(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明に想到した経緯について説明する。
はじめに、粉鉱石(鉄鉱石)のうち、難造粒性を示す微粉原料の造粒性について説明する。
篩目10μmアンダーの粒子(微粒子)が5質量%以下と極めて少なく、500μmアンダーの粒子が50質量%以上と非常に多い微粉原料(鉄鉱石)が、通常の鉄鉱石と異なる点は、10μmアンダーの微粒子が極めて少ない点であり、例えば、鉄鉱石の粉砕処理と水による比重選鉱処理を繰り返すことで、この特徴が得られることがわかった。なお、500μmアンダーの粒子の質量%の測定に際しては、微粉原料(2kg)を、150℃で1時間乾燥した後、0.5mmの篩目(JIS Z8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に拠る)で分級し、篩下の質量%を求めた。また、10μmアンダーの微粒子の質量%の測定に際しては、上記乾燥後の微粉原料を対象に、レーザー回折散乱法の測定機器(日機装株式会社製 MICROTRAC(登録商標) MT3300型、測定範囲:0.02〜1400μm)を用いた。
【0014】
ここで、鉄鉱石として少なくとも1種又は複数種の粉鉱石(微粉原料の場合を含む)を含むものが焼結原料であり、この焼結原料に、副原料(成分調整用原料)や凝結材(例えば、コークス粉や石炭粉等)が含まれるか否かは任意であり、本実施の形態での焼結原料とは、生石灰(バインダー)を含まないものをさす。なお、焼結原料に副原料や凝結材が含まれる場合、焼結原料中の副原料と凝結材の合計量が質量比で30質量%以下程度(焼結原料中の鉄鉱石量:例えば、焼結原料の70〜100質量%程度)となるように、鉄鉱石に副原料と凝結材を添加する場合があるが、焼結原料の造粒性や造粒物の強度は、これらの添加量では改善しにくい。
【0015】
上記した粒度構成、即ち10μmオーバーかつ500μmアンダー程度に概ね揃った微粉原料を造粒すると、隣接する原料粒子の間に空間が形成される。
しかし、上記したように、微粉原料中には、この空間を充填する10μmアンダーの微粒子が極めて少ないため、微粉原料は空間を内包したまま造粒され、造粒物の強度が極めて低くなる。このため、たとえセルロース等の粘着質のバインダーを用いて微粉原料を造粒し、隣接する微粉原料の粒子同士を粘着できたとしても、造粒物内部には空間が残留するため、造粒物の強度を向上しにくい。
更に一般に、粉鉱石は水を用いて造粒するが、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を、微粉原料に30質量%以上60質量%以下含める場合、高結晶水鉱石の気孔に水が吸収され、造粒物強度が経時劣化(低下)する問題もある。
上記状況において、上記した微粉原料の造粒に用いるバインダーには、10μmアンダーの微粒子を供給でき、上記した空間を充填できるものが好ましいことに想到した。
【0016】
なお、固形バインダーには、ベントナイトや炭酸カルシウム等があるが、通常の撹拌(混練)処理程度では、上記した微粉原料へ固形バインダーを均一分散させるのが難しいことが判明した。
これは、上記したように、微粉原料の粒径が10μmオーバーかつ500μmアンダー程度の大きさに概ね揃っており、一般には広範囲な粒度分布を持つことで撹拌による原料の混合が進むため、粒子が微粒化せず溶解もしないベントナイトや炭酸カルシウム等を添加しても分散が進まないものと考えられ、この観点からも、別の手段で10μmアンダーの微粒子を添加することが好ましいと考えられた。
以上のことから、本発明者らは、鉄鉱石として、500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度である微粉原料を用いた焼結原料A群を造粒するに際し、撹拌や造粒を容易化するバインダーとして、生石灰に想到した。なお、焼結パレットに入れる焼結原料は撹拌を行わない場合もある。
【0017】
次に、生石灰による造粒メカニズムについて説明する。
