特許第5827689号(P5827689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5827689光起電装置のp−型半導体層を形成する方法及び熱界面を形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5827689
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】光起電装置のp−型半導体層を形成する方法及び熱界面を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20151112BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20151112BHJP
   C25D 3/54 20060101ALI20151112BHJP
   C25D 3/56 20060101ALI20151112BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   H01L31/06 460
   H01L31/04 420
   C25D3/54
   C25D3/56 Z
   C25D7/00 G
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-526388(P2013-526388)
(86)(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公表番号】特表2013-536986(P2013-536986A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】EP2011063558
(87)【国際公開番号】WO2012028415
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】12/874,496
(32)【優先日】2010年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【復代理人】
【識別番号】100086243
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 博
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】アフメッド、シャファート
(72)【発明者】
【氏名】デリジャンニ、ハリクリア
(72)【発明者】
【氏名】ロマンキウ、ルボミル
(72)【発明者】
【氏名】ルーター、キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】フアン、キアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディアナタン、ラマン
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−505045(JP,A)
【文献】 特開平09−013190(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/006045(WO,A1)
【文献】 特開平11−233696(JP,A)
【文献】 特開平07−135279(JP,A)
【文献】 特表2000−501232(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/144036(WO,A1)
【文献】 特開平09−148602(JP,A)
【文献】 特開平09−031683(JP,A)
【文献】 特開平08−330613(JP,A)
【文献】 特表2009−530812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
C25D 3/54−3/56
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の導電表面上に銅の第1層を電気めっきする工程と、
前記第1層上にインジウムの第2層を電気めっきする工程と、
前記第2層上にガリウムの第3層を電気めっきする工程と、
前記第1層、第2層及び第3層をセレン源若しくは硫黄源又はその両方の存在下でアニールしてp−型半導体層を形成する工程とを含み、
電流を印加して前記ガリウムを電気めっきする工程で使用するめっき浴は、ガリウム元素を含む前駆体と、少なくとも硫黄原子もしくは少なくとも窒素原子またはその両方を有する有機添加剤と、酸化ヒ素、酸化アンチモン及び酸化ビスマスからなる群から選択された無機金属酸化物と、溶媒とを含み、前記めっき浴のpHの範囲は、0から2.6未満のpHの範囲である、光起電装置のp−型半導体層を形成する方法。
【請求項2】
