(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る内視鏡システムの第1実施形態を、
図1から
図12を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る内視鏡1の全体図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る内視鏡1の挿入部10の先端部の断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る内視鏡1はいわゆる軟性の内視鏡で、長尺の挿入部10と、操作部30と、駆動ワイヤ(軸状部材)40と、突出可能部50とを備えている。操作部30は、挿入部10の基端部に取付けられている。駆動ワイヤ40は、挿入部10に形成された第一のチャンネル(チャンネル)11内に挿通されている。突出可能部50は、挿入部10の先端部に設けられている。
【0018】
図1に示すように、挿入部10は全体として円柱状に形成され、先端硬質部14と、湾曲部15と、可撓管部16とを有している。先端硬質部14は、挿入部10先端側に設けられている。湾曲部15は、先端硬質部14の基端側に取付けられ、湾曲操作可能に構成されている。可撓管部16は、湾曲部15の基端側に取付けられている。
先端硬質部14の先端面(外面)14aには、ライトガイド17の先端部、及び不図示のCCDを有する撮像ユニット18が外部に露出した状態で設けられている。
【0019】
挿入部10には前述の第一のチャンネル11、及び第二のチャンネル12が形成され、これらチャンネル11、12の先端部は、先端硬質部14の先端面14aに開口している。チャンネル11、12は、挿入部10の長手方向Dに延び、チャンネル11、12の基端部は操作部30まで延びている。
【0020】
図2に示すように、第一のチャンネル11は、先端面14aに設けられた円筒状の口金21、及び、口金21の基端側に接続されたチューブ22の内周面で構成されている。
口金21には、口金21の内周面から突出した縮径部21aが口金21の全周にわたり形成されている。口金21及び縮径部21aは、ステンレス鋼等の金属により一体に形成されている。
チューブ22は、多条コイルで形成されている。チューブ22はこの他、例えば、密巻きされたコイルや、多条コイル、そして樹脂製チューブ等で形成されてもよい。チューブ22の先端部は、口金21と縮径部21aとの接続部分に形成された段部に、接着剤や溶接等により固定されている。
図示はしないが、第二のチャンネル12はコイルなどのチューブの内周面で構成されている。
【0021】
駆動ワイヤ40は、金属製の単線又は撚り線等の可撓性を有する材料で形成されている。駆動ワイヤ40は、第一のチャンネル11内に、挿入部10に対して長手方向Dに進退可能に挿通されている。駆動ワイヤ40の外径は、チューブ22の内径、及び縮径部21aの内径よりもわずかに小さい。
駆動ワイヤ40の基端部は、操作部30まで延びている。
【0022】
口金21の先端部には、前述の突出可能部50が取付けられている。突出可能部50は、
図2に示すように、固定部51と、シャフト(移動部)52と、連結部53とを有している。固定部51は、口金21の先端部に水密に取付けられている。シャフト52は、先端が、口金21内に外部に露出した状態に設けられている。連結部53は、固定部51とシャフト52とを水密に連結する
固定部51及び連結部53は、シリコーン等の弾性的に変形可能な材料で円板状に一体に形成されている。連結部53の中央部には、長手方向Dに貫通する貫通孔53aが形成されている。
シャフト52は、ステンレス鋼等の金属や熱可塑性樹脂により長手方向Dに延びる棒状に形成されている。シャフト52は連結部53よりも硬い。本実施形態では、シャフト52の先端部は連結部53よりも先端側に突出し、シャフト52の基端部は連結部53よりも基端側に突出している。シャフト52及び連結部53に外力が作用しない自然状態において、シャフト52の先端部は先端硬質部14の先端面14aよりも先端側に突出している。
