(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1および第2の固定電極(11a、11b)と、当該第1および第2の固定電極の間に配置され、加速度が印加されることにより前記第1および第2の固定電極に対して相対的に変位する可動電極(12d)と、によって構成されたコンデンサ(C1、C2)を有する加速度センサと、
前記可動電極の変位に伴う前記コンデンサの静電容量の変化に応じて、電圧信号を出力する電荷電圧変換回路(21)と、
前記第1および第2の固定電極の間に駆動電圧(Va)を印加する駆動電圧印加手段(22)と、
互いに異なる複数の電圧(V1〜V3)を出力する電源部(24)と、
前記駆動電圧印加手段によって前記第1および第2の固定電極の間に前記駆動電圧が印加されているときに、前記可動電極に、前記電源部から出力された前記複数の電圧を周期的に切り換えて印加することにより、前記第1および第2の固定電極の間で前記可動電極を周期的に変位させる可動電極変位手段(22、SW1〜SW3)と、
前記電荷電圧変換回路から出力された電圧信号を、互いに異なる第1および第2のタイミングでサンプリングするサンプリング手段(22)と、
当該サンプリング手段により前記第1および第2のタイミングでサンプリングした前記電圧信号に基づいて、前記第1および第2のタイミングにおける前記可動電極の変位量をそれぞれ検出する変位量検出手段(22)と、
当該検出した前記第1および第2のタイミングにおける変位量の少なくとも一方に応じて、前記可動電極に印加された加速度を検出する加速度検出手段(22)と、
前記変位量検出手段によって検出した前記第1および第2のタイミングにおける変位量に応じて、前記加速度センサの自己診断を実行するセンサ診断手段(22)と、
を備え、
前記電源部は、
前記可動電極を前記第1の電極側に変位させるための第1の電圧と、
前記可動電極を前記第2電極側に変位させるための第2の電圧と、
を出力し、
前記第1および第2のタイミングの少なくとも一方は、前記可動電極変位手段によって前記可動電極に印加される電圧が、前記第1および第2の電圧の一方から他方に切り換えられたことにより、前記可動電極の変位の方向が、前記第1および第2の電極の一方から他方に向かって変化したタイミングの近傍であることを特徴とする加速度検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献に係る加速度検出装置では、加速度の検出およびセンサの診断を同時に行うことができず、導線の短絡や各センサの異常などの不具合の診断を、エンジンの始動時に実行するものであり、それ以降、次回のエンジン始動時まで、各センサなどに不具合が発生してもそれを検出することができない。また、上述した加速度検出装置では、不具合の検出に2つのセンサからの出力が必要であり、センサの状態を個別に診断することができない。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、エンジンの稼働中において、加速度の検出および加速度センサの自己診断を常時、実行することができる加速度検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る加速度検出装置は、第1および第2の固定電極と、当該第1および第2の固定電極の間に配置され、加速度が印加されることにより前記第1および第2の固定電極に対して相対的に変位する可動電極と、によって構成されたコンデンサを有する加速度センサと、前記可動電極の変位に伴う前記コンデンサの静電容量の変化に応じて、電圧信号を出力する電荷電圧変換回路と、前記第1および第2の固定電極の間に駆動電圧を印加する駆動電圧印加手段と、互いに異なる複数の電圧を出力する電源部と、前記駆動電圧印加手段によって前記第1および第2の固定電極の間に前記駆動電圧が印加されているときに、前記可動電極に、前記電源部から出力された前記複数の電圧を周期的に切り換えて印加することにより、前記第1および第2の固定電極の間で前記可動電極を周期的に変位させる可動電極変位手段と、前記電荷電圧変換回路から出力された電圧信号を、互いに異なる第1および第2のタイミングでサンプリングするサンプリング手段と、当該サンプリング手段により前記第1および第2のタイミングでサンプリングした前記電圧信号に基づいて、前記第1および第2のタイミングにおける前記可動電極の変位量をそれぞれ検出する変位量検出手段と、当該検出した前記第1および第2のタイミングにおける変位量の少なくとも一方に応じて、前記可動電極に印加された加速度を検出する加速度検出手段と、前記変位量検出手段によって検出した前記第1および第2のタイミングにおける変位量に応じて、前記加速度センサの自己診断を実行するセンサ診断手段と、を備え