前記めっき浴が硫酸ナトリウムを0.01Mから2Mの濃度で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化ヒ素は、As;As、KHAsO、KHAsO、KAsO、KAsO、KAsO、NaHAsO、NaHAsO、NaASO、NaASO、NaAsO、又はNaASであり、前記酸化アンチモンは、Sb、Sb、KHSbO、KHSbO、KSbO、KSbO、KSbO、NaHSbO、NaHSbO、NaSbO、NaSbO、NaSbO又はNaSbであり、そして、前記酸化ビスマスは、Bi、KBiO、KBiO、NaBiO又はNaBiOである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無機金属酸化物が1ppmから10,000ppmの量である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機添加剤がチオ尿素、チアジン、スルホン酸、アリルフェニルスルホン、スルファミド、ジチオキソ−ビスヒドロキシルアミノモリブデン錯体、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記p−型半導体のCu/(In+Ga)比が0.8から0.9であり、Ga/(Ga+In)比が0.3から0.33である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基板の導電表面上に銅もしくは銅−ガリウム合金層の第1層を電気めっきする工程と、
前記第1層上にインジウム−ガリウム合金の第2層を電気めっきする工程と、
前記第1層及び第2層をセレン源若しくは硫黄源又はその両方の存在下でアニールしてp−型半導体層を形成する工程とを含み、
電流を印加して前記銅−ガリウム合金層を電気めっきする工程で使用するめっき浴は、銅及びガリウム元素を含む前駆体と、少なくとも硫黄原子もしくは少なくとも窒素原子またはその両方を有する有機添加剤と、酸化ヒ素、酸化アンチモン及び酸化ビスマスからなる群から選択された無機金属酸化物と、溶媒とを含み、前記めっき浴のpHの範囲は、0から2.6未満のpHの範囲であり、そして
電流を印加して前記インジウム−ガリウム合金層を電気めっきする工程で使用するめっき浴は、インジウム及びガリウム元素を含む前駆体と、少なくとも硫黄原子もしくは少なくとも窒素原子またはその両方を有する有機添加剤と、酸化ヒ素、酸化アンチモン及び酸化ビスマスからなる群から選択された無機金属酸化物と、溶媒とを含み、前記めっき浴のpHの範囲は、0から2.6未満のpHの範囲である、光起電装置のp−型半導体層を形成する方法。
【請求項8】
前記めっき浴が硫酸ナトリウムを0.01Mから2Mの濃度で含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化ヒ素は、As;As、KHAsO、KHAsO、KAsO、KAsO、KAsO、NaHAsO、NaHAsO、NaASO、NaASO、NaAsO、又はNaASであり、前記酸化アンチモンは、Sb、Sb、KHSbO、KHSbO、KSbO、KSbO、KSbO、NaHSbO、NaHSbO、NaSbO、NaSbO、NaSbO又はNaSbであり、そして、前記酸化ビスマスは、Bi、KBiO、KBiO、NaBiO又はNaBiOである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記無機金属酸化物が1ppmから10,000ppmの量である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機添加剤がチオ尿素、チアジン、スルホン酸、アリルフェニルスルホン、スルファミド、ジチオキソ−ビスヒドロキシルアミノモリブデン錯体、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記p−型半導体のCu/(In+Ga)比が0.8から0.9であり、Ga/(Ga+In)比が0.3から0.33である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
マイクロプロセッサに連結された発熱表面上にガリウムまたはガリウム合金の層を電気めっきする工程と、
ヒート・シンクまたはヒート・スプレッダを前記ガリウムまたはガリウム合金の層に連結して熱界面を形成する工程とを含み、
電流を印加して前記ガリウムまたはガリウム合金の層を電気めっきする工程で使用するめっき浴は、ガリウム塩もしくは前記ガリウム合金を形成する元素を含む前駆体と、少なくとも硫黄原子もしくは少なくとも窒素原子またはその両方を有する有機添加剤と、酸化ヒ素、酸化アンチモン及び酸化ビスマスからなる群から選択された無機金属酸化物と、溶媒とを含み、前記めっき浴のpHの範囲は、0超から2.6未満のpHの範囲である、熱界面を形成する方法。
【請求項14】
前記酸化ヒ素は、As;As、KHAsO、KHAsO、KAsO、KAsO、KAsO、NaHAsO、NaHAsO、NaASO、NaASO、NaAsO、又はNaASであり、前記酸化アンチモンは、Sb、Sb、KHSbO、KHSbO、KSbO、KSbO、KSbO、NaHSbO、NaHSbO、NaSbO、NaSbO、NaSbO又はNaSbであり、そして、前記酸化ビスマスは、Bi、KBiO、KBiO、NaBiO又はNaBiOである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記無機金属酸化物が1ppmから10,000ppmの量である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記めっき浴がメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸およびブタンスルホン酸からなる群から選ばれるアルカンスルホン酸を含み、このアルカンスルホン酸の濃度が0.1Mから2Mである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記めっき浴が硫酸ナトリウムを0.01Mから2Mの濃度で含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記有機添加剤がチオ尿素、チアジン、スルホン酸、アリルフェニルスルホン、スルファミド、ジチオキソ−ビスヒドロキシルアミノモリブデン錯体、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記めっき浴が錯化剤を含有しない、請求項13〜18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、銅、インジウム、ガリウムもしくはセレンまたはこれらのいずれかを含有する薄膜光起電装置および熱界面材料などの薄膜光起電装置を作製するためのガリウムおよびガリウム合金膜の電着プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
