(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車長方向後方変位阻止部材は、車幅方向に垂直な面内で回動自在に支持され、かつその上端が前記第1鉛直方向支持面より上方に位置する第1回動位置に付勢されて位置付けられており、前記所定位置への保持部の移動に際し、前記トーションビームとの接触により前記第1回動位置から第2回動位置へ回動し、その後、前記第1回動位置に復帰することにより、該トーションビームの車長方向後方への変位を阻止する状態となることを特徴とする請求項1に記載のリアサスペンションアセンブリ保持装置。
前記第1鉛直方向支持面及び車長方向後方変位阻止部材として、2輪駆動車用のリアサスペンションアセンブリに対応するものと、4輪駆動車用のリアサスペンションアセンブリに対応するものとが併設されており、
前記第2鉛直方向支持面、車幅方向変位阻止面及び車長方向前方変位阻止面は、前記2輪駆動車用及び4輪駆動車用の両リアサスペンションアセンブリに共通に対応するものであり、
前記保持部には、前記4輪駆動用のリアサスペンションアセンブリのドライブシャフトを鉛直方向に支持する第3鉛直方向支持面が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアサスペンションアセンブリ保持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の搬送装置によれば、サスペンションアセンブリを保持するための搬送ハンガにおいて、サスペンションアセンブリのナックルアームを保持し、フロントラジアスロッドを支持する機構がシリンダ等を用いて構成されている。このため、搬送ハンガは、構成が複雑であり、重量が重く、コストも高い。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、複雑な機構を要しない簡便なリアサスペンションアセンブリ保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリアサスペンションアセンブリ保持装置は、車両用のリアサスペンションアセンブリを保持する保持部と、前記保持部を鉛直方向に案内する鉛直方向案内手段と、前記保持部を前記鉛直方向の案内に従って昇降させる昇降駆動源と、前記鉛直方向案内手段を所定の水平方向に案内する水平方向案内手段と、前記鉛直方向案内手段を前記水平方向の案内に従って移動させる水平駆動源とを備え、前記保持部は、該保持部が前記リアサスペンションアセンブリを保持している保持状態において、前記リアサスペンションアセンブリのトーションビームをその中央部の両側2箇所において鉛直方向に支持する第1鉛直方向支持面と、前記保持状態において前記リアサスペンションアセンブリの各ダンパブラケットを鉛直方向に支持する第2鉛直方向支持面と、前記保持状態において前記ダンパブラケットが車幅方向に変位するのを阻止する車幅方向変位阻止面と、前記保持状態において前記ダンパブラケットが車長方向前方に変位するのを阻止する車長方向前方変位阻止面と、前記保持状態において前記トーションビームが車長方向後方に変位するのを阻止する車長方向後方変位阻止部材とを備え、前記保持状態は、所定位置に配置された前記リアサスペンションアセンブリの下方の所定位置にその車長方向前方側から前記保持部が移動して位置するように前記水平駆動源を駆動し、その後、前記昇降駆動源を駆動することにより実現され、前記車長方向後方変位阻止部材は、前記所定位置への保持部の移動に際し、前記トーションビームとの接触により下方へ没し、その後、元の位置に復帰することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、水平駆動源の駆動とその後の昇降駆動源の駆動により、リアサスペンションアセンブリのトーションビーム及び各ダンパブラケットが第1鉛直方向支持面及び第2鉛直方向支持面によって支持される。これと同時に、保持部に対する車幅方向及び車長方向へのリアサスペンションアセンブリの変位が車幅方向変位阻止面、車長方向前方変位阻止面及び車長方向後方変位阻止部材により阻止された状態となる。
【0010】
すなわち、水平駆動源の駆動と昇降駆動源の駆動のみでリアサスペンションアセンブリを保持することができる。このため、保持部にリアサスペンションアセンブリを保持するための駆動源を設ける必要はない。したがって、リアサスペンションアセンブリ保持装置を複雑な機構を要しない簡便なものとして構成することができる。
