特許第5826024号(P5826024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5826024
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】ノイズ低減回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20151112BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20151112BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20151112BHJP
   H02J 1/02 20060101ALI20151112BHJP
   B60L 3/00 20060101ALN20151112BHJP
【FI】
   H02M3/28 E
   H03H7/09 A
   H02M3/28 Y
   H02M7/06 A
   H02J1/02
   !B60L3/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-288164(P2011-288164)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138562(P2013-138562A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤弘
(72)【発明者】
【氏名】塚田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】服部 佳晋
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 薫
(72)【発明者】
【氏名】杉田 昌行
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−223557(JP,A)
【文献】 特開平02−211056(JP,A)
【文献】 特開2011−030335(JP,A)
【文献】 特開2000−261270(JP,A)
【文献】 特開2001−292579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/06
H03H 7/09
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回路を収納する導電性のケースと、
前記ケース内において前記電源回路の正側の配線と負側の配線との間に接続され、互いに直列に接続された第1のコンデンサCp及び第2のコンデンサCnと、
前記正側の配線と前記第1のコンデンサとの接続点と前記電源回路の出力端子との間に接続された第1のインダクタンスLpと、
前記負側の配線と前記第2のコンデンサとの接続点と前記ケースへの接地点との間に接続された第2のインダクタンスLnと、
を備え、
前記第1のコンデンサCpと前記第2のコンデンサCnとの接続点が前記ケースに接地され、
前記出力端子と前記接地点との間が第3のコンデンサCbを介して接続され、
前記第1のコンデンサCp、前記第2のコンデンサCn、前記第1のインダクタLp及び前記第2のインダクタLnによってブリッジ回路が構成され、概略LpCp=LnCnの関係が成り立っていることを特徴とするノイズ低減回路。
【請求項2】
請求項1に記載のノイズ低減回路であって、
前記接地点は、前記出力端子の近傍のみに設けられていることを特徴とするノイズ低減回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノイズ低減回路であって、
前記第1のインダクタLp及び第2のインダクタLnは、0.1μH以上20μH以下であり、
前記第1のコンデンサCp及び第2のコンデンサCnは、1nF以上10nF以下であることを特徴とするノイズ低減回路。
【請求項4】
請求項3に記載のノイズ低減回路であって、
前記正側の配線及び前記負側の配線が二次側巻線に接続されたトランスを備え、
前記トランスの一次側巻線には50kHz以上300kHz以下の周波数の交流電圧が印加されることを特徴とするノイズ低減回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のノイズ低減回路であって、
降圧DC−DCコンバータを含み、車両に搭載されることを特徴とするノイズ低減回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源等のノイズ低減回路に関するものであり、特に、車載用電源のノイズ低減回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より安全、安心、快適な自動車の実現を目指して、自動車への電気機器の搭載が進められている。特に、ハイブリッド自動車や電気自動車では電気機器による制御が重要となっている。
【0003】
このような自動車用電子機器からは電磁ノイズが放射される。そこで、ノイズの伝搬経路に対応して、空間伝搬に対しては電磁シールドを用い、導体伝搬に対してはEMI(ElectroMagnetic Interference)フィルタが用いられる。
【0004】
例えば、車載用電源回路100には、図8に示すように、トランス10と出力端子Toutとの間にEMIフィルタ12が設けられる(非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「自動車のEMC対策」、トリケップス、山本秀俊著 『第7章 車載電子機器用EMC対策部品』、2008年