光起電用途において、電場および結果として生じる電流を作るために、異なる特性を有する半導体材料の2つの層が一般に用いられる。第1層は通常、n−型半導体材料であり、光を透過して下方のp−型半導体層材料層に光を届かせるために一般に薄厚である。後者の層は、吸収層ということもある。この吸収層は、n−型半導体材料層とともに、光源からの光子を吸収して高電流および改善された電圧を発生させるために適したバンド・ギャップをもたらす。p−型層として、銅−インジウム−ガリウム−二セレン化物半導体材料(すなわち、CuInGaSeおよびその変種CIGSともいう)または銅インジウム二セレン化物(すなわち、CuInSe、CISともいう)または銅ガリウム二セレン化物(すなわち、CuGaSe、CGSともいう)の薄膜は、ここ数年、光起電装置への使用が非常に注目されている。
【0003】
例として、p−型CIGS層は通常、n−型CdS層とともにp−nヘテロ接合CdS/CIGS装置を形成する。透明性を向上させるために、酸化亜鉛およびドープ型酸化亜鉛を添加してもよい。CIGSの直接エネルギー・ギャップの結果、光吸収係数が大きくなり、約1〜2μmの薄層の使用が可能となる。例として、CuInSe(CIS)半導体材料においてインジウムをガリウムで部分的に置換することにより、吸収層バンド・ギャップが1.02電子ボルト(eV)から1.1〜1.2eVに増加し、効率が大幅に向上したことが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CIGS構造の形成は通常、真空蒸着、化学蒸着または電着によって行われる。最も一般的な真空を用いたプロセスでは、銅、ガリウムおよびインジウムを同時蒸着または同時スパッタリングし、次に、得られた膜をセレンまたは硫黄を含有する蒸気でアニールして最終的なCIGS構造を形成する。他の選択肢として、銅、ガリウム、インジウムおよびセレンを加熱した基板上に直接に同時蒸着することがある。真空を用いない代替プロセスでは、前駆体材料のナノ粒子を基板上に蒸着させ、次にそのままの状態で(in situ)それらを焼結する。電着は、CIGS層を塗布するための他の低コストな代替法である。電着は、特にCIGSなどの光起電用途のガリウム薄膜を形成するための魅力的な選択肢であるが、現在のプロセスは一般に商業上実用的ではない。ガリウムの平衡電位は比較的高いことから、ガリウムは一般に陰極で水素を過剰に発生させずに蒸着することが困難な金属であると考えられている。陰極で水素が発生すると、蒸着電流の一部が基板または陰極上へのガリウム膜の形成ではなく、水素ガスを形成するために使われるため、蒸着効率が100%を下回ってしまう。過剰な水素の発生による低い陰極蒸着効率は、プロセスの再現性が低下する結果となる。これは、一部には低い陰極効率のため、そして最も重要なことには、蒸着膜の表面粗さが大きく蒸着物のモルフォロジが悪化して低品質となるためである。
【0005】
従って、ガリウムおよびガリウム合金を蒸着させるための改善された電着プロセス、ならびにバンド・ギャップが増加したこれらの金属を含み、光起電流が増加した新規な光起電装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は概して、光起電装置のp−型半導体層を形成する方法である。一態様において、上記方法は下記の工程を含む。基板の導電表面上に第1層を電気めっきする工程、ここで前記第1層は銅層および銅−ガリウム層からなる群から選ばれる;前記第1層上に第2層を電気めっきする工程、ここで上記第2層はインジウム層、ガリウム層、インジウム−ガリウム層、銅−インジウム二セレン化物層および銅−ガリウム−二セレン化物層からなる群から選ばれる;必要に応じて前記第2層上に第3層を電気めっきする工程、ここで前記第3層はガリウム層およびインジウム層からなる群から選ばれる;必要に応じて前記第3層上に第4層を電気めっきする工程、ここで前記第4層はセレンおよび硫黄からなる群から選ばれる;上記電気めっきが下記の工程を含む方法によって行われる:基板(i)と銅、ガリウム、インジウム、セレン、硫黄およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる元素を含む前駆体;必要に応じて半金属化合物添加剤;さらに必要に応じて少なくとも硫黄原子を有する有機添加剤;および前記前駆体を溶解する溶媒を含む溶液(ii)とを接触させる工程;ここで上記溶液は錯化剤を含有しない;前記溶液のpHを約0から約2.6未満のpHおよび約12.6から約14のpHからなる群から選ばれる範囲に調整し、電流を印加して前記基板を電気めっきして前記第1、第2、第3または第4層を製造する工程;ならびに前記第1、第2および第3層を、セレン源もしくは硫黄源またはその両方の存在下でアニールしてp−型半導体層を形成する工程。
【0007】