口金21と固定部51との間、連結部53の貫通孔53aとシャフト52との間は、公知の接着剤等により水密に接合されている。
【0023】
シャフト52と駆動ワイヤ40とは長手方向Dに沿った同一の軸線上に配置されている。シャフト52と駆動ワイヤ40とは離間可能であるが、挿入部10に対して駆動ワイヤ40を先端側に移動させた(押込んだ)ときには、シャフト52の基端部に駆動ワイヤ40の先端部が接触する。
【0024】
図示はしないが、湾曲部15には、長手方向Dに並べて配置されるとともに互いに揺動可能に接続された複数の湾曲駒が内蔵されている。これらの湾曲駒のうち最も先端側に配置されたものに、操作ワイヤの先端部が固定されている。
【0025】
図1に示すように、操作部30を構成する操作部本体31の先端側には、鉗子口32が設けられている。第二のチャンネル12の基端部は、鉗子口32に開口している。
操作部本体31の基端側には、前述の操作ワイヤを操作するためのアングルノブ33、図示しない光源、モニタや、前述の撮像ユニット18等を操作するためのスイッチ34、及び、駆動ワイヤ40を操作するためのレバー35が設けられている。
アングルノブ33を操作することで、挿入部10の湾曲部15を所望の方向に湾曲させることができる。
モニタと撮像ユニット18とは、挿入部10内に挿通された図示しない電線により電気的に接続されている。
【0026】
図3は、操作部30の要部の断面図である。
図3に示すように、レバー35は、レバー35の長手方向の中間部に設けられたピン36を介して操作部本体31に接続されている。レバー35の第一端部35aには不図示の孔が設けられていて、駆動ワイヤ40の基端部は、この孔に挿通された状態で孔の周方向に回転可能にレバー35の第一端部35aに接続されている。
チューブ22の基端部は、レバー35の第一端部35aの近傍まで延びている。
【0027】
このように構成された内視鏡1は、レバー35の第二端部35bを使用者が指等で操作することにより、レバー35をピン36周りに回転させることができる。
チューブ22の基端部にレバー35の第一端部35aを接近させると、
図4に示すように、チューブ22に対して駆動ワイヤ40が先端側に移動して押込まれ、シャフト52の基端面に駆動ワイヤ40の先端面が接触する。駆動ワイヤ40をさらに押込むと、駆動ワイヤ40の先端部でシャフト52の基端部を先端側に押すことでシャフト52が先端側に移動する。その結果、シャフト52が挿入部10の先端面14aから挿入部10の外側に向かうように移動して、内視鏡1の先端に突出するともに、連結部53が弾性的に変形する。以後、この状態を「突出状態」という。
【0028】
本実施形態では、チューブ22が多条コイルで形成されているので、駆動ワイヤ40を押込んだときにチューブ22が伸びにくい。したがって、基端側においてチューブ22に対して駆動ワイヤ40を押込んだ長さと先端側においてチューブ22に対して駆動ワイヤ40が移動する長さとがほぼ等しくなり、駆動ワイヤ40で突出可能部50のシャフト52を安定して操作することができる。
【0029】
口金21は、駆動ワイヤ40を先端側に押込んだときにシャフト52の基端部を駆動ワイヤ40の先端部が押すようにシャフト52の位置を決める位置決め部として機能する。
シャフト52が突出状態になったときに、長手方向Dにおいてシャフト52の一部と口金21の一部とが重なることが好ましい。このように構成することで、突出状態のシャフト52が口金21、すなわち先端硬質部14と一体となって硬くなり、シャフト52が長手方向Dに対して傾くように倒れにくくなる。
【0030】
一方で、チューブ22の基端部からレバー35の第一端部35aを離間させると、
図2に示すようにチューブ22に対して駆動ワイヤ40が基端側に移動する(引き戻される)とともに、連結部53が自身の弾性力により変形して、固定部51及び連結部53が円板状に戻る。シャフト52が、挿入部10の先端面14aから挿入部10の内側に向かうように基端側に移動して退避状態になり、駆動ワイヤ40とシャフト52とが離間する。