【0011】
また、各ダンパブラケットの配置幅が異なる複数種類のリアサスペンションアセンブリについても、各種類のリアサスペンションアセンブリ毎のダンパブラケットの配置幅に対応する第2鉛直方向支持面、車幅方向変位阻止面及び車長方向前方変位阻止面を保持部上に併設することにより、容易に対応することができる。
【0012】
また、トーションビームの車長方向位置が異なる複数種類のリアサスペンションアセンブリについても、各種類のリアサスペンションアセンブリ毎のトーションビームの位置に対応する第2鉛直方向支持面及び車長方向後方変位阻止部材を併設することにより、容易に対応することができる。
【0013】
なお、この場合、車長方向後方変位阻止部材は、トーションビームとの接触により下方に没し、その後、元の位置に復帰するので、車長方向位置が異なる各種類のトーションビームが他の種類のトーションビーム用の車長方向後方変位阻止部材上を通過する必要がある場合でも、その通過が妨げられることはない。
【0014】
本発明においては、前記車長方向後方変位阻止部材は、車幅方向に垂直な面内で回動自在に支持され、かつその上端が前記第1鉛直方向支持面より上方に位置する第1回動位置に付勢されて位置付けられており、前記所定位置への保持部の移動に際し、前記トーションビームとの接触により前記第1回動位置から第2回動位置へ回動し、その後、前記第1回動位置に復帰することにより、該トーションビームの車長方向後方への変位を阻止する状態となるものであってもよい。
【0015】
これによれば、トーションビームとの接触により下方へ没し、その後、元の位置に復帰してトーションビームが車長方向後方に変位するのを阻止する車長方向後方変位阻止部材を、容易に構成することができる。
【0016】
また、本発明においては、前記第1鉛直方向支持面及び車長方向後方変位阻止部材として、2輪駆動車用のリアサスペンションアセンブリに対応するものと、4輪駆動車用のリアサスペンションアセンブリに対応するものとが併設されており、前記第2鉛直方向支持面、車幅方向変位阻止面及び車長方向前方変位阻止面は、前記2輪駆動車用及び4輪駆動車用の両リアサスペンションアセンブリに共通に対応するものであり、前記保持部には、前記4輪駆動用のリアサスペンションアセンブリのドライブシャフトを鉛直方向に支持する第3鉛直方向支持面が設けられていてもよい。
【0017】
これによれば、2輪駆動車用及び4輪駆動車用の各リアサスペンションアセンブリを選択的に保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリアサスペンションアセンブリ保持装置を適用した搬送装置の構成を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、搬送装置1は、ワークWを保持する保持部2と、保持部2を鉛直な回転軸の周りでR方向に回転自在に保持して回転移動させるR軸ユニット3と、R軸ユニット3を保持し、鉛直なH方向に昇降移動させるH軸ユニット4と、H軸ユニット4を保持して水平なT方向に移動自在に案内するT軸ユニット5とを備える。
【0021】
なお、H軸ユニット4及びT軸ユニット5は、それぞれ本発明における鉛直方向案内手段及び水平方向案内手段に対応する。
【0022】
搬送装置1は、ワークWとして、自動車の製造ラインで用いられる2輪駆動車用及び4輪駆動車用の各リアサスペンションアセンブリを選択的に保持して搬送する。R軸ユニット3は、そのR方向の回転軸の周りに保持部2を回転移動させる回転駆動源6を備える。回転駆動源6は、例えば、サーボモータにより構成される。
【0023】
なお、リアサスペンションアセンブリは、その車長方向をT方向に向け、車幅方向をT方向に垂直で水平なB方向に向けた姿勢で保持部2により保持され、搬送される。
【0024】
H軸ユニット4は、R軸ユニット3を昇降移動させる昇降駆動源7と、この昇降移動における昇降駆動源7の負荷を緩和するアシスト駆動源8と、H軸ユニット4をT軸ユニット5によるT方向の案内に従って移動させる水平駆動源9とを備える。昇降駆動源7は、例えば、サーボシリンダにより構成される。
【0025】
アシスト駆動源8は、保持部2やワークWの重力を相殺する駆動力を供給することにより昇降駆動源7の負荷を緩和するものである。アシスト駆動源8は、例えば、バランスシリンダにより構成される。水平駆動源9は、例えば、サーボモータにより構成される。