熱界面を形成する方法において、該方法はマイクロプロセッサに連結された発熱表面上にガリウムまたはガリウム合金の層を電気めっきする工程、ここで上記ガリウムまたはガリウム合金の電気めっきは、ガリウム塩、少なくとも1つの硫黄原子を含む任意の有機添加剤および溶媒を含む錯化剤非含有めっき浴に上記発熱表面を接触させる工程;上記めっき浴のpHを約0超から2.6未満のpHおよび約12.6超から約14のpHの群から選ばれる範囲に調整し、電流を印加して上記発熱表面を電気めっきして上記ガリウムまたはガリウム合金の層を製造する工程を含む;ならびにヒート・シンクまたはヒート・スプレッダを上記ガリウムまたはガリウム合金の層に連結して熱界面を形成する工程を含む。
【0008】
光起電装置は、ガリウムもしくはインジウムまたはガリウムおよびインジウムを含む合金を含む少なくとも1つの層、ここで上記少なくとも1つの層は電着により形成される;ならびに上記少なくとも1つの層中のヒ素、アンチモン、ビスマス、セレン、硫黄およびこれらの混合物からなる群から選ばれる不純物を含む。
【0009】
その他の特徴および利点は本発明の技術により実現される。本発明の他の実施形態および態様を本明細書に詳細に記載し、特許請求の範囲に記載する発明の一部とみなす。本発明の利点および特徴をより理解するために、以下の説明および図面を参照する。
【0010】
発明とみなされる主題を、明細書の結びの特許請求の範囲において特定しその権利を明白に主張する。本発明が有する前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面とともに以下に記載する詳細な説明により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるCIGS前駆体構造の断面図である。
図2】本発明によるCIGS前駆体構造の断面図である。
図3】本発明によるCIGS前駆体構造の断面図である。
図4】本発明によるCIGS前駆体構造の断面図である。
図5】ガリウム熱界面の断面図である。
図6】基板上にガリウム層を蒸着させるための電着装置の例を概略的に示す図である。
図7】インジウム層上にガリウムを電着し、引き続きアニールしてインジウム・リッチなガリウム共晶層を形成した積層膜の断面図の走査型電子顕微鏡写真である。
図8】チオ尿素を20mAcm−2添加した酸性メタンスルホン酸溶液から定電流で蒸着させたガリウムを上から見た図の走査型電子顕微鏡写真である。
図9】チオ尿素を30mAcm−2添加した酸性メタンスルホン酸溶液から定電流で蒸着させたガリウムを上から見た図の走査型電子顕微鏡写真である。
図10】添加剤を添加しない場合、三酸化ヒ素添加剤を添加した場合、ならびに三酸化ヒ素およびチオ尿素を添加剤として添加した場合の酸性ガリウムめっき浴におけるサイクリック・ボルタンメトリ・プロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明において、本発明の好ましい実施形態を、利点および特徴とともに図面を参照して例として説明する。
【0013】
本発明は、様々な光起電装置(例えば、CIGS、CIS、CGSなど)を形成するために望ましいものとしての、および熱界面としてのガリウムもしくはガリウム合金またはその両方の薄層を低コストで形成する電着プロセスを提供する。
【0014】
上記電着プロセスは、電気めっき溶液を用いて、組成的に高純度で、均一であり、実質的に欠陥を有さず、平滑な薄膜を高いめっき効率および再現性で蒸着させる。上記電気めっき溶液は、錯化剤を含有せず、高いpH範囲および低いpH範囲の両方で実施することができる。合金の薄膜を電気めっきすることもできる。望ましいガリウム合金の例は一般に目的用途に依存し、限定されないが、銀、銅、インジウム、亜鉛、スズ、鉛、銀、ビスマス、金、セレン、硫黄などのうち2成分、3成分またはそれより多い成分との合金が挙げられる。必要に応じて、上記合金は、電着されたガリウム層および1以上の合金元素金属層を含む積層膜をアニールすることによって形成することができる。このように、ガリウムまたはガリウム合金薄膜の低コストでの作製が達成され、ここでガリウム層またはガリウム合金層は均一な厚さおよび優れたモルフォロジを有し、実質的に欠陥を有さない。
【0015】
一実施形態において、ガリウムを電着して、積層膜内でのガリウムの相互拡散を制御するように構成されたCIGS前駆体構造を形成する。図1に例として示す実施形態において、まず導電層14を、金属バック接点として機能する基板12上に蒸着させる。この導電層は、限定されることなく、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、これらの対応する窒化物などを含むことができる。上記導電層は一般に、任意の手段によって約300nmから約600ナノメートル(nm)の厚さで蒸着される。次に、導電層14上に銅層16を約10nmから約500nmの厚さで蒸着させる;他の実施形態において、上記銅層は220nmから260nmの厚さであり;さらに他の実施形態において、上記銅層は約240nmの厚さである。次に、銅層16上にインジウム層18を50nmから500nmの厚さで蒸着させる;他の実施形態において、上記インジウム層は375nmから425nmの厚さであり;さらに他の実施形態において、上記インジウム層は約420nmの厚さである。次に、インジウム層18上にガリウム層20を20nmから200nmの厚さで蒸着させる;他の実施形態において、上記ガリウム層は100nmから150nmの厚さであり;さらに他の実施形態において、上記ガリウム層は約140nmの厚さである。上記ガリウム層は、本開示による電着プロセスを用いて蒸着させる。他の層は任意の蒸着技術、例えば真空蒸着によって蒸着させることができるが、これらの層は電着により蒸着されることが一般に好ましい。
