(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
全体として、本明細書中に説明した様々な実施例は、脈管の病気の治療を行う目的で脈管壁の内膜下空間を利用する。以下の詳細な説明において、実施例を、それらの特定の機能、即ち(i)脈管壁の境界を視覚的に確認する機能、(ii)脈管壁境界を穿孔から保護する機能、(iii)閉塞をバイパスする機能、及び(iv)別の機能に関して組織的に説明する。この組織的に構成した説明は、例示及び説明を目的としたものであって、限定を目的としたものではなく、言及した機能のうちの一つ以上、幾つかの実施例の幾つかの特徴を使用してもよく、多くの実施例には特定的には言及していない、構成の表題に反映していない別の機能がある。
【0011】
本明細書中に説明した実施例が内膜下経路を有利に利用する方法を理解するため、先ず最初に、解剖学的構造を理解するのが有利である。
【0012】
図1を参照すると、疾病状態の心臓100が概略に示してある。心臓100は複数の冠動脈110を有し、これらは全て閉塞を引き起す可能性がある。特定の生理学的情況では、十分な時間が経過すると、幾つかの閉塞は完全に閉塞してしまい、完全閉塞120になる。
【0013】
本明細書で使用しているように、完全閉塞という用語は、閉塞齢(the age of acclusion)で或る程度異なる、同じ又は同様の程度の閉塞に関する。一般的には、完全閉塞は、断面積の90%又はそれ以上が機能的に閉塞し、これにより血流がほとんど又は全くなく、従来のガイドワイヤを通すのが困難であるか或いは不可能である脈管内腔に関する。更に、一般的には、完全閉塞になってからの時間が長ければ長い程、閉塞物が組織化され、線維化及び石灰化が進む。一般に是認されている一つの臨床的定義によれば、完全閉塞は、兆候が現れてから二週間以上経過した場合、慢性であると考えられる。
【0014】
図1Aを参照すると、冠動脈110内の完全閉塞120の拡大図が概略に示してある。一般的には、動脈110の基端部分112(即ち完全閉塞120の基端側の動脈の部分)には脈管内デバイスを使用して容易にアクセスでき、周囲の心筋に供給する上で適切な血流がある。動脈110の先端部分114(即ち完全閉塞120の先端側の動脈の部分)は脈管内デバイスでアクセスするのが容易でなく、血流が基端部112と比較して大幅に減少している。
【0015】
脈管撮影と呼ばれる一般的に行われている診断手順は、経皮的に配置した脈管撮影用カテーテルを通して動脈の血流に放射線不透過性流体を注入する工程を含む。X線撮影法を使用し、動脈経路の平面的画像を獲得し、記録する。
図1Bは、慢性完全閉塞120の脈管撮影画像の概略図を示す。医師は、一般的には、脈管撮影により基端セグメント112を視覚化できるが、閉塞120又は先端セグメント114は視覚化できない。
【0016】
図2を参照すると、この図には、一部を除去した冠動脈110のセグメントが概略に示してある。冠動脈110は、動脈壁118によって形成された真の内腔即ち元来の内腔116を有する。動脈壁118の最も内側の層は、脈管内層又は血管内膜層113と呼ばれる(明瞭化を図るため、多層脈管内層を単一の均質の層として示してある)。脈管内層と同心に外方に中間層115がある(これの層もまた、一つ又はそれ以上の層を含むが、単一の均質の層として示してある)。動脈の最も外側の層は、外膜117である。脈管内層の最も外側の部分と中間層の最も内側の部分との間の移行部を内膜下空間と呼ぶ。層間剥離により、これらの間の空間を拡大できる。内膜下空間は、場合によっては、真の内腔116と対照的に偽内腔とも呼ばれる。
【0017】
視覚化及び穿通保護の実施例
図1Bからわかるように、完全閉塞120のため、放射線不透過性コントラスト媒体注入X線撮影法を使用して、完全閉塞120及び動脈セグメント114を可視化することはできない。場合によっては、完全閉塞120の周囲の側副動脈に十分な量のコントラスト媒体を入れて先端セグメント114を視覚化してもよいが、先端セグメント114の視覚化は、多くの場合、不鮮明であり、それでも、閉塞セグメント120は視覚化されない。稀ではあるが、十分な放射線不透過性コントラスト媒体を、静脈系を通して逆方向に注入し、先端セグメント114のX線撮影画像を得ることができるが、こうした画像は、多くの場合、不明瞭であり、閉塞セグメント120を明らかにしない。
【0018】
閉塞セグメント120及び先端セグメント114の視覚化を行うため、
図3Aに示すように、放射線不透過性内膜下デバイス300を内膜下空間に導入してもよい。この図では、内膜下デバイス300は、比較的一般的なデバイスであり、以下に更に詳細に説明するように、様々な内膜下デバイスを使用できる。内膜下デバイス300は、基端セグメント112にある、完全閉塞120の基端側の進入点132のところで真の内腔116を出て内膜下空間に進入する。内膜下空間130内で、内膜下デバイス300は完全閉塞120を横切って延び、先端セグメント114に進入する。内膜下デバイス300は、
図3Aに示すように位置決めされた状態で、放射線不透過性の性質により、閉塞セグメント120及び先端セグメント114が
図3Bに示すようにX線撮影法により視覚化される。
【0019】
かくして、内膜下デバイス300は、内膜下空間130内に完全閉塞120の周囲に同心に配置することによって、動脈の視覚化を向上するのに使用できる。内膜下デバイス300は、ほぼ動脈110の内径をとり、更に、閉塞セグメント120及び先端セグメント114に亘る脈管110の軸線方向屈曲部を形成し、即ち曲がりくねった部分の形状をとり、これによって、閉塞セグメント120及び先端セグメント114に亘る脈管110の周囲境界を形成する。更に、内膜下デバイス300は、内膜下空間130内に完全閉塞120の周囲に同心に配置されることにより真の内腔116を通して完全閉塞120を穿通しようとするデバイスにより穿通されないように動脈110の壁118を保護するのに使用できる。
【0020】
図3A及び
図3Bに示すように、内膜下デバイス300は、内膜下空間130内で螺旋状パターンで展開される。螺旋状パターンは例示の目的で示したものであって、限定ではなく、この他のパターンを同様に使用できる。様々な他の展開パターンを以下に更に詳細に説明する。しかしながら、概念を更に詳細に説明するため、本明細書中では螺旋状パターンを使用する。
【0021】
図4、
図4A、及び
図4Bを参照すると、これらの図には、展開デバイス400が概略に示してある。展開デバイス400は、内膜下デバイス300を進入点132のところで内膜下空間130に差し向け、内膜下デバイス300を、
図5に示すように、内膜下空間130内で螺旋状パターンに展開するのに使用される。展開デバイス400は、カテーテルシャフト402及び先端バルーン404を含むバルーンカテーテルの形体をとってもよい。カテーテルシャフト402は、外チューブ406及び内チューブ408を含み、バルーン404を膨張するための膨張内腔410をこれらのチューブ間に形成する。内ワイヤチューブ408は、デバイス400をガイドワイヤ(図示せず)上で前進するためのガイドワイヤ内腔412を形成する。送出チューブ414が外チューブ406に沿って、及びバルーン404の周囲を螺旋状(又は他の)パターンで延びている。送出チューブ414は、内膜下デバイス300を前進するための送出内腔416を形成する。この特定の実施例では、内膜下デバイス300は、弛緩状態で真っ直ぐな形体をとっていてもよく、螺旋状送出チューブ414に従って所望の螺旋状パターンをとってもよい。
【0022】
図5を参照すると、送出デバイス400が、完全閉塞120の直ぐ手前の位置で示してある。この位置では、バルーン404を脈管内腔116内で膨張させ、内膜下デバイス300が脈管内層113を進入点132のところで穿通し、内膜下空間に進入する所定の配向で、送出チューブ414を脈管壁118に向かって、差し向ける。送出チューブ414が螺旋状であるため、送出チューブ414を通して内膜下デバイス300を前進させるとき、内膜下デバイス300は螺旋状の軌跡で送出され、その結果、内膜下デバイス300は螺旋状パターンをなして展開する。図示のように、送出チューブ414を通して内膜下デバイス300を前進させ、内膜下デバイス300を完全閉塞120の外側に、血管内膜層113の外側に、及び中間層115の内側に内膜下空間内に同心に位置決めする。
【0023】
図6を参照すると、内膜下空間内に螺旋状パターンを形成するための別の方法が示してある。上文中に説明した送出デバイス400には、弛緩状態で直線状形体の内膜デバイス300を送出する、螺旋状の送出チューブが設けられているのに対し、
図6は、それ自体が螺旋状形状の変形例の内膜下デバイス600を概略に示す。内膜下デバイス600は、細長いチューブ状シャフト604を含む。少なくともこのシャフトの先端部分に螺旋状相互係止ギヤ606が設けられており、螺旋状ワイヤコイル608がその上に配置されている。螺旋状内マンドレル即ちチューブ610は、このチューブ610上でチューブ状シャフト604が自由に回転するように、チューブ状シャフト604に配置されていてもよい。シャフト604は、弛緩状態では線型形状即ち直線状形状であり、螺旋状形状の内部材610をその中に配置したときに図示の螺旋状に形成されてもよい。デバイス600は、拘束シース(図示せず)に配置されていてもよく、完全閉塞の場所等の脈管内の場所まで案内される。デバイス600を先端方向に前進させ、拘束シースの端部から出たとき、又はシースをデバイスに対して手前に引っ張ったとき、デバイス600の先端部材が図示のように螺旋状形状をとる。シャフト604を内部材610に対して回転させることによって、螺旋状ワイヤスレッド608を回転させ、これを使用して脈管壁と係合させ、内膜下経路内で完全閉塞の周囲で前進させる。シャフト604及び内部材610を一斉に前進させることができるように、シャフト604の基端及び先端と係合するため、内部材610にベアリング(図示せず)が配置されていてもよい。内膜下デバイス600は、以下に説明する、様々なギヤシャフト形体、外傷防止先端チップ形体、流動学的剥離機構、等のうちの任意のものを含んでいてもよい。
【0024】
一般的には、本明細書中に説明した内膜下デバイスは、脈管内を案内され、外傷を生じることなく内膜下を通過するように設計されている。内膜下デバイス300は、ガイドワイヤと同様の構造を備えていてもよく、外傷を生じることなく内膜下空間を通過するエレメントを含んでいてもよい。このような非外傷性エレメントは、動脈壁に対する損傷を最小にし、動脈壁を穿通する可能性を最小にするのに使用してもよい。このような非外傷性エレメント310の例を
図7A乃至
図7Cに示す。内膜下デバイスは、
図7Aに示すボール状チップ310A、
図7Bに示すループ状チップ310B、及び/又は
図7Cに示すベントチップ310Cを備えていてもよい。これらの非外傷性エレメントは、組織の大きな領域に亘って軸線方向力を分配し、これによって脈管が穿通する可能性を減少する。ベントチップ310Cの追加の特徴は、チップを曲がりくねって差し向けることができ、内膜下空間をを通るデバイスの経路を制御できるということである。ボールチップ310Aは、ステンレス鋼や銀ろう等を含むがこれらに限定されない適当な金属材料から形成されていてもよい。ボールチップ310Aは、更に、ポリカーボネート、ポリエチレン、又はエポキシを含むがこれらに限定されない適当なポリマー材料又は接着剤から形成されていてもよい。ボールチップ310Aは球状であり、その基端のシャフトよりも大径であっtてもよい。ループチップ310B及びベントチップ310Cは、製造プロセス中に(例えば熱硬化又は機械的変形によって)形成してもよいし、医師が(例えば機械的変形によって)チップを賦形してもよい。
【0025】
上文中に説明した非外傷性チップエレメント310の変形例として又は追加として、内膜下デバイス300は、外傷を生じることなく通すのを容易にするため、
図7Dに示すようにガイドワイヤ700を使用してもよい。この実施例では、内膜下デバイス300は、ガイドワイヤ700上でデバイス300を前進させることができるように、貫通した内腔を含んでいてもよい。この実施例では、内膜下デバイス300の本体は、その内部にガイドワイヤ内腔を形成する中空の内径を有する。ガイドワイヤ内腔は、基端開口部から先端開口部まで延びており、ガイドワイヤ700を受け入れる寸法を備えている。ガイドワイヤ700は、その先端のところに非外傷性エレメントを提供し、更に、内膜下空間を通して内膜下デバイス300を回転で操向するための機構を提供する。ガイドワイヤ700は、内膜下デバイスの基端又は先端のベアリングエレメント(図示せず)を通して内膜下デバイスによって前方に押すことができる。ベアリングエレメントは、内膜下デバイスとガイドワイヤとの間の相対的回転を許容しつつ、軸線方向で干渉する。ベアリングエレメントの一例は、ガイドワイヤの先端にクリンプ止めした、外径の寸法が内膜下デバイス内のガイドワイヤ内腔よりも大きいカラーであってもよい。
【0026】
外傷を生じることなく内膜下空間に通すのを容易にするため、他の技術を使用してもよい。例えば、外傷を生じることなく通すのを容易にするため、及び内膜下空間を形成する層を外傷を生じることなく剥離するため、加圧流体を使用してもよい。
図8A及び