、前記電源部は、前記可動電極を前記第1の電極側に変位させるための第1の電圧と、前記可動電極を前記第2電極側に変位させるための第2の電圧と、を出力し、前記第1および第2のタイミングの少なくとも一方は、前記可動電極変位手段によって前記可動電極に印加される電圧が、前記第1および第2の電圧の一方から他方に切り換えられたことにより、前記可動電極の変位の方向が、前記第1および第2の電極の一方から他方に向かって変化したタイミングの近傍であることを特徴とする。
【0009】
この加速度検出装置装置によれば、第1および第2の固定電極と、これらの間に配置された可動電極とを有するコンデンサに、加速度が印加されると、可動電極が固定電極に対して相対的に変位し、それにより第1および第2の固定電極と可動電極の間の間隔が変動するのに伴い、コンデンサの静電容量が変動する。この静電容量の変化に応じて、電圧信号が電荷電圧変換回路から出力される。
【0010】
また、駆動電圧印加手段によって第1および第2の固定電極の間に駆動電圧が印加された状態で、電源部から出力される互いに異なる複数の電圧を、可動電極変位手段によって可動電極に周期的に切り換えて印加することにより、第1および第2の固定電極と可動電極との間の静電引力が周期的に変動し、その結果、可動電極が、第1および第2の固定電極の間で周期的に変位する。これにより、第1および第2の固定電極と可動電極の間の間隔が強制的に変動させられ、それによるコンデンサの静電容量の周期的な変動が、電圧信号に反映される。
【0011】
この電圧信号は、サンプリング手段によって、互いに異なる第1および第2のタイミングでサンプリングされ、第1および第2のタイミングにおける可動部の変位量が、変位量検出手段によって検出される。そして、可動電極に印加された加速度が、加速度検出手段によって、第1および第2のタイミングにおける変位量の少なくとも一方に応じて、検出される。また、第1および第2のタイミングの双方における可動電極の変位量に応じて、加速度センサの自己診断が、センサ診断手段によって実行される。
【0012】
以上の構成によれば、可動電極変位手段によって可動電極が周期的に変位し、このような状態のもとで、第1および第2のタイミングにおける変位量がそれぞれ検出される。加速度センサが正常に稼働していれば、加速度が印加されていないときには、第1および第2のタイミングにおける変位量のいずれにも変化が生じず、加速度が印加されたときには、第1および第2のタイミングにおける変位量の双方に同じ変位が生じる。したがって、第1および第2のタイミングにおける変位量の少なくとも一方に基づいて、可動電極に印加された加速度を検出することができる。
【0013】
また、加速度センサが正常に稼働しているときには、第1および第2のタイミングにおける変位量の関係に変化が生じることはないのに対し、例えば、可動電極の固着やコンデンサの電極への微細な異物の噛込みなどの不具合が加速度センサに発生した場合、加速度が印加されても、コンデンサの静電容量の変化に加速度の影響が正しく反映されない。そのような場合、第1および第2のタイミングで検出した変位量の間の関係が、加速度センサの正常稼働時とは異なるものになる。したがって、この加速度検出装置では、第1および第2のタイミングにおける変位量の双方に応じて、上述した加速度の検出とともに加速度センサの自己診断を常時、実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る加速度検出装置について、図面を参照しながら説明する。本実施形態による加速度検出装置1は、車両に搭載されたエアバッグ装置(いずれも図示せず)の一部として設けられている。エアバッグ装置は、複数の加速度検出装置1(1つのみ図示)と、複数の加速度検出装置1で検出した加速度に基づいて、エアバッグを膨張させるための制御装置(いずれも図示せず)を備えている。複数の加速度検出装置1は、車両の各所に分散して配置されていて、静電容量式の加速度センサ10および検出回路20をそれぞれ備えている。
【0016】
加速度センサ10は、半導体製造技術を利用したマイクロマシニング技術によって形成されており、
図1に示すように、基板11と、加速度を検知して変位する可動部12を有している。可動部12は、板状に形成されており、長方形状の可動部本体12aと、その短辺方向に四隅からそれぞれ延びる梁部12bと、各梁部12bの先端に形成されたアンカ部12cを有している。可動部12は、アンカ部12cによって基板11に結合されている。計4つのアンカ12cのうちの1つには、検出回路20が接続されている。
【0017】
また、可動部本体12aの長辺方向(
