特許第5827963号(P5827963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許5827963粒子状充填剤を含有する長繊維強化ポリウレタンを調製する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5827963
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】粒子状充填剤を含有する長繊維強化ポリウレタンを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/76 20060101AFI20151112BHJP
【FI】
   C08G18/76 Z
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-557503(P2012-557503)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公表番号】特表2013-522405(P2013-522405A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011053731
(87)【国際公開番号】WO2011113768
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年3月11日
(31)【優先権主張番号】MI2010A000440
(32)【優先日】2010年3月18日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ディエナ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ベルツセリ,ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】クルンブ,ジョージ,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】カサグランデ,ジアンルカ
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−011316(JP,A)
【文献】 特表平03−505468(JP,A)
【文献】 特開平11−090322(JP,A)
【文献】 特開平08−183147(JP,A)
【文献】 特開2007−023069(JP,A)
【文献】 特開平09−249758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00−18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分およびポリイソシアネート成分を含む2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物であって、前記ポリオール成分が、少なくとも1種のポリオールおよび少なくとも1種の粒子状充填剤を含み、前記ポリイソシアネート成分が、ウレタン基含有MDIまたはウレタン基含有ポリマーMDIを含み、(1)前記粒子状充填剤が硬化型配合物の10から60重量%を構成し、(2)硬化した硬化型組成物の架橋間の計算分子量が300から420である、2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート成分が有機シリコーン界面活性剤を含む、請求項1に記載の2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項3】
前記ポリオール成分中のポリオールが、65から120の平均当量および2.5から3.2の官能価を有する、請求項1または2に記載の2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項4】
前記ポリオール成分が0.25から2重量パーセントの水を含む、請求項1から3のいずれかに記載の2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項5】
前記ポリオール成分が湿潤剤を含む、請求項1から4のいずれかに記載の2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項6】
凝集体中の前記ポリイソシアネート成分中のポリイソシアネート化合物が、25から30重量パーセントのイソシアネート含有量および1分子当たりイソシアネート基2.3から3.0個の平均官能価を有する、請求項1から5のいずれかに記載の2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート成分が、ポリマーMDIとウレタン変性MDIとの混合物を含む、請求項6に記載の2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネート成分中の3から25モルパーセントの前記ポリイソシアネート化合物が、ウレタン変性されている、請求項6または7に記載の2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物。
【請求項9】
繊維強化ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素複合材を調製する方法であって、硬化型ポリウレタンおよび/またはポリ尿素形成性配合物で湿らされた繊維を型枠または型上に分配する工程と、次いで型枠上または型中で硬化型配合物を硬化させて、繊維で強化された硬化したポリウレタンまたはポリウレタン−尿素ポリマーを形成する工程とを含み、
