(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D)が、分子内に少なくともメトキシ基またはエトキシ基の何れかを有することを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)と、カルボキシル基及び水酸基を含有する(メタ)アクリル系共重合体(B)と、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対して、トリレンジイソシアネート系化合物(C)を5〜20重量部と、エポキシ基含有シランカップリング剤(D)とを含む粘着剤組成物が、耐久性と白抜け抑制能力に優れることを見出した。
【0013】
本願において(メタ)アクリル系共重合体とは、アクリル酸エステル単量体またはメタクリル酸エステル単量体を主成分とし、少なくともアクリル酸エステル単量体またはメタクリル酸エステル単量体と、反応性官能基を有する単量体とを共重合させた共重合体である。なお、本願において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を示す意味で用いる。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル構造を有するものであれば特に限定するものではなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18の直鎖若しくは分枝アルキルエステル、更にはこれらの各種誘導体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
反応性官能基を有する単量体としては、例えば、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、グリシジル基含有単量体、アミド基,N−置換アミド基含有単量体、三級アミノ基含有単量体等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−
ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、メタリルアルコール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
グリシジル基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
アミド基,N−置換アミド基含有単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
三級アミノ基含有単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明に用いる(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体とカルボキシル基含有単量体とを共重合体成分として含有するものである。前記(メタ)アクリル系共重合体(A)において、共重合体成分として(メタ)アクリル酸エステル単量体が含まれる割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して80重量%以上とすることが好ましい。
【0022】
また、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)において、共重合体成分としてカルボキシル基含有単量体が含まれる割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して0.5〜5重量%とすることが好ましく、1〜3重量%とすることがより好ましい。カルボキシル基含有単量体の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して0.5重量%以上であれば、粘着剤組成物の凝集力、耐久性を高くすることができるため好ましい。一方、カルボキシル基含有単量体の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して5重量%以下であれば、リワーク性に優れるため好ましい。
【0023】
本発明に用いる(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、50万〜250万であることが好ましく、100万〜250万であることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が50万以上であれば、十分な凝集力がえられ、気泡の発生を抑制できるため好ましい。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が250万以下であれば、粘着剤組成物を光学フィルム等に容易に塗工できるため好ましい。
【0024】
本発明に用いる(メタ)アクリル系共重合体(B)は、共重合体成分として(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有単量体、及び水酸基含有単量体を含むものである。前記(メタ)アクリル系共重合体(B)において、共重合体成分として(メタ)アクリル酸エステル単量体が含まれる割合は、(メタ)アクリル系共重合体(B)に対して80重量%以上とすることが好ましい。
【0025】
また、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)において、共重合体成分としてカルボキシル基含有単量体が含まれる割合は、(メタ)アクリル系共重合体(B)に対して0.1〜5重量%とすることが好ましく、0.5〜3重量%とすることがより好ましい。カルボキシル基含有単量体の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(B)に対して0.1重量%以上であれば、粘着剤組成物の耐久性を高くすることができるため好ましい。一方、カルボキシル基含有単量体の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(B)に対して5重量%以下であれば、リワーク性に優れるため好ましい。
【0026】
また、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)において、共重合体成分として水酸基含有単量体が含まれる割合は、(メタ)アクリル系共重合体(B)に対して0.01〜2重量%とすることが好ましく、0.1〜1重量%とすることがより好ましい。水酸基含有単量体の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(B)に対して0.01重量%以上であれば、白抜け抑制能力が高く好ましい。一方、水酸基含有単量体の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(B)に対して2重量%以下であれば、粘着剤の剥がれを抑制できるため好ましい。
