(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータの巻上機点検台を実施するための形態を図に基づいて説明する。なお、以下の説明において、
図1に示す巻上機1と対向した正面位置で作業者が巻上機1を見る方向を前方とする。
【0012】
[第1実施形態]
本発明に係るエレベータの巻上機点検台の第1実施形態は、
図1に示すように昇降路2にベース3を介して配置された巻上機1を備えたエレベータに、巻上機1の保守点検を行うときに設けられる。このエレベータは、例えば図示されないが、昇降路2に配置された乗かごと、この乗かごと主ロープを介して昇降路内に吊り下げられた釣合い錘とを備えており、主ロープが巻上機1に巻き掛けられている。
【0013】
また、エレベータは、巻上機1の駆動を制御する制御盤(図示せず)を備えており、制御盤は昇降路2の下部のピット内に設けられている。この制御盤の制御を受けて巻上機1が駆動して巻上機1のシーブ(図示せず)が回転することにより、このシーブの回転方向に応じて乗かごが釣合い錘と相対的に昇降路2内を昇降するようになっている。さらに、エレベータは、例えば制御盤へ信号を出力する後述の信号出力装置を備えており、制御盤は、信号出力装置から信号が出力されたときに巻上機1を駆動可能とし、信号出力装置から信号が出力されなかったときに巻上機1を駆動不可とする制御を行うようにしている。
【0014】
本発明の第1実施形態では、作業者が巻上機1を昇降路2のピット内で保守点検できるようにベース3が昇降路2のピットの壁面に設置されている。このベース3は、例えば長手方向が鉛直方向に配置され、巻上機1の横幅(左右方向の幅)と同程度の間隔で離間してピットの壁面に取付けられた一対の縦枠3aと、両端が一対の縦枠3aの上端及び下端の後面に取付けられたL字型の上枠(図示せず)及び下枠3cとから構成されている。そして、巻上機1の一部である部材3bを縦枠3aに固定することで、巻上機1をベース3に固定している。
【0015】
この下枠3cは、例えば鉛直面内に配置され、左右方向の両端が一対の縦枠3の下端に当接した状態でボルト30で固定された鉛直下枠片3c1と、水平面内に配置され、鉛直下枠片3c1の下端から後方へ突出するように設けられた水平下枠片3c2とから成っている。
【0016】
本発明の第1実施形態は、上方に突出するようにベース3に設けられたブラケット4と、このブラケット4に一端が取付けられたフレーム部5と、このフレーム部5の他端を支持してこのフレーム部5を水平に保つ支柱7と、フレーム部5上に載置された踏台8とを備えている。なお、本発明の第1実施形態では、
図8に示すようにブラケット4をベース3の下枠3cに固定するのに例えばボルト20及びナット21を用いており、水平下枠片3c2のうち後述するブラケット4の水平ブラケット片4bの貫通孔41と対向する部分に、ボルト20の軸部20bを挿通させる貫通孔3c2aが穿設されている。
【0017】
ブラケット4は、例えば
図2に示すように鉛直面内に配置され、長手方向が左右方向に沿って配置された鉛直ブラケット片4aと、水平面内に配置され、鉛直ブラケット片4aの下端から前方へ突出するように設けられた水平ブラケット片4bとを有している。本発明の第1実施形態では、ブラケット4の鉛直ブラケット片4a及び水平ブラケット片4bは、例えば1枚の平板を折曲げて形成されている。そのため、ブラケット4は、鉛直ブラケット片4aと水平ブラケット片4bとの接続部分に曲げ部43を有するL字型になっている。
【0018】
また、水平ブラケット片4bは、中央部に対して対称に穿設され、ボルト20の軸部20bを挿通させる貫通孔41を有している。そして、
図8に示すようにブラケット4と下枠3cが互いに対向するように水平ブラケット片4bが水平下枠片3c2上に載置された状態で、ボルト20の軸部20bが上方から水平ブラケット片4b及び水平下枠片3c2の各貫通孔41,3c2aに挿通され、突出した軸部20bに下方からナット21が螺合されている。
【0019】
フレーム部5は、例えば
