(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の、これら及び他の特徴、態様及び利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を解読すると一層よく理解されるはずであり、各図面を通じて、同じ符号は同じ部品を表す。
【0015】
本発明の共振回路式温度非依存性圧力センサの実施形態の1つ以上は、温度が変化する環境において、圧力測定中にシステムで起こる温度変化とは無関係に、圧力を測定するように適合される。センサは、実施形態の1つ以上で、共振センサ回路と、共振センサ回路上に配置された圧力感応素子と、EMF変調器とを備える。いくつかの実施形態では、共振回路式温度非依存性圧力センサは、センサシステムの中で使用し得る。
【0016】
特許請求された発明の内容をより明確且つ簡潔に説明し、指摘するために、以下の定義は、以下の記述及び添付の特許請求の範囲の中で用いられる特定の用語に対して与えられるものである。本明細書の全体にわたって、特定の用語の使用は、限定的でない具体例と見なされたい。
【0017】
本明細書に用いられる「多変量解析」は、単一のセンサによって生成された複数の応答信号の解析を指す。多変数のセンサからの複数の応答信号は、圧力又は温度など、別々の環境条件にさらされている状態の応答パターンを構成する多変量解析ツールを用いて解析し得る。
【0018】
本明細書に用いられる「配置された」は、第1の面が第2の面と直接物理的に接触する又は第1の面と第2の面の間に1つ以上の介在層が存在し得て、これら2つの面が互いに間接的な接触によって関連付けられる配置を指す。例えば、第1の面がRFIDタグ上の面でよく、第2の面が圧力感応素子の面でよい。
【0019】
本明細書に用いられる「検出媒体」は、圧力が測定されることになっている媒体を指す。例えば、バイオプロセス素子では、検出媒体は液体又は気体でよい。
【0020】
本明細書に用いられる「使い捨て素子」は、使用後に処分し得る又は再利用のために修理し得る製造機器又は監視機器を指す。
【0021】
一実施形態では、共振センサ回路はインダクタ−キャパシタ−抵抗(LCR)回路である。センサは、回路のインピーダンス(Z)によってもたらされる共振周波数応答を有するLCR回路を備える。抵抗(R)、キャパシタンス(C)、インダクタンス(L)及び周波数(f)などのパラメータが、回路又は回路部品のインピーダンス(Z)を求めるのに用いられ得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、共振センサ回路は、RFID回路を備える。一実施形態では、RFID回路はRFIDタグを備える。RFIDタグは、関連するデジタルIDを有する。RFIDタグは、アンテナ、キャパシタ及び集積回路(IC)メモリチップを備えてよい。RFIDタグは、トランスポンダでよい。RFIDタグには、関連するデジタルIDがないことも可能である。一実施形態では、RFIDタグ上に1対の電極が配置されて、ICメモリチップではなくアンテナに結合し得る。一実施形態では、1対の電極がRFIDタグ上に配置されて、ICメモリチップに結合し得る。別の実施形態では、アンテナの一部分が1対の電極として働くように構成し得る。電極の限定的でない具体例には、インターデジタル構造の電極又は電極コイルが含まれ得る。
【0023】
RFIDタグは、市販のRFIDタグでよい。市販のRFIDタグは、約100kHz〜約2.4GHzの範囲又は約20GHz以下の周波数で動作し得る。RFIDタグは、受動RFIDタグ、半受動RFIDタグ又は能動RFIDタグでよい。受動RFIDタグは、動作するのに電源(例えばバッテリー)を必要としないが、半受動RFIDタグ又は能動RFIDタグは電源を必要とする。
【0024】
一実施形態では、RFIDタグは、関連するメモリチップを備えてよい。別の実施形態では、タグは、関連するメモリチップを備えなくてもよい。RFIDタグのメモリチップは、熱拡散又は高エネルギーのイオン注入及び有機エレクトロニクス製造プロセスなどの集積回路製造プロセスを用いて製作し得る。
