(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抽液減圧部で生成された前記低温液体が前記主冷却部で熱交換されることで加熱気化されて生成された気体又は超臨界流体を、前記圧縮部における相当圧力部に返送する請求項2に記載の昇圧システム。
前記冷却部は、外部冷却媒体との間で熱交換を行って前記中間超臨界流体を冷却して前記主冷却部へと送る予冷却部を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の昇圧システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の昇圧システムでは、圧縮機とポンプとを組み合わせたことでアフタークーラが不要となり、動力低減を図ることができているものの、圧縮機で気体(二酸化炭素)を臨界圧力未満の圧力までしか昇圧させずに冷却して液化し、ポンプへ導入している。このため、液化に要する冷熱量が非常に大きくかつ低温となっており、外部冷凍サイクルには大きな動力が必要となっている。このため、全体としての運転効率に改善の余地がある。
【0008】
本発明は、動力をさらに低減して運転効率を向上した昇圧システム、及び気体の昇圧方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様に係る昇圧システムは、対象気体を臨界圧より高い目標圧以上の圧力まで昇圧する昇圧システムであって、臨界圧以上、目標圧未満の中間圧まで前記対象気体を圧縮して中間超臨界流体を生成する圧縮部と、前記圧縮部で生成された前記中間超臨界流体を臨界温度近傍まで冷却して中間超臨界圧液体を生成する冷却部と、前記冷却部で生成された前記中間超臨界圧液体を前記目標圧以上の圧力まで昇圧するポンプ部と、前記ポンプ部で昇圧された前記中間超臨界圧液体を臨界温度近傍まで加熱する加熱部とを備え、前記冷却部は、前記加熱部との間で熱交換を行って前記中間超臨界流体を冷却する主冷却部を有する。
【0010】
このような昇圧システムによれば、前方段側での圧縮を圧縮部で行い、より高圧となっている後方段側での中間超臨界流体の圧送による昇圧をポンプ部で行って目標圧以上の圧力の液体とする。その後、加熱部によって最終的に臨界温度以上まで加熱することで目標とする圧力、温度の超臨界流体を得ることができる。即ち、後段側で高圧となっている部分にも、仮に圧縮機を適用して加圧した場合には、高圧ガスシールや高圧に対応した圧縮機ケーシングが多数必要となるが、後段側でポンプ部を採用したことで、これら高圧対応が不要となるためコスト低減や信頼性向上が可能となり、加圧後の超臨界流体を冷却するアフタークーラも不要となり、動力低減が可能となる。
ここで、冷却部では、圧縮部によって臨界圧以上の圧力状態となった中間超臨界流体を冷却して中間超臨界圧液体とするため、臨界圧未満の状態で冷却を行う場合と比較して、冷却に要する熱量を著しく小さく抑えながら液化させることが可能となる。
また、冷却部における主冷却部によって、圧縮部で圧縮された中間超臨界流体を冷却して中間超臨界圧液体を生成し、この中間超臨界圧液体をポンプ部へ導入可能とするとともに、中間超臨界流体の冷却の際に回収した熱を利用して加熱部との間で熱交換を行うことで、より効率良く臨界温度以上まで中間超臨界圧液体を加熱して目標とする圧力、温度の超臨界流体を得ることができる。
【0011】
さらに、本発明の第二の態様に係る昇圧システムでは、上記第一の態様における前記冷却部と前記ポンプ部との間に設けられて前記中間超臨界圧液体を抽液して臨界圧近傍まで減圧して低温液体を生成する抽液減圧部をさらに備え、前記主冷却部にて、前記抽液減圧部で生成された前記低温液体との間で熱交換を行って前記中間超臨界流体を冷却してもよい。
【0012】