図3に示すように互いに離間して長手方向が前後方向に沿って配置され、踏台8を支持する一対のL字型の支持フレーム51を有している。これらの各支持フレーム51は、水平面内に配置され、ブラケット4よりも上側に配置される水平支持フレーム片51aと、鉛直面内に配置され、水平支持フレーム片51aの左右の外側端部から下方に突出するように設けられた鉛直支持フレーム片51bと、鉛直支持フレーム片51bの外側面に左右方向へ突起した突起部51cとから構成されている。
【0020】
また、フレーム部5は、一端に設けられ、ブラケット4に引掛けるフック部52を有している。このフック部52は、例えば一対の支持フレーム51の前端部を連結するL字型の連結部材から成り、この連結部材は、水平面内に配置され、左右の両端が一対の支持フレーム51の水平支持フレーム片51aのうち前端部の下側面に例えば溶接で取付けられた水平フック片52aと、鉛直面内に配置され、水平フック片52aの前端から下方に突出するように設けられた鉛直フック片52bとから構成されている。これらの水平フック片52a及び鉛直フック片52bは、長手方向が左右方向に沿って配置されている。
【0021】
さらに、本発明の第1実施形態は、ブラケット4とフレーム部5とを固定する固定部を備えており、この固定部は、例えば
図8、
図9に示すようにブラケット4とフック部52とを連結し、
図9に示すように軸部9bに雄螺子が形成されたボルト9と、ブラケット4に穿設され、ボルト9の軸部9bを挿通させる貫通孔42(
図2参照)と、フック部52の鉛直フック片52bに設けられ、ボルト9の雄螺子と螺合する雌螺子54(
図3参照)とを含んでいる。なお、貫通孔42は、例えばブラケット4の鉛直ブラケット片4aの中央部に位置している。
【0022】
また、フレーム部5は、鉛直フック片52bの両面のうちブラケット4の鉛直ブラケット片4aと対向する側の面に設けられたスペーサ55を有している(
図8、
図9参照)。このスペーサ55は、例えば内径が鉛直フック片52bに形成された雌螺子54の谷の径よりも大きく設定され、軸線がこの雌螺子54の軸線と重なるように配置された円筒型になっている。そして、フレーム部5は、各支持フレーム51の両端のうちフレーム部52と反対側の一端(後端)に支柱7の上端が差込まれる差込部53が設けられている(
図3、
図9参照)。なお、各水平支持フレーム片51a上の前後の両端上には、踏台8を支持して前後方向の移動を規制する支持片57が設けられている。
【0023】
また、本発明の第1実施形態では、支柱7は、例えば
図4に示すように長手方向が鉛直方向に配置され、上端がフレーム部5の各差込部53に差込まれるように差込部53の間隔と同じ間隔で離間して配置された一対の縦柱71と、これらの縦柱71の上部を連結する上部横桟72aと、各縦柱71の下部を連結する下部横桟72bと、各縦柱71の下端に取付けられ、中央に螺子孔(図示せず)が穿設された厚板73と、この厚板73の螺子孔に差込まれたジャッキボルト74とから構成されている。
【0024】
このジャッキボルト74は、厚板73の螺子孔に差込む程度を調整することによって厚板73から下方へ突出する長さが設定されるようになっている。さらに、支柱7は、例えば
図10に示すように一端が一対の縦柱71のうち左右の外側に回動可能に設けられ、他端にフレーム部5の各支持フレーム51の突起部51cに係合するだるま状の係合孔78aが形成された一対の筋交い78を有している。
【0025】
各筋交い78の長さは、例えば支柱7が床面6に立設したときに、筋交い78の係合孔78aがフレーム部5の各支持フレーム51の突起部51cに係合して支柱7とフレーム部5が垂直に固定されるように設定されている。上述した踏台8は、例えば前後方向の長さが各支持片57間に介装される大きさに設定され、左右方向の幅がフレーム部5の左右方向の幅よりも大きく設定された直方体の板から成っている。
【0026】
本発明の第1実施形態では、上述した信号出力装置は、例えば
図5〜
図7に示すように一端が制御盤に接続されたケーブル17と、このケーブル17の他端に設けられたコネクタプラグ18と、矢印K(
図5参照)に示すようにこのコネクタプラグ18が接続されて制御盤へ信号を出力するコネクタキャップ16とを有している。また、本発明の第1実施形態は、信号出力装置から制御盤へ信号が出力された状態でブラケット4にフレーム部5が取付けられないようにする取付防止装置を備えている。この取付防止装置は、巻上機1の保守点検を行わないときに設けられるものである。