【0027】
本発明に用いる(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、50万〜250万であることが好ましく、100万〜250万であることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が50万以上であれば、十分な凝集力が得られ、気泡の発生を抑制できるため好ましい。また、(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が250万以下であれば、粘着剤組成物を光学フィルム等に容易に塗工できるため好ましい。
【0028】
本願において、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は下記の方法により測定された値である。
【0029】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)アクリル系共重合体溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
(条件)
GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム:TSK−GEL GMHXL4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
標準試料:標準ポリスチレン
流速:0.6ml/min、カラム温度:40℃
【0030】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法を用いることができる。なかでも、重合により得られる共重合体の混合物から粘着剤組成物を製造するにあたり、処理工程が比較的簡単で、且つ短時間で行えることから溶液重合により重合することが好ましい。
【0031】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流下で、撹拌しながら数時間加熱反応させる等の方法を使用することができる。なお、本発明に用いる(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の重量平均分子量は、反応温度、時間、溶媒量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量にすることができる。
【0032】
本発明の粘着剤組成物は、トリレンジイソシアネート系化合物(C)を含有する。トリレンジイソシアネート系化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びこれらの二量体、三量体、並びにトリメチロールプロパン付加体等が挙げられる。
【0033】
本発明の粘着剤組成物におけるトリレンジイソシアネート系化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対し、5〜20重量部とすることが好ましい。トリレンジイソシアネート系化合物(C)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対し5重量部以上であれば、白抜け抑制能力に優れるため好ましい。一方、トリレンジイソシアネート系化合物(C)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対し20重量部以下であれば、(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)に対する相溶性を確保することができ、かつ粘着剤として十分なタックが得られるため好ましい。
【0034】
また、本発明の粘着剤組成物は、所望により、上記トリレンジイソシアネート系化合物(C)以外の架橋剤を併用することも可能である。
【0035】
本発明の粘着剤組成物は、エポキシ基含有シランカップリング剤(D)を含有する。
【0036】
本発明に用いることができるエポキシ基含有シランカップリング剤(D)の具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等の3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等の2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランのコポリマー、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとメチルトリメトキシシランのコポリマー等の1分子中にエポキシ基と加水分解性のアルコキシ基を含むシリコーンアルコキシオリゴマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明におけるエポキシ基含有シランカップリング剤(D)として、分子内に少なくともメトキシ基またはエトキシ基の何れか一つを有するものを用いると、粘着力およびリワーク性を容易に調節することができるため好ましい。
【0038】
本発明におけるエポキシ基含有シランカップリング剤(D)として、2種以上のものを併用すると、耐久性およびリワーク性を容易に調節することができるため好ましい。
【0039】
更に、本発明におけるエポキシ基含有シランカップリング剤(D)として、オリゴマーであるものを用いると、揮発性が低いため粘着力、耐久性、リワーク性等の性能が長期間安定して得られるため好ましい。
【0040】
本発明に用いることができるエポキシ基含有シランカップリング剤(D)としては、信越化学工業社製の製品名KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBE−403、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1095A等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の粘着剤組成物におけるエポキシ基含有シランカップリング剤(D)の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対し、0.02〜1重量部とすることが好ましく、0.1〜0.7重量部とすることがより好ましい。エポキシ基含有シランカップリング剤(D)の配合量を0.02重量部以上にすると、粘着力およびリワーク性を十分調節することができるため好ましい。また、エポキシ基含有シランカップリング剤(D)の配合量を1重量部以下にすると、粘着力が高くなりすぎたり、リワーク性が悪くなることがなく好ましい。
【0042】
本発明の粘着剤組成物は、アミノ変性シリコーン(E)を含有していてもよい。本発明の粘着剤組成物は、アミノ変性シリコーン(E)の含有量を調整することにより、容易に粘着力およびリワーク性を制御することができる。また、本発明の粘着剤組成物に、アミノ変性シリコーン(E)を含有させることにより、粘着力の経時変化を抑制することができる。
