(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5826232
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】光電センサ及びセンサ設定の変更方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/10 20060101AFI20151112BHJP
G01S 17/50 20060101ALI20151112BHJP
H03K 17/78 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
G01S17/10
G01S17/50
H03K17/78 T
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-208402(P2013-208402)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-85338(P2014-85338A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】10 2012 109 985.5
(32)【優先日】2012年10月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト ハイツマン
【審査官】
三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0012715(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102005003254(DE,A1)
【文献】
特開2005−141542(JP,A)
【文献】
特開2012−070862(JP,A)
【文献】
特開2010−025906(JP,A)
【文献】
特開2010−244480(JP,A)
【文献】
特開2012−027336(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0181510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48− 7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 3/00− 3/32
G01B 11/00−11/30
H03K 17/00−17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と無線通信用のインターフェースを有する携帯機器(38)と単一の監視光線(14)に沿って物体(12)を検出するための光電センサ(10)を備えた装置であって、
前記光電センサ(10)は、前記単一の監視光線(14)に沿って光線(20)を発射するための発光器(16)と、該単一の監視光線(14)に沿って受信された受信光(22)を受信信号に変換するための受光器(26)と、前記受信信号から前記単一の監視光線(14)内にある物体(12)に関する情報を取得するための評価ユニット(28)と、前記携帯機器(38)との無線通信を確立するための無線通信用のインターフェース(30)とを備えており、
前記携帯機器(38)は明暗パターンを前記表示部に表示し、
前記光電センサ(10)は、前記単一の監視光線(14)に通された又は該単一の監視光線内にて生成された明暗パターン(36)により生じた前記受信信号の変調を識別するものであって、該識別によって前記無線通信用のインターフェース(30)が活性化され、前記携帯機器(38)により無線通信を介した前記光電センサ(10)のパラメータ設定又はデータ評価が行われるように構成されていること
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記受光器(26)がフォトダイオードを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光電センサ(10)が光時間通過法により前記監視光線(14)内の物体(12)までの距離を測定するように構成されている前記評価ユニット(28)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記パラメータ設定ユニット(32)が前記受信光の強度の変化及び/又は前記物体の距離の変化により前記受信信号の変調を識別するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記パラメータ設定ユニット(32)が前記受信信号の変調から二値的なユーザ入力を識別するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
ユーザ入力を利用し、単一の監視光線(14)に沿って物体(12)を検出するための光電センサ(10)のパラメータ設定又はデータ評価を携帯機器(38)を介して行う方法において、