生石灰は、撹拌や造粒中に水と接触することで一部が吸湿し消化(消石灰化)して微粒化し、水と共に微粉原料に均一に混ざり易くなると考えられる。なお、生石灰としては、CaOが例えば84質量%以上のものが多用されている。
ここで、生成した消石灰の一部については、水に溶解することでも、微粉原料に均一に混ざり易くなる。
【0018】
生石灰の消化で生成する消石灰や、水の蒸発等によって再晶出する消石灰は、粒径が10μmアンダーの微粒子であり、更にはサブミクロンオーダーの微粒子も多く含まれており、固体架橋によって上記微粉原料の造粒性向上や造粒物の強度向上に大きく寄与する。
従って、極力多くの生石灰を消化させること、生成する消石灰の粒径を小さくすること、極力多くの消石灰を造粒水に溶解すること、等で、造粒に寄与する消石灰を多量に生成させて、生成する消石灰を微粉原料全体に分散させ(マクロに分散させ)、各微粉原料の粒子表面に極力付着させる(ミクロに分散させる)こと、が重要となる。
上記したことから、難造粒性の微粉原料と、その他の原料(例えば、造粒が容易な易造粒性原料)を混合する場合は、難造粒性の微粉原料に対して、粒径を小さくする処理を施した生石灰の添加や、その添加量を多くすること、また生石灰の消化反応による微粒化を促進させるための高速撹拌処理を施すこと、等も重要となる。
【0019】
なお、炭酸カルシウム(分子式:CaCO
3)は、生石灰と同様にCaOを含み、そのCaO含有率が56質量%程度のものであり、石灰石あるいは単に石灰と称される場合がある。しかし、炭酸カルシウムは、化学的に安定な物質であって、吸湿による消化や水への溶解は起こりにくい。
従って、上記した生石灰に、炭酸カルシウムは含まれない。
ここで、添加するバインダーの種類が造粒物の造粒性に及ぼす影響について、
図1を参照しながら説明する。
【0020】
なお、試験は、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を0又は0を超え10質量%以下配合した500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度である微粉原料(焼結原料A群)に、バインダー(炭酸カルシウム、生石灰)を外掛けで2質量%添加し、これを万能ミキサー(自転する撹拌羽根の軸を公転させる竪型ミキサー)で撹拌した後、ドラムミキサーで造粒処理した。ここでは、バインダー添加の評価基準として、バインダーを添加していない難造粒性の微粉原料(原料)のみのものについても、万能ミキサーで撹拌した後、ドラムミキサーで造粒処理した。
詳細条件は、水分:9〜12質量%の範囲で一定、撹拌(混練):周速2.0m/秒、処理時間90秒、造粒:周速1.0m/秒、処理時間60秒、である。なお、周速は、万能ミキサー(撹拌機)とドラムミキサー(造粒機)において、回転するもの(羽根、ドラム等)で、一番速い部分の速度を意味する。
【0021】
また、評価は、以下の手順で行った。
まず、上記した造粒処理した微粉原料(2kg)を、150℃で1時間乾燥した後、0.5mmの篩目(JIS Z8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に拠る)で分級し、0.5mmアンダーの割合を粉率と定義した。なお、粉率は、バインダーを添加していない微粉原料のみの粉率を「1.0」として、それぞれ算出した。
図1から、微粉原料に対して炭酸カルシウムを添加した場合、造粒性の改善が小さい(粉率:0.75)のに対し、微粉原料に対して生石灰を添加した場合は、造粒性が著しく改善(生石灰:0.45)することを、本発明者らは初めて発見した。
これは、生石灰が水と接触することにより微粒化し、更に生成した消石灰の一部が水に溶解することで、微粉原料に均一に混ざり易くなり、固体架橋によって微粉原料の造粒性向上や造粒物の強度向上に大きく寄与したためと考えられる。
【0022】
上記粉率は平均値であり、いずれのバインダーを用いた場合も、粉率値は5%程度のばらつきをもった。