このような抽液減圧部によって、ポンプ部へ導入される中間超臨界圧液体自身の冷熱を有効に利用することで、中間超臨界流体から中間超臨界圧液体を生成するために必要な凝縮器を別途設置することなく、ポンプ部へ導入する中間超臨界圧液体を確実に生成できる。
【0013】
また、本発明の第三の態様に係る昇圧システムは、対象気体
である二酸化炭素を臨界圧より高い目標圧以上の圧力まで昇圧する昇圧システムであって、前記対象気体を圧縮する圧縮インペラと圧縮された前記対象気体を水又は空気により冷却する中間冷却器とを複数段備えて、臨界圧以上、目標圧未満の中間圧まで前記対象気体を圧縮して中間超臨界流体を生成する圧縮部と、前記圧縮部で生成された前記中間超臨界流体を臨界温度近傍まで冷却して中間超臨界圧液体を生成する冷却部と、前記冷却部で生成された前記中間超臨界圧液体を前記目標圧以上の圧力まで昇圧するポンプ部と、前記冷却部と前記ポンプ部との間に設けられて前記中間超臨界圧液体を抽液して臨界圧近傍まで減圧して低温液体を生成する抽液減圧部とを備え、前記冷却部は、前記抽液減圧部で生成された前記低温液体との間で熱交換を行って前記中間超臨界流体を冷却する主冷却部を有
し、前記抽液減圧部で生成された前記低温液体が前記主冷却部で熱交換されることで加熱気化されて生成された気体又は超臨界流体を、前記圧縮部における最終段の圧縮インペラの上流側となる該最終段の圧縮インペラの入口であって、該最終段の圧縮インペラの入口に接続された前記中間冷却器の下流側の相当圧力部に返送する。
【0014】
このような昇圧システムによれば、後段側でポンプ部を採用したことで、仮に後段側で圧縮機を適用した場合と比較して高圧対応が不要となるため、コスト低減や信頼性向上が可能となり、加圧後の超臨界流体を冷却するアフタークーラも不要となり、動力低減が可能となる。また冷却部では、臨界圧未満の状態で冷却を行う場合と比較して、冷却に要する熱量を著しく小さく抑えながら液化させることが可能となる。さらに、抽液減圧部によって、ポンプ部へ導入される中間超臨界圧液体自身の冷熱を冷却部における主冷却部で利用し、凝縮器を別途設置することなく、圧縮部で圧縮された中間超臨界流体を冷却して中間超臨界圧液体を生成してポンプ部へ導入することができる。
さらに、抽液減圧部で抽液され、生成された低温液体を外部へ排出することがなく、低温液体から生成された気体又は超臨界流体の圧力に相当する圧縮機の相当圧力部へこの気体又は超臨界流体を返送できるため、昇圧システム全体の効率をさらに向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明の第四の態様に係る昇圧システムでは、上記第
二の態様における前記抽液減圧部で生成された前記低温液体が前記主冷却部で熱交換されることで加熱気化されて生成された気体又は超臨界流体を、前記圧縮部における相当圧力部に返送してもよい。
【0016】
このようにすることで、抽液減圧部で抽液され、生成された低温液体を外部へ排出することがなく、低温液体から生成された気体又は超臨界流体の圧力に相当する圧縮機の相当圧力部へこの気体又は超臨界流体を返送できるため、昇圧システム全体の効率をさらに向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明の第五の態様に係る昇圧システムでは、上記第一から第四の態様における前記冷却部は、冷却媒体との間で熱交換を行って前記中間超臨界流体を冷却して前記主冷却部へと送る予冷却部を有してもよい。
【0018】
このような予冷却部によって、中間超臨界流体を予冷却できるので、主冷却部で必要となる冷熱量を低減できる。
【0019】
本発明の第六の態様に係る気体の昇圧方法は、対象気体
である二酸化炭素を臨界圧より高い目標圧以上の圧力まで昇圧する気体の昇圧方法であって、前記対象気体を
圧縮部で圧縮する工程と圧縮された前記対象気体を
