(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1による電波分離装置について、
図1から
図8までを参照しながら説明する。
図1はこの発明の実施の形態1による電波分離装置を示す処理ブロック図である。
図において、受信装置100は、複数の系にそれぞれ所属する複数の端末からの電波を受信する。
信号分離装置200は、受信装置100から得られる混信受信信号に対して所定のアルゴリズムを適用し、混信受信信号を系毎の周波数チャネルに分離する。
表示装置300は、信号分離装置200による系毎に分離された周波数チャネルを表示する。
【0012】
また、信号分離装置200において、周波数チャネル抽出手段201は、受信装置100から得られる混信受信信号に対して、発生した周波数チャネルを単位受信時間毎に抽出する。
端末分離手段202は、周波数チャネル抽出手段201により抽出された信号に対して、端末受信間隔毎の同一番目における単位受信時間の信号を抽出する。
【0013】
単独受信信号抽出手段203は、端末分離手段202により抽出された信号のうち、単位受信時間に単独の信号を受信している信号を抽出する。
周波数チャネル群判定行列生成手段204は、単独受信信号抽出手段203により抽出された信号に対して、端末受信間隔毎の同一番目における単位受信時間の信号に出現する周波数チャネル群の組み合わせを判定する周波数チャネル群判定行列を生成する。
系分離手段205は、周波数チャネル群判定行列生成手段204により生成された周波数チャネル群判定行列中で、同一周波数チャネルを使用している信号群同士を同一の系として分離する。
【0014】
図1の例では、電波分離装置の構成要素である受信装置100、信号分離装置200、および表示装置300が、例えば、マイコン等を実装している半導体回路基板等のハードウエアで構成されていることを想定している。しかし、電波分離装置がコンピュータで構成されている場合には、受信装置100、信号分離装置200、および表示装置300の処理内容が記述されているプログラムを当該コンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、受信装置100、信号分離装置200、および表示装置300の機能を実現するようにしても良い。
【0015】
次に動作について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1による信号分離の対象となる通信モデルである。
図2において、系1には端末1から端末4が所属し、周波数チャネルf
4,f
5,f
8を用いて通信を行っている。系2には端末5から端末7が所属し、周波数チャネルf
1,f
3,f
7を用いて通信を行っている。系3には端末8から端末10が所属し、周波数チャネルf
2,f
6を用いて通信を行っている。
図2の通信モデルでは、誤検出は無いものとする。
【0016】
まず、受信装置100により、
図3に示すような信号が受信信号として得られる。
図3はこの発明の実施の形態1による信号分離の対象となる信号モデルである。
図3の縦軸は周波数、f
1〜f
8は周波数チャネル、横軸は単位受信時間(T
11〜T
18,T
21〜T
28,T
31〜T
38)をそれぞれを示す。系1の信号を三角、系2の信号を丸、系3の信号を四角で表している。
図3より、同じ系の信号は端末受信間隔毎に時分割で受信され、異なる系の信号と混信して受信される。
ここで、単位受信時間とは、1つの無線キャリアを複数の端末で時間的に分割して使用する通信において、1つの端末が1回の通信で割り当てられる時間長のことを言う。
また、端末受信間隔とは、1つの無線キャリアを複数の端末で時間的に分割して使用する通信において、1つの端末がある通信を割り当てられてから、次回の通信が割り当てられるまでの時間間隔のことを言う。
【0017】
続いて、信号分離装置200により、信号分離を行う。
まず、周波数チャネル抽出手段201により、発生した周波数から周波数チャネルf
1〜f
8が抽出される。
図4に発生した周波数チャネルを抽出した結果を示す。ここで、
図4の縦軸は周波数チャネル、横軸は単位受信時間を示す。
【0018】
続いて、端末分離手段202により、
図4の信号から端末受信間隔毎に信号を抽出し、並べ替える。
すなわち、端末受信間隔で信号を受信する単位受信時間は、T
lkで表した場合、kが等しい信号である。例えば、
図4において、T
11の信号と端末受信間隔で受信される信号は、T
21,T
31,・・・である。
図5に