【0043】
前記アミノ変性シリコーン(E)としては、側鎖にアミノ基を有するものを用いることがより好ましい。
【0044】
本発明に用いることができるアミノ変性シリコーン(E)としては、信越化学工業社製の製品名KF−868、KF−865、KF−864、KF−859、KF−393、KF−860、KF−880、KF−8004、KF−8002、KF−8005、KF−867、X−22−3820W、KF−869、KF−861、X−22−3939A、KF−877等を挙げることができる。また、東レ・ダウコーニング社製の製品名BY16−205、FZ−3760、SF8417、BY16−849、BY16−892、FZ−3785、BY16−872、BY16−213、BY16203、BY16−898、BY16−890、BY16−891、BY16−893、FZ−3789等が挙げられる。本発明に用いることができるアミノ変性シリコーン(E)としては、上記例示に何ら限定されるものではない。
【0045】
本発明の粘着剤組成物におけるアミノ変性シリコーン(E)の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対し、0.05〜1重量部とすることが好ましく、0.1〜0.7重量部とすることがより好ましい。アミノ変性シリコーン(E)の配合量を0.05重量部以上にすると、粘着力およびリワーク性を容易に制御することができ、粘着力の経時変化を抑制することができるため好ましい。また、アミノ変性シリコーン(E)の配合量を1重量部以下にすると、粘着力が著しく低下することがないため好ましい。
【0046】
本発明の粘着剤組成物は、所望により、水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)を含有することができる。本発明における粘着剤組成物に、水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)を含有させると更に白抜けを抑制することができるため好ましい。
【0047】
本発明において用いることができる水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)としては、例えば、ロジンと多価アルコールとの反応物、ロジンとエポキシ化合物との反応物、ロジンフェノールを使用することが出来る。上記ロジンとしては、例えば、ウッドロジン、ガムロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、トール油ロジンおよびウッド系重合ロジン、ガム系重合ロジン、トール油系重合ロジンなどの重合ロジン、およびこれらの混合物などを使用することができる。
【0048】
上記多価アルコールとしては、2価以上のものであれば特に限定されない。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ジヒドロキシプロパン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,2−ジヒドロキシブタン、1,3−ジヒドロキシブタン、2,3−ジヒドロキシブタン、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチル−シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオール、オクテングリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール;グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、グリセリン等の3価アルコール;ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の4価アルコールを具体的に例示できるが、5価以上のアルコールを用いてもよい。
【0049】
上記ロジンと多価アルコールの反応は特に限定されず、各種の公知の手段を利用できる。具体的には、ロジンと多価アルコールを反応容器へ仕込み(窒素や希ガス等の不活性ガス気流下が好ましい)、通常は大気圧下で150〜300℃程度に系内を加熱し、生成する水を系外に除去しながら反応させればよい。また、反応の際にはエステル化触媒を用いてもよい。具体的には、例えば酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒;水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられる。
【0050】
上記エポキシ化合物としては、各種公知のジエポキシ化合物を使用できる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどの非環状脂肪族ジグリシジルエーテル類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−(β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパンジグリシジルエーテルなどの芳香族または環状脂肪族ジグリシジルエーテル類;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル
−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド等の環状脂肪族環状オキシラン類が挙げられる。
【0051】
上記ロジンとエポキシ化合物の反応は特に限定されず、各種の公知の手段を利用できる。例えば、ジエポキシ化合物1モルとロジン2モルとを触媒存在下、120〜200℃で酸価5以下、好ましくは3以下となるまで開環付加反応を続行すれば良い。該触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、2−メチルイミダゾールなどのアミン系触媒、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4アンモニウム塩、ルイス酸、ホウ酸エステル、有機金属化合物、有機金属塩などを使用できる。該方法で得られる反応物は、2個のロジン骨格と2個の水酸基を分子中に有する分子量分布の狭いジオール化合物である。また、前記ジオール化合物を開始剤として、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド、あるいはε−カプロラクトンを開環重合させて得られる重合体も、同様に使用できる。
【0052】