前記硬化型配合物が、少なくとも1種のポリオールおよび少なくとも1種の粒子状充填剤を含むポリオール成分と、ウレタン基含有MDIまたはウレタン基含有ポリマーMDIを含むポリイソシアネート成分とを混合することによって形成され、さらに、(1)前記粒子状充填剤が前記硬化型配合物の10から60重量%を構成し、(2)硬化したポリウレタンまたはポリウレタン−尿素の架橋間の計算分子量が300から420である、方法。
【請求項10】
前記ポリイソシアネート成分が有機シリコーン界面活性剤を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリオール成分中の前記ポリオールが、65から120の平均当量および2.5から3.2の官能価を有する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリオール成分が0.25から2重量パーセントの水を含む、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオール成分が湿潤剤を含む、請求項9から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
凝集体中の前記ポリイソシアネート成分中のポリイソシアネート化合物が、25から30重量パーセントのイソシアネート含有量および1分子当たりイソシアネート基2.3から3.0個の平均官能価を有する、請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリイソシアネート成分が、ポリマーMDIとウレタン変性MDIとの混合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリイソシアネート成分中の3から25モルパーセントの前記ポリイソシアネート化合物が、ウレタン変性されている、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
硬化型組成物を型枠上または型中で50から120℃の温度で硬化させる、請求項9から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
粉末コーティング、インモールドペイント、熱可塑性フィルムまたはゲルコーティング組成物を型枠または型の表面に適用し、湿った繊維を、粉末コーティング、インモールドペイント、熱可塑性フィルムもしくはゲルコーティング組成物上にスプレーするか、または粉末コーティング、インモールドペイント、熱可塑性フィルムもしくはゲルコーティング組成物の上に適用した別の層上にスプレーし、前記硬化型組成物を硬化させて、硬化粉末コーティング、硬化インモールドペイント、熱可塑性フィルムまたは硬化ゲルコーティング組成物の層を含む多層構造物を形成する、請求項9から16のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
湿った繊維を、粉末コーティング、インモールドペイントもしくはゲルコーティング組成物の層上にスプレーするか、または粉末コーティング、インモールドペイントもしくはゲルコーティング組成物の上に適用した別の層上にスプレーし、前記硬化型組成物を、粉末コーティング、インモールドペイントまたはゲルコーティング組成物と同時に硬化させる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状充填剤も含有する長繊維強化ポリウレタンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョップド繊維で強化されたポリウレタンを製造する方法は、ますます一般的になっている。一部の場合には、これらの方法は、例えば、それぞれ非常に短い繊維または繊維マットを用いて強化をもたらす強化反応射出成形(RRIM)および構造反応射出成形(SRIM)などの現在の技術に取って代わりつつある。これらの方法により、強化ポリウレタンを、SMCなどの他の材料の代わりに使用することも可能になる。これらの方法は、強化ポリウレタン構造層で支持されている表示表面(show surface)を含む複合材を製造するのに非常によく適合する。これらの複合材は、例えば、自動車、トラックおよび様々なタイプの船舶において車体パネルとして用いることができる。
【0003】
これらの方法では、チョップド繊維は、型枠(form)上にまたは型(mold)上に、硬化型ポリウレタン組成物と一緒に分配される。ポリウレタン組成物は繊維を湿らせ、次いで、湿った塊状物は、型枠または型と接触し、ここで、それは硬化する。繊維はこの方法に対して連続ロービングの形態で供給されることもある。その場合、ロービングは、ポリウレタン組成物で湿らされる直前に個別の長さに切断される。一部の方法では、チョップド繊維は混合ヘッドと近接したチャンバー中に運び込まれ、そこでポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とが混合されて硬化型ポリウレタン組成物を形成する。次いで、繊維およびポリウレタン組成物は、混合ヘッドから型枠上に、より強靱な状態で分配される。他の場合には、繊維およびポリウレタン組成物は、別々に、しかし互いの中にスプレーされ、その結果、スプレーされた繊維は、型枠または型の表面に向かって移動するにつれて、湿っていく。
【0004】
サイクル時間が短いほど、より高い生産速度およびより高い型稼働率をもたらし得るので、サイクル時間は、これらの方法の経済性にとって重要である。許容できる品質の製品の製造を維持しながら、サイクル時間をできるだけ減少させることが望ましい。したがって、オンモールド(on-mold)硬化時間は、できるだけ短いことが望ましい。しかし、サイクル時間が短過ぎる場合、ポリウレタン組成物は、適切に硬化することができず、このため、ガラス転移温度が消失し、物理的および/または熱的特性が低下し得る。