図8Bは、外傷を生じることなく通し、剥離を行うのに流体を使用するシステム800を概略に示す。システム800は、内膜下デバイス810及び関連したポンプシステム820を含む。流動学的システム800は、特定の特徴において、本明細書中に説明した構成と同様であり、その様々な特徴を、変形例において、当業者に理解されるように組み合わせてもよいし使用してもよい。システム800は、本明細書中に説明したチューブ状内膜下デバイスのうちの任意のデバイスを含んでもよい。一般的には、内膜下デバイス810は、基端がポンプ機構820に連結されたチューブ状シャフト812を含む。
図8Bに示すように、プランジャーロッド814が、チューブ状シャフト812に配置されており、その基端が、
図8Aに示すように、ポンプ機構のリニアアクチュエータ822に連結されている。ロッド814は、チューブ状シャフト812を通ってこのシャフトの先端の手前の点まで延びており、ポンプチャンバ816を形成する。ロッド814とチューブ状シャフト812の内壁との間の環状内腔に液体を供給するため、液体源830(例えば塩水バッグ)が内膜下デバイス810の基端に流体ライン832及び随意のバルブ834を介して連結されている。リニアアクチュエータがロッド814をチューブ状シャフト812内で前後に移動すると、液体がチャンバ816の外にパルスをなして放出され、例えばこれを使用して組織を液圧で剥離し、上文中に説明した内膜下経路を形成する。随意であるが、バルーンをデバイスの先端に配置し、パルスをなした流れに従って周期的に膨張し収縮することによって制御下で剥離を行ってもよい。所望の効果を得るため、ストローク長、ストローク速度、及びストローク容積を調節してもよい。例えば、チャンバ816を出る液体が高いエネルギで急速に放散することにより、剥離時に組織に加わる外傷を最小にするように、チャンバ816のストローク容積は比較的小さい(例えば0.01cc乃至1.0cc)。一例は、0.25ccのストローク容積及び10Hzのストローク速度である。これは、動物の組織を使用した実験モデルで、外傷を生じることなく通過させるのを容易するばかりでなく、外傷を生じることなく剥離することがわかっている。
【0027】
外傷を生じることなく内膜下デバイスを通すのを容易にし又は補助する別の技術は、デバイスと周囲組織との間の摩擦を減少することである。上文中に説明した流動学的実施例は、この技術により、塩水が摩擦を低減するように作用することを利用する。摩擦は、内膜下デバイスの外面に適用できるコーティング(例えばPTFE、親水性材料、等)を使用することによっても低減できる。摩擦は、通常は、所与の摩擦界面について、動摩擦係数が静摩擦係数よりも小さいということを利用することよっても低減できる。本明細書中に説明する内膜下デバイスに適用した場合、内膜下空間内でデバイスを組織間で前後に回転することによって、更に低い動摩擦係数を使用できる。このような往復回転運動は、デバイスの基端を使用者の親指と人指し指との間で回転することによって手作業で加えることができ、又は例えば往復モータ駆動を使用して自動的に加えることができる。
【0028】
摩擦を低減するため、操向を容易にするため、又は前進を容易にするためのいずれかのため、
図9A乃至
図9Fに概略に示すように、内膜下デバイス300の本体302に高い捩じり特性を組み込むのが望ましい。一般的には、曲がりくねった経路での厄介な血管内案内なくすため、少なくとも本体302の先端部分の可撓性を維持するのが望ましい。
図9Aは、本体先端部分302及び本体基端部分304を含む一般的なデバイス300を概略に示す。本体基端部分304に対して本体先端部分の可撓性が大きい。これは、曲がりくねった経路と遭遇することが多いためである。本体基端部分は、ガイドカテーテル等の小さな屈曲部としか遭遇せず、及び従って、剛性が比較的高いが、捩じりに関し、金属製チューブ状(例えばステンレス鋼製皮下チューブ)と同様に剛体をなすように形成されていてもよい。
【0029】
可撓性であるが捩じりに関して剛体の本体先端部分302の設計を
図9B及び
図9Cに示す。この実施例では、本体先端部分302は、逆方向に同心に巻いた多数の独立したコイル902、904、906で形成されている。これらのコイルは、加えられたトルクに対して直径方向に相互作用する(例えば内側のコイルが直径方向に拡張するのに対し、外側のコイルは直径方向に収縮する)。この相互作用は、捩じり強度を提供すると同時に軸線方向可撓性を維持する。本体先端302のコアは、中空であってもよいし、その内部内腔内に固定ワイヤ901が設けられていてもよい。固定ワイヤ910は、軸線方向剛性及び/又は捩じり剛性を高めることができ、更に、先端方向での可撓性を増大するため、断面がテーパしていてもよい。ガイドワイヤを挿入するため、中空コアを使用してもよい。コイル902、904、906及びコアワイヤ910は、適当な金属材料又はポリマー材料で形成されていてもよい。こうした材料には、ステンレス鋼、ニッケルチタニウム、プラチナ、又は超高分子量ポリエチレンが含まれるが、これらの材料に限定されない。
【0030】
可撓性であるが捩じりに関して剛性の本体先端302の設計の別の例を
図9Dに示す。この図では、単一のコイル908を内部コア910に巻き付け、薄いポリマーシース920によって取り囲んである。可撓性であるが捩じりに関して剛性の本体先端302の設計の更に別の例を
図9E及び
図9Fに示す。これらの図では、本体は、単に、開放状態で巻いた単一のコイル912でできている。
【0031】
可撓性であるが捩じりに関して剛性の本体先端302設計を
図9Gに示す。本体先端3902は、隣接したコイルを係合させる(ギヤの歯と同様に機械的に係合させる)ことができる幾何学的特徴をコイルの長さに沿って備えた部分的に又は全体として単一のコイル層で形成されていてもよい。
図9Gは、一つのコイルの山が隣接したコイルの谷に入り込むように、多数の歯932がコイルの縁部に沿って接触した状態で密に巻いたコイル930を示す。従来のコイル(歯を持たない)は、加えられた捩じり負荷に対し、直径方向に拡張するか或いは収縮することによって反応し、かくしてコイルの一つの巻回部のワイヤ表面を押圧し、その隣接した巻回部に関して並進する。コイル930の構造は、コイル内でのワイヤ表面の並進に抵抗し、かくして直径方向での拡張及び収縮(コイルの変形)に抵抗する。コイルの変形に対する抵抗が高いため、デバイス本体の捩じりに対する抵抗を増大し、これと同時にコイル構造により軸線方向可撓性を提供する。
【0032】
この設計は、
図9Hに示す方法によって実施できる。内膜下デバイス300は、連続した中実の金属製チューブ940で形成された本体基端部分304と、レーザーカットによって形成したコイルセグメント930を持つ同じチューブで形成された本体先端部分302とを含む。レーザーカットで形成したパターンが歯932を形成する。金属製チューブに適した材料には、ステンレス鋼やニッケルチタニウムが含まれるが、これらの材料に限定されない。別の態様では、コイル930は、連続したワイヤを巻き付けることによって形成してもよい。ワイヤは、例えば歯932を形成し、コイルを係合できるように機械的に変形させた断面を備えていてもよい。
【0033】
図9Iは、チューブの周囲から形成したレーザーカットパターンの一例を示す。これは、例示の目的で、平らな形体で示してある。
図9Iに示すパターンでは、歯932は全体に台形をなしており、コイル巻回部930に対して直交して延びる。
図9Jは、歯が全体に矩形をなした(クリップコーナーを持つ)変形例のパターンを示す。このパターンの主長さ(長さ方向長さ)は、本体の軸線と平行に延びる。
図9Jに示す歯932の平行な配向及び長さ方向長さにより係合が促され、隣接したコイル巻回部930のスリップが減少する。
【0034】
上述のように、可撓性であるが捩じりに関して剛性の内膜下デバイスの別の用途は、内膜下空間を通した前進を、ねじ山を備えたねじと同様に脈管組織と回転的に係合するスレッドを使用して行うことである。
図10Aは、少なくとも本体先端部分302の外面上にスレッド1000が設けられた内膜下デバイス300を示す。スレッド1000は、コークスクリューと同様に作用し、回転により動脈組織と係合でき、内膜下空間を通して内膜下デバイス300を駆動するのを補助する。
図10B、
図10C、及び
図10Dは、
図10AのA−A線に沿った断面図であり、スレッド1000についての様々な変形例を示す。
図10Bは、本体先端302の外側に同心に巻き付けた一つ又はそれ以上の円形のコークスクリュー部材1010を示す。
図10Cは、コイル層902、904、906で形成された多層コイル構造を示す。この場合には、コークスクリュー部材1020は、断面積が大きく、同心の外コイル906内に巻いてある。コークスクリュー部材は、
図10B及び
図10Cに示すように円形形状を備えていてもよいし、組織との係合及び内膜下デバイスの前進を補助する三角形、正方形、又は他の断面形状等の他の形状を備えていてもよい。
図10Dは、コークスクリュー輪郭1030を持つポリマーチューブを示す。このチューブ内に本体先端部分302が形成されており、このチューブは、本体先端部分302の周囲に位置決めされている。これらの実施例の各々において、内膜下デバイス300を逆方向に回転することによって、かくしてデバイスを内膜下空間の外に駆動することによって、内膜下デバイス300を引き出すことができる。
【0035】
幾つかの例では、内膜下空間内への及び内膜下空間を通した前進を容易にするため、オーバーザワイヤ(over-the-wire) 型内膜下デバイスを使用するのが望ましい。上文中に説明した実施例に加え、
図11A、
図11B、及び
図11Cは、内膜下デバイスの追加のオーバーザワイヤ型実施例を示す。これらの実施例は、真の内腔にとどめておくのが望ましい場合等で、完全閉塞を通してガイドワイヤを前進させるのにも使用できる。
【0036】
図11Aは、
図9G乃至
図9Jを参照して説明したコイル状ギヤ設計930を持つオーバーザワイヤ型内膜下デバイス1100(又はワイヤ支持デバイス)及び
図10A乃至
図10Dを参照して説明したスレッド設計1000を示す。デバイス1100は、中空コアを有し、ガイドワイヤ700上で前進させることができる。ギヤコイル930は、軸線方向可撓性及び捩じり剛性を提供し、螺旋状外スレッドは、病変部位又は動脈壁との機械的係合を提供する。
図11Bは、オーバーザワイヤ型内膜下デバイス1110(又はワイヤ支持デバイス)の長さ方向断面を示す。内チューブ1112はコイル状ギヤ設計930を有し、外チューブ1114はスレッド設計1000を有する。内チューブ1112は、従来のガイドワイヤ700を受け入れることができるガイドワイヤ内腔を有する。
図11Cは、変形例の内チューブ1112の拡大部分図を示す。ここでは、作動ワイヤ1118を手前に引き出すとき、隣接したコイル間の隙間934により、内チューブ1112を関節連結できる。外チューブ1114は、内チューブ1112が直線的な位置にある場合及び作動位置にある場合の両方で、内チューブ1112に関して自由に回転できる。
【0037】
以上の実施例において、内膜下デバイスは、進入点を介して内膜下空間に進入する。換言すると、デバイスは、真の内腔116から進入点を通って内膜下空間内に延びる。これは、内膜下デバイスを血管内膜層に向かって差し向け、これを穿通することによって行われる。別の態様では、血管内膜層を穿通し、内膜下空間に進入するのにガイドワイヤを使用してもよい。この後者のアプローチは、更に一般的に使用されるアプローチである。これは、医師が、意図せずにガイドワイヤを内膜下空間に進入させてしまう場合があるためである。しかしながら、内膜下空間を良好に活用するため、本明細書中に説明した実施例は、血管内膜層を穿通して意図的に内膜下空間に進入させる。これは、従来行われていたのとは逆である。
【0038】
真の内腔から離れた血管内膜層と係合するのに十分な所定の長さ及び角度のベントチップを使用する剥き出しのガイドワイヤ(即ち差し向けカテーテルを持たないガイドワイヤ)を使用し、血管内膜層を意図的に穿通し、内膜下空間に進入してもよい。しかしながら、内膜下空間への進入を一貫して及び予想可能に行うため、差し向けカテーテルを使用してもよい。
図12A、
図12B、及び
図12Cに示すように、血管内膜層と係合してこれを穿通し、内膜下空間に進入するように内膜下デバイス(又はガイドワイヤ(このガイドワイヤ上で内膜下デバイスを前進させる))を差し向けるのに、様々な差し向けデバイスを使用できる。
図12Aは、送出−差し向けチューブ1210を備えた先端バルーン1220を含むオーバーザワイヤバルーンカテーテルと実質的に同様の差し向けカテーテル1200を概略に示す。
【0039】
図示のように、差し向けカテーテル1200は、従来のガイドワイヤ700上で前進させてあり、完全閉塞120の手前で膨張させてある。明瞭化を図るため、
図12Aは、脈管内腔と実質的に平行な内膜下デバイスの経路を示すが、この他の配向(例えば螺旋状)を使用してもよい。送出−差し向けチューブ1210は、内膜下デバイス300を前進させて血管内膜層113を穿通するように、血管内膜層113と隣接して及び血管内膜層113に向かって僅かに外方に差し向けられるように位置決めされてもよい。流体源(例えば注射器)1230を、送出−差し向けチューブ1210と流体連通するように、注入チューブ1232を介して連結してもよい。流体は、制御された圧力又は容積の作用で、流体源1230から送出−差し向けチューブ1210を通って流れる。注入された流体は、送出−差し向けチューブ1210から直接的に、又はバルーン1220の先端と完全閉塞120の基端円錐形との間に形成された真の内腔116の空間から、内膜下空間130に進入してもよい。流体は、X線撮影法による視覚化を容易にするため、放射線不透過性コントラスト媒体であってもよく、及び/又は血管内膜層113及び中間層115を剥離して内膜下空間を形成するのに使用してもよい。
