(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器口部に嵌合固定され筒状側壁を備えたキャップ本体と、該キャップ本体の筒状側壁にヒンジバンドと2本のストラップバンドとを介して連結された上蓋とからなり、該ヒンジバンドが該筒状側壁の上端に連結されており、且つ該ストラップバンドが、該ヒンジバンドの周方向両側部分に位置し且つ該ヒンジバンドよりも低い位置で該筒状側壁の外面に連結されているヒンジキャップにおいて、
前記上蓋が開かれて反転している状態において、前記ヒンジバンドの下面には、側断面でみて逆V字型形状となる溝が形成されており、該溝は、該ヒンジバンドを横切るように該バンドの幅方向に延びていると共に、該溝から上蓋側に向かって延びている面がキャップ軸線に対して垂直な水平面となっており、
前記ストラップバンドの前記筒状側壁外面と接合している部分での厚みが、前記ヒンジバンド側から離れた端部から該ヒンジバンド側の端部に向かって漸次薄くなっていることを特徴とするヒンジキャップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにして上蓋がキャップ本体にヒンジ連結されたヒンジキャップにおいては、上蓋の開け閉めを繰り返し行ったとき、ヒンジバンド及びストラップバンドに白化を生じ易いという問題があった。即ち、これらのバンドを横切るようにして白化が生じてしまい、キャップの外観が損なわれてしまうばかりか、白化によって脆くなり、極端な場合には、これらのバンドが剥離し、更には破断してしまうこともあった。特に、2本のストラップバンドに白化が生じ易い傾向があり、ストラップバンドに白化が生じると、このバンドは、バンド幅が狭いため、特に剥離及び破断が生じ易くなり、その改善が求められている。
また、最近では、分別廃棄性を高めるために、キャップ本体の筒状側壁を内側壁と外側壁との二重壁構造としたものが広く実用されているが、このような二重壁構造を有するヒンジキャップでは、上記のような白化現象が顕著となる傾向にある。
【0006】
従って、本発明の目的は、キャップ本体と上蓋とがヒンジバンドと2本のストラップバンドとによって連結されているヒンジキャップにおいて、上蓋の開け閉めに起因するストラップバンドでの白化現象が有効に防止されたヒンジキャップを提供することにある。
本発明の他の目的は、ヒンジバンドでの白化現象も有効に防止されたヒンジキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、容器口部に嵌合固定され筒状側壁を備えたキャップ本体と、該キャップ本体の筒状側壁にヒンジバンドと2本のストラップバンドとを介して連結された上蓋とからなり、該ヒンジバンドが該筒状側壁の上端に連結されており、且つ該ストラップバンドが、該ヒンジバンドの周方向両側部分に位置し且つ該ヒンジバンドよりも低い位置で該筒状側壁の外面に連結されているヒンジキャップにおいて、
前記上蓋が開かれて反転している状態において、前記ヒンジバンドの下面には、側断面でみて逆V字型形状となる溝が形成されており、該溝は、該ヒンジバンドを横切るように該バンドの幅方向に延びていると共に、該溝から上蓋側に向かって延びている面がキャップ軸線に対して垂直な水平面となっており、
前記ストラップバンドの前記筒状側壁外面と接合している部分での厚みが、前記ヒンジバンド側から離れた端部から該ヒンジバンド側の端部に向かって漸次薄くなっていることを特徴とするヒンジキャップが提供される。
【0009】
本発明のヒンジキャップにおいては、
(1)前記ストラップバンドの側断面が、前記筒状側壁の外面から上蓋側に水平方向に延びている第1の基部と、前記
上蓋の外面から筒状側壁側に水平方向に延びている第2の基部とを有しており、該第1の基部と第2の基部とが、それぞれ上向き或いは下向きの段差部を介して
水平橋絡部に連なった形状を有していること、
が好ましく、さらには、
(
2)前記ヒンジバンドの下面と前記筒状側壁の外面との接合ラインは、キャップ軸線に対して垂直な水平面上に位置していること、が好適である。
また、本発明のヒンジキャップでは、
(