【0027】
具体的には、この取付防止装置は、例えばブラケット4のうちフレーム部5の引掛り部分に着脱可能に取付られ、ブラケット4に対してコネクタキャップ16の位置を固定するコネクタキャップ位置固定部を有している。このコネクタキャップ位置固定部は、例えば矢印J(
図5参照)に示すようにコネクタキャップ16が取付けられ、開口側を下方に向けた状態でブラケット4とベース3の下枠3cとの間に配置されたコ字型のコネクタキャップ取付ブラケット15と、このコネクタキャップ取付ブラケット15の内側にケーブル17を部分的に収容するケーブル収容部とから構成されている。
【0028】
コネクタキャップ取付ブラケット15は、水平面内に配置され、上面にコネクタキャップ16が取付けられる水平コネクタキャップ取付ブラケット片15aと、鉛直面内に配置され、水平コネクタキャップ取付ブラケット片15aの前後の両端からそれぞれ下方に突出した一対の鉛直コネクタキャップ取付ブラケット片15bとから構成されている。これらの一対の鉛直コネクタキャップ取付ブラケット片15bのうちブラケット4の鉛直ブラケット4a側(後側)には、ボルト9の軸部9bを挿通させる貫通孔15b1が穿設されている。
【0029】
本発明の第1実施形態では、矢印H、G(
図5参照)に示すようにボルト9の軸部9bが後方からブラケット4の貫通孔42及び後側の鉛直コネクタキャップ取付ブラケット片15bの貫通孔15b1に挿通された状態で、軸線がこの貫通穴15b1の軸先と重なるようにあらかじめ溶接固定されたナット19に締め付けることにより、コネクタキャップ取付ブラケット15がブラケット4の鉛直ブラケット片4aに固定されている。また、水平コネクタキャップ取付ブラケット片15aのコネクタキャップ16の取付部分の近傍には、ケーブル17を内側からコネクタキャップ16側へ挿通させるケーブル挿通孔151が穿設されている。なお、コネクタキャップ16のコネクタプラグ18との接続部分は、ケーブル挿通孔151側に向けられている。
【0030】
一方、ケーブル収容部は、ケーブル17を固定するL字型のケーブル固定ブラケット14と、このケーブル固定ブラケット14にケーブル17を締付ける締付部とを含んでいる。ケーブル固定ブラケット14は、例えば水平面内に配置され、ブラケット4の水平ブラケット片4bの上面にボルト等(図示せず)で固定された水平ケーブル固定ブラケット片14aと、矢印F(
図5参照)に示すように鉛直面内にブラケット4の鉛直ブラケット片4a及びベース3の鉛直下枠片3c1と対向するように配置され、水平ケーブル固定ブラケット片14aの後端から上方へ突出して先端がケーブル挿通孔151に挿通される鉛直ケーブル固定ブラケット片14bとから成っている。
【0031】
締付部は、
図7に示すように例えばケーブル17及び鉛直ケーブル固定ブラケット片14bを結束する結束バンド142と、
図5に示すように鉛直ケーブル固定ブラケット片14bに穿設され、結束バンド142を挿通させる結束バンド挿通孔141とから成っている。本発明の第1実施形態は、ケーブル17を、上述したコネクタキャップ取付ブラケット15によってコネクタキャップ16の位置が固定された状態でコネクタプラグ18がコネクタキャップ16に接続される最短の長さに設定している。
【0032】
次に、本発明の第1実施形態に係る巻上機点検台の組立作業を
図8〜
図10を参照して詳細に説明する。
【0033】
本発明の第1実施形態では、まず巻上機1の保守点検を行う作業者は昇降路2のピット内に入り、コネクタプラグ18をコネクタキャップ16から取外すと、電気回路上のエレベータの運転と停止を切替えるリレーがOFFとなり、制御盤が巻上機1を駆動不可に制御するので、乗かごは走行不可となる。次に、作業者は、コネクタキャップ取付ブラケット15に溶接固定されたナット19に締付けているボルト9を取外し、コネクタキャップ取付ブラケット15をブラケット4の鉛直ブラケット片4aから取外す。
【0034】
次に、作業者は、
図8の矢印Aに示すようにフレーム部5のフック部52をベース3の下枠3cに常時固定されているブラケット4に引掛ける。このとき、フック部52のスペーサ55がブラケット4の鉛直ブラケット片4aの前面に当接すると共に、フック部52の鉛直フック片52bの先端56がブラケット4の水平ブラケット片4bの上面の水平部分44に当接する。