図12Bは、差し向けカテーテルの変形例を概略に示す。この差し向けカテーテルでは、流体源1230が内膜下デバイス300の内腔と流体連通しており、これによって流体を内膜下デバイス300を舞して内膜下空間130に直接注入する。
図12Cは、別の実施例を概略に示す。この実施例では、差し向けカテーテル1250は、半選択的(sub-selective) ガイドカテーテルと同様であり、先端1252は、所定形状を有するか或いは作動エレメントを含む。これにより、医師が手術中に操作することによって内膜下デバイス300を血管内膜層に向かって差し向けてこれを穿通できる。
【0040】
内膜下デバイス300を内膜下空間に置いた後、内膜下デバイスを前進させるにつれて鈍く剥離することにより血管内膜層を中間層から剥離し、内膜下空間を開放してもよい。別の態様では、上文中に説明したように、加圧流体を使用して脈管内層を中間層から剥離してもよい。更に別の態様では、
図13A及び
図13Bに示すように作動することによって層を剥離してもよい。
図13Aに示す
収縮形体と
図13Bに示す拡張形体との間で内膜下デバイス1300を作動し、即ち拡張させてもよい。内膜下剥離を伝播するため、抵抗が感じられるまでデバイス1300を
収縮状態で前進させ、次いで拡張させて層を剥離してもよい。内膜下デバイス1300は、複数の弾性の拡張可能なエレメント1312(例えば熱で設定したニチノール)を持つシャフト1310及び非外傷性チップ1314(ベントチップとして示す)を含んでいてもよい。シース1320を、基端シャフト1310及び拡張可能なエレメント1312の周囲に配置し、拡張可能なエレメント1312を
図13Aに示す
収縮形体に保持してもよい。シース1320を基端方向に引っ込める(又はシャフト1310を先端方向に前進させる)と、拡張可能なエレメント1312は、
図13Bに示すように弾性的に拡張し、剥離を伝播する。シース1320を前進させて、拡張可能なエレメント1312を
収縮させてもよく、デバイス1300を内膜下空間内に更に前進させてもよい。別の態様では、作動機構は、膨張させたときに剥離を行い、萎ませたときに前進できる膨張可能なバルーンを含んでもよい。
【0041】
図13C及び
図13Dは、変形例の内膜下横断デバイス1330を概略に示す。内膜下デバイス1330は、脈管壁の層を剥離するため、
図13Dに示す
収縮形体と
図13Cに示す拡張形体との間で作動でき、即ち拡張できる。別の態様では、内膜下デバイス1330は、通常は拡張状態にあり、引っ込めるときに
収縮させることができる。デバイス1330は、抵抗が感じられるまで
収縮状態で前進させることができ、次いで、内膜下の剥離を伝播するため、膨張により層を剥離して拡張状態にする。内膜下デバイス1330は、可撓性シャフト1332及び拡張可能なエレメント1334を含んでいてもよい。シャフトは、可撓性超弾性金属製チューブ(例えばニチノール)で形成されていてもよいし、複合ポリマー(例えば編成体強化ポリエーテルブロックアミド)で形成されていてもよい。拡張可能なエレメント1334は、例えば、接着剤又は溶接接合部を使用してシャフト1332の先端に連結されていてもよい。拡張可能なエレメント1334は、ニチノール等の弾性材料で形成された、複数の編成フィラメントを含んでいてもよく、拡張状態でヒートセットしてもよいし、
収縮状態でヒートセットしてもよい。拡張可能なエレメント1334の先端は、非外傷性チップ、例えば個々の編成フィンガを固定する溶接ボール1336を含んでいてもよい。拡張可能なエレメント1334は、前進に対する抵抗に遭遇したとき、シャフト1332を押すことによって拡張してもよく、かくして隣接した組織層を剥離してもよい。別の実施例では、拡張可能なエレメント1334は、シャフト1332を押すことによって、及び拡張可能なエレメント1334の先端に取り付けられた、シャフト1332の内腔を通って基端方向に延びる引っ張りワイヤ(図示せず)を引っ張ることによって拡張させてもよい。可撓性ポリマーシース1340は、
図13Dに示すように、横断デバイス1330の送出、脈管壁内に横断経路を形成し維持すること、及び/又は横断デバイス1330の取り出しを行うのに使用してもよい。ポリマーシース1340は、別の態様では、本明細書中に説明した配向デバイス、又はガイドワイヤ等の上で前進されるように形成された他の脈管内デバイス(例えばバルーンカテーテル)を含んでいてもよい。
【0042】
図13E及び
図13Fは、変形例の内膜下横断デバイス1350を概略に示す。この内膜下デバイス1350は、細長く可撓性であり且つ高いトルクに耐えるシャフト1352と、例えばニチノール等の超弾性合金で形成された弾性先端ループ1354とを含む。ループ1354は、
図13Fに示す
収縮形体と
図13Eに示す拡張形体との間でそれ自体が拡張する。デバイス1350は、送出するため、シース1340を通って先端方向に前進でき、取り出しのため、シース1340内に手前に引っ張ることができる。拡張させたとき、ループ1354は実質的に平らであり、シャフト1352を回転すると、ループ1354が内膜下空間内で回転し、組織層を強制的に剥離する。
【0043】
バイパス実施例
以上の実施例は、脈管境界を形成するため及び/又は穴が形成されないように保護するため、全体として、血管内膜層を穿通する工程と、内膜下デバイスを内膜下空間内に配置する工程と、閉塞セグメントを横切る工程とを含む。以下のバイパス実施例もまた、血管内膜層を穿通する工程と、内膜下デバイスを内膜下空間内に配置する工程と、閉塞セグメントを横切る工程とを含む最初の工程を含む。この目的のため、境界を形成する実施例及び穴が形成されないように保護する実施例を参照して説明したデバイス及び方法は、以下のバイパス実施例に適用される。
【0044】
以下に説明するバイパス実施例は、血管内膜層を穿通する工程、内膜下空間に進入する工程、及び閉塞セグメントを横切る工程の他に、配向を変更し、真の内腔に再進入する工程を含む。以上のバイパス実施例に対する一般的なアプローチを、
図14A乃至
図14Hに概略に示す。
図14Aに示すように、ガイドワイヤ700を、閉塞した動脈の真の内腔116の基端セグメント112を通して、脈管壁118と隣接した完全閉塞120の基端縁部まで前進させる。ガイドワイヤ700を操作し、完全閉塞120の基端縁部に、壁118に向かって差し向けることによって、
図14Bに示すように、ガイドワイヤ700が血管内膜層113を穿通し、脈管内層113と中間層115/外膜117との間の内膜下空間に進入する。上文中に説明したガイドワイヤ700の操作及び差し向けは、ガイドワイヤだけを使用して行ってもよいし、本明細書中に説明した任意の差し向けデバイスを使用して行ってもよい。ガイドワイヤ700が内膜下空間130内にある状態で、内膜下デバイス1400を、
図14Cに示すように、ガイドワイヤ700上で前進させる。例示の実施例では、内膜下デバイス1400は、細長い中空シャフト1402と、非外傷性球形チップ1404を含む。しかしながら、本明細書中に説明した任意の内膜下デバイス、詳細にはオーバーザワイヤ型内膜下デバイスを使用してもよい。
図14Dに示すように、チップ1404が内膜下空間130内に入るように、内膜下デバイス1400をガイドワイヤ700上で更に前進させることができる。手順のこの段階で、ガイドワイヤ700を引き抜き、内膜下デバイス1400から完全になくしてもよい。
図14Eに示すように、内膜下デバイス1400を更に操作する(軸線方向前進及び半径方向回転を行う)ことにより、内膜下空間130を形成する層を鈍く剥離でき、デバイス1400を完全閉塞120の先端部分まで前進させることができる。下文に更に詳細に説明する様々な手段によって、血管内膜層113を穿通し、閉塞120の先端側の真の内腔116の先端セグメント114に再進入できる。これらの手段は、全体として、真の内腔116の中央に向かって配向する工程、及び血管内膜層113を穿通する工程を含む。限定でなく例示の目的で、
図14Fは、賦形再進入デバイス1420を示す。このデバイスのカールした先が尖ったチップが、閉塞120の先端側で内膜下デバイス1400の内腔を出て、血管内膜層113を通り、真の内腔116の先端セグメント114に進入する。再進入デバイス1420が真の内腔116の先端セグメント114に入った状態で、
図14Gに示すように、内膜下デバイス1400を、再進入デバイス1420上で、真の内腔116内に前進させることができる。再進入デバイス1420を内膜下デバイス1400から引き出し、その代わりにガイドワイヤ700を
図14Hに示すように前進させてもよい。その後、内膜下デバイス1400を引き出してガイドワイヤ700を残してもよい。このように、ガイドワイヤ700は、閉塞120の基端側の真の内腔116の基端セグメント112から、内膜下空間130を通って閉塞セグメントを横切り、閉塞120の先端側の真の内腔116の先端セグメント114に再進入し、かくして、動脈を出ることなく、完全閉塞120をバイパスする。ガイドワイヤ700がこのように配置された状態で、例えば内膜下空間130を拡張(例えばバルーン血管形成術又はアテローム切除術によって)してもよく、ステント術を施してもよく、又は周知の技術を使用してこの他の方法で治療を行ってもよい。
【0045】
上文中に言及したように、内膜下空間から真の内腔内への再進入は、一般的には、真の内腔の中央に向かって配向する工程と、血管内膜層を穿通する工程とを含む。介在手順中、一般的に利用できる視覚化工具はX線撮影法であるが、これは平面的画像しか提供しない。こうした画像は、代表的には、内膜下空間から真の内腔の中央に向かって穿通するための適正な方向を決定する上で、それだけでは不十分である。このように、当業者は、更に高精度の、立体的データを示す性能を持つ視覚化工具を使用してもよい。例えば、脈管内超音波(IVUS)又は磁気共鳴撮影法(MRI)を使用して、内膜下空間から真の内腔に再進入する位置及び方向を決定してもよい。しかしながら、このような技術は、時間や費用が掛かり、多くの場合に実現性に欠けており、及び従って、このような煩わしい視覚化技術を必要とせずに配向(再進入デバイスを、内膜下空間から、完全閉塞の先端側の真の内腔に向かって差し向ける)を行うのが望ましい。
【0046】
本明細書中、配向や再進入を行うための様々な実施例を説明した。これらの実施例は、再進入デバイスを内膜下空間から真の内腔に向かって効果的に配向するため、真の内腔に対する内膜下空間の位置及び形状を利用する。これは、内膜下空間が、真の内腔の中央にその半径方向中心を持つ全体に環状の空間であるということを認識することによって行うことができる。かくして、内膜下空間内で展開した湾曲したデバイスが、少なくとも円弧を形成し、最大で全円を形成する(半径方向断面において)。これらの円弧又は全円の半径方向中心は、真の内腔の中央になければならない。換言すると、曲率半径が内膜下空間の曲率半径と整合するように内膜下空間で展開した湾曲したデバイスの場合、真の内腔は、必然的に、湾曲した内膜下デバイス1400の凹状の側部に向かって配向される。次いで、再進入デバイスをキー止め又は他の方法で、内膜下デバイスの凹状側に配向し、かくして、再進入デバイスを、視覚化なしで、真の内腔に向かって自動的に配向する。
【0047】
これを前提として作動する一つのこのような実施例を
図15A及び
図15Bに概略に示す。この実施例では、螺旋状内膜下デバイス1500が概略に示してある。このデバイス1500の特徴を、本明細書に説明した他の内膜下デバイスに組み込んでもよい。内膜下デバイス1500は、全体として、貫通内腔1504と、螺旋形状領域の先端側に配置された再進入ポート1506とを持つ細長いチューブ状シャフト1502を含む。この実施例では、シャフト1502の先端部分は、弛緩状態において、螺旋形状を備えていてもよい。再進入ポート1506は、常に、
図15Aに示すように、螺旋の凹所の側部又は中心に向かって差し向けられる。螺旋状部分は、本明細書に説明したように、完全閉塞の周囲の内膜下空間で展開できる。その結果、螺旋の凹状部分及びポート1506は、真の内腔に向かって差し向けられる。この構成により、組織穿通チップを持つガイドワイヤ700又は可撓性スタイレット等の再進入デバイスを、シャフト1502の内腔1504を通して前進させ、
図15Bに示すように、再進入ポート1506から出してもよい。この構成は、内膜下デバイス1500を内膜下空間で閉塞を横切って展開した後、真の内腔内に再進入するのに使用できる。
【0048】
動脈壁の層の性質が異なることを利用して、再進入デバイスを内膜下空間から真の内腔に向かって効果的に差し向ける、他の配向実施例及び再進入実施例を説明する。幾つかの例では、脈管内層113は、中間層115及び外膜117の複合層よりも柔軟である。かくして、内膜下空間130でエレメントを拡張すると、脈管内層113は、中間層115及び外膜117よりも大きく変形する。
【0049】
これを前提とした一つのこのような実施例を
図16A乃至
図16Dに概略に示す。この実施例では、本明細書中に説明した内膜下デバイス(図示せず)を使用して完全閉塞に通し、ガイドワイヤ700を
図16Aに示すように配置する。ガイドワイヤ700は、閉塞120を横切って延び、脈管内層113と中間層115/外膜117との間の内膜下空間130に配置される。閉塞120の先端側で真の内腔116に再進入するのが望ましい。次いで、バルーンカテーテル1620を、バルーン部分1622が、
図16B及び