【0026】
図2は、搬送装置1の制御部を示すブロック図である。制御部10は、CPU、メモリ、プログラム等により構成される。制御部10は、
図2に示すように、回転駆動源6、昇降駆動源7、アシスト駆動源8及び水平駆動源9を制御する。
【0027】
制御部10は、ワークWを搬送するとき、ワークWを保持部2により保持するワーク保持処理を行う。この処理において、制御部10は、回転駆動源6のサーボフロート機能を用いて保持部2を回転自在の状態とし、かつ水平駆動源9をサーボフロート状態で駆動することにより、ワークWに対する保持部2の位置決めを行う。
【0028】
この位置決めでは、保持部2の水平面内における位置、すなわちR方向(回転方向)及びT方向の位置が決定される。制御部10は、この水平面内における位置決めが完了したとき、昇降駆動源7を駆動して保持部2を所定量上昇させ、そしてT方向に移動させる。これにより、ワークWは、保持部2により保持され、搬送可能な状態となる。
【0029】
図3は、保持部2の構成を示す平面図である。
図4は、
図3のIV−IV線断面図である。これらの図に示すように、保持部2は、水平方向に長い棒状の基部12と、基部12に一端が固定され、他端が自由端となっている2本の支持ロッド13とを備える。
【0030】
図3及び
図4においては、ワークWに対する水平面内の位置決めが完了した状態の保持部2が示されている。この状態において、基部12は、T方向(車長方向)と直角で水平なB方向(車幅方向)に沿って延在する。また、
図3においては、ワークWとして、2輪駆動車用のリアサスペンションアセンブリW1(以下、単に「アセンブリW1」という。)と、4輪駆動車用のリアサスペンションアセンブリW2(以下、単に「アセンブリW2」という。)が、それぞれ破線及び2点鎖線で示されている。
【0031】
基部12は、中央の取付け部14を介してR軸ユニット3の回転軸の下端に固定される。基部12の両端部にはそれぞれ、ワークWのダンパブラケットを支持するブラケット受け15が設けられる。
【0032】
ブラケット受け15は、ワークWが2輪駆動車用のアセンブリW1である場合には、そのダンパブラケット16を支持し、ワークWが4輪駆動車用のアセンブリW2である場合には、そのダンパブラケット17を支持する。すなわち、ブラケット受け15は、アセンブリW1及びW2について共用される。
【0033】
各支持ロッド13は、基部12に垂直にT方向に沿って延在する。各支持ロッド13の固定端はそれぞれ、基部12の各端部と中央部とのほぼ中間に位置する。各支持ロッド13の自由端側には、保持部2がワークWを保持するときにワークWのトーションビームをその中央部の両側2箇所で支持するビーム受けが設けられる。このビーム受けは、本発明における第1鉛直方向支持面に対応する。
【0034】
このビーム受けとして、ワークWが2輪駆動車用のアセンブリW1である場合にそのトーションビーム18を受ける2つのビーム受け19と、ワークWが4輪駆動車用のアセンブリW2である場合にそのトーションビーム20を受ける2つのビーム受け21とが設けられる。ただし、トーションビーム18及び20の位置の相違に応じ、ビーム受け21は、ビーム受け19よりも、支持ロッド13の自由端側に設けられる。
【0035】
また、各ビーム受け19とビーム受け21との間には、各ビーム受け19によって支持されたトーションビーム18が支持ロッド13の自由端側にずれて落下するのを防止する落下防止部材22が設けられる。
【0036】
また、各ビーム受け21の該自由端側には、各ビーム受け21によって支持されたトーションビーム20が該自由端側にずれて落下するのを防止する落下防止部材23が設けられる。なお、落下防止部材22及び23は、本発明における車長方向後方変位阻止部材に対応する。
【0037】
落下防止部材22は、支持ロッド13に固定された回動軸24により、基部12の長さ方向(B方向)に垂直な平面内で回動自在に支持される。落下防止部材22の回動範囲は、落下防止部材22の上端がビーム受け19の上面より上方に位置する第1回動位置から、該上面とほぼ同レベルの位置に位置する第2回動位置までの範囲である。
【0038】
なお、