図4における単位受信時間を、端末受信間隔毎に並べ替えたものを示す。
【0019】
続いて、単独受信信号抽出手段203により、単独受信信号を抽出する。
図6に
図5において、同一単位受信時間に1つの信号を受信している単位受信時間の信号のみを抽出したものを示す。
【0020】
次に、周波数チャネル群判定行列生成手段204により、周波数チャネル群判定行列を生成する。
図7および
図8を用いて周波数チャネル群判定行列の生成方法を示す。
図7に、
図6に示すモデルの周波数チャネル群判定行列を示す。
【0021】
図6の単位受信時間T
l1では、f
1が2回とf
7が1回観測されている。よって、
図7のT
l1の列では、f
1の行に2、f
7の行に1の値が入る。
同様に、T
l2では、f
4とf
5、T
l4では、f
4とf
8、T
l6では、f
1とf
3、T
l7では、f
2とf
6の値が入る。
【0022】
以上により、端末受信間隔毎に受信される時刻群における周波数チャネル群判定行列を求めることができる。
【0023】
さらに、系分離手段205により、周波数チャネル群判定行列を用いて、異なる周波数チャネル群の中で同じ系となる組み合わせを判定する。
図8に系分離方法の例を示す。
図8では、異なる周波数チャネル群の中で同じ系となる組み合わせを同じ系として判定している。
【0024】
図8(a)では、まず、周波数チャネル群判定行列のf
1の行に注目する。検出カウント数の閾値を1とした場合、カウント数が閾値以上となる時刻群は、T
l1とT
l6であることから、T
l1とT
l6の時刻群で送信された周波数チャネル群は、同じ系に属する周波数チャネル群であることがわかる。そこで、T
l1とT
l6の列を加算し、
図8(b)のT
l1,T
l6の列に書き換える。
【0025】
同様に、周波数チャネル群判定行列のf
4の行に着目すると、カウント数が閾値以上となる時刻群は、T
l2とT
l4であることから、T
l2とT
l4の時刻群で送信された周波数チャネル群は、同じ系に属する周波数チャネル群であることがわかる。そこで、T
l2とT
l4の列を加算し、
図8(b)のT
l2,T
l4の列に書き換える。
【0026】
図8(b)では、複数の時刻群で重複する周波数チャネルは無いため、分離が完了したと判断できる。
図8(b)において、同一の時刻群に属する周波数チャネル群を、同一の系として分離する。
すなわち、f
4,f
5,f
8の組み合わせと、f
1,f
3,f
7の組み合わせと、f
2,f
6の組み合わせの3種類のグループに周波数チャネルを分離することができる。
続いて、得られた系分離結果を表示装置300に表示する。
【0027】
以上のように、この実施の形態1によれば、各系で使用する周波数チャネルの組み合せが異なる条件下で、周波数チャネルの重複度を利用して、混信受信信号として受信された信号を系毎に分離することができる。
【0028】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2による電波分離装置について、
図9から
図15までを参照しながら説明する。
図9はこの発明の実施の形態2による電波分離装置を示す処理ブロック図である。
図において、信号分離装置200aにおける、系数抽出手段206は、周波数チャネル抽出手段201により抽出された信号の中から、単位受信時間内に重複して受信される信号数の最大値およびその周波数チャネルを抽出して、その最大値から系の数を推測する。
【0029】
系分離手段205aは、系数抽出手段206により抽出された単位受信時間の周波数チャネルおよび系の数に基づいて信号群の系を分離する。
系分離手段205aにおける、同一周波数チャネル信号抽出手段207は、系数抽出手段206により抽出された単位受信時間の周波数チャネルと同一の周波数チャネルで受信された信号を抽出する。
端末分離手段202aは、同一周波数チャネル信号抽出手段207により抽出された信号の中で単位受信時間内に単独で受信されている信号の端末受信間隔毎の周波数チャネルを抽出する。
その他の構成については、実施の形態1の
図1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0030】
次に動作について説明する。
図10にこの発明の実施の形態2による信号分離の対象となる信号モデルから周波数チャネルを抽出した結果を示す。
まず、周波数チャネル抽出手段201により、
図10に示すように、発生した周波数チャネルを単位受信時間毎に抽出する。
【0031】
次に、系数抽出手段206について説明する。