3)前記キャップ本体の筒状側壁は、その厚み部分が上端から下方に向かって延びているスリットによって内側壁と外側壁とに区画された二重壁領域を有しており、該二重壁領域の外側壁に前記ヒンジバンド及びストラップバンドが連結されていること、
が最適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒンジキャップにおいては、ストラップバンドとキャップ本体の筒状側壁外面とが接合する部分(即ち、キャップ本体側の接合部分)での厚みが、前記ヒンジバンド側に向かって漸次薄くなっており、これにより、上蓋の開け閉めを繰り返し行った場合においても、ストラップバンドでの白化を有効に抑制し、このような白化に由来するストラップバンドの剥離及び破断を有効に防止することができる。
【0011】
また、本発明では、上蓋が開かれて反転している状態において、前記ストラップバンドの側断面を、前記筒状側壁の外面から上蓋側に水平方向に延びている第1の基部と、前記上蓋の外面から筒状側壁側に水平方向に延びている第2の基部とを有しており、該第1の基部と第2の基部とが、それぞれ上向き或いは下向きの段差部を介して水平橋絡部に連なった形状とすることもできる。このような側断面形状によっても、上蓋の開け閉めを繰り返し行った場合におけるストラップバンドでの白化を有効に抑制し、このような白化に由来するストラップバンドの破断を有効に防止することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明においては、ヒンジバンドでの白化や白化に由来する剥離及び破断も効果的に防止するために、前記上蓋が開かれて反転している状態において、前記ヒンジバンドの下面には、側断面でみて逆V字型形状となる溝が形成されており、該溝は、該ヒンジバンドを横切るように該バンドの幅方向に延びていると共に、該溝から上蓋側に向かって延びている面がキャップ軸線に対して垂直な水平面となっていることが好ましく、さらには、ヒンジバンドの下面と前記筒状側壁の外面との接合ラインが、キャップ軸線に対して垂直な水平面上に位置するようにヒンジバンドが前記筒状側壁に接合されている態様は、ヒンジバンドでの白化防止効果は最も大きい。
【0013】
このように、本発明では、ストラップバンドやヒンジバンドでの白化や白化に由来する剥離及び破断が防止されるため、特にキャップ本体の筒状側壁に二重壁構造を形成することにより分別廃棄性が高められたヒンジキャップに本発明を適用することが最適である。このような二重壁構造の形成は、ストラップバンドやヒンジバンドでの白化が最も生じ易いものであったが、本発明では、このような白化を有効に防止することが可能となるからである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図5を参照して、本発明のヒンジキャップは、キャップ本体1と上蓋3とから成り、キャップ本体1は、大まかに言って、頂板部5と、頂板部5の周縁部から垂下している筒状側壁7とから構成されている。
【0016】
頂板部5の下面側には、筒状側壁7とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング9が形成されている。また、筒状側壁7の内面の下方部分には、係合用突起8が設けられている。即ち、このインナーリング9と筒状側壁7との間の空間に容器口部が嵌め込まれ、且つ係合用突起8が容器口部の外面に係合することにより、キャップ本体1は、容器口部に装着され且つがっちりと固定される。
【0017】
また、頂板部5の中央部分は、凹んだ凹部となっており、その周縁部には、注出用開口を形成するための無端状スコア10が形成されており、頂板部5の上面側には、スコア破断用のプルリング11が支柱13を介して設けられている。即ち、このプルリング11を引っ張ることにより、スコア10が破断し、内容物を注ぎ出すための開口が頂板部5に形成されるようになっている。
【0018】
さらに、頂板部5の上面側には、スコア10を取り囲むようにして、注出液案内用の筒状突起15が形成されており、注出用開口を介して注ぎ出された内容液は、この筒状突起15によって案内される。この筒状突起15の上端は、ラッパ状に広がって液切れ性の向上が図られ、また、液の排出をスムーズに行い得るようになっており、また、