【0005】
ときとして見られる具体的な問題の1つは、80から100℃の範囲の温度に曝露される場合に、製品が膨れやすいことである。これは、自動車または船舶のエンジンルームを囲むものなどの、高い使用温度を経験する部品にとって重大な問題であり得る。この問題は、ポリウレタン組成物が粒子状充填剤を(繊維に加えて)含有する場合に特に深刻である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この膨れの問題は、長いオンモールド硬化時間を用いることによって、または部品を後硬化させることによって解決し得るが、これらの解決策のいずれも経済的には実行可能でない。長いオンモールド硬化時間または部品の後硬化を必要としない解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分を含む、2液硬化型ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素形成性配合物であって、ポリオール成分は、少なくとも1種のポリオールおよび少なくとも1種の粒子状充填剤を含み、ポリイソシアネート成分は、ウレタン基含有MDIまたはウレタン基含有ポリマーMDIを含み、(1)粒子状充填剤は、硬化型配合物の約10から60重量%を構成し、(2)硬化した硬化型組成物の架橋間の計算分子量は、約300から420である。
【0008】
本発明はまた、成形された繊維強化ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素複合材を調製する方法であって、硬化型ポリウレタンおよび/またはポリ尿素形成性配合物で湿らされた繊維を型枠または型上に分配する工程と、次いで、型枠上または型中で硬化型配合物を硬化させて、繊維で強化された硬化したポリウレタンまたはポリウレタン−尿素ポリマーを形成する工程とを含み、硬化型配合物が、少なくとも1種のポリオールおよび少なくとも1種の粒子状充填剤を含むポリオール成分と、ウレタン基含有MDIまたはウレタン基含有ポリマーMDIを含むポリイソシアネート成分とを混合することによって形成され、さらに(1)粒子状充填剤が硬化型配合物の約10から60重量%を構成し、(2)硬化したポリウレタンまたはポリウレタン−尿素の架橋間の計算分子量が300から420である、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この方法で用いられるポリウレタン組成物は、型枠または型上で迅速に硬化して、良好な物理的および熱的特性、特に80から100℃の範囲の温度に曝露される場合の膨れに対する耐性を有する繊維強化ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素を形成する。さらに、その複合材は、良好な表面外観を有する傾向がある。MDIおよび/またはポリマーMDI中のウレタン基の存在は通常ポリマー架橋密度にほとんどまたはまったく影響を与えないので、これらの結果は驚くべきことであり、これは、膨れに対する耐性の改善を説明し得る。MDIおよび/またはポリマーMDI中のウレタン基の存在は、その反応性にもほとんど影響を与えない。
【0010】
硬化型組成物は、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分を含む。ポリオール成分は、以下により完全に記載されるとおりの1種または複数のポリオール材料を含む。ポリイソシアネート成分は、MDIまたはポリマーMDIを含み、これは変性されて、ウレタン基を含有する。ポリオール成分のイソシアネート反応性構成成分は、硬化ポリマー中の架橋間の計算分子量が、300から420、好ましくは350〜400であるように、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート化合物とともに、およびイソシアネートインデックスとともに選択される。架橋間の計算分子量は、以下のとおりに、イソシアネートインデックスとともに、ポリイソシアネートおよびイソシアネート反応性材料の官能価(1分子当たりのイソシアネート基またはイソシアネート反応性基の数)および当量を計算に入れる:
【0011】
【数1】
(式中:
は、架橋間の計算分子量であり;
polは、ポリオール成分中の全イソシアネート反応性材料のグラム単位重量である。Wpolは、水の重量または他のイソシアネート反応性発泡剤を含む。
isoは、ポリイソシアネート成分を調製するために用いられる全ポリイソシアネート化合物のグラム単位重量である。
polは、ポリオール成分中イソシアネート反応性化合物の1分子当たりの数平均官能価(イソシアネート反応性基の数)である。水はこの計算に含まれ、2の官能価を有すると仮定される。公称官能価が、この計算のために用いられる。
polは、ポリオール成分中の全イソシアネート反応性材料の、1個のイソシアネート反応性基当たりの平均当量である。Epolの計算は、水または他のイソシアネート反応性発泡剤を計算に入れる。
iso,stoicは、イソシアネートインデックスが100以下である場合のポリイソシアネート化合物の重量である。イソシアネートインデックスが100を超える場合、Wiso,stoicは、100のイソシアネートインデックス、すなわち、ポリオール成分中イソシアネート反応性基1当量当たりイソシアネート基1当量を与えるために必要とされるポリイソシアネート化合物の重量である。