このように、レバー35を操作することで、シャフト52を長手方向D、すなわち先端面14aに直交する方向に移動させることができる。
【0031】
次に、以上のように構成された内視鏡1の作用について、大腸内で手技を行う場合を例にとって説明する。
図5は、内視鏡1の作用を説明する図である。
患者の体外においてレバー35を操作し、駆動ワイヤ40を引き戻してシャフト52を退避状態にする。駆動ワイヤ40とシャフト52とを離間させておく。
操作部30のスイッチ34を操作して光源を動作させると、光源から発せられた照明光はライトガイド17に導かれて挿入部10の前方を照明する。撮像ユニット18で取得された挿入部10の前方の画像は、モニタに表示される。使用者はモニタに表示された画像を確認しながら、
図5に示すように内視鏡1の挿入部10を患者の肛門を通して大腸P1内に挿入する。
【0032】
大腸に沿って挿入部10を挿入し、必要に応じてアングルノブ33を操作して湾曲部15を湾曲させる。湾曲部15を湾曲させたり可撓管部16が曲がったりすることで、第一のチャンネル11に対する駆動ワイヤ40の長手方向Dの位置が移動することがある。この場合であっても、駆動ワイヤ40とシャフト52とが離間しているため、シャフト52が駆動ワイヤ40に押されることが抑制される。
突出可能部50は挿入部10の先端面14aに水密に取付けられているため、体液等が第一のチャンネル11内に入ることはない。
【0033】
挿入部10の先端側が大腸P1内に挿入されたら、レバー35の第二端部35bを操作して駆動ワイヤ40を先端側に押込み、シャフト52を突出状態にする。湾曲部15を湾曲させる等することで、シャフト52の先端部を大腸P1の内面に形成されたヒダP2に押しつけてヒダP2の高さを低くする。撮像ユニット18で、低くしたヒダP2の裏側を撮像ユニット18で観察する。ヒダP2の裏側は通常は観察しにくいが、このようにシャフト52で押しつけることで観察が可能になる。
必要に応じて、鉗子口32から第二のチャンネル12を通して鉗子等の処置具W1を大腸P1内に挿入し、適切な処置を行う。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る内視鏡1によれば、挿入部10の先端面14aに突出可能部50が設けられている。患者の体外においてシャフト52を退避状態にしておき、挿入部10を患者に挿入することで、挿入部10の挿入時に患者に与える負担を低減させることができる。挿入部10が観察や処置の対象部位に達したときに、シャフト52を突出状態にしてシャフト52で大腸P1のヒダP2等を押しつける。これにより、内視鏡1で対象部位を観察しやすくすることができる。
突出可能部50は挿入部10の先端面14aに水密に取付けられているため、体液等が第一のチャンネル11内に入らず、手技で使用した後で第一のチャンネル11内を洗浄する手間が軽減される。
連結部53と駆動ワイヤ40とが直接接触しないため、連結部53が摩耗するのを抑え連結部53の耐久性を向上させることができる。
【0035】
駆動ワイヤ40が引き戻されたときに駆動ワイヤ40とシャフト52とが離間し、駆動ワイヤ40が押込まれたときに駆動ワイヤ40でシャフト52を先端側に押す。
挿入部10が曲がったとき等、第一のチャンネル11に対する駆動ワイヤ40の長手方向Dの位置が移動した場合でも、駆動ワイヤ40がシャフト52を先端側に押して挿入部10の先端面14aから先端側にシャフト52が突出する長さが増加するのを抑制することができる。
【0036】
挿入部10が真っ直ぐなときよりも挿入部10が曲がったときの方が、第一のチャンネル11に対して駆動ワイヤ40の先端が基端側に移動する傾向にある。このため、挿入部10が真っ直ぐなときに駆動ワイヤ40とシャフト52とが接触するように、または、やや離間するように調節することが好ましい。必要以上に駆動ワイヤ40とシャフト52とを接触させないことで、耐久性に有利である。
駆動ワイヤ40が可撓性を有することで、湾曲部15の湾曲動作が容易となるとともに、可撓管部16を容易に曲げることができる。
【0037】