図1から理解されるように、後述する上蓋3との連結部側(ヒンジ連結部)において、筒状突起15の背が低く形成され、上蓋3を閉じるときに上蓋3の旋回を妨害しないように構成されている。また、筒状突起15の外側には、上蓋3を保持するための周状突起17が形成されている。
【0019】
また、キャップ本体1の筒状側壁7は、
図1及び
図2に示されているように、上端から下方に延びている弧状スリット20により、内側側壁7aと外側側壁7bとに分断されており、内側側壁7aと外側側壁7bとが下端で連なった二重壁構造が形成されている。内側側壁7aと外側側壁7bとは、その下端で、薄肉の連結部7cで接続されている。このような二重壁構造は、容器内容液注出後のキャップ本体1を容器口部から容易に取り外せるように形成されているものである。
【0020】
上蓋3は、キャップ本体1の筒状側壁7(特にスリット20によって形成されている外側壁7b)に連結されている。即ち、
図2乃至
図4から理解されるように、中央の幅広のヒンジバンド23と、その両側近傍に位置する2本の小幅のストラップバンド25、25により、キャップ本体1の筒状側壁7(外側壁7b)と上蓋3とが連結されている。
【0021】
さらに、一方のストラップバンド25の近傍には、外側壁7bに、その上端から下端乃至その近傍まで延びている軸方向スコア27が形成されている。即ち、上蓋3を開栓した状態で下方に引き降ろすことにより、上記スコア27が引き裂かれて外側壁7bが破断し、次に引裂かれた外側壁7bを周方向に捲っていくことにより、外側壁7bと内側壁7aとを接続している連結部7cが破断し、この結果、キャップ本体1の内側壁7aのみが容器口部と嵌合していることとになり、その嵌合力が大きく低下し、キャップ本体1を、格別の工具を用いることなく、容器口部から取り外すことが可能となる。
【0022】
上蓋3は、天板部31と、天板部31の周縁から延びているスカート部33とから形成されている。
【0023】
天板部31の内面には、シール用の周状突起35が形成されている。即ち、上蓋3を旋回して閉じたとき、シール用の周状突起35が注出液案内用の筒状突起15の内面に密着し、この密着により、スコア10を破断しての注出用開口形成後のシール性が確保される。
【0024】
また、上蓋3のスカート部33の内面下方部分には、凹部37(
図1参照)が形成されており、前述した周状突起17の上端の突部が、この凹部37と係合することにより、閉じられた上蓋3が安定に保持されるようになっている。
【0025】
さらに、上蓋3のスカート部33の外面には、前述したキャップ本体1の筒状側壁7との連結部側とは反対側部分に、開封用鍔40が設けられている。この開封用鍔40の下面には、滑り止め用の偏平状突部41が形成されている。この開封用鍔40を指で引っ掛けて上蓋3を上方に持ち上げることにより、周状突起17と凹部37との係合が解除され、上蓋3の開封が行われるようになっている。
尚、
図3に示されているように、上蓋3を閉じた時に、開封用鍔40が位置する部分の下側部分では、筒状側壁7の外面(外側壁7bの外面)に凹部43が形成されており、開封用鍔40に指を引っ掛けての上蓋3の開栓操作を容易に行うことができるようになっている。
【0026】
上述した構造のヒンジキャップにおいて、キャップ本体1の筒状側壁7と上蓋3とを連結しているヒンジバンド23は、
図2から理解されるように、キャップ本体1の中心Xと上蓋3の中心Yとを結ぶ線Z上に位置しており、
図1及び
図3に示されているように、筒状側壁7(外側壁7b)の上端とスカート部33の下端とにヒンジバンド23が連結されている。尚、
図1では、上蓋3が開放されて反転した状態となっているため、スカート部33の下端は上端となっている。
一方、ヒンジバンド23の周方向両端に位置している2本のストラップバンド25,25は、それぞれ、ヒンジバンド23よりも低い位置で筒状側壁7(外側壁7b)に形成された凹部18内に連結され、ヒンジバンド23より高い位置でスカート部33に形成された凹部38内に連結されている(上蓋を閉じた状態の