前記単一の監視光線(14)に沿って発光器(16)から光線(20)が発射され、該単一の監視光線(14)に沿って受信された受信光(22)の変調から前記ユーザ入力が識別されるものであって、前記変調は前記単一の監視光線(14)に通された又は該単一の監視光線内にて生成された明暗パターン(36)により生じ、前記明暗パターン(36)は前記携帯機器(38)の表示部に表示されるものであり、前記識別によって前記光電センサ(10)と前記携帯機器(38)の通信のための無線通信用のインターフェース(30)が活性化されて無線による前記光電センサ(10)のパラメータ設定又はデータ評価が前記携帯機器(38)を介して行われること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の、監視光線に沿って物体を検出するための光電センサ、及び請求項12のプレアンブルに記載の、センサ設定の変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサの中には測定コース又は監視光線に沿ってしか物体を検出できない部類のものが多い。その場合、カメラやレーザスキャナのように平面的に検出を行う装置とは異なり、測定情報は一次元的な測定軸上に限定される。
【0003】
しかし、そのような単一光線のセンサの中にも様々なものがある。例えば、光遮断機の光感知器は、対向配置される受光ユニットもなければ、一意に割り当てられて対向配置される反射用の標的もないという点で区別される。そこでは、単純なセンサがそれぞれ、それ自身の光線上に物体があるかどうかをスイッチ信号によって示すに過ぎない。また、いわゆる情報付き光遮断機は、発信光線を変調することにより光学的な距離に関する情報を伝える。
【0004】
距離測定用のセンサは検出された物体の距離を測定する。例えば、三角法を利用した感知器は、監視領域内で拡散反射され、ある角度で戻ってくる自らの発信光線を受光し、受光スポットの発生位置から、検知された物体までの距離を三角法により求める。また、光通過時間法を利用した距離測定用の光感知器もある。光通過時間法は、発射パルスの発信時点と受信時点の差を直接測定するパルス方式の方法と、発信光線に正弦波変調信号を乗せ、受信光線の変調の位相を測定する位相方式の方法とに分けられる。特殊な場合としていわゆるパルス平均化法がある。この方法では、例えば特許文献1に記載されているように、複数の発射パルスが発射され、再度受信されて統計的に評価される。
【0005】
用途に応じた特殊な操作のためにセンサを動作させる際には、例えば、切替閾値のティーチング、距離測定の較正、あるいは測定周波数の確定等、センサ内部の調整を行うことがしばしばある。また、逆にそのような調整値や測定データの表示又は出力を行う必要もある。そのために、従来のセンサは、有線方式の接続部や、ボタンとディスプレイを有するような操作部を備えている。
【0006】
センサに対しては、例えば密閉性や食品産業における利用可能性等、製造コストや配備領域に関連した要求が常に増大しつつある。従来の解決法ではもはやこれらの要求は満たされない。操作部は製造コストを増大させ、しかもディスプレイや操作ボタンは液体の浸入や沈殿物に対する耐性が低いため、衛生条件を満たすには多大な追加のコストがかかってしまう。また、絶えざる小型化の流れの中で産み出される最近の小型センサには、そのような要素を配置するためのスペースが全くない。
【0007】
また、センサには、これまでの機能性を完全に含むだけでなく、より簡単でユーザに分かりやすい操作性を持つことが期待されている。そうすることで、調整や整備の時間を減らし、そういった作業をできる限り直感的に、且つ特定の操作手順のための習得段階に時間をかけることなく、実行できるようにしなければならない。
【0008】
カメラやレーザスキャナのような複雑なセンサについては、身振りから画像処理によってユーザ入力を認識することが知られている。これは画素に分解された画像センサによる画像データの取得を前提としている。しかし、単一光線のセンサではそのようなデータは取得できない。更にまた、データ取得の問題とは別に、画像処理には相当に高い計算能力が必要であり、単一光線のセンサに用いられる比較的単純な制御・評価素子でそのような計算を行うことはできない、という問題もある。この問題は、頑強且つ信頼性の高い身振り認識に必要な3次元センサと比較すればより大きくなる。なぜなら、この場合、画像の生データを処理してデプスマップを作るだけでも大変なコストがかかるからである。
【0009】
特許文献2には、空間分解的な受信器を備える機械防護用の光電センサが開示されている。このセンサにより、その視野にある光学的パラメータ符号(例えばバーコードの形をしたもの)が検出され、そこからセンサ及び/又は機械のための運転パラメータが識別される。しかしこの場合、バーコードの読み取りに空間分解的なセンサを用いることが強制的に前提となり、しかも特許文献2に記載の用途にとっては、プレス機械のシルエットを全面的に監視するセンサが必須である。
【0010】
特許文献3に記載の保安用光格子は、複数の光線を型板によって特定のパターンで遮断することにより構成されている。しかし、このような型板は、多数の光チャンネルがない単一光線のセンサには利用できない。仮に型板を利用したとしても、受信光を二値的に遮断又は通過させることしかできず、これでは任意の物体検出と区別ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE 10 2007 013 714 A1
