【実施例1】
【0015】
図1は、本実施例に適用可能な画像形成装置の構成図である。この画像形成装置は、リーダ部1、コントローラ部2、エンジン部3から構成される。
【0016】
リーダ部1は、コンタクトガラス101、走査光学系102、イメージセンサ103、を有する。リーダ部1は、コントローラ2から出される読み取り命令に応じて、コンタクトガラス101上に配置された原稿を、走査光学系102によりスキャンする。走査光学系102は、光源(蛍光灯など)、ミラー、レンズ等から構成されており、原稿の反射光をイメージセンサ103に結像させる。イメージセンサ103は、受光した光量を画像データとしてコントローラ部2へ出力する。
【0017】
コントローラ部2は、図示しない操作端末、ハードディスクドライブ、コンピュータ、サーバ、ネットワークなどとのインターフェースを有し、リーダ部1への読み取り命令や、エンジン部3への印刷命令などを出力する。また、入力された画像データに対して解像度変換処理、階調補正処理、ハーフトーン処理等の画像処理を施し、エンジン部3が出力可能な画像信号に変換し、エンジン部3へ出力する。
【0018】
エンジン部3は、制御部301、感光体ドラム302、帯電器303、露光器304、現像器305、転写器306、定着器307を有する。
【0019】
ここで、エンジン部3における画像形成処理について説明する。
【0020】
まず、像担持体である感光体ドラム302は、外周面に帯電極性が負極性である有機光導電体層を有し、矢印の方向に回転する。
【0021】
(帯電)
帯電器303は、負極性の電圧を印加され、感光体ドラム302の表面に帯電粒子を照射することにより、感光体ドラム302の表面を一様な負極性の電位に帯電する。帯電された感光体ドラム302は、矢印の方向に回転する。
【0022】
(露光)
露光器304は、制御部301から取得する制御信号に基づいてレーザ光を駆動し、感光体ドラム302上にレーザ光を走査する。これにより、帯電した感光体ドラム302の表面に静電潜像を形成する。
【0023】
(現像)
現像器305は、略等速度で回転する現像ローラーを用いて、負極性に帯電させたトナーを感光体ドラム302へ供給する。これにより、感光体ドラム302上の静電潜像にトナーを付着させ、静電潜像を反転現像する。
【0024】
(転写)
転写器306は、正極性の電荷を印加され、負極性に帯電している感光体ドラム302上に担持されたトナー像を記録媒体へ転写する。
【0025】
(定着)
定着器307は、トナー像を転写された記録媒体Pに加圧加熱などの処理を施し、画像を定着させる。
【0026】
なお、本実施例では説明を簡単にするために、単色の画像形成部(感光体ドラム302、帯電器303、レーザスキャナ304、現像器305により現像する手段)のみを図示している。カラー画像形成装置の場合には、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各色に対する画像形成部が記録媒体の移動方向に沿って順次配列される。あるいは、各色の現像器305を1つの感光体ドラム302の周囲に沿って配列する場合や、回転可能な筐体に各色の現像器305を配置する場合がある。
【0027】
本実施例における画像形成装置は以上の構成により、所望の印刷物を出力する。しかしながら、様々な要因により出力される画像にバンディングが発生してしまう。そこで、本実施例における画像形成装置は、様々な要因のうち、バンディングを発生させている主な要因を特定する。
【0028】
コントローラ部2は、バンディングを観測するためのテストチャートの画像信号をエンジン部3へ出力する。エンジン部3はコントローラ部2から入力された画像信号に基づいて、テストチャートを形成した印刷物を出力する。リーダ部1はさらに、エンジン部3が出力したテストチャートを形成した印刷物を読み込み、コントローラ部2へテストチャートを読みこんだ画像データ(以下、テストチャートデータ)を出力する。コントローラ部2は、テストチャートデータの解析結果に基づいてバンディングの主要因を特定し、図示しない操作端末に表示する。以下に、バンディング要因特定処理について詳細に説明する。
【0029】