図3参照)。また、このストラップバンド25は、ヒンジバンド23に比して、キャップ本体1の中心Xと上蓋3の中心Yとを結ぶ線Zから離れた位置に存在するため、相対的にヒンジバンド23よりも長く、且つヒンジバンド23側の辺の長さが短く、ヒンジバンド23側と反対側の辺の長さが長くなっている。
【0027】
上記のようなヒンジバンド23と2本のストラップバンド25,25とにより筒状側壁7(外側壁7b)に連結された上蓋3を旋回して開放すると、先ず、上蓋3とキャップ本体1の係合突起17の係合が解除されるが、このとき、相対的に短いヒンジバンド23の張力により、上蓋3が引っ張られ、これにより、上蓋3の適度な開放状態が維持される。さらに上蓋3を旋回していくと、ストラップバンド25,25が連結されている部分での筒状側壁7とスカート部33の間隔が大きくなり、この結果、ストラップバンド25に大きな張力が加わり、この結果、上蓋3が大きく開放され、上蓋3から手を離しても、上蓋3が大きく開放された状態に維持されるため、容器を傾けての内容液の注ぎ出し操作を容易に行うことが可能となっている。
【0028】
上述した構造のヒンジキャップは、各種の熱可塑性樹脂を用いての射出成形によって、
図1に示されているように、上蓋3が開かれて反転されている形状に成形することにより製造される。
用いる熱可塑性樹脂としては、ヒンジキャップに要求される弾性や柔軟性を満足させ且つ良好な成形性を有しているという観点から、オレフィン系樹脂、特にポリエチレンが使用され、最も好適には直鎖低密度ポリエチレンが使用される。
【0029】
本発明のヒンジキャップにおいては、上記のようなストラップバンド25,25の筒状側壁7(外側壁7b)との連結部側に厚み分布を持たせることが重要であり、これにより、上蓋3の開け閉めを繰り返し行ったときの白化を有効に防止することが可能となるのである。
【0030】
即ち、各ストラップバンド25は、
図5の側断面図に示されているように、キャップ本体1の筒状側壁7(外側壁7b)及び上蓋3のスカート部33との接合部は適度な曲率面となっており、筒状側壁7及びスカート部33に滑らかに連なっており、且つストラップバンド25の中央部分は一定の厚みtを有している。
しかるに、本発明では、2本の各ストラップバンド25について、
図6の背面拡大図に示されているように、筒状側壁7(外側壁7b)の外面に接合する部分での厚みが、ヒンジバンド23側に向かって漸次薄くなっていることが顕著な特徴である。このような厚み分布の結果、
図6から理解されるように、上蓋を開いた状態においてストラップバンド25の下面が筒状側壁7の外面に接合している接合ライン51は、ヒンジバンド23側に向かって漸次上昇した傾斜線となって現われている。
【0031】
尚、上記の接合ライン51は、
図5に示されているように、筒状側壁7との接合部を形成する曲率面が開始する部分によって形成されるラインであり、この曲率面の曲率半径(R)は、ヒンジバンド23側にいくにしたがい、次第に小さくなっている。実施例では筒状側壁7との接合部では曲率半径がR1(R=1mm)であり、ヒンジバンド23側に向かって漸次曲率半径が小さくなり、ヒンジバンド23側の接合部では曲率半径がR0.2(R=0.2mm)となっている。これにより、基本的には、この接合部分でのストラップバンド25の厚みは、ヒンジバンド23側にいくにつれて小さくなっているが、この接合部を離れた部分では、その厚みは一定となっている(即ち、幅方向にわたって厚みtは変動せず、一定の値となっている)。また、上蓋を開いた状態においてストラップバンド25の下面とスカート部33の接合部分では、幅方向にわたって厚みの変動は無く、一定の値となっており、その曲率面の曲率半径も一定であるため、この接合ライン53は、キャップの軸線Lに対して垂直な水平線となっている。
【0032】
本発明においては、ストラップバンド25と筒状側壁7との接合部分に上記のような厚み分布を形成するにより、ストラップバンド25での白化が有効に防止されるわけである。特に、筒状側壁7との接合部近辺における白化が顕著に防止されるのである。このような厚み分布によって、白化が防止される理由については明確に解明されていないが、本発明者等は、キャップ成形時での樹脂の配向結晶化が抑制され、さらには、上蓋3の開け閉めに際してストラップバンド25に加わる引っ張り応力が緩和されることに起因しているのではないかと考えている。