isoは、ポリイソシアネート成分中の全ポリイソシアネート化合物の、1個のイソシアネート基当たりの平均当量である。
isoは、ポリイソシアネート成分中ポリイソシアネート化合物の数平均官能価(1モル当たりのイソシアネート基の数)である。
iso,excessは、もしあれば、100のイソシアネートインデックスを与えるために必要とされるものを超える、ポリイソシアネート化合物の重量である。)
【0012】
前述の式で示されるように、架橋は、2を超える官能価、および/または1を超えるイソシアネートインデックスを有するポリオールおよび/またはイソシアネート化合物の存在の結果として生じる。最も典型的には、ポリオール成分中に含有されるイソシアネート反応性材料は、凝集体において2.0を超える、好ましくは少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも2.8の平均官能価を有する。イソシアネート成分中に含有されるポリイソシアネート化合物は、典型的には少なくとも2.0、好ましくは少なくとも2.3、より好ましくは少なくとも2.5の平均イソシアネート官能価を有する。
【0013】
したがって、ポリオール成分は、1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する少なくとも1種のポリオールを含む。このポリオールは、好ましくはヒドロキシル基および/または第一級もしくは第二級アミノ基1個当たり31から約160の当量を有する。このポリオールは、好ましくは31から120、より好ましくは31から100の当量を有する。これらのポリオールの混合物を用いることができる。
【0014】
上述のタイプのポリオールの例には、上記のとおりの当量を有するそれぞれの場合に、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ショ糖、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、前述の任意のアルコキシレート(特に、エトキシレートおよび/またはプロポキシレート)、および1分子当たり平均少なくとも3個のヒドロキシル基を有するポリエステルが含まれる。好ましいポリオールには、グリセリン;グリセリンのエトキシレート、およびプロポキシレート;トリメチロールプロパン;最大120、特に最大100の当量を有するトリメチロールプロパンのエトキシレートおよびプロポキシレート、ならびにジカルボン酸(または無水物)と、トリメチロールプロパンおよび/またはトリメチロールプロパンとエチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールとの混合物との反応で形成されるポリエステルポリオールが含まれる。
【0015】
ポリオール成分中により高い当量のポリオールを含むことも可能である。このより高い当量のポリオールは、161から最大2000の当量を有し得る。それは、好ましくは1000から1800の当量を有する。このより高い当量のポリオールは、1分子当たり2個から約8個までのヒドロキシル基、第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を含有し得る。このタイプのポリオールの例には、ポリエステルポリオールおよび好ましくは、ポリエーテルポリオールが含まれる。このタイプのポリエーテルポリオールは、プロピレンオキシドのホモポリマー、プロピレンオキシドと最大30重量%のエチレンオキシドとのランダムコポリマー、またはエチレンオキシドキャップドポリ(プロピレンオキシド)であり得る。
【0016】
存在する場合、より高い当量のポリオールは、好ましくはポリオール成分中のポリオールの全重量の50%以下、より好ましくは5から35%、さらにより好ましくは15から35%を構成する。
【0017】
凝集体において、ポリオール成分中のポリオールは、好ましくは60から200、より好ましくは65から120、さらにより好ましくは70から100の平均当量、および2.5から3.2の官能価を有する。
【0018】
ポリオール成分は、粒子状充填剤も含有する。ここで「充填剤」は、3.0未満、好ましくは2.0未満のアスペクト比を有する点で繊維と異なる。充填剤は、好ましくは50nmから1mmの最長寸法を有する粒子の形態である。充填剤粒子は、より好ましくは1ミクロンから500ミクロンの最長寸法を有する。充填剤粒子は、硬化工程中に遭遇する処理温度で熱的に安定である(すなわち、物理的状態の変化を起こさない、または化学反応に係わらない)無機または有機材料から調製されている。好適な充填剤の例には、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、種々のクレー、粉末ガラス、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが含まれる。炭酸カルシウムは、好ましい充填剤である。
【0019】
粒子状充填剤の量は、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分の合わせた重量の10から60%である。好ましい量は、10から50%である。
【0020】
ポリオール成分は、任意選択の種々の配合成分を含有し得る。これらには、発泡剤、シリコーン界面活性剤、湿潤剤、1種または複数の反応触媒などが含まれる。
【0021】
発泡剤は、好ましくは、イソシアネート基と反応して二酸化炭素ガスを放出する水、および/または硬化条件下で二酸化炭素を発生させる別の化合物である。このような他の化合物の例には、ある種のカルバミン酸塩および炭酸水素塩/クエン酸混合物が含まれる。水が好ましい。それは、好適には、粒子状充填剤より少なく、ポリオール組成物の0.25から2重量パーセントを構成する。
