特許第5826691号(P5826691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5826691
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】抽出容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20151112BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20151112BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20151112BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   A47J31/06 130
   B65D81/34 G
   B65D77/00 Z
   B65D21/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-81446(P2012-81446)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208338(P2013-208338A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02311206(GB,A)
【文献】 実開平05−086860(JP,U)
【文献】 国際公開第2004/074111(WO,A2)
【文献】 実開平03−084781(JP,U)
【文献】 米国特許第06595110(US,B1)
【文献】 英国特許出願公開第02374590(GB,A)
【文献】 特許第2978601(JP,B2)
【文献】 特開2006−008204(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02417234(GB,A)
【文献】 特開平09−201285(JP,A)
【文献】 特開昭60−251054(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00158511(EP,A2)
【文献】 実公昭46−31431(JP,Y1)
【文献】 米国特許第03935318(US,A)
【文献】 米国特許第02805162(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00−31/60
A47G 19/16
B65D 21/00−21/024
B65D 21/04−21/08
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部を開口させた外周壁を有しその内側に飲料を収容する容器本体と、抽出原料の収納空間を有するケース本体を備え該収納空間を閉塞するフィルターを設けた収納ケースとからなり、該収納ケースを該容器本体内に載置し該容器本体に収容される溶媒を該収納ケース内に導入させて飲料を抽出させる抽出容器であって、
前記ケース本体を、合成樹脂にて形成するとともに、該収納空間を、底板と該底板を取り囲んで立ち上がる周壁との協働によって形成し、
該周壁は、該周壁の外周面から隙間をあけて該外周面に沿って延在しその一端部を該周壁に一体連結するとともに該周壁との隙間をつなぐ少なくとも1つの連結片を備え、該連結片の破断にて一端部を残して該周壁から切り離されて該容器本体内からの該収納ケースの吊り上げを可能とするアーム部を設けることを特徴とする抽出容器。
【請求項2】
前記アーム部は、その他端部に前記容器本体の外周壁上端に引っ掛かるフックを備える請求項1に記載の抽出容器。
【請求項3】
前記収納ケースは、前記フィルターを覆うシール部材を備える請求項1又は2に記載の抽出容器。
【請求項4】
前記容器本体は、前記外周壁を上部の開口に向けて拡径させて該容器本体の底部上に前記収納ケースを収めた姿勢で該容器本体同士のスタッキングを可能とするものである請求項1〜3のいずれかに記載の抽出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や湯を注ぎ入れることによってコーヒーやお茶等を抽出させてそのまま飲むことのできる抽出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば湯を注ぎ入れることによって1回分のコーヒーやお茶等を抽出させるものとしては、特許文献1に記載のように、茶葉やコーヒー豆等を不織布で形成された紙袋に収納し、熱湯を注いだ茶碗(容器)内に入れることで所望の飲料が抽出できるティーバックが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3020355号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなティーバックは、茶等を抽出した後に容器から取り除くために吊紐を設けていることが通常であるが、吊紐を紙袋に取り付ける作業が必要であり、また抽出後の湯等を含んだディーバックを引き上げる際に吊紐が紙袋から外れないようにするためにはこれらの連結部に強度を持たせることも要求されるため、かかる点で改善の余地が残されている。