(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シート給送方向に対して最上流の圧接位置は、満載状態のシートが前記シート収納部の最もシート給送方向上流側に位置したときに前記給送ローラがシートと圧接する位置であり、前記シート給送方向に対して最下流の圧接位置は、前記シート積載台が最も上方に回動したときに前記給送ローラがシートと圧接する位置であることを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の一例であるカラーレーザプリンタの概略構成を示す図である。
図1において、10はカラーレーザプリンタ、10Aはカラーレーザプリンタ本体(以下、プリンタ本体という)である。このプリンタ本体10AにはシートSに画像を形成する画像形成部10Bと、中間転写部10Cと、定着装置5と、画像形成部10BにシートSを給送するシート給送部10Dが設けられている。なお、このカラーレーザプリンタ10は、シートの裏面に画像を形成することができるようになっており、このため表面(一面)に画像が形成されたシートSを反転させて再度、画像形成部10Bに搬送する再搬送部10Eが設けられている。
【0014】
画像形成部10Bは、略水平方向に配置され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナー画像を形成する4つのプロセスステーション16(16Y,16M,16C,16K)を備えている。このプロセスステーション16は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー像を担持すると共に不図示のステッピングモータにより駆動される像担持体である感光体ドラム11(11Y,11M,11C,11K)を備えている。
【0015】
また、感光体ドラム表面を一様に帯電する帯電装置12(12Y,12M,12C,12K)を備えている。さらに、画像情報に基づいてレーザビームを照射して一定速度で回転する感光体ドラム上に静電潜像を形成する露光装置13(13Y,13M,13C,13K)を備えている。また、感光体ドラム上に形成された静電潜像にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナーを付着させてトナー像として顕像化する現像装置14(14Y,14M,14C,14K)を備えている。そして、これら帯電装置12、露光装置13、現像装置14等は感光体ドラム11の周囲に回転方向に沿ってそれぞれ配されている。
【0016】
シート給送部10Dは、プリンタ本体下部に設けられ、シートSを収納するシート収納部である給紙カセット61〜64に積載収納されたシートSを送り出すシート給送装置71〜74を備えている。そして、画像形成動作が開始されると、シート給送装置71〜74によりシートSは給紙カセット61〜64から一枚ずつ分離給送される。この後、一枚ずつ分離給送されたシートSは、搬送縦パス81を通過して搬送水平パス88に達し、この後、搬送水平パス88に設けられたレジストローラ76に搬送される。
【0017】
ここで、このレジストローラ76は、シートSが突き当られてループを作成することにより、シートSの先端を倣わせ斜行を修正する機能を有している。また、シートSへの画像形成のタイミング、即ち、後述する中間転写ベルト上に担持されたトナー像に合わせて、所定のタイミングにてシートSを二次転写部へ搬送する機能を有している。なお、シートSが搬送される際、レジストローラ76は停止しており、このような停止状態のレジストローラ76にシートSを突き当てることにより、シートに撓みが形成される。そして、この後、シートSの剛性により、シート先端がレジストローラ76のニップに揃うようになることにより、シートSの斜行が補正される。
【0018】
中間転写部10Cは、感光体ドラム11の外周速度と同期して矢印に示す各プロセスステーション16の配列方向に沿って回転駆動される中間転写ベルト31を備えている。ここで、この中間転写ベルト31は、駆動ローラ33、中間転写ベルト31を挟んで二次転写領域を形成する従動ローラ32及び不図示のばねの付勢力によって中間転写ベルト31に適度な張力を与えるテンションローラ34に張架されている。
【0019】