【0025】
RFIDタグは、検出可能な電気信号を生成してよい。RFIDタグによって生成される検出可能な電気信号の限定的でない具体例には、抵抗の変化、キャパシタンスの変化、インピーダンスの変化、反射信号の変化、散乱信号の変化、吸収信号の変化又はそれらの組合せが含まれ得る。RFIDタグのアンテナ回路の周波数応答は、実部と虚部を有するインピーダンスとして測定し得る。特定の実施形態では、RFIDタグ上に感知膜又は保護膜が配置されてよく、インピーダンスは、センサ近傍の環境の関数として測定し得る。
【0026】
センサに影響を及ぼしている環境圧力の変化により、共振センサ回路にインピーダンス応答が生成し得る。共振センサ回路は、インピーダンス応答に影響を及ぼし得て、これが、環境圧力の変化により、圧力感応素子の1つ以上の特性の変化に測定可能に変えられる。一実施形態では、検出可能な電気信号は、環境圧力の変化を表す。
【0027】
いくつかの実施形態では、圧力感応素子が電極のEMFと相互作用すると、圧力感応素子の寸法変化が、検出可能なセンサ応答をもたらす。圧力感応素子は、誘電率又は比誘電率が、検出媒体(例えば流体媒体)の誘電率又は比誘電率と実質的に異なるように選択し得る。圧力感応素子の比誘電率は、検出媒体の比誘電率より大きくて小さくてもよい。圧力感応素子と検出媒体の比誘電率の差は、センサによって生成される電気信号を強める。一例では、圧力感応素子の比誘電率は、検出媒体の比誘電率の約10倍未満でよい。他の具体例では、圧力感応素子の比誘電率は、検出媒体の比誘電率の約10倍を上回ってよい。
【0028】
圧力感応素子は、可撓性メンブラン、ダイアフラム、機械的ばね、薄板、薄膜、ファイバ、粒子、メッシュ又はウェブの1つ以上を備えてよい。圧力感応薄膜は、ゾル−ゲル膜、複合材料膜、ナノ複合膜、金属ナノ粒子水素膜、シリコン膜又は他のポリマーの膜若しくは発泡体を含み得るが、これらに限定されない。複合膜の一例はカーボンブラック−ポリイソブチレン膜であり、ナノ複合膜の一例はカーボンナノチューブ−Nafion(登録商標)膜であり、金属ナノ粒子ヒドロゲル膜の一例は金のナノ粒子ヒドロゲル膜であり、シリコン膜の一例は多結晶シリコン膜であり又は、ポリマー発泡体の一例はポリエチレンフォームである。圧力感応ファイバは、エレクトロスパンポリマーナノファイバ、エレクトロスパン無機ナノファイバ又はエレクトロスパン複合ナノファイバを含み得るが、これらに限定されない。
【0029】
圧力感応素子の構造の限定的でない具体例は、球形、ドーム形、立方体、フラットシート又はこれらの組合せから選択し得る。圧力感応素子は、多孔性又は非多孔性のユニットでよい。圧力感応素子は、流体に対して選択的透過性でよい。一実施形態では、圧力感応素子は、架橋されたクローズドセルのポリオレフィン発泡体などのクローズドセル発泡体である。
【0030】
圧力感応素子用の理想的な材料は、EMF変調材料(例えば金属)の接近に対するセンサ応答のダイナミックレンジを定めることにより求められ得て、ダイナミックレンジはセンサの動作範囲である。ダイナミックレンジは、約10psi〜40psiの範囲にある、センサの選択された動作範囲向けに決定され、圧力感応素子の所望の係数は、圧力感応材料の変位される又は圧縮される量に対して計算し得る。例えば、1mmの所望の変位を実現するために必要とされる機械的負荷(0〜15psiの付与力)に基づいて、120000パスカルという係数が計算された。
【0031】