【0022】
存在する場合、シリコーン界面活性剤は、好適には有機シリコーンタイプである。多種多様な有機シリコーン界面活性剤が有用であり、Niax(商標)の商標名でMomentive Performance Materialsにより販売されているものまたはTegostab(商標)の商標名でEvonikにより販売されているもの、またはDabco(商標)の商標名でAir Productsにより販売されているものが含まれる。具体例には、Niax(商標)L−6900、Tegostab(商標)B 1048、B−8462、B8427、B8433およびB−8404ならびにDabco(商標)DC−193、DC−198、DC−5000、DC−5043およびDC−5098の界面活性剤が含まれる。それは、好適には、粒子状充填剤より少なく、ポリオール組成物の重量の最大約2.5パーセントを構成する。好ましい量は、0.25から1.5パーセントである。
【0023】
湿潤剤は、湿潤剤の存在が、充填剤の添加後に、完全に配合されたポリオール成分の粘度を著しく低減させ得るので、ポリオール成分中の好ましい配合成分である。好適な湿潤剤には、BYK W985およびBYK W969の商標名でBykUSAにより販売されているような、ある種の酸性ポリエステル、および酸性コポリマーのアンモニウム塩が含まれる。湿潤剤は、一般に粒子状充填剤の約0.25から3、好ましくは0.5から2重量パーセントの範囲の量で有用である。粒子状充填剤を含むポリオール成分の粘度は、23℃で100,000mPa・s以下であることが好ましい。好ましい粘度は、23℃で50,000mPa・s以下である。
【0024】
好適な触媒には、第三級アミン化合物および有機金属化合物、特にカルボン酸スズおよび四価スズ化合物が含まれる。代表的な第三級アミン触媒には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、1,4−ジアゾビシクロ−2,2,2−オクタン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、モルホリン、4,4’−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−セチルN,N−ジメチルアミン、N−ココ−モルホリン、N,N−ジメチルアミノメチルN−メチルエタノールアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテル、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)N−イソプロパノールアミン、(N,N−ジメチル)アミノ−エトキシエタノール、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7、N,N−ジモルホリノジエチルエーテル、N−メチルイミダゾール、ジメチルアミノプロピルジプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミノ−2−プロパノール、テトラメチルアミノビス(プロピルアミン)、(ジメチル(アミノエトキシエチル))((ジメチルアミン)エチル)エーテル、トリス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ビス(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)アミン、1,2−エチレンピペリジンおよびメチル−ヒドロキシエチルピペラジンが含まれる。
【0025】
有用なスズ触媒の例には、オクタン酸第一スズ、ジ酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズジメルカプチド、ジアルキルスズジアルキルメルカプト酸、ジブチルスズオキシド、ジメチルスズジメルカプチド、ジメチルスズジイソオクチルメルカプトアセテートなどが含まれる。
【0026】
触媒は、典型的には少量で用いられる。例えば、用いられる触媒の全量は、ポリオールまたはポリオール混合物の100重量部当たり0.0015から5、好ましくは0.01から2重量部であり得る。
【0027】
ポリイソシアネート成分には、メタンジフェニルジイソシアネート(MDI)および/またはポリマーMDIが含まれ、これらの少なくとも一部は、ウレタン基を含有するように変性されている。「ポリマーMDI」によって、MDIと、少なくとも3個のフェニルイソシアネート基を含有するポリメチレンポリフェニルイソシアネートとの混合物が意味される。ポリマーMDIは、26から32重量%のイソシアネート含有量および2.1から約3.0のイソシアネート官能価を有し得る。MDIは、2,4’−異性体もしくは4,4’−異性体のいずれか、または両方の混合物であってもよい。MDIは、カルボジイミド、ウレトンイミンまたはビウレット結合で変性されていてもよい。例えば、ウレトンイミン結合および約140〜150のイソシアネート当量を有する、いわゆる「液状MDI」製品は、MDI成分として用いることができる。
【0028】
MDIおよび/またはポリマーMDIは、ウレタン基を含有するように変性される。これは、ポリオールを過剰のMDIおよび/またはポリマーMDIと反応させることによって行われる。ポリオールは、好適には31から2000、好ましくは60から500、より好ましくは60から160の当量を有し、1分子当たり2から8個、好ましくは2から3個のヒドロキシル基を含有し得る。ポリオールの混合物を用いることができる。この目的のための好適なポリオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ショ糖、前述の任意のアルコキシレート(特にエトキシレートおよび/またはプロポキシレート)、および1分子当たり平均で少なくとも2、好ましくは2から3個のヒドロキシル基を有するポリエステルが含まれる。