【非特許文献2】馬淵雄一著 『ワイヤハーネスが接続された電子機器の電源系コモンモード電流発生メカニズム及び低減手法の検討』 電子情報通信学会論文誌C, Vol. J89-C, No.11, pp.854-865 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トランス10の2次側の中点Mは電源回路100の導体ケース14及び車両ボディ16に接地されているが、これらの基準電位と出力端子Toutとの間には高周波的に電位差があり、負荷102を介して高周波電流が流れる。すなわち、従来のフィルタでは、電源回路100の外部に流れ出てノイズの原因となる高周波電流を十分に低減できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、電源回路を収納する導電性のケースと、前記ケース内において前記電源回路の正側の配線と負側の配線との間に接続され、互いに直列に接続された第1のコンデンサCp及び第2のコンデンサCnと、前記正側の配線と前記第1のコンデンサとの接続点と前記電源回路の出力端子との間に接続された第1のインダクタンスLpと、前記負側の配線と前記第2のコンデンサとの接続点と前記ケースへの接地点との間に接続された第2のインダクタンスLnと、を備え、前記第1のコンデンサCpと前記第2のコンデンサCnとの接続点が前記ケースに接地され、前記出力端子と前記接地点との間が第3のコンデンサCbを介して接続され、前記第1のコンデンサCp、前記第2のコンデンサCn、前記第1のインダクタLp及び前記第2のインダクタLnによってブリッジ回路が構成され、概略LpCp=LnCnの関係が成り立っていることを特徴とするノイズ低減回路である。
【0008】
ここで、前記接地点は、前記出力端子の近傍のみに設けられていることが好適である。
【0009】
また、前記ノイズ低減回路は、前記第1のインダクタLp及び第2のインダクタLnは、0.1μH以上20μH以下であり、前記第1のコンデンサCp及び第2のコンデンサCnは、1nF以上10nF以下であることが好適である。
【0010】
また、前記正側の配線及び前記負側の配線が二次側巻線に接続されたトランスを備え、前記トランスの一次側巻線には50kHz以上300kHz以下の周波数の交流電圧が印加されることが好適である。
【0011】
このようなノイズ低減回路は、降圧DC−DCコンバータを含み、車両に搭載される車載用電源回路等に適用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高周波の電磁ノイズを有効に抑制できる電源のノイズ低減回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における電源回路の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるノイズ低減回路の等価回路を示す図である。
図3】本発明の実施の形態におけるノイズ低減効果を示す図である。
図4】従来の電源回路における接地方法を説明する図である。
図5】本発明の実施の形態における電源回路の接地方法を説明する図である。
図6】本発明の実施の形態における電源回路の接地方法の具体例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における電源回路の接地方法を具体例を示す図である。
図8】従来の電源回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態における電源回路200は、図1に示すように、トランス20、整流ダイオード22a,22b、フィルタ回路24及びケース26を含んで構成される。電源回路200は、車両に搭載され、車両内外の負荷202に電力を供給するために用いられる。
【0015】
なお、本実施の形態では、電源回路200として絶縁型のDC−DCコンバータの例を示すが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。
【0016】
トランス20の1次側には、半導体スイッチ(例えば、IGBTやパワーMOSFET等:図示しない)が接続されており、これらの半導体スイッチによって構成されるインバータ回路によってトランス20に交流電圧が印加される。トランス20の2次側には、整流ダイオード22a,22bからなる整流回路及びフィルタ回路24が接続される。これらの回路によって、トランス20の2次側に現われる交流電圧を整流して直流電圧に変換して出力端子Toutから出力する。
【0017】
図1において、A点とB点とを高周波的に実質的に同電位とすることによって、A点から車両ボディ204を介してB点へ流れる高周波電流を抑制することができる。B点は電源回路200の出力端子Toutに直接接続されており、車両の至る所に配置された電子部品に接続される。したがって、高周波ノイズの放射の原因となるループ電流を低減することができる。
【0018】
なお、実質的に同電位とは、電源回路200から発生する高周波ノイズが他の電子機器に悪影響を及ぼさない状態となる程度の電位差の範囲内であることを意味する。車両搭載の電源回路200では、電位差は、30μV以下、好ましくは3μV以下とすることが好適である。
【0019】