図16Cに示すように、閉塞120の先端側の端部と隣接して配置されるまで、ガイドワイヤ700上で前進させる。ガイドワイヤ700を手前に引っ張り、次いでバルーン1622を膨張させ、バルーンカテーテル1620の先端を
図16Cに示すように変位する。バルーンカテーテル1620のバルーン1622を膨張することにより、カテーテル1620のチップを脈管内層113に向かって配向する。ガイドワイヤ700をバルーンカテーテル1620から取り出し、先が尖ったスタイレット1630等を、スタイレット1630の先端が、
図16Dに示すように、脈管内層113を穿通するまで、カテーテル1620のガイドワイヤ内腔を通して前進させる。かくして内膜下経路130から真の内腔116に再進入する。
【0050】
バイパス実施例の詳細な説明
以下の実施例において、上文中に概略に説明した、完全閉塞の視覚化、穿孔保護、及び/又はバイパスに含まれる工程のうちの一つ又はそれ以上を行うデバイスの詳細な例を説明する。これらのデバイスは、例えば、(i)内膜下空間に進入し、脈管内層を周囲組織層から剥離し、内膜下空間を通って完全閉塞を越えて横切るのに十分な軸線方向力及び半径方向トルクを伝達することによって、内膜下デバイスのトラッキングを行い、(ii)内膜下デバイスを内膜下空間内で完全閉塞の先端側の真の内腔に再進入する上で好都合な配向で整合し、(iii)内膜下デバイスの整合及び配向を利用して再進入エレメントを前進し、内膜下デバイスを真の内腔内に向かって差し向け、(iv)完全閉塞の先端側で真の内腔に再びアクセスするため、血管内膜層を穿通し、(v)真の内腔の再進入が行われたことを確認する。
【0051】
軸線方向押し力及び半径方向トルクの実施例の詳細な例
図17及び
図18を参照して説明する例は、内膜下空間に進入してこの空間内で前進するため、押し力(push force)及び捩じり力を伝達する内膜下デバイスの特徴を例示する。
図17は、チューブ状シャフト1702の中央内腔1701内に摺動自在に配置された内部スタイレット1703によって押し力及び捩じり力を提供する、内膜下デバイス1700の一実施例を示す。スタイレット1703を取り外した状態で、中央内腔はガイドワイヤ(図示せず)を受け入れることもできる。
【0052】
チューブ状シャフト1702は、ポリエチレン、ナイロン、又はポリエーテルブロックアミド(例えばペバックス(ペバックス(Pebax)は登録商標である)等の適当なポリマー材料で形成されている。チューブ状シャフト1702は、更に、複合構造を備えていてもよい。複合構造の内側層は、ポリエチレン又はPTFE等のフルオロポリマー(例えばテフロン(テフロン(Teflon)は登録商標である)等の潤滑性ポリマーを含み、中間層は、ポリエステル又はステンレス鋼等の金属製又はポリマー製の編成構造を有し、外側層もまた同様のポリマー材料で形成されている。内膜下デバイス1700の外側に潤滑性外部コーティングが設けられていてもよい。例えば、コーティングは、液体シリコーン又はヒアルロン酸等の親水性コーティングを含んでいてもよい。スタイレット1703は、ステンレス鋼やニッケルチタニウム合金を含むがこれらの材料に限定されない適当な金属材料で形成されていてもよい。非外傷性チップ1704は、例えばステンレス鋼、チタニウム、ポリカーボネート、又はポリエーテルブロックアミド(例えばペバックス(ペバックス(Pebax)は登録商標である)を含む適当な金属材料又はポリマー材料で形成されていてもよい。
【0053】
図17のA−A線及びB−B線に沿った断面図である
図17A及び
図17Bでわかるように、スタイレット1703の全部又は一部(例えば先端部分)が、チューブ状シャフト1702及び/又は非外傷性チップ1704内の特徴1706と界面を形成する。例えば、チューブ状シャフト1702及び/又は非外傷性チップ1704は、
図17Bに示すよ うに、スタイレット1707の先端チップと噛み合うようになった、即ちキー止めするようになった幾何学的特徴1706を持つ内腔を含んでいてもよい。このキー止め特徴即ち噛み合い特徴1706により、トルクを、オペレータの手から、内膜下デバイスの先端チップに、内膜下デバイス及びスタイレットの捩じりにより伝達できる。幾何学的特徴1706を例示の目的で正方形断面として示すが、スタイレット1703の周囲をチューブ状シャフト1702及び/又は非外傷性チップ1704の内腔と係合させるのに円形以外の任意の幾何学的形状を使用してもよい。
【0054】
図18は、チューブ状基端シャフト1804、チューブ状先端シャフト1802、及び球状非外傷性チップ1805を持つ内膜下デバイス1800の実施例を示す。この実施例では、基端シャフト1804を剛性材料で形成(例えば金属製皮下チューブ)し、例えば
図9等を参照して上文中に説明したギヤシャフトと同様の方法で先端シャフト1802に形成することによって、押し力及び捩じり力の所望の特性を提供できる。先端ギヤシャフト1802は可撓性であるが、捩じりに関して及び長さ方向で剛体であってもよい。先端シャフト1802は、外シース1801内に配置されていてもよく、内部シース1803を備えていてもよい。外シース及び内シースは、ポリエチレン、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド(例えばペバックス(ペバックス(Pebax)は登録商標である)又はテフロン(テフロン(Teflon)は登録商標である)等のフルオロポリマー等の適当なポリマー材料で形成されていてもよい。
【0055】
真の内腔を配置する実施例の詳細な例
図19A及び
図19B、
図20A及び
図20B、
図21A及び
図21B、及び
図22A乃至
図22Cを参照して説明する実施例は、真の内腔に向かう配向を容易にする内膜下デバイスの特徴を示す。一般的には、内膜下デバイスを周囲の少なくとも一部に亘って展開する(半径方向に湾曲させるとも呼ぶ)ことによって、真の内腔の方向を湾曲の中心(凹状側)に向かわせる。長さ方向に位置決めした内膜下デバイスから半径方向に湾曲するため、先ず最初に、内膜下デバイスを軸線方向で曲げ即ち湾曲させ、移行形状として作用するのが必要であるか或いは望ましい。従って、本明細書中に説明した内膜下デバイスの幾つかの実施例では、内膜下空間で展開したとき、軸線方向屈曲部(例えば
図19A参照)及び半径方向屈曲部(例えば
図19B参照)の両方を有する。半径方向屈曲部の凹状の側部が一貫して内腔に向かうため、再進入デバイスは、このデバイスを内膜下デバイスの半径方向湾曲に関して整合することによって、真の内腔に向かって予想通りに差し向けられる(複雑な視覚化技術を使用せずに)。かくして以下の実施例において、半径方向屈曲部(及び軸線方向屈曲部)を吸収し、半径方向屈曲部の凹状の側部に向かう真の内腔の方向を確立する内膜下デバイスの様々な設計を例示する。
【0056】
図19A及び
図19Bは、標準的なX線撮影法を用いて、再進入デバイス(図示せず)を完全閉塞の先端側の真の内腔116に向かって差し向けることができる、内膜下デバイス1900を示す。非外傷性チップ1902を持つ内膜下デバイス1900を脈管内層113と中間層115との間の内膜下空間130内に位置決めしてもよい。内膜下デバイス1900を、
図14A乃至
図14Eを参照して上文中に説明したのと同様の技術を使用して前進させてもよい。内膜下デバイス1900を内膜下空間130内の適正な位置に置いた後、内膜下デバイス1900の先端部分を、
図19Aに示す長さ方向屈曲部及び
図19Bに示す半径方向屈曲部を持つ幾何学的形状をとるように形成する。この立体的形状を複合屈曲部と呼んでもよい。本明細書中下文に更に詳細に説明するように、複合屈曲部は、再進入デバイスを動脈110の真の内腔116に向かって整合するために使用してもよい。
【0057】
図20Aは、
図18を参照して説明した内膜下デバイス1800と同様の、複合屈曲部を形成できる内膜下デバイス2000を示す。この内膜下デバイス2000は、内部に内腔を形成する細長いチューブ状シャフト2001と、このシャフト2001の内腔内にあり、先端がシャフト2001の先端に取り付けられた作動部材(押し部材又は引っ張り部材)2003と、シャフト2001の先端に取り付けられた非外傷性チップ2004とを含む。可撓性であるが捩じりに関して剛体の先端シャフト2001は、作動部材2003に沿って配向された一つ又はそれ以上の開放領域2002を有する。外シース2005がシャフト2001及び作動部材2003の長さの周囲に配置されていてもよく、その先端には非外傷性チップ2004が取り付けられている。単に例示の目的で、
図20Aは、シャフト2001の一列の開放領域2002の近くに一本の作動部材2003を示す。内膜下デバイスは、一つ又はそれ以上の作動部材を備えていてもよく、一列又はそれ以上の開放領域の列を備えていてもよい。例えば、シャフト2001は、二列の開放領域2002を持つ
図20Bに示すレーザーカット形状を備えていてもよい。
【0058】
図20Aを続けて参照すると、長さ方向作動部材2003を引っ張ることによって屈曲部を形成してもよい。作動部材2003を引っ張ると、開放領域2002が部分的に又は完全に閉鎖し、かくしてシャフト2001の長さが開放領域2002の近くで短縮し、デバイス2000に屈曲部を形成する。開放領域の多数の列及び/又は多数の長さ方向部材2003を使用することにより、複合屈曲部を形成できる。別の態様では、一列の開放領域及び一つの長さ方向部材を使用して、外膜層とのデバイスの相互作用により複合屈曲部を形成してもよい。この変形例では、作動部材2003を引っ張ることにより、軸線方向湾曲部(
図19A参照)を形成し、外膜との相互作用により内膜下デバイスを押圧し、半径方向湾曲部を形成する(
図19B参照)。
【0059】
図21Aは、複合屈曲部を形成できる内膜下デバイス2100の変形例を示す。この内膜下デバイス2100は、全体として、内部内腔2101を形成する細長いチューブ状シャフト2102と、先端がシャフト2102の先端に取り付けられた作動部材(押し部材又は引っ張り部材)2105と、シャフト2102の先端に取り付けられた非外傷性チップ2106とを含む。シャフト2102は、多数の交互の楔状ポリマーセグメントから形成されていてもよい。この場合、セグメント2103は、隣接したセグメント2104と比較してジュロメーター硬度が低く、可撓性が高い。例えば、セグメント2103は、4033ペバックスで形成されていてもよく、これに対しセグメント2104は6333ペバックスで形成されていてもよい。これらの多数のセグメントを互いに組み立てて連続したシャフトを形成してもよい。例えば、隣接したセグメントの縁部を、これらのセグメントをその融点以上に加熱するプロセスを使用して互いに融着してもよい。近接して保持されたセグメントを加熱することによって、これらのセグメントを互いに融着してもよい。
図21Aは、一連の楔状セグメントを示す。これらのセグメントでは、比較的剛性のセグメント2104は、シャフト2102の線に沿った一方の側部の大きなパーセンテージを占めるのに対し、比較的可撓性のセグメント2103は、同じシャフトの反対側の大きなパーセンテージを占める。
【0060】
図21Bに示すように、比較的可撓性のセグメント2103のパーセンテージが大きいシャフト2102の側部は、部材2105の作動時に比較的大きく圧縮でき、そのため、シャフト2105は、可撓性が比較的大きいセグメント材料2103の側部に向かって撓む傾向が大きく、比較的剛性のセグメント材料2104で形成された側部では撓みに対する抵抗が大きい。長さ方向作動部材2105は、シャフト2102の壁内の内腔内に摺動自在に配置されており、非外傷性チップ2106に取り付けられていてもよく、シャフト2105の長さに亘って延び、基端の外に出る。例示の目的のため、
図21A及び
図21Bは、比較的可撓性のセグメント2103が形成するラインの近くに単一の長さ方向部材2105を示す。内膜下デバイス2100は、一つ又はそれ以上の長さ方向部材を備えていてもよく、可撓性セグメント2103が形成する一つ又はそれ以上のラインを備えていてもよい。
【0061】
図21Bを参照すると、作動部材2105をシャフト2102に対してを引っ張ることによって複合屈曲部を形成してもよい。作動部材2105を引っ張ることによってセグメント2103を圧縮し、かくして内膜下デバイスの長さを、比較的可撓性のセグメント材料2103で形成されたシャフト2102の側部に沿って短くする。複合屈曲部は、可撓性セグメント材料2103を所望のパターンで配置することによって、及び/又は多数の長さ方向部材2105を使用することによって形成してもよい。別の態様では、複合屈曲部は、デバイスが上文中に説明したように外層と相互作用することによって、可撓性セグメント材料2103でできた一方の側及び単一の長さ方向部材を使用して形成することもできる。
【0062】
図22A、
図22B、及び
図22Cを参照すると、これらの図には、複合屈曲部を形成できる内膜下デバイス2200の別の実施例が概略に示してある。
図22Aは、例示及び明瞭化の目的で、内膜下デバイス2200の先端部分だけを示す。この実施例では、内膜下デバイス2200のチューブ状シャフトは、内チューブ2201及び外チューブ2204(切り離した状態で示してある)を含み、これらのチューブ間に、長さ方向部材2203によって相互連結された一連の周囲リング2202が配置されている。非外傷性チップ2207がシャフトの先端に連結されており、ガイドワイヤ及び/又は再進入デバイスを受け入れるため、中央内腔2206がデバイス2200を通って延びている。周囲リング2202及び長さ方向部材2203用の適当な材料には、ニッケルチタニウム、ステンレス鋼、又はMP35Nが含まれるが、これらの材料に限定されない。内チューブ2201及び外チューブ2204は、ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(例えばペバックス(ペバックス(Pebax)は登録商標である))、又はナイロン等の適当なポリマー材料で形成されていてもよい。内膜下デバイスの先端部分は、弛緩状態にあるとき、