例えば、駆動ワイヤが第一のチャンネル内ではなく、挿入部の外面に沿って配置されていると、挿入部及び駆動ワイヤの全体としての外径が太くなり、長手方向Dに直交する断面形状も円形にはなりにくくなる。このため、挿入部及び駆動ワイヤの全体を長手方向周りに回転させたときに、患者に与える負担が増加する。
しかし、本実施形態に係る内視鏡1では、挿入部10内に駆動ワイヤ40が挿通されているため、挿入部10を長手方向D周りに回転させたときに患者に与える負担を低減させることができる。
【0038】
本実施形態では内視鏡1は、以下に説明するようにその構成を変形させることができる。
図6から
図11は、本発明の第1実施形態の変形例の内視鏡における挿入部の先端部の断面図である。
図6に示す変形例の内視鏡1Aのように、突出可能部60の固定部61及び連結部62を、複数のヒダ部63を有する筒状に形成された蛇腹状部材で一体に形成してもよい。
固定部61及び連結部62は、樹脂等の弾性的に変形可能な材料で形成されている。固定部61は、連結部62よりも基端側に配置され、口金21の先端部に公知の接着剤等により水密に取付けられている。シャフト52は連結部62内に挿通され、連結部62の先端部とシャフト52とが水密に取付けられている。
各ヒダ部63を長手方向Dに密着させたときがシャフト52の退避状態であり、各ヒダ部63を長手方向Dに広げたときがシャフト52の突出状態である。
連結部62が有するヒダ部63の数を調節することで、突出状態となったときに挿入部10の先端面14aから先端側へ突出するシャフト52の突出長さを所望の長さに調節することができる。
蛇腹状部材は伸縮性が良いため、本変形例の突出可能部60は、シャフト52の長手方向Dの移動範囲を大きくすることができる。
【0039】
本変形例では、駆動ワイヤ40の先端部とシャフト52の基端部とが連結されている。シャフト52の基端面には、穴部52aが形成されている。駆動ワイヤ40の先端部は、シャフト52の穴部52aに挿入された状態で、不図示の接着剤や、ロー付け、半田付け等によりシャフト52に固定されている。
このように構成された変形例の内視鏡1Aによれば、駆動ワイヤ40とシャフト52とが離間しないため、駆動ワイヤ40を引き戻す力をシャフト52に作用させることができ、シャフト52の長手方向Dの移動範囲を大きくすることができる。
【0040】
図7に示す変形例のように、シャフト52の基端部に駆動ワイヤ40の先端部(接続部)の外径よりも大きな大径部66が設けられていてもよい。大径部66における駆動ワイヤ40の先端部に対向する面には、駆動ワイヤ40の先端部から離間する方向、すなわち先端側に向かって半球状に凹んだ凹部66aが形成されていてもよい。凹部66aの外径は、駆動ワイヤ40の外径よりも大きい。大径部66は、シャフト52と同一の材料でシャフト52と一体に形成されている。この変形例では、シャフト52と駆動ワイヤ40とは離間可能である。
シャフト52に大径部66を設けることで、シャフト52が配置されている軸線と駆動ワイヤ40が配置されている軸線とがずれている場合でも、駆動ワイヤ40を押込む力を、大径部66を介してシャフト52に容易に伝達することができる。
本変形例では、大径部66に凹部66aが形成されていることで、押込まれた駆動ワイヤ40の先端部は凹部66a内に入る。したがって、駆動ワイヤ40を押込むときにシャフト52に接触した駆動ワイヤ40がシャフト52から脱落することが防止される。
【0041】
本変形例の大径部66に代えて
図8に示す駆動ワイヤ40の先端部に設けられた大径部67を備えてもよい。大径部67の外径は、シャフト52の基端部(接続部)の外径よりも大きい。大径部67におけるシャフト52の基端部に対向する面には、シャフト52の基端部から離間する方向、すなわち基端側に向かって半球状に凹んだ凹部67aが形成されていてもよい。
このように構成されていても、前述の変形例と同様の効果を奏することができる。
【0042】