図10では、同時に受信される最大信号数は3であることから、系の数は3以上であることがわかる。そこで、最大同時受信数である3つの信号を同時に受信している単位受信時間T
15における信号を起点として系の分離を行う。
【0032】
単位受信時間T
15において受信されている信号は、全て異なる系の信号であることから、周波数チャネルf
4で受信された信号を系1、f
7で受信された信号を系2、f
2で受信された信号を系3とそれぞれおく。
【0033】
続いて、系2を例として、
図11から
図15までを用いて系分離手段205aについて説明する。
まず、同一周波数チャネル信号抽出手段207について説明する。同一周波数チャネル信号抽出手段207では、同一の周波数チャネルで受信された信号が同じ系であると判定する。
【0034】
図11に、周波数チャネルf
7で受信された信号を抽出する方法を示す。
系数抽出手段206により、系2にはf
7の周波数チャネルが属していることから、
図11で示すように、f
7の周波数チャネルで受信される全ての信号を系2の信号と判定する。
【0035】
次に、系2と判定されている信号のうち、単独受信している信号について、端末分離を行う。ここでは、
図11より、T
21が単独受信となっているため、T
21と同一端末の信号を抽出する。
【0036】
続いて、端末分離手段202aについて説明する。端末分離手段202aでは、端末受信間隔毎に出現する信号、すなわち、同一端末により送信される信号が同じ系であると判定する。
【0037】
図12にT
21から端末受信間隔の整数倍の時間間隔で発生する信号を抽出する方法を示す。
同一周波数チャネル信号抽出手段207により、系2であると判断された信号のうち、単独で受信されている信号のうちの1つを抽出し、そこから端末受信間隔の整数倍の時間間隔で発生する信号が系2であると判断する。
【0038】
図12では、T
21で信号が単独で受信されていることから、その端末受信間隔の整数倍の時間間隔で発生するT
11およびT
31の信号が系2であると判断している。
ここで、T
11およびT
31では、f
1の周波数チャネルを用いているため、系2にはf
1の周波数チャネルが属することがわかる。
【0039】
以後、該当する信号が無くなるまでこれらの動作を繰り返すことにより、系に属する信号を判断する。
【0040】
図13に、周波数チャネルf
1で受信された信号を抽出する方法を示す。周波数チャネルf
1で受信されている信号を系2の信号として抽出する。これにより、T
16,T
18,T
36の単位受信時間で受信された信号が系2であることがわかる。
【0041】
続いて、系2と判定されている信号のうち、単独受信している信号について、端末分離を行う。ここでは、
図13より、T
16が単独受信となっているため、T
16と同一端末の信号を抽出する。
【0042】
図14に、単位受信時間T
16から端末受信間隔の整数倍の時間間隔で発生する信号を抽出する方法を示す。単位受信時間T
16から端末受信間隔の整数倍の時間間隔で発生する信号を系2の信号として抽出する。これにより、周波数チャネルf
3で受信された信号が系2であることがわかる。
【0043】
図15に、周波数チャネルf
3で受信された信号を抽出する方法を示す。周波数チャネルf
3で受信されている信号を系2の信号として抽出する。これにより、T
35の単位受信時間で受信された信号が系2であることがわかる。
【0044】
ここで、系2と判定されている信号のうち、単独受信である信号は全て端末分離済みである。よって、系2の分離を完了する。
【0045】
系1および系3についても、同様に系分離を行う。
【0046】
以上のように、この実施の形態2によれば、各系で使用する周波数チャネルの組み合せが異なる条件下で、周波数チャネルの重複度を利用して、混信受信信号として受信された信号を系毎に分離することができる。
【0047】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3による電波分離装置について、
図16から
図20までを参照しながら説明する。
図16はこの発明の実施の形態3による電波分離装置を示す処理ブロック図である。
図において、信号分離装置200bにおける、未分離系判定手段208は、系分離手段205aにより一部の全系が分離されたかどうか判定を行い、一部の系が未分離と判定された場合、分離済みの周波数チャネル群で受信された信号を消去し、未分離の系の信号のみで構成されるモデルに対して再度系分離を行う。
その他の構成については、実施の形態2の
図9と同様なので、重複する説明を省略する。