ロジンフェノールとしては、ロジンにフェノール類を付加反応させて得られるものや、アルカリ触媒の存在下にフェノール類およびホルムアルデヒドを付加反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂とロジンとを反応させて得られるいわゆるロジン変性フェノール等が挙げられる。フェノール類はロジンに付加可能なものであればいずれも使用できる。具体的には、フェノール、クレゾール、β−ナフトール、パラt−ブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラノニルフェノール等が挙げられる。
【0053】
上記水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)としては、例えば、「パインクリスタルD−6011」、「パインクリスタルKE−615−3」、「パインクリスタルD−6240」、「パインクリルタルKE−359」〔荒川化学工業(株)製〕、「ネオトール125P」、「ネオトール150P」〔ハリマ化成(株)〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0054】
上記水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)としては、分子内に下記式(I)で示す骨格を有するものが好ましい。
【化2】
【0055】
水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)としては、特に下記式(II)で示される化合物が好ましい。
【化3】
【0056】
本発明の粘着剤組成物における水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)の配合量は、メタ)アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対し、1〜20重量部とすることが好ましく、5〜15重量部とすることがより好ましい。水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)の配合量を1重量部以上にすると、白抜けを抑制することができるため好ましい。また、水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)の配合量を20重量部以下にすると、粘着力が高くなりすぎることがなく、リワーク性が低下することもないため好ましい。
【0057】
本発明の粘着剤組成物は、所望により、各種添加剤、溶媒、耐候性安定剤、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤等を適宜配合することができる。
【0058】
耐候性安定剤、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤等の配合量の範囲は、アクリル系共重合体(A)及び(B)の合計100重量部に対し、30重量部以下が好ましく、更に好ましくは20重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である。配合量を係る範囲内にすることにより、粘着剤組成物の粘着力、濡れ性、耐熱性、糊転着性のバランスを適切に保つことができ、良好な各種物性を示す粘着剤組成物が得られる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、実施例において用いた試験片の作製、並びに各種の試験方法、及び評価方法は以下のとおりである。また、実施例2
〜12は参考例である。
【0060】
(1)試験用光学フィルムの作製
光学フィルムの一例として偏光フィルムを使用し、粘着剤層を有する偏光フィルムを作製した。シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム上に、乾燥後の塗工量が25g/cm
2となるように、粘着剤組成物を塗布した。次に、100℃で90秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した。続いて、偏光ベースフィルム〔ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを主体とする偏光子の両面にセルローストリアセテート(TAC)フィルムをラミネートしたもの;約190μm〕の裏面に粘着剤層面を貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、65%RHで10日間養生させて粘着剤層を有する偏光フィルムを得た。
【0061】
(2)耐久性の評価
「(1)試験用光学フィルムの作製」において作製した偏光フィルムを、光の吸収軸に対して長辺が45゜になるようにカットした140mm×260mm(長辺)の試験片を用い、0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の片面にラミネーターを用いて貼付した。次に、このサンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、65%RHの条件下で24時間放置した。その後、80℃DRYで500時間、及び60℃90%RHの環境で500時間放置し、発泡、剥れの状態を目視観察にて評価した。評価基準は次の通りである。
【0062】
(耐久性評価基準)
a)耐熱試験(80℃DRYで500時間放置後、発泡の有無を評価)
◎:発泡が全くない
○:1つのコーナーに発泡があるが実用可能
○△:2つのコーナーに発泡があるが実用可能
△:2つ以上のコーナーに発泡があり実用不可能
×:顕著な発泡があり実用不可能
【0063】
b)耐湿熱試験(60℃90%RHの環境で500時間放置後、スジ、剥がれを評価)
◎:スジ、剥がれが全くない
○:1つのコーナーにスジがあるが実用可能
○△:2つのコーナーにスジまたは剥がれがあるが実用可能
△:2つ以上のコーナーにスジまたは剥がれがあり実用不可能
×:顕著なスジまたは剥がれがあり実用不可能
【0064】
(3)白抜け現象の評価試験
「(2)耐久性の評価」と同様のサイズの粘着剤層を有する偏光フィルムを0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の両面に、偏光軸が互いに直交するように貼付した試験サンプルを作製した。次に、このサンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、80℃DRYの条件下に500時間、放置した。放置後、23℃、50%RHの条件下で均一光源(株式会社アイ・システム製)を使用し、EyeScale−3W(株式会社アイ・システム製)にて白抜けを目視にて確認した。ムラ測定システムEyeScale−3WのCCDカメラは、試験片から200cm離れた位置に設置し、白抜けを評価した。
(白抜け評価基準)
◎:白抜けが全くない
○:僅かな白抜けがある
○△:白抜けがあるが実用可能
△:白抜けがあり実用不可能
×:輝度の高い白抜けがあり実用不可能
