特許第5826714号(P5826714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5826714
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】電力制御システム及び電力監視装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20151112BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   H02J3/14 130
   H02J13/00 311T
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-135339(P2012-135339)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-3727(P2014-3727A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雅将
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−199249(JP,A)
【文献】 特開2001−320832(JP,A)
【文献】 特開2011−158117(JP,A)
【文献】 特開2003−032887(JP,A)
【文献】 特開2012−095376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q50/00
H02J3/00−5/00、
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各拠点に設置され、当該拠点において設備の電力使用の制御を行う複数の電力制御装置と、
各拠点における電力の消費状況を監視する電力監視装置と、
を有し、
前記電力監視装置は、
前記拠点の全てから消費電力量情報が定期的に送信されてくる度に、送信されてきた全拠点の消費電力量情報に基づいて拠点全体における所定時間経過後の電力消費状況を示す指標値を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された指標値が予め設定された拠点全体に対する全体目標値を超えたときに各拠点における使用電力の削減量を決定する削減量決定手段と、
前記削減量決定手段により決定された各拠点における使用電力の削減量を、当該拠点に設置された前記電力制御装置に通知することによって使用電力の削減を指示する削減指示手段と、
を有し、
前記削減量決定手段は、全拠点のうち重要度の高い拠点として予め設定されている重要拠点全体における予測された指標値が予め設定された重要拠点全体に対する重要拠点目標値を超える場合、その超過分を重要拠点以外の通常拠点に配分することによって各拠点における使用電力の削減量を決定することを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
前記削減量決定手段は、通常拠点に対して予め設定された優先度に応じて前記超過分を当該各通常拠点に配分することを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記削減量決定手段は、通常拠点のうち予測された指標値が当該通常拠点に予め設定された目標値に達していない通常拠点が存在する場合、当該目標値に達していない通常拠点に前記超過分を配分し、この配分をして残った分を更に各通常拠点に配分することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記各電力制御装置は、
当該拠点における各設備に対する電力使用の優先度が予め設定された設備優先度情報を記憶する設備優先度情報記憶手段と、
前記削減指示手段により指示された当該拠点の削減量に達するまで、前記設備優先度情報に設定されている優先度の低い設備から順に電力使用を停止させる電力制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項5】
各拠点において測定された設備の消費電力量に関する消費電力量情報を収集する収集手段と、
前記拠点の全てから消費電力量情報が定期的に送信されてくる度に、送信されてきた全拠点の消費電力量情報に基づいて拠点全体における所定時間経過後の電力消費状況を示す指標値を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された指標値が予め設定された拠点全体に対する全体目標値を超えたときに各拠点における使用電力の削減量を決定する削減量決定手段と、
前記削減量決定手段により決定された各拠点における使用電力の削減量を、当該拠点に設置された電力制御装置であって当該拠点において設備の電力使用の制御を行う電力制御装置に通知することによって使用電力の削減を指示する削減指示手段と、
