特許第5827924号(P5827924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5827924電圧型電力変換装置の制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5827924
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】電圧型電力変換装置の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20151112BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20151112BHJP
【FI】
   H02M7/49
   H02M7/48 R
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-122813(P2012-122813)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-251933(P2013-251933A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 顕哲
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】阪東 明
(72)【発明者】
【氏名】山下 慶一
(72)【発明者】
【氏名】作地 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 重徳
(72)【発明者】
【氏名】吉原 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智道
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−044839(JP,A)
【文献】 特開2012−065437(JP,A)
【文献】 特開2011−182517(JP,A)
【文献】 特表2010−512133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを備える単位変換器を複数備えてアームを形成し、第1のアームと第2のアームを直列接続してレグを構成し、前記第1のアームと前記第2のアームの接続部分に交流端子を接続し、前記第1のアームの他端を第1の直流端子とし、前記第2のアームの他端を第2の直流端子とし、前記第1の直流端子を正側、前記第2の直流端子を負側とした前記レグを複数設け、前記第1のアームと第2のアームを貫いて流れる循環電流を抑制するための誘導性素子を前記レグの一部に設けた電圧型電力変換装置の制御装置であって、
前記交流端子に流れる交流電流を系統電圧の位相で座標変換して第一の所定値となるようにフィードバック制御する第1の電流制御部と、前記循環電流を前記系統電圧の周波数とは異なる第二の周波数の周波数で座標変換し、前記コンデンサの電圧変動を低減するような第二の所定値となるようにフィードバック制御する第2の電流制御部と、前記循環電流を前記系統電圧の周波数とは異なる第三の周波数の位相で座標変換し、アームの電流ピークを低減するような第三の所定値となるようにフィードバック制御する第3の電流制御部とを備え、交流系統と直流系統との間で所望の電力変換がなされるように、電力変換装置の電流を制御するとともに、
前記第二の周波数及び第三の周波数が、系統電圧の周波数の偶数倍であり、かつ第二の周波数は第三の周波数よりも低い周波数次数であることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の電圧型電力変換装置の制御装置において、
前記第二の周波数が、系統電圧の周波数の2倍であり、前記第三の周波数が、系統電圧の周波数の4倍であることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の電圧型電力変換装置の制御装置において、
前記第二の所定値が、前記第一の所定値からの演算結果であることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の電圧型電力変換装置の制御装置において、
前記第三の所定値が、前記第一の所定値からの演算結果であることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
コンデンサを備える単位変換器を複数備えてアームを形成し、第1のアームと第2のアームを直列接続してレグを構成し、前記第1のアームと前記第2のアームの接続部分に交流端子を接続し、前記第1のアームの他端を第1の直流端子とし、前記第2のアームの他端を第2の直流端子とし、前記第1の直流端子を正側、前記第2の直流端子を負側とした前記レグを複数設け、前記第1のアームと第2のアームを貫いて流れる循環電流を抑制するための誘導性素子を前記レグの一部に設けた電圧型電力変換装置の制御方法であって、
前記交流端子に流れる交流電流を系統電圧の位相で座標変換して第一の所定値となるようにフィードバック制御し、前記循環電流を前記系統電圧の位相とは異なる第二の周波数の位相で座標変換し、コンデンサの電圧変動を低減するような第二の所定値となるようにフィードバック制御し、前記循環電流を前記系統電圧の位相とは異なる第三の周波数の位相で座標変換し、アームの電流ピークを低減するような第三の所定値となるようにフィードバック制御して、交流系統と直流系統との間で所望の電力変換がなされるように、電力変換装置の電流を制御するとともに、
前記第二の周波数及び第三の周波数が、系統電圧の周波数の偶数倍であり、かつ第二の周波数は第三の周波数よりも低い周波数次数であることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御方法。
【請求項6】
コンデンサを備える単位変換器を複数備えてアームを形成し、2組のアームを直列接続してレグを構成し、複数レグの2組のアームの接続点をそれぞれ交流端子に接続し、複数レグの2組のアームの他端をそれぞれ直流の正負端子に接続するとともに、レグの一部に誘導性素子を備えた電圧型電力変換装置の制御方法であって、
前記交流端子に流れる交流電流を系統電圧の位相で座標変換して第一の所定値となるようにフィードバック制御して得た第1の信号と、前記レグに流れる循環電流を前記系統電圧の2倍の周波数の位相で座標変換し第二の所定値となるようにフィードバック制御して得た第2の信号と、前記レグに流れる循環電流を前記系統電圧の4倍の周波数の位相で座標変換し第三の所定値となるようにフィードバック制御して得た第3の信号とを求め、前記単位変換器を第1の信号と第2の信号と第3の信号の和により制御することを特徴とする電圧型電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6記載の電圧型電力変換装置の制御方法において、