中間冷却器で水又は空気により冷却する工程とを繰り返して、臨界圧以上、目標圧未満の中間圧まで前記対象気体を圧縮して中間超臨界流体を生成する圧縮工程と、前記圧縮工程で生成された前記中間超臨界流体を臨界温度近傍まで冷却して中間超臨界圧液体を生成する冷却工程と、前記冷却工程で生成された前記中間超臨界圧液体を前記目標圧以上の圧力まで昇圧するポンプ工程とを備え、前記冷却工程では
、前記ポンプ工程開始前で前記中間超臨界圧液体を抽液して臨界圧近傍まで減圧して生成された低温液
体を冷却媒体として利用して中間超臨界流体を冷却
し、前記低温液体が前記中間超臨界流体を冷却することで加熱気化されて生成された気体又は超臨界流体を、前記圧縮部における最終段の圧縮インペラの上流側となる該最終段の圧縮インペラの入口であって、該最終段の圧縮インペラの入口に接続された前記中間冷却器の下流側の相当圧力部に返送する。
【0020】
このような気体の昇圧方法によれば、圧縮工程の後にポンプ工程を備えることで、仮に圧縮工程のみで目標圧以上の圧力まで気体の昇圧を行う場合と比較して高圧対応が不要となるためコスト低減が可能となり、昇圧後の超臨界流体を冷却するアフタークーラも不要となるため動力低減が可能となる。また、冷却工程で臨界圧以上の圧力状態となった中間超臨界流体を冷却して中間超臨界圧液体とするため、臨界圧未満の状態で冷却を行う場合と比較して、冷却に要する熱量を著しく小さく抑えながら液化させることが可能となる。
さらに冷却工程では
、低温液
体によって、中間超臨界流体を効率的に冷却できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の昇圧システム及び気体の昇圧方法によれば、圧縮部とポンプ部とを組み合わせ、冷却部において臨界圧以上の圧力状態で中間超臨界流体を冷却することで、動力をさらに低減して運転効率の向上が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一実施形態に係る昇圧システム1について説明する。本実施形態では、昇圧システム1は陸上の地中や海底の地中へ貯留可能となるように対象気体として二酸化炭素Fの気体を所定の圧力、温度まで昇圧するポンプを組込んだギアド圧縮機となっている。
なお、ギアド圧縮機は、複数のインペラを、歯車を介して連動させた多軸多段構成の圧縮機である。
【0024】
図1に示すように、昇圧システム1は、対象気体である二酸化炭素Fを取り込んで圧縮する圧縮部2と、圧縮部2の後方段側に設けられて二酸化炭素Fを昇圧するポンプ部3と、圧縮部2とポンプ部3との間に設けられた冷却部4とを備えている。
さらに、この昇圧システム1は、ポンプ部3で昇圧された二酸化炭素Fを加熱する加熱部5と、冷却部4とポンプ部3との間に設けられて二酸化炭素Fを取り出す抽液減圧部6と、抽液減圧部6からの二酸化炭素Fを圧縮部2に返送するバイパス流路7とを備えている。
【0025】
圧縮部2は、多段(本実施形態では6段)に設けられた複数のインペラ10と、インペラ10同士の間及び冷却部4との間に一つずつ設けられた複数の中間冷却器20とを有する。そして、圧縮部2は、取り込んだ二酸化炭素Fを導入気体F0として圧縮と冷却を繰り返しながら臨界圧以上であって、目標圧未満の中間圧の圧力状態まで圧縮して中間超臨界流体F1を生成する。二酸化炭素Fの臨界圧は7.4[MPa]である。目標圧としては、当該臨界圧よりも高い値として、例えば15[MPa]が設定される。また、圧縮部2で生成される中間超臨界流体F1の中間圧としては、例えば10[MPa]が設定される。
ここで、圧縮部2においては、二酸化炭素Fが取り込まれて流通する上流側から下流側に向かって順に設けられた一段圧縮インペラ11と、第一中間冷却器21と、二段圧縮インペラ12と、第二中間冷却器22と、三段圧縮インペラ13と、第三中間冷却器23と、四段圧縮インペラ14と、第四中間冷却器24と、五段圧縮インペラ15と、第五中間冷却器25と、六段圧縮インペラ16と、第六中間冷却器26とによって構成され、これらが管路8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l、8m、8nによって互いに接続されている。