を有し、
前記削減量決定手段は、全拠点のうち重要度の高い拠点として予め設定されている重要拠点全体における予測された指標値が予め設定された重要拠点全体に対する重要拠点目標値を超える場合、その超過分を重要拠点以外の通常拠点に配分することによって各拠点における使用電力の削減量を決定することを特徴とする電力監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システム及び電力監視装置、特に企業内の各拠点における電力供給制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の供給契約としてデマンド契約している企業においては、その契約電力を超えないように消費電力量を常時監視している。オフィスビルや工場など複数の拠点を有する場合、企業は、各拠点における消費電力量、ピーク電力、デマンド電力等が拠点毎に設定した目標値を超えないように、全ての拠点における消費電力量を監視する必要がある。従来では、全ての拠点における各電気機器の運転状況を中央監視センターにおいて統括管理し、総需要電力量が警報レベルを超えそうな場合には、順位リストに従って電気機器への電力の供給を停止する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−320832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、企業における消費電力量の目標値を超えないようにするためには、消費電力量の調整を拠点単位に行っており、企業全体における電力消費に着目して電力の供給制御を行っていなかった。
【0005】
本発明は、企業に含まれる各拠点の重要度を考慮することによって、各拠点において消費してもよい電力量を他の拠点における電力消費の状況に応じて決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電力制御システムは、各拠点に設置され、当該拠点において設備の電力使用の制御を行う複数の電力制御装置と、各拠点における電力の消費状況を監視する電力監視装置と、を有し、前記電力監視装置は、前記拠点の全てから消費電力量情報が定期的に送信されてくる度に、送信されてきた全拠点の消費電力量情報に基づいて拠点全体における所定時間経過後の電力消費状況を示す指標値を予測する予測手段と、前記予測手段により予測された指標値が予め設定された拠点全体に対する全体目標値を超えたときに各拠点における使用電力の削減量を決定する削減量決定手段と、前記削減量決定手段により決定された各拠点における使用電力の削減量を、当該拠点に設置された前記電力制御装置に通知することによって使用電力の削減を指示する削減指示手段と、を有し、前記削減量決定手段は、全拠点のうち重要度の高い拠点として予め設定されている重要拠点全体における予測された指標値が予め設定された重要拠点全体に対する重要拠点目標値を超える場合、その超過分を重要拠点以外の通常拠点に配分することによって各拠点における使用電力の削減量を決定するものである。
【0007】
また、前記削減量決定手段は、通常拠点に対して予め設定された優先度に応じて前記超過分を当該各通常拠点に配分するものである。
【0008】
また、前記削減量決定手段は、通常拠点のうち予測された指標値が当該通常拠点に予め設定された目標値に達していない通常拠点が存在する場合、当該目標値に達していない通常拠点に前記超過分を配分し、この配分をして残った分を更に各通常拠点に配分するものである。
【0009】
また、前記各電力制御装置は、当該拠点における各設備に対する電力使用の優先度が予め設定された設備優先度情報を記憶する設備優先度情報記憶手段と、前記削減指示手段により指示された当該拠点の削減量に達するまで、前記設備優先度情報に設定されている優先度の低い設備から順に電力使用を停止させる電力制御手段と、を有するものである。
【0011】
本発明に係る電力監視装置は、各拠点において測定された設備の消費電力量に関する消費電力量情報を収集する収集手段と、前記拠点の全てから消費電力量情報が定期的に送信されてくる度に、送信されてきた全拠点の消費電力量情報に基づいて拠点全体における所定時間経過後の電力消費状況を示す指標値を予測する予測手段と、前記予測手段により予測された指標値が予め設定された拠点全体に対する全体目標値を超えたときに各拠点における使用電力の削減量を決定する削減量決定手段と、前記削減量決定手段により決定された各拠点における使用電力の削減量を、当該拠点に設置された電力制御装置であって当該拠点において設備の電力使用の制御を行う電力制御装置に通知することによって使用電力の削減を指示する削減指示手段と、を有し、前記削減量決定手段は、全拠点のうち重要度の高い拠点として予め設定されている重要拠点全体における予測された指標値が予め設定された重要拠点全体に対する重要拠点目標値を超える場合、その超過分を重要拠点以外の通常拠点に配分することによって各拠点における使用電力の削減量を決定するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、企業に含まれる各拠点の重要度を考慮することによって、各拠点において消費してもよい電力量を他の拠点における電力消費の状況に応じて決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る電力制御システムの実施の形態1の全体構成及びブロック構成を示した図である。