【0048】
次に動作について説明する。
図17にこの発明の実施の形態3による信号分離の対象となる信号モデルから周波数チャネルを抽出した結果を示す。対象とするモデルは、各系の時間重複度が高く、単独単位受信時間が存在しない系があるものとする。
【0049】
図17のようなモデルに対して、系分離手段205aまでを実施した場合、系の信号が完全に分離できない。
【0050】
図18に、単位受信時間T
15を起点として、系分離手段205aまでを実施した結果を示す。ここで、着色されている記号は分離済み信号、白抜きとなっている記号は未分離信号を示す。
図18に示すように、系2は完全に分離可能であるが、系1および系3は未分離信号が残ってしまう。
【0051】
そこで、未分離系判定手段208を用いて、未分離系を判定し、再分離を行う。
これは、例えば、分離済み系を削除する際に、信号が残っていれば、未分離系があると判定することができる。
【0052】
未分離系判定手段208では、未分離の信号がある場合、まず、分離済みの系を削除する。
図19に、分離済み系を削除した結果を示す。系2の信号を削除したことにより、系1の信号のうち、単独受信している単位受信時間が発生する。
【0053】
続いて、
図19に示すモデルに対して、系数抽出手段206から系分離手段205aを実施する。これにより、系1が完全に分離される。
【0054】
さらに、未分離系判定手段208を再度用いて、系3が未分離であることを判定する。
分離済みである系1の信号を削除し、
図20で示すモデルに対して同様に系分離を行う。
【0055】
系分離の結果、未分離系は無くなるため、未分離系判定手段208は全系が完全に分離されたと判断し、処理を終了する。
【0056】
以上のように、この実施の形態3によれば、各系の時間重複度が高く、単独単位受信時間が存在しない系があるモデルに対しても系分離を完全に可能にすることができる。
【0057】
ここでは、実施の形態2に対して未分離系判定手段208を加えて系分離を行う方法を述べたが、実施の形態1に対して未分離系判定手段208を用いても、同様に系分離が可能である。
【0058】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4による電波分離装置について、
図21から
図23までを参照しながら説明する。
図21はこの発明の実施の形態4による電波分離装置を示す処理ブロック図である。
図において、信号分離装置200cは、単位受信時間内で周波数切り替えが行われる信号を受信する。
その他の構成については、実施の形態1の
図1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0059】
次に動作について説明する。
図22にこの発明の実施の形態4による信号分離の対象となる信号モデルから周波数チャネルを抽出した結果を示す。
図22に示すように、1単位受信時間内で周波数切り替えを行い、複数の周波数チャネルを受信する。
【0060】
図23に、
図22の信号モデルから生成した周波数チャネル群判定行列を示す。
図22より、まず、T
11で受信された信号に着目する。T
11では、f
1の周波数チャネルで2回、f
7の周波数チャネルで1回、T
21では、f
1,f
3,f
7の周波数チャネルでそれぞれ1回ずつ信号が検出されているため、それぞれを加算したカウント数を、
図23の周波数チャネル群判定行列のT
l1の列に加算する。
【0061】
続いて同様に、T
12で受信された信号に着目する。T
12では、f
4,f
5,f
8の周波数チャネルでそれぞれ1回ずつ、T
22では、f
4の周波数チャネルで2回、f
5の周波数チャネルで1回信号が検出されているため、それぞれを加算したカウント数を、
図23の周波数チャネル群判定行列のT
l2の列に加算する。
【0062】
以上のように、この実施の形態4によれば、単位受信時間内で周波数切り替えが行われる信号を受信した場合にも系毎に分離することができる。
【0063】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5による電波分離装置について、
図24および
図25を参照しながら説明する。
図24はこの発明の実施の形態5による電波分離装置を示す処理ブロック図である。
図において、信号分離装置200dにおける、系分離手段205dは、周波数チャネル群判定行列中で、予め設定された閾値以上の要素のみ有効とする。
その他の構成については、実施の形態1の
図1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0064】