【0033】
先にも述べたように、上述したヒンジキャップは、
図1に示されているように、上蓋3が開放されて反転している状態で成形される。具体的には、
図1に示す形状のヒンジキャップが成形されるような空間を有する金型を使用し、キャップ本体1に対応する金型空間(特に頂板部5の中心部分に相当する部分)に射出ゲートを配置して溶融した樹脂を射出し、この樹脂がヒンジバンド23及びストラップバンド25に相当する金型空間を通って、上蓋3に相当する金型空間に流入し、これらの金型空間内に充填された溶融樹脂が、金型表面で冷却されて固化し、これにより、金型空間に対応する形状のヒンジキャップが成形されることとなる。このようにしてヒンジキャップを成形したとき、ストラップバンド25に相当する金型空間は、非常に狭いため、この部分を通る溶融樹脂の流れが一様となって流動配向化し易く且つ溶融した樹脂は金型空間が狭いゆえに急速に冷却される。この結果、ストラップバンド25を形成している部分では分子が配向結晶化され、上蓋の開け閉めを行ったときに、引っ張り応力が整列した分子鎖に集中し、このため、分子鎖の切断により白化が生じてしまい、極端な場合には、ストラップバンド25が剥離し、更には破断してしまうものと考えられる。
【0034】
しかるに、本発明にしたがって、各ストラップバンド25の筒状側壁7の外面と接合する部分での厚みがヒンジバンド23側に向かって漸次薄くなっているときには、ストラップバンド25に相当する金型空間に樹脂が導入されるときの樹脂流の速度分布は、
図7に示されているようになると考えられる。即ち、ストラップバンド25に相当する金型空間の入り口側(筒状側壁7側)は、ヒンジバンド23側に行くほど金型空間が狭いため、その導入速度が遅くなるが、ヒンジバンド23とは反対側に行くほど金型空間が広がっているため、その導入速度は速い。従って、ストラップバンド25に相当する金型空間では、その出口側(スカート部33側)に行くにつれて、ヒンジバンド23とは反対側から流入した樹脂流はヒンジバンド23側に流れる。この結果、ストラップバンド25に相当する金型空間での樹脂流が乱流となって流動配向化が生じ難くなり、従って、樹脂の配向結晶化が抑制され、冷却固化されたストラップバンド25での樹脂は等方で非晶質な状態となる。故に、上蓋3の開け閉めが繰り返し行なわれて、引っ張り応力が加わったとしても、分子鎖の破断が生じることがなく、ストラップバンド25での白化が有効に回避されることとなると考えられるのである。
【0035】
このように、本発明のヒンジキャップでは、ストラップバンド25における樹脂の配向結晶化の抑制とストラップバンド25に加わる張力の緩和とによって、白化が防止され、従って白化に由来するストラップバンド25の破断も防止されることとなる。
【0036】
尚、上述したストラップバンド25の筒状側壁7の外面との接合部における厚み分布の程度は、ストラップバンド25の幅d(
図6参照)によっても異なり、一概に規定することはできないが、調味料或いは飲料用の容器に使用されるヒンジキャップに形成されるストラップバンド25の幅dが、2.0乃2.5mm程度であることを考慮すると、例えば接合ライン51の水平線に対する傾斜角θが10乃至15度程度となるように、ヒンジバンド23側の厚みを薄くすることが好適である。
【0037】
また、ストラップバンド25に適度な弾性と強度を付与するために、その厚みtは、一般に0.4乃至0.6mm程度の範囲とすることが好ましい。
【0038】
さらに、本発明においては、上蓋3の開け閉めを繰り返したときにヒンジバンド23で生じる白化を防止するために、ヒンジバンド23の形態が
図8に示されているようなものとなっている。
【0039】
即ち、
図8の側断面図(キャップ中心線Zでの側断面図)を参照して、上蓋を開いた状態においてヒンジバンド23の下面には、逆V字型形状の溝60形成されている。この溝60は、上蓋3を閉じた時に折り曲げられる部分に形成されており、ヒンジバンド23を横切るように、該バンド23の幅方向を直線状に延びている。また、このヒンジバンド23の下面の溝60から上蓋3(スカート部33)側の部分は、水平面63(即ち、キャップの軸線Lに対して垂直な面)となっており、従って、この水平面63が形成されている部分では、ヒンジバンド23は、厚みが一定の平板状となっている。