図2】実施の形態1における電力監視装置を形成するサーバコンピュータのハードウェア構成図である。
図3】実施の形態1における設備優先度情報記憶部に設定登録された設備優先度情報のデータ構成の一例を示した図である。
図4】実施の形態1における電力監視装置における処理を示したフローチャートである。
図5】実施の形態1における電力制御装置における処理を示したフローチャートである。
図6】本発明に係る電力制御システムの実施の形態2の全体構成及びブロック構成を示した図である。
図7】実施の形態2における設備優先度情報記憶部に設定登録された設備優先度情報のデータ構成の一例を示した図である。
図8】実施の形態2における電力監視装置における処理を示したフローチャートである。
図9】実施の形態2における電力制御装置における処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る電力制御システムの一実施の形態の全体構成及びブロック構成を示した図である。図1には、各拠点に設置され、当該拠点において設備の電力使用の制御を行う複数の電力制御装置20と、各拠点を統括管理する監視センタに設置され、各拠点における電力の消費状況を監視する電力監視装置10と、がネットワーク1を介して接続されている構成が示されている。なお、電力制御装置20の基本的な構成は、各拠点とも同様でよいので、図1には、1台の電力制御装置20のみを代表させて図示している。各拠点に設置された各設備は、設備の種類毎にそれぞれ設けられたコントローラ31,32に接続される。図1には、電力が供給される設備の一例として照明33及び空調機34を示した。電力制御装置20及び各コントローラ31,32は、拠点内のLAN(Local Area Network)等のネットワーク30に接続されている。各コントローラ31,32は、接続された設備における使用電力量を電力制御装置20へ送信する。使用電力量は、各コントローラ31,32において測定してもよいし、電気設備機器に使用電力量測定器が接続されている場合には、その使用電力量測定器により測定された使用電力量を電力制御装置20へ送信するようにしてもよい。
【0017】
図2は、本実施の形態における電力監視装置10を形成するサーバコンピュータのハードウェア構成図である。本実施の形態において電力監視装置10を形成するサーバコンピュータは、従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、コンピュータは、図2に示したようにCPU41、ROM42、RAM43、ハードディスクドライブ(HDD)44を接続したHDDコントローラ45、入力手段として設けられたマウス46とキーボード47、及び表示装置として設けられたディスプレイ48をそれぞれ接続する入出力コントローラ49、通信手段として設けられたネットワークコントローラ50を内部バス51に接続して構成される。電力制御装置20もコンピュータであることから、そのハードウェア構成は、図2と同じように図示することができる。
【0018】
図1に戻り、電力監視装置10は、消費電力量情報収集部11、予測部12、削減量決定部13、削減指示部14、消費電力量情報記憶部15目標値情報記憶部16、及び拠点優先度情報記憶部17を有している。消費電力量情報収集部11は、収集手段として設けられ、各拠点の電力制御装置20から消費電力量情報を収集し、消費電力量情報記憶部15に登録する。予測部12は、予測手段として設けられ、拠点の全てから消費電力量情報が定期的に送信されてくる度に、送信されてきた全拠点の消費電力量情報に基づいて拠点全体における所定時間経過後の電力消費状況を示す指標値、すなわち当該企業における指標値(以下、「予測値」)を予測する。削減量決定部13は、削減量決定手段として設けられ、予測部12により算出された予測値が予め設定された拠点全体に対する全体目標値を超えたときに各拠点における使用電力の削減量を決定する。削減指示部14は、削減指示手段として設けられ、削減量決定部13により決定された各拠点における使用電力の削減量を、当該拠点に設置された前記電力制御装置に通知することによって使用電力の削減を指示する。消費電力量情報記憶部15には、各拠点から送信されてきた消費電力量情報が蓄積される。目標値情報記憶部16には、前述した予め設定された拠点全体に対する全体目標値及び拠点毎の目標値が設定登録されている。設定される目標値として、デマンド契約に基づき設定された目標(上限)とする使用電力(Kw)(以下、「目標デマンド」)、ピーク時において目標(上限)とする使用電力量(Kw)(以下、「ピーク電力」)及び単位時間当たりの目標(上限)とする消費電力量(Kw/h)(以下、「目標電力量」)について拠点毎に予め設定される。本実施の形態においては、電力の供給制御を行う際に拠点全体における目標値を用いるが、この拠点全体における目標値は、各拠点に設定した目標値の総計を求めることで得られる。拠点優先度情報記憶部17には、各拠点の優先度が設定されている。