図22Aに示すように、予備成形した湾曲形状(例えば複合屈曲部)を備えていてもよい。
【0063】
内膜下デバイス2200は、
図22B及び
図22Cに示すように、外送出シース2205内に摺動自在に配置されていてもよい。シース2205は、内膜下デバイス2200よりも僅かに剛性であり、内膜下デバイス2200は、シース2205がデバイスの先端部分を覆っている場合には、
図22Bに示すように直線状形状をとり、シース2205を引っ込めた場合には、
図22Aに示すように湾曲形状をとる。シース2205を基端方向に引っ込めると、内膜下デバイス2200は、その予備成形した形状によって複合屈曲部を形成し、又はその予備成形された形状によって軸線方向湾曲を形成し、上文中に説明したように外膜との相互作用により半径方向湾曲を形成する。
【0064】
再進入実施例の詳細な例
上文中に説明したように、所定の半径方向屈曲部を持つ、内膜下デバイスの凹状の側部は、一貫して真の内腔に向かう。かくして、再進入デバイスを、内膜下デバイスの半径方向湾曲部の凹状の側部と整合することによって、真の内腔に向かって予測可能に(複雑な可視化技術を使用せずに)差し向けることができる。従って、以下の実施例において、内膜下デバイスの半径方向湾曲部の凹状の側部に対して整合させ、真の内腔内に予測可能に再進入させた(複雑な可視化技術を使用せずに)様々な再進入デバイスを例示する。
【0065】
図23A乃至
図23Eは、内膜下デバイス2300内の内腔を通して前進させることができる再進入デバイスの実施例を示す。内膜下デバイス2300は、完全閉塞の先端側で凹状の側部が真の内腔116に向かって差し向けられた半径方向屈曲部を形成するため、上文中に説明したデバイスと同様のデバイスであってもよい。
図23Aを参照すると、内膜下デバイス2300は、脈管内層113と中間層115との間の内膜下空間130内に位置決めされていてもよい。上文中に説明した任意の方法を使用して半径方向湾曲部を内膜下デバイス2300に形成してもよく、半径方向湾曲部は、動脈の半径方向曲率半径よりも小さくてもよい。直径が動脈の内径よりも小さい半径方向曲率半径により、内膜下デバイス2300のチップを真の内腔116に向かって差し向ける。再進入デバイス2310には、ガイドワイヤや血管内膜層を通した穿通を容易にする先が尖ったスタイレット等が含まれる。再進入デバイス2310を内膜下デバイス2300内の中央内腔を通して前進し、先端から出すことにより、血管内膜層113を穿通し、真の内腔116に入る。
【0066】
変形例の再進入実施例を
図23Bに示す。この実施例では、内膜下デバイス2300は、動脈の内側の曲率半径とほぼ同じ半径方向曲率半径を有する。内膜下デバイスは、上文中に説明したように、動脈壁の脈管内層113と中間層115との間に配置できる。この実施例では、再進入デバイス2310は、内膜下デバイス2300の曲率半径よりも小さく、動脈の内側の曲率半径よりも小さい予備成形された屈曲部を備えていてもよい。再進入デバイスは、内膜下デバイス2300に関して長さ方向及び回転的に移動でき、かくして再進入デバイス2310の曲率半径を内膜下デバイス2300の曲率半径と自動的に整合させることができる。かくして、湾曲した内膜下デバイスの凹状の側部が真の内腔116に向かって差し向けられた状態で、湾曲した再進入デバイス2310の凹状の側部もまた真の内腔116に向かって配向される。内膜下デバイス2300を通して再進入デバイス2310を前進し、内膜下デバイス2300の先端から出すことにより、血管内膜層113を穿通し、真の内腔116内に入る。再進入デバイス2310の曲率半径が動脈の内側の曲率半径よりも小さいため、再進入デバイスのチップは真の内腔内に残り、動脈の反対側の壁と係合しない。
【0067】
別の変形例の再進入デバイスの実施例を
図23Cに示す。この実施例では、再進入デバイス2310は、内膜下デバイス2300の先端側部ポート2302から出る。側部ポート2302は、内膜下デバイス2300の湾曲の凹状の側部に配置されており、かくして再進入デバイス2310のチップを真の内腔116に向かって差し向ける。この実施例では、再進入デバイス2310は、前進させたときにチップがポートを出るようにチップをポート2302に向かって押圧するため、その先端が僅かに屈曲している。
【0068】
別の変形例の再進入デバイスの実施例を
図23D及び
図23Eに示す。
図23Eは、
図23DのA−A線に沿った断面図である。この実施例では、内膜下デバイス2300及び再進入デバイスには、上文中に説明したように真の内腔116に向かって配向するための半径方向湾曲が設けられている。更に、チップ等の内膜下デバイス2300の一部及び再進入デバイス2310の先端部分には、相対的整合を容易にするため、キー止め形状即ち噛み合い形状が設けられていてもよい。
図23Eに示すような矩形断面を含む様々な非円形の噛み合い形状を使用してもよい。
【0069】
図24A、
図24B、及び
図24Cは再進入デバイスで使用するための穿通チップの様々な実施例を示す。上文中に説明したように、再進入デバイス2310は、内膜下空間130から真の内腔116まで血管内膜層113を穿通するため、ガイドワイヤ等を含んでいてもよい。別の態様では再進入デバイス2310のチップは、特に血管内膜層が疾病状態にある場合、血管内膜層113を通して強力に穿通するように設計されていてもよい。血管内膜層113は、疾病状態にある場合には、軟質のプラーク、線維質プラーク、及び/又は石灰質のプラークを含むため、健康な組織よりも丈夫であることが多い。所期の再進入箇所の疾病の有無及び疾病の性質によっては、疾病状態が不均等な動脈壁内の様々なプラークを穿通できる再進入デバイスが必要とされる。再進入箇所に疾病がない場合や比較的軟質のプラークしかない場合、再進入デバイスとして従来のガイドワイヤを使用できる。別の態様では、疾病に遭遇したとき、
図24A、
図24B、及び
図24Cに示すチップ形体を使用してもよい。
【0070】
図24Aに示すように、再進入デバイスは、動脈壁を穿通できる回転切断エレメント即ち穿孔エレメント2410を備えていてもよい。回転エレメント2410は、例えば、溝付きドリルビットと同様であってもよい。再進入デバイスは、医師が手作業で操作することによって、又は電動モータ等の動力機構によって、回転切断エレメント2410とともに回転させることができる。
【0071】
図24Bに示すように、再進入デバイスは、回転研磨エレメント2420を備えていてもよい。研磨エレメント2420は、220グリットのダイヤモンド研磨剤等の研磨コーティングを備えていてもよい。研磨コーティングは、電気めっきプロセスによって再進入デバイスのチップに付着させることができる。再進入デバイスは、医師が手作業で操作することによって、又は電動モータ等の動力機構によって、回転研磨エレメント2420とともに回転させることができる。
【0072】
図24Cに示すように、再進入デバイスは、テーパした又は先が尖ったチップ2430を備えていてもよい。先が尖ったチップ2430は、軸線方向に前進させることによって、又は軸線方向で往復動させることによって、血管内膜層113を穿通できる。再進入デバイスの端部は、例えば、尖端までテーパしていてもよい。テーパした又は先が尖ったチップ2430は、医師が手作業で操作することによって、又は電動モータやソレノイド等の動力機構によって、軸線方向に前進させることができ、又は軸線方向で往復動させることができる。
【0073】
閉塞の先端側の真の動脈内腔に進入する再進入デバイスを、X線撮影法によって得られた平面的画像だけを使用して確認するのは困難である。医師は、これらの平面的画像により、再進入デバイスが動脈の直ぐ近くにあるかどうかを確認できるが、正確な位置(即ち、動脈壁内にあるのか真の動脈内腔内にあるのか)を決定する上で適切な解像度を提供しない。真の内腔に再進入したことは、再進入デバイス及び/又は内膜下デバイスが血管内膜層113をいつ穿通したのか、及び完全閉塞の先端側の真の内腔116内の血液といつ接触したのかを理解することによって確認できる。
【0074】
真の動脈内腔にアクセスしたかどうかを確認する一つの方法は、動脈内血液を先端側進入点から再進入デバイス内の内腔を通して、又は内膜下デバイス内の内腔を通してデバイスの基端まで引き出し、ここで血液の存在の検出を行うことによって行われる。この方法は、代表的には、閉塞の先端側の真の内腔内には血液があるけれども、内膜下空間内には血液がほとんど又は全くないということを利用する。かくして、血液がないということは、デバイスが内膜下空間内にあるということを意味し、血液があるということは、デバイスが真の内腔内にあるということを意味する。この技術は、デバイスが動脈を穿孔し心周囲腔に出たことを心周囲流体の存在によって表示するのにも使用できる。
【0075】
図25は、真の内腔への再進入の確認を容易にする再進入デバイス2500を示す。再進入デバイス2500は、内膜下デバイス2300に通すことができ、真の内腔116に向かって差し向けることができ、上文中に説明したように、内膜下空間130から真の内腔116まで血管内膜層113を穿通する。この実施例では、再進入デバイス2500には、その基端から先端開口部2502まで延びる内部内腔が設けられている。再進入デバイス2500の基端はインジケータ2504に連結されており、このインジケータは、真空源に連結されている。インジケータ2504は、流体の有無及び種類を視覚的に観察できる収集ベッセル等の流れインジケータであってもよい。真空源で負圧を発生し、再進入デバイス2500を真の内腔116に進入することにより、血液が先端開口部2502に流入でき、内部内腔を通ってインジケータ2504まで流れる。別の態様では、真空源及びインジケータを内膜下デバイスに流動学的に取り付けてもよい。この場合、デバイスが真の内腔116に進入するとインジケータ内への同様の血流が得られる。インピーダンスセンサ、酸素センサ、光学式センサ、等の変形例のインジケータ2504を使用してもよい。
【0076】
展開可能な実施例の詳細な例
以上、様々な目的のため、内膜下空間内で展開できる様々なデバイスを本明細書中に説明した。以下の実施例は、同じ方法で又は同様に使用できるこのような展開可能なデバイスの追加の例である。例えば、以下の実施例は、完全閉塞の長さに沿って及び完全閉塞の周囲に亘って内膜下空間内で解放されたとき、(i)X線撮影中の動脈壁の確認を補助する可視化補助エレメント、(ii)真の動脈内腔内の完全閉塞を通過するデバイスから一つ又はそれ以上の脈管外層を保護する保護エレメント、及び/又は(iii)真の動脈内腔内の完全閉塞を通過したデバイスと保護エレメントとの間の接近又は接触の表示を提供する保護エレメントとして役立つ展開可能なエレメントを提供する。展開可能なエレメントは、外部包含シースから解放したりこのシース内に再捕捉したりすることを容易に行うことができる。更に、展開可能なエレメントを患者の体内で解放し、永久的インプラントとして展開状態のままにしておいてもよい。この永久的インプラントは、ステントとして役立ち、及び/又は薬剤を溶出することもできる。
【0077】
展開可能なエレメント2600の一例を
図26Aに概略に示す。展開可能なエレメント2600は、内膜下デバイス2300の周囲に配置されていてもよいし、引き込み式包含シース2610によって内膜下デバイスに収容されていてもよい。
図26Aでは、展開可能なエレメント2600は、拘束位置からの解放プロセスで示してあり、包含シース2610が基端方向に引っ込められている。展開可能なエレメント2600は、例えば、
収縮可能なラチス構造を含んでいてもよい。このラチス構造は、シース2610を引っ込めることによって、収容シース2610に収容されている場合の第1
収縮形体から第2展開形体に拡張でき、これにより動脈壁内で拡張できる。この実施例では、展開可能なエレメント2600は、中間層115と外層117との間の内膜下空間130内に示してある。
図26Bは、外包含シース2610を完全に引っ込めることによって内膜下デバイス2300から完全に放出された展開可能なエレメント2600を示す。展開可能なエレメント2600は、完全閉塞(図示せず)の全周に亘って及び長さに沿って拡張でき、かくして疾病状態のセグメントを同心に取り囲む。展開可能なエレメント2600のラチス構造は、
収縮形体と展開形体との間の応力に、大きな永久的変形を生じることなく耐えることができる材料で形成されていてもよい。展開可能なエレメント2600に適した材料には、ニッケルチタニウム、ステンレス鋼、エルジロイ(elgiloy) 、又はMP35Nが含まれるがこれに限定されない。
【0078】
展開可能なエレメントは、完全閉塞の領域での動脈壁の形成を補助するのに使用してもよい。当業者に周知のように、完全に閉塞した動脈は、十分な放射線不透過性コントラスト溶液を疾病状態のセグメント内に入れることができず、かくして医師が閉塞領域の動脈を見えるようにするのを妨げる。十分な放射線不透過性を持つ(X線撮影で見える)展開可能なエレメントを完全閉塞の周囲の動脈壁内に配置することにより、医師は閉塞セグメントを見ることができる。閉塞の領域の動脈を可視化することにより、これに続き、介在デバイス(即ちガイドワイヤ、バルーン、ステント、等)を展開可能なエレメント内にうまく通すことができる。