【特許文献2】DE 10 2005 003 254 B4
【特許文献3】DE 10 2007 044 679 B3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、前記技術分野に属するセンサへのユーザ入力を簡単に識別することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1のプレアンブルに記載の、監視光線に沿って物体を検出するための光電センサ、及び請求項12のプレアンブルに記載の、センサの設定を変更するための方法により解決される。本発明の基礎となる技術思想は、センサ本来の機能による受信信号を通信路として利用することにより、追加的な要素なしでユーザ入力を識別することにある。監視光線に沿って物体を検出するためのセンサ(例えば、単一光線のセンサ、特に光遮断機又は光感知器)では、カメラの場合のように身振りの認識や複雑なパターンの検出のために画像データを利用することができない。本発明では、受信信号の時間的な変化又は変調を識別する。この変調は利用者により意図的に引き起こされるものであり、そのパターンは、利用者によるユーザ入力が容易になるようにできるだけ簡単にする一方、センサの他の操作中に偶然出現することが全くないか、その確率がごくわずかであるように選択する。これにより、受信信号の変調を通じた操作を可能にしても、本来の測定操作が妨害されることはないということが保証される。
【0014】
本発明には、既にセンサに用意された要素だけを利用するという利点がある。ユーザ入力の識別は、もともとセンサに装備されている制御・評価ユニットにより実行することができる。これにより、従来の操作要素が省略されるため、部品の数が少なくなり、その結果、製造コストが低下し、取り付けスペースが小さくなる。しかも、ユーザによる操作に特別な知識やセンサ固有の装備は不要である。
【0015】
更に、本発明のセンサは、外部から接触できないように遮蔽されながらも、いわば遠隔制御により操作されるような構成にすることができる。そうすれば、いかなる取り付け状況においても、受信光とその変調を受信できることが保証される。さもなければセンサが機能しなくなってしまう。この構成では、センサまでの距離をより大きくしても、センサの設定を変更するために、監視光線への干渉を完全に行うことができる。ケーシングの密閉もより簡単に実現可能となり、更に、表面に沈殿物が生じる恐れがある操作ボタンも不要になる。
【0016】
本発明における受光器はフォトダイオードを含むことが好ましい。このフォトダイオードはアバランシェフォトダイオード(APD)とすることができる。この場合、センサの一次元的な監視光線に対して1つだけ受信信号が生じる。あるいは、画素に分解された画像センサの一部領域から生じる個々の信号をまとめて1つの共通の受信信号にすることも考えられる。この方法で、例えば単一光線のセンサにおいて、最初は大きめの視野を設定しておき、その後、実際に受光スポットが当たったピクセルに基づいて監視光線に的を絞るという自動調整を行うことができる。
【0017】
本発明のセンサは、監視光線に沿って光線を送出するための発光器を備えることが好ましい。このようにすれば、少なくとも広い範囲で周囲光に影響されずに物体が検出される。この発光信号をユーザ入力のために変調することもできる。なぜなら、この発光も受信信号の強度に影響を与えるからである。単一光線のセンサでは、いずれにせよ発信路と受信路が基本的に一致するから、発信路においてユーザ入力を行えば、同時に受信路でも入力を行ったことになる。
【0018】
本発明における評価ユニットは、監視光線内にある物体までの距離を光通過時間法により測定するように構成されていることが好ましい。このような実施形態によるセンサは、光通過時間方式の距離検知器又は距離測定器となる。この場合、あらゆる種類の光通過時間法(つまり、特に冒頭で触れたパルス方式又は位相方式の方法、及びパルス平均化法)が実装可能である。
【0019】
本発明におけるパラメータ設定ユニットは、受信光の強度の変化及び/又は物体の距離の変化を通じて受信信号の変調を識別するように構成されていることが好ましい。強度は、ある特定の時間、一時的且つ少なくとも部分的に影を作る(例えば、物体を1秒間だけ監視光線内に保持する)ことにより変化させる。距離測定用センサの場合、陰影の度合いと継続時間の他、所望のユーザ入力に対する特殊な変調パターンを受信信号に乗せるために、距離もまた自由度として利用することができる。これにより、多数の異なるユーザ入力を区別できる。更に、ユーザ入力による変調パターンが通常の操作において待ち受けられる変調パターンと明らかに異なるものになるようにするため、前記の各自由度を利用するとができる。
【0020】