【0035】
次に、
図9の矢印Bに示すように作業者はフック部52をブラケット4に引掛けた状態でボルト9の軸部9bを後方からスペーサ55、ブラケット4の鉛直ブラケット片4aの貫通孔42に挿通し、ボルト9の雄螺子をフック部52の雌螺子54に螺合する。そして、作業者がフレーム部5の後部を片手で持上げることにより、フレーム部5が撓んで水平状態から後部が上方へ少し傾いた状態となる。
【0036】
作業者は、この状態を維持したまま他方の片手で矢印Cに示すように支柱7の上端をフレーム部5の差込部53に挿入し、ジャッキボルト74を床面6に立設させることにより、フレーム部5を支柱7で支持してフレーム部5の姿勢を水平に保つ。なお、作業者は、支柱7を設置したときにフレーム部5と支柱7が垂直となるように支柱7の厚板73から下方へ突出するジャッキボルト74の長さを予め設定している。
【0037】
次に、作業者は、
図10の矢印Dに示すように鉛直方向に垂れ下がっている左右の各筋交い78を上端部に位置する支点75の周りにフレーム部5の位置まで回動させ、各筋交い78の係合孔78aをフレーム部5の支持フレーム51の突起部51cに係合させる。そして、作業者は、矢印Eに示すように踏台8を上方からフレーム部5の支持片57間に介装してフレーム部5の各支持フレーム51上に載置し、本発明の第1実施形態に係る巻上機点検台の組立作業を終了する。なお、作業者は、例えば踏台8に昇降する際にタラップ(図示せず)を用いるようにしている。また、本発明の第1実施形態に係る巻上機点検台の取外作業は上述した組立作業の手順と逆の手順を行うことにより、常時固定されるブラケット4だけベース3の下枠3cに残され、それ以外の取外されたもののうちフレーム部5、踏台8、及びボルト9は単品となり、その他のもの(支柱7、筋交い78、及び上述したこれらに付随するボルト等)は組品としてピット内に保管される。
【0038】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、フレーム部5の前端のフック部52をブラケット4に引掛けると共に、フレーム部5の後端を支柱7で支持した状態で踏台8をフレーム部5上に載置する組立型にしたので、作業者は巻上機1の保守点検を行うときには本発明の第1実施形態に係る巻上機点検台をピット内に迅速に設置することができる。そして、作業者は巻上機1の保守点検を行わないときには、ピット内の決まった場所に当該巻上機点検台の収納スペースを確保しなくても、当該巻上機点検台を分解してピット内の空いたスペースに保管することができる。従って、本発明の第1実施形態は、収納場所が限定されないので、収納場所の自由度を高めることができ、汎用性に優れている。
【0039】
さらに、本発明の第1実施形態では、支柱7の厚板73に差込まれたジャッキボルト74が厚板73から下方へ突出する長さをジャッキボルト4の長さの範囲で自由に設定できるので、支柱7全体の長さを微調整することができる。これにより、エレベータの用途や仕様によってピット内の巻上機1等の機器配置が異なっていても、機器配置毎に適応する巻上機点検台を用意しなくて済み、巻上機点検台の手配や製作にかかる手間を省くと共に、コストを抑えることができる。
【0040】
また、本発明の第1実施形態は、フック部52をブラケット4に引掛けた状態でボルト9の軸部9bを後方からスペーサ55、ブラケット4の鉛直ブラケット片4aの貫通孔42に挿通し、ボルト9の雄螺子をフック部52の雌螺子54に螺合してブラケット4とフレーム部5とをボルト9で固定することにより、フレーム部5をブラケット4を介して強固にベース3に取付けることができる。
【0041】
特に、ボルト9は、踏台8上に作業者が乗ったときの反力を受け持つものではなく、フレーム部5が左右にずれる不安定な状態を防ぐものであるから、フレーム部5の取付状態の安定性を向上させることができる。さらに、フレーム部5のフック部52がブラケット4に引っ掛かることにより、ブラケット4の鉛直ブラケット片4aの貫通孔42をフック部52の鉛直フック片52bに形成された雌螺子54に位置決めし易くなるので、ブラケット4とフレーム部5との固定作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、本発明の第1実施形態は、作業者が巻上機1の保守点検を行うときには、最初にコネクタプラグ18をコネクタキャップ16から取外すことにより、電気回路上のエレベータの運転と停止を切替えるリレーがOFFとなり、制御盤が巻上機1を駆動不可に制御する。そのため、作業者の保守点検作業中に乗かごが走行することがないので、作業者の安全を確保することができる。