【0079】
展開可能なエレメントは、別の態様では、展開可能なエレメントの外側にある同心の動脈層に対し、完全閉塞を穿通しようとする、ガイドワイヤ、アテローム切除デバイス、レーザーアブレーションデバイス、及び高周波アブレーションデバイス等のデバイスが交差しないように機械的保護を提供する。例えば、
図27は、アブレーション切断チップ2710を完全閉塞120に通した回転アブレーションデバイス2700を示す。展開可能なエレメント2600が動脈壁を穿孔から保護する。完全閉塞120の通過時にアブレーションチップ2710が作動している場合には、展開可能なエレメントは、チップによる穿孔が起らないようにチップ2710よりも小さな開口部が設けられたラチスパターンを持つ比較的硬質の材料(例えば金属材料)形成されている。
【0080】
展開可能なエレメントは、別の態様では、閉塞横断デバイス(ガイドワイヤ、アテローム切除デバイス、レーザーアブレーションデバイス、及び高周波アブレーションデバイス等)が脈管壁の直ぐ近くにあるか或いは接触した場合にこれを表示することによって、脈管壁の保護を提供してもよい。例えば、展開可能なエレメントの先端又は横断デバイスの先端のいずれかが送信アンテナとして作用し、これらのうちの他方が受信アンテナとして作用する。送信アンテナは、高周波(RF)信号発生器に電気的に接続されており、受信アンテナは、各々のデバイスに配置された長さ方向に絶縁された及び/又はシールドされたリードを介して、RF信号受信回路又は検出回路に接続されている。RF近接検出に対する変形例として、近接インジケータとしてインピーダンスを使用してもよい。
【0081】
RF又はインピーダンスのいずれかに基づいたアプローチでは、比較的弱い信号は、横断デバイスが展開可能なエレメントから大きく離間されていること、例えば横断デバイスが閉塞した動脈の中央にあることを示す。比較的強い信号は、横断デバイスが展開可能なエレメントの直ぐ近くにあること、例えば内膜下空間内にあることを示す。医師は、この近接情報を使用し、横断デバイスを展開可能なエレメント内に、及び真の動脈内腔内の完全閉塞を横切って安全に且つ効果的に差し向ける。
【0082】
上文中に説明したラチス構造に対する変形例として、展開可能なエレメント2800は、
図28に示すように、一つ又はそれ以上の連続した弾性部材を含んでいてもよい。展開可能なエレメント2800は、上文中に説明したように外包含シース(図示せず)から解放されると、内膜下空間内で周方向に拡張する。
図28に示すように、展開可能なエレメント2800は、脈管壁の意図せぬ損傷が生じる可能性を低減する非外傷性チップが先端に配置された、単一の連続した予備成形された弾性ワイヤで形成されていてもよい。ワイヤは、ニッケルチタニウム、ステンレス鋼、エルジロイ 、又はMP35Nを含むがこれらに限定されない適当な弾性材料で形成されていてもよい。このワイヤ形態は、円筒体に巻き付けたほぼ正弦波パターンの屈曲部の多軸屈曲部を含んでいてもよい。円筒形形状の直径は、動脈の内径と適合するように選択してもよい。ワイヤ形態は、脈管系を通して所期の展開箇所まで前進させるために外包含シース内に配置されている場合には、比較的直線状の形体に拘束される。包含シースを引っ込めると、ワイヤ形態は上述の多軸形状をとる。
【0083】
展開可能なエレメントは、再進入デバイスを完全閉塞の先端側の真の内腔に向かって差し向けるのにも使用できる。例えば、内膜下デバイス2900は、
図29A乃至
図29Dに示すように、展開可能なアクセサリエレメント2910を備えていてもよい。
図29B及び
図29Dは、夫々、
図29A及び
図29Cの横断面図である。
図29A及び
図29Bを参照すると、内膜下デバイス2900は、展開可能なアクセサリエレメント2910とともに内膜下空間内に位置決めされた状態で示してある。展開可能なアクセサリエレメント2910は、凹所内に配置された露呈部分と、内膜下デバイス2900の内腔内の基端方向に延びる部分とを含む。
図29C及び
図29Dを参照すると、展開可能なエレメントの基端部分を前進させることによって、露呈部分を側方ポート2904から突出し、内膜下空間内で前進する。展開可能なエレメントの形状は、図示のように内膜下空間内で非外傷性的に拡張できるように、U字形状等の予備成形された形状であってもよい。展開可能なアクセサリエレメント2910は、内膜下空間に置かれた状態で、図示のように、凹状側部が真の内腔116に向いた半径方向湾曲部を形成する。凹状側部を真の内腔116に向けた状態で、
図23A乃至
図23E、
図24A乃至
図24C、及び
図25を参照して上文中に説明したように、血管内膜層を穿通して真の内腔に至るように再進入デバイスを差し向けることができる。
【0084】
閉塞除去実施例
本明細書中上文中に説明したデバイスの幾つかは、完全閉塞を完全に又は部分的に除去するために使用してもよい。場合によっては、動脈壁の内部分が除去される。
図30A乃至
図30Dは、この用途の一例を示し、送出デバイス400を使用して、内膜下デバイス300を、
図4、
図4A、
図4B、及び
図5に図示し且つこれらの図を参照して説明したのと同様に、完全閉塞120の周囲に送出する。次いで、以下に更に詳細に説明するように閉塞を除去する。
【0085】
図30Aを参照すると、送出デバイス400が完全閉塞120の直ぐ基端側に位置決めしてある。この位置でバルーン404を脈管内腔116内で膨張させ、送出チューブ414を、脈管壁118に向かって、内膜下デバイス300が血管内膜層113を進入点のところで穿通し、内膜下空間に入る配向で差し向ける。送出チューブ414が螺旋状であるため、内膜下デバイス300は、送出チューブ414を通して前進されるとき、螺旋状の軌跡をなして送出され、その結果、内膜下デバイス300は、螺旋状パターンで展開される。図示のように、送出チューブ414を通して内膜下デバイス300を前進させ、完全閉塞120の外側、血管内膜層113の外側、及び中間層115の内側に、内膜下空間に同心に位置決めする。
【0086】
図30Bを参照すると、内膜下デバイス捕捉カテーテル3010が、慢性完全閉塞120を横切って、従来のガイドワイヤ700上に及び内膜下デバイス300内に位置決めしてある。捕捉デバイス3010によって内膜下デバイス300の基端301及び先端303を捕捉し且つ回転し、これにより外径を減少し、病変部位120及び血管内膜層113を内膜下デバイス300のコイル内に収容する。
【0087】
図30Cを参照すると、この図には、先が尖った前縁を持つチューブ状切断デバイス3020を内膜下デバイス300及び捕捉デバイス3010上で前進させ、血管内膜層113と係合し、血管内膜層をその中の完全閉塞120とともに切断することが示してある。
図30Dを参照すると、この図には、切断デバイス3020を更に前進させることにより、完全閉塞及びその周囲の血管内膜層を含む病変部位を動脈の残りから切断して分離することが示してある。デバイスを動脈から基端方向に引っ込めることにより、完全閉塞を除去し、開存した真の内腔116を残す。閉塞120は、経皮的血管内アクセス箇所を通して除去でき、又は経皮的アクセス箇所を通して除去するには閉塞が大き過ぎる場合には、除去を容易にするため、手術で切開部を形成してもよい。別の態様では、閉塞の大きさを小さくするため、及びかくして経皮的アクセス箇所を通して除去するため、浸軟機構を使用し、閉塞を除去前に浸軟してもよい。
【0088】
追加として、又は別の態様として、
図31A及び
図31Bに示すように除去するため、コークスクリュー型デバイス3110を使用して完全閉塞120を掴んで引っ張ってもよい。コークスクリュー型デバイス3110は、
図30A乃至
図30Dを参照して説明したデバイスと組み合わせて使用してもよいと考えられる。これらのデバイスは、明瞭化を図るため、示してない。
図31Aを参照すると、この図には、コークスクリューデバイス3110が外シース3120とともに示してある。コークスクリューデバイス3110は、上文中に説明した方法及びデバイスによって血管内膜層113の剥離を行った後の閉塞120と係合した状態で示してある。
図31Bは、コークスクリューデバイス3110を軸線方向に引っ込めることによる閉塞120及び血管内膜層113の一部の除去を示す。
【0089】
変形例のバイパス実施例
図32A乃至
図32Eは、完全閉塞をバイパスするための変形例のシステムを示す。
図32Aを参照すると、この図には内膜下デバイス3200が展開形体で示してある。内膜下デバイス3200は、弾性ワイヤ3210を含む。この弾性ワイヤの先端形態は、正弦波状巻回部が少ないことを除き、
図28を参照して説明した弾性ワイヤ形態2800と同様である。内膜下デバイスは、更に、三日月形又は半円形の送出シャフト3220及び引き込み式拘束シース3230を含む。
図32AのA−A線に沿った断面である
図32Bでわかるように、ワイヤ3210は、半円形送出シャフト3220の凹所に載っており、このシャフトにシース3230が被せてある。変形例として、拘束シース3230が、形成したワイヤ3210を少なくとも部分的に直線状にする上で十分な剛性を備えている場合には、拘束シース3230がワイヤ3210の周囲にだけ配置されていてもよく、送出シャフト3220の凹所内に置かれていてもよい。ワイヤ3210の先端は、シャフト3220の丸みのあるチップ3222に連結されている。ワイヤ3210及び半円形シャフト3220は、ニッケルチタニウム、ステンレス鋼、エルジロイ 、又はMP35N等の弾性金属材料で形成されていてもよく、シース3230は、PTFE(例えばテフロン)でライニングしたポリエーテルブロックアミド(例えばペバックス(ペバックス(Pebax)は登録商標である)等のポリマー材料で形成されていてもよい。
【0090】
ワイヤ3210をシャフト3220に対して手前に引っ張り、シース3230をワイヤ形態上で前進させることにより、ワイヤ形態を凹所内に拘束し、デバイス3200を、外傷を生じることなく内膜下空間に通す上で適当なものにできる。デバイス3200を内膜下空間内で完全閉塞を横切って位置決めした後、シース3230をシャフト3220に対して引っ込め、ワイヤ3210の形成された部分を放出してもよい。ワイヤ形態を放出することにより、
図32Cに示すように内膜下空間内で閉塞の周囲で周方向に延長する。ワイヤ形態を内膜下空間内で完全に展開した後、シースを完全に取り出してもよい。
【0091】
図32Dに示すように、ワイヤ形態を内膜下空間内で展開し、シース3230をシャフト3220から取り外した状態で、デュアル内腔再進入送出カテーテル3250をシャフト3220上で前進させてもよい。
図32DのA−A線に沿った断面図である
図32Eでわかるように、送出カテーテル3250は、三日月形又は半円形の内腔3254を含む。この内腔には、この内腔を通って延びるシャフト3220が収容される。送出カテーテル3250は、更に、再進入デバイス3240を収容する円形の内腔3252を含む。再進入デバイス3240は、円形の内腔3252を通って延びる。送出カテーテル3250は、ポリエーテルブロックアミド(例えばペバックス(ペバックス(Pebax)は登録商標である)等のポリマー材料で形成されたデュアル内腔押し出し体で形成されていてもよく、再進入デバイス3240は、本明細書中上文中に説明した再進入デバイスと同じであってもよいし同様であってもよい。
【0092】
別の態様では、送出カテーテル3250は、細長い内チューブが細長い外チューブ内に配置された二つの同軸のチューブを含んでいてもよい。内チューブは、再進入デバイスを収容するように形成されている。内チューブと外チューブとの間に形成された環状内腔は、半円形の送出シャフト3220を収容するように形成されている。送出カテーテル3250の先端で、内チューブが外チューブの内側に、熱形成プロセスを使用して結合されていてもよい。この場合、内チューブの外周の一部が外チューブの内周に熱で融着され、かくして、熱で形成した領域に亘り、
図32Eに示すのと同様の断面を形成する。内チューブ及び外チューブは、熱形成領域以外は同軸のままであり、融着されていない。
【0093】
上文中に説明したように、ワイヤ形態の凹状側部が真の内腔に面し、ワイヤ3210がシャフト3220のチップ3222に固定的に取り付けられた状態で、半円形シャフト3220の凹状の側部もまた真の内腔に面する。この特徴は、再進入デバイスを真の内腔に向かって差し向けるのを容易にするのに使用してもよい。例えば、送出カテーテル3250の内腔3252が、半円形シャフト3220と噛み合う即ちキー止めする形状を備えているため、及び半円形シャフト3220の凹状の側部が真の内腔に向かって差し向けられているため、再進入デバイス内腔3252もまた同様に真の内腔に向かって差し向けられる。これに留意し、
図23A乃至
図23Eを参照して説明した再進入デバイス配向方法のうちの任意の方法を使用してもよい。
図32Dに示すように、半円形シャフト3220の先端は、凹状の側部が真の内腔に面する所定の湾曲を有し、これを湾曲した再進入デバイス3240と協働して使用できる。配向が定められた後、再進入デバイス3240が血管内膜層113を穿通し、図示のように真の内腔に再度進入する。
【0094】
内膜下ガイドカテーテル実施例を通して導入した配向デバイス
図33A乃至