尚、このヒンジバンド23の上面には、上記の逆V字型溝60に対応して若干凹んだ溝65が形成されている。この溝は、
図2に示されているように、ヒンジバンド23の上面幅方向に両端部を若干残して直線状に延びているものであり、これにより、ヒンジバンド23を曲げ易くするというものである。
【0040】
上記のような形態のヒンジバンド23では、ストラップバンド25と同様に、上蓋3の開け閉めを繰り返し行なったときに生じる白化が有効に防止されているのであるが、その理由は、おそらく、このヒンジキャップを成形する際のヒンジバンド23の成形条件が樹脂の配向結晶化が生じにくい条件となっているためではないかと本発明者等は推定している。
【0041】
尚、ヒンジバンド23での白化を防止するための形態は、ストラップバンド25とは全く異なったものとなっているが、これは、ヒンジバンド23の周方向幅w(
図4参照)がストラップバンド25に比して大きく(通常、11.5乃至12.00mm程度)、キャップ成形時における溶融樹脂の流動形態を異にしているためと考えられる。
【0042】
また、
図8に示す上蓋を開いた状態での側断面図では、ヒンジバンド23の下面は、筒状側壁7(外側壁7b)の外面から直接上蓋3側に向かって漸次上昇して次いで降下して逆V字型の溝60を形成しているが、キャップ中心線Z(
図2参照)から離れるにしたがい、筒状側壁7(外側壁7b)の外面とスカート部33の外面との間隔は次第に広がっていく。このため、キャップ中心線Z(
図2参照)から離れた位置でのヒンジバンド23の側断面においては、その下面は、一旦水平方向に延びた後に、上蓋3側に向かって漸次上昇して溝60が形成されるような形態となっている。
【0043】
上述した形態のヒンジバンド23において、逆V字型の溝60の深さや水平面63の大きさは、一概に規定することはできないが、一般に、溝60が形成されている部分でのヒンジバンド23の厚みが、ヒンジバンド23とスカート部33との接合部での該バンドの厚みの50乃至70%程度であることが好ましく、水平面63の長さqは、ヒンジバンド23の径方向長さpの45乃至50%程度であることが望ましい。
【0044】
さらに、
図8に示す形態のヒンジバンド23においては、
図4及び
図6に示されているように、ヒンジバンド23の下面と筒状側壁7の外面との接合ライン23aが、キャップ軸線Lに対して垂直な面上に位置するように,ヒンジバンド23が筒状側壁7に接合されていることが最も好適であり、この場合において、ヒンジバンド23での白化防止効果は最も大きい。
【0045】
即ち、かかる接合形態においては、ヒンジバンド23の幅方向の全体にわたって、筒状側壁7(外側壁7b)からの高さが同一となっている。キャップ成形時においては、溶融樹脂は、筒状側壁7に相当する金型空間を充満した後に、ヒンジバンド23に相当する金型空間に流入することとなるが、上記の接合形態では、この金型空間への溶融樹脂の流入が、ヒンジバンド23の幅方向の全体にわたって均等となり、この結果、ヒンジバンド23の幅方向全体にわたって前述した配向結晶化の抑制が行なわれることとなると考えられる。
【0046】
例えば、ヒンジバンド23の幅方向中心部での接合部が、その周縁部に比して筒状側壁7の下端から高い位置にあるような場合には、この中心部に相当する金型空間内への溶融樹脂の流入が最も遅くなり、この結果、逆V字の溝60に相当する部分での溶融樹脂の塞き止めが十分に行なわれず、例えば、周縁部では、狭い金型空間内を溶融樹脂がスムーズに流れて流動配向し易くなってしまい、しかも、逆V字型の溝60に相当する金型空間は著しく狭いため、この部分で溶融樹脂が急冷されてしまう。この結果、このような場合には、配向結晶化が生じ易くなってしまい、部分的に白化を生じ易くなってしまうおそれがある。
しかるに、上記のように接合ライン23aを設定しておけば、ヒンジバンド23の幅方向の全体にわたって溶融樹脂が均等に流入するため、配向結晶化を確実に防止し、局部的な白化も確実に防止することが可能となる。