一方、上記試験に用いた微粉原料として、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合したものを用いた場合、粉率が全体的に悪化(増加)し、特に、バインダーとして炭酸カルシウムを用いた場合は、概ね2〜3割程度のばらつきを示すのに対し、バインダーとして生石灰を用いた場合は、炭酸カルシウムの粉率値のばらつきよりも小さな1割程度であった。これは、造粒時や造粒後に気孔に水が吸収され得る高結晶水鉱石を用いたとしても、バインダーとして炭酸カルシウムを用いると上記した固体架橋が安定せず、一方、生石灰を用いると上記した固体架橋が安定するものと推定され、吸湿による消化や水への溶解が起きると、気孔への吸水が起こっても固体架橋が比較的安定しているものと推定された。
【0023】
以上のことから、本発明者らは、難造粒性を有する微粉原料の造粒性を向上できる焼結原料の事前処理方法に想到した。即ち、1.0mmアンダーが50質量%以上の粒度を有する生石灰と、鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度の粉鉱石である微粉原料を用いる焼結原料A群(難造粒性微粉原料)を、撹拌機に装入し、撹拌機の撹拌羽根の周速を2m/秒以上にして撹拌し、更に造粒して造粒物とする方法である。更に、鉄鉱石として、500μmアンダーが50質量%未満又は10μmアンダーが5質量%超の粒度の粉鉱石を用いる焼結原料B群(易造粒性原料)に、1.0mmアンダーが10質量%以上の粒度を有する生石灰を配合し、焼結原料A群の造粒物との合流前又は合流後に造粒して造粒物とすることができる。
【0024】
上記した生石灰は、石灰石などの主成分である炭酸カルシウムを1100℃程度に加熱し、二酸化炭素を放出させる熱分解により製造し、その後、破砕による細粒化処理を行って、所定の粒度としている。
しかし、生石灰の粒度を小さくするに際しては、上記したように、細粒化処理を行う必要があり、製造コストの上昇を招くことから、粉率を抑制できる範囲内で、生石灰の粒度を比較的粗粒の状態、例えば、250μmアンダーを0質量%又は0質量%を超え50質量%未満(更には、40質量%以下)とするのがよい。これにより、生石灰の細粒化処理を省略できるため、製造コストの低減が図れて経済的である。
【0025】
また、上記した生石灰と焼結原料を、撹拌機を用いて撹拌するに際しては、撹拌羽根の周速を2m/秒(更に好ましくは、3m/秒)以上にすることで、水と生石灰との単位時間あたりの接触割合を増加させることができ、生石灰の消石灰化による微粒化促進、及び生成する消石灰を焼結原料全体(マクロ)に分散させ、各焼結原料の粒子表面に極力付着(ミクロに分散)させることができる。
従って、撹拌機は、撹拌羽根の周速を2m/秒以上にできるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、前記した万能ミキサー等を使用できる。なお、撹拌羽根の周速の上限値は、上記した記載から特に限定していないが、世の中で一般的に使用されている撹拌機を考慮すれば、例えば、35m/秒程度である。また、撹拌羽根の直径は、実験室で使用するものも含めて、0.1〜1.5m程度である。なお、撹拌羽根の直径とは、回転時の撹拌羽根の外径を意味し、例えば、回転軸の周囲周方向に複数の羽根が設けられている場合は、回転軸を挟んでその両側に設けられた羽根の先端間の距離を意味する。
ここで、難造粒性微粉原料と易造粒性原料の粒度の関係を、表1に示す。
【0027】
上記した難造粒性微粉原料、即ち500μmアンダー(−500μm)が50質量%以上かつ10μmアンダー(−10μm)が5質量%以下の粒度を有する原料は、表1中の「A」に該当する。
一方、粉鉱石(鉄鉱石)から、上記した難造粒性微粉原料を除いた焼結原料である易造粒性原料は、表1中の「B1」、「B2」、及び「B3」に該当する。即ち、500μmアンダーが50質量%未満かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度を有する原料は、表1中の「B1」に、500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%超の粒度を有する原料は、表1中の「B2」に、500μmアンダーが50質量%未満かつ10μmアンダーが5質量%超の粒度を有する原料は、表1中の「B3」に、それぞれ該当する。