図1に示すD1−D2方向)における梁部12b、12bの間の領域には、例えば4つの可動電極12dが、ほぼ等間隔で配置されている。各可動電極12dは、可動部本体12aから、梁部12bと平行に延びている。可動部12は一体に形成された導体であり、したがって各可動電極12dの電位は同一になっている。
【0018】
また、D1−D2方向における各可動電極12dの両側には、一対の第1の固定電極11aおよび第2の固定電極11bが配置されており、各固定電極11a、11bは基板11に固定されている。各固定電極11a、11bは、可動電極12dと平行に延びており、所定の間隔を隔てて可動電極12dに対向するように配置されている。また、各可動電極12dの一方の側に設けられた計8つの第1の固定電極11a同士、および他方の側に設けられた計8つの第2の固定電極11b同士が、それぞれ共通結線されており、検出回路20に接続されている。また、第1の固定電極11aおよび第2の固定電極11bは、基板11上において互いに絶縁されている。したがって、第1の固定電極11a同士と、第2の固定電極11a同士の電位は、それぞれ同一になっている。
【0019】
以上のように設けた可動電極12dおよび第1および第2の固定電極11a、11bによって、計8つの検出用コンデンサCdが構成されている。各検出用コンデンサCdは、直列に接続された一対の第1および第2コンデンサC1、C2を有している。具体的には、可動電極12dおよび第1の固定電極11aによって第1コンデンサC1が構成され、可動電極12dおよび第2の固定電極11bによって第2コンデンサC2が構成されている。また、加速度が印加されていない状態では、第1および第2コンデンサC1、C2間の静電容量の差が0になるように、可動電極12d、第1および第2固定電極11a、11bの大きさおよび形状などが設定されている。
【0020】
例えばエアバッグ装置を搭載した走行中の車両が急減速したときに、加速度センサ12がD1−D2方向の加速度を受けると、可動部12は、慣性力によって、各梁部12bを撓ませながら基板11に対してD1−D2方向に相対的に変位する。これにより、各可動電極12dと第1および第2固定電極11a、11bとの間の間隔が増減する結果、第1および第2コンデンサC1、C2の一方の静電容量が増大し、他方の静電容量が減少する。このときの第1および第2コンデンサC1、C2間の静電容量の差は、加速度の大きさに応じて変化し、この静電容量の差に相当する信号が、アンカ部12cを介して検出回路20に出力される。
【0021】
図2に示すように、検出回路20は、電荷電圧変換回路21、制御回路22、電圧切換え回路23および電源部24を有している。電荷電圧変換回路21は、電荷検出用の負帰還コンデンサ21bを備えた演算増幅器21aを有しており、加速度センサ10の可動電極12dがアンカ部12cを介して演算増幅器21aの反転入力端子に接続されている。電荷電圧変換回路21には、上述した第1および第2コンデンサC1、C2間の静電容量の差に応じた信号が入力され、電荷電圧変換回路21は、この信号を電圧信号に変換して出力する。また、電荷電圧変換回路21は、負帰還コンデンサ21bに並列に接続され、負帰還コンデンサ21bに蓄積された電荷を放電させるための放電スイッチ21cを有している。
【0022】
制御回路22は、本実施形態において、駆動電圧印加手段、可動電極変位手段、サンプリング手段、変位量検出手段、加速度検出手段およびセンサ診断手段を構成するものであり、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)(図示せず)を備えており、マイコンは、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどを有している(いずれも図示せず)。CPUには、各種の信号が、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、入力され、CPUは、これらの入力信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、各種の制御処理を実行する。
【0023】
また、制御回路22には、共通結線された第1の固定電極11a、および第2の固定電極11bがそれぞれ接続されており、電圧レベルが互いに反転した第1および第2の搬送波信号FE1、FE2が、制御回路22から、第1および第2の固定電極11a、11bにそれぞれ入力される。第1および第2の搬送波信号FE1、FE2の電圧レベルは、所定の駆動電圧Va(例えば5V)と0(V)の間で変動する。また、制御回路22は、上述した放電スイッチ21cに接続されており、負帰還コンデンサ21bに充電された電荷を必要に応じて放電させるために、放電スイッチ21cをオン/オフする駆動信号を出力する。
【0024】