【0047】
上述した態様のヒンジキャップは、ストラップバンド25の厚みを、ヒンジバンド23側に向かって漸次薄くなるように厚み変化を持たせることによってストラップバンド25での白化を防止したものであるが、ストラップバンド25に段差を形成することによってもストラップバンド25での白化を効果的に防止することができる。特にストラップバンド25全体の白化が防止されることができる。かかる態様のヒンジキャップは、
図9〜
図14に示されている。
【0048】
図9〜
図14において、このヒンジキャップは、ストラップバンド25,25以外の部分は、全て
図1〜
図8に示されているヒンジキャップと同じであり、従って、ストラップバンド25,25以外の部分については、同じ印照数字で示し、その説明は省略する。
【0049】
この態様のヒンジキャップの側面を示す
図11及び上蓋3が開放されて反転している状態でのストラップバンド25の側断面を示す
図13を参照して、上蓋を開いた状態でこのストラップバンド25は、筒状側壁7(外側壁7b)の外面から上蓋3(スカート部33)側に水平方向に延びている第1の基部70と、上蓋3の外面から筒状側壁7側に水平方向に延びている第2の基部71とを有しており、第1の基部70と第2の基部71とが、それぞれ上向きの段差部73,73を介して水平橋絡部75に連なった形状を有している。
【0050】
即ち、このような側断面形状を有しているストラップバンド25では、ストラップバンド25の筒状側壁7との接合部とストラップバンド25のスカート部33との接合部における間隔Dに比して、ストラップバンド25の径方向長さが長くなっているため、上蓋3の開け閉めに際してストラップバンド25に加わる張力が緩和され、この結果、このような張力によるストラップバンド25での樹脂の分子鎖の切断を回避することができ、白化の発生を有効に防止することが可能となる。
【0051】
かかる形態のストラップバンド25において、段差73,73の程度、第1及び第2の基部70,71の長さ並びに水平橋絡部75の長さは、各断面でのストラップバンド25の長さ(径方向長さ)が、各断面における筒状側壁7とスカート部33との接合部間の間隔Dに比して、10乃至15%程度長くなるように設定するのがよい。ストラップバンド25が必要以上に長くなると、ストラップバンド25の引っ張りによる上蓋3の開放機能が損なわれてしまい、また、ストラップバンド25の長さが、上記間隙Dに近い長さとなると、張力緩和が不十分となり、白化を効果的に抑制することが困難となるおそれがある。
【0052】
また、上記のような形状は、ヒンジキャップ成形時のストラップバンド25での樹脂の配向結晶化を抑制するものと信じられる。即ち、ヒンジキャップ成形時において、ストラップバンド25に相当する金型空間に流入した溶融樹脂は、段差部73,73を形成する金型表面に衝突するため、この結果、樹脂流が乱流となり、白化をもたらす配向結晶化の要因となる流動配向が抑制されこととなるからである。
このような流動配向抑制の観点から、上記の段差部73の長さh(水平橋絡部75と第1及び第2の基部70,71との高低差に相当)は、ストラップバンド25の厚み程度とするのがよい。この段差部73が小さいと、流動配向抑制効果が低下すると考えられるからである。
【0053】
尚、上蓋3が反転された
図13の状態において、上述した段差部73,73を下向きとし、水平橋絡部75が第1及び第2の基部70,71よりも低い位置に形成されるようにした場合においても、上述した原理により白化を抑制することができる。但し、この場合には、ストラップバンド25の引っ張りによる上蓋3の開放機能が低下してしまうおそれがあるため、前述したように、段差部73を上向きとすることが好適である。
【0054】
また、上述した態様のヒンジキャップにおいても、
図1〜
図8に示されているヒンジキャップと同様、ストラップバンド25と筒状側壁7との接合部には厚み分布が形成されており、ヒンジバンド23側に向かって漸次薄くなっている。従って、
図12の背面図及び