第二の所定値を前記コンデンサ端子電圧の変動幅が小さくなる様に定め、第三の所定値を前記レグに流れる循環電流のピークが小さくなる様に定めることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載の電圧型電力変換装置の制御方法において、
第一の所定値の交流信号が最小値であるとき、第二の所定値の交流信号を最大値とし、第三の所定値の交流信号を最小値とすることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御方法。
【請求項9】
コンデンサを備える単位変換器を複数備えてアームを形成し、2組のアームを直列接続してレグを構成し、複数レグの2組のアームの接続点をそれぞれ交流端子に接続し、複数レグの2組のアームの他端をそれぞれ直流の正負端子に接続するとともに、レグの一部に誘導性素子を備えた電圧型電力変換装置の制御方法であって、
前記交流端子に流れる交流電流を系統電圧の位相で座標変換して第一の所定値となるようにフィードバック制御して得た第1の信号と、前記レグに流れる循環電流を前記系統電圧の偶数倍の周波数の位相で座標変換し第二の所定値となるようにフィードバック制御して得た第2の信号と、前記レグに流れる循環電流を前記系統電圧の偶数倍であって第2の信号の周波数の次数よりも高い周波数の位相で座標変換し第三の所定値となるようにフィードバック制御して得た第3の信号とを求め、前記単位変換器を第1の信号と第2の信号と第3の信号の和により制御することを特徴とする電圧型電力変換装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9記載の電圧型電力変換装置の制御方法において、
第二の所定値を前記コンデンサ端子電圧の変動幅が小さくなる様に定め、第三の所定値を前記レグに流れる循環電流のピークが小さくなる様に定めることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の電圧型電力変換装置の制御方法において、
第2の信号の周波数の次数は第1の信号の周波数の2倍調波であり、第3の信号の周波数の次数は4倍調波であることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御方法。
【請求項12】
コンデンサを備える単位変換器を複数備えてアームを形成し、第1のアームと第2のアームを直列接続してレグを構成し、前記第1のアームと前記第2のアームの接続部分に交流端子を接続し、前記第1のアームの他端を第1の直流端子とし、前記第2のアームの他端を第2の直流端子とし、前記第1の直流端子を正側、前記第2の直流端子を負側とした前記レグを複数設け、前記第1のアームと第2のアームを貫いて流れる循環電流を抑制するための誘導性素子を前記レグの一部に設けた電圧型電力変換装置の制御装置であって、
前記交流端子に流れる交流電流を系統電圧の位相で座標変換して第一の所定値となるようにフィードバック制御し、前記循環電流を前記系統電圧の周波数とは異なる第二の周波数の周波数で座標変換し、前記コンデンサの電圧変動を低減するような第二の所定値となるようにフィードバック制御し、前記循環電流を前記系統電圧の周波数とは異なる第三の周波数の位相で座標変換し、アームの電流ピークを低減するような第三の所定値となるようにフィードバック制御する電流制御部を備え、交流系統と直流系統との間で所望の電力変換がなされるように、電力変換装置の電流を制御するとともに、
前記第二の周波数及び第三の周波数が、系統電圧の周波数の偶数倍であり、かつ第二の周波数は第三の周波数よりも低い周波数次数であることを特徴とする電圧型電力変換装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧型電力変換装置の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交流を直流に或いは直流を交流に変換する電力変換装置が多く用いられている。
この種の電力変換装置は高電圧の分野にも応用されている。その場合に、例えば、半導体スイッチング素子を含んだ単位変換器を利用して、この単位変換器を複数直列に接続する。このような構成であれば高い電圧に耐えられる。
【0003】
このような構成では、例えば、単位変換器を直列に接続しアームとして構成し、さらに、このアームを直列に接続してレグとして構成する。レグにおいてアームの接続点を交流端子とし、一方、レグの他端を直流端子とする。各単位変換器の動作を制御することで、アームに流れる電流を制御して、交流端子と直流端子の間で電力変換を行う。
【0004】
一般に、電力変換の分野では、複数の相を扱うことが多い。そのため、各々のレグにおいてアームの接続点を交流端子とすると共に、一方、各々のレグの直流端子を互いに接続する。そして、このような構成において、各々のアームに交流端子が接続される交流系統の周波数の逆数で決まる周期的な電流が流れるように制御することで、複数の相を扱いながら、直流端子と交流端子の間で電力変換を行う。
【0005】
このような技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−233411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、例えば大容量の発電設備や交流系統を他の系統に接続する場合の用途では、各単位変換器に大きな電流が流れるので、各レグが大きな電流に耐えられるように、例えば、各単位変換器の電流定格を大きくしたり、或いは、単位変換器の並列数を多くしたりなどの工夫が必要であり、そのため、変換装置が大型になったり、複雑で高価になる等の問題があった。
【0008】
また、各単位変換器に並列に設置されたコンデンサに蓄積された電圧の変動が大きいので、コンデンサの電圧定格を大きくするなどの工夫が必要であった。
【0009】
また、半導体素子の損失が大きいため、半導体素子の温度定格を大きくしたり、あるいは、より冷却しやすい構造にしたりなどの工夫が必要であった。
【0010】
なお上記の課題を解決するに当たり、副次的に別の課題が生じることは避けねばならない。例えば大きな電流が流れる問題に関して、電流制御のみで改善する方法が想定しえる。しかし、この方法では、コンデンサに蓄積された電圧の変動、半導体素子の損失が従来よりも大きくなってしまうので、この点の解決も合わせて考慮する必要がある。
【0011】
以上のことから本発明の目的は、従来と比較して簡単な構成で、上記の問題を改善できる電圧型電力変換装置の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するために、本発明では、コンデンサを備える単位変換器を複数備えてアームを形成し、第1のアームと第2のアームを直列接続してレグを構成し、前記第1のアームと前記第2のアームの接続部分に交流端子を接続し、前記第1のアームの他端を第1の直流端子とし、前記第2のアームの他端を第2の直流端子とし、前記第1の端子を正側、前記第2の端子を負側とした前記レグを複数設け、前記第1のアームと第2のアームを貫いて流れる循環電流を抑制するための誘導性素子を前記レグの一部に設けた電圧型電力変換装置の制御装置であって、