図9に示す変形例のように、駆動ワイヤ40とシャフト52とが連結されていて、駆動ワイヤ40を引き戻してシャフト52を退避状態にしたときに、シャフト52の先端部が先端硬質部14の先端面14aよりも先端側に突出するように構成してもよい。この変形例では、固定部51及び連結部53は、自然状態において平坦な円板状に形成されている。
【0043】
図10に示す変形例のように、シャフト52を退避状態にしたときに、シャフト52の先端部が先端硬質部14の先端面14aよりも先端側に突出しないように構成してもよい。この変形例では、固定部51及び連結部53は、自然状態において中央部が基端側に向かって凹むように湾曲した円板状に形成されている。このように構成することで、挿入部10の挿入時にシャフト52の先端部が先端硬質部14の先端面14aから突出しないので、患者に与える負担をさらに低減させることができる。
【0044】
図11に示す変形例の内視鏡1Bのように、シャフト52の基端部に設けられた拡径部71と駆動ワイヤ40とが連結されるとともに、駆動ワイヤ40の口金21の縮径部21aよりも基端側の外周面にストッパ72が設けられるように構成してもよい。
拡径部71の外径は、縮径部21aの内径よりも大きい。拡径部71の基端面には、穴部71aが形成されている。拡径部71は、シャフト52と同一の材料でシャフト52と一体に形成されている。
駆動ワイヤ40の先端部は、拡径部71の穴部71aに挿入された状態で、不図示の接着剤により拡径部71に固定されている。
【0045】
ストッパ72は、金属や熱可塑性樹脂によりリング状に形成され、駆動ワイヤ40に固定されている。ストッパ72の外径は、チューブ22の内径よりも小さく、縮径部21aの内径よりも大きい。この変形例では、固定部51及び連結部53は、自然状態において平坦な円板状に形成されている。
縮径部21a及びストッパ72で先端側規制部73を構成し、縮径部21a及び拡径部71で基端側規制部74を構成する。これら規制部73、74は、挿入部10の先端近傍に設けられていることが好ましい。駆動ワイヤ40は、引張り応力で伸びて全長が変化するし、挿入部10の形状によって挿入部10に対する駆動ワイヤ40の先端の位置が変化する。このため、規制部73、74を挿入部10の基端側に設けても、突出可能部50と駆動ワイヤ40の先端との相対的な位置がズレるからである。
【0046】
口金21の内周面の先端部には、内径が拡径された段部21bが形成されている。突出可能部50の固定部51は、段部21b内に配置されている。口金21の先端面には、リング状の蓋部材76が配置されている。蓋部材76の内径は、口金21の基端側であって縮径部21aが設けられていない部分の内径にほぼ等しい。蓋部材76は、口金21と同一の材料で形成することができる。
固定部51は、段部21bの基端側の面と蓋部材76とにより長手方向Dに挟まれた状態で、公知の接着剤等により口金21及び蓋部材76に水密に取付けられている。口金21と蓋部材76とを、ネジ部材により固定してもよい。
【0047】
このように構成された内視鏡1Bは、
図11に示す状態から駆動ワイヤ40を押込むと、
図12に示すように縮径部21aにストッパ72が当接するとともに、シャフト52が先端側に移動して突出状態になる。縮径部21aにストッパ72が当接することで、挿入部10に対して駆動ワイヤ40が先端側に移動する範囲が規制される。
一方で、
図11に示す状態から駆動ワイヤ40を引き戻すと、拡径部71が
図12に示す位置Q1に移動して縮径部21aに当接し、シャフト52が基端側に移動して退避状態になる。縮径部21aに拡径部71が当接することで、挿入部10に対して駆動ワイヤ40が基端側に移動する範囲が規制される。
固定部51は段部21b及び蓋部材76により挟まれているため、シャフト52が長手方向Dに移動しても、口金21の先端部と固定部51との間は確実に水密に保持される。
【0048】
このように構成された変形例の内視鏡1Bによれば、先端側規制部73を備えることで駆動ワイヤ40が先端側に移動する範囲が規制され、シャフト52や連結部53に先端側に向かう過度な力が作用するのを防止することができる。基端側規制部74を備えることで駆動ワイヤ40が基端側に移動する範囲が規制され、シャフト52や連結部53に基端側に向かう過度な力が作用するのを防止することができる。