【0016】
図2は、本開示の他の実施形態によるCIGS前駆体構造として適した積層膜30の例を示す。この例としての実施形態において、まず基板32上に導電層34を約300nmから約600nmの厚さで蒸着させる。次に、導電層34上に銅−ガリウム合金層36を275から330nm、例えば310nmの厚さで電着させる。次に、銅−ガリウム合金層36上にインジウム−ガリウム層38を420から500nm、例えば490nmの厚さで電着させる。Cu/(In+Ga)比は、0.8から0.9、例えば0.88で維持することができ、Ga/(Ga+In)比は、0.3から0.33、例えば0.31で維持することができる。本開示を考慮すると、上記導電層は任意の蒸着技術で蒸着され得るが、これらの層は電着により蒸着されることが一般に好ましいことは明らかである。ガリウムは融点が非常に低い元素である。ガリウムは約35℃で液体であり、そのため移動性が高く容易に相互拡散する。ガリウムを銅およびインジウムなどのより高い融点を有する金属と合金化することは、電着プロセス工程の数を減少させるだけでなく、ミクロ組織を安定化させ、前駆体CIGS材料の相互混合をより良好にすることを可能にする。このことにより、最終的にはCIGS p−吸収体材料の組成制御がより良好となる。
【0017】
図3は本開示の他の実施形態によるCIGS前駆体構造として適した積層膜50の例を示す。この例としての実施形態において、まず、基板52上に導電層54を蒸着させる。次に、モリブデン層54上に銅層56を蒸着させる。上記銅およびモリブデン層の厚さは、上記の通りである。次に、銅層56上にインジウム−ガリウム層58を400nmから500nm、最も明確には490nmの厚さで電着させる。Cu/(In+Ga)比は、0.8から0.9、例えば0.88で維持することができ、Ga/(Ga+In)比は、0.3から0.33、例えば0.31で維持することができる。上記導電層および銅層は任意の蒸着技術によって蒸着され得るが、これらの層が電着により蒸着されることが一般に好ましい。InGa合金を蒸着させることにより、CIGS前駆体の相互混合の制御、およびCIGS組成の最終的な制御がより良好となる。
【0018】
図4は、本開示の他の実施形態によるCIGS前駆体構造として適した積層膜60の例を示す。この例としての実施形態において、まず基板62上に導電層64を蒸着させる。次に、モリブデン層64上に銅−インジウム−セレン層66を1ミクロンから2.5ミクロンの厚さで電着させる。次に、銅−セレン−インジウム層66上にガリウム合金層68を電着させる。上記モリブデンおよびガリウム層の厚さは上記の通りである。本開示を考慮すると、上記導電層は任意の蒸着技術によって蒸着され得るが、これらの層は電着により蒸着されることが一般に好ましいことは明らかである。この方法により、上記CuInSe材料中のインジウムの一部がガリウムによって置換され、アニーリングによってCuInGaSeが形成される。
【0019】
図1〜4に関連して説明した銅、ガリウムおよびインジウム層を含む積層膜を、次にセレンもしくは硫黄またはその両方と反応させてCuInGaSeまたはCuInGaSeSまたはCuInGaS構造を形成する。例えば、上記積層膜上にセレン層を蒸着させて、引き続きアニールしてセレン化物を形成することができる。あるいは、上記積層膜を、例えば、セレン化水素もしくは硫化水素またはその両方に暴露して、引き続きアニールすることもできる。硫黄雰囲気もしくはセレン雰囲気またはその両方の雰囲気中でのアニーリングは、約400℃から約700℃、好ましくは550℃の温度で行うことができる。CIGS形成に続き、n−型接合層(図示せず)がCIGS層上に蒸着されることは、当業者にとっては明らかである。上述したように、この層はCIGS層と相互作用してp−n接合を形成することとなる。蒸着させる次の層は通常、ZnOおよびドープ型ZnO透明酸化物層(図示せず)である。さらに、他の種類の光起電装置用の前駆体層、例えば、銅−インジウム−セレン(CIS)、銅−ガリウム−セレン(CGS)、銅−インジウム−硫黄(CISu)、銅ガリウム硫黄(CGSu)などを形成するために上記電気めっきプロセスを利用できることは明らかである。
【0020】
上記の様々な実施形態において、得られるCIGS構造は一般に、Cu/(In+Ga)比が0.8から約0.9およびGa/(Ga+In)比が0.3から約0.33である。
【0021】
他の実施形態において、ガリウム層またはガリウム合金層を電着して熱界面を形成する。このガリウムまたはガリウム合金の層は、Zn、Sn、In、Au、Cuまたはこれらの混合物などの下層の上に積層として電気めっきすることができる。ガリウムは、低い引張強度および高いバルク熱伝導率を与える。合金として、自己拡散は、熱界面材料としての用途に適した低融点合金を与える。よって、ガリウムは、融点を下げるために他の元素と合金化することができる。図5は、熱を吸着して空気中に放散させることにより過熱を防止するためにヒート・シンクに連結されたマイクロプロセッサ・チップを含む装置の例を示す。装置100は、基板102を含み、この基板上にマイクロプロセッサ104が形成および搭載されている。ガリウムまたはガリウム合金層106が上記マイクロプロセッサの表面上に電着されている。さらに、ヒート・シンク108が上記ガリウム層に連結されている。熱界面としての使用に適したガリウム合金の例ならびに対応する液相および固相温度を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