前記交流端子に流れる交流電流を系統電圧の位相で座標変換して第一の所定値となるようにフィードバック制御する第1の電流制御部と、前記循環電流を前記系統電圧の位相とは異なる第二の周波数の位相で座標変換し、前記コンデンサの電圧変動を低減するような第二の所定値となるようにフィードバック制御する第2の電流制御部と、前記循環電流を前記系統電圧の位相とは異なる第三の周波数の位相で座標変換し、アームの電流ピークを低減するような第三の所定値となるようにフィードバック制御する第3の電流制御部とを備え、前記交流系統と直流系統との間で所望の電力変換がなされるように、電力変換装置の電流を制御することを特徴とする電圧型電力変換装置の制御装置として構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力変換装置において、簡単な構成で、各レグに流れる電流ピーク値を変えずに、コンデンサ電圧変動・半導体素子の損失を下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電圧型電力変換装置の構成を示す図。
図2】双方向チョッパ型単位変換器108の内部構成を示す図。
図3】制御装置112の内部で実行されている制御を示す図。
図4】循環電流指令演算器301の内部構成を示す図。
図5】フィードバック電流演算器302の内部の構成を示す図。
図6】電流調整器303の内部の構成を示す図。
図7】実施例1における直流電流波形を示す図。
図8】実施例1における交流電流波形、交流電圧波形を示す図。
図9】実施例1におけるR相アーム電流波形を示す図。
図10】実施例1におけるR相アーム循環電流指令値波形を示す図。
図11】実施例1におけるR相アームコンデンサ電圧波形を示す図。
図12】R相下側アーム電流指令値波形の制御方法毎の比較を示す図。
図13】R相下側アームコンデンサ電圧波形の制御方法毎の比較を示す図。
図14】直流電圧調整器AVRでd軸電流指令Idを生成する回路構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施する形態について以下図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明を実施する第1の形態について説明する。
【0017】
実施例1の電圧型電力変換装置では、各アームは双方向チョッパ回路型単位変換器で構成される。ここでは、双方向チョッパ回路型単位変換器の例で説明するが、その他の、例えばフルブリッジ型単位変換器を用いても同等の効果があり、単位変換器として他の型の単位変換器を使っても良い。
【0018】
以下、図1を用いて実施例1の電圧型電力変換装置の構成を説明する。構成を説明した後に、本実施例の動作原理と概略波形を説明する。
【0019】
まず、電力変換装置102aと外部回路との接続状態を説明する。
【0020】
電力変換装置102aは変圧器103を介して交流系統101aに接続している。本実施例では、変圧器103の交流系統101a側を1次側とし、R点、S点、T点と称し、また、変圧器103の2次側をR′点、S′点、T′点と称する。
【0021】
さらに、電力変換装置102aは直流端子P点とN点を備えており、P点とN点は他の電力変換装置102bの直流端子P点とN点にそれぞれ接続する。ここで、直流端子P点の電位は、直流端子N点の電位よりも高いものとする。なお、電力変換装置102bは、電力変換装置102aと同一構成の電力変換装置であり、交流系統101bに接続される構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
電力変換装置102aと電力変換装置102bは直流送電システムを構成する。
【0023】
以下、電力変換装置102aの内部構成を説明する。
【0024】
電力変換装置102aは、変圧器103、R相レグ104R、S相レグ104S、T相レグ104T、電圧センサ110、115、電流センサ111、制御装置112、ゲート信号線113、コンデンサ電圧検出線114を備えている。
【0025】
R相レグ104Rは、RPアーム105RP、RNアーム105RNを直列接続した回路であり、RPアーム105RPとRNアーム105RNの接続点を変圧器103のR′点に接続し、RPアーム105RPのRNアーム105RNに接続した端子とは反対側の端子を直流端子P点に接続し、RNアーム105RNのRPアーム105RPに接続した端子とは反対側の端子を直流端子N点に接続している。
【0026】
R相レグと同様に、S相レグ104Sは、SPアーム105SP、SNアーム105SNを直列接続した回路であり、SPアーム105SPとSNアーム105SNの接続点を変圧器103のS′点に接続し、SPアーム105SPのSNアーム105SNに接続した端子とは反対側の端子を直流端子P点に接続し、SNアーム105SNのSPアーム105SPに接続した端子とは反対側の端子を直流端子N点に接続している。
【0027】
R相レグと同様に、T相レグ104Tは、TPアーム105TP、TNアーム105TNを直列接続した回路であり、TPアーム105TPとTNアーム105TNの接続点を変圧器103のT′点に接続し、TPアーム105TPのTNアーム105TNに接続した端子とは反対側の端子を直流端子P点に接続し、TNアーム105TNのTPアーム105TPに接続した端子とは反対側の端子を直流端子N点に接続している。
【0028】
なお、以上の説明から明らかなように各アーム105に付した2桁の記号は、左側がこのアームの属するレグの記号、右側がこのアームが接続される直流端子の極性を意味している。本発明の以下の説明では、同様の約束に基づく記号付与を随所で行っているが、その都度の説明を省略する。
【0029】
次に、各アームの内部構成を説明する。
【0030】
RPアーム105RPは、M個の双方向チョッパ型単位変換器108を直列接続して構成した双方向チョッパ群106RPと、第1のリアクトル107RPとを直列接続して構成する。双方向チョッパ群106RPの出力電圧をVRPと称する。
【0031】
RNアーム105RNは、M個の双方向チョッパ型単位変換器108を直列接続して構成した双方向チョッパ群106RNと、第2のリアクトル107RNとを直列接続して構成する。双方向チョッパ群106RNの出力電圧をVRNと称する。
【0032】
SPアーム105SPは、M個の双方向チョッパ型単位変換器108を直列接続して構成した双方向チョッパ群106SPと、第1のリアクトル107SPとを直列接続して構成する。双方向チョッパ群106SPの出力電圧をVSPと称する。