本変形例では、内視鏡1Bが先端側規制部73及び基端側規制部74の一方だけを備えるように構成してもよい。
【0049】
本実施形態では内視鏡1に第二のチャンネル12が形成された例を示したが、第二のチャンネル12を備えなくてもよい。この場合には、前述の手技において、本実施形態に係る内視鏡1以外に、他の内視鏡の挿入部を大腸P1内に挿入して処置をしたり、この内視鏡のチャンネルを通して挿入された処置具により処置をしたりしてもよい。
挿入部10には第一のチャンネル11が形成されていなくてもよい。この場合、駆動ワイヤ40は、挿入部10内に前述の電線等とともに挿通される。駆動ワイヤ40は、挿入部10内でコイルに挿通されていることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、シャフト52の先端部は連結部53よりも先端側に突出し、シャフト52の基端部は連結部53よりも基端側に突出している構成を示した。しかし、シャフト52の基端面は連結部53の基端面と面一になっていてもよいし、シャフト52の先端面は連結部53の先端面と面一になっていてもよい。
本実施形態では、第一のチャンネル11の基端部が鉗子口32に開口するとともに、レバー35がピン36により鉗子口32に回転可能に支持されるように構成されてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図13から
図20を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0052】
図13は、本実施形態に係る内視鏡システム2の先端部を分解した斜視図である。
図14は、本実施形態に係る内視鏡システム2の先端部の正面図である。
図13及び
図14に示すように、本実施形態に係る内視鏡システム2は、第1実施形態に係る内視鏡1と、内視鏡1の挿入部10の先端面14a(挿入部先端)に着脱可能なアタッチメント(キャップ)3とを備えている。
【0053】
アタッチメント3は、本体部80と、バー(移動部材)90とを有している。本体部80は、円筒状に形成されている。バー90は、本体部80に移動可能に取付けられている。
本体部80の長手方向の中間部には、一対の貫通孔81が形成されている。一対の貫通孔は、互いに対向する位置に、本体部80の外周面から内周面まで貫通して形成されている。本体部80の内周面の基端側には、径方向内方に突出する板状の支持部材82が設けられている。本体部80及び支持部材82は、ポリプロピレン樹脂やポリカーボネート樹脂等の生体適合性を有する樹脂で一体に形成されている。
本体部80の内径は、挿入部10の先端硬質部14の外径よりもわずかに大きい。このため、先端硬質部14に本体部80を圧入して固定することができる。
【0054】
図13に示すように、バー90は、一対の軸部材91と、一対の腕部材92と、連結部材93と、受け部材94とを有している。一対の軸部材91は、本体部80の各貫通孔81内に挿通されている。一対の腕部材92は、各軸部材91における本体部80の外周面から突出した部分から延びている。連結部材93は、各腕部材92の先端部に連なる。受け部材94は、一方の軸部材91における本体部80の内周面から突出した部分から延びている。
各腕部材92は、軸部材91に対してほぼ直交する方向且つ本体部80の斜め前方に向かって延びている。一対の軸部材91及び一対の腕部材92のそれぞれは、第一の基準平面S1上に配置されている。連結部材93は、第一の基準平面S1に交差する平面上で、先端側に向かって凸となる湾曲した形状に形成されている。
図15に示すように、一対の軸部材91の軸線を含み長手方向Dに平行な第二の基準平面S2に対して、一対の腕部材92と受け部材94とは同じ側に配置されている。
【0055】
一対の軸部材91、一対の腕部材92、連結部材93及び受け部材94は、生体適合性及び弾性を有するステンレス鋼やチタン等で形成されたワイヤを折り曲げることで一体に形成されている。