【0026】
冷却部4は、第六中間冷却器26の下流側に管路8lによって接続され、圧縮部2の最終段となる六段圧縮インペラ16から生成された中間超臨界流体F1を臨界温度近傍まで冷却して液化し、中間超臨界圧液体F2を生成する。
【0027】
この冷却部4は、圧縮部2で生成された中間超臨界流体F1を予冷却する予冷却部29と、予冷却部29で冷却された中間超臨界流体F1をさらに冷却して中間超臨界圧液体F2を生成する主冷却部28とを有している。
予冷却部29は、外部冷却媒体Wによって中間超臨界流体F1を予冷却する熱交換器である。
【0028】
主冷却部28は、後述する抽液減圧部6からの低温液体F5を導入し、これを冷媒として中間超臨界流体F1の冷却を行う。そして、本実施形態で主冷却部28と加熱部5との間については、主冷却部28で中間超臨界流体F1を冷却することで得られる熱により加熱部5での加熱を行っており、一つの熱交換器を構成している。
【0029】
ここで、予冷却部29で外部から取り込む外部冷却媒体Wの温度及び流量等によって予冷却部29での冷却能力は異なるが、本実施例では予冷却部29を利用することなく第六中間冷却器26のみで圧縮部2で生成された中間超臨界流体F1が液体への遷移領域まで冷却され、その後、主冷却部28によって液化されて中間超臨界圧液体F2が生成されている。
【0030】
また、冷却部4で中間超臨界流体F1を臨界温度近傍まで冷却する際には、好ましくは臨界温度の±20[℃]となる温度まで冷却し、より好ましくは臨界温度の±15[℃]となる温度まで冷却し、臨界温度の±10[℃]となる温度まで冷却することが最も好ましい。
【0031】
ポンプ部3は、冷却部4の下流側に管路8mによって接続され、冷却部4を通過して生成された中間超臨界圧液体F2を導入して目標圧の圧力状態まで昇圧し、目標圧液体F3を生成する。本実施形態では、このポンプ部3は、一段ポンプインペラ31及び二段ポンプインペラ32からなる二段構成となっている。
【0032】
加熱部5は、ポンプ部3の下流側に管路8nによって接続されて設けられ、ポンプ部3からの目標圧液体F3を導入して、臨界温度(31.1[℃])以上の目標超臨界流体F4を生成する。上記のとおり、加熱部5は、冷却部4の主冷却部28とともに熱交換器を構成している。
即ち、この加熱部5では、主冷却部28との間での熱交換を行うことにより、主冷却部28で中間超臨界流体F1を冷却して得た凝縮熱によって目標圧液体F3の加熱を行う。
【0033】
抽液減圧部6は、主冷却部28とポンプ部3との間に設けられ、主冷却部28からの中間超臨界圧液体F2の一部を抽液して得た低温液体F5によって主冷却部28での中間超臨界流体F1の冷却を行うとともに低温液体F5自身が加熱される。
具体的にはこの抽液減圧部6は、主冷却部28とポンプ部3との間の管路8mから分岐するように、一端がこの管路8mに接続された分岐管路41と、この分岐管路41の他端が接続されて主冷却部28との間で熱交換を行う熱交換部42と、分岐管路41の中途位置に設けられたバルブ43とを有している。
バルブ43は、開度を調節することによって抽液した中間超臨界圧液体F2に対してジュールトムソン効果による減圧を行い、低温液体F5を生成する。この減圧は臨界圧近傍まで行われるが、好ましくは臨界圧の±2[MPa]となる圧力まで減圧し、より好ましくは臨界圧の±1.5[MPa]となる圧力まで減圧し、臨界圧の±1[MPa]となる圧力まで減圧することが最も好ましい。
【0034】
バイパス流路7は、抽液減圧部6からの低温液体F5を圧縮部2の六段圧縮インペラ16の上流側に返送する。即ち、このバイパス流路7は、一端が抽液減圧部6の熱交換部42に接続され、他端が六段圧縮インペラ16と第五中間冷却器25との間の管路8jに接続されている。
【0035】
次に、