【0033】
SNアーム105SNは、M個の双方向チョッパ型単位変換器108を直列接続して構成した双方向チョッパ群106SNと、第2のリアクトル107SNとを直列接続して構成する。双方向チョッパ群106SNの出力電圧をVSNと称する。
【0034】
TPアーム105TPは、M個の双方向チョッパ型単位変換器108を直列接続して構成した双方向チョッパ群106TPと、第1のリアクトル107TPとを直列接続して構成する。双方向チョッパ群106TPの出力電圧をVTPと称する。
【0035】
TNアーム105TNは、M個の双方向チョッパ型単位変換器108を直列接続して構成した双方向チョッパ群106TNと、第2のリアクトル107TNとを直列接続して構成する。双方向チョッパ群106TNの出力電圧をVTNと称する。
【0036】
各アーム105RP、105SP、105TP、105RN、105SN、105TNは、そのアームを流れる電流IRP、ISP、ITP、IRN、ISN、ITNを検出する電流センサ111を備えており、検出結果を制御装置112に伝送する。ここで、各アーム電流は、直流端子N点から直流端子P点に向かって流れる方向を正と定義する。
【0037】
電圧センサ110は、変圧器103のR点、S点、T点に接続されており、変圧器103の巻線と同じ巻線構造とすることで、R′点、S′点、T′点の位相と同じ位相の電圧VGR、VGS、VGTを検出する。系統電圧VGR、VGS、VGTを取り込み、検出結果を制御装置112に伝送する。
【0038】
制御装置112は、交流電圧VGR、VGS、VGT、アーム電流IRP、ISP、ITP、IRN、ISN、ITN、単位変換器108が出力するコンデンサ電圧VCjkを取り込み、ゲート信号GHjk、GLjk(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN、k=1、2、…、M)を、ゲート信号線113を介して各双方向チョッパ型単位変換器108に転送する。ゲート信号GHjkは、後で説明するハイサイドスイッチング素子を駆動する信号であり、ゲート信号GLjkは、後で説明するハイサイドスイッチング素子を駆動する信号である。
【0039】
以下、図2を用いて双方向チョッパ型単位変換器108の内部構成を説明する。図2では、RPアーム105RPについて説明する。他のアーム105SP、105TP、105RN、105SN、105TNについても同様の構成であるので説明は省略する。
【0040】
双方向チョッパ型単位変換器108の主回路は、ハイサイドスイッチング素子201Hとハイサイド環流ダイオード202Hの並列回路と、ローサイドスイッチング素子201Lとローサイド還流ダイオード202Lの並列回路とを直列接続した回路と、コンデンサ203とを並列接続した構成である。
【0041】
ダイオード202H、202Lは、コンデンサ電圧VCjk(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN、k=1、2、…、M)に対して電流を流さない方向に直列に接続される。ダイオード202H、202Lと並列に接続されたスイッチング素子201H、201Lは、状態がONの時にコンデンサ電圧VCjkを放電する方向に取り付ける。コンデンサ電圧の電位が高い方に付く素子(記号H付)を、ここではハイサイドと呼ぶ。逆をローサイド(記号L付)と呼ぶ。
【0042】
ローサイドスイッチング素子201Lとローサイド還流ダイオード202Lの並列回路の印加電圧Vjkを、双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧と称する。
【0043】
なお、図2では、スイッチング素子201H、201LにIGBTの記号を用いているが、MOSFET、GCT、GTO、その他のオン・オフ制御素子であれば、スイッチング素子201H、201Lとして用いることができる。
【0044】
双方向チョッパ型単位変換器108は、コンデンサ電圧VCjk(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN、k=1、2、…、M)を検出する電圧センサ204を備えており、コンデンサ電圧検出線114を介して制御装置112に接続している。
【0045】
また、双方向チョッパ型単位変換器108は、制御装置112からゲート信号線113を介して伝送されたゲート信号GHjk、GLjkに基づいて、スイッチング素子201H、201Lのそれぞれのゲート・エミッタ間にゲート電圧を印加するゲートドライバ205を備えている。
【0046】
以下、双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧Vjkと、スイッチング素子201H、201Lのオン・オフ状態の関係を説明する。
【0047】
ハイサイドスイッチング素子201Hがオン、ローサイドスイッチング素子201Lがオフの場合、単位変換器108の電流Ij(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN)に関わらず、出力電圧Vjkはコンデンサ電圧VCjkと概ね等しくなる。
【0048】
ハイサイドスイッチング素子201Hがオフ、ローサイドスイッチング素子201Lがオンの場合、電流Ijに関わらず、出力電圧Vjkは零と概ね等しくなる。
【0049】
以下、図3を用いて制御装置112の内部で実行されている制御を説明する。なお、本実施例では、変圧器103の巻数比が1:1である場合を想定して説明する。
【0050】
図3は、電力変換装置102aに与えるアーム電圧指令値を生成するアーム電圧指令値生成部311とアーム電圧指令値を各単位変換器108に分配する指令値分配部313を示している。まず、アーム電圧指令値生成部311の動作を説明する。
【0051】
アーム電圧指令値生成部311は、交流系統101aから電力変換装置102aに流入する電力を一定に制御する電力制御機能と、アーム105jに流す電流Ij(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN)を制御する電流制御機能と、上記2つの制御機能を実現するためのアーム電圧指令値を生成する機能を備えている。
【0052】
以下、電力制御機能について説明する。
【0053】
まず、交流側電力演算器305の内部の動作について説明する。
【0054】
交流側電力演算器305は、電流センサ111を用いて検出したRPアーム105RPを流れる電流IRPとRNアーム105RNを流れる電流IRNの差IRP−IRN、すなわち交流系統101に流れる電流IRを演算する。なお、IRを検出する電流センサを別途設けてもよい。
【0055】
同様に、交流側電力演算器305は、電流センサ111を用いて検出したSPアーム105SPを流れる電流ISPとSNアーム105SNを流れる電流ISNの差ISP−ISN、すなわち交流系統101に流れる電流ISを演算する。なお、ISを検出する電流センサを別途設けてもよい。