【0019】
ところで、本実施の形態では、全拠点を重要拠点と通常拠点とに分類している。「重要拠点」というのは、重要度の高い拠点として予め設定されている拠点であり、当該拠点に設定した目標値を超えたとしても電力の供給を停止させたくない拠点である。例えば、顧客が利用する店舗、重要な製品を製造する工場等企業によって異なってくる。重要拠点に対しては、重要拠点であることを示す識別情報が優先度として予め設定されている。一方、「通常拠点」というのは、全拠点のうち重要拠点を除く全ての拠点である。通常拠点に対しては、それぞれに優先順位が優先度として予め設定されている。本実施の形態においては、電力使用の制御を行う際に重要拠点及び通常拠点における各目標値を用いるが、これらの目標値は、それぞれ該当する各拠点に設定した目標値の総計を求めることで得られる。
【0020】
電力監視装置10における各構成要素11〜14は、電力監視装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU41で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部15〜17は、電力監視装置10に搭載されたHDD44又はRAM43にて実現される。あるいは、ネットワーク等を介してアクセス可能な外部の記憶手段を利用してもよい。
【0021】
電力制御装置20は、使用電力監視部21、消費電力量情報送信部22、指示受付部23、電力制御部24、使用電力実績情報記憶部25及び設備優先度情報記憶部26を有している。使用電力監視部21は、各コントローラ31,32を介して各設備における使用電力量を特定する情報を収集し、使用電力実績情報記憶部25に登録する。消費電力量情報送信部22は、当該拠点において測定された設備の消費電力量に関する消費電力量情報を電力監視装置10へ、例えば30分間隔など定期的に送信する。指示受付部23は、電力監視装置10から送信されてくる使用電力の削減に関する指示を受け付ける。電力制御部24は、電力制御手段として設けられ、当該拠点における各設備の電力使用の制御を行う。使用電力実績情報記憶部25には、使用電力監視部21により収集された情報が蓄積される。設備優先度情報記憶部26は、設備順位設定情報記憶手段として設けられ、当該拠点における各設備に対する電力使用の優先度が予め設定された設備優先度情報を記憶する。
【0022】
電力制御装置20における各構成要素21〜24は、電力制御装置20を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU41で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、また、各記憶部25,26は、電力制御装置20に搭載されたHDD44又はRAM43にて実現される。あるいは、ネットワーク等を介してアクセス可能な外部の記憶手段を利用してもよい。
【0023】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0024】
図3は、本実施の形態における設備優先度情報記憶部26に設定登録された設備優先度情報のデータ構成の一例を示した図である。設備優先度情報には、電力使用を停止させる1又は複数の設備を含む停止グループの優先順位毎に、電力使用停止対象設備として当該優先順位が割り当てられた設備を特定する情報が設定される。図3における設定例によると、「B1Fバックヤード(1)空調PAC−1A」という設備の識別情報により特定される設備には、最低の優先順位1が割り当てられている。また、「7F専用部(2)照明」という設備の識別情報により特定される設備には、最高の優先順位15が割り当てられている。すなわち、電力監視者は、各設備の利用状況をふまえて、「B1Fバックヤード(1)空調PAC−1A」のように運転が停止されてもそれほど業務等に影響のない設備に対しては、電力使用を優先的に停止させるようにするために相対的に優先度の低い優先順位を設定する。一方、「7F専用部(2)照明」のように運転が停止されたら業務等に影響を与えるほど重要な設備に対しては、電力をそのまま継続して使用させて極力停止させないようにするために相対的に優先度の高い優先順位を設定する。
【0025】
本実施の形態では、設備優先度情報に15段階の優先順位を設定しているが、これは一例であってこの数に限定するものではない。また、各優先順位に対して6設備ずつ割り当てているが、これは一例であってこの数に限定するものではなく、優先順位によって異なる設備の数を割り当てるようにしてもよい。また、優先度が小さいほど低い優先順位としているが、この逆であってもよい。