次に動作について説明する。
図25に失検出と誤検出がある場合の周波数チャネル群判定行列の例を示す。
図25より、失検出と誤検出が同時に発生する場合、観測される各時刻群におけるカウント数には誤った周波数チャネルにカウントが発生する。この誤カウントを閾値により除去し、正しいカウントの部分のみを抽出するため、系分離手段205dにより閾値以上のカウント数の信号のみを検出する。ここでは、簡単のため閾値を5とした。
【0065】
その後、実施の形態1から実施の形態4と同様に、閾値以上のカウント値を持つ要素に対応する周波数チャネルの情報を用いて各時刻群を組み合わせ、系分離を行う。
【0066】
以上のように、この実施の形態5によれば、誤検出や失検出がある場合でも、受信された信号の系毎の分離への影響を低減することができる。
【0067】
ここでは、誤検出や失検出がある場合について述べたが、信号の生成・消滅により、誤カウントが発生する場合についても、同様に処理を行うことが可能である。
【0068】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6による電波分離装置について、
図26から
図29までを参照しながら説明する。
図26はこの発明の実施の形態6による電波分離装置を示す処理ブロック図である。
図において、信号分離装置200eにおける、端末分離手段202eは、周波数チャネル抽出手段201により抽出された信号に対して、端末受信間隔毎の同一番目における単位受信時間の信号を抽出するとともに並び替え、信号数が1の単位受信時間が連続する場合は同じ系の信号と見なし、信号数が0または2以上の単位受信時間の場合は異なる系との境界と見なす。
【0069】
周波数チャネル群判定行列生成手段204eは、端末分離手段202eにより見なされた異なる系との境界に応じて、区分された周波数チャネル群判定行列を生成する。
誤周波数チャネル群判定手段209は、端末分離手段202eにより信号数が2以上と判定された単位受信時間の複数の周波数チャネルを抽出し、それら抽出された周波数チャネルに応じて、周波数チャネル群判定行列生成手段204eにより生成された周波数チャネル群判定行列の誤りを判定する。
その他の構成については、実施の形態1の
図1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0070】
次に動作について説明する。
図27から
図29を用いて端末分離手段202eについて説明する。
図27に信号の発生・消滅がある場合の通信モデルを示す。
図27より、信号の発生・消滅がある場合、1つの時刻群に複数の系が混在する。そこで、それぞれの系を分離するため、受信信号数が1である単位受信時間が連続している場合は同じ系の信号と見なし、受信信号数が0または2以上となった場合、信号が発生または消滅したと判断し、異なる時刻群として分離する。
【0071】
図28に時刻群を受信信号数が1である部分に限定して区切った場合の通信モデルを示す。
図28より、単位受信時間T
12,T
52,T
36では、信号数が0となっており、単位受信時間T
34では、信号数が2となっているため、ここで系が切り替わっていると判断している。
【0072】
これにより、T
l2,T
l4は異なる系を正しく分離していることがわかる。一方、T
l1の時刻群では、系2が消滅した単位受信時間に系1が発生しているため、信号が重複受信される単位受信時間、および信号が未受信な単位受信時間が無い。そのため、系が分離されていないことがわかる。これについては、後で対処法を説明する。
【0073】
続いて、単独受信信号抽出手段203により、実施の形態1と同様に単独受信信号を抽出する。
【0074】
さらに、周波数チャネル群判定行列生成手段204eにより、周波数チャネル群判定行列を生成する。
図29に受信信号数で区切った新たな時刻群を用いて作成した周波数チャネル群判定行列を示す。先に述べたように、T
l1の時刻群では、時刻群の分離が行えていないため、このまま系分離を行うと、系1と系2とが同じ系として判定されてしまう。
【0075】
そこで、誤周波数チャネル群判定手段209により、受信信号数で区切った新たな時刻群における周波数チャネルの群の組み合わせを用いて、その時刻群は複数の系が存在しているかどうかを判定する。
【0076】
判定方法は、例えば、重複して受信された信号を用いる方法がある。
図28のT
34では、f
1とf
5の周波数チャネルが同時に受信されている。同じ系の信号は同時に送信されることは無いことから、周波数チャネルf