【0056】
同様に、交流側電力演算器305は、電流センサ111を用いて検出したTPアーム105TPを流れる電流ITPとTNアーム105TNを流れる電流ITNの差ITP−ITN、すなわち交流系統101に流れる電流ITを演算する。なお、ITを検出する電流センサを別途設けてもよい。
【0057】
交流側電力演算器305では、交流電流IR、IS、ITにα−β変換を施してα軸電流Ia、β軸電流Ibを演算する。ここで、α−β変換は(1)式により実施する。
【0058】
【数1】
【0059】
次に、交流電圧VGR、VGS、VGTにα−β変換を施してα軸電圧VGa、β軸電圧VGbを演算する。ここで、α−β変換は(2)式により実施する。
【0060】
【数2】
【0061】
交流系統101から電力変換装置102aに流入する有効電力Pおよび無効電力Qを、(3)式、(4)式にて計算する。
【0062】
【数3】
【0063】
【数4】
【0064】
交流側電力演算器305は、(3)式、(4)式で計算した有効電力Pおよび無効電力Qを、有効電力調整器APRおよび無効電力調整器AQRに伝送する。
【0065】
有効電力調整器APRは、有効電力Pと有効電力指令値Pの差P−Pを加減算器308で演算し、その結果を比例積分調整器307に入力し、出力としてd軸電流指令Idを得る。
【0066】
無効電力調整器AQRは、無効電力Qと無効電力指令値Qの差Q−Qを加減算器308で演算し、その結果を比例積分調整器309に入力し、出力としてq軸電流指令Iqを得る。
【0067】
本実施例の説明では、d軸電流が正の場合に、交流系統101aから電力変換装置102aに有効電力が流入し、d軸電流が負の場合に電力変換装置102aから交流系統101aに有効電力が流出するようにd軸、q軸を定めたものとする。
【0068】
有効電力Pが指令値Pより低下すれば、Idは+側に増加する。そのため、有効電力Pが上昇する。逆に、有効電力Pが指令値Pより上昇すれば、Idは−側に減少する。
そのため、有効電力Pの上昇が抑えられる。この作用により、有効電力Pを指令値Pと一致するように、交流側のd軸電流指令Idが生成される。
【0069】
無効電力Qに関しても同様で、指令値Qと無効電力Qが一致するようにq軸電流指令(無効分電流指令)Iqが生成される。
【0070】
また、ここでは、有効電力調整器APRによりd軸電流指令Idを作る構成で説明したが、有効電力調整器APRに変えて、図14に示すように直流電圧調整器AVRでd軸電流指令Idを生成するように構成してもよい。
【0071】
図14において直流電圧調整器AVRは、電圧センサ204とコンデンサ電圧検出線114を介して検出したすべての単位変換器のコンデンサ電圧VCjkの平均値VCを平均値演算器701で演算する。コンデンサ電圧平均値VCとコンデンサ電圧指令値VCの差VC−VCを加減算器702で演算し、その結果に制御ゲイン703を乗算し、d軸電流指令Idを得る。なお直流電圧指令値VDCをアームのセル数Mで割ってVCを求める。
【0072】
図3に戻り、循環電流指令演算器301は、系統電流指令Id、Iqから循環電流指令Id2b、Iq2b、Id4b、Iq4bを計算し、電流調整器303に伝送する。ここで、循環電流指令演算器301が与える出力は、基本波に対して2倍調波の循環電流指令(d、q軸成分)Id2b、Iq2bと、4倍調波の循環電流指令(d、q軸成分)Id4b、Iq4bの2組である。
【0073】
なお順次明らかにするが、本発明では従来の装置構成に循環電流指令演算器301を付加して、2組の循環電流指令を得、これに基づいて循環電流を積極的に制御しようとしている。本来の電力変換装置の制御目的上は系統電流指令Id、Iqが制御できればよいのであって、高調波の循環電流を制御する必要はない。本発明では循環電流を積極的に制御して初期の目的を達成しようとしている。循環電流指令演算器301の内部の動作は、図4を用いて後述する。
【0074】
フィードバック電流演算器302は、アーム電流IRP、IRN、ISP、ISN、ITP,ITNから、フィードバック電流IdFB、IqFB、Id2bFB、Iq2bFB、Id4bFB、Iq4bFBを計算し、電流調整器303に伝送する。フィードバック電流IdFBとIqFB、Id2bFBとIq2bFB、およびId4bFBとIq4bFBは、それぞれ系統電流指令IdとIq、2倍調波の循環電流指令Id2bとIq2b、4倍調波の循環電流指令Id4bとIq4bに対応する帰還信号である。フィードバック電流演算器302の内部の動作は図5を用いて後述する。
【0075】
電流調整器303は、フィードバック電流IdFB、IqFB、Id2bFB、Iq2bFB、Id4bFB、Iq4bFBを、それぞれ対応する電流指令に追従させる様、電圧指令値VRP、VRN、VSP、VSN、VTP、VTNを生成し、ゲートパルス生成部313に伝送する。なお、この場合の電流指令は、系統電流指令(d、q軸成分)Id、Iqと、2倍調波の循環電流指令(d、q軸成分)Id2b、Iq2bと、4倍調波の循環電流指令(d、q軸成分)Id4b、Iq4bの合計3組で構成された指令である。電流調整器303の内部の動作は図6を用いて後述する。
【0076】
次に、ゲートパルス生成部313の動作を説明する。
【0077】
チョッパ群106RPに対するゲートパルス生成部312は、例えばパルス幅変調方式(PWM方式)を用い、電圧指令値VRPと双方向チョッパ群106RPの出力電圧VRPが極力一致するように双方向チョッパ群106RPに含まれるM個の双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧VRPを制御するゲート信号GHRPk、GLRPkを生成する。
【0078】
同様に、チョッパ群106RNに対するゲートパルス生成部312は、例えばパルス幅変調方式(PWM方式)を用い、電圧指令値VRNと双方向チョッパ群106RNの出力電圧VRNが極力一致するように双方向チョッパ群106RNに含まれるM個の双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧VRNを制御するゲート信号GHRNk、GLRNkを生成する。
【0079】
同様に、チョッパ群106SPに対するゲートパルス生成部312は、例えばパルス幅変調方式(PWM方式)を用い、電圧指令値VSPと双方向チョッパ群106SPの出力電圧VSPが極力一致するように双方向チョッパ群106SPに含まれるM個の双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧VSPを制御するゲート信号GHSPk、GLSPkを生成する。
【0080】
同様に、チョッパ群106SNに対するゲートパルス生成部312は、例えばパルス幅変調方式(PWM方式)を用い、電圧指令値VSNと双方向チョッパ群106SNの出力電圧VSNが極力一致するように双方向チョッパ群106SNに含まれるM個の双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧VSNを制御するゲート信号GHSNk、GLSNkを生成する。