以上のように、造粒処理する焼結原料は、表1のように分類できる。
【0028】
なお、上記した「B1」、「B2」、「B3」の分類は、粒度分布を調べた鉄鉱石銘柄で決定でき、これらの配合後でも、粒度分布に基づいて決定できる。更に、篩処理や粉砕処理によっても粒度が調整できるため、上記した「A」、「B1」、「B2」、「B3」の分類に決定できる。この篩処理と粉砕処理のいずれか一方(単独)又は双方の処理方法は、粒度が安定するため、造粒状況が安定して好ましい。
【0029】
次に、難造粒性微粉原料の粒度構成を、上記した範囲に規定した理由について、
図2(A)、(B)を参照しながら説明する。
試験は、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した原料に生石灰(粒度:1.0mmアンダーが50質量%未満)を、外掛けで2質量%添加し、これを前記した万能ミキサーで撹拌した後、ドラムミキサーで造粒して行った。この原料には、
図2(A)の場合、原料中の10μmアンダーの質量割合を5質量%に固定し、500μmアンダーの質量割合を、20質量%、50質量%、75質量%に変更した原料を、
図2(B)の場合、原料中の500μmアンダーの質量割合を50質量%に固定し、10μmアンダーの質量割合を、2.5質量%、5質量%、8質量%に変更した原料を、それぞれ使用した。
なお、水分、撹拌、及び造粒の各条件は、前記した詳細条件と同一である。
【0030】
また、評価についても、前記した0.5mmアンダーの割合を粉率と定義して行った。なお、粉率は、
図2(A)の場合、原料中の10μmアンダーの質量割合を5質量%に固定し、500μmアンダーの質量割合を50質量%にした造粒物の粉率を、また
図2(B)の場合、原料中の500μmアンダーの質量割合を50質量%に固定し、10μmアンダーの質量割合を5質量%にした造粒物の粉率を、それぞれ「1」として算出した。
図2(A)に示すように、原料中の10μmアンダーの質量割合を5質量%に固定した場合、500μmアンダーの質量割合が50質量%以上になることで、造粒物の粉率が急激に上昇する傾向が得られた。
また、
図2(B)に示すように、原料中の500μmアンダーの質量割合を50質量%に固定した場合、10μmアンダーの質量割合が5質量%以下になることで、造粒物の粉率が急激に上昇する傾向が得られた。
【0031】
以上のことから、本発明は、造粒物の粉率が高くなる難造粒性を示す微粉原料の粒度として、500μmアンダーが50質量%(更には60質量%)以上かつ10μmアンダーが5質量%(更には4質量%)以下を規定した。なお、500μmアンダーの上限値を規定していないのは100質量%でもよく、また10μmアンダーの下限値を規定していないのは0質量%でもよいためである。
以上から、500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度の微粉原料であれば、造粒物の粉率が極めて上昇(悪化)することがわかる。また、これに対し、500μmアンダーが50質量%未満又は10μmアンダーが5質量%超の粒度の粉鉱石であれば、粉率が一定レベル下がる(改善する)ことがわかる。
【0032】
続いて、微粉原料に添加する生石灰の粒度構成について、
図3を参照しながら説明する。
試験は、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度である難造粒性微粉原料と、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した500μmアンダーが50質量%未満又は10μmアンダーが5質量%超の粒度である易造粒性原料に、それぞれ1.0mmアンダーの質量割合が異なる生石灰(250μmアンダーは0質量%で一定)を、外掛けで2質量%添加し、これを前記した万能ミキサーで撹拌した後(撹拌速度が1.0m/秒と2.0m/秒)、又は撹拌することなく(撹拌機無)、ドラムミキサーで造粒して行った。なお、水分と造粒の各条件は、前記した詳細条件と同一である。