図2のP−h線図を参照して、二酸化炭素Fの状態変化の様子(二酸化炭素Fの昇圧方法)について説明する。
圧縮部2において、一段圧縮インペラ11に導入された導入気体F0(状態S1a)は、
図2の実線の矢印に示すように、一段圧縮インペラ11によって圧縮されて状態S1aよりも高圧で高温の状態S1bとなる。その後、第一中間冷却器21によって等圧で冷却されて状態S2aとなる。そしてこのように圧縮と冷却を繰り返して、状態S2b→状態S3a→状態S3b→状態S4a→状態S4b→状態S5a→状態S5b→状態S6a→状態S6b→状態S7a→状態S7bと状態変化し、臨界圧以上の圧力の中間超臨界流体F1の状態となる(圧縮工程)。
【0036】
その後、状態S7bとなった中間超臨界流体F1は予冷却部29へ導入される。予冷却部29では等圧状態でさらに冷却されて中間超臨界流体F1の温度を下げることができる(冷却工程)が、本実施例では予冷却部29は利用していない。
【0037】
中間超臨界流体F1 は、主冷却部28によって超臨界圧のまま等圧で冷却されて、臨界温度以下の状態S8aとなって中間超臨界流体F1は中間超臨界圧液体F2へと相変化して、ポンプ部3へ導入される(冷却工程)。
【0038】
ポンプ部3では、状態S8aの中間超臨界圧液体F2が、陸上の地中や海底の地中へ貯留可能となる目標圧まで昇圧されるとともに、温度が上昇して状態S8bの目標圧液体F3となる(ポンプ工程)。その後、この目標圧液体F3を加熱部5によって加熱することで、臨界温度以上まで等圧で昇温し、二酸化炭素Fを陸上の地中や海底の地中へ貯留可能となる最終状態S9とする。
【0039】
ここで、主冷却部28で状態S8aとなった中間超臨界圧液体F2の一部が抽液減圧部6のバルブ43を開放することで抽液される。抽液された中間超臨界圧液体F2は減圧され、状態S10の低温液体F5となる。この状態S10における圧力は、六段圧縮インペラ16の上流側であって第五中間冷却器25の下流側の圧力に相当する圧力とされている。また、この低温液体F5は冷却部4との間で熱交換することで加熱されて等圧状態のまま気化し、六段圧縮インペラ16の上流側における状態S6aの気体又は超臨界流体となる。この気体または超臨界流体がバイパス流路7によって六段圧縮インペラ16の上流側へ返送され、圧縮部2を流通する中間超臨界流体F1に混入される。
【0040】
このような昇圧システム1によると、まず前方段での二酸化炭素Fの圧縮を圧縮部2で行い、より高圧となっている後方段での昇圧をポンプ部3で行うことで、目標圧液体F3を生成し、その後、加熱部5によって最終的に臨界温度以上まで加熱することで陸上の地中や海底の地中へ貯留可能となる目標超臨界流体F4を得ることができる。
【0041】
ここで、仮に高圧となっている後段側の部分にも圧縮部2と同様のインペラを適用した場合には、高圧ガスシールや高圧に対応した圧縮機ケーシングが多数必要となってしまい、信頼性が低下するとともにコストアップしてしまう問題がある。また、このような高圧状態に対応するためにはインペラの軸径を大きくしたり、インペラの回転数を低減するなどの対応が必要となり、信頼性と運転効率の低下の問題がある。
【0042】
この点、本実施形態では高圧側でポンプ部3を採用している。ポンプ部3では液体を昇圧するため、高圧状態(約15〜60[MPa])まで昇圧するに際して、対象となる流体をシールすることが容易であることから非常に有利であり、上述のようなコストアップを回避でき、また信頼性と運転効率の問題も解消できる。
【0043】
さらに、仮に高圧となる後段側にも圧縮部2と同様のインペラを適用した場合には、特性が不安定となる遷移域での圧縮をさけるべく第六中間冷却器26での冷却は状態S7a止まりとなり、
図2の点線に示すように昇圧後の超臨界流体は、目標超臨界流体F4に比べて温度が高い状態となる。従って目標超臨界流体F4を得るためには、圧縮後の冷却を行うアフタークーラ等がさらに必要となる。
【0044】