【0081】
チョッパ群106TPに対するゲートパルス生成部312は、例えばパルス幅変調方式(PWM方式)を用い、電圧指令値VTPと双方向チョッパ群106TPの出力電圧VTPが極力一致するように双方向チョッパ群106TPに含まれるM個の双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧VTPを制御するゲート信号GHTPk、GLTPkを生成する。
【0082】
同様に、チョッパ群106TNに対するゲートパルス生成部312は、例えばパルス幅変調方式(PWM方式)を用い、電圧指令値VTNと双方向チョッパ群106TNの出力電圧VTNが極力一致するように双方向チョッパ群106TNに含まれるM個の双方向チョッパ型単位変換器108の出力電圧VTNを制御するゲート信号GHTNk、GLTNkを生成する。
【0083】
以下、図4を用いて循環電流指令演算器301の内部の構成を説明する。循環電流指令演算器301では、2組、合計4個の循環電流指令値Id2b、Iq2b、Id4b、Iq4bを計算する。なおここでId2b、Iq2bは、アームに流れる2次循環電流成分に対するdq軸電流指令値であり、Id4b、Iq4bは、アームに流れる4次循環電流成分に対するdq軸電流指令値である。
【0084】
このうちまずdq軸の2次循環電流指令値Id2b、Iq2bは、d軸電流指令Idおよびq軸電流指令Iqを用いて(5)式、(6)式にて演算する。
【0085】
【数5】
【0086】
【数6】
【0087】
ここで、Kは、2次循環電流と系統電流の振幅の比であり(7)式が成り立つ。
【0088】
【数7】
【0089】
dq軸の4次循環電流指令値Id4b、Iq4bは、d軸電流指令Idおよびq軸電流指令Iqを用いて(8)式、(9)式にて演算する。
【0090】
【数8】
【0091】
【数9】
【0092】
ここで、Kは、4次循環電流と系統電流の振幅の比であり、(10)式が成り立つ。
【0093】
【数10】
【0094】
(5)〜(10)式の様に循環電流指令を決めると系統電流が最大および最小となる位相において、2次循環電流が最大、4次循環電流が最小となる様にできる。詳細については後述する。
本実施例においては、K,Kは(11)式とする。この時、2次循環電流の振幅は系統電流指令値のK≒0.051倍、4次循環電流の振幅は系統電流指令値のK
0.083倍となる。
【0095】
【数11】
【0096】
なお図4は、循環電流指令値Id2b、Iq2b、Id4b、Iq4bを計算する処理をブロックダイアグラムで示した図であり、ここでmは乗算器、adは減算器、dは除算器、wは開平器、kは係数器を意味している。上記式の実行には、計算機を用いて行うことも可能である。循環電流指令値Id2b、Iq2b、Id4b、Iq4bを計算する処理については、式の開示にとどめ、図4についてのより詳細な説明を省略する。
【0097】
次に、図5に示すフィードバック電流演算器302の内部の構成について説明する。
【0098】
ここではアーム電流IRP、IRN、ISP、ISN、ITP,ITNを、d軸系統電流IdFB、q軸系統電流IqFB、2次d軸循環電流Id2bFB、2次q軸循環電流Iq2bFB、4次d軸循環電流Id4bFB、4次q軸循環電流Iq4bFBの6変数に変換し、それぞれ個別に制御を行う。これらの変数への変換方法について、以下説明する。
【0099】
まず、(12)〜(14)式を用いて、アーム電流IRP、IRN、ISP、ISN、ITP,ITNを、系統電流IR、IS、ITおよび循環電流IRb、ISb、ITbの6変数に変換する。この式の処理は、図5の加減算器501で実施される。
【0100】
【数12】
【0101】
【数13】
【0102】
【数14】
【0103】
3相2相変換502aおよびd−q変換503は、系統電流IR、IS、ITを、(15)式、(16)式を用いてdq軸系統電流IdFB、IqFBに変換する。ここで、d−q変換503に用いる位相角θは、交流系統の電圧VGR、VGS、VGTから位相検出器306で検出した位相角であり、VGRの位相に同期している。
【0104】
【数15】
【0105】
【数16】
【0106】
3相2相変換502bは、循環電流IRb、ISb、ITbを、(17)式を用いてαβ軸循環電流Iab、Ibbに変換する。
【0107】
【数17】
【0108】
次に、αβ軸循環電流Iab、Ibbから2次d軸循環電流Id2bFB、2次q軸循環電流Iq2bFBへの変換について説明する。
【0109】
d−q変換504は、αβ軸循環電流Iab、Ibbを、(18)式を用いてdq軸系統電流Id4b、Iq4bに変換する。ここで、d−q変換504に用いる位相角4θは、位相検出器306で検出したθの4倍の位相角で、系統周波数の4倍の周波数となる。これにより、Iab、Ibbの4次成分は直流量に、その他の周波数成分は平均値0の交流量に変化する。
【0110】
【数18】
【0111】
4次のdq軸電流Id4b、Iq4bに、移動平均505を施してId4bMA、Iq4bMAに変換する。これは、Id4b、Iq4bの直流量を抽出したものに等しいので、循環電流の4次成分のみが現れた信号となる。
【0112】
Id4bMA、Iq4bMAに逆d−q変換506を行い、(19)式を用いてαβ軸循環電流Ia4bMA、Ib4bMAに変換する。ここで、逆d−q変換506に用いる位相角4θは、位相検出器306で検出したθの4倍の位相角で、系統周波数の4倍の周波数となる。結果、Ia4bMA、Ib4bMAはIab、Ibbに含まれている4次成分に等しくなる。
【0113】
【数19】
【0114】
2次α軸循環電流Ia2bFB、2次β軸循環電流Ib2bFBは、(20)式を用いて計算する。これは、Iab、Ibbから4次成分を除いたものに等しい。
【0115】
【数20】
【0116】
(21)式でdq変換を行い、2次d軸循環電流Id2bFB、2次q軸循環電流Iq2bFBを得る。
【0117】
【数21】
【0118】
2次dq軸フィードバック電流Id2bFB、Iq2bFBには、循環電流の2次成分が直流量として含まれ、4次成分は含まれない。またその他の周波数成分は交流量として含まれ、電流調整器303により、0になる様に制御される。
【0119】
次に、αβ軸循環電流Iab、Ibbから4次d軸循環電流Id4bFB、4次q軸循環電流Iq4bFBへの変換について説明する。
【0120】
d−q変換507は、αβ軸循環電流Iab、Ibbを、(22)式を用いてdq軸系統電流Id2b、Iq2bに変換する。ここで、d−q変換507に用いる位相角2θは、位相検出器306で検出したθの2倍の位相角で、系統周波数の2倍の周波数となる。これにより、Iab、Ibbの2次成分は直流量に、その他の周波数成分は平均値0の交流量に変化する。