図4においては、第1回動位置に位置する落下防止部材22が実線で示されている。また、第2回動位置に位置する落下防止部材22が二点鎖線で示されている。この第1回動位置から第2回動位置までの回動範囲は、支持ロッド13に固定された規制ピン25及びスプリングプランジャ26により規定される。
【0039】
すなわち、落下防止部材22は、その下端面の一部分においてスプリングプランジャ26により第1回動位置の方へ付勢され、該下端面の他の部分が規制ピン25に接することにより第1回動位置に位置付けられる。そして、落下防止部材22の上端がスプリングプランジャ26の付勢力に抗して押圧されたとき、第1回動位置から第2回動位置へ回動する。
【0040】
したがって、支持ロッド13とトーションビーム18との上下方向(H方向)の位置関係が
図4のようであるとすれば、保持部2が、アセンブリW1を保持するためにT方向に移動されるとき、第1回動位置に位置する落下防止部材22は、上端部がトーションビーム18により押圧され、第2回動位置へ回動する。
【0041】
そして、トーションビーム18が落下防止部材22の上端部を通過すると、該押圧が解除され、落下防止部材22は第1回動位置へ復帰する。これにより、トーションビーム18は、支持ロッド13の自由端側への移動が阻止された状態となる。すなわち、落下防止部材22は、トーションビーム18との接触及び該接触の解除に応じて出没自在に構成されている。
【0042】
落下防止部材23も同様に、支持ロッド13に固定された回動軸28により、基部12の長さ方向(B方向)に垂直な平面内で回動し得るように支持される。落下防止部材23の回動範囲は、その上端が、ビーム受け21の上面より上方に位置する第1回動位置から、該上面とほぼ同レベルの位置に位置する第2回動位置までの範囲である。この回動範囲は、支持ロッド13に固定された規制ピン29及びスプリングプランジャ30により、落下防止部材22の場合と同様にして規定される。
【0043】
したがって、保持部2が、アセンブリW2を保持するためにT方向に移動されるとき、落下防止部材23は、落下防止部材22の場合と同様にして、第1回動位置から第2回動位置へ回動し、そして第1回動位置へ復帰する。これにより、トーションビーム20は、支持ロッド13の自由端側への移動が阻止された状態となる。
【0044】
各支持ロッド13の固定端側には、ワークWが4輪駆動車用のアセンブリW2である場合にそのドライブシャフト31を支持するドライブシャフト受け32が設けられる。なお、ドライブシャフト受け32は、本発明における第3鉛直方向支持面に対応する。
【0045】
図5は、保持部2のブラケット受け15部分の斜視図である。
図5に示すように、ブラケット受け15は、ワークWのダンパブラケットを鉛直方向に支持する底面15aと、支持したダンパブラケットがB方向(車幅方向)に変位するのを阻止するB方向に垂直な2つの対向面15bと、該ダンパブラケットが基部12側(車長方向前方)に変位するのを阻止するT方向に垂直な押圧面15cを有する。
【0046】
なお、底面15a、対向面15b及び押圧面15cは、それぞれ本発明における第2鉛直方向支持面、車幅方向変位阻止面及び車長方向前方変位阻止面に対応する。また、押圧面15cは、保持部2によりワークWを保持して受け取る際に、ワークWのダンパブラケットを押圧する。これにより、保持部2がワークWに対して位置決めされる。
【0047】
図6は、制御部10によるワーク保持処理を示すフローチャートである。
図7は、このワーク保持処理によるブラケット受け15の移動を説明するための説明図である。制御部10は、このワーク保持処理を行うことにより、保持部2によってアセンブリW1を保持する。保持するアセンブリW1は、
図7のように、車長方向がT方向と平行でかつ車幅方向がB方向と平行になるように、台車33上に載置されている。
【0048】
ワーク保持処理に際し、制御部10は、回転駆動源6、昇降駆動源7、アシスト駆動源8及び水平駆動源9を制御して、保持部2を駆動する。すなわち、ワーク保持処理を開始すると、制御部10は、まず、保持部2を、所定位置において、台車33上の目的とするアセンブリW1に対峙させる(ステップS1)。
【0049】
このとき、保持部2の基部12はB方向に平行であり、支持ロッド13は、自由端側がアセンブリW1側に位置している。
図7では、このときの保持部2のブラケット受け15が、B方向に垂直な断面の外形により示されている。
【0050】