パラメータ設定ユニットは、受信信号の変調から二値的なユーザ入力を識別するように構成されていることが好ましい。そのためには、一般にユーザ入力が行われたという事実さえ識別すればよく、その入力を様々なユーザ入力の中でそれ以上区別する必要はない。これにより識別が著しく容易になる。この単純で二値的なユーザ入力に合わせて、それにより生じるセンサ設定の変更も単なるスイッチ機能とすること、つまりユーザ入力が、専用のセンサ機能のオン/オフを行うための簡単な命令であることが好ましい。このようにして発光器又はセンサそのもののスイッチを切ってしまうと、改めてスイッチを入れるために別の方法を選ばなければならない。あるいは、スイッチを再投入するための別の受信信号の変調を識別するために、センサが一定の継続時間の後で又は周期的に自分自身又は発光器を自動的に作動させる。また、二値的なユーザ入力の代わりに、例えば運転開始や整備の際のティーチング機能のために、複雑に符号化されたパラメータ設定用命令シーケンスを識別するようにすることもできる。
【0021】
本発明のセンサは、センサデータの出力及び/又はセンサ設定の変更のための無線インタフェースを備えることが好ましい。このインタフェースを通じて、センサは、例えば測定データを出力する。また、このインタフェースは、受信信号の変調パターンからのユーザ入力の識別に加えて、センサ機能の変更のための追加的な経路として利用することもできる。
【0022】
パラメータ設定ユニットは、あるユーザ入力が識別されたときに無線インタフェースを活性化又は不活性化するように構成されていることが好ましい。このようにすると、エネルギーの節約又は妨害光線の回避のために、無線インタフェースが実際に使用されるときまで、無線命令により該インタフェースを不活性状態にしておくことができる。その場合、何よりも初期化が問題となる。なぜなら、不活性化された無線インタフェースは無線命令による活性化要求を認識できないからである。そのため、無線命令に依らずに、監視光線と受光器の受信信号を通じてスイッチの投入が行われる。その後は無線インタフェースを他のパラメータ設定やデータ交換のために利用することができる。無線インタフェースの不活性化については、受信信号の変調を用いたユーザ入力を通じて行うことも考えられるが、例えば一定の無信号時間の経過や無線命令の送信等、別の方法も自由に利用できる。
【0023】
パラメータ設定ユニットは、複数回の光線の遮断に基づいてユーザ入力を識別するように構成されていることが好ましい。つまり、受信信号をより複雑に変調させるために、監視光線内に物体を1回だけではなく複数回進入させるのである。このような物体の干渉が起きるたびに受信強度が変化し、それにより、例えば距離測定装置の場合には物体の距離も変化する。この方法によれば、実際の測定操作には出現しないような多様なシーケンスを、十分な許容差をもって確実に区別できる形で作り出すことができる。例えば、短い遮断、長い遮断、新たな短い遮断、複数の異なる距離での遮断、あるいは物体による干渉の持続時間及び間隔をそれぞれ変化させた組み合わせ等である。
【0024】
パラメータ設定ユニットは、例えば櫛状の構造物又は身体の一部(特に指を所定の形で構えた手)を監視光線に通すことにより生じる、複数回の光線の遮断に基づいてユーザ入力を識別するように構成されていることが好ましい。ここでは、その幾何形状によって監視光線への干渉を所要の持続時間及び間隔で生じさせるような補助手段を用いて、複数回の光線の遮断を生じさせる。櫛状の構造物の場合、例えば櫛の歯の幅、深さ及び間隔に応じて所定の連続的なパターンで物体検出が生じ、それにより受信信号の強度及び距離に変調が生じる。常に利用可能な補助手段はユーザ自身の身体の一部、特に手である。手の大きさや構え方の個人差はパターン認識の際の許容差によって補うことができる。いずれにせよ、典型的なパターンが生じる(例えば、4本の指を伸ばして開いた手の場合、4回の遮断と3回の休止が、数10ミリ秒から数100ミリ秒のほぼ等しい持続時間でそれぞれ生じる)。しかしその場合、認識すべき変調パターンを、絶対的な数値で表された基準と比較する必要があるわけではない。むしろ、光線の遮断及び休止の相対的な持続時間を評価することにより、パターンそのものを比較することができる。これにより、補助手段の移動速度への依存を少なくとも広い許容範囲において回避することができる。
【0025】
パラメータ設定ユニットは、監視光線に通された又は監視光線内にて生成された明暗パターンにより生じた強度変化を識別するように構成され、特にそのパターンが印刷された明暗パターン又は携帯機器の表示部に表示された明暗パターンであることが好ましい。この実施形態では、補助手段として明暗パターンが必要となる。しかし、その明暗パターンを携帯機器(特にスマートホン)を使って表示するようにすれば、この補助手段はどんな場合でも利用可能であると前提することがますます可能になる。もっとも、印刷された明暗パターンも、操作説明書やセンサの梱包等に予め用意しておくことができるため、問題なく利用できる。
【0026】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0027】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照ながら詳しく説明する。図面の内容は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】監視光線に沿って物体を検出するための光電センサの簡略図。