【0029】
ほんの小比率のMDIおよび/またはポリマーMDI分子を、ウレタン基を含有するように変性させれば十分である。わずか約2モルパーセントのポリイソシアネート分子しか、ウレタン基を含有しなくてもよい。少なくとも3モルパーセントのポリイソシアネート分子が、ウレタン基を含有することが好ましい。100モルパーセントものポリイソシアネート分子を、ウレタン基を含有するように変性することもできるが、約25モルパーセント以下、より好ましくは約15モルパーセント以下のポリイソシアネート化合物が、ウレタン基を含有することが好ましい。
【0030】
ウレタン基をMDIおよび/またはポリマーMDIの一部のみに導入し、得られたウレタン変性MDIおよび/またはポリマーMDIを、追加のMDIおよび/またはポリマーMDIとブレンドすることが都合のよいことが多い。したがって、例えば、MDIは、ポリオールと反応させて、ウレタン基含有中間体を生成することができ、次いで、これは、さらなるMDIおよび/またはポリマーMDIとブレンドされる。これは、ほんの小比率のウレタン変性分子を含有するポリイソシアネート混合物を調製する都合のよい方法である。好ましいイソシアネート混合物は、ポリマーMDIとブレンドされた、ウレタン基で変性されたMDIである。
【0031】
ポリイソシアネート成分中のポリイソシアネート化合物は、好ましくは、その凝集体において、23から32重量パーセント、好ましくは25から30重量パーセントのイソシアネート含有量、および1分子当たりイソシアネート基2.3から3.0個、好ましくは1分子当たりイソシアネート基2.5から2.8個の平均官能価を有する。
【0032】
特に好ましいポリイソシアネートは、MDIまたは「液状」MDIをジプロピレングリコールまたはトリプロピレングリコールなどのジオールと約20〜27%のイソシアネート含有量まで反応させ、次いで、得られたプレポリマーをポリマーMDIで25から30重量パーセントのイソシアネート含有量および1分子当たりイソシアネート基2.5から2.8個の平均官能価まで希釈することによって調製される。
【0033】
ポリイソシアネート成分は、有機シリコーン界面活性剤を任意選択で含有する。界面活性剤は、好適にはポリイソシアネート成分の全重量の0.25から5、好ましくは0.5から2.5パーセントを構成する。好適な有機シリコーン界面活性剤には、前に記載されたものが含まれる。
【0034】
複合材は、本発明によって、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合して硬化型組成物を形成すること、繊維を硬化型組成物で湿らすこと、および湿った繊維を、硬化型組成物が硬化される型枠上または型中に分配することによって調製される。
【0035】
繊維対硬化型組成物の好適な重量比は、複合材が、約10から約50重量%の繊維を含有するようなものである。
【0036】
繊維は、硬化反応の条件下で熱的および化学的に安定である任意の材料の繊維であることができる。ガラス繊維は一般に、費用および利用可能性に基づいて好ましいが、ボロン繊維、炭素繊維、高溶融性ポリマー性繊維などがすべて有用である。繊維は、必要に応じて、サイジング、カップリング剤または他の有用なコーティングで被覆してもよい。繊維の長さは、好適には約1/4インチ(0.6cm)から12インチ(30cm)である。好ましい長さは、1から4インチ(2.54から10.2cm)である。
【0037】
湿らす機能および分配する機能は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および繊維を一緒にし、得られた硬化型混合物を型枠上または型中に分配することによって果たすことができる。硬化型組成物は、混合ヘッド中でまたは型枠もしくは型の表面に至る途中で繊維を湿らせ、その結果、繊維は、それらが型枠または型の表面に到達する前に硬化型組成物で少なくとも部分的に湿らされる。
【0038】
ポリオール成分およびポリイソシアネート成分は、好適には約80から約300のイソシアネートインデックスを与えるのに十分な比で混合される。好ましいイソシアネートインデックスは、少なくとも100であって150以下である。特に好ましいイシソアネートインデックスは、100から125である。
【0039】
湿った繊維は、注入またはスプレーすることによって分配し得る。注入法では、湿った繊維は、型枠または型の表面上に単に注入するか、または射出する。スプレー法では、繊維および硬化型組成物は、型枠または型上にスプレーする。一部の実施形態において、繊維および硬化型組成物は、別々にしかし同時にスプレーされ、スプレーの方向は、繊維が型または型枠に向かって移動するにつれて湿らされるような方向である。これらの場合には、ガス流を用いて、混合ヘッドから出る硬化型組成物中に繊維を推進させることができる。別法として、繊維および硬化型組成物を混合ヘッド内で一緒にし、一緒に外にスプレーすることもできる。いずれの場合も、繊維は、硬化型組成物で湿らされ、次いで、型枠または型と接触させられる。
【0040】
好ましいタイプの混合ヘッドには、ポリオールおよびポリイソシアネート成分を接触させ迅速に混合し繊維と接触させる高圧衝突混合機が含まれる。繊維は、連続ロービングの形態で供給することができ、これは、混合ヘッド中に導入される直前に所望の長さに切断される。これらのタイプの混合ヘッドは、市販されている。それらには、Krauss−Maffeiから入手できる「LFI」混合ヘッドが含まれる。