【0065】
(粘着力の評価)
片面に離型処理が施されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムP(厚さ:10μm)の離型処理面に、以下の各実施例で調製した粘着剤溶液を、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、100℃で1分間加熱乾燥させて粘着剤層を形成した。PETフィルムPとは別に、片面に離型処理が施されている(軽剥離性の)ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムQ(厚さ:50μm)を用意し、PETフィルムPの粘着
剤層の表面に、PETフィルムQをその離型処理面が接触するように重ねて加圧ニップロ−ルを通して圧着し、貼り合わせた。その後、温度23℃、相対湿度50%の条件下で7日間養生を行なうことで、粘着剤層の両面にそれぞれ離型処理を介してPETフィルムを有する両面粘着シートを得た。この両面粘着シートは、離型処理を介して設けられている2枚のPETフィルムを剥がすことで、基材のない粘着
剤層自体からなる粘着シートである。
得られた両面粘着シートの一方に設けられている厚さ38μmのPETフィルムQを剥離し、露出した粘着剤層の表面に接するように、離型処理が施されていない厚さ100μmのPETフィルムR〔商品名:A4100、東洋紡績(株)製〕を重ね、加圧ニップロ−ルを通して圧着し、貼り合わせることで試験用シートを作製した。
【0066】
測定
上述した試験用シートを25mm×150mmにカットしてサンプル片とし、得られたサンプル片の厚さ100μmのPETフィルムPを剥離し、露出した粘着剤層の表面を厚さ2mmのガラス板に、卓上ラミネート機を用いて圧着し、試験サンプルとした。得られた試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、卓上型材料試験機STA−1225((株)オリエンテック製)によりPETフィルムRの一端を180゜の方向に引っ張り、180゜剥離における粘着力(剥離速度:300mm/min)を測定した。評価は、下記の評価基準にしたがって行なった。
<リワーク性評価基準>
○:23℃×1時間後、及び50℃4時間後の何れも2〜12N/25mmの範囲内
×:23℃×1時間後、及び50℃4時間後の何れかが2〜12N/25mmの範囲外
【0067】
((メタ)アクリル系共重合体の製造)
(製造例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)99重量部、アクリル酸(AA)1重量部、酢酸エチル(EAc)100重量部、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を入れ、反応容器の空気を窒素ガスで置換した。その後、攪拌下、窒素雰囲気中で、反応容器の内容物温度を65℃に昇温させて8時間反応させた。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、固形分16.8重量%のアクリル系共重合体溶液を得た。アクリル系重合体の重量平均分子量は167万であった。
【0068】
(製造例2)
温度計、攪拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)83.5重量部、t−ブチルアクリレート(t−BA)15重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.5重量部、アクリル酸(AA)1重量部、酢酸エチル(EAc)100重量部、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を入れ、反応容器の空気を窒素ガスで置換した。その後、攪拌下、窒素雰囲気中で、反応容器の内容物温度を65℃に昇温させて8時間反応させた。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、固形分19.7重量%のアクリル系共重合体溶液を得た。アクリル系重合体の重量平均分子量は146万であった。
【0069】
(実施例1)
アクリル系共重合体(A)として製造例1で合成したアクリル共重合体溶液を506重量部(アクリル系共重合体(A)として85重量部)、アクリル系共重合体(B)として製造例2で合成したアクリル系共重合体溶液を76重量部(アクリル共重合体(B)として15重量部)、トリレンジイソシアネート系化合物(C)として、コロネートLを17重量部(日本ポリウレタン社製、有効成分13重量部)、エポキシ系架橋剤としてTETRAD−Xを0.02重量部(三菱瓦斯化学社製のエポキシ化合物、有効成分0.02重量部)、水酸基とロジン骨格とを有する化合物(F)としてD−6011を5重量部(荒川化学工業社製のロジン含有ジオール、有効成分5重量部)、エポキシ基含有シランカップリング剤(D)としてX−41−1053を0.2重量部(信越化学工業社製シランカップリング剤、有効成分0.2重量部)、及びアミノ変性シリコーン(E)としてKF−859を0.1重量部(信越化学工業社製アミノ変性シリコーン、有効成分0.1重量部)を十分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を使用して、前記の試験用光学フィルムの作製方法により試験用光学フィルムを作製し、前記の各種測定を行った。
【0070】
その結果、実施例1の光学フィルムは、耐久性(80℃DRY、105℃DRY、60℃×90%RH)、白抜けの項目の評価基準が「◎」を示した。すなわち、実施例1の光学フィルムは、高温又は高温高湿の環境下においても耐久性に優れると共に白抜け抑制能力に優れることが示された。
【0071】
粘着剤組成物の配合を表1に記載したものに変更したほかは、実施例1と同様にして実施例2〜17、および比較例1〜5の試験用光学フィルムを作製し、その性能を評価した。
【0072】
【表1】
コロネートL:日本ポリウレタン社製、有効成分75%
X−41−1053:信越化学社製、有効成分100%、アルコキシオリゴマー系でアルコキシ基はメトキシ/エトキシ
X−41−1056:信越化学社製、有効成分100%、アルコキシオリゴマー系でアルコキシ基はメトキシ
KBM−403:信越化学社製、有効成分100%、アルコキシモノマー系でアルコキシ基はメトキシ、化学名は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−803:信越化学社製、有効成分100%、アルコキシモノマー系でアルコキシ基はメトキシ、化学名は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
KF−859:信越化学社製、有効成分100%、アミノ変性
KF−353:信越化学社製、有効成分100%、ポリエーテル変性
D−6011:荒川化学社製、有効成分100%