【0026】
企業においては、デマンド電力に従って使用可能な電力の上限値、すなわち上記目標値を拠点毎に設定し、原則、その目標値以下で電気設備を動作させるように電力制御を行う。ただ、拠点(上記「重要拠点」に相当)によっては、仮に目標値を上回ってでも電気設備を稼動させたい場合がある。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、重要拠点における予測した電力使用が目標値を上回る場合、その上回る分(超過分)を通常拠点に配分することで、企業においては、全体として目標値を超えないように電力使用を制御するようにしたことを特徴としている。
【0028】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
【0029】
各拠点においては、待機電力等を考慮すると電力が常時使用されている。各コントローラ31,32は、接続された設備における使用電力量を電力制御装置20へ送信する。電力制御装置20における使用電力監視部21は、各コントローラ31,32から送信されてくる使用電力量に関するデータを受け取ると、使用電力実績情報記憶部25に登録する。そして、消費電力量情報送信部22は、使用電力実績情報記憶部25に蓄積された情報に基づき消費電力量情報を生成する。生成する消費電力量情報には、当該拠点の識別情報、電力を消費した期間(例えば30分)及び当該期間内において消費された電力量が少なくとも含まれている。そして、消費電力量情報送信部22は、生成した消費電力量情報を所定期間毎に定周期で電力監視装置10へ送信する。
【0030】
なお、本実施の形態では、消費電力量情報送信部22が消費電力量情報を生成して電力監視装置10へ送信するようにしたが、使用電力実績情報記憶部25に蓄積された情報をそのまま送信して、電力監視装置10において消費電力量情報を生成するようにしてもよい。本実施の形態においては、予測部12が消費電力量を用いて現時点以降の消費電力量を予測するので、その予測処理を実行するまでに消費電力量情報が生成されていればよい。あるいは、予測部12が消費電力量を予測する時点で自ら消費電力量情報(実績値)を生成するようにしてもよい。
【0031】
図4は、本実施の形態における電力監視装置10における処理を示したフローチャートであり、図5は、本実施の形態における電力制御装置20における処理を示したフローチャートである。以下、これらのフローチャートを用いて本実施の形態における電力制御処理について説明する。
【0032】
電力監視装置10における消費電力量情報収集部11は、各拠点の消費電力量情報を収集し、消費電力量情報記憶部15に登録する。そして、定周期的、本実施の形態では30分間隔で以下の処理を実行する。
【0033】
まず、予測部12は、消費電力量情報を消費電力量情報記憶部15から読み出すことで取得すると(ステップ101)、所定時間経過後、例えば30分後における予測値を拠点毎に算出する。算出する予測値は、所定時間経過後における使用電力(Kw)、所定時間経過後の所定期間内においてピークとなる使用電力量(Kw)及び所定時間経過後における単位時間当たりの消費電力量(Kw/h)である。そして、予測部12は、拠点毎に算出した予測値の総和を求めることで、当該企業全体における各予測値を算出する(ステップ102)。なお、予測値の算出方法自体は、従前からある技術を利用すればよい。
【0034】
ここで、削減量決定部13は、目標値情報記憶部16に設定されている各目標値を読み出し、各目標値と予測部12により算出された各予測値とをそれぞれ比較する。なお、本実施の形態では、3種類の指標値を求めて目標値と比較するが、少なくとも1つでもよい。また、これ以外の指標を用いるようにしてもよい。そして、いずれの予測値も目標値以下であれば(ステップ103でN)、所定時間経過後における電力消費は、目標デマンド、ピーク電力及び目標電力量のいずれも上回ることがないと推定されるので、現況のまま各設備を運用することになる。
【0035】
一方、いずれかの予測値が目標値を上回るようであれば(ステップ103でY)、いずれかの設備の電力使用を停止して使用電力量の削減を図る必要があると判断する。そこで、本実施の形態においては、次のように処理する。
【0036】