1とf
5は異なる系であると予想できる。
【0077】
ここで、周波数チャネル群判定行列のT
l1の列に注目すると、f
1とf
5の周波数チャネルの両方にカウントがあることがわかる。このことから、この時刻群には、複数の系が混在していることがわかる。
【0078】
このように、周波数チャネル群判定行列において、重複周波数チャネル情報を蓄積し、重複度の高い周波数チャネルの組み合わせを持つ時刻群を消去し、単独の系のみで構成される時刻群のみを残すことにより、系分離が可能となる。
【0079】
また、これ以外の方法でも、例えば、周波数切り替えを行う通信モデルにおいては、単位受信時間内で発生する周波数チャネルの組み合わせは同じ系の周波数であることがわかる。よって、その情報を用いて判定することが可能である。
【0080】
このように、周波数チャネル群判定行列において、単位受信時間内で発生する周波数チャネルの組み合わせを蓄積し、その中で全くまたはほとんど発生しない周波数チャネルの組み合わせが含まれる時刻群は、複数の系が含まれている可能性が高い。よって、その周波数チャネルの組み合わせを持つ時刻群の信号を削除し、それ以外の時刻群の信号を残す。
【0081】
以上の方法によっても、単独の系のみで構成される時刻群のみを残すことにより、系分離が可能となる。
【0082】
以上のように、この実施の形態6によれば、信号の発生・消滅または誤検出や失検出がある場合でも、受信された信号の系毎の分離への影響を低減することができる。
また、誤周波数チャネル群判定手段209により、周波数チャネル群判定行列の誤り、すなわち、時刻群に複数の系が混在しているのを判定することができる。
【0083】
ここでは、系分離手段205を用いて系分離を行ったが、実施の形態5の
図24に示した系分離手段205dを用いても良い。
【0084】
実施の形態7.
この発明の実施の形態7による電波分離装置について、
図30から
図32までを参照しながら説明する。
図30はこの発明の実施の形態7による電波分離装置を示す処理ブロック図である。
図において、信号分離装置200fにおける、周波数チャネル群判定行列生成手段204fは、受信S/N比が高い信号に対する要素には高い値になるように重み付けし、受信S/N比が低い信号に対する要素には低い値になるように重み付けした周波数チャネル群判定行列を生成する。
その他の構成については、実施の形態1の
図1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0085】
次に動作について説明する。
雑音が入っている信号モデルにおいて、実施の形態6までは、一定の閾値を超える信号を検出し、信号レベルによらず、処理を行っていた。
【0086】
一方、この実施の形態7では、信号レベルを保持し、情報として活用する。
図31に信号モデルの例を示す。
まず、単位受信時間T
11の信号レベルが1、単位受信時間T
21の信号レベルが0.5、単位受信時間T
31の信号レベルが1であるとする。ここで、各単位受信時間における信号レベルに相当するカウント数を各要素に加える。
【0087】
図32に受信S/Nにより重み付けしたカウントを加算した周波数チャネル群判定行列を示す。
図32のT
l1列目では、単位受信時間T
21でf
7の信号レベルが0.5であったことから、信号レベルに相当するカウント数0.5を加算している。
【0088】
次に、単位受信時間T
12の信号レベルが1、単位受信時間T
22の信号レベルが1.5、単位受信時間T
32の信号レベルが1であるとする。
図32のT
l2列目では、単位受信時間T
22でf
5の信号レベルが1.5であったことから、信号レベルに相当するカウント数1.5を加算している。
【0089】
さらに、単位受信時間T
14の信号レベルが1、単位受信時間T
24の信号レベルが0.5、単位受信時間T
34の信号レベルが1であるとする。
図32のT
l4列目では、単位受信時間T
24でf
4の信号レベルが0.5であったことから、信号レベルに相当するカウント数0.5を加算している。
【0090】
以上の方法により、信号レベルによって重み付けされた重複度判定行列を生成することが可能である。
【0091】
以上のように、この実施の形態7によれば、受信S/N比により重み付けされた周波数チャネル群判定行列を生成することで、受信S/N比が低い信号に対しても、受信された信号の系毎の分離への影響を低減することができる。
【0092】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。