この中間転写ベルト31は、内側には4個の、それぞれ感光体ドラム11と共に中間転写ベルト31を挟持し、一次転写部を構成する一次転写ローラ35(35Y,35M,35C,35K)が配されている。なお、これら一次転写ローラ35は不図示の転写バイアス用電源に接続されている。そして、この一次転写ローラ35から中間転写ベルト31に転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の各色トナー像が順次中間転写ベルト31に多重転写され、中間転写ベルト31上にフルカラー画像が形成される。
【0020】
また、従動ローラ32に対向するように二次転写ローラ41が配置されており、この二次転写ローラ41は中間転写ベルト31の最下方の表面に当接すると共に、レジストローラ76により搬送されたシートSを中間転写ベルト31と共に挟持搬送する。そして、二次転写ローラ41と中間転写ベルト31のニップ部をシートSが通過する際、この二次転写ローラ41にバイアスを印加することにより、シートSに中間転写ベルト上のトナー画像が二次転写される。定着装置5は中間転写ベルト31を介してシート上に形成されたトナー画像をシートSに定着させるものであり、トナー像を保持したシートSは、この定着装置5を通過する際に熱及び圧力が加えられることによりトナー像が定着される。
【0021】
次に、このように構成されたカラーレーザプリンタ10の画像形成動作について説明する。画像形成動作が開始されると、まず中間転写ベルト31の回転方向において一番上流にあるプロセスステーション16Yにおいて、感光体ドラム11Yに対し、露光装置13Yによりレーザ照射を行い、感光体ドラム上にイエローの潜像を形成する。この後、現像装置14Yにより、この潜像をイエローのトナーにより現像してイエローのトナー像を形成する。次に、このようにして感光体ドラム11Y上に形成されたイエローのトナー像が、高電圧が印加された一次転写ローラ35Yにより、一次転写領域において中間転写ベルト31に一次転写される。
【0022】
次に、トナー像は中間転写ベルト31と共に、プロセスステーション16Yよりもトナー像が搬送される時間だけ遅延して画像が形成される次のプロセスステーション16Mの感光体ドラム11Mと転写ローラ35Mとにより構成される一次転写領域に搬送される。そして、中間転写ベルト上のイエロートナー像上に画像先端を合わせて次のマゼンタトナー像が転写される。以下、同様の工程が繰り返され、この結果、4色のトナー像が中間転写ベルト31上において一次転写され、中間転写ベルト上にフルカラー画像が形成される。なお、感光体ドラム上に僅かに残った転写残トナーは感光体クリーナ15(15Y,15M,15C,15K)により回収され、再び次の画像形成に備える。
【0023】
また、このトナー画像形成動作に並行して給紙カセット61〜64に収容されたシートSは、シート給送装置71〜74により一枚ずつ分離給送された後、搬送ローラ77を経てレジストローラ76まで搬送される。この時、レジストローラ76は停止しており、停止状態のレジストローラ76にシートSを突き当てることにより、シートSの斜行が補正される。また、斜行が補正された後、シートSは、シート先端と中間転写ベルト31に形成されたトナー像とが一致するタイミングで回転を開始するレジストローラ76により、二次転写ローラ41と中間転写ベルト31とのニップ部に搬送される。そして、二次転写ローラ41と中間転写ベルト31により挟持搬送されると共に、二次転写ローラ41と中間転写ベルト31のニップ部を通過する際、二次転写ローラ41に印加されるバイアスにより、シートSに中間転写ベルト上のトナー画像が二次転写される。
【0024】
次に、トナー像が二次転写されたシートSは、定着前搬送装置42により定着装置5へと搬送される。そして、定着装置5は、対向するローラ、もしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果を加えてシートS上にトナー像を溶融固着させる。ここで、本カラーレーザプリンタ10は、シートSの片面に画像形成する片面モードと、シートの表裏両面に画像形成を行う両面モードを有している。そして、片面モードの場合には定着画像を有するシートSを排紙搬送パス82に、両面モードの場合には定着画像を有するシートSを反転誘導パス83に搬送すべく不図示の切換部材による経路選択が行われる。
【0025】
ここで、片面モードの場合には、定着画像を有するシートSは排紙搬送パス82を経て排紙ローラ80により、排紙トレイ65に排出される。また、両面モードの場合は、シートSは反転誘導パス83を経て第1反転ローラ対78及び第2反転ローラ対79によりスイッチバックパス84へと引き込まれる。この後、シートSは、第2反転ローラ対79の正逆転によるスイッチバック動作により、先後端が反転した状態で両面搬送パス85へと搬送される。