バー90は、各軸部材91が本体部80の各貫通孔81内で回転することで、本体部80に対して一対の貫通孔81を中心として回転することができる。
図15に示すように、自然状態において、連結部材93は、本体部80の先端側の開口80aの縁部よりも先端側の位置に配置されている。自然状態において連結部材93が本体部80の開口80aの中央部よりも先端側の位置を避けて配置されていることで、撮像ユニット18の視野を妨げないように構成されている。
【0056】
図13及び
図14に示すように、受け部材94の軸部材91に連なる部分とは反対側の端部と、支持部材82との間には、バネ部材100が設けられている。バネ部材100には、自然状態で密巻きのつる巻きバネが用いられ、本体部80の軸線方向に延びている。
バネ部材100の先端部は受け部材94に、基端部は支持部材82にそれぞれ取付けられている。
【0057】
このように構成されたアタッチメント3を、シャフト52を退避状態にした挿入部10の先端面14aに取付けるときには、挿入部10の先端面14aに対してアタッチメント3を以下のように位置決めする。
すなわち、
図14及び
図15に示すように、アタッチメント3の本体部80の基端側の開口から挿入部10を挿入する。挿入部10に対してアタッチメント3を本体部80の中心軸線C周りに回転させ、突出可能部50のシャフト52よりも先端側に受け部材94が配置されるようにする。これにより、挿入部10に対するアタッチメント3の周方向の位置が規定(位置決め)される。
挿入部10にアタッチメント3を押込み、
図15に示すように支持部材82の基端面に挿入部10の先端面14aを接触させる。これにより、挿入部10に対するアタッチメント3の、挿入部10の長手方向Dの位置が規定される。このとき、受け部材94の基端側の外面にシャフト52の先端部が接触する。
【0058】
次に、以上のように構成された内視鏡システム2の作用について、体腔内の粘膜切除の手技を行う場合を例にとって説明する。
患者の口等の自然開口から、アタッチメント3が取付けられた挿入部10を挿入する。アタッチメント3を、切除すべき目的部位である
図15に示す病変粘膜部分P6まで挿入する。
図示はしないが、第二のチャンネル12を通して公知の注射針を体腔内に挿入し、アタッチメント3よりも先端側に注射針を突出させ、病変粘膜部分P6の粘膜下層P7に生理食塩水を注入して、その病変粘膜部分P6を隆起させてもよい。この後で、注射針を第二のチャンネル12から引き抜いて抜去しておく。
第二のチャンネル12を通して高周波ナイフを体腔内に挿入し、アタッチメント3よりも先端側に突出させる。挿入した高周波ナイフで、病変粘膜部分P6の周囲の粘膜P8の一部を切開する。この後で、高周波ナイフを第二のチャンネル12内に引き戻しておく。
【0059】
図15に示すように、切開した病変粘膜部分P6と粘膜下層P7との間に、バー90の連結部材93を挿入する。内視鏡1のレバー35を操作してシャフト52を退避状態から突出状態にする。
図16に示すように、シャフト52が受け部材94をバネ部材100の弾性力に逆らって先端側に押すことで、各軸部材91が本体部80の各貫通孔81内で回転し、一対の腕部材92及び連結部材93が一対の貫通孔81を中心として回転する。このとき、連結部材93は、中心軸線Cに交差する方向Fに移動して本体部80よりも先端側の位置に移動する。
連結部材93に支持された病変粘膜部分P6は、粘膜下層P7から剥離(挙上)される。この後、第二のチャンネル12内の高周波ナイフW2をアタッチメント3よりも先端側に突出させ、病変粘膜部分P6を切除する。
【0060】
レバー35を操作してシャフト52を退避状態にすると、バネ部材100の弾性力により、バー90が一対の貫通孔81を中心として回転し、連結部材93が交差する方向Fとは反対方向に移動して
図15に示す位置に戻る。
第二のチャンネル12を通して挿入した図示しない把持鉗子で、切除した病変粘膜部分P6を回収する。