いくつかの実施形態では、圧力感応素子は、環境圧力の変化に基づいて圧力感応素子の誘電特性を変化させる、有機材料、無機材料、生物材料、複合材料又はナノ複合材料の1つ以上を含んでよい。圧力感応素子の材料は、金属、金属複合材料、ポリマー、プラスチック、セラミック、発泡体、誘電材料又はそれらの組合せから選択し得る。より具体的には、圧力感応素子の材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はシリコーンゲルなどのシリコーン系有機ポリマーから選択し得る。圧力感応素子は、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)などのヒドロゲル、Nafion(登録商標)などのスルホン化ポリマー又はシリコーン接着剤などの接着剤ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
圧力感応素子の感度は、厚さ、柔軟性、透磁率又は圧力感応素子の伸縮性に応じて変化し得る。圧力感応素子の厚さの範囲は、コイル間隔及びEMFの侵入深さ次第であり得る。圧力感応素子の厚さの範囲は、約10
-5mm〜10
2mmの範囲であり得る。例えば、感度は、圧力感応ポリマーの素子の厚さとともに変化し得る。圧力感応素子の感度は、素子の材料特性に応じてさらに変化し得る。材料のヤング率の変化は、材料の弾性の変化を反映して、感度の変化をもたらす。例えば、相対的に高いヤング率を有する材料を実装すると、相対的に低弾性で低感度の圧力センサをもたらす。それと対照的に、相対的に低いヤング率を有する材料を実装すると、相対的に高弾性で高感度の圧力センサをもたらす。圧力センサに用いられ得る様々な材料のヤング率の限定的でない具体例が、表1に示されている。
【0033】
【表1】
圧力感応素子は、共振センサ回路上に配置される。一実施形態では、圧力感応素子は、センサ回路上に直接堆積し得る。代替実施形態では、圧力感応素子は別の基板上に堆積されてよく、この基板が、センサ回路上にさらに配置し得る。いくつかの実施形態では、圧力感応素子とセンサ回路の間に、1つ以上の介在層が存在してよい。センサの中に複数の圧力感応素子が使用し得る。一実施形態では、複数の圧力感応素子は、類似のタイプでよい。別の実施形態では、複数の圧力感応素子は、互いに組み合わせられ得る別々のタイプでもよい。
【0034】
一実施形態では、センサのEMFは、圧力感応素子の誘電特性によって影響を及ぼし得る。EMFは、センサのアンテナで生成されてよく、センサの面から外に広がってよい。一例では、アンテナの放射の効率は、EMF変調器を使用して変更し得る。いくつかの実施形態では、圧力感応素子は、EMF変調器として機能する導電材料で含浸してもよい。導電材料は、カーボンブラック粒子、カーボンナノチューブ、グラフェンシート、金属ナノ粒子、金属微粒子又はそれらの組合せから選択し得る。導電材料が、圧力感応素子(相対的に低いヤング率を有する誘電性ポリマーの膜など)の中に分散し得る。分散された導電材料の濃度は、圧力感応素子の最終的体積の約0.01〜20体積%の範囲にあってよい。圧力感応素子に圧力を印加する以前の圧力感応素子の導電性は、圧力を印加した後の圧力感応素子の導電性と比較すると、相対的に低い。センサのEMFは、EMF変調器によって変調し得る。一実施形態では、EMF変調器は、EMFを吸収するように構成される。別の実施形態では、EMF変調器は、EMFを反射するように構成される。
【0035】
EMF変調器は、1つ以上の層を備えてよい。これら層は、連続した層、個別の層又はパターン付きの層でよい。一実施形態では、EMF変調器は、同一の材料を含み、互いに積み重ねられた2つ以上の層を備えてよい。代替実施形態では、2つ以上の層は別々の材料を含んでよい。圧力感応素子上にEMF変調器が存在すると、圧力に誘起された圧力感応素子の寸法変化が、アンテナ回路のインピーダンスに影響を及ぼす可能性がある。EMF変調器は、所定の距離で配置された複数のユニットセルを備えてよい。ユニットセルは、誘電体基板上に導電性パターンを形成することにより生成し得る。
【0036】
一実施形態では、EMF変調器がEMFを吸収するように構成されると(