【0043】
また、本発明の第1実施形態は、コネクタキャップ取付ブラケット15がブラケット4の鉛直ブラケット片4aに固定されており、作業者が巻上機1の保守点検を行うときにフレーム部5のフック部52を引掛けようとしても、フック部52の先端56がコネクタキャップ取付ブラケット15の水平コネクタキャップ取付ブラケット15aに当接するので、コネクタキャップ取付ブラケット15をブラケット4から取外す必要がある。
【0044】
ここで、コネクタキャップ取付ブラケット15には、ケーブル17先端のコネクタプラグ18が接続されたコネクタキャップ16が取付けられており、ケーブル17がコネクタキャップ取付ブラケット15にケーブル挿通孔151を通して部分的に収容された状態でコネクタプラグ18がコネクタキャップ16に接続される最短の長さに設定されているので、作業者はコネクタキャップ取付ブラケット15を取外すには、まずコネクタプラグ18をコネクタキャップ16から取外す手順を行わなければならない。
【0045】
従って、フレーム部5のフック部52がブラケット4に適切に引掛けられた場合には、コネクタプラグ18がコネクタキャップ16から取外されているので、制御盤が巻上機1を駆動不可に制御して乗かごを確実に停止させることができる。このように、コネクタキャップ取付ブラケット15がブラケット4へのフレーム部5の取付防止装置として機能するだけでなく、コネクタキャップ16に接続されるケーブル17の長さを設定することで安全装置としても有効に機能するので、高い性能を持つ巻上機点検台を提供することができる。さらに、本発明の第1実施形態では、ケーブル17がコネクタキャップ取付ブラケット15に部分的に収容される際に、ケーブル固定ブラケット14に結束バンド142で結束されることにより、ケーブル17と他の部材との干渉を抑えることができるので、ケーブル17の破損を防止することができる。
【0046】
また、本発明の第1実施形態は、コネクタキャップ取付ブラケット15をブラケット4の鉛直ブラケット片4aに取付ける際にブラケット4とフレーム部5とを固定するボルト9を用いているので、巻上機1の保守点検が行われないときには、ボルト9の軸部9bを後方からブラケット4の貫通孔42及び後側の鉛直コネクタキャップ取付ブラケット片15bの貫通孔15b1に挿通し、ナット19を前方からボルト9の軸部9bに螺合して締付けておくことにより、ボルト9の紛失を防止することができる。このように、ボルト9を有効に活用して本発明の第1実施形態に係る巻上機点検台の部品点数を減らすと共に、ブラケット4及びコネクタキャップ取付ブラケット15をボルト9の保管場所として利用することができ、優れた利便性を確保することができる。
【0047】
また、本発明の第1実施形態は、フレーム部5におけるフック部52の鉛直フック片52bの両面のうちブラケット4の鉛直ブラケット片4aと対向する側の面にスペーサ55が設けられているので、作業者がフック部52をブラケット4に引掛けると、スペーサ55がブラケット4の鉛直ブラケット片4aの前面に当接することにより、フック部52の鉛直フック片52bの先端56がブラケット4の曲げ部43に当接することを回避することができる。そのため、フック部52の鉛直フック片52bの先端56がブラケット4の水平ブラケット片4bの上面の水平部分44に当接し、作業者が踏台8上に乗ったときの反力をフック部52の鉛直フック片52bの先端56で受けることができるので、ブラケット4とフレーム部5とを固定するボルト9に多大な応力が発生することを防ぐことができる。これにより、ボルト9を長持ちさせることができ、ボルト9の交換作業の頻度を減少させることができる。なお、万一、ボルト9に折損が発生した場合でも、フレーム部5のフック部52がブラケット4に引掛かった状態で保たれるので、作業者の安全を確保することができる。
【0048】