また、評価についても、前記した0.5mmアンダーの質量割合を粉率と定義して行った。なお、粉率は、易造粒性原料の造粒に際し、粉率の低下が顕著でなくなる場合、即ち撹拌機無しで生石灰中の1.0mmアンダーの質量割合を10質量%にした場合を「1」として算出し、この粉率(
図3中の点線)以下を合格とした。
【0033】
図3に示すように、難造粒性微粉原料の造粒に際しては、撹拌速度を2.0m/秒以上にし、生石灰中の1.0mmアンダーの質量割合を50質量%以上にすることで、造粒物の粉率が急激に低下して、粉率が合格の基準を満たした(
図3中の太線)。
また、易造粒性原料を造粒する場合、難造粒性微粉原料と比較して造粒性が良好であるため、生石灰中の1.0mmアンダーの質量割合を10質量%以上にすることで、造粒物の粉率が低下して、粉率が合格の基準を満たした(
図3中の細線)。
【0034】
以上のことから、難造粒性微粉原料を造粒するに際しては、撹拌速度を2.0m/秒以上にし、1.0mmアンダーが50質量%(更には60質量%)以上の粒度を有する生石灰を用いることとした。なお、ここで、1.0mmアンダーの上限値を規定していないのは、100質量%でもよいためである。
また、易造粒性原料を造粒する場合は、撹拌機を使用せずに(撹拌機の不使用状態で)、1.0mmアンダーが10質量%(更には20質量%)以上の粒度を有する生石灰を用いる。ここで、1.0mmアンダーの上限値を規定していないのは、100質量%でもよいためであるが、難造粒性微粉原料の造粒物と比較して粉率を抑制できることや、また、難造粒性微粉原料の造粒に使用した残りの生石灰を易造粒性原料の造粒に使用すること(有効利用)を考慮すれば、50質量%未満にすることもできる。
なお、生石灰の粒度は、前記したように、製造コストの低減を図る観点から、粉率を抑制できる粒度、即ち250μmアンダーを50質量%未満(更には、40質量%以下)の範囲で調整できるが、上記した試験結果から、0質量%でもよい。
【0035】
上記した難造粒性微粉原料(以下、焼結原料A群ともいう)や易造粒性原料(以下、焼結原料B群ともいう)の造粒処理には、アイリッヒミキサーやレディゲミキサーのような撹拌機(混練機)を用いることができ、またドラムミキサーや皿型造粒機のような転動型造粒機(造粒機)を用いてもよい。ここで、転動型造粒機は、撹拌機(混練機)の代替にはならないが、撹拌機(混練機)は、原料の撹拌(混練)と同時に造粒ができるため、転動型造粒機の代替にはなる。
なお、転動型造粒機であるドラムミキサーは、造粒の途中段階から、凝結材や副原料を添加することが可能であり、凝結材の埋没抑制や副原料の局所濃化による焼結時の原料溶融をコントロールできるため好適である。
【0036】
ここで、上記した焼結原料A群、更には焼結原料B群の造粒過程の一例を、
図4(A)〜(C)に示す。
図4(A)に示すように、焼結原料A群と生石灰を、撹拌機(混練機)で撹拌処理(混練処理)し、更に(転動型)造粒機で造粒処理して、得られた造粒物を焼結機へ供給する。
【0037】
また、
図4(B)に示すように、上記した方法による焼結原料A群の造粒処理と、焼結原料B群の造粒処理を並列して行い、双方の造粒処理で得られた造粒物を合流させて、この造粒物を焼結機へ供給することもできる(焼結原料B群の造粒処理は、焼結原料A群の造粒物との合流前に行う)。なお、焼結原料B群の造粒処理は、a)焼結原料B群と生石灰を撹拌機(混練機)で撹拌処理(混練処理)、b)焼結原料B群と生石灰を(転動型)造粒機で造粒処理、c)焼結原料B群と生石灰を撹拌機(混練機)で撹拌処理(混練処理)した後に(転動型)造粒機で造粒処理、により実施できる。ここで、焼結原料A群の造粒物と焼結原料B群の造粒物との合流は、例えば、ベルトコンベア(搬送手段)上に、双方の造粒物を供給するものでもよく、また各造粒物をドラムミキサーで混合してもよい。