図3(a)は、コントローラ部2の構成を示すブロック図である。
【0030】
テストチャート生成部201は、テストチャートを生成するためエンジン部3にテストチャートの画像信号を出力する。ここでテストチャートは、等間隔、等強度のラインを描いた画像を用いる。
図4に、テストチャートの例を示す。本実施例においてエンジン3は、解像度を600dpi(dot/inch)、1ピクセルあたりの表現可能な階調数は2値で表され、1ピクセルに対してドットを打つか否かで画像形成する。
図4(a)が示すテストチャートは、幅600ピクセル(主走査方向)、高さ2400ピクセル(副走査方向)の画像であり、高さ1ピクセルのラインを3ピクセルずつあけて繰り返し印字するパターンである。この画像は、言い換えると150lpi、面積率25%の横万線画像に相当する。
【0031】
ガンマ変換部202は、入力されたテストチャートを読みこんだ画像データI(i、j)(以下、テストチャートデータ)を輝度画像データY(i、j)に変換する。
【0032】
輝度分布算出部203は、輝度画像データY(i、j)に基づいて、テストチャートに形成されたラインの輝度分布(ライン輝度分布)を算出する。
【0033】
特徴量算出部205は、輝度分布算出部203が算出したライン輝度分布から、ラインごとの特徴量を求める。特徴量とは、ラインの太さや濃さに相当する。
【0034】
周波数解析部204は、輝度分布算出部203が算出したライン輝度分布を周波数解析し、ライン輝度分布振幅スペクトルを算出する。また、特徴量算出部205が算出した特徴量に基づいて、ライン強度振幅スペクトルを算出する。
【0035】
要因特定部206は、ライン輝度分布とライン強度振幅スペクトルとから、ライン間隔振幅スペクトルを算出する。そして、ライン強度振幅スペクトルおよびライン間隔振幅スペクトルを参照し、要因リスト保持部207に保持された要因リストの各デバイスに対応する振幅スペクトルを、各デバイスのバンディング寄与度として算出する。
【0036】
図2(a)は、本実施例に適用可能な画像形成装置におけるバンディング発生要因特定処理のフローチャートである。
【0037】
ステップS1001において、テストチャート生成部201はテストチャートを生成するための画像信号を生成する。ここでは、
図4(a)が示すテストチャートを例に説明する。
【0038】
ステップS1002において、エンジン部3は、コントローラ部2から取得したテストチャートの画像信号に基づいて、画像を形成する。まず、帯電器303が、感光体ドラム302の表面を所定の電位に帯電する。露光器304は、帯電された感光体ドラム302上にレーザ光を照射し、コントローラ部2から出力されたテストチャートの画像信号に従って、静電潜像を書き込む。現像器305は、感光体ドラム302上の静電潜像にトナーを供給し現像する。転写器306は、感光体ドラム302上に形成されたトナー像を、記録媒体である用紙に転写する。転写後、感光体ドラム302上に残存するトナーは、ドラムクリーナ(不図示)によって除去される。定着器307は、用紙上に転写されたトナー像を加熱、加圧定着し、トナー像が定着した用紙を、印刷物として出力する。
【0039】
ステップS1003において、テストチャートが形成された印刷物はリーダ部1のコンタクトガラス101上に設置され、テストチャートデータI(i、j)として読み込まれる。ここでは、リーダ部1の解像度DPIは1200dpiである。符号(i、j)は画素位置を表し、iは主走査方向における位置(1≦i≦1200)、jは副走査方向における位置(1≦j≦4800)を示す。リーダ部1は読みこんだテストチャートデータI(i、j)をコントローラ部2に出力する。本実施例では、リーダ部1の解像度DPIは1200dpiであるとする。
【0040】
ステップS1004において、ガンマ変換部202は、入力されたテストチャートデータI(i、j)を輝度画像データY(i、j)に変換する。
図4(b)は輝度画像データY(i、j)の模式図を示す。この際、データの変換は、行列演算やLUT(ルックアップテーブル)など一般的な方法で行われる。
【0041】