まず、削減量決定部13は、重要拠点全体における削減量を算出する(ステップ104)。これは、各重要拠点の予測された消費電力量の合計と、消費電力量の目標値の合計との差分を求めればよい。ここで、削減量が0を上回っている場合(ステップ105でY)、その削減量、すなわち超過分を、まずは余裕のある通常拠点に割り振ることで通常拠点に吸収してもらう(ステップ106)。つまり、通常拠点の中で予測値が目標値未満の通常拠点では、自己で電力を消費してもまだ電力の使用に余裕があるので、その余裕のある範囲で超過分の全部又は一部を引き受ける。例えば、40,50,60の余裕がある通常拠点が存在する場合において、重要拠点全体における超過分が120であれば、上記余裕のある3通常拠点の余裕分は150なのでその削減量を吸収できる。なお、超過分120をどのように分配するかについては、例えば、余裕分の比率、あるいは当該通常拠点に設定された優先度を参照して分配するようにしてもよい。一方、重要拠点全体における超過分が200であれば、そのうち50は吸収できないことになる。つまり、余裕のある通常拠点でその超過分を吸収してもなお残りが生じる場合(ステップ107でY)、その残り分を各通常拠点に設定された優先度に応じて各通常拠点に分配する(ステップ108)。つまり、優先度の低い通常拠点は、優先度の高い通常拠点に比して相対的により多くの超過分を引き受ける。つまり、優先度の低い通常拠点ほど、電力使用が制限されることになる。
【0037】
続いて、削減量決定部13は、各通常拠点の削減量を決定する(ステップ109)。重要拠点全体における削減量が0以下の場合、すなわち超過分がない場合(ステップ105でN)、この場合は、通常拠点全体で予測値が目標値を上回っているので、原則的には、予測値が目標値を上回った通常拠点は、その上回った分(超過分)の電力消費を自拠点において削減するようにすればよい。もちろん、重要拠点との関係と同様に、余裕のある通常拠点が、超過分を引き受けることで吸収してあげるようにしてもよい。あるいは、通常拠点全体における超過分を通常拠点の優先度に応じて配分して調整するようにしてもよい。また、重要拠点には余裕があって通常拠点に超過分が発生する場合も想定しうるが、この場合は、通常拠点における超過分を重要拠点が吸収するようにしてもよい。
【0038】
また、重要拠点全体における削減量を余裕のある通常拠点だけで削減量が全て吸収された場合(ステップ107でN)、前述したように予測値が目標値を上回った通常拠点は、その上回った分(超過分)を自拠点において削減するようにすればよい。
【0039】
以上のようにして、本実施の形態における削減量決定部13は、重要拠点全体において目標値を超える電力消費が予測される場合、その予測された超過分を通常拠点に配分することによって各拠点における使用電力の削減量を決定する。
【0040】
削減量決定部13が各通常拠点に対する削減量を求めると、各削減量を含む削減指示情報を当該通常拠点に送信することによって電力使用の削減を指示する(ステップ110)。なお、重要拠点は使用電力量を削減しないので、削減指示情報を送信する必要はないが、削減量=0とする削減指示情報を送信するようにしてもよい。
【0041】
本実施の形態においては、以上のように重要拠点全体において目標値を超える電力使用が予測される場合、その予測される削減量、すなわち超過分の削減を重要拠点自体に実施させるのではなく、相対的に優先度の低い通常拠点に割り振ることで実施させるようにした。つまり、各重要拠点においては、自拠点に設定された目標値を上回る電力使用が予測されたとしても、その超過した分を削減することはしなくてもよくなる。
【0042】
なお、本実施の形態では、削減量をまずは余裕のある通常拠点に割り振り、その残り分を通常拠点の優先度に応じて配分するようにしたが、重要拠点全体における超過分を余裕の有無に関係なく通常拠点の優先度に応じて配分するようにしてもよい。本実施の形態では、重要拠点全体における超過分を通常拠点に背負わせることで企業全体としては電力消費を各目標値以下にする、すなわち目標を達成するようにすることを特徴としており、重要拠点全体における超過分の通常拠点への配分方法は、上記例に限らず、種々の方法を採用するようにしてもよい。また、時節等によって配分方法を適宜切り替えるようにしてもよい。
【0043】
図5において、電力監視装置10から削減指示情報が送信されてくると。指示受付部23は、その削減指示情報を取得する(ステップ121)。続いて、電力制御部24は、指示受付部23が削減指示情報を取得したことを検出すると、その削減指示情報に含まれる削減量を取得する。そして、優先順位を表すnを1で初期化した後(ステップ122)、設備優先度情報記憶部26を参照し、優先順位1の停止グループに属する設備に対応する各コントローラ31,32に指示する。これに応じて、該当するコントローラ31,32は、指定された設備への電力使用を停止させる(ステップ123)。電力使用を停止させる方法(運転を停止する方法)としては、設備への電力の供給を停止する方法と、設備の電源をオフにする方法とが考えられるので、適切な方法を選択すればよい。
【0044】
例えば、図3に例示した設備優先順位設定情報を参照すると、優先順位1の停止グループの中には「B1Fバックヤード(1)空調PAC−1A」及び「B1Fバックヤード(2)空調PAC−1B」で識別される空調機34が設定されているので、電力制御部24は、コントローラ32にこれらの空調機34の停止指示を出し、コントローラ32は、この指示に応じて当該空調機34に運転停止(電源オフ)の指示を出す。これにより、当該設備における電力使用が停止する。