図33Eは、配向デバイス3330を導入するために一つ又はそれ以上の内膜下ガイドカテーテル3310/3320を使用する実施例を概略に示す。これらの図は、例示の目的で脈管壁の外層を切除したウィンドウを示す。幾つかの特徴において変形例のバイパス実施例であるこの実施例では、上文中に説明したように鈍く剥離することにより内膜下空間を安全に横切るため、ガイドワイヤ内腔(図示してある)を備えた又は備えていない、球状チップ310(例えば直径が0.965mm(0.038インチ)のオリーブ状溶接ボール)を持つ内膜下横断デバイス300を使用する。
【0095】
図33Aに示すように、内径が横断デバイス300のシャフトの外径(例えば0.356mm乃至0.406mm(例えば0.014インチ乃至0.016インチ))よりも僅かに大きい(例えば0.457mm(0.018インチ))の第1(内)シース3310を、横断デバイス300上で及び内膜下空間を通して押したり前後に回転させたりすることによって、閉塞(図示せず)の先端と隣接して配置された球状チップ310まで前進させてもよい。ひとたび所定位置に置いた後、
図33Bに示すように、外径が例えば1.27mm(0.050インチ)で内径(例えば1.016mm(0.040インチ))が内シース3310の外径(例えば0.940mm(0.037インチ))よりも僅かに大きく且つチップ310の外径よりも僅かに大きい第2(外)シース3220を、内シース3310上で押したり前後に回転させたりすることによって、球状チップ310まで前進させてもよい。
図33Bでは、切除したウィンドウは、例示の目的のため、外シース3320の先端部分に示してある。外シース3320がこの位置に配置された後、内膜下横断デバイス300及び内シース3310を、外シースを通して基端方向に取り外す。外シース3320は、内シース3310を必要とせずに内膜下横断デバイス300上で前進させることができるが、内シース3310は切開部直径を段階的に増大することにより移動を容易にする。内シース3310は、非外傷性チップ(例えば、未強化の40Dポリエーテルブロックアミド)を持つ編成強化ポリマー構造(例えば、55Dポリエーテルブロックアミド)で形成されていてもよい。外シース3320は、これよりも剛性のポリマー(例えば、72Dポリエーテルブロックアミド)で形成されていてもよく、随意であるが、編成複合構造を含んでいてもよい。編成強化構造は、押し力及びトルクを高め、シース3310/3320の回転により、内膜下経路を横断し剥離する性能を高くするものと考えられる。
【0096】
外シース3320が所定の場所に置かれており、内膜下空間内に閉塞を横切る保護された経路を提供した状態で、配向デバイス3330を、
図33Cに示すように、シース3320内にその先端まで挿入する。この図では、切除したウィンドウは、例示の目的のため、外シース3320の先端部分に示してある。
図33Cは、配向エレメントが
収縮した送出形体の配向デバイス3330を示し、
図33Dは、配向エレメントを拡張した展開形体の配向デバイス3330を示す。
【0097】
図33Dに示す配向デバイス3330は、
図32Aに示す配向デバイス3200と同様である。配向デバイス3330は、ワイヤ3334が内部に配置されたチューブ状シャフト3332を含んでいてもよい。このチューブ状シャフト3332は、押す上での剛性を追加するためにワイヤリボン(例えばSST)を埋設したポリマーチューブで形成されていてもよい。チューブ状シャフト3332は貫通内腔を備えている。この内腔の先端は、配向エレメント3336の基端側に配置された側方に面する出口ポート3338に対して所定角度で差し向けられている。ワイヤ3334の先端には、配向エレメント3336が設けられていてもよい。配向エレメント3336は、例えば、予備成形した正弦波形状を備えていてもよく、これをワイヤ形態と呼ぶ。ワイヤ3334及びワイヤ形体3336は、例えばニチノール等の超弾性合金で形成されていてもよく、ワイヤ形体3336は、ヒートセットによって賦形されていてもよい。配向エレメント3336を展開するため、ワイヤ形態3336全体が内膜下空間内に入るまで、外シース3320を基端方向に引っ張り、これとは逆にシャフト3332を先端方向に押す。
【0098】
側方ポート3338を配向エレメント3336の平面に対して直角に差し向ける。この構成では、側方ポート3338は、脈管の真の内腔116に向かって差し向けられるか或いは、脈管の真の内腔116から逆方向に180°の角度で差し向けられる。放射線透過写真術による可視化又は本明細書中上文中に説明した他の技術を使用し、ポート3338が真の内腔116に向かって差し向けられているか或いは真の内腔116から遠ざかる方向に差し向けられているのかを確認してもよい。ポート3338が真の内腔116から遠ざかる方向に差し向けられている場合には、配向デバイスを引っ込め、180°回転し、ポート3338を真の内腔116に向かって差し向けるように再展開する。次いで、本明細書中に説明した再進入デバイスをチューブ状シャフト3332の内腔を通して前進し脈管壁通して真の内腔116に入れる。
【0099】
図33Dに示す配向デバイス3330に対する変形例として、
図33Eに示す配向デバイス3340を実質的に同じ方法で使用してもよい。配向デバイス3340は、外チューブ3342及び内チューブ3344を含む。外チューブ3342は、超弾性合金(例えばニチノール)で形成されていてもよく、外チューブ3342の先端部分は、図示のように平面内で外方にヒンジのように屈曲する二つのウィングを形成するためにスロットを形成するように切断されていてもよい(例えばレーザー切断技術を使用する)。内チューブ3344は、外チューブ3342の内腔を通って延びており、先端が外チューブ3342の先端に取り付けられている。内チューブ3344は、チューブ状シャフト3332と設計及び機能が同様であり、再進入デバイスを上文中に説明したように受け入れる先端側ポート3348を備えている。別の態様では、以下に更に詳細に説明するように、フラップポートを使用してもよい。
【0100】
内膜下横断デバイス又はガイドワイヤ上に導入された配向デバイスの実施例
図34A乃至
図34Hは、内膜下横断デバイス又はガイドワイヤを使用して配向デバイス3400を導入する実施例を概略に示す。この実施例では、配向デバイス3400は、内膜下横断デバイス又はガイドワイヤをその内部に収容し、かくして上文中に説明した内膜下ガイドカテーテルに対する必要をなくすように設計されている。特に
図34Aを参照すると、配向デバイス3400の先端部分の詳細図が示してある。
図34B(1)は、
図34AのA−A線に沿った断面図であり、
図34B(2)は、
図34AのB−B線に沿った断面図である。配向デバイス3400は、先端が配向エレメント3440に連結された細長い外チューブシャフト3410を含む。細長い内チューブシャフト3420が外シャフト3410及び配向エレメント3440を通って延びている。内シャフト3420の先端は、先端非外傷性チューブ状チップ3450と同様に、配向エレメント3440の先端に連結されている。デバイスを滑らかに通過させるため、低摩擦ライナ3430が内シャフト3420の内腔に亘って設けられていてもよい。
【0101】
外シャフト3410は、例えば、ポリマーチューブ3412を含んでいてもよく、このポリマーチューブ3412は、埋設した編成体又はワイヤリボンで強化してあってもよい。内シャフト3420は、金属チューブ3422(例えばニチノール)で形成されていてもよく、中実のチューブ状基端セグメント及び可撓性及びトルク伝達性を追加するための螺旋状にカットした先端セグメント3424を含む。内シャフト3420の先端部分には、内方に傾斜したフラップ3426が設けられていてもよい。
図34B(1)でわかるように、フラップ3426は内シャフト3420の内腔内に延び、(1)前方に押圧されたデバイス(例えば再進入デバイス)を、配向エレメント3440と隣接した内シャフト3420の側方ポート3425の外に差し向け、(2)後方に押圧されたデバイス(例えば内膜下横断デバイス又はガイドワイヤ)を内シャフト3420の基端セグメント3422の内腔内に差し向けると同時に、後方に押圧されたデバイスが側方ポート3425から出ないするように作用する。通過するデバイスにフラップ3426の縁部が引っ掛からないようにフラップ3426の端部を受け入れるため、半円形スロット3428が形成されていてもよい。カットは、レーザーカッティング等によって形成されてもよく、フラップは、ヒートセットによって内方に押圧されていてもよい。
【0102】
図34Cを参照すると、内シャフト3420の全長は、冠状動脈の用途では約135cmであり、螺旋状にカットした先端セグメント3424の長さは、例えば35cmである。内シャフト3420の先端部分の詳細図である
図34Dを参照すると、チューブを平らに置いた場合のカットパターンが示してある。この図に示す寸法の単位は、特段の表記がない限り、インチである。螺旋状カット3424は、側方ポート3425及びフラップ3425の手前で終端していてもよい。上文中に説明したようにデバイスを後方に押圧したとき、フラップ3426がヒンジのように作動できるように、ヒンジスロット3427が設けられていてもよい。半円形スロット3428は、フラップの端部を上文中に説明したように受け入れるために設けられていてもよい。例えばピン止めや溶接によって配向エレメント(図示せず)の先端に連結するため、穴3429を使用してもよい。
【0103】
図34A及び
図34Eを参照すると、配向エレメント3440は、金属チューブ(例えばニチノール)で形成されていてもよい。この金属チューブにはカットが形成されており、二つのウィング3442A及び3442Bを形成する。
図34Eには、チューブを平らに置いた場合の配向エレメント3440のカットパターンが示してある。この図に示す寸法の単位は、特段の表記がない限り、インチである。カットは、二つの別々のウィング3442A及び3442Bを形成するように設けられており、ウィング毎に三つのヒンジ点3443、3444、及び3445が設けられている。配向エレメント3440の基端3446は、外シャフト3410のフレア状の端部に連結され、先端3448は内シャフト3420の先端及びチューブ状チップ3450の基端に連結される。基端3446を先端3448に向かって変位することにより、基端ヒンジ3445及び先端ヒンジ3443が外方に撓み、各ウィング3442を外方に延長する。各ウィング3442の頂部には、中央ヒンジ3444が設けられている。
【0104】
先端チップ3450は、比較的軟質のポリマーチューブセグメントで形成されていてもよい。随意であるが、放射線不透過性材料が含まれていてもよい。内ライナ3430は、高密度ポリエチレン(HDPE)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の低摩擦材料で形成されたチューブ状延長部3432即ち内部コーティングを含んでいてもよい。
【0105】
図34F乃至
図34Hは、上文中に説明した配向デバイス3400の使用方法を概略に示す。上文中に言及したように、配向デバイス3400は、内膜下横断デバイス又はガイドワイヤ上で前進させるように設計されているが、内膜下ガイドカテーテルを横断デバイス又はガイドワイヤに加えて、又はその代りに使用してもよい。例示の目的のため、配向デバイス3400を内膜下横断デバイス1330上で示す。内膜下横断デバイス1330は、拡張自在であり且つ
収縮自在のチップ1334を細長いシャフト1332の先端に備えている。配向デバイス3400は、従来のガイドワイヤ(図示せず)、別の内膜下デバイス、又は閉塞を横切って内膜下空間内で前進させた同様の大きさの別のデバイス上で前進させてもよい。
収縮可能なチップを持つデバイス(例えば、内膜下デバイス1330)又は拡大チップを持たないデバイスを使用することにより、配向デバイス3400の中央内腔を通してこれらのデバイスを取り出すことができる。次いで、同じ内腔を通して再進入デバイスを前進させることができ、かくして単一の内腔を二つの目的で使用し、デバイスの輪郭を保存する。
【0106】
図34Fを参照すると、内膜下デバイス1330が内膜下空間内で閉塞を横切って延び、チップ1334が閉塞の先端と隣接したとき、配向デバイス3400を内膜下横断デバイス1330上で後方に(
図34B(1)に示す方向に)押圧してもよく、横断デバイス1330のシャフト1332がフラップ3426を外方に逸らし、配向デバイス3400の中央内腔を通して延長する。配向デバイス3400は、次いで、配向デバイス3400の先端が閉塞の先端と隣接するまで、内膜下横断デバイス1330上で前進させることができる。次いで、内膜下横断デバイス1330のチップ1334を
収縮し、基端方向に引っ込める。
【0107】
図34Gを参照すると、この図には、配向エレメント3440を拡張させてウィング3442A及び3442Bを図示のように実質的に平らに延長することが示してある。配向エレメント3440の拡張及び収縮を行うため、作動機構3460を使用して外シャフト3410を押し、内シャフト3420を引っ張ることを互いに対して行うことによって拡張し、又は外シャフト3410を引っ張り、内シャフト3420を押すことを互いに対して行うことによって収縮させる。作動機構は、例えば、外シャフト3410の基端に固定的に連結された固定ハンドル3462と、内シャフト3420の基端に回転自在に連結された回転自在のハンドル3464と、固定ハンドル3462のねじ山(図示せず)と係合する、回転自在のハンドル3464に固定的に連結された、ねじ山を備えたシャフトとを含んでいてもよい。回転自在のハンドル3464は、内シャフト3420の基端に設けられたカラー(図示せず)と係合してもよい。カラーは、相対回転を許容するが、相対的軸線方向移動を阻止し、及び従って、回転自在のハンドル3464を回転させたとき、内シャフト3420を軸線方向に変位させる。