すなわち、アセンブリW1の各ダンパブラケット16に対し、保持部2の各ブラケット受け15が、それぞれT方向にほぼ同一の距離を隔てて、ほぼ同一水平面上で対峙した状態となる。ただし、このとき、ダンパブラケット16の下端16aとブラケット受け15の底面15aとはある程度のレベル差hを有し、底面15aは下端16aよりも低いレベルに位置する。レベル差hとしては、例えば10mmが該当する。
【0051】
次に、制御部10は、水平駆動源9により、保持部2を、アセンブリW1の近傍へ移動する(ステップS2)。これにより、ブラケット受け15の押圧面15cが、ダンパブラケット16の車長方向前方側の端縁16bに近接した位置p1に位置する。位置p1としては、例えば、端縁16bまでの距離が30mmである位置が該当する。
【0052】
次に、制御部10は、水平駆動源9及び回転駆動源6をサーボフロート状態とする(ステップS3)。このとき、トルク制限値は、水平駆動源9については、保持部2が移動し始めるトルクより大きい値とされ、回転駆動源6についてはゼロとされる。
【0053】
さらに、制御部10は、水平駆動源9により保持部2をアセンブリW1の方へ移動する(ステップS4)。このとき、水平駆動源9は、ブラケット受け15の押圧面15cの移動目標位置を、ダンパブラケット16の端縁16bよりも車長方向後方側の位置p2として駆動される。位置p2としては、例えば、端縁16bから車長方向後方側へ30mm程度アセンブリW1内に進入した位置が該当する。
【0054】
したがって、押圧面15cは、位置p2に到達する前に、端縁16bに接触する。このとき、水平駆動源9及び回転駆動源6はサーボフロート状態であるため、保持部2は、ダンパブラケット16からの抵抗力に従い、停止する。
【0055】
ただし、各ブラケット受け15の押圧面15cのうちの一方が先にダンパブラケット16と接触する場合には、その接触後の水平駆動源9の駆動により、該接触部分を介して、保持部2に回転トルクが付与される。また、このとき、上述のように、回転駆動源6はトルク制限値がゼロのサーボフロート状態にある。
【0056】
このため、保持部2は、R方向へわずかに回転し、他方のブラケット受け15の押圧面15cがダンパブラケット16に接触する。これにより、該他方のブラケット受け15も、その接触位置において停止する。
【0057】
この後、水平駆動源9は、目標とする位置p2へ押圧面15cが到達したと算定されるタイミングに至るまで駆動を継続するので、各押圧面15cは水平駆動源9のトルク制限値内のトルクで各ダンパブラケット16を押圧する。しかし、該トルク制限値は比較的小さいので、アセンブリW1が変位することはない。
【0058】
この間、ステップS2からS4までの処理による保持部2の移動に伴い、保持部2の各支持ロッド13が、アセンブリW1の下に、
図4のようなトーションビーム18との上下方向の位置関係で、T方向に沿って侵入する。このとき、各支持ロッド13の落下防止部材22は、トーションビーム18との接触により、上述のように、第1回動位置から第2回動位置へ回動する。
【0059】
そして、ステップS4の処理において保持部2が停止した時点では、落下防止部材22が第1回動位置へ復帰している。これにより、
図4のように、トーションビーム18の車長方向後方側への変位が落下防止部材22により阻止された状態となる。また、この時点において、
図4のように、トーションビーム18の被支持面18aがビーム受け19上に位置した状態となる。
【0060】
このように、ステップS4の処理において保持部2が停止し、各ビーム受け19上にトーションビーム18が位置した状態となったとき、保持部2及びアセンブリW1は、
図3及び
図4に示すような水平面内での位置関係となる。これにより、アセンブリW1に対する保持部2の水平面内での位置決めが完了する。
【0061】
次に、制御部10は、保持部2のR方向の回転を規制した状態で、昇降駆動源7を駆動し、保持部2の上昇を開始する(ステップS5)。この上昇は、ステップS6において、ブラケット受け15内の所定位置にダンパブラケット16が存在すると判定されるか、又はステップS7において、所定量上昇したと判定されるまで行われる。
【0062】
なお、ブラケット受け15には、ダンパブラケット16の存在の有無を検出するセンサが設けられている。ダンパブラケット16がブラケット受け15内に存在するかどうかの判定は、このセンサからの検出信号Sに基づいて行われる。