また、外出先でも好みのティーバックから抽出した茶等を手軽に飲用したいとする要望があるものの、商品の流通段階ではティーバック単独で販売されることが一般的であるため別途容器を準備する必要があり、また、紙袋を用いているために変形しやすく、移動中に外部から力が加わるとティーバックに収納した茶葉等が粉砕されるおそれもあって、未だ実用的なものがないのが現状であった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、従来のティーバックのように吊紐を紙袋に取り付ける面倒な作業を要することがなく、また外出先でも手軽に飲用することができる抽出容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上部を開口させた外周壁を有しその内側に飲料を収容する容器本体と、抽出原料の収納空間を有するケース本体を備え該収納空間を閉塞するフィルターを設けた収納ケースとからなり、該収納ケースを該容器本体内に載置し該容器本体に収容される溶媒を該収納ケース内に導入させて飲料を抽出させる抽出容器であって、
前記ケース本体を、合成樹脂にて形成するとともに、該収納空間を、底板と該底板を取り囲んで立ち上がる周壁との協働によって形成し、
該周壁は、該周壁の外周面から隙間をあけて該外周面に沿って延在しその一端部を該周壁に一体連結するとともに該周壁との隙間をつなぐ少なくとも1つの連結片を備え、該連結片の破断にて一端部を残して該周壁から切り離されて該容器本体内からの該収納ケースの吊り上げを可能とするアーム部を設けることを特徴とする抽出容器である。
【0007】
前記アーム部は、その他端部に前記容器本体の外周壁上端に引っ掛かるフックを備えることが好ましい。
【0008】
前記収納ケースは、前記フィルターを覆うシール部材を備えることが好ましい。
【0009】
前記容器本体は、前記外周壁を上部の開口に向けて拡径させて該容器本体の底部上に前記収納ケースを収めた姿勢で該容器本体同士のスタッキングを可能とするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
抽出原料を収めるケース本体を合成樹脂にて形成するとともに、このケース本体に、周壁の外周面から隙間をあけて外周面に沿って延在し、その一端部を周壁に一体連結するとともに周壁との隙間をつなぐ少なくとも1つの連結片を備えるアーム部を設けたので、ケース本体に力が加わることがあっても、収納された抽出原料が粉砕されるおそれを極力減らすことができる上、アーム部をケース本体に取り付ける作業が不要となる。また、アーム部とケース本体とは、合成樹脂そのものの強度によって強固に連結されるので、ケース本体を引き上げる際にアーム部が外れてしまう不具合も抑制することができる。
【0011】
アーム部の他端部に、容器本体の外周壁上端に引っ掛かるフックを設ける場合は、抽出中にアーム部が容器本体内に落ちてしまう不具合が有効に防止される。
【0012】
収納ケースに、フィルターを覆うシール部材を設ける場合は、ケース内の収納空間に埃等が入り込むおそれがなくなる上、抽出原料と外気との接触を防ぐことができるので、初期の品質を長期間に亘って維持することができる。
【0013】
容器本体が、外周壁を上部の開口に向けて拡径させて容器本体の底部上に収納ケースを収めた姿勢で該容器本体同士のスタッキングを可能とするものである場合は、複数の容器本体を持ち運ぶ際にもこれらの容器本体が嵩張ることがないので、使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従う抽出容器における収納ケースの実施の形態を示す分解斜視図である。
図2図1に示す収納ケースを、軸線を境にして半分のみを示す断面図である。
図3図1に示す収納ケースの連結片を破断して、アーム部のフックを容器本体に引っ掛けた姿勢を示す断面図である。
図4】使用前の収納ケースを容器本体の底部上に収めた姿勢で合計3個の容器本体をスタッキングさせた断面図であって、容器本体の軸線を境にして半分のみを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う抽出容器における収納ケースの実施の形態を示す分解斜視図であって、図2は、図1に示す収納ケースを、軸線を境にして半分のみを示す断面図であって、図3は、図1に示す収納ケースの連結片を破断して、アーム部のフックを容器本体に引っ掛けた姿勢を示す断面図であって、図4は、使用前の収納ケースを容器本体の底部上に収めた姿勢で合計3個の容器本体をスタッキングさせた断面図であって、容器本体の軸線を境にして半分のみを示す。