【0026】
次に、両面搬送パス85を搬送されたシートSはシート給送装置71〜74により搬送されてくる後続ジョブのシートSとのタイミングを合わせて搬送縦パス81に合流し、同様に搬送水平パス88からレジストローラ76を経て二次転写部へと送られる。なお、この後の裏面(2面目)に対する画像形成プロセスに関しては、既述した表面(1面目)の場合と同様である。
【0027】
図2は、シート給送装置71の構成を示す図である。なお、他のシート給送装置72〜74も同様の構成を有している。シート給送装置71は、シートSを積載する昇降自在(上下方向に回動自在)なシート積載台である中板110を有し、シート給送装置本体を兼ねるプリンタ本体10Aに着脱自在に装着されるシート収納部である給紙カセット61を備えている。また、シート給送装置71は、中板110の上方に上下方向に移動可能に設けられ、中板110に積載されたシートSを給送する給送ローラである給紙ローラ101を備えている。
【0028】
なお、
図2において、105は給紙ローラ101に接離可能に圧接し、給紙ローラ101により送り出されたシートを分離する分離部材である分離ローラである。そして、この分離ローラ105と給紙ローラ101とにより、シートを1枚に分離・給送する分離部が構成される。
【0029】
ここで、中板110は、後述する
図4に示すリフタモータ140と不図示の駆動ギアによって構成される昇降機構により、リフタ軸111aを支点として上下方向に回動するリフタ111により不図示の支点を中心に上下方向に回動する。なお、シートを給送する際にはリフタ111を上方回動させて中板110を上昇させ、給紙カセット61が引き出される際には、給紙カセット61の引き出し動作に連動して中板110をリフタ111と一体に自重又はシートの荷重により下降させる。さらに、シートSが給紙されて最上位シートの高さが低くなると、リフタモータ140が駆動され、最上位シートの高さが給紙可能高さになるように中板110を上昇させる。
【0030】
給紙ローラ101は、給紙ローラ軸101aを介して給紙ローラ軸受け102により回転自在に支持されている。そして、この給紙ローラ軸受け102は、上下方向に沿って配置された給紙ローラ規制ガイド104により、ローラ付勢部材である給紙ローラ加圧バネ103によって矢印101bで示す略下向きに付勢された状態で上下にスライド可能に支持されている。つまり、本実施の形態において、給紙ローラ101は、給紙ローラ軸受け102を介して、給紙ローラ加圧バネ103により、略下向きに加圧された状態で給紙ローラ規制ガイド104により上下に直線的にスライド可能に支持されている。なお、本実施の形態において、給紙ローラ軸受け102と給紙ローラ規制ガイド104により、給紙ローラ101を上下方向に直線的に移動可能に支持する支持部71aが構成される。
【0031】
これにより、後述するようにシートが順次給送されると、給紙ローラ101は、シートと当接しながら、給紙ローラ加圧バネ103により付勢された給紙ローラ軸受け102と一体に徐々に下降する。なお、給紙ローラ軸受け102には突起部102aが設けられている。また、プリンタ本体10Aには、
図3に示すように、センサフラグである突起部102aを検知するセンサ部である給紙ローラ位置検知センサ130が設けられており、給紙ローラ101が所定量下降すると、給紙ローラ位置検知センサ130はこれを検知する。
【0032】
そして、この給紙ローラ位置検知センサ130の検知信号は、
図4に示すように、シート給送装置71のシート給送動作を制御するCPU142に入力される。なお、このCPU142には、給紙ローラ位置検知センサ130、既述したリフタモータ140の他、給紙ローラ101を駆動させる給紙モータ131が接続されている。また、CPU142には、プリンタ本体10Aにカセットが装着されているかを検知するカセット有無検知センサ141が接続されている。また、不図示の外部PCから給紙動作を開始される給紙信号が入力される。
【0033】
そして、このように給紙ローラ101の位置を検知することにより、中板110に積載された最上位シートの高さを検知する紙面検知部である給紙ローラ位置検知センサ130から検知信号が入力されると、CPU142は所定時間リフタモータ140を駆動する。これにより、中板110が上昇し、このように中板110が上昇することにより、給紙ローラ101は給紙ローラ加圧バネ103により、シートSに圧接し、シートSに対し給紙可能な加圧力が与えられる。