【0121】
【数22】
【0122】
dq軸電流Id2b、Iq2bに、移動平均505を施してId2bMA、Iq2bMAに変換する。これは、Id2b、Iq2bの直流量を抽出したものに等しいので、循環電流の2次成分のみが現れた信号となる。
【0123】
Id2bMA、Iq2bMAに逆d−q変換508を行い、(23)式を用いてαβ軸循環電流Ia2bMA、Ib2bMAに変換する。ここで、逆d−q変換508に用いる位相角2θは、位相検出器306で検出したθの2倍の位相角で、系統周波数の2倍の周波数となる。結果、Ia2bMA、Ib2bMAはIab、Ibbの信号に含まれる2次成分に等しくなる。
【0124】
【数23】
【0125】
4次α軸循環電流Ia4bFB、4次β軸循環電流Ib4bFBは、(24)式を用いて計算する。これは、Iab、Ibbから2次成分を除いたものに等しい。
【0126】
【数24】
【0127】
(25)式でdq変換を行い、4次d軸循環電流Id4bFB、4次q軸循環電流Iq4bFBを得る。
【0128】
【数25】
【0129】
4次dq軸フィードバック電流Id4bFB、Iq4bFBには、循環電流の4次成分が直流量として含まれ、2次成分は含まれない。またその他の周波数成分は交流量として含まれ、電流調整器303により、0になる様に制御される。
【0130】
以下、図6を用いて電流調整器303の内部の構成を説明する。
【0131】
まず、交流電圧VGR、VGS、VGTにα−β変換601を施してα軸電圧VGa、β軸電圧VGbを演算する。ここで、α−β変換は(26)式により実施する。
【0132】
【数26】
【0133】
(27)式を用いて、αβ軸電圧VGa、VGbにdq変換602を施してdq軸電圧成分Vd、Vqを計算する。なお、本実施例の位相角θは、系統電圧VGRに同期するように作成されるため、(27)式中のq軸電圧成分Vqはほぼ零となり、Vdはほぼ系統電圧振幅の√(3/2)倍に等しくなる。
【0134】
【数27】
【0135】
次に、アーム電流調整について説明する。
【0136】
dq軸系統電流IdFB、IqFB、dq軸2次循環電流Id2bFB、Iq2bFB、dq軸4次循環電流Id4bFB、Iq4bFBがそれぞれの指令値Id、Iq、Id2b、Iq2b、Id4b、Iq4bと一致するように、(28)〜(33)式に基づいて、系統電圧指令値Vd、Vqおよび補正電圧指令値Vd2b、Vq2bを演算する。なお図6中の記号1804は加減算器であり、各ゲインを与える係数器605,608,610により、(28)〜(33)式が実行されている。
【0137】
【数28】
【0138】
【数29】
【0139】
【数30】
【0140】
【数31】
【0141】
【数32】
【0142】
【数33】
【0143】
(28)〜(33)式において、Gain605、608、610は、例えば比例又は 比例積分調整器等で構成する。図中ゲイン605、608、610は同じゲインでなくても良い。
【0144】
系統電圧指令値Vd、Vqに逆d−q変換606および逆α−β変換607を行い、相毎の系統電圧指令値VR、VS、VTを演算する。系統電圧指令値VR、VS、VTを求める変換式は、(34)式および(35)式に示す。
【0145】
【数34】
【0146】
【数35】
【0147】
系統電圧指令値Vd2b、Vq2bに逆d−q変換609および逆α−β変換607を行い、相毎の系統電圧指令値VR2b、VS2b、VT2bを演算する。系統電圧指令値VR2b、VS2b、VT2bを求める変換式は、(36)式および(37)式に示す。
【0148】
【数36】
【0149】
【数37】
【0150】
系統電圧指令値Vd4b、Vq4bに逆d−q変換611および逆α−β変換607を行い、相毎の系統電圧指令値VR4b、VS4b、VT4bを演算する。系統電圧指令値VR4b、VS4b、VT4bを求める変換式は、(38)式および(39)式に示す。
【0151】
【数38】
【0152】
【数39】
【0153】
求められた電圧から、電圧指令値Vj0(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN)は、(40)〜(45)式の通りに演算する。
【0154】
【数40】
【0155】
【数41】
【0156】
【数42】
【0157】
【数43】
【0158】
【数44】
【0159】
【数45】
【0160】
図3のゲートパルス生成部313に与えるアーム105jから出力する出力電圧指令値Vj(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN)は、(46)式の通りに演算する。
【0161】
【数46】
【0162】
(46)式において、直流電圧指令値VDCはシステム定格又はシステム運用上の目標値で定まる値である。
【0163】
アーム電圧指令値Vj(j=RP、SP、TP、RN、SN、TN)は、指令値分配部313に伝送される。
【0164】
以上で、電力変換装置102aの構成と制御方法を説明した。
【0165】
ここで、本実施例で得られる効果とそのメカニズムについて、説明する。
【0166】
まず、本実施例のメカニズムについて説明する。まず、アーム電流の低減効果について述べる。
【0167】
例えばR相の場合、2次および4次の循環電流指令値の通りに電流が流れると、上側および下側アームに流れる電流IRP,IRNは(47)式で表される。
【0168】
【数47】
【0169】
(47)式に(5)〜(10)式を代入すると、(50)式が得られる。但しここで、系統の線間電圧実効値をI、電圧位相に対する電流位相のずれをφとした時、各指令値は、(48)(49)式のように表すことができる。
【0170】
【数48】
【0171】
【数49】
【0172】
【数50】
【0173】
,Kは1と比べて小さい数であるので、IRPはθ=φでほぼ最大、IRNはθ=φ+πでほぼ最大になる。そのため、アーム電流ピークは(51)式で概ね近似できる。
【0174】
【数51】
【0175】
(51)式より、4次循環電流重畳によりアーム電流ピークを下げる効果があることが分かる。
【0176】
次に、コンデンサ電圧変動の抑制効果について述べる。まず、アーム電圧は、(52)式で表すことができる。
【0177】
【数52】
【0178】
コンデンサ電圧VcRP,VcRNは、コンデンサ容量Cを用いて、概ね(53)式で近似することができる。
【0179】
【数53】
【0180】
IRP,IRNの符号は反転しないとすると、VcRP,VcRNはそれぞれVRP,VRNが正から負になる時に最大、VRP,VRNが負から正になる時に最小となる。ここで、VGdが(54)式であるとすると、VcRPはθ=2π/3でほぼ最小、θ=4π/3でほぼ最大となる。またVcRNはθ=2π/3でほぼ最大、θ=4π/3でほぼ最小となる。そのため、コンデンサ電圧変動幅は概ね(55)式で近似できる。