また、電荷電圧変換回路21から出力された電圧信号は、制御回路22に入力される。制御回路22は、後述するように、互いに異なるタイミングで、且つ双方とも同じ所定の周期で、電圧信号をサンプリングし、サンプリングした電圧信号に基づいて、加速度センサ10に印加された加速度の検出、および加速度センサ10の自己診断を行う。
【0025】
また、各加速度検出装置1で検出された加速度は、これを表す加速度信号として通信バス2を介して制御装置に送信され、制御装置は、複数の加速度検出装置1から受信した複数の加速度信号に応じて、車両の衝突の有無を判定し、判定結果に応じてエアバッグを作動させる。
【0026】
電圧切換え回路23は、第1〜第3スイッチSW1〜SW3を有しており、これらは、制御回路22からの駆動信号によってそれぞれオン/オフされる。また、電源部24は、第1〜第3の電圧V1〜V3をそれぞれ出力する第1〜第3の電源24a〜24cを有している。第1スイッチSW1がオンされる一方、第2および第3スイッチSW2、SW3がオフされたときには、第1の電圧V1(例えば3.4V)が、第1の電源24aから演算増幅器21aの非反転入力端子に入力される。また、第2スイッチSW2がオンされる一方、第1および第3スイッチSW1、SW3がオフされたときには、第2の電圧V2(例えば1.6V)が第2の電源24bから非反転入力端子に入力される。また、第3スイッチSW3がオンされる一方、第1および第2スイッチSW1、SW2がオフされたときには、第3の電圧V3(例えば2.5V)が第3の電源24cから非反転入力端子に入力される。この第3の電圧V3の大きさは、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2により第1および第2の固定電極11a、11bに入力される駆動電圧Vaの1/2に設定されている。また、第1の電圧V1は、駆動電圧Vaよりも低く且つ第3の電圧V3よりも高い電圧に設定され、第2の電圧V2は、第3の電圧V3よりも低い電圧に設定されている。
【0027】
放電スイッチ21cがオフされているときに、演算増幅器21aに入力された第1〜第3の電圧V1〜V3のいずれかは、演算増幅器21aの仮想短絡により、可動部12のアンカ部12cを介して可動電極に12dに入力される。また、第1の搬送波信号FE1が立ち上がる一方、第2の駆動電圧FE2が立ち下がると、第1コンデンサC1が充電され、第2コンデンサC2は放電される。一方、第1の搬送波信号FE1が立ち下がる一方、第2の駆動電圧FE2が立ち上がると、第1コンデンサC1は放電され、第2コンデンサC2は充電される。
【0028】
第1および第2コンデンサC1、C2が充放電されるときに、加速度を印加されることにより可動電極12dが変位していると、第1および第2コンデンサC1、C2の静電容量がそれぞれ加速度の大きさに応じて変化する。そして、第1および第2コンデンサC1、C2における充放電量に応じた電荷が負帰還コンデンサ21bに充電され、負帰還コンデンサ21bに充電された電荷に応じて、可動部12の変位量を表す電圧信号が、演算増幅器21aから出力される。なお、電荷電圧変換回路21において、負帰還コンデンサ21bに充電された電荷をキャンセルするために、放電スイッチ21cが、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2に合わせてオン/オフされ、オフのときに、電荷電圧変換回路21から電圧信号が出力される。
【0029】
次いで、上述した加速度検出装置1の動作の一例について説明する。例えばエンジンの始動直後において、
図3に示すように、第1の搬送波信号FE1の電圧レベルが駆動電圧Va、第2の搬送波信号FE2の電圧レベルが0で、可動電極12dに第1の電圧V1が入力されたときには、可動電極12dには、D1側(以下、「+側」という)に静電気力が作用する。したがって、可動部12は中立位置から+側に変位を開始する。
【0030】
この中立位置は以下のように設定されている。加速度センサ10に加速度が印加されていないときに、第1および第2の固定電極11a、11bに、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2を、短い周期で振動する矩形波パルス信号として入力するとともに、可動電極12dに第3の電圧V3を入力する。これにより、可動電極12dと、第1および第2固定電極11a、11bとの間の静電引力の釣り合いによって、可動電極12dは、第1および第2固定電極11a、11bの中間で両者11a、11bに対して静止する。このときの可動部12の位置が、変位量が0の中立位置として設定されている。
【0031】