【0034】
また、給紙ローラ101の下方に設けられている分離ローラ105は、不図示のトルクリミッタを内蔵している。そして、この分離ローラ105は給紙ローラ101の回転力に連れ回り、シートSが分離ニップ120まで一枚だけ送り出されたときはそのまま連れ回る。また、シートSが二枚以上送り出された場合には、トルクリミッタにより分離ローラ105の連れ回りが停止する。これにより、給紙ローラ101に摺接しているシートのみが送り出され、それ以外のシートは分離ローラ105により分離ニップ120で停止される。なお、本実施の形態ではトルクリミッタを備えた分離ローラを用いているが、この構成の代わりに摩擦パッドを用いた分離手段を用いてもよい。
【0035】
なお、分離ローラ105は、不図示の分離ローラ軸を介して
図2に示す分離ガイド106により上下方向に移動可能に保持されると共に、分離ローラ加圧バネ107により給紙ローラ101に対し加圧されている。ここで、分離ガイド106は、プリンタ本体10Aに固定されている分離ローラ規制ガイド108により直線的にスライド可能に保持されている。つまり、分離ローラ105は分離ローラ規制ガイド108を介してプリンタ本体10Aに直線的にスライド可能に保持されている。
【0036】
なお、分離ガイド106は、分離ローラ加圧バネ107により略上向きに付勢されているため、分離ローラ105は給紙ローラ101に圧接されて、給紙ローラ101との間に分離ニップ120が形成される。なお、給紙ローラ加圧バネ103の弾性力は分離ローラ加圧バネ107の弾性力よりも大きく設定されている。これにより、後述するようにシートが順次給送され、最上位のシートの位置が低くなると、給紙ローラ101は、分離ローラ105を押し下げながら下降することができるようになっている。
【0037】
次に、このように構成されたシート給送装置71の、給紙カセット61をプリンタ本体10Aへ挿入した後、シートSを上昇させるリフトアップ制御について
図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0038】
シートSが積載された給紙カセット61がプリンタ本体10Aに挿入されると、カセット有無検知センサ141がONになり(S50)、制御部としてのCPU142によりリフタモータ140が駆動を開始(ON)する(S51)。そして、このリフタモータ140の駆動力は不図示の駆動ギアを介してリフタ111に伝達されてシートSが積載されている中板110が上方回動し、シートSをリフトアップする。
【0039】
この後、最上位のシートSが給紙ローラ101に当接する。ここで、給紙ローラ101は、既述したように給紙ローラ加圧バネ103により略下向きに加圧されているので、シートSが当接していない時は、
図2に示すようにスライド可動領域の最下点に位置している。
【0040】
これにより、給紙ローラ101は、シートが当接した後は、給紙ローラ加圧バネ103の加圧力に抗して持ち上げられる。そして、このように給紙ローラ101が持ち上げられると、
図3に示すように、給紙ローラ位置検知センサ130が突起部102aを検知してONとなる(S52)。
【0041】
ここで、このように給紙ローラ位置検知センサ130がONになると、CPU142は、この後、所定時間が経過すると、リフタモータ140の駆動を停止(OFF)する(S53)。これにより、初期のリフトアップが完了する。なお、このようにリフトアップが完了したとき、給紙ローラ加圧バネ103により、給紙ローラ101はシートSに対し給紙可能な加圧力が与えられている。
【0042】
次に、シート給送装置71の給紙動作制御及び給紙動作中のリフトアップ動作制御について
図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0043】
初期のリフトアップ動作が完了した後、不図示の外部PC等から給紙信号を受け取ると、CPU142は給紙モータ131の駆動を開始する。ここで、給紙モータ131の駆動力は給紙ローラ軸101aを介して給紙ローラ101に伝達され、給紙ローラ101は
図2に示す矢印101cの方向に回転する。これにより、シートは給紙ローラ101により送り出され、この後、給紙ローラ101と分離ローラ105で形成される分離ニップ120に搬送される。そして、この分離ニップ120を通過する際、シートは略分離ニップ120の位置にて1枚ずつ分離搬送される。その後、上述したように搬送縦パス81へ送り出され、1枚の給紙動作が完了する。