【0181】
【数54】
【0182】
【数55】
【0183】
(55)式において、ωは、系統側の周波数fを用いてω=2πfで表される。
【0184】
(55)式より、2次循環電流、4次循環電流ともにコンデンサ電圧変動を下げる効果があるが、2次循環電流の方がより効果が大きいことが分かる。
【0185】
以下、本実施例において、実際の交流・直流の電流波形を与えた時に得られるアーム電流波形を示し、得られる効果について説明する。
【0186】
直流側は、図7に示す通り一定の電流を与え、Idcref=1280[A]とする。また、電圧はVDC=250[kV]とする。交流側は、図8に電流波形、電圧波形を示す通り周波数50Hz、力率1の3相交流を与え、d軸電圧138[kV]、d軸電流2319[A]とする。
【0187】
ここで従来の制御においては、IRP+IRN=ISP+ISN=ITP+ITN=Idc/3となるように、上アームと下アームに対称性のある電流指令を与えていた。この時、アームに流れる電流のピーク値は1373[A]、コンデンサ電圧変動は617[V]となっていた。R相上側アームについて、この時の電流波形を図12のAに、コンデンサ電圧波形を図13のAに示す。
【0188】
系統電流の上下ピークと2次循環電流の下側ピークが一致するように制御したときの、R相上側アームについて、この時の電流波形を図12のBに、コンデンサ電圧波形を図13のBに示している。これによれば、アームに流れる電流のピークを約17%低減させることができる。しかし、コンデンサ電圧の変動が約29%大きくなり、またスイッチング素子やダイオードでの電力損失も大きくなる。この方法は、二次成分の調整によりアーム電流波形(循環電流)を低減させたものである。
そこで次に、2次循環電流の符号を逆にしてみた。R相上側アームについて、この時の電流波形を図12のCに、コンデンサ電圧波形を図13のCに示す。この場合、コンデンサ電圧の変動およびスイッチング素子やダイオードでの電力損失を上記Bの方法の時の損失増分を100%とすると、約35%小さくすることができる。
例えばKを(12)式の値とした時、コンデンサ電圧変動を約11%、スイッチング素子やダイオードでの電力損失を約6%小さくすることができる。しかし、アームに流れる電流のピークは約7%増加する。
【0189】
以上のケースB,Cは、2次循環電流を調整するものであった。これに対し、ケースDでは2次の代わりに、4次の循環電流を調整してみた。このときのR相上側アームについて、この時の電流波形を図12のDに、コンデンサ電圧波形を図13のDに示す。この4次の循環電流を重畳するケースでは、アームに流れる電流とコンデンサ電圧変動の双方を同時に低減させることができる。しかし、2次に比べて効果が小さい。
【0190】
例えばKを(12)式の値とした時、アーム電流のピークは約3%、コンデンサ電圧変動は約7%、スイッチング素子やダイオードでの電力損失はケースBの方法の時の損失増分100%に対し約17%しか小さくならないものであった。
【0191】
本実施例では、2次の循環電流と4次の循環電流を組み合わせることで、コンデンサ電圧変動と半導体素子での電力損失の双方を大きく減少させながらも、アーム電流のピークが上がらないようにしている。R相上側アームについて、この時の電流波形を図12のEに、コンデンサ電圧波形を図13のEに示す。
【0192】
例えばK,Kを(12)式の値とした時、アームに流れる電流のピークをほとんど変えずに、コンデンサ電圧変動を約19%、スイッチング素子やダイオードでの電力損失をケースBの方法の時の損失増分100%に対し約51%小さくすることができる。
【0193】
図9に、R相アーム電流(IRP,IRN)の波形を、循環電流重畳有無における比較の形で示す。アーム電流のピーク値は、従来制御が1373[A]、本実施例が1376[A]で、ほぼ同じ値となっている。なお、S相レグ、T相レグについては図示を省略したが、図12の波形をそれぞれ120°、240°遅らせた波形となり、ピーク値はR相の場合と一致する。
【0194】
図11に、R相コンデンサ電圧の波形を、循環電流重畳有無における比較の形で示す。コンデンサ電圧変動(2500[V]を基準とした上下変動幅)は、従来制御が617[V]に対し、本実施例が500[V]で、本実施例の場合19%の削減となっている。なお、S相レグ、T相レグについては図示を省略したが、図13の波形をそれぞれ120°、240°遅らせた波形となり、コンデンサ電圧変動幅はR相の場合と一致する。
【0195】
また、1セルあたりのスイッチング素子・ダイオードによる損失は、従来制御の場合を100%とすると、本実施例の場合約91%となり、平均9%の損失が削減される。
【0196】
したがって、本実施例で説明した図1の回路構成および図3〜6の制御方法によって、
コンデンサ電圧変動を低減でき、同じ電圧変動とすれば容量を小さく、また、容量を変えないとすれば電圧定格の低いコンデンサを使用できるという効果が得られる。また、半導体素子による損失を低減でき、冷却装置の小型化、素子電流の増加効果も得られる。
【0197】
なお、図10にはR相を例にとって、基本波成分、第2調波成分、第4調波成分毎の電流指令値波形を示している。本実施例では基本波成分が最小となるときに、第2調波成分が最大、第4調波成分が最小となるように制御する。これは、基本波成分が最大となるときに、第2調波成分が最大、第4調波成分が最小となるように制御することでもある。
【0198】
以上で、図7図11を用いて本実施例の概略動作波形を説明した。
【0199】
なお、本実施例では、図1に示すように、リアクトル107RP、SP、TP、RN、SN、TNが変圧器103の2次巻線に接続されている、すなわちR′点、S′点、T′点に接続している回路を例示しているが、リアクトル107RP、SP、TPが直流端子P点との間に、また、リアクトル107RN、SN、TNが直流端子N点との間に接続している回路でも同様の効果を得られる。
【0200】
本実施例では、2次と4次の循環電流を用いたが、一般に循環電流の系統周波数の偶数倍の周波数成分を2つ組み合わせ、周波数の低い方をコンデンサ電圧変動抑制に、周波数の高い方をアーム電流ピーク低減に用いることで、本実施例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0201】
101a、101b:交流系統
102a、102b:電力変換装置
103:変圧器
108:単位変換器
110:電圧検出器
111:電流検出器
112:制御装置
113:ゲート信号線
114:セル電圧検出線
301:循環電流指令演算器
302:フィードバック電流演算器
303:電流調整器
305:交流側電力演算器
311:アーム電圧指令値生成部
312:ゲートパルス生成部
313:指令値分配部
図1
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