可動電極12dなどへの電圧の印加を開始したときから期間taが経過したタイミングt1において、可動電極12への入力電圧が第2の電圧V2に切り換えられると、第1および第2コンデンサC1、C2における静電引力の強さが逆転し、可動電極12dに作用する静電気力がD2側(以下「−側」という)に切り換えられる。それにより、可動部12は+側への変位を停止し、−側への変位を開始する。
【0032】
可動部12の変位方向が−側に切り換わったタイミングの近傍、具体的にはタイミングt1から期間tbが経過し、可動部12が−側への変位を開始した直後のタイミングt2において、第1の搬送波信号FE1が0に、第2の搬送波信号FE2が駆動電圧Vaにそれぞれ切り換えられる。このとき、放電スイッチ21cはオフされる。これにより、第1および第2固定電極11a、11bに印加される電圧が逆転し、可動電極12aから負帰還コンデンサ21bに電荷が移動し、負帰還コンデンサ21bに充電された電荷量に応じた電圧信号が、電荷電圧変換回路21から出力される。このときを第1のタイミングとして、電圧信号が制御回路22によってサンプリングされる。制御回路22は、サンプリングした電圧信号に基づいて、タイミングt2における可動部22の中立位置からの変位量を算出する。
【0033】
そして、タイミングt2から期間tcが経過したとき、すなわちサンプリングを実行した直後のタイミングt3において、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2が、駆動電圧Vaおよび0にそれぞれ戻され、可動部12は、−側への変位を継続する。
【0034】
次いで、制御回路22は、タイミングt3から期間tdが経過したタイミングt4において、タイミングt2と同様に、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2を切り換え、このときを第2のタイミングとして電圧信号をサンプリングするとともに、可動部22の変位量を算出する。タイミングt4は、加速度センサ10に加速度が印加されていない状態で、上述したタイミングで可動電極12dへの入力電圧を第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り換えた場合に、可動部12が中立位置を通過するタイミングとして設定されている。制御回路22は、第2のタイミングでサンプリングした電圧信号に基づく可動部12の変位量に基づいて、加速度を検出する。
【0035】
加速度センサ10にD1−D2方向の加速度が印加されている場合、可動電極12dへの入力電圧の切換えにより、可動部12に作用する静電気力だけでなく、慣性力によって、可動部12が基板11に対して相対的に変位する。例えばD2側への加速度が印加されている場合、
図4に示すように、可動部12は、加速度の大きさに応じた変位量d1だけ+側にずれた状態で変位する。したがって、制御回路22は、第2のタイミングでサンプリングした電圧信号に基づく変位量d1に基づいて、加速度センサ10に印加された加速度の大きさを検出する。
【0036】
また、制御回路22は、加速度センサ10の自己診断のために、第1および第2のタイミングでサンプリングした電圧信号に基づく変位量の差分d2を算出する。加速度が印加されている間においては、可動部12は+側または−側に変位量d1だけ常時、変位するので、差分d2は加速度の有無にかかわらずほぼ一定の値になる。したがって、差分d2が、加速度の大きさに応じてあらかじめ設定された値を含む所定の範囲内にあり、あらかじめ設定された値と差分d2がほぼ同じときには、加速度センサ10は正常に機能しているものと制御装置22によって診断され、所定の範囲内にないときには、加速度センサ10に不具合が発生したものと診断される。
【0037】
そして、タイミングt4から期間tcが経過したとき、すなわちタイミングt4直後のタイミングt5において、第1および第2搬の送波信号FE1、FE2などを、タイミングt3のときと同様に、切換え前の状態に戻す。
【0038】
そして、タイミングt5から期間teが経過したタイミングt6において、可動電極12dへの入力電圧を第1の電圧V1に切り換えることによって、第1および第2コンデンサC1、C2の静電引力の大きさが再度、逆転し、可動電極12dに作用する静電気力が−側から+側に変化する。これにより、可動部12は、−側への変位を停止し、+側への変位を開始する。タイミングt6から期間tfが経過し、可動部12が中立位置を通過して+側への移動がほぼ限界に達したタイミングt7において、タイミングt2と同様に可動電極12dのへの入力電圧を第2の電圧V2に切り換えることによって、可動部12に作用する静電気力が−側に切り換わる。
【0039】