また、本発明の第1実施形態は、組立作業において作業者はフレーム部5のフック部52をブラケット4に引掛けると、フレーム部5が自重によりブラケット4との接触部分を支点として後部が下方に回動するモーメントが発生し、フレーム部5が水平状態から後方下に傾いた姿勢で保持される。これにより、作業者は支柱7をフレーム部5に取付ける前に、フレーム部5の周辺から一時的に離れることができるので、高い利便性を得ることができる。さらに、支柱7は、一対の縦柱71を上部横桟72aと下部横桟72bで連結して一体に構成されているので、作業者は支柱7をフレーム部5に取付ける際に、一回の動作で各縦柱71をフレーム部5の差込部53に同時に差込むことができる。これにより、組立作業の工数を減らすことができ、作業者一人でも組立作業を容易に行うことができる。
【0049】
また、本発明の第1実施形態は、支柱7の各縦柱71のうち左右の外側に筋交い78が回動可能に設けられており、支柱7とフレーム部5が垂直になるように筋交い78の長さ、筋交い78の係合片78aの位置、及びフレーム部5の突起部51cの位置が設定されている。そのため、作業者が各縦柱71の筋交い78を回動して筋交い78の係合孔78aをフレーム部5の突起部51cに係合させることにより、支柱7がフレーム部5に対して垂直に維持されることを保証すると共に、作業者が踏台8に乗ってもフレーム部5の安定した状態を保つことができるので、作業者の安全性をより向上させることができる。なお、本発明の第1実施形態は、作業者は踏台8に昇降する際にタラップを用いているので、コストが上昇することを抑えることができる。
【0050】
なお本実施形態において、信号出力装置は、一端が制御盤に接続されたケーブル17と、このケーブル17の他端に設けられたコネクタプラグ18と、コネクタプラグ18が接続されて制御盤へ信号を出力するコネクタキャップ16で構成した例を挙げて説明した。このような構造としては、コネクタキャップ16側に信号を出力可能な装置を用いること
ができるが、これのみに限られるものではなく、例えば信号出力自体は制御盤が自ら行い、コネクタプラグ18とコネクタキャップ16を接続することで、制御盤からケーブル17、コネクタプラグ18、コネクタキャップ16、コネクタプラグ18、ケーブル17を通って制御盤に帰還するループ回路を構成し、コネクタプラグ18とコネクタキャップ16が切り離されるとこのループ回路を断線して信号の検知をできない状態とすることで、コネクタプラグ18とコネクタキャップ16の切り離しを検知する構成としてもよい。このような構成であれば、低コストで検知回路を実現しながら高い安全性を確保できる。
【0051】
[第2実施形態]
図11は本発明に係るエレベータの巻上機点検台の第2実施形態の支柱の構成を示す図、
図12は
図11に示す本発明の第2実施形態に備えられた上部支柱の構成を示す図、
図13は
図11に示す本発明の第2実施形態に備えられた下部支柱の要部の構成を示す図である。
【0052】
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、一対の縦柱71、上部横桟72a、下部横桟72b、厚板73、及びジャッキボルト74から構成されているのに対して、第2実施形態は、
図11に示すように支柱110は、上側に配置され、内部に長手方向に沿って中空部が形成された上側支柱11と、この上側支柱11の中空部に一部が挿入され、この上側支柱11よりも下側に配置された下側支柱12と、上側支柱11に対して下側支柱12をスライドさせた状態で固定する支柱固定部とを有することである。
【0053】
具体的には、上部支柱11は、第1実施形態における支柱7と同様に、例えば
図12に示すように長手方向が鉛直方向に配置され、上端がフレーム部5の各差込部53に差込まれるように差込部53の間隔と同じ間隔で離間して配置された一対の上部縦柱111と、これらの縦柱111の上部を連結する上部横桟112aと、各縦柱111の下部を連結する下部横桟112bとを具備している。各上部縦柱111は、例えば筒状に形成された中空管から成っている。
【0054】
また、下部支柱12は、例えば
図11、