【0041】
湿った繊維を型枠または型に適用するとすぐに、硬化型組成物は、硬化して、ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素ポリマーを形成する。硬化工程は通常、50から120℃などの高温で行うことが望ましい。その場合、型枠または型は、適用された湿った繊維と一緒に硬化温度に同時に加熱される。型枠または型を硬化温度に予備加熱することが一般的である。材料は、部品への恒久的な変形または損傷なしに離型することができるように十分に長い時間、型枠上または型中で硬化させる。密閉型の硬化および開放型の硬化の両方が可能である。硬化工程は一般に、個々の配合(触媒の選択および量を含む)および硬化温度に応じて、0.5から20分を必要とする。発泡剤が硬化型組成物中に存在する場合、硬化性組成物は、硬化工程の間に膨張して、気泡性の複合材を形成する。
【0042】
本発明の方法は、多層構造物の製造に適する。非常に滑らかなおよび/または着色した表示表面を有する部品を製造することがしばしば望ましい。これは、本発明によって、最初に粉末コーティング、インモールドペイント、熱可塑性フィルムおよび/またはゲルコーティング組成物を型枠または型の表面に適用することと、次いで、湿った繊維を上記のとおりに型枠または型上に分配することとによって行うことができる。粉末コーティング、インモールドペイントおよび/またはゲルコートは、様々な層の型枠または型上への適用間に経過する時間に応じて、本発明の硬化型組成物の硬化と同時にまたはそれに続いて硬化させることができる。同時硬化において、この場合の硬化条件は、両方の層を硬化できるように選択する。
【0043】
表示表面は、高圧射出インモールドコーティング法などの技術を用いて、または一般的な離型後塗装もしくはコーティング法によって、本発明の硬化型組成物が硬化した後で適用することもできる。
【0044】
粉末コーティング、インモールドペイント、熱可塑性フィルムおよび/またはゲルコーティングに加えてまたはそれらの代わりに、追加の層を多層構造物に導入することも可能である。例えば、1つまたは複数の追加の層を表示表面の層と繊維強化ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素の層との間に入れることができる。代替としてまたはさらに、1つまたは複数の追加の層を、繊維強化ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素の層の上に適用することができる。
【0045】
具体的な当該多層複合材は、硬化粉末コーティング、硬化インモールドペイント、熱可塑性フィルムまたは硬化ゲルコーティングであり得る表示表面を含み、表示表面の上に実質的に非気泡性のバリア層を含み、バリア層の上に任意選択で気泡性の繊維強化ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素の層を含む。バリア層および繊維強化ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素の層のいずれかまたはそれぞれは、本発明によって適用できる。
【0046】
前述と同様に、任意のこのような多層構造物中の層のすべてを同時または順次に硬化させることができる。
【0047】
本方法は、例えば、自動車およびトラックの車体パネル、ボートおよびパーソナルウォータークラフトの艇体;全地形万能車の車体;ウィンドサーフィン用ボード、ゴルフカート車体;エレクトロニクス用筐体などの部品の製造に適する。繊維強化ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素ポリマーの良好な熱安定性により、100℃程度の高い温度に恒常的に曝露される用途においてさえも部品は有用である。したがって、部品は、例えば、パーソナルウォータークラフト、ATV、自動車などの乗物のエンジンルーム内および周囲で有用である。
【0048】
複合材における不適切な熱安定性は、複合材が高温に曝露される場合に膨れによって現れ得る。膨れは、高温に曝露される場合に組成物内のガスの発生および/または放出によって引き起こされると考えられる。複合材が膨れる性向は、複合材を80℃の水中に100時間浸漬させることによって評価できる。膨れまたは気泡の存在は、複合材の表面を目視で検査することによって評価される。
【0049】
本発明の組成物は、驚くべきことに、この試験での膨れに耐性である。理由は十分に理解されていないが、ポリイソシアネート成分中のウレタン基の存在が、この試験での膨れ耐性に非常に大きく寄与することが見出された。この現象は容易には説明されない。これらのウレタン基の存在は、イソシアネート官能価、イソシアネート当量またはMの大きな変化をもたらさない。さらに、ウレタン変性ポリイソシアネートの選択から生じ得る小さな変化は、Mを減少させるよりはむしろ増加させると予想されるであろう。Mが増加すると通常は、複合材の高い温度に対する耐性が低下することが予想される。したがって、膨れに対する耐性の改善は、極めて予想外である。
【0050】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供するが、その範囲を限定することは意図しない。特に断りのない限り、部および百分率のすべては重量による。
【実施例】
【0051】
実施例1〜4および比較試料A〜E
表1に示す配合成分をブレンドすることによって、2種のポリオール成分を形成する。
【0052】
【表1】
【0053】