次いで、上述したタイミングt1〜t7の間の期間Taを所定の周期として、タイミングt1〜t7と同様の動作を繰り返し実行する。それにより、タイミングt2から期間Taが経過したタイミングt8を第1のタイミングとして、また、タイミングt4から期間Taが経過したタイミングt10を第2のタイミングとして、電圧信号のサンプリングおよび可動部12の変位量の算出がそれぞれ実行される。そして、タイミングt10における変位量に基づいて加速度を検出し、タイミングt8およびt10での変位量の差分d2に基づいて、加速度センサ10の自己診断を実行する。そして、エンジンが停止されるまで、第1および第2のタイミングにおいて、期間Taごとに電圧信号をそれぞれサンプリングし、加速度の検出および加速度センサ10の自己診断を実行する。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る加速度検出装置1によれば、可動電極12dに第1および第2の電圧V1、V2を周期的に切り換えて入力することによって、可動電極12dが、第1および第2の固定電極11a、11bの間で期間Taごとに周期的に変位する。そして、第1および第2のタイミングにおける可動部12の基板11に対する変位量が、期間Taごとにそれぞれ検出される。このように、可動部12を周期的に変位させ、この周期に同期して第2のタイミングにおいて検出した変位量に基づいて、加速度が検出される。
【0041】
したがって、加速度センサ10に加速度が印加されていないときには、第2のタイミングにおける変位量には変化が生じないのに対し、加速度が印加されたときには変位量d1だけ変化するので、第2のタイミングにおける変位量を期間Taごとに検出することによって、加速度を常時、適切に検出することができる。なお、第1のタイミングで検出した変位量に基づいて加速度を検出するようにしてもよい。また、第1および第2のタイミング以外の任意のタイミングで変位量を期間Taごとに検出し、それに基づいて加速度を検出するようにしてもよい。
【0042】
また、加速度センサ10が正常に稼働しているときには、第1および第2のタイミングにおける変位量の差分d2には変化が生じないのに対し、加速度センサ10に不具合が生じ、加速度が印加されたときの第1および第2コンデンサC1、C2の静電容量の変化が、正常稼働時対して異なると、変位量の差分d2にも変化が生じる。したがって、この加速度検出装置1では、第1および第2のタイミングにおける変位量の差分d2を期間Taごとに検出することによって、上述した加速度の検出とともに、加速度センサ10の自己診断を常時、加速度センサ10ごとに実行することができる。
【0043】
また、第1のタイミングは、可動部12の変位が+側から−側に切り換わった直後に設定されており、それにより、可動部12の変位速度が低下したタイミングで変位量が検出される。したがって、第1のタイミングで期間Taごとに算出した変位量に生じるばらつきを抑制できるので、この変位量に応じた加速度センサ10の自己診断の信頼性を、より向上させることができる。
【0044】
また、可動電極12dに第1および第2の電圧V1、V2を周期的に切り換えて印加し、可動部12を、中立位置を中心として+側と−側に大きく振動させることにより、差分d2がより大きな値として検出され、期間Taごとに算出した差分d2に生じるばらつきを抑制できるので、加速度センサ10の自己診断の信頼性をさらに向上させることができる。なお、本実施形態では、可動部12が+側から中立位置を通過するタイミングを第2のタイミングとして説明したが、例えば、可動部12の変位が−側から+側に切り換わるタイミングの近傍を第2のタイミングとして設定してもよい。それにより、第1および第2のタイミングで検出した変位量の差分d2に基づく自己診断の信頼性を、さらに向上させることができる。また、可動部12の変位が−側から+側に切り換わるタイミングの近傍における変位量を、第1および第2のタイミングでの変位量とは別個に検出し、加速度の検出や加速度センサ10の自己診断に用いてもよい。
【0045】
次いで、上述した実施形態に係る加速度検出装置1の変形例について説明する。変形例に係る加速度検出装置は、加速度検出装置1と同じ構成を有しており、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2や、可動電極12への入力電圧の切換えタイミングなどが、実施形態に係る加速度検出装置1と異なっている。以下、加速度検出装置1との差異を中心として、変形例に係る加速度検出装置について説明する。
【0046】