この点についても、本実施形態では上記アフタークーラ等は不要であり、このアフタークーラを作動するための動力を低減できる。
【0045】
また冷却部4では、圧縮部2によって臨界圧以上の状態となった中間超臨界流体F1を冷却して中間超臨界圧液体F2とする。
ここで、
図2に示すP−h線図によると、臨界圧力未満では等温線が縦軸(圧力)に略平行となるように立ち上がるとともに、等温線同士の間隔が狭くなっている。一方で、臨界圧以上であって臨界温度付近の遷移領域では、等温線は横軸(エンタルピー)に略平行となるとともに等温線同士の間隔が広くなっている。従って遷移領域では、二酸化炭素Fが等圧状態で状態変化する際に、より小さな温度変化でより大きなエンタルピー変化が生じることとなる。
【0046】
よって、本実施形態のように臨界圧以上の状態で中間超臨界流体F1を冷却する場合には、臨界圧未満の状態で冷却を行う場合と比較して、冷却に要する熱量を小さく抑えながら中間超臨界流体F1の液化が可能となる。
【0047】
また、中間超臨界流体F1は、まず第六中間冷却器26のみによって水冷で遷移領域まで冷却される。ここで、中間超臨界流体F1は臨界圧、臨界温度付近の状態にあるため、上述したように小さな温度変化でより大きなエンタルピー変化が生じ、水冷のみで中間超臨界流体F1の液化に必要な大部分の冷熱量を得ることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、主冷却部28の冷媒は抽液減圧部6からの低温液体F5であるが、外部より適当な冷却媒体Wが得られる場合には、予冷却部29によって予冷却することで、主冷却部28で必要となる冷熱量の低減が可能となる。例えばこの場合、
図3、
図4に示すように、状態S7bから状態S7cまでの冷却を予冷却部29で冷却し、状態S7cから状態S8aまでの冷却を主冷却部28で行うこととなる。
従って、このような予冷却部29によって低温液体F5の流量を低減したとしても主冷却部28での冷却を十分に行うことができる。よって、バイパス流路7を介して圧縮部2へ返送される低温液体F5の流量を低減できるため、圧縮部2での動力低減も可能となり、さらなる運転効率の向上につながる。
【0049】
さらに、この主冷却部28の冷媒は低温液体F5であるため、ポンプ部3へ導入される中間超臨界圧液体F2自身の冷熱を有効に利用して、即ち中間超臨界流体F1から中間超臨界圧液体F2を生成するために必要な凝縮器を別途設置することなく、ポンプ部3へ導入する中間超臨界圧液体F2を確実に生成可能である。
【0050】
また、主冷却部28では、圧縮部2で圧縮された中間超臨界流体F1を冷却して中間超臨界圧液体F2を生成し、ポンプ部3へ中間超臨界圧液体F2を導入可能とするとともに、中間超臨界流体F1の冷却の際に回収した熱について、加熱部5との間で熱交換を行うことで臨界温度以上まで中間超臨界圧液体F2を加熱することができる。
【0051】
また、冷却部4での中間超臨界流体F1の冷却、加熱部5での目標圧液体F3の加熱では、臨界圧以上の高圧状態で熱交換が行われるため、熱交換部分をコンパクト化可能であるため、システム全体としてコンパクト化を図ることができる。
【0052】
そして、バイパス流路7を設けたことで、抽液された中間超臨界圧液体F2を外部へ排出することがなくなるため、昇圧システム1全体の効率をより向上させることができる。
【0053】
なお、本実施形態で、抽液減圧部6を必ずしも設けなくともよく、この場合には、
図5に示すように冷却部4は加熱部5との間でのみ、もしくは加熱部5及び外部冷却媒体Wとの間で熱交換を行うこととなる。
【0054】
また、ポンプ部3で昇圧することのみで目標とする圧力、温度の気体を得ることができる場合やプロセスの原料として容器に貯蔵する等の目的で液体状態の方が望ましい場合は、加熱部5は必ずしも設けなくともよく、この場合には、