上記ガリウムまたはガリウム合金層を形成する電着プロセスは一般に、ガリウム塩、メタンスルホン酸(MSA)電解質および溶媒を含む水系めっき浴中に置かれた基板表面(例えば、作用電極)を電気めっきすることを含む。上記浴のpHは、酸または塩基を用いて調整することができる。上記電解質中のガリウムイオン濃度は約0.000005モル濃度(M)から、使用される電解質およびpHでの飽和限界に近いモル濃度までの範囲であり得る。上記めっき浴に有用なガリウム源の例としては、限定されないが、塩化ガリウム(GaCl)、臭化ガリウム(GaBr)、ヨウ化ガリウム(GaI)、硝酸ガリウムGa(NO、硫酸ガリウムGa(SOおよびこれらの混合物などの、めっき浴中に可溶なガリウム塩が挙げられる。他の適したガリウム塩としては、硫酸、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、芳香族スルホン酸、フルオロホウ酸塩、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの強塩基の塩が挙げられる。
【0024】
上記電解質としてのMSAなどの酸の濃度は、約0.1Mから約2Mの範囲であってもよく;他の実施形態において、上記酸は約0.1Mから1Mの範囲であり;さらに他の実施形態において、上記酸は0.5Mから1Mの範囲である。上述したように、上記電解質浴は、いかなる種類の有機または無機錯化剤も含有しない。すなわち、上記ガリウム塩は上記電解質浴中に可溶である。
【0025】
上記電解質浴のpHは一般に、2.6未満または12.6超である。出願人は、溶液のpHが2.6≦pH≦12.6の範囲である時にめっき浴が濁る、すなわち、乳白状の外観となることを見いだした。理論に拘束されることを望むものではないが、上記pH範囲においてガリウムの酸化物もしくは水酸化物またはその両方、例えば、酸化ガリウムおよび水酸化ガリウムが水溶液中に形成されると考えられる。上記電解質浴のpHを得て維持するのに適した酸または塩基は錯化剤を含まず、その例としては、限定されないが、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸または他のアルカンスルホン酸などの有機酸、ならびにベンゼンスルホン酸およびトルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸が挙げられる。有利には、上記pH範囲での電着プロセスにより、均一で薄厚の、コンフォーマルなガリウム層が形成され、個々に独立した島の形成が防止されることが見いだされた。
【0026】
合金化元素は、上記浴に直接添加することができる。例えば、電解質中の銅は、銅源、例えば溶解させた銅金属または硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硝酸銅などの銅塩によって供給され得る。同様に、塩化インジウム、硫酸インジウム、スルファミン酸インジウム、酢酸インジウム、炭酸インジウム、硫酸インジウム、リン酸インジウム、酸化インジウム、過塩素酸インジウム、水酸化インジウムなどのインジウム源によってインジウムを電解質中に供給することができる。
【0027】
上記ガリウム電気めっき浴は、少なくとも1つの窒素原子または少なくとも1つの硫黄原子を含む任意の有機添加剤をさらに含んでいてもよい。上記有機添加剤は、水素発生過電圧を効果的に増加させてガリウムめっきの際の水素の共蒸着/発生を防止または効果的に制限するため、ならびに核生成および成長を制御することによって蒸着物のミクロ構造を制御するために上記めっき浴に添加される。有利には、上記添加剤は光沢剤として、およびガリウムの核生成を助ける一方で粒子微細化剤としても機能する。同じ大きさの島々が同時に表面上に形成される瞬間核生成によって最薄層が形成される。また、薄層は、島々の形成が時間の関数である進行性核形成によっても形成され得る。そうすることで、得られるガリウム層は均一でコンフォーマルとなり、蒸着の際にサイズの大きな3次元の島々が形成されることが防止される。有機添加剤の例としては、限定されないが、チオ尿素、チアジン、スルホン酸、スルホン酸、アリルフェニルスルホン、スルファミド、イミダゾール、アミン、イソニトリル、ジチオキソ−ビスヒドロキシルアミノモリブデン錯体、およびこれらの誘導体などの、脂肪族もしくは複素環化合物またはその両方が挙げられる。
【0028】
上記少なくとも1つの窒素原子もしくは少なくとも1つの硫黄原子またはその両方を含む有機添加剤は、水素の発生を抑制しつつ、予期せずにガリウムめっきを促進することが分かった。このように、上記有機添加剤を、電解質としてのMSAと組み合わせて用いた時に相乗効果をもたらすことが見いだされた。上記少なくとも1つの窒素原子もしくは少なくとも1つの硫黄原子またはその両方を含む有機添加剤の濃度は約百万分の一部(ppm)から約10000ppmの範囲であってもよく、他の実施形態において、上記有機添加剤は約10ppmから5000ppmの範囲であり、さらに他の実施形態において、上記有機添加剤は100ppmから1000ppmの範囲である。
【0029】