図5に示すように、第1の搬送波信号FE1の電圧レベルがVaで、第2の搬送波信号FE2の電圧レベルが0のときに、可動電極12dに第1の電圧V1が入力されると、可動電極12dに+側の静電気力が作用し、可動部12が中立位置から+側に変位を開始する。そして、期間tgが経過したタイミングt21から、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2をそれぞれ駆動電圧Vaと0の間で振動させるとともに、可動電極12dへの入力電圧を第3の電圧V3に切り換えると、可動電極12dに−側への静電気力が作用することによって、可動部12が−側に変位を開始する。このように可動部12の変位方向が−側に切り換わった直後で、タイミングt21から期間thが経過したタイミングt21aを第1のタイミングとして、電荷電圧変換回路21から出力された電圧信号がサンプリングされ、このときの可動部12の変位量が制御回路22によって検出される。
【0047】
可動部12が中立位置に近づくと、その変位速度が低下し、中立位置を通過すると、再度、変位速度が増大する。制御回路22では、タイミング21aから期間tiが経過し、可動部12が中立位置を通過したタイミングt21bを第2のタイミングとして、変位量のサンプリング、および加速度センサ10に印加された加速度の検出が実行される。また、制御回路22は、タイミングt21aおよびt21bで検出した可動部12の変位量の差分d3に基づいて、実施形態と同様に加速度センサ10の自己診断を実行する。
【0048】
そして、タイミングt21bから期間tjが経過し、可動部12の−側への変位量が最大に近づいたタイミングt22において、可動電極12dへの入力電圧を第2の電圧V2に切り換えるとともに、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2の電圧レベルを駆動電圧Va、および0にそれぞれ固定する。これにより、可動電極12dに+側の静電気力が作用し、可動部12が−側への変位を停止して+側への変位を開始する。そして、中立位置付近で変位速度を一旦、減速しながら、+側への移動を継続する。
【0049】
そして、タイミングt22から期間tkが経過したタイミングt23において、可動電極12dへの入力電圧を第3の電圧V3に切り換えるとともに、タイミングt21〜t22と同様に、タイミングt23〜t24にかけて、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2を振動させる。これにより、可動電極12dに再度、−側の静電気力が作用し、可動部12が−側への変位を開始する。そして、タイミングt21a、t21bと同様に、可動部12の変位速度が低下したタイミングt23aおよびt23bをそれぞれ第1および第2タイミングとして、制御回路22によって、変位量の検出およびその差分d3が検出されるとともに、加速度センサ10の自己診断が実行される。
【0050】
そして、タイミングt24において、タイミングt22と同様に、第1および第2の搬送波信号FE1、FE2と、可動電極12dへの入力電圧を切り換え、この状態をタイミングt25まで維持することによって、可動部12が+側に変位する。
【0051】
また、タイミングt25以降は、上述したタイミングt21〜t25の間の期間Tbを所定の周期として、タイミングt21〜t25と同様の動作を繰り返し実行する。それにより、制御装置22は、期間Tbに応じた第1のタイミングとして、タイミングt21aからタイミングt23aの間の期間Tb/2ごとに、また、同じく期間Tbに応じた第2のタイミングとして、タイミングt21bからタイミングt23bの間の期間Tb/2ごとに、電圧信号のサンプリングおよび可動部12の変位量の算出をそれぞれ実行する。また、第2のタイミングで検出した電圧信号に応じて加速度を検出するとともに、第1および第2のタイミングでの変位量の差分d3に基づいて、加速度センサ10の自己診断を実行する。
【0052】
以上のように、本変形例に係る加速度検出装置によれば、可動部12が変位する速度が低下する第1および第2のタイミングにおいて、可動部12の変位量が検出される。したがって、第1および第2のタイミングの双方において可動部12の変位量がより高い精度で検出され、加速度センサ10に印加された加速度を、より精度よく検出できるとともに、加速度センサ10の自己診断の信頼性をより向上させることができる。
【0053】
なお、上述した実施形態および変形例では、第1および2のタイミングにおいて電圧信号をサンプリングするごとに可動部12の変位量を算出するものとして説明したが、例えば、第1および第2のタイミングにおいて複数の周期にわたってサンプリングした複数の電圧信号に応じ、それらの平均値に基づいて、変位量をそれぞれ算出するようにしてもよい。それにより、サンプリングした電圧信号にばらつきが生じたとしても、そのばらつきが変位量に及ぼす影響を緩和することができる。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。