さらに、2種のイソシアネート成分を調製する。ポリイソシアネート成分Aは、25℃で約200mPA・sの粘度を有しかつ31%のイソシアネート基を含有するポリマーMDIである。それは、135.5のイソシアネート当量および2.7のイソシアネート官能価を有する。ポリイソシアネート成分Bは、約2.85のイソシアネート官能価および25℃で約600mPA・sの粘度を有しかつ30.3%のイソシアネート基を含有するポリマーMDI79部、23.3%のイソシアネート基を含有する、MDIとトリプロピレングリコールとのプレポリマー20部、およびシリコーン界面活性剤1部の混合物である。界面活性剤を除いて、ポリイソシアネート成分Bは、約145.4のイソシアネート当量および約2.6の平均イソシアネート官能価を有する。
【0054】
複合材部品は、以下に示されるように、ポリオールAおよびBと、ポリイソシアネート成分AおよびBとから、それらを、LFI MK30/36混合ヘッドを備えたKrauss−Maffei Rimstar RS1640 LFI Modula機を通して処理することによって調製する。この装置は、ガラスロービングを混合ヘッドに運び、そのガラスをポリオールおよびポリイソシアネート成分で湿らせる前に、それらを指定長さ(1インチ(2.54cm)または4インチ(10cm))に切断する。ガラスは、Saint Gobain製P5249である。この機械は、充填されたポリオールを取り扱うためのピストンタイプのポリオール供給装置および未充填ポリオールを取り扱うためのポンプタイプの供給装置を備える。ポリオールおよびポリイソシアネート成分の温度は、22〜25℃である。イソシアネートインデックスは、すべての場合に110である。混合ヘッド中で生じた混合物は、大きな平面表面を有する3mm厚さの部品を製造するのに適した予備加熱された(80℃)型上に注入され、80℃で硬化される。離型時間は10分であるが、比較試料Aでは、離型時間は5分である。
【0055】
このようにして評価した配合物は、以下のとおりである:
【0056】
【表2】
【0057】
複合材を離型し室温に冷却した後、複合材のそれぞれから熱安定性試験用に比較的大きい試料を切断する。それぞれの複合材からの試料を80℃の水中に100時間浸漬する。次いで、試料を水から取り出し、膨れについて目視で検査する。追加の試料をオーブン中100℃で8時間加熱し、膨れについて目視で検査する。さらに、試料を35℃および95%相対湿度で10日間老化させ、次いでオーブン中100℃で1時間加熱する。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3の結果は、熱安定性に対する粒子状充填剤の、およびポリオール/イソシアネート選択の効果を示す。比較試料Aは、粒子状充填剤を含有せず、いずれの試験条件下でも膨れない。比較試料Bは、20重量%だけの粒子状充填剤を含有し、若干の膨れが見られる湿潤老化後のオーブン試験を除いて、試験のすべてで良好な性能を示す。比較例試料Cにおいて充填剤の量を40%に増加させると、より多くの膨れが見られる。比較試料A〜Cのそれぞれは、ポリオール成分Aおよびポリイソシアネート成分Aを用いて調製されている。
【0060】
比較試料DおよびEのそれぞれは、20%の粒子状充填剤を含有する。それらは、ポリオール成分がポリオール成分Bであることを除いて、比較試料Bに匹敵する。比較試料Bから比較試料Dへのポリオール成分の変化は、実際にいくらか膨れを増加させる。比較試料Eにおけるより長い繊維も、膨れを増加させる。
【0061】
実施例1から4はすべて、ポリオール成分Bおよびポリイソシアネート成分Bを用いて調製されている。実施例1は、20%の粒子状充填剤を含有し、比較例BおよびDに直接匹敵する。それは、わずかにより高いM値を有するにもかかわらず、粒子状充填剤の若干少ない充填で同様の性能を示す。
【0062】
実施例2は、40%の粒子状充填剤および30%のガラス繊維を含み、比較試料Cに匹敵する。実施例2と比較試料Cとの違いは、ポリオール成分(Bに対してA)およびポリイソシアネート成分(Bに対してA)の選択である。比較試料Cは、試験の一部で著しい膨れを示したが、実施例2は、試験のいずれでもまったく膨れない。この結果は、ポリイソシアネート成分Bの選択に起因する。ポリオール成分Bそれ自体は、これらの試験での性能を悪化させる傾向があるが(比較試料Dを比較試料Bと比較されたい)、実施例2においてポリオール成分Bがポリイソシアネート成分Bと組み合わされると非常に良好な結果が得られる。
【0063】
実施例3では、ガラス繊維長を10cmに増加させている。繊維長の増加は、膨れの増加をもたらすことが認められた(比較試料Eを比較試料Dと比較されたい)。しかし、実施例3は、実施例2と同等の性能を示す。したがって、ポリイソシアネート成分Bをポリオール成分Bと共に選択することは、より長い繊維長のより厳しい条件下でさえも有効である。
【0064】
実施例4では、繊維含有量を40%に増加させているが、膨れ評価についての結果は依然として良好である。
【0065】
機械的および熱的特性は、比較試料A〜Eおよび実施例1〜4のそれぞれから切断した試料について測定する。結果は、表4に示すとおりである。
【0066】
【表4】
【0067】
このデータは、本発明の実施例によってガラス転移温度の大きい、際だった増加があることを示す。ポリイソシアネート成分の変化があるとすれば、それは、Mのわずかな増加に起因して、ガラス転移温度に対する負の効果がわずかであると予測されるので、ガラス転移温度このような増加は、大きいのみならず予想外でもある。同様に、高い温度での貯蔵弾性率は非常に大幅に増加するが、曲げ弾性率または衝撃強度の損失はそれほどない。