【0038】
更に、
図4(C)に示すように、上記した方法で得られた焼結原料A群の造粒物を、焼結原料B群に供給して合流させ、焼結原料A群の造粒物と焼結原料B群とを合流させたものに対し、上記した焼結原料B群の造粒処理を施して、得られた造粒物を焼結機へ供給することもできる(焼結原料B群の造粒処理は、焼結原料A群の造粒物との合流後に行う)。
これは、焼結原料B群のみでも造粒性が良好であるところに、焼結原料A群の造粒物を合流させると、焼結原料A群の造粒物が核となって焼結原料B群の造粒が進み、より好適な造粒効果が得られるためである。
【0039】
また、上記した焼結原料A群と焼結原料B群を造粒した後、焼結機に装入するに際しては、凝結材も焼結機に装入している(例えば、焼結機に装入する全焼結原料に対して、外掛けで3〜6質量%程度)。
上記したように、凝結材は、最終的に焼結機に装入されればよいため、焼結原料A群及び焼結原料B群のいずれか一方又は双方に添加できるが、焼結原料B群に添加する方が好ましい。これは、焼結原料B群に凝結材を添加する方が、凝結材の埋没を抑制でき、焼結現象に寄与できることによって、焼結原料B群に添加する凝結材の割合を増やすほど、埋没の抑制効果が得られるためである。
これにより、凝結材の使用量削減や焼結鉱品質の向上に寄与できる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
試験は、原料に生石灰を外掛けで2質量%添加し、これを前記した万能ミキサーで撹拌した後(撹拌速度が1.0m/秒と2.0m/秒)、又は撹拌することなく(撹拌機無)、ドラムミキサーで造粒して行った。なお、水分と造粒の各条件は、前記した詳細条件と同一である。
この原料には、表2に示す粒度を有する原料を使用した。なお、表2に記載の各鉱石種は、表1に記載の「A」、「B1」、「B2」、「B3」にそれぞれ該当し、焼結原料群の「A群」とは難造粒性微粉原料(結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した微粉原料)を、「B群」とは易造粒性原料を、それぞれ意味する。
また、原料に添加する生石灰には、表3に示す粒度を有する生石灰を使用した。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
評価は、前記した0.5mmアンダーの割合を粉率と定義して行った。
ここで、試験条件と試験結果を、表4、表5に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
ここで、表4において、ライン1とは、原料を造粒する1つのラインである(
図4(A)参照)。
また、表5において、ライン1とライン2は、原料を造粒する別ラインであり、並列に配置したものである。つまり、ライン1で難造粒性微粉原料を、ライン2で易造粒性原料を、それぞれ造粒処理する場合は、難造粒性微粉原料の造粒処理と、易造粒性原料の造粒処理が、並列して行われることを意味する(
図4(B)参照)。
そして、表4中の従来例1は、「B3」を造粒するに際し、撹拌機を使用することなく造粒した場合の結果であり、表5中の従来例2は、ライン1で「B3」を、ライン2で「B2」を、それぞれ造粒するに際し、撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果であり、従来例3は、ライン1、2で「B1」をそれぞれ造粒するに際し、撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果である。
【0047】
また、総合評価は、従来例1のライン1と従来例2、3のライン1、2でそれぞれ造粒した各原料の粉率を用いて行った。なお、総合評価の欄において、「○」は実機で採用可、「×」は実機で採用不可を、それぞれ示しており、粉率で「×」の評価がある場合を、総合評価で「×」とした。