他の実施形態において、上記有機添加剤と組み合わせて金属酸化物を添加して陰極を被毒させる。それにより水素発生の開始過電圧が増加し(すなわち、水素発生が抑制され)、ガリウム蒸着が促進される。無機金属酸化物としては、限定されないが、酸化ヒ素(例えば、As3;As、KHAsO、KHAsO、KAsO、KAsO、KAsO、NaHAsO、NaHAsO、NaASO、NaASO、NaAsO、NaASなど);酸化アンチモン(例えば、Sb、Sb、KHSbO、KHSbO、KSbO、KSbO、KSbO、NaHSbO、NaHSbO、NaSbO、NaSbO、NaSbO、NaSbなど);および酸化ビスマス(例えば、Bi、KBiO、KBiO2、NaBiO、NaBiOなど)などの半金属の酸化物が挙げられる。
【0030】
ガリウム蒸着と水素発生は同時に起こることが知られている。よって、従来のめっきプロセスは一般に、水素発生を防止するためにめっき効率が低下する。水素発生は、蒸着された膜構造内が多孔質となることに貢献する。上記金属酸化物は陰極毒として効果的であり、水素発生が開始する過電圧を有利に増加させて、ガリウム蒸着を予期せずに促進する。上記金属酸化物と、少なくとも1つの窒素原子もしくは少なくとも1つの硫黄原子またはその両方を含む上記有機添加剤との組み合わせを含むガリウムめっき溶液において、90〜95%超のめっき効率が確認されている。上記電解質中における金属酸化物の濃度は、約百万分の一部(ppm)から約10,000ppmの範囲であってもよく、他の実施形態において、上記金属酸化物は約100ppmから5,000ppmの範囲であり、さらに他の実施形態において、上記金属酸化物は1,000ppmから3,000ppmの範囲である。上記金属酸化物もしくは硫黄またはその両方をめっき浴に導入することによって、得られる層は、蒸着物中に、対応する金属(例えば、ヒ素、アンチモン、ビスマスあるいはこれらの混合物)もしくは硫黄またはその両方を不純物として約数ppmから数原子%含むこととなる。この不純物は、オージェまたはSIMS分析法を用いて検出することができる。
【0031】
他の実施形態において、上記めっき浴はガリウム塩、硫酸ナトリウム(NaSO)電解質、少なくとも1つの窒素原子もしくは少なくとも1つの硫黄原子またはその両方を含む有機添加剤、および溶媒を含む。上記ガリウム塩および上記有機添加剤の濃度は上記した通りである。電解質としての硫酸ナトリウムの濃度は約0.01Mから約2Mの範囲であってもよく;他の実施形態において、硫酸ナトリウムは約0.1Mから1Mの範囲であり;さらに他の実施形態において、硫酸ナトリウムは0.2Mから60Mの範囲である。必要に応じて、上記したような金属酸化物をめっき浴に含むこともできる。pHは、上述したように2.6未満または12.6超である。上記の様々な実施形態において、導電性および非導電性基板に対して電気めっき化学を用いることができる。適した導電性基板としては、限定されないが、金、モリブデン、インジウム銅、セレン、亜鉛などが挙げられる。適した非導電性基板は一般に、金属シード層を基板上に有するものであり、その例としては、限定されないが、ガラス、石英、プラスチック、重合体などが挙げられる。例えば、上記非導電性基板はシード層、例えば銅シード層を含むことができる。上記シード層を蒸着させる特定の方法は限定されず、当業者の技術範囲内である。例えば、化学気相蒸着、プラズマ気相蒸着または無電解蒸着によって上記シード層を形成することができる。
【0032】
上記電気めっき浴は、追加的な成分を含んでいてもよい。例としては、粒子微細化剤、界面活性剤、ドーパント、他の金属または非金属元素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。粒子構造および表面粗さを微細化するために、例えば、界面活性剤、抑制剤、レベル剤、促進剤などの他の種類の有機添加剤を配合に含めることができる。有機添加剤としてはポリアルキレングリコール系重合体、ポリアルカンスルホン酸、クマリン、サッカリン、フルフラル、アクリロニトリル、マゼンタ染料、グルー、でんぷん、デキストロースなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
上記めっき浴の配合において、水が好ましい溶媒であるが、水の一部または全部に換えて有機溶媒を配合に加えることも当然可能である。そのような有機溶媒としては、アルコール、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
上記電着プロセスの際にはDC電圧/電流を利用することができるが、高いめっき効率および高品質の蒸着物を得るためにパルス型または他の可変電圧/電流源を用いることもできる。上記電気めっき浴の温度は、溶媒の性質に応じて5から90℃の範囲とすることができる。水系配合の好ましい浴温は10から30℃の範囲である。
【0035】
図6を参照すれば、実際において、導電性基板4に背面電気接点5が作製される。上記基板は、作用電極として機能し、この基板上にガリウムまたはガリウム合金が電着されることとなる。あるいは、基板が非導電性である場合、導電層もしくはシード層(図示せず)またはその両方を最初に蒸着させて、このシード層にオーム接触を介して直接電気接点を作製することもでき、または下層の導電層に電気接点を作製することもできる。本開示による電解質溶液1を基板表面4と接触させる。導電性対電極6、すなわち陽極または導体を上記電解質溶液中に、上記基板(作用電極)から離間して配置する。基板4は平面を有しているものとして図示されているが、基板4は、ある程度の表面形状を有することもでき、もしくは基板上にコンフォーマルな導電層を有することもでき、またはその両方を有することもできることが理解される。電気化学プロセスを行うために、電流または電圧が電源7および導線8を介して基板(電極)4および対電極6に印加される。所望であれば、第3の電極、すなわち一定の電気化学電位を有する参照電極(図示せず)を導入することによって構造/電解質の電気化学電位をより正確に制御することができる。参照電極の例としては、飽和カロメル電極(SCE:Saturated calomel electrode)および銀−塩化銀(Ag/AgCl)参照電極またはCuもしくはPtなどの他の金属参照電極が挙げられる。電着の際、上記電解質溶液を撹拌することができる。