【
図2a】
図1のセンサに対するユーザ入力の概略図であって、指を伸ばした手をセンサの監視光線に通しているところを示す図。
【
図2b】
図2aに示したユーザ入力があった場合のセンサの受信信号の時間的な強度変化を理想的に描いた図。
【
図3】
図1のセンサに対するユーザ入力の概略図であって、明暗パターンを表示した携帯機器をセンサの監視光線に通しているところを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は監視光線14に沿って物体12を検出するための光電センサ10を簡略図で示している。監視光線14は、発光器16から発光光学系18を通じて発信光線20が発射される領域と、受光器26内の受光光学系24を通じて受信光22が記録される領域とにより予め定まるが、これら2つの領域はほぼ一致する。従って、センサ10は単一光線の装置であり、固定した位置に設置される。そのため、監視光線14は静止しており、レーザスキャナのように2次元又は3次元の領域を走査することはできない。
【0030】
発光器16及び受光器26に接続された評価ユニット28は、同時にセンサ10の制御部としても動作するものであって、例えばマイクロコントローラ又はFPGA(Field Programmable Gate Array)上に実装される。この評価ユニット28は、例えば受光器24の受信信号の強度を閾値と比較することにより、監視光線14内に物体12が存在するかどうかを評価する。ある好ましい実施形態では、評価ユニット28において、冒頭で触れた光通過時間法により物体12の距離が測定される。測定結果(例えば二値的なスイッチ信号や、測定された物体の距離)は接続部30を通じて出力される。接続部30は、概略図から見て取れるような形態の他、センサ10のケーシングに完全に格納された無線方式の接続部として構成することもできる。また、有線又は無線方式の複数の接続部を設けることも考えられる。
【0031】
パラメータ設定ユニット32は、ユーザ入力を識別し、それに応じてセンサ設定の変更を行うものであり、評価ユニット28の一部として実装することも可能である。センサ設定は、例えば発光出力、パルス長、測定精度、切替閾値、較正等、考え得るあらゆるセンサ機能に関係する。そのために、パラメータ設定ユニット32は受光器26の受信信号の変調パターン又は時間変化を評価し、特定の変調パターンを特定の命令又はユーザ入力として識別する。更に、パラメータ設定ユニット32は接続部30を介して命令を受け取ることもできる。ある実施形態では、まさにこのようなユーザ入力が、無線インタフェースとして構成された接続部30を活性化するために利用される。
【0032】
受信信号の変調パターンは、特に受信レベル(つまり強度)及び物体の距離に関係する。これにより、ユーザは、ある特定の距離において一定の時間だけ監視光線14に干渉することにより、様々な変調パターン、つまりはユーザ入力を作り出し、パラメータ設定ユニット32に与えることができる。更に、原理的には、もう一つの自由度としてその都度の陰影の度合いも考えられる。これも同様に強度に影響を及ぼすが、ただその制御と識別が比較的難しい。監視光線14に対して連続的に複数回の干渉を行えば、より複雑な変調を実現し、ユーザ入力の多様性の幅を広げることができる。これはまた、あるユーザ入力と、偶然ユーザ入力に似た測定結果とを明確に区別できるようにする上でも有利である。
【0033】
図2aは一実施例を示している。この実施例では、指を伸ばした手34を監視光線14に通すという方法でユーザ入力を行うことにより、センサ機能を変更するための命令がセンサ10に与えられる。このようなユーザ入力の識別を特定のセンサ機能(例えば、無線インタフェースとして構成された接続部30の活性化)の切替命令と結び付けると有利である。しかし、より複雑な命令を与えるために、指の隙間を通じた特殊なパターンと、指及び指領域からセンサ10までの相対距離とに基づいて、様々な身振り又は手の構えを区別することも可能である。加えて、両手を使ったり、指の本数を変えたり、身体の他の部分を用いたりすることもできる。更に、そのような身振りのシーケンスを組み合わせて1つのユーザ入力にすることも考えられる。身体の一部を用いたユーザ入力の利点は、ユーザにとって必要な補助手段が自ずからいつでも利用可能であるという点にある。
【0034】
図2bは、
図2aのように4本の指を伸ばした手34を監視光線14に通した場合に受信信号に生じる強度の時間変化の模範例を理想化して描いたものである。この場合、親指は監視光線14に触れてはならない。なお、この手の構え及び動きは単なる模範例に過ぎないと理解すべきである。この理想化された強度変化の場合、センサ10は感知器であり、最初は監視光線14内に物体12が存在しないということが前提となる。そのため、監視光線14内に手34が進入するまで強度レベルはゼロである。その後、手が動くにつれて、4本の指のそれぞれに対応して強度が極大となり、その間に指の隙間に対応する休止区間が生じる。あるいは、距離の測定値に基づいて監視光線14内の手の動きを認識することも可能である。この場合、実際の距離変化は