フィルタ回路24は、出力に対するローパスフィルタとしての役割を果たすと共に、出力線のインピーダンスバランスを取ることによって、部品点数を増加させることなくノイズを低減する。
【0020】
フィルタ回路24は、等価的に図2に示すブリッジ回路として表すことができる。図2における電圧源Vdは、ノイズ源であり、図1における整流ダイオード22a,22b等に相当する。具体的には、整流ダイオード22a,22bのスイッチング時に瞬間的に流れる逆回復電流によってVd内部の寄生インダクタンスに発生する逆起電力が電圧源Vdとなる。
【0021】
以下、A点とB点とを同電位とする方法について示す。
【0022】
フィルタ回路24によって、出力の正側の配線はそのまま外部回路(外部負荷202)に接続され、負側の配線は出力端子Toutにできるだけ近い位置で導電性のケース26に接続される。出力端子Tout付近で正側の配線と負側の配線との間にコンデンサCbを挿入し、出力端子Tout付近において2つの配線を高周波的に短絡させる。このコンデンサCbは、配線間を高周波的に短絡すると共に、整流回路の出力のリプルを低減させる役割も果たす。そこで、コンデンサCbは、良好な周波数特性とリプル低減に十分な静電容量とすることが好適である。例えば、コンデンサCbとして、チップコンデンサとフィルムコンデンサ等の異なる特性を有する2種類のコンデンサを組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ここで、図2の等価回路からB点の電位は数式(1)として表される。
【数1】
【0024】
したがって、A点とB点とを実質的に同電位とするには数式(2)の関係が成り立てばよい。
【数2】
【0025】
数式(2)には、周波数の項(jω)が含まれていないことから、図2のブリッジ等価回路が理想的に構成されれば、電圧値には周波数依存はない。しかし、インダクタLp,Lnに寄生のキャパシタが存在したり、コンデンサCp,Cnに寄生のインダクタが存在したりすると、B点の電位に周波数依存性が生じ、所望の周波数帯域において十分なノイズ低減効果が得られなくなるおそれがある。
【0026】
例えば、ハイブリッド車両に搭載される降圧DC−DCコンバータの基本動作周波数(キャリア周波数)は、50kHzから300kHz程度である。この周波数帯域において、出力信号のリプルを低減し、AMラジオ帯及びFMラジオ帯のノイズを低減するために適切なインダクタLp,Lcは0.1μH以上20μH以下であり、コンデンサCp,Cnは1nF以上10nF以下である。
【0027】
図3は、本実施の形態における電源回路200において、ブリッジ等価回路のバランス状態とインバランス状態とにおいて電位差Vcpnを測定した結果を示す。図3から明らかなように、ブリッジ等価回路をバランスさせることによって、60MHzから120MHzまでの周波数帯域において電位差Vcpnが低減できた。
【0028】
また、従来技術では、図4に示すように、出力の負側の配線から導電性のケース26に対して複数の接地点GNDを設ける構成が採用されていた。これに対して、本実施の形態における電源回路200では、ノイズ低減の効果を顕著とするために出力の負側の配線はケース26の電位と一致させることが好ましく、図5に示すように、負側の配線28とケース26との接地は接地点Xの一箇所で行うことが好適である。また、出力端子Toutの近傍において負側の配線28とケース26と短絡させることが好適である。負側の配線28は、FMラジオ帯においてもインピーダンスが十分に低い値(1Ω以下)となるように1nH以下の寄生インダクタンス値となるよう配置するのが好ましい。
【0029】
具体的には、図6(a)に示すように、ケース26を蓋26aと本体26bとに分け、電源回路200の基板30の負側の配線28とケース26の本体26bとを導電性の負側プレート32で接続する。さらに、負側プレート32の少なくとも一部を覆うように、基板30の正側の配線34から導電性の正側プレート36を引き出して出力端子Toutとする。このとき、図6(b)に示すように、ケース26の本体26bには、負側プレート32をネジ等で固定するための固定部(ネジ穴)38を設ける。
【0030】
また、図7(a)に示すように、電源回路200の基板30の負側の配線28とケース26の本体26bとを導電性の負側プレート32で接続し、さらに、導電性のカバープレート40で正側プレート36を覆う構成としてもよい。このとき、図7(b)に示すように、ケース26の本体26bには、負側プレート32をネジ等で固定するための固定部(ネジ穴)38を2箇所設けた構成としてもよい。
【0031】
以上のように、本実施の形態における電源回路によれば、コンデンサ及びインダクタのブリッジからなるバランス回路によって、整流ダイオードの突入電流(逆回復電流等)に起因するノイズ電圧が出力端子に誘起されることを防ぐことができる。また、出力端子が高周波的にケースと同電位となることで、出力端子と負荷とを接続する配線における高周波電流を抑制することができる。また、負荷と電源回路との間の車両のボディに流れる高周波電流も抑制することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 トランス、12 フィルタ、14 導体ケース、16 車両ボディ、20 トランス、22a,22b 整流ダイオード、24 フィルタ回路、26 ケース、100,200 電源回路、102,202 負荷、204 車両ボディ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8