【0045】
ここで、電力制御部24は、該当する設備の運転停止後に使用電力実績情報記憶部25に登録される使用電力量を参照することで、指示された削減量分の消費電力量が削減されるかどうかを確認し、そして、指示された削減量に達していなければ(ステップ124でN)、優先順位を示すnを1加算する(ステップ125)。ここでは、優先順位2となるので、電力制御部24は、設備優先度情報記憶部26を参照し、優先順位2の停止グループに属する設備に対応する各コントローラ31,32に指示する。これに応じて、該当するコントローラ31,32は、指定された設備の電力使用を停止させる(ステップ123)。そして、上記と同様に、指示された削減量に達していなければ(ステップ124でN)、優先順位を示すnを1加算する(ステップ125)。電力制御部24は、このように削減指示部14により指示された当該拠点の削減量に達するまで、設備優先度情報に設定されている優先順位の低い設備から順に電力使用を停止させる。そして、当該拠点における削減量が、指示された削減量に達すると(ステップ124)、設備の電力使用の停止制御を終了する。
【0046】
このようにして、各通常拠点において指示された削減量の削減が完了すると、拠点全体における予測値が目標値を上回らなくなるはずなので、その後は、各通常拠点において優先順位の高い設備から順に運転を開始することによって復帰させる。
【0047】
本実施の形態によれば、監視センタにおける電力監視装置10において、消費電力量の予測値が目標値を超える場合、各拠点における削減量を決定するようにした。特に、本実施の形態においては、重要拠点における超過分を通常拠点に割り振ることで、重要拠点においては電力の使用を制限させずに企業全体における電力消費を目標値以内にすることができる。
【0048】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、監視センタにおける電力監視装置10において、消費電力に関する予測値が目標値を超える場合、各拠点における削減量を決定し、通知していた。つまり、実際に運転を停止させる設備は、設備順位設定情報記憶手段として設けられた設備優先度情報記憶部26を有する各拠点の電力制御装置20において決めさせていた。本実施の形態では、設備順位設定情報記憶手段を電力監視装置10側に設けることによって運転を停止させる設備を監視センタ側で特定するように構成したことを特徴としている。
【0049】
図6は、本実施の形態における電力制御システムの全体構成及びブロック構成を示した図である。図1と同じ構成要素には同じ符号を付け説明を適宜省略する。本実施の形態における電力制御装置20は、実施の形態1と異なり設備優先度情報記憶部26を有していない。電力監視装置10は、実施の形態1において設けていた削減量決定部13及び拠点優先度情報記憶部17を有していないが、電力制御装置20に設けていた設備優先度情報記憶部18を有している。
【0050】
図7は、本実施の形態における設備優先度情報記憶部26に設定登録された設備優先度情報のデータ構成の一例を示した図である。
【0051】
本実施の形態において設備優先度情報記憶手段として設けている設備優先度情報記憶部18は、各拠点における各設備に対する電力使用の優先度が予め設定された設備優先度情報であって、重要拠点における設備に対して通常拠点における設備より相対的に高い優先度が設定された設備優先度情報を記憶する。例えば、相対的に優先度の低い拠点(A,B,Cの各支店)の各設備には、相対的に低い優先順位が割り当てられ、一方、相対的に優先度の高い拠点(D支店,E,F,Gの各ビル)の各設備には、相対的に高い優先順位が割り当てられる。
【0052】
なお、設備優先度情報記憶部18には、この例のように拠点の重要度(優先度)に応じて各設備に停止グループの優先順位が設定されているので、処理を実行する際には拠点優先度情報記憶部を参照する必要はない。よって、本実施の形態では設けていない。
【0053】
次に、本実施の形態における動作について説明する。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に各拠点においては、各設備における電量の使用状況が収集され、消費電力量情報収集部11は、各拠点の消費電力量情報を収集し、消費電力量情報記憶部15に登録する。
【0054】
図8は、本実施の形態における電力監視装置10における処理を示したフローチャートであり、図9は、本実施の形態における電力制御装置20における処理を示したフローチャートである。以下、これらのフローチャートを用いて本実施の形態における電力制御処理について説明する。
【0055】
図8において、電力監視装置10が電力制御装置20から送られてくる消費電力量情報に基づき企業全体における各予測値を算出し、目標値を比較するところまでの処理(ステップ101〜103)は、実施の形態1と同じなので説明を省略する。