ステップS1005において、輝度分布算出部203は、前記輝度画像データY(i、j)からライン輝度分布Yclip(j)を算出する。まず、輝度分布算出部203は、式(1)の通りに輝度画像データY(i、j)を主走査方向に平均化し、副走査方向の輝度分布Ymean(j)に変換する。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、Niは主走査方向の画素数である。
【0044】
図4(c)は輝度分布Ymeanを表わす。さらに、輝度分布算出部203は、
図5(a)に示すように閾値Thを有しており、輝度分布Ymeanにおいて閾値Thを下回る副走査位置jの領域をテストチャートにおけるラインが形成された位置として認識する。輝度分布算出部203は、式(2)の通りに、Ymean(j)から閾値Thを減算した後、反転し0未満をクリッピングし、テストチャートにおける各ラインの輝度分布(以下、ライン輝度分布)Yclip(j)を算出する。
図5(b)に輝度分布Ymeanとライン輝度分布Yclip(j)の関係を示す。
【0045】
【数2】
【0046】
ここで、閾値Thは、
図4(a)に示すテストチャートにおける150lpiのライン1本1本を分離するのに適切な値であればよい。閾値Thは、輝度画像データY(i、j)もしくは輝度分布Ymean(j)から、大津の方法などの一般的な閾値算出方法を用いて設定することができる。
図4(c)が示すように、エンジン部3は画像形成のプロセスにおいて、テストチャートの各ラインの位置や強度に誤差を含んだ印刷物を出力する。つまり、テストチャートに形成された全てのラインは、等間隔かつ同じ太さの線であるはずにも関わらず、実際に形成される画像では線同士の間隔や濃さ、太さにバラツキが生じる。このようなバラツキがバンディングとして目立つ。なお、各ラインを適切に分離できない場合は、テストチャートのライン間隔を変更したり、リーダ部1による読み取り後の画像データに傾き補正などの調整処理を施したりすることで対応可能である。
【0047】
ステップS1006において、周波数解析部204は、ライン輝度分布Yclip(j)を周波数解析し、発生しているバンディングの周波数を算出する。まず、周波数解析部203は、ライン輝度分布Yclipを高速フーリエ変換(FFT)し、複素数列Fを生成する。つづいて式(4)の通りに、得られた複素数列Fを振幅値に変換し、視覚の感度特性VTFと積算することにより、ライン輝度分布振幅スペクトルA(ν)を求める。
【0048】
【数3】
【0049】
【数4】
【0050】
【数5】
【0051】
ここで、νは周波数、Njは副走査方向の画素数、DPIはステップS1003においてリーダ部1が読み込んだ際のリーダ解像度、Rは観察距離である。式(5)はDooleyのVTFとして知られるものであり、周波数の異なるパターンに対する人間の視覚感度を示したものである。つまり、VTFの高い周波数帯に発生したバンディングは目立ちやすく、VTFの低い周波数帯に発生したバンディングは目立ちにくい。式(4)の処理により、視覚的に目立ちやすいバンディングの周波数成分を抽出することができる。
図6(a)はステップS1106において算出されたライン輝度分布振幅スペクトルA(ν)を示す。
【0052】
なお、式(3)のFFTにおいて副走査画素数Njは2のべき乗である必要があるので、適当なサイズで切り出せばよい。
図4(a)が示すテストチャートにおいては、600dpi2400ピクセルを入力としているので、1200dpiで読み込んだ画像サイズはおおよそ4800ピクセルであり、2の12乗である4096ピクセルを切り出すのが適当である。また、このサイズは、周波数解析した際の低周波側の分解能に影響するため、要因となるデバイスの周期や許容されるチャートサイズなどを勘案して、適切に設定すればよい。また、ここではライン輝度分布に対して高速フーリエ変換による周波数解析を行ったが、これに限らず離散フーリエ変換を用いてもよい。
【0053】
ステップS1007においてライン特徴量算出部205は、ライン輝度分布Yclip(j)からライン毎にライン強度Pnを算出する。