図1A)、EMF変調器は、圧力感応素子に動作可能に結合されて、センサ回路によって生成されたEMFを少なくとも部分的に吸収する。EMFの吸収は、圧力感応素子に印加される圧力次第で異なってよい。この差は、圧力感応素子の中に分散している導電性粒子間の各間隙(又は間隙)の変化から生じる。圧力感応素子の中に分散している導電性粒子間の間隙は、圧力が印加されない状態では比較的大きい。圧力感応素子の中に分散している導電性粒子間に大きな間隙があると、一般に、圧力感応素子の導電性が弱くなるはずである。圧力感応素子の中に分散している導電性粒子間の間隙は、圧力が印加されている状態では比較的小さい。圧力感応素子の中に分散した導電性粒子間の間隙が小さいと、一般に、圧力感応素子の導電性がより強くなるはずである。導電性がより強い圧力感応素子は、EMFを吸収して、センサ回路の共振特性を変化させることになる。センサ回路の共振特性が変化すると、少なくともセンサ回路のQ及びセンサ回路の共振振幅に影響が及ぶ可能性がある。
【0037】
別の実施形態では、EMF変調器がEMFを反射するように構成されると(
図1B)、EMF変調器は、圧力感応素子に動作可能に結合されて、センサ回路によって生成されたEMFを少なくとも部分的に反射する。この反射は、圧力感応素子に印加される圧力次第で変化する。この差は、圧力感応素子(ダイアフラム)とセンサ回路(センサタグ)の間の間隙の変化から生じる。ダイアフラムとセンサ回路の間の間隙は、圧力が印加されない状態では比較的大きい。ダイアフラムとセンサ回路の間の間隙は、圧力が印加されている状態では比較的小さい。間隙が変化すると、センサ回路の共振特性が変わる。間隙(又は各間隙)が小さいほど、センサ回路の共振特性の変化が大きいことになる。共振特性が変化すると、少なくともセンサ回路のQ及びセンサ回路の共振振幅に影響が及ぶ可能性がある。
【0038】
一実施形態では、EMF吸収体が、センサのEMFを低減する。EMF吸収体は導電性膜でよい。導電性膜は誘電材料を含んでよい。アンテナの放射の効率が、EMF吸収体を使用して低下し得る。いくつかの実施形態では、圧力感応素子は、EMF吸収体に近接して配置されるように又は電極領域の中に配置されるように、RFIDタグの一部分に結合し得る。センサは、EMF吸収体上に配置された保護層を含む。保護層は、測定条件下で、EMF吸収材の組立体を有するセンサを外部の溶剤/流体から保護するために適宜使用される溶剤保護層でよい。保護層は、流体媒体に対して物理的障壁を形成することにより、高イオン強度の溶液中でのセンサ電極の短絡又は金属性のセンサ電極コイルの腐食など、外部流体のあらゆる有害効果からもセンサを保護し得る。保護層の材料は、ポリマー又はシリコーンなどの柔軟な誘電材料を含んでよいが、これらに限定されない。保護層は、流体がセンサと直接接触するのを許さない重層である。
【0039】
共振回路式温度非依存性圧力センサシステムは、共振センサ回路と、共振センサ回路上に配置された圧力感応素子と、圧力感応素子に対して動作可能に結合されたEMF変調器と、プロセッサとを備える。センサシステムは、EMF変調器上に配置された追加の保護層をさらに備えてよい。1つ以上の実施形態で、共振式センサシステムはRFIDタグを備える。用語「動作可能に結合される」は、有線又は無線であり得る接続を指す。例えば、プロセッサは、有線接続又は無線接続でセンサに結合し得る。プロセッサは、センサに結合されて、センサシステムの環境圧力の変化に対するセンサ応答パターンの多変量解析を生成する。一実施形態では、多変数のセンサ応答パターンを構成するために、複数の応答信号に対して、多変量解析ツールを用いて、多変数すなわち多変量の信号変換が遂行される。
【0040】
いくつかの実施形態では、検出システムの中に温度非依存性圧力センサが使用し得る。検出システムは、圧力変化を表す電気信号を表示するために、モニタなどの関連する表示デバイスも備えてよい。
【0041】
