のバンディング波形に線形性がない場合、階調補正係数k(ODmean)の代わりに、モデル式や予め実験的に求めた変換テーブルを用いることもできる。
【0122】
前述の実施例では、バンディング特性算出処理において、一つのパッチ画像から各モジュールにおける複数階調のバンディング特性を算出した。この方法以外にも、特定モジュールのバンディング特性算出処理を先に行い、特定モジュールの補正を施したパッチ画像からその他のバンディング特性算出を行う方法が考えられる。また、階調特性の算出精度を上げるため、複数のパッチ画像からバンディング特性算出を行う方法が考えられる。
【0123】
前述の実施例2では、主な原因を特定するモジュール特定処理において、閾値Thと比較を行いモジュールを特定したが、振幅スペクトルAが高いものから上位n個のモジュールを特定するなどの方法を用いることが可能である。
【0124】
(その他の実施例)
本発明は、上述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても実現できる。この場合、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)がコンピュータが読み取り可能に記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することにより、上述した実施例の機能を実現する。