図5(b)が示すライン輝度分布Yclip(j)において、ライン特徴量算出部205はまず、各位置jに対してライン番号line(j)を定義する。ライン番号の定義は、jを0からインクリメントした際に、Yclip(j)が0を超えた位置jから所定のピクセル数までをライン番号line(j)=1とする。以降、まだライン番号を定義していないピクセルに対しても、同様に位置jのインクリメントを行い、ライン番号line(j)に、2、3・・・Nを付加する。ここで、所定のピクセル数は、テストチャートにおけるライン間隔やラインの太さなどを勘案して設定すればよい。例えば150lpiの横万線では、平均ライン間隔が1200dpi8ピクセルとなるため、その1/2〜2/3に相当する4〜6ピクセルに設定するのが妥当である。
【0054】
次にライン特徴量算出部205は、式(6)の通りに、ライン毎に閾値Thを超えた領域の面積を算出し、これをn番目のラインの強度Pnとする。
【0055】
【数6】
【0056】
ここで、nはライン番号であり、強度Pnは、ライン毎の濃さや太さに相当する特徴量となる。
【0057】
ステップS1108おいて周波数解析部204は、式(7)の通りに、ラインごとに強度Pnの周波数変換を行い、ライン強度振幅スペクトルAp(ν)を算出する。
【0058】
【数7】
【0059】
【数8】
【0060】
式(7)に示す処理では、強度Pnに対するフーリエ変換を行っている。これによりラインの強度変動に起因したバンディング特性を算出する。
図5(b)ライン輝度分布には、ラインごとの強度Pnと合わせて、位置Hnと間隔Gnも示している。形成される際にテストチャートのラインの位置にズレが生じた場合、ライン間隔Gが密な部分と疎な部分が発生する。こうした疎密は、視覚的に画像の濃淡として認識され、バンディングの原因となる。式(7)の処理によれば、テストチャートに発生した位置誤差を無視するための処理であり、ラインの強度の変動によるバンディング特性を算出している。
【0061】
ステップ1009において要因特定部206は、要因リスト保持部207が記憶している要因リストおよびライン輝度分布振幅スペクトルA(ν)、ライン強度振幅スペクトルAp(ν)に基づいて、バンディングの要因となるデバイスの寄与度を算出する。要因特定部206はまず、ステップ1006で算出したA(ν)からステップS1008で算出したAp(ν)を減算することにより、ライン間隔振幅スペクトルAg(ν)を算出する。
【0062】
【数9】
【0063】
これは、テストチャートにおけるライン間隔のズレに起因するバンディング特性を算出している。式(9)による処理により、テストチャートに発生したバンディングを、ライン強度の変動によって発生したバンディングとライン位置の変動によって発生したバンディングに分離することが可能になる。
図6(b)はライン強度振幅スペクトルAp(ν)およびライン間隔振幅スペクトルAg(ν)を示す。
【0064】
要因リスト保持部207格納された要因リストは、強度変動要因リスト、位置変動要因リストから構成されており、それぞれ、複数のデバイスとそのデバイスの周波数が保持されている。
図6(c)に強度変動要因リスト、
図6(d)に位置変動要因リストを示す。
図6(c)強度変動要因リストには、ラインの強度変動の要因となるデバイスと、各デバイスによるバンディングが発生した場合の周波数が対応して保持されている。同様に
図6(d)位置変動要因リストには、ラインの位置変動の要因となるデバイスと、各デバイスによるバンディングが発生した場合の周波数が対応して保持されている。要因リストに保持されている周波数は、画像形成装置の設計に応じた固定値であり、予め設定しておくことが可能である。例えば、帯電ローラ、感光体ドラム、現像ローラなどの回転体の場合、その周長に応じた周波数のバンディングを発生させる。また、これら回転体を駆動するギアに起因するバンディングの周波数も、回転体の周長およびギアの歯数などから容易に算出可能である。
【0065】
次に、要因特定部206は、強度変動要因リストに記載の各デバイスに対して、そのデバイスの周波数νに対応する振幅値Ap(ν)をそのデバイスのバンディング寄与度として、算出する。
【0066】
次に、要因特定部206は、位置変動要因リストに記載の各デバイスに対して、そのデバイスの周波数νに対応する振幅値Ag(ν)をそのデバイスのバンディング寄与度として算出とする。