温度非依存性圧力センサは、バイオプロセス素子の中に使用し得る。バイオプロセス素子は、液状媒体を含んでよい。動作においては、センサは、バイオプロセス素子の中にある流体の圧力の、所望の計量的反応をもたらしてよい。バイオプロセス素子は、保存用バッグ、移送ライン、フィルタ、コネクタ、弁、ポンプ、遠心分離機、分割柱、生物フード、化学フード又はバイオリアクタの1つ以上を備えてよい。センサは、UV放射又は当技術分野で既知の任意の方法によって滅菌されてよく又は、特定の実施形態では、センサはガンマ線で滅菌されてもよい。ガンマ線で滅菌されるセンサは、強誘電体ランダムアクセスメモリチップで作製されたリードライトチップであるメモリチップを有してよい。ガンマ線で滅菌されるセンサは、表面弾性波チップで作製された読出し専用チップであるメモリチップを有してよい。
【0042】
一実施形態では、センサシステムは、センサから信号を受け取ることができる関係にあるピックアップコイルを備える。いくつかの実施形態では、ピックアップコイルは、センサ上に配置し得る。いくつかの実施形態では、センサとピックアップコイルは、適切な幾何学的配置で一緒に支持体に配置されている。ピックアップコイルをセンサに対して有効な近傍に固定するのに、接着剤などの固定要素が利用し得る。ピックアップコイルは、ピックアップコイルに対して電気的接続をもたらすためにコネクタを利用してよい。例えば、コネクタは、金めっきしたピンなどの標準的な電子コネクタを含んでよい。ピックアップコイルは、様々なやり方で支持体に取り付けられてよい。例えば、ピックアップコイルは、接着剤を使用して又はピックアップコイルを支持体とともに成形することにより又はねじを用いてピックアップコイルを支持体に固定することにより、支持体に取り付けられてよい。或いは、ピックアップコイルが支持体の保持具上に載り得るように、支持体に保持具が設けられてよい。
【0043】
ピックアップコイルは使い捨てでも再使用可能でもよく、無線周波数信号の送受信用に使用し得る。ピックアップコイルは、あらかじめ較正されていてもよく、センサと物理的に接触してもよい。一例では、ピックアップコイルは、センサに直接的又は間接的に結合されている支持体上に設置し得る。
【0044】
ピックアップコイルは製作されても、市販のものでもよい。ピックアップコイルが製作される実施形態では、ピックアップコイルは、リソグラフィ、マスキング、金属ワイヤをループ形に形成すること、集積回路の製造プロセスなど、標準的な製造技法を利用して製作し得る。例えば、ピックアップコイルは、銅張り積層板のフォトリソグラフィエッチングを用いて又は型に銅線を巻きついて製作し得る。
【0045】
一実施形態では、センサとピックアップコイルが単一の誘電体基板上に製作し得る。この実施形態では、センサとピックアップコイルの間の相互インダクタンスは実質的に変化せず、それによって、この支持された幾何学的配置を使い捨て素子として配置するのに先立ってセンサをあらかじめ較正するのが容易になる。
【0046】
いくつかの実施形態では、センサは、バイオプロセス素子の中にセンサを配置する以前に、あらかじめ較正し得る。特定の実施形態では、センサは、さらなる再較正又は確認のために、バイオプロセス素子から取り外されるように適合される。センサは、バイオプロセス素子の中で、動作中に又は動作後に再度較正し得る。一実施形態では、動作後の再較正では、センサは、プロセスの監視ためにデバイスに戻して組み込まれてよい。しかし、センサが使い捨て用の素子に利用されている別の実施形態では、一旦センサが取り外されると、再度センサを素子に組み込むことは望まれないであろう。したがって、センサは使い捨てでも再利用可能でもよい。センサは、インラインの製造用に、監視及び制御を容易にするために利用し得る。
【0047】
センサ応答パターンの多変量解析は、温度の変化に関連したパターンと圧力の変化に関連したパターンを識別可能に分離する。環境温度の変動も、共振センサ回路のインピーダンスに影響を及ぼす可能性がある。しかし、センサ応答の多変量解析の後に、温度の効果と圧力の効果は定量的に分離し得る。共振センサ回路の複素インピーダンススペクトルが、センサを用いて、温度が変化する状態で圧力を選択的に計量することにより測定し得る。
【0048】