【0044】
このとき、給紙ローラ位置検知センサ130がOFFでない場合(S60のN)、すなわち給紙ローラ位置検知センサ130がONの場合には、リフタモータ140は駆動せず、給紙モータ131をONのままとする(S61)。そして、1枚のシートの給紙が終了すると(S62)、給紙モータ131をOFFとする(S63)。この後、JOBが終了したかを判断し(S64)、JOBが終了していない場合には(S64のN)、S60〜S64を繰り返す。
【0045】
ところで、このように1枚のシートの給紙が終了する都度、最上位のシートの紙面位置はシート1枚分下がる。このとき、給紙ローラ101は、給紙ローラ加圧バネ103の加圧力により最上位のシートの紙面位置に追従して下降する。さらに、既述したように分離ローラ加圧バネ107のバネ力は、給紙ローラ加圧バネ103のバネ力よりも小さく設定されているので、このように給紙ローラ101が下降すると、分離ローラ105及び分離ガイド106の位置も下がる。
【0046】
そして、給紙ローラ101が
図7に示す距離Lだけ下降して破線で示した位置まで下がると、給紙ローラ位置検知センサ130がOFFになる。このように給紙ローラ位置検知センサ130がOFFになると(S60のY)、リフタモータ140を駆動(ON)する(S65)。これにより、中板110が上方回動し、シートSをリフトアップする。この後、最上位のシートSが給紙ローラ101に当接し、給紙ローラ101は、給紙ローラ加圧バネ103の加圧力に抗して持ち上げられる
。
【0047】
次に、このように持ち上げられた給紙ローラ101の位置を検知して給紙ローラ位置検知センサ130がONとなると(S66)、所定時間経過してからリフタモータ140の駆動を停止する(S67)。そして、このように制御することにより、シート給送動作中の中板110上に積載された最上位シートSの上面位置は
図7の距離Lの範囲内に維持される。
【0048】
ところで、本実施の形態のように給紙ローラ101が給紙ローラ加圧バネ103に加圧されてスライド移動可能な構成とした場合、給紙ローラ101がシートと圧接する位置はシートの積載状態によって変化する。
【0049】
図8の(a)はシートSが満載のときの状態を示している。このとき、シートSの上面の角度は水平であり、給紙ローラ101が最上位のシートと当接する位置である圧接位置150は、給紙ローラ101の最下点位置、すなわち給紙ローラ101の下端位置となる。
【0050】
図8の(b)は、シートSの積載枚数が少ない少載状態を示している。ここで、このような少載状態のとき、給紙ローラ101の圧接位置150は、最上位のシートの先端部分となる。つまり、少載状態のときの圧接位置150は、満載時の圧接位置150に比べてシート給送方向下流側となり、このように圧接位置150が下流側になると、給紙ローラ101は満載時の圧接位置150に比べて高い位置でシートと圧接する。
【0051】
図8の(c)は、圧接位置150が最も上流側にある場合を示している。なお、このように圧接位置150が最も上流側に移動するのはシートSが満載状態でかつ、給紙カセット内で、最もシート給送方向上流側に位置している場合である。通常、シートSが給紙カセット61に入らなくなることを防止するため、給紙カセット61のシート収納部の長さはシート長より長くする必要があり、長くする量は、給紙カセット61の部品寸法ばらつきを考慮して決めている。そして、本実施の形態では、給紙カセット61のシート収納部の長さをシートの称呼長さに対して2mm隙間が生じるように設定されている。
【0052】
また、シート自体の長さもばらつきがあり、このようなシート自体の長さのばらつきとしてはシート製造時の裁断工程で発生するシート裁断ばらつきと、シートの水分量によって変化する伸縮があり、合わせて最大で約±1mmのシート長さ変動を見込んでいる。よって、2mmの隙間と、最大で約±1mmのシートの長さのばらつきにより、最大3mmの先端位置ずれが発生することになる。
【0053】
したがって、このようにシートの先端位置のずれが最大のとき、圧接位置150が最も上流(最上流)となる。そして、このような状態のとき、給紙ローラ101の圧接位置150は、満載時の圧接位置150に比べて上流側となり、このように圧接位置150が上流側になると、給紙ローラ101は満載時の圧接位置150に比べて高い位置でシートと圧接する。
【0054】