【0067】
なお、Ap(ν)およびAg(ν)の周波数νは、入力の解像度やフーリエ変換の際のサイズに依存した離散値であるため、要因リスト207に記載の各デバイスの周波数と一致しない場合がある。その際は、最近傍の周波数の振幅値を用いる。または、近傍の複数の周波数の振幅値の重みづけ平均をとるなどする方法が考えられる。なお、逆に、要因リスト207に記載の周波数を予め、フーリエ変換で得られる離散値と一致するようにしておく方法も考えられる。
【0068】
最後に要因特定部206は、上述の処理で算出した強度要因および位置要因の各デバイスのバンディング寄与度の高いものから順に、要因デバイスとして特定する。特定された要因デバイスは、図示しない操作端末に表示される。
【0069】
図6に示すライン強度振幅スペクトルAp(ν)、ライン間隔振幅スペクトルAg(ν)と要因リストを用いて、具体的な要因特定手順を示す。要因特定部206は、強度変動要因リストおよび位置変動要因リストから順次、デバイスを選択し、選択したデバイスに対応する周波数を読み込む。そして、ライン強度振幅スペクトルAp(ν)もしくはライン間隔振幅スペクトルAg(ν)から対応する周波数の振幅値を読み取る。ここで、強度変動要因リストの帯電ローラ駆動モータに着目すると、周波数は1.476cycle/mmである。ライン強度振幅スペクトルAp(ν)の1.476cycle/mmにおける振幅値は0.91であり、これが帯電ローラ駆動モータのバンディング寄与度となる。同様に、位置変動要因リストのドラム駆動モータに注目すると、周波数1.0cycle/mm、対応する振幅値は、ライン間隔振幅スペクトルAgから振幅値0.40であり、ドラム駆動モータのバンディング寄与度として出力される。
【0070】
以上のように、各モジュールのバンディング寄与度を算出する。ここでは、最も高いバンディング寄与度をもつ帯電ローラー駆動モータを第一要因デバイス、二番目に高いバンディング寄与度をもつドラム駆動モータを第二要因デバイスとして特定する。
【0071】
以上、本実施例におけるバンディング発生要因特定処理を完了する。
【0072】
以上のように、画像形成時に発生するバンディングをライン強度の変動によるものか、ライン位置の変動によるものかを切り分ける。そして、強度・位置それぞれの変動の要因となるデバイスと照合することで、バンディングの主な要因となっているデバイスを精度良くバンディングの発生要因として特定することが可能である。
【実施例2】
【0073】
実施例1では、ライン間隔振幅スペクトルAg(ν)をライン輝度分布振幅スペクトルA(ν)とライン強度振幅スペクトルAp(ν)の差分から算出した。本実施例では、ライン間隔振幅スペクトルAgをライン輝度分布Yclip(j)を用いて算出する例を記載する。なお、本実施例において、実施例1を同様の構成については同一の符号により示し、説明を省略する。
【0074】
図2(b)は、実施例2におけるバンディング発生要因特定処理のフローチャートを示す。本実施例のコントローラ部2の機能を示すブロック図を
図3(b)に示す。ステップS1008までの処理については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
ステップS1020においてライン特徴量算出部205は、ライン毎に重心座標を求め、これをライン位置Hnとし、ライン位置Hnからライン間隔Gnを算出する)。まず、ライン位置Hは以下の式より算出される。
【0075】
【数10】
【0076】
そして、直後のラインとの間隔Gを算出する。
【0077】
【数11】
【0078】
ステップS1011において周波数解析部204は、ライン間隔Gnの周波数変換を行い、ライン間隔振幅スペクトルAg(ν)を算出する。
【0079】
【数12】
【0080】
【数13】
【0081】
ここで、kは間隔変動を強度変動相当の振幅値に変換するための係数である。ライン間隔Gnは長さを示すものであり、後述のステップS1012においてAp(ν)と比較することができない。このため、ライン間隔Gの変動からマクロ的な画像の濃淡として扱えるよう係数kを用いる。係数kは、予め実験的に算出することが可能である。