温度非依存性圧力センサを作製する方法は、共振センサ回路を用意し、共振センサ回路上に圧力感応素子を配置し、圧力感応素子上にEMF変調器を配置することを含む。センサを形成するために、共振センサ回路、圧力感応素子及びEMF変調器を、積層プロセスを用いて互いに結合してよい。このような積層プロセスの具体例は、「System for assembling and utilizing sensors in containers」という名称の米国特許出願第12/447031号に説明されており、同出願は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0049】
温度非依存性圧力センサシステムを作製するための方法は、共振センサ回路を用意し、共振センサ回路上に圧力感応素子を配置し、圧力感応素子を有するEMF変調器を配置し、センサ応答パターンの多変量解析を生成するプロセッサを動作可能に結合することを含む。
【0050】
特定の実施形態では、環境の圧力変化を温度から独立して測定する方法は、センサから複素インピーダンスデータを収集し、複数の共振パラメータに対して多変量解析を適用し、多変量解析に少なくとも部分的に基づいて、温度のいかなる変化にも無関係な圧力のあらゆる変化を定量化することを含む。このような多変量解析の具体例は、「Method and systems for calibration of RFID sensors」という名称の米国特許出願第12/118950号に説明されており、同出願は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0051】
圧力変化を選択的に測定するために、センサシステムは流体媒体に接触して配置し得る。流体媒体は、液体媒体又は気体媒体を含んでよい。センサが流体媒体と接触した後に、センサは、共振センサ回路のいくつかの共振パラメータを測定することにより可変圧力の影響を定量化するのに使用し得る。センサは、多変量解析の前に較正し得る。可変温度及び可変圧力に関して、これらの値は、多変量解析のために共振センサ回路のメモリチップに記憶し得る。温度が変化する状態での圧力変化を反映する多変数のセンサ応答パターンが、温度と無関係に求められる。多変量解析は、1つ以上のセンサ応答パターンを識別することを含む。複数の共振パラメータに多変量解析を適用している間に、少なくとも2つの共振パラメータを測定し、計算して、最終的な応答パターンを生成する。
【0052】
次に
図1A及び
図1Bを参照すると、無線周波数式圧力センサ10の、2つの別々の実施形態が示されている。圧力センサ10は、RFIDタグ12、圧力感応素子14及びEMF変調器16を利用する。
図1Aの実施形態では、圧力感応素子はメンブラン14である。
図1Bの実施形態では、圧力感応素子はダイアフラム18である。さらに、RFIDタグ12は、関連するEMFを備える。RFIDタグ12上に、メンブラン14又はダイアフラム18などの圧力感応素子が配置される。一実施形態では、RFIDタグ上に、圧力感応素子が直接堆積し得る。代替実施形態では、圧力感応素子が基板上に堆積されて、基板がRFIDタグ上に直接堆積し得る。RFIDタグと圧力感応素子の間に、1つ以上の介在層が存在してよい。圧力感応素子には、EMF変調器16が動作可能に結合される。
【0053】
図2はセンサシステム20を示す。バイオプロセス素子22は、無線周波数式圧力センサ10及びピックアップコイル24を利用する。ピックアップコイル24は、センサ10に対して直接的又は間接的に結合される。ピックアップコイルは、ネットワークアナライザ又はRFIDの読取り装置若しくは書込み装置の26にさらに結合される。図示の実施形態では、センサ10のRFIDタグは、集積回路及びアンテナを備える。さらに、センサ10のRFIDタグのアンテナは、EMFを生成してよい。センサをピックアップコイルに結合すると、センサアンテナにEMFが生成され、圧力感応素子の誘電特性によって影響を及ぼされる。圧力感応素子の圧力で誘起された寸法の変化がインピーダンスに影響を及ぼし、これがネットワークアナライザ26によって解析し得る。