図6に示すように冷却部4は抽液減圧部6における低温液体F5及び外部冷却媒体W、もしくはこれらのうちのいずれか一方によって冷却を行うこととなる。
【0055】
次に本発明の第二実施形態に係る昇圧システム1Aについて説明する。
第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の昇圧システム1Aは、任意の圧縮機形式(遠心式、往復式など)及びポンプ形式との組合せである。
【0056】
昇圧システム1Aは、第一実施形態と同様に、圧縮部2Aと、ポンプ部3Aと、冷却部4Aと、加熱部5Aと、分岐管路41Aと熱交換部42Aとバルブ43Aとを有する抽液減圧部6Aと、バイパス流路7Aとを備えている。そして、これら圧縮部2A、ポンプ部3A、冷却部4A、加熱部5Aは管路8Aa、8Ab、8Ac、8Ad、8Ae、8Af、8Ag、8Ah、8Ai、8Aj、8Ak、8Al、8Am、8Anによって互いに接続されている。
【0057】
圧縮部2Aは、多段(本実施形態では6段)に設けられた複数の圧縮ステージ11A〜16Aと、圧縮ステージ11A〜16A同士の間、及び冷却部4Aとの間に一つずつ設けられた複数の中間冷却器21A〜26Aとを有している。
【0058】
ポンプ部3Aは、圧縮部2Aの後方段に設けられて、多段(本実施形態では2段)のポンプステージ31A、32Aから構成されている。
【0059】
ここで、
図7における二酸化炭素Fの状態S1aから状態S9まで、及び状態S10と、
図2における二酸化炭素Fの状態S1aから状態S9まで、及び状態S10とは対応している。
【0060】
このような昇圧システム1Aによると、第一実施形態と同様に、圧縮部2Aとポンプ部3Aとを組み合わせてコストを抑え、運転効率を向上するとともに、冷却部4Aを採用して臨界圧以上での冷却が可能となるため、中間超臨界流体F1の液化に要する動力をさらに低減することが可能である。
【0061】
ここで、
図8に示すように、ポンプ部3Aの後段側に、ポンプ部9Aをさらに備えていてもよい。このようにすることで、ポンプステージを追加して、さらに高圧まで昇圧を行うことも可能である。そしてこの場合、
図9に示すように二酸化炭素Fの状態S9が状態S9aとなり、目標圧以上の圧力の超臨界流体を得ることができる。
なお、第一実施形態の昇圧システム1においても、このようにポンプ部3の後段側に、ポンプ部をさらに追加して二酸化炭素Fを目標圧以上の圧力まで昇圧してもよい。
【0062】
また、本実施形態においても、冷却部4Aでは予冷却部29Aを利用せず、主冷却部28Aのみによって冷却を行っているが、予冷却部29Aによって予冷却することで、主冷却部28Aで必要となる冷熱量の低減が可能となる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【0064】
例えば、冷却部4(4A)における主冷却部28(28A)は抽液減圧部6(6A)からの低温液体F5によって、中間超臨界圧液体F2の冷却を行っているが、予冷却部29(29A)と同様に、外部冷却媒体W等の外部からの冷媒によって中間超臨界圧液体F2を冷却してもよい。さらに、加熱部5(5A)では外部の加熱器を別途設けて目標圧液体F3を加熱して目標超臨界流体F4を生成してもよく、即ち、冷却部4(4A)と加熱部5(5A)とを独立させてもよい。これにより構造を簡素化可能である。
【0065】
また、中間冷却器21A〜26Aの冷却媒体は水に限らず、空気等であってもよい。
【0066】
さらに、バイパス流路7(7A)は必ずしも設けられなくともよい。この場合、圧縮部2(2A)へ返送される低温液体F5の流量分を考慮せずに、圧縮部2(2A)の設計を行うことができる。
【0067】
また、圧縮部2(2A)及びポンプ部3(3A)の段数は上述の実施形態に限定されない。
【0068】
さらに、実施形態では対象気体は二酸化炭素Fとしていたが、これに限定されることなく、様々な気体の昇圧に昇圧システム1(1A)を適用できる。