【0063】
ステップS6においてダンパブラケット16が存在すると判定した場合、制御部10は、保持部2を、その時点での上昇位置からさらに所定量、例えば60mmだけ上昇させる(ステップS8)。
【0064】
これにより、アセンブリW1は、保持部2により保持された状態となる。すなわち、アセンブリW1のトーションビーム18とダンパブラケット16は、それぞれビーム受け19とブラケット受け15の底面15aとにより鉛直上方向に支持される。
【0065】
また、アセンブリW1は、落下防止部材22とブラケット受け15の押圧面15cとによりT方向(車長方向)への移動が規制される。また、アセンブリW1は、ブラケット受け15の各対向面15bにより、B方向(車幅方向)への移動が規制される。
【0066】
その後、制御部10は、保持部2を水平駆動源9によりT方向に沿って移動し、台車33上から引き出す(ステップS9)。これにより、ワーク保持処理が終了する。
【0067】
一方、制御部10は、ステップS6におけるダンパブラケット16の存在の判定がなされないまま、ステップS7において所定量上昇したと判定した場合には、エラーが生じたものとみなして、保持部2の上昇を停止し(ステップS10)、ワーク保持処理を終了する。所定量としては、例えば60mmが該当する。この場合、ワーク保持処理の終了後、制御部10は、エラーの発生を知らせる出力を行う。
【0068】
なお、搬送装置1は、このワーク保持処理により、4輪駆動用のアセンブリW2についても、同様にして保持することができる。ただし、2輪駆動用のアセンブリW1の場合と次の点が異なる。
【0069】
すなわち、アセンブリW2のトーションビーム20は、ステップS2〜S4の処理によって、ビーム受け21上に、その被支持面20aが位置するように位置決めされ、かつ保持部2の落下防止部材23により車長方向後方への変位が阻止された状態とされる。また、アセンブリW2のドライブシャフト31は、ステップS5、S6、S8の処理によって保持部2が上昇される間に、保持部2のドライブシャフト受け32により支持された状態とされる。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、水平駆動源9を所定範囲で駆動し、その後に昇降駆動源7を所定範囲で駆動することにより、アセンブリW1又はW2を保持することができる。したがって、リアサスペンションアセンブリ保持装置を複雑な機構を要しない簡便なものとして構成することができる。
【0071】
また、上述の位置決めのための押圧を行うために、回転駆動源6及び水平駆動源9のサーボフロート機能を利用するようにしたので、該押圧を適切かつ容易に実現することができる。
【0072】
また、アセンブリW1及びW2の双方に対応した共通のブラケット受け15を設け、ビーム受け19及び21並びにこれらに対応する落下防止部材22及び23を併設し、かつドライブシャフト受け32を設けたので、アセンブリW1及びW2を選択的に支持することができる。
【0073】
また、トーションビーム18及び20との接触により下方へ没し、その後、元の位置に復帰してトーションビーム18及び20の車長方向後方への変位を阻止する落下防止部材22及び23を設けたので、トーションビーム18及び20をそれぞれビーム受け19及び21で支障なく支持し、かつトーションビーム18及び20が車長方向後方へ変位して保持部2から脱落するのを阻止することができる。
【0074】
その場合、トーションビーム18がビーム受け19上に移動するとき、4輪駆動車用の落下防止部材23に接触したとしても、その接触により落下防止部材23が下方へ没するので、移動が妨げられることはない。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述においては、車両用のリアサスペンションアセンブリとして、2輪駆動車用及び4輪駆動車用の各リアサスペンションアセンブリを選択的に保持するようにしているが、この代わりに、ダンパブラケットの配置幅が異なる複数種類のリアサスペンションアセンブリを保持するようにしてもよい。
【0076】
この場合、各種類のリアサスペンションアセンブリ毎のダンパブラケットの配置幅に対応する第2鉛直方向支持面、車幅方向変位阻止面及び車長方向前方変位阻止面を保持部2の基部12上に併設することにより、各種類のリアサスペンションアセンブリを選択的に保持することができる。