図13に示すように上端が上部支柱11の各上部縦柱111の中空部に差込まれるように各上部縦柱111の間隔と同じ間隔で離間して配置された一対の下部縦柱115と、これらの各縦柱115の下端に取付けられ、中央に螺子孔(図示せず)が穿設された厚板113と、この各厚板113の螺子孔に差込まれたジャッキボルト114とから構成されている。各下部縦柱115は、例えば上部支柱11の各縦柱111の中空部よりも外周が若干小さい寸法に設定された筒状の中空管から成っている。
【0055】
そして
図12に示すように、支柱固定部は、例えば上部支柱11の各縦柱111の下端部のうち左右の両側に所定のピッチ間隔11Pで上下に離間して穿設された一対の貫通孔116と、
図11に示すようにこれらの各貫通孔116に挿通する4つのボルト13及びナット(図示せず)と、
図11及び
図13に示すように下部支柱12の各縦柱115の左右の両側に上記ピッチ間隔11Pと同じ間隔で上下に離間して穿設された複数の貫通孔121とから構成されている。従って、本発明の第2実施形態は、上部支柱11における左右の各縦柱111の上下一対の貫通孔116を、下部支柱12の左右の各縦柱115の複数の貫通孔121のうちいずれかの上下に隣接する2つの貫通孔に合わせた状態で、4つのボルト13の軸部を挿通させてナットを螺合させることにより、上部支柱11と下部支柱12が連結されるようになっている。なお、下部支柱12の各縦柱115の長さはジャッキボルト114の長さよりも大きく設定されている。その他の構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と重複又は対応する部分には同一の符号を付している。
【0056】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が得られる他、ボルト13の軸部を挿通させる下部支柱12の各縦柱115の貫通孔を任意に選択することにより、上部支柱11の各縦柱111に差込まれた下部支柱12の各縦柱115が上部支柱11の下端から下方へ突出する長さを縦柱115の長さの範囲で自由に設定できるので、支柱
110全体の長さを大幅に調整することができる。これにより、現地のピットの深さが当初の予定と大きく異なっていても、ピットの深さに応じて支柱
110全体の長さを大きく変更できるので、現場毎に適応する巻上機点検台を用意しなくて済み、巻上機点検台の手配や製作にかかる手間を省くと共に、コストを抑えることができる。
【0057】
[第3実施形態]
図14は本発明に係るエレベータの巻上機点検台の第3実施形態のブラケットの構成を示す図である。
【0058】
本発明の第3実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、固定部が、ブラケット4の鉛直ブラケット片4aの中央部に穿設され、ボルト9の軸部9bを挿通させる1つの貫通孔42を含んでいるのに対して、本実施形態における、固定部は、例えば
図14に示すようにブラケット4の鉛直ブラケット片4aの長手方向に沿って離間して設けられ、ボルト9の軸部9bを挿通させる複数の貫通孔42を含んでいることである。本発明の第3実施形態では、貫通孔42の個数として例えば5つあり、左右対称に配置されている。その他の構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と重複又は対応する部分には同一の符号を付している。
【0059】
このように構成した本発明の第3実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が得られる他、ボルト9の軸部9bを挿通させるブラケット4の鉛直ブラケット片4aの貫通孔42を任意に選択することにより、点検対象に向かって左右方向における踏台8の設置位置を変更することができる。従って、例えばブラケット4の貫通孔42のうちいずれかの近傍に機器があって踏台8を設置し難い場合でも、踏台8を左右方向にずらしてボルト9の軸部9bを他の貫通孔42に挿通させることにより、現地の機器配置の状況に応じて適切な対応を図ることができる。これにより、ピット内の機器配置に拘わらず、共通の踏台8をフレーム部5に設置できるので、汎用性をさらに向上させることができる。
【0060】
なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。