図14の部分拡大図に示されているように、ストラップバンド25の下面と筒状側壁7との接合ライン51は、ヒンジバンド23側に向かって傾斜した傾斜面となっている。このような形態と上述した段差部73との併用により、ストラップバンド25での白化防止効果をより向上させることができる。
さらに、
図11及び
図12に示されているように、この態様のヒンジキャップにおいても、ヒンジバンド23の下面には、前述した逆V字型の溝60及び水平面63が形成され、ヒンジバンド23の下面と筒状側壁7の外面との接合ライン23aは、キャップ軸線Lに対して垂直な面上に位置するように設定されている。これにより、ヒンジバンド23での白化も有効に防止される。
【0055】
上述したように、本発明のヒンジキャップでは、上蓋3の開け閉めを繰り返し行った場合においても、ストラップバンド25やヒンジバンド23での白化が効果的に防止され、このような白化によりキャップの外観が損なわれることがない。また、白化が防止されているため、上蓋3の開け閉めを頻繁に繰り返し行った場合にも、ストラップバンド25やヒンジバンド23での剥離及び破断を生じることもない。
【0056】
尚、本発明は、
図1乃至
図14に示されているように、キャップ本体1の筒状側壁7が内側壁7aと外側壁7bとに分断された二重壁構造となっているタイプのヒンジキャップに最も好適に適用される。
即ち、筒状側壁7が上記のように二重構造となっているヒンジキャップは、特にヒンジバンド23やストラップバンド25での白化が生じ易い。おそらく、キャップの成形に際して、溶融樹脂が、外側壁7bに相当する狭い金型空間を通った後に、ヒンジバンド23やストラップバンド25に相当するさらに狭い金型空間に流入して成形が行われるため、ヒンジバンド23やストラップバンド25で樹脂の流動配向化が生じ易く、この流動配向化を通じて配向結晶化が生じ、従って白化が生じ易くなっているものと思われる。本発明では、このようなヒンジキャップに適用することにより、この白化を効果的に防止し、このような二重壁構造のヒンジキャップの優れた分別廃棄性を発揮せしめることが可能となるのである。
【実施例】
【0057】
<実施例1>
図1乃至
図4に示されている形状のキャップを、ポリエチレンを用いての射出成形により成形した。即ち、このキャップでは、ストラップバンド25の筒状側壁7との接合部との厚みがヒンジバンド23から離れた端部で厚く、ヒンジバンド23側に向かって漸次薄くなるようにし(具体的には、ヒンジバンド23とは離れた側の端部での曲率面の曲率半径をR1とし、ヒンジバンド23側での端部の曲率半径をR0.2とする)、同時に、ヒンジバンド23の下面には逆V字型の溝60を形成し且つ溝60から上蓋3のスカート部33までの間の面が水平面となるようにした。
かかるキャップを多数成形し、その上蓋を閉じた状態でストラップバンド25及びヒンジバンド23の白化を観察したが、全てのキャップについて白化は認められなかった。
また、上記のキャップについて、上蓋の開け閉めを繰り返し行ったが、白化は全く観察されなかった。
【0058】
<実施例2>
ストラップバンド25の形状を、
図9乃至
図11に示されているように、2つの段差73を有するものとした以外は、実施例1と全く同様の形状のキャップを成形した。
このキャップについて、実施例1と同様に、上蓋を閉じた状態でストラップバンド25及びヒンジバンド23の白化を観察したが、全てのキャップについて白化は認められなかった。
また、上記のキャップについて、上蓋の開け閉めを繰り返し行ったが、白化は全く観察されなかった。
【0059】
<比較例1>
ストラップバンドの厚みを、筒状側壁7との接合部との厚みがヒンジバンド23から離れた端部からヒンジバンド23側に向かって均一となるようにし(具体的には、ヒンジバンド23とは離れた側の端部での曲率面の曲率半径及びヒンジバンド23側での端部の曲率半径を何れもR1とする)、且つヒンジバンド23の下面に逆V字型の溝を形成しなかった以外は、実施例1と同様にしてキャップを成形した。
このキャップについて、実施例1と同様に、上蓋を閉じた状態でストラップバンド25及びヒンジバンド23の白化を観察したが、ストラップバンド25及びヒンジバンド23の何れについても、そのほとんどに白化が認められた。特に、ストラップバンド25では、筒状側壁7との接合部に沿って白化が生じていた。