【0108】
図34Gを連続して参照し、
図34Hを追加に参照すると、側方ポート3425は、脈管の真の内腔116に向かって差し向けられるか或いは脈管の真の内腔116から逆方向に180°の角度で差し向けられているかのいずれかである。放射線透過写真術による可視化又は本明細書中に説明した他の技術を使用し、ポート3425が真の内腔116に向かって差し向けられているのか或いは真の内腔116から遠ざかる方向に差し向けられているのかを確認する。ポート3425が真の内腔116から遠ざかる方向に差し向けられている場合には、配向デバイス3400を引っ込め、180°回転させ、再び展開し、ポート3425を真の内腔116に差し向ける。次いで、再進入デバイス3600を配向デバイス3400の中央内腔を通して前方に(
図34B(1)に示す方向に)押圧してもよい。例示の目的で再進入デバイス3600を示すが、本明細書中上文中に説明したように他の再進入デバイスを使用してもよい。再進入デバイス3600を配向デバイス3400の中央内腔内に前進させるとき、フラップ3426により、再進入デバイス3600は側方ポート3425の外に差し向けられる。再進入デバイス3600を更に前進させることによって脈管壁と係合させ、再進入デバイス3600のチップの作用(例えば回転アブレーション)によって脈管壁を穿通し、閉塞120の先端側の脈管の真の内腔116に進入する。
【0109】
図34I及び
図34Jを更に参照すると、これらの図では変形例の再進入デバイス3800が使用されている。この再進入デバイス3800の設計は、
図38A及び
図38Bを参照して更に詳細に説明する。上文中に説明したように側方ポート3425を真の内腔116に向かって差し向けた状態で、再進入デバイス3800を配向デバイス3400の中央内腔を通して前方に押圧する。再進入デバイス3800を配向デバイス3400の中央内腔内に前進させるとき、フラップ3426により再進入デバイス3800の先端を側方ポート3425に差し向ける。再進入デバイス3800を更に前進させ且つ回転することにより、チップを脈管壁と係合させ、ここにねじ込む。再進入デバイス3800のチップが脈管壁にねじ込まれ、真の内腔116内に延びる状態で、真の内腔116内への経路を決定するため、多くの技術を使用できる。例えば、再進入デバイスを回転させないで基端方向に引っ張ってもよい。これによって、脈管壁の一部を除去し、ガイドワイヤ又はコアワイヤを通して前進させることができる穴を形成する。別の態様では、再進入デバイス3800のチップを追加に回転させることによって脈管壁に穴を形成してもよい。別の変形例として、再進入デバイス3800のチップは、再進入デバイス3800の内腔に挿入したガイドワイヤやコアワイヤ等の後のデバイスを脈管壁を通して前進させ、壁を穿孔又は穿通して真の内腔116内に至らしめるとき、脈管壁を保持するのに役立つ。例示として、
図34Jは、再進入デバイス3800を通って真の内腔116内に延びるガイドワイヤ700(又は移動自在のコイルワイヤ)を示す。技術に関わらず、かくして、内膜下空間から閉塞120の先端側の真の内腔116内への経路が形成される。
【0110】
平らな配向エレメントを使用する配向方法
上文中に説明した配向デバイス(例えば3330、3340、3400)のうちの幾つかは、再進入デバイスを送出するための側方ポートと関連する実質的に平らな配向エレメントを有する。側方ポートは、全体として、配向エレメントの平面に対して直角に配向されている。この構成では、側方ポートは、脈管の真の内腔に向かって差し向けられているか或いは脈管の真の内腔から逆方向に180°の角度で差し向けられているかのいずれかである。本質的には、配向デバイスは、側方ポートが面する方向の数を、360°の自由度から2°の自由度に減少する。以下、ポートが真の内腔に向かって差し向けられているのか或いは真の内腔から遠ざかる方向に差し向けられているのかを決定し、かくして2°の自由度を1°の自由度に減少する方法を説明する。一般的には、側方ポートが真の内腔から遠ざかる方向に差し向けられている場合には、配向デバイスを引っ込め、180°回転し、再度展開して側方ポートを真の内腔に向かって差し向ける。次いで、本明細書中上文中に説明した再進入デバイスを、側方ポートを通して、脈管壁を通して、及び真の内腔内に前進する。
【0111】
側方ポートを真の内腔に向かって差し向ける一つの方法は、心臓100の湾曲を使用する工程を含む。概括的に述べると、左前下行動脈110を含む冠動脈は、
図35Aに示すように、心臓100の外側の湾曲に従う。動脈110の入口に着座したガイドカテーテル200を介して冠動脈110に挿入した配向デバイス(例えば3330、3340、3400)は、内膜下空間内で及び閉塞120に亘って、全体として動脈110の外側湾曲に従う。この場合、
図35Bでわかるように、真の内腔116は、動脈110の湾曲の内側に向かって置かれ、及びかくして配向デバイス3400の内側湾曲(即ち凹状の側部)に向かって置かれる。かくして、配向デバイス3400の側方ポートは、湾曲の凹状の側部に向かって差し向けられる。これにより、側方ポートを真の内腔116に向かって予想可能な態様で差し向ける。配向デバイスに設けられた一つ又はそれ以上の放射線不透過性のマーカーを、放射線透過写真術による可視化を使用して、側方ポート又は配向デバイスに挿入した放射線不透過性デバイス(例えばガイドワイヤ)と関連して見ることによって、側方ポートをこのように差し向けることができる。これに加え、又は変形例として、配向デバイスに予め湾曲を形成してもよい。これは、配向デバイスが、動脈の湾曲に関し、予め形成した湾曲の凹状の側部に側方ポートが配置されるように自然に配向されるように、又は「キー止め」されるように行われる。これに加え、又は変形例として、放射線不透過性デバイスが、少なくとも部分的に周方向に延び、動脈の湾曲の形状をとり、真の内腔がその凹状の側部に向かって差し向けられるように、放射線不透過性デバイス(例えばガイドワイヤ700)を、内膜下デバイス(例えば横断デバイス300又は配向デバイス3400)を介して、
図35Cに示すように、内膜下空間内に大きく前進してここに集める。
【0112】
変形例の再進入デバイス
図36A乃至
図36Gを参照すると、これらの図には、変形例の再進入デバイスが概略に示してある。これらの実施例は、上文中に説明した配向デバイスのうちの任意のデバイスで使用できるが、上文中に説明した配向デバイス3330、3340、3400で使用するのに特に適している。一般的には、以上の再進入デバイスの各々は、例えば冠動脈の用途について、直径が0.3556mm(0.014インチ)のプロファイルを持つ従来のガイドワイヤと同様の大きさであってもよい。更に、一般的には、以上の再進入デバイスの各々は、血管内膜層を穿通して脈管の真の内腔に進入するための機構として回転アブレーションを使用する。
【0113】
特に
図36A及び先端の詳細断面図である
図36Bを参照すると、再進入デバイス3610は、先端方向にテーパした駆動シャフト3612を含む。このシャフトは、例えばステンレス鋼やニチノール等の合金で形成されていてもよい。再進入デバイス3610は、冠動脈の用途に対し、直径が0.3556mm(0.014インチ)で長さが150cmの公称プロファイルを備えていてもよい。シャフト3612の基端の直径は0.3556mm(0.014インチ)であり、約10.16cm(約4インチ)に亘って、0.3556mm(0.014インチ)から0.1524mm乃至0.2032mm(0.006インチ乃至0.008インチ)まで先端方向にテーパしている。アブレーションチップ3620がシャフト3612の先端に鑞付け技術又は溶接技術によって連結されていてもよい。シャフト3612のチップ3620の直ぐ基端側は、脈管壁を通って脈管の真の内腔内に穿通した後、チップ3620を撓ませることができるのに十分な可撓性を備えて形成されている。かくして、反対側の脈管壁を穿通しないようにする。アブレーションチップ3620は、ボールキャップ3624を溶接した、ステンレス鋼、プラチナ、又はプラチナ−イリジウム等の合金でできたチューブ3622を含んでいてもよい。チューブ3622は、内径が約0.1778mm(0.007インチ)であり、外径が約0.2667mm(0.0105インチ)である。コンチネンタルダイヤモンド工具社(インディアナ州ニューヘブン)から入手できる従来の技術を使用して、600グリットのダイヤモンドコーティング等の耐磨耗性コーティング3626をチューブ3622の外面に約0.0381mm(約0.0015インチ)の厚さで適用してもよい。
【0114】
図36C及び先端の詳細断面図である
図36Dを参照すると、再進入デバイス3610は、更に、シャフト3612のテーパした先端部分上に配置された先端コイル3630を含む。螺旋状のコイル3630は、ステンレス鋼、プラチナ、又はプラチナ−イリジウム製のワイヤを含む。ワイヤの直径は、約0.0762mm乃至0.1016mm(約0.003インチ乃至0.004インチ)である。螺旋状コイル3630は、全体として、シャフト3612のテーパ部分の可撓性を損なうことなく、トルク伝達性を向上する。
【0115】
図36E及び先端の詳細断面図である
図36Fを参照すると、再進入デバイス3610は、変形例では、例えば、外径が0.3556mm(0.014インチ)の1×7又は1×19構造のケーブルシャフト3614を含む。シャフト3614構造は、全体として、少なくとも一つの方向に高いトルク伝達性を提供すると同時に可撓性を向上する。
【0116】
図37を参照すると、回転駆動ユニット3700が斜視図で示してある。回転駆動ユニット3700は、
図36A乃至36Gに示す再進入デバイス3610で使用するのに特に適しているが、本明細書中上文中に説明した他の再進入デバイスで使用してもよい。全体として、回転駆動ユニット3700は、再進入デバイスの回転及び前進を独立して行う。回転はモータによって行われ、前進は、前進スリーブの部分ループを短くしたり長くしたりすることによって行われる。前進スリーブは、一端だけが連結されており、モータ駆動なしで前進/引っ込めを行うことができる。
【0117】
回転駆動ユニット3700はベース3710を含み、このベースに二つの垂直取り付けプレート3712及び3714が取り付けられている。モータ3720がプレート3714に取り付けられており、オフセットギヤ3722によって中空駆動シャフト3724とリンクしている。中空ピンバイス又はコレット等のロック機構3726が中空駆動シャフト3724に固定されている。モータ3720を適当な電源によって賦勢することにより、再進入デバイス3610を回転させるように、再進入デバイス3610の基端シャフト3612がロック機構3726に固定されていてもよい。前進スリーブ3730が垂直プレート3714の後側に固定的に取り付けられており、再進入デバイスシャフト3612を内部に受け入れるための中空駆動シャフト3724と同軸に整合していてもよい。前進スリーブ3730は、制限ブロック3716の周囲で半ループをなして延びており、垂直プレート3714及び3712の穴を通って摺動する。前進スリーブ3730は回転しないけれども、再進入デバイス3610の回転シャフト3612を支持し、及びかくして治療を行う医師が手で保持できる。前進スリーブ3730を前進させたり引っ込めたりすることにより、その半ループを短くしたり長くしたりでき、及びかくして再進入デバイス3610をその回転時に前進させたり引っ込めたりできる。前進スリーブ3730は、これによって、再進入デバイス3610の先端チップ3620が組織と係合したときの触感を、その回転駆動によって邪魔されることなく、提供する。
【0118】
図38A及び
図38Bを参照すると、別の変形例の再進入デバイス3800が概略に示してある。
図38Bは、平らに置いた場合のチップ3820の
図38Aの「A」の詳細図であり、カットパターンの一例を示す。この図に示す寸法の単位は、特段の表記がない限り、インチである。再進入デバイス3800は、例えばステンレス鋼やニチノール等の合金でできたチューブ状シャフト3810を含む。再進入デバイス3800は、例えば、従来の0.3556mm(0.014インチ)のガイドワイヤをその中に受け入れるため、直径が約0.5588mm(約0.022インチ)で長さが150cmの公称プロファイルを備えていてもよい。シャフト3810は、可撓性を提供するため、先端螺旋カット区分3812を備えていてもよい。螺旋状カットパターンは、従来のレーザーカット技術によって形成されていてもよく、これに続いて電気研磨又は他の適当な仕上げ技術が施される。夫々の巻回部間の隙間は、先端にいくにつれて大きくなり、図示のように、先が尖った先端3822で終端する。隙間が先端3822から徐々に小さくなることにより、上文中に説明したように、チップ3820を脈管壁にねじ込んでこれを通過する際に組織を良好に切断するのに役立つばかりでなく、可撓性が向上する。
【0119】
以上から、本発明は、例示の非限定的実施例において、慢性完全閉塞を治療するためのデバイス及び方法を提供する、ということは当業者に明らかになるであろう。更に、本発明は、本明細書中に記載し且つ考えられた特定の実施例以外の様々な形態で実施してもよいということは当業者には理解されよう。従って、特許請求の範囲に記載した本明細書の範囲及び精神から逸脱することなく、形態及び詳細を様々に変更してもよい。