【0054】
センサの複素インピーダンスの総計がネットワークアナライザ26を使用して測定され、同時にメモリチップからのデジタル情報がデジタル書込み装置/読取り装置28で読み取られる。インピーダンス測定は、例えばマルチプレクサを使用して遂行される。いくつかの実施形態では、多変数のセンサ応答パターンを生成するために、システムの中にプロセッサ30が存在する。いくつかの実施形態では、プロセッサと組み合わせてデータ収集及び制御のユニット32が存在してよい。例えば、プロセッサ30は、多変数のセンサ応答パターンを生成するために、データ収集及び制御のユニット32から、センサデータ及び較正データを取得してよい。或いは、プロセッサは、例えば多変数のセンサ応答パターンを生成するために、ユーザ側に存在して、インターネットによって、未加工のデータ又は半加工のデータを受け取るように構成し得る。
【0055】
一実施形態では、それぞれの素子を組み立てることによってセンサシステムを作製するプロセスが、
図3に全体的に示されている。センサシステムを作製する方法は、RFIDタグを用意し、シリコーン接着剤を用いてRFIDタグ上に圧力感応素子を配置し、続いてシリコーン接着剤を用いてEMF変調器を圧力感応素子に結合することを含む。センサの作製を完了するために、EMF変調器上にシリコーンの保護層がさらに配置し得る。
【0056】
図4に、材料の温度非依存性の圧力変化を測定する方法が全体的に示されている。この測定は、センサに対して温度が変化する状態で可変圧力を定量化する段階を含み、センサは少なくとも1つのRFIDセンサ回路を備える。このセンサは、共振センサ回路のいくつかの共振パラメータのインピーダンス応答をさらに測定して、インピーダンス応答の主成分分析(PCA)を遂行することにより、センサの多変数の応答パターンを求める。このセンサは、多変数の応答パターン向けに較正され、多変数の較正値は、RFIDセンサのメモリチップに記憶されるモデルを形成する。多変数の実際の値と多変数の較正値を比較して、最終的に、温度が変化する状態での圧力を求める。したがって、多変数のセンサ応答パターンは、温度の変化から圧力の変化を識別可能に分離する。
【0057】
環境条件(例えば温度及び圧力)が、センサ回路の別々の素子に対して顕著な独立した影響をもたらすので、単一のセンサを使用して、圧力と温度を同時に計量すること又は単一のセンサを使用して、温度の変化に対して圧力測定値を補正することが、少なくとも部分的には可能である。センサの多変量の応答に続く、応答の多変量解析が、これらの影響を分離するのに部分的に役立つ。センサの多変量の応答には、センサのフル複素インピーダンススペクトル及び/又はいくつかの個々に測定された特性Fp、Zp、Fz、F1及びF2が含まれ得る。これらの特性は、複素インピーダンスの実部最大値の周波数(共振ピークの位置Fp)と、複素インピーダンスの実部の大きさ(ピークの大きさZp)と、ゼロリアクタンスの周波数(インピーダンスの虚部がゼロである周波数Fz)と、複素インピーダンスの虚部の共振周波数(F1)と、複素インピーダンスの虚部の反共振周波数(F2)と、複素インピーダンスの虚部の共振周波数(F1)における信号の大きさ(Z1)と、複素インピーダンスの虚部の反共振周波数(F2)における信号大きさ(Z2)とを含む。他のパラメータは、例えば共振のQ、位相角及びインピーダンスの大きさといった全体の複素インピーダンススペクトルを用いて測定し得る。このような多変量応答パラメータの具体例は、「Method and systems for calibration of RFID sensors」という名称の米国特許出願第12/118950号に説明されており、同出願は参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0058】
実施例1