【実施例】
【0036】
以下に、例示のみを目的として実施例を記載する。本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
本実施例において、積層膜上にガリウムを電気めっきし、引き続き自己アニールしてインジウム・リッチなインジウム−ガリウム合金を形成した。めっき化学は、0.5MのNaOHでクエンチした後に追加量のMSAを用いてpHを1.21に調整した0.5MのMSA中に0.2MのGa3+を含んでいた。360nmのインジウム層および250nmの銅層上にガリウムを電気めっきした。引き続き、厚さ150nmの上記ガリウム層を18〜22℃の室温で3日間自己アニールした。インジウム上にガリウムをめっきした際、相互拡散が直後に開始され、進行的にIn−Ga共晶合金を形成した。
【0038】
図7は、積層膜の断面図の走査型電子顕微鏡写真を示し、ここで上記インジウム層にガリウムが電着され、引き続きアニールされてインジウム・リッチなガリウム共晶層を形成している。興味深いことに、Gaの相互拡散はインジウム層で停止せず、銅内へと継続して拡散し、CuInGa合金を形成している。
【実施例2】
【0039】
本実施例において、上記有機添加剤を含む、またはその添加剤を含まない様々なガリウムめっき浴を用いて、予め銅をシードさせたモリブデン層を有するガラス基板上にガリウムを電気蒸着させた。めっき溶液は、0および500ppmのチオ尿素を含む0.5MのMSAに、0.25Mの硫酸ガリウムを含んでいた。電解質浴は18〜20℃であり、0および550rpmで撹拌した。HSOを用いてpHを1.14に維持した。
【0040】
その結果、有機添加剤を含有していないめっき浴と比較して、有機添加剤の存在によりガリウムめっきが明らかに促進された。さらに、電解質を継続して撹拌することで、撹拌を行わなかった場合と比較して電流密度が大幅に増加した。それぞれ20mA/cmおよび30mA/cmの定電流で蒸着させたガリウム膜の表面形状写真を図8および9に示す。電流密度の増加とともに粒子サイズの増加が観察された。多孔質性は観察されず、膜は均一で優れたモルフォロジを有していた。
【実施例3】
【0041】
本実施例において、めっき浴は、0.5MのNaOHでクエンチした後に追加のMSAを添加してpHを1.18とした0.5MのMSA中に0.2MのGa3+を含んでいた。必要に応じて、上記めっき浴には、様々な量のAsが含まれていた。Asまたはチオ尿素を含まないめっき浴においては、めっき浴は、0.5MのNaOHでクエンチし追加のMSAを用いてpHを1.18に調整した0.5MのMSA中にGa3+を含んでいた。Asとチオ尿素との組み合わせを含んだめっき浴は、Asを500〜6000ppm、チオ尿素を100〜1000ppmの量で含んでいた。
【0042】
図10は、様々なボルタンメトリ・プロットを重ね合わせたものであり、Asとチオ尿素との組み合わせのデータを含んでいる。図示するように、Asの量が増加するにつれて水素発生開始の過電圧が負電位の方向にシフトし、それにより水素発生が効果的に抑制されている。さらに、チオ尿素とAsとの組み合わせによりガリウム蒸着が促進された。
【実施例4】
【0043】
本実施例において、めっき浴は、0.5MのNaOHでクエンチした後に追加量のMSAを用いてpHを1.18に調整した0.5MのMSA中に0.25MのGa3+を含んでいた。添加剤を加えずに、Asを6000ppm加えて、ならびにAsを6000ppmおよびチオ尿素を500ppm加えてめっきを行った。これらのめっき化学のサイクリック・ボルタンメトリ・プロットを図10に示す。Asを添加した場合に水素発生の抑制およびガリウム蒸着の促進が観察され、Asとチオ尿素との組み合わせを用いた場合に促進がさらに増加した。また、AsとAsとの組み合わせが水素発生の抑止に効果的であることも分かった(結果はここでは示していない)。これらの酸化物の両方を組み合わせた場合、より低い濃度でも上記効果は大幅に向上する。
【0044】
明細書に開示される全ての範囲は終点を含み、それらの終点は互いに組み合わせ可能である。
【0045】
引用した全ての特許、特許出願および他の文献は、引用によりその全体がここに援用される。
【0046】
本発明の説明において(特に、添付の特許請求の範囲において)、“a”と“an”および“the”ならびに類似の用語は、特に断りのない場合または文章によって明らかに否定された場合を除いて単数および複数の両方を含むと理解される。さらに、“第1”、“第2”などの用語は、順序、量または重要度を表すものではなく、むしろ互いの要素を区別するために用いられる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態について説明したが、現在および将来の当業者が、特許請求の範囲に属する様々な改良および向上を行うことが可能であることが理解される。特許請求の範囲は、記載当初の本発明について適切な保護を維持するものと理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10