ここで、このように圧接位置150の変化に伴って給紙ローラ101がシートと当接する高さ位置が変化すると、給紙ローラ101によりシートを給送する際の給紙圧が変化する。そして、この給紙圧の大きさが所定の範囲を超えると、重送や、不送りが発生し、シートを安定して給送することができなくなる。
【0055】
そこで、このような給紙ローラ101の高さ位置による給紙圧の変化を低減させるため、本実施の形態では、給紙ローラ101の付勢方向を
図8の(b)及び(c)に示すような方向に設定している。即ち、給紙ローラ101の付勢方向を
図8の(b)に示すように少載状態時の圧接位置150での給紙ローラ101の法線と、
図8の(c)に示すように圧接位置150での給紙ローラ101の法線との間に設定している。
【0056】
次に、このように給紙ローラ101の付勢方向を設定した場合のシートの積載状態に応じた給紙圧について
図8を用いて詳細に説明する。シートSが満載状態のとき、
図8の(a)に示すように給紙ローラ101が回転してシートを給送すると、給紙ローラとシート上面との圧接位置150では給紙搬送力F1と同等の大きさの反力F2が発生する。なお、このような満載状態のとき、中板110は最も下方回動した状態となっている。
【0057】
ここで、反力F2は、給紙圧をP1、シートSの紙間摩擦力をμ1とすると、F2=P1×μ1で表される。そして、本実施の形態において、P1が2.5Nのとき、μ1は0.3〜0.8程度ばらつく事が実験結果から得られている。したがって、シートSが満載状態のとき、反力F2は0.75
N〜2.0Nの範囲で変動する。
【0058】
シートSが少載状態のとき、
図8の(b)に示すように圧接位置150での給紙ローラ101の矢印Aで示す法線と、給紙ローラ101の付勢方向のとの間には角度差θ1が生じる。そして、反力F2の給紙圧P1に対しての変動成分をP2とすると、P2はF2sinθ1で表される。なお、
図8の(a)に示すシート満載状態ではシートSの角度は水平であり、圧接位置150は給紙ローラ101の最下点位置となるので給紙ローラ101に対する法線方向Aは給紙ローラ101の付勢方向101bと一致してθ1=0°となる。このため、P2=0となり給紙圧変動成分は発生しない。
【0059】
これに対し、圧接位置150が満載時の圧接位置150に比べてシート給送方向下流側となる
図8の(b)に示す少載状態のときは、圧接位置150での給紙ローラ101の矢印Aで示す法線は傾斜しているので、θ1は0にならない。ここで、圧接位置150が最も下流(最下流)にある場合の給紙ローラ中心線とシート先端位置との距離L2は2mm、給紙ローラの直径は32mmであり、このときθ1は11.5°となる。なお、このように圧接位置150が最も下流になる場合は、中板110が最も上方回動した場合である。したがって、反力F2の給紙圧P1に対しての変動成分P2の最大値はF2=2.0Nの時であり、このときP2は約0,4N(=2.0N×Sin11.5°)となる。また、このときの変動成分P2の方向は図中下向きで給紙圧を増大させる方向に作用する。
【0060】
圧接位置150が最上流にある場合、
図8の(c)に示すように、給紙ローラ中心線とシート先端位置との距離L2は1mmとなる。また、このとき圧接位置150での給紙ローラ101の法線は傾斜しているので、θ1は5.75°となる。この状態での変動成分P2は約0.2N(=2.0N×Sin5.75°)となる。なお、このときの変動成分P2の方向は図中上向きで給紙圧を減少させる方向に作用する。
【0061】
このように、本実施の形態においては、給紙ローラ101の付勢方向を最下流の圧接位置150での給紙ローラ101の法線と、最上流の圧接位置150での給紙ローラ101の法線との間に設定している。これにより、シート給送時に発生する反力による給紙圧変動を、最大でも−0.2N〜+0.4Nの範囲に収めることができる。
【0062】
なお、
図9は、このような給紙圧のバラツキとシート給送性能の関係を示したものである。
図9から明らかなように、給紙圧P1を2.5Nと設定した場合、重送が発生しない領域は給紙圧P1が3.5Nよりも小さい時である。また、不送りが発生しない領域は1.7Nよりも大きい時である。したがって、上記のように給紙圧P1を2.5Nに設定したとき、重送と不送りのない良好な給紙性能を発揮できるのは給紙圧P1が1.7N〜3.5Nの範囲である。
【0063】