RFID圧力センサの複素インピーダンスの測定は、LabVIEWを用いたコンピュータ制御の下でネットワークアナライザ(カリフォルニア州サンタクララのAgilent Technologies社のModel E5062A)を用いて遂行した。周波数を対象の範囲(一般に約10MHzの走査範囲で中央が約13MHz)にわたって走査してRFID圧力センサからの複素インピーダンス応答を収集するために、ネットワークアナライザを使用した。収集された複素インピーダンスデータは、Excel(ワシントン州シアトル市のMicroSoft社)又はKaleidaGraph(ペンシルバニア州レディング市のSynergy Software)及びMatlab(マサチューセッツ州ネーティックのThe Mathworks社)で動作するPLS_Toolbox(ワシントン州マンソンのEigenvector Research社)を使用して解析した。
【0059】
単一のセンサで様々温度範囲にわたって圧力を計量するために、10℃〜60℃の温度範囲を選択した。RFID式センサから取得されたデータの多変量解析を用いて圧力を定量化した。9mmのTag Sys RFIDタグを、プラスチックキャップの壁に接着剤で取り付けることにより、圧力を感知するように適合させた。クローズドセル発泡体をから成る可撓性メンブランをタグ上に配置して、接着剤でタグに取り付けた。次いで、クローズドセル発泡体に、EMF変調器として金属フォイルを接着した。プラスチックキャップ、RFIDタグ、クローズドセル発泡体及び金属フォイルを用いて、サンドイッチ状に挟まれた全体のセンサを形成した。次いで、シリコーンを保護層として用いて、サンドイッチ状に挟まれたセンサをコーティングした。空気圧を印加し、システムを通して、センサのプラスチックキャップにある脱イオン化された水に伝えた。圧力を連続的に監視するために、センサに適合した圧力変換器が存在した。LabVIEWプログラムで、システムの空気圧を制御して、1次参照センサ(市販の圧力変換器)及びRFID式センサからデータを収集した。温度が約10℃〜60℃の範囲に制御されたバイオプロセスチャンバには、加圧されたキャップが存在した。
【0060】
センサシステムは約0psi〜10psiの範囲で変化する圧力の下で、10℃、35℃及び60℃の温度に対して500時間試運転した。
図5Aは、予測された圧力対実際の圧力を測定することにより、圧力変化のセンサ応答パターンを示し、
図5Bは、±0.25psiの範囲内の誤差予測を用いて、センサを使用して温度非依存性モデルの実際の圧力対残留圧力を測定することによって生成された誤差分布を示す。結果として、この圧力センサは、誤差の許容限界内で圧力を定量化することができていた。
【0061】
実施例2
センサに、約10℃、33℃及び57℃の温度で、4つの別々の圧力(0psi、7psi、16psi及び24psi)を印加する、類似の実験を遂行した。
図6Aは、主成分分析(PCA)を用いた、センサの多変数の応答を示しており、センサには、10℃、33℃及び57℃の3つの温度で、0psi、7psi、16psi及び24psiなど4つの別々の圧力を印加した。第1の2つの主成分のPCAグラフは、流体の圧力及び温度の同時の変化に関連したものである。
図6Bは、これら2つの主成分を入力として用いて、実際の圧力対予測された圧力を測定することにより、生成されたセンサ応答パターンのグラフを示し、
図6Cは、温度非依存性モデルに関して、センサを用いて実際の圧力対残留圧力を測定することによって生成された誤差分布を示す。結果として、この圧力センサは、同センサの別々の温度で圧力を定量化することができていた。
【0062】
本発明の、単なる特定の特徴が本明細書に示され説明されてきたが、当業者なら多くの修正形態及び変更形態を思いつくことができるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような修正形態及び変更形態のすべてが、本発明の範囲内に入る対象として含まれるように意図されていることを理解されたい。