図2bの上下を反転させた形となる。なぜなら、手の進入がないときや指の隙間において距離が最大値にとどまり、4本の指がそれぞれ通るときに距離が極小値になるからである。強度及び距離を利用した識別法は、組み合わせたり、相互の信頼性を高めるために利用したりすることもできる。
【0035】
図2bに強度変化として例示したような、理想化された変調パターンは、ユーザ入力を識別するための基準として利用される。そのパターンは、例えば所望の動きと手の構えを複数回実行することにより教え込むことができる。人間の手の特徴(例えば、指の幅及び間隔、並びに、肌の反射率等に基づく典型的な信号レベル比)は、このようなティーチング工程を通じて(ただしモデルも基にして)考慮することができる。
【0036】
それゆえ、この識別は比較的頑強である。なぜなら、識別法をうまく選べば、時間軸上及び強度軸又は距離軸上の絶対的な数値はほとんど問題にならないからである。そのためには、相対値に基づいて識別を行うこと、つまり、例えば2番目から4番目までの指に対応する極大の持続時間を1番目の指に対応する極大の持続時間と比較することが好ましい。このようにすると、期待される変調パターンが実際の手の大きさ及び移動速度に合った尺度で得られる。
【0037】
それでも、ある程度均一に、且つ、少なくとも大まかに定めておいた速度(例えば「速い」又は「遅い」)でその移動を行うようにユーザに指示しておくことが役に立つ。原理的には、特定のユーザのために個別にユーザ入力を教え込むことさえ考えられる。ユーザ入力に対して指の構えを適切に選択するとともに、可能な命令を少なめ(例えば、無線モジュールのスイッチを入れるための命令のみ)に制限すれば、識別の許容範囲が非常に広くなる。なぜなら、
図2aに示したように開いた手を通す場合のように、信号が数秒又は1秒未満の短時間の間にほぼ等しい時間ずつ4回遮断されることは、通常の操作では極めてまれだからである。それでも、例えばベルトコンベアに乗った多数の物体を監視している際に、よりによって物体が4個並んでセンサ10のそばを通過するというように、用途によっては測定状況がユーザ入力と取り違えられる危険性があるが、それでも、要求される手の構え及び移動速度を適応させることにより、常に確実に状況を区別することができる。
【0038】
人間の手又は身体の他の部分の代わりに、ユーザ入力用の独自の補助手段を用いることもできる。距離測定に基づいて識別を行う場合、例えば櫛状の構造物が代用として考えられる。この補助手段の幾何形状、つまり櫛の歯の幅、深さ及び間隔により、該補助手段を監視光線14に通したときの受信信号の変調パターンが予め決まる。詰まるところ、このような櫛状構造物は輪郭を離散的に表したものであるから、非常に多数の歯を持つ櫛状構造物であればほぼ任意の輪郭に対応することができる。しかし、識別を簡単にするために、歯の数は10本未満、例えばごく数本、場合によっては2本だけにすることが好ましい。これでもなお非常に複雑なユーザ入力と命令シーケンスを表現することが可能であるが、必要な場合には更に歯を付け加える。身体の一部を利用する場合の個人差はなくなるものの、当然のことながらユーザはその補助手段を使う必要があるため、全く道具を使わずにセンサ10の調整を行うことはできない。
【0039】
図3は別の実施例を示している。この実施例では、明暗パターン36を監視光線14に通すという方法でユーザ入力を行うことにより、センサ機能を変更するための命令がセンサ10に与えられる。従ってここでは、櫛状構造物を用いる場合とは異なり、受信信号の変調は距離の変化ではなく信号レベル又は強度の変化による。ただし、櫛状構造物にも明暗パターンを持たせることはできるし、手34の場合なら反射率(従って強度)を考慮することができる、ということに注意すべきである。
【0040】
変調方法の違いを別にすれば、先に
図2a〜bを参照して説明した、動く手34又は櫛状構造物の識別方法は、動く明暗パターン36の認識にも同様に当てはまる。
【0041】
明暗パターンは印刷されたものであってもよいが、それを携帯機器38上に表示することが好ましい。例えば、所望のユーザ入力に対して、携帯機器38上のアプリケーションが適切な明暗パターン36を生成して表示する。それを監視光線14に通したときに生じる変調がパラメータ設定ユニット32により評価され、識別されて、センサ設定の変更に変換される。携帯機器38を監視光線14に通す代わりに、それを監視光線14内に静止させ、その表示画面に明暗パターン36に相当する明暗の変化を生じさせてもよい。好ましくは、接続部30の無線インタフェースを活性化するためにユーザ入力を利用し、その後は携帯機器上のアプリケーションが電磁波により無線で通信を継続するようにする。このようにすれば、明暗パターン36の表示に用いたアプリケーションを、そのまま無線によるセンサ10のパラメータ設定やデータ交換にも用いることができる。
【0042】
携帯機器38の表示部は通常ガラスで覆われているため、センサ10の測定チャンネル上にある受光器26を通じた直接的で再現可能なレベル測定が難しい場合もある。そこで、明暗パターン36を検出するための光学素子を備えた簡単な追加の受光回路を設けてもよい。