ところで、給紙圧のばらつき要因としては既述したように給紙時に発生する−0.2N〜+0.4Nの給紙圧変動(図中M1)以外に、最上位シートの高さばらつきによって発生する給紙圧変動M2がある。ここで、既述したように、積載されているシートSの最上位シートの上面の高さは一定高さになるように制御しているが、部品精度やシートのカール等によってばらつくので、給紙圧変動が発生する。そして、本実施の形態において、この給紙圧変動を±0.3N(図中M2)と見込んでいる。
【0064】
したがって、既述した−0.2N〜+0.4Nの給紙圧変動(図中M1)と、±0.3Nの給紙圧変動(図中M2)を足し合わせると、給紙圧P1は称呼の圧2.5Nを中心として−0.5N〜+0.7Nの間でばらつくことになる。しかし、このような給紙圧ばらつきM1、M2を含めても、本実施の形態における給紙圧P1は2.0N(=2.5N−0.5N)〜3.2N(=2.5N+0.7N)となる。つまり、給紙圧ばらつきM1、M2を含めても本実施の形態における給紙圧P1は、
図8に示すように良好な給紙性能が発揮できる給紙圧1.7N〜3.5Nに対して±0.3Nのマージンが確保できる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態において、給紙ローラ101を上下方向に直線的に移動可能に支持すると共に、中板110に積載されたシートに圧接する方向に付勢するようにしている。さらに、本実施の形態においては、給紙ローラ101の付勢方向を、最下流の圧接位置150での給紙ローラ101の法線と、最上流の圧接位置150での給紙ローラ101の法線との間に設定している。そして、このように設定することにより、良好な給紙性能が発揮できる給紙圧を得ることができ、重送や、不送りの発生を防ぐことができ、シートを安定して給送することができる。
【0066】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図10は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す図である。なお、
図10において、既述した
図8と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0067】
図10に示すように、給紙ローラ規制ガイド104は傾斜しており、これにより給紙ローラ101の付勢方向101bは垂直方向からθ2だけ傾いている。なお、このθ2は、既述した
図8の(b)に示す圧接位置150が最も下流にある場合のθ1と同じ11.5°に設定してある。そして、このように構成した場合、
図11の(a)に示すように、給紙ローラ101の付勢方向101bと法線方向Aの角度差θ3は0°となる。よって、反力F2の給紙圧P1に対しての変動成分P2は0となる。
【0068】
一方、
図11の(b)に示すように、圧接位置150が最上流にある場合は、付勢方向101bと反力F2の法線方向Aの角度差θ3は付勢方向101bと、既述した
図8の(c)に示すθ1=5.75°の和となり17.25°となる。したがって、反力F2の給紙圧P1に対しての変動成分P2は約0.6N(=0.2N×Sin17.25°)となる。
【0069】
このように、付勢方向101bが傾いている構成の場合、シート給送時に発生する反力による給紙圧変動は0N〜+0.6Nとなり、給紙圧変動幅は既述した第1の実施の形態と同じく0.6Nである。したがって、第1の実施の形態と同等の給紙圧変動幅にすることができ、給紙性能も同等になる。
【0070】
このように、給紙ローラ101の付勢方向101bが傾いた場合、給紙圧変動幅が最小値になるのは、給紙ローラ101の付勢方向101bが圧接位置150での給紙ローラ101に対する法線方向Aの範囲にある場合である。即ち、法線方向Aの角度範囲を
図12のようにθ4とすると、θ4は圧接位置150が最も下流にある場合のθ1と圧接位置150が最も上流にある場合のθ1を足した角度になる。そして、本実施の形態において、θ4は17.25°(=11.5°+5.75°)の角度範囲となる。
【0071】
なお、この角度範囲θ4は圧接位置150の範囲によって変化するが、付勢方向101bを法線方向Aの範囲内に設定していればその角度範囲によらず給紙圧変動幅は最小になる。また、これまでの説明において、給紙ローラ101の付勢方向101bは、シート満載時の圧接位置150での法線方向と一致しているが、本発明はこれに限らない。圧接位置150の範囲のうち、最下流位置での法線方向と最上流位置での法線方向の間の角度に設定すれば、給紙圧変動M1の幅は変わらないので既述した第1の実施の形態と同様の給紙性能を発揮できる。