患者の口から内視鏡1の挿入部10を引き抜き、必要な処置をして一連の処置を終了する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る内視鏡システム2によれば、内視鏡1の第一のチャンネル11が挿入部10の先端側において封止されているので、手技で使用後に内視鏡1の第一のチャンネル11内を洗浄する手間が軽減される。
シャフト52を退避状態から突出状態にしたときに、バー90の連結部材93が中心軸線Cに交差する方向Fに移動することで、連結部材93で支持した病変粘膜部分P6を粘膜下層P7から剥離することができる。
【0062】
図17は、本実施形態の変形例のアタッチメントの斜視図である。
図18は、
図17のアタッチメントを内視鏡の挿入部に取付けたときの先端部の正面図である。本実施形態では、
図17及び
図18に示すアタッチメント3Aのように、アタッチメント3の支持部材82及びバネ部材100に代えて、本体部80の外周面に設けられた一対の突起110を備えてもよい。
各突起110は、連結部材93が前述の交差する方向Fに移動するにしたがって、各腕部材92に接触する部分間の間隔が広がるように形成されている。すなわち、一対の突起110全体としての幅は、自然状態における一対の腕部材92間の距離よりも広い(長い)。
このように構成されたアタッチメント3Aを挿入部10に取付け、シャフト52を退避状態から突出状態にすると、各腕部材92は突起110に接触して、
図18に位置Q2として示すように、一対の腕部材92間の距離が広がるように弾性的に変形するとともに移動する。このとき、連結部材93も位置Q3として示すように、弾性的に変形するとともに移動する。
シャフト52を退避状態にすると、一対の腕部材92及び連結部材93の弾性力によりバー90が一対の貫通孔81を中心として回転し、一対の腕部材92間の距離が
図17に示す元の状態に戻る。
【0063】
図19は、本実施形態の変形例の内視鏡システム2の先端部の正面図である。
図20は、本実施形態の変形例の内視鏡システムのアタッチメントの一部を破断した斜視図である。
図19及び
図20に示すアタッチメント3Bのように、挿入部10にアタッチメント3Bを取付けたときに、突出可能部50のシャフト52が挿通される貫通孔82aを支持部材82に形成してもよい。
このように構成すると、支持部材82の貫通孔82aにシャフト52を挿通させることで、挿入部10に対するアタッチメント3Bの周方向の位置を容易に規定することができる。すなわち、貫通孔82aは、アタッチメント3Bの周方向の位置決め指標として機能する。この場合、挿入部10にアタッチメント3Bを取付けた状態の外面にこの位置決め指標が設けられないため、挿入部10の挿入性を維持することができる。
【0064】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態および第2実施形態では、挿入部10の外面は先端硬質部14の先端面14aである例を示したが、外面は挿入部10の側面であってもよい。
【0065】
内視鏡1の挿入部10には湾曲操作可能な湾曲部15が設けられている例を示したが、挿入部10に湾曲部15が設けられていないように構成してもよい。
軟性の内視鏡1を例示したが、挿入部が硬い、いわゆる硬性の内視鏡であってもよい。この場合、軸状部材として可撓性のない棒状部材を用いることで、力の伝達性能を向上させることができる。
【0066】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各実施形態における構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
本内視鏡は、挿入部と、挿入部の基端部に取付けられた操作部と、挿入部内に挿通されるとともに基端部が操作部まで延び、挿入部に対して進退可能な軸状部材と、挿入部の先端部に設けられた突出可能部と、を備え、突出可能部は、挿入部の外面に水密に取付けられた固定部と、先端が外部に露出した状態に設けられ、軸状部材が進退することで外面に交差する方向に移動可能な移動部と、弾性的に変形可能であって固定部と移動部とを水密に連結する連結部と、を有する。