【0016】
図1において、符号1は、本発明の抽出容器のうち、後述する容器本体内に載置される収納ケースである。収納ケース1は、例えば茶葉や砕いたコーヒー豆等の抽出原料を収納するケース本体10と、ケース本体10の開口を塞ぐフィルター11と、フィルター11を覆うシール部材12とを備えている。
【0017】
ケース本体10は、合成樹脂製であって、例えば射出成形機にて溶融した合成樹脂を金型内に射出することによって形成される。またケース本体10は、図示の例では円板状となる底板10aの縁部から立ち上がる周壁10bを有し、該周壁10bの上端は開口Hとなっている。また、図2に示すようにケース本体10の内側には、底板10aと周壁10bとの協働にて、上述した抽出原料Tを収める収納空間mが形成されている。
【0018】
また、図1に示すようにケース本体10は、周壁10bの外周面から隙間sをあけてこの外周面に沿って延在するアーム部10cを備えている。アーム部10cは、その一端部が周壁10bに一体連結する連結部10dであり、また、その他端部が平面視にて逆L字状となるフック10eとなっている。さらに、周壁10bの隙間sには、周壁10bの外周面とアーム部10cの内周面とを連結する少なくとも1つ(図示の例では周方向に間隔をあけて合計3つ)の連結片10fを設けている。
【0019】
図1及び図2に示すように、フィルター11は、収納空間mを閉鎖する蓋壁11aを有する。また蓋壁11aには、その表裏を貫く複数の貫通孔11bを備えている。さらに蓋壁11aの下面側には、周壁10bの内周面と嵌合する環状壁11cを一体連結していて、フィルター11をケース本体10の開口Hに保持している。なお図示の例でフィルター11は、合成樹脂にて一体成形されるものであるが、例えば、ケース本体10の開口Hを覆うように設けられた不織布にて代用することもできる。
【0020】
また、シール部材12は、その裏面側の全面又は縁部をフィルター11の蓋壁11aに固着させるものであり、これにより、フィルター11を装着したケース本体10の収納空間mへの外気の流入が阻止される。また、シール部材12には、図1に示すようにフィルター11の外径から突出する摘み部12aを設けることが好ましく、これによりシール部材12を剥がす作業が容易となる。
【0021】
図3に示す符号2は、容器本体である。容器本体2は、円形の底部20の縁部から起立する外周壁21を有し、その上端を開口させている。また、底部20及び外周壁21にて区画される内側領域は、溶媒を収容する内部空間Mとなっている。さらに、底部20の中央部分は、内部空間Mに向けて凸となる上げ底部20aを形成している。また、外周壁21は、上部の開口に向けて拡径するとともに、その上部には、段部22を介して半径方向外側に延在するフランジ23を一体連結している。
【0022】
上記のように形成される収納ケース1及び容器本体2を使用するにあたっては、連結片10fを破断させることで、アーム部10cを連結部10dのみでつないだ状態にして、図3に示すように、収納ケース1を容器本体2の内部空間Mに載置する。このとき、アーム部10cにフック10eを設ける場合は、このフック10eを容器本体2のフランジ23に引っ掛けることによって安定して保持されるので、アーム部10cが不用意に外れて内部空間M内に落ちてしまうおそれがなくなる。
【0023】
そして、容器本体2内に水や湯等の溶媒を注ぎ入れることにより、この溶媒がフィルター11の貫通孔11bを出入りして、収納ケース1内の抽出原料から所望の飲料が抽出される。
【0024】
また、容器本体2は、外周壁21が上部の開口に向けて拡径しているので、図4に示すように、収納ケース1を容器本体2の底部20上に収めた姿勢でスタッキングさせる(図示の例では3つの容器本体2を積み重ねている)ことができる。これにより、複数の容器本体2をコンパクトに収納できるので、持ち運びが容易となり、使い勝手が良くなる。なお、図示のようにスタッキングさせた容器本体2をまとめてシュリンクフィルムFで覆うことで、これらを市場流通させる場合の取り扱いが容易となる上、容器本体への埃等の付着を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、吊紐を紙袋に取り付ける面倒な作業を要することがなく、また移動中に抽出原料が粉砕されるおそれを極力減らすことができるので外出先でも手軽に飲用することができる、新たな抽出容器を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 収納ケース
2 容器本体
10 ケース本体
10a 底板
10b 周壁
10c アーム部
10e フック
10f 連結片
11 フィルター
12 シール部材
20 底部
21 外周壁
m 収納空間
s 隙間
T 抽出原料
図1
図2
図3
図4