【0082】
ステップS1012において要因特定部206は、要因リスト保持部207が保持する要因リストとライン強度振幅スペクトルAp(ν)、ライン間隔振幅スペクトルAg(ν)に基づいて、バンディングの主な要因となっているデバイスの寄与度を算出する。処理の詳細については、ステップS1009における要因特定方法と同様である。
【0083】
以上の処理により、本実施例に示す画像形成装置は、バンディングを強度変動と位置変動に分離し、要因デバイスを特定することにより、より精度よくバンディングの主な要因を特定することが可能になる。
【0084】
(その他の実施形態)
前述の実施例に示す画像形成装置は、特定した要因デバイスを操作端末に表示する例を示したが、この情報をもとにメンテナンスの通知を行い、部材調整や部材交換などをユーザに促す利用方法が考えられる。また、要因デバイスに対応する制御パラメータやキャリブレーション機構などを具備した画像形成装置の場合、パラメータの決定やキャリブレーションタイミングの決定などに利用する形態も可能である。さらに、ネットワークを介して外部のサーバ等に特定した要因デバイスを送信し、前述のメンテナンス等のサービスに利用する方法も可能である。
【0085】
また、前述の実施例に示す画像形成装置は、テストチャートを600dpi600×2400ピクセルの画像で形成し、形成された画像を1200dpi、1200×4800ピクセルで読み込む構成を例に示したが、これに限定するものではない。テストチャートの幅、すなわちラインの主走査方向の長さは、解析するラインの平均的な特徴を得るためのものである。このため、テストチャートの幅は、ステップS1005の平均化処理において、画像形成装置の主走査方向のムラの影響を抑制するに足るサイズに設定すればよい。また、テストチャートの高さは、ステップS1006にて周波数解析を行うライン輝度分布Yclipのサイズより大きく設定すればよい。周波数解析を行うライン輝度分布Yclipのサイズは、大きいほどより低周波の成分を検出できる。このため、ライン輝度分布Yclipのサイズは、特定したいデバイスの周波数に応じて設定すればよい。また、読み込み解像度は、各ラインを分離し各ラインの特徴量を抽出するのに十分な解像度であればよく、テストチャートの出力解像度より大きく設定することが望ましい。
【0086】
また、前述の実施例に示す画像形成装置は、テストチャートが1ピクセルのラインを3ピクセル空けて繰り返し印字するパターンである例を示したが、これに限定するものではない。生成するテストチャートのサイズが同じであった場合、生成するラインのピクセル数(太さ)やラインの間隔に応じて、ステップS1008において解析できるライン数が変化する。解析するライン数は、多いほどより高周波の成分を検出できるため、特定したいデバイスの周波数に応じて設定すればよい。
【0087】
また、前述の実施例に示す画像形成装置は、リーダ部1に出力したテストチャートが設置されるものとしているが、この際、ユーザが手作業で行う形態や、別途、リーダ部への紙搬送系を具備するなどの形態が考えられる。
【0088】
また、実前述の実施例に示す画像形成装置は、出力したテストチャートのスキャンをリーダ部1が行うものとした。しかしながらエンジン3内部に別途インラインセンサを設けたり、外部のスキャナを用いたりすることにより、テストチャートのスキャンを行う形態も考えられる。
【0089】
なお、前述の実施例に示す画像形成装置は、強度として閾値でクリッピング処理された輝度の積算値を用いたが、濃度積算値、明度積算値などを使用する形態も考えられる。
【0090】
また本発明は、上述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても実現できる。この場合、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)がコンピュータが読み取り可能に記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することにより、上述した実施例の機能を実現する。