【0056】
ここで、いずれの予測値も目標値以下であれば(ステップ103でN)、所定時間経過後における電力消費は、目標デマンド、ピーク電力及び目標電力量のいずれも上回ることがないと推定されるので、現況のまま各設備を運用することになる。
【0057】
一方、いずれかの予測値が目標値を上回るようであれば(ステップ103でY)、いずれかの設備の電力使用を停止して使用電力量の削減を図る必要があると判断する。そこで、本実施の形態においては、次のように処理する。
【0058】
すなわち、予測値が目標値を上回ると判断された場合、削減指示部14は、優先順位を表すnを1で初期化した後(ステップ201)、設備優先度情報記憶部18を参照して優先順位1の停止グループに属する設備を取得する(ステップ202)。そして、各設備に対応する拠点に対して、当該設備を特定しうる識別情報を含む削減指示情報を送信することによって、当該設備の電力使用を停止させる指示を出す(ステップ203)。
【0059】
図9において、指示受付部23が削減指示情報を受信することにより設備の電力使用の停止指示を受けると(ステップ221)、電力制御部24は、指示された設備の電力使用を停止させる(ステップ222)。この電力使用を停止させる方法(運転を停止する方法)は、実施の形態1と同じでよい。
【0060】
以上のようにして、停止が指示された設備により電力が使用されなくなることにより、当該拠点における消費電力量は削減されることになる。この後、消費電力量情報送信部22は、通常通り、消費電力量情報を定周期的に電力監視装置10へ送信する。
【0061】
図8において、電力監視装置10における消費電力量情報収集部11は、所定時間経過後、各拠点から送信されてくる消費電力量情報を消費電力量情報記憶部15に登録する。そして、削減指示部14は、消費電力量情報を消費電力量情報記憶部15から読み出すことで取得すると(ステップ204)、ステップ102と同様にして、当該企業全体における各予測値を算出する(ステップ205)。
【0062】
そして、いずれかの予測値が今なお目標値を上回るようであれば(ステップ206でY)、更にいずれかの設備の電力使用を停止して使用電力量の削減を図る必要があると判断し、優先順位を示すnを1加算する(ステップ207)。ここでは、優先順位2となる。そして、ステップ202に戻り、削減指示部14は、設備優先度情報記憶部18を参照して優先順位2の停止グループに属する設備を取得する(ステップ202)。そして、前述したように、当該各設備に対応する拠点に対して削減指示情報を送信することによって、当該設備の電力使用を停止させる指示を出す(ステップ203)。
【0063】
以降は、前述した処理を繰り返す。すなわち、予測部12により予測された消費電力量が全体目標値を超えたときに、これ以降に消費電力量情報送信部22から送信されてくる消費電力量情報に基づいて予測部12により予測される消費電力量が全体目標値以下となるまで、設備優先度情報に設定されている優先度の低い設備から順に電力使用の停止を、当該設備に対応する拠点に設置された電力制御装置20に繰り返し指示する。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態においては、電力監視装置10側において電力使用を停止させる設備を指示するようにして目標値以下の電力使用を実現することができる。
【0065】
上記各実施の形態においては、監視センタ設置の電力監視装置10を用いた各拠点、各設備の電力使用を集中監視し、企業全体において目標値を超える電力使用が予測される場合には、各拠点において使用電力量を削減するというだけでなく、その超過分を拠点間で配分して目標値以下となるように調整できるようにした。特に、本実施の形態においては、重要拠点の超過分を重要拠点における電力使用を制限させるのではなく通常拠点に配分することによって重要拠点における業務等に支障を来すことなく企業全体において電力消費の目標を達成することができるようになる。
【符号の説明】
【0066】
1 ネットワーク、10 電力監視装置、11 消費電力量情報収集部、12 予測部、13 削減量決定部、14 削減指示部、15 消費電力量情報記憶部、16 目標値情報記憶部、17 拠点優先度情報記憶部、18,26 設備優先度情報記憶部、20 電力制御装置、21 使用電力監視部、22 消費電力量情報送信部、23 指示受付部、24 電力制御部、25 使用電力実績情報記憶部、30 ネットワーク、31,32 コントローラ、33 照明、34 空調機、41 CPU、42 ROM、43 RAM、44 ハードディスクドライブ(HDD)、45 HDDコントローラ、46 マウス、47 キーボード、48 ディスプレイ、49 入出力コントローラ、50 ネットワークコントローラ、51 内部バス。
図1
図2
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図8
図9