ここで、従来例1のライン1と従来例2、3のライン1、2でそれぞれ造粒した各原料の粉率は、ベース1、ベース3、ベース2の順に多くなっており、比較例1〜7と実施例1〜7の粉率の評価においては、粉率が、ベース1〜3のいずれよりも高い場合を「×」とし、いずれよりも低い場合を「○」とし、「○」や「×」に該当しない場合を粉率が同等として「△」とした。
【0048】
まず、表4について説明する。
表4に示すように、比較例1は、ライン1で難造粒性微粉原料「A」に生石灰を添加して、これを撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果である。
比較例1は、難造粒性微粉原料を造粒するに際し、撹拌機で撹拌しなかったため、造粒性が悪くなり、粉率がベース1〜3よりも悪化した(×)。
従って、実機で採用できなかった(総合評価:×)。
一方、実施例1は、難造粒性微粉原料「A」に生石灰を添加して、これを撹拌機で撹拌速度(撹拌羽根の周速)を2.0m/秒にして撹拌した後、造粒した場合の結果である。
実施例1では、難造粒性微粉原料を撹拌するに際し、1.0mmアンダーが50質量%以上(60質量%)の粒度を有する生石灰を使用し、しかも撹拌速度2m/秒以上(2.0m/秒)で撹拌したため、造粒性が良好になり、粉率がベース1〜3よりも低下した(○)。
従って、実機で採用できた(総合評価:○)。
【0049】
なお、比較例2は、実施例1の条件において、撹拌機の撹拌速度を2m/秒未満(1.0m/秒)としたため、造粒性が悪くなり、粉率がベース1〜3よりも悪化した(×)。
従って、実機で採用できなかった(総合評価:×)。
また、比較例3は、難造粒性微粉原料として、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を0又は0を超え10質量%以下配合した微粉原料「A
*」を用い、当該微粉原料「A
*」に、生石灰を添加し、これを撹拌機で撹拌速度を1.0m/秒にして撹拌した後、造粒した場合の結果である。
上記したように、比較例3は、高結晶水鉱石の配合割合が低いため、比較例2よりも造粒性は向上するものと考えられるが、微粉原料「A
*」の粒度分布の影響や、撹拌機の撹拌速度を2m/秒未満にした影響で、粉率はベース1〜3よりも悪化した(×)。
従って、実機で採用できなかった(総合評価:×)。
【0050】
なお、上記した比較例1〜3は、原料への生石灰の添加量を、現状の2質量%から6〜10質量%以上(外掛け)に増量すると、粉率の評価が「×」から「△」〜「○」となるが、生石灰の通常の添加量は5質量%以下(下限は0.1質量%程度)であるため、粉率の評価を「×」とし、総合評価も「×」とした。
【0051】
続いて、表5について説明する。
表5に示すように、比較例4は、ライン1で難造粒性微粉原料「A」に生石灰を添加し、ライン2で易造粒性原料「B1」に生石灰を添加して、それぞれ撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果である。
ライン1では、難造粒性微粉原料を造粒するに際し、撹拌機で撹拌しなかったため、造粒性が悪くなり、粉率がベース1〜3よりも悪化した(×)。また、ライン2は、従来例3のライン1、2と同様の条件であるため、粉率はベース3と同程度であった(△)。
従って、実機で採用できなかった(総合評価:×)。
【0052】
また、比較例5は、ライン1で難造粒性微粉原料「A」に生石灰を添加して、これを撹拌機で撹拌速度を1.0m/秒にして撹拌した後、造粒し、ライン2で易造粒性原料「B2」に生石灰を添加して、これを撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果である。
ライン1は、上記した比較例2のライン1と同様の条件であるため、造粒性が悪くなり、粉率がベース1〜3よりも悪化した(×)。また、ライン2は、従来例2のライン2と同様の条件であるため、粉率はベース2と同程度であった(△)。
従って、実機で採用できなかった(総合評価:×)。
【0053】
そして、比較例6は、ライン1で上記した微粉原料「A
*」に生石灰を添加し、ライン2で易造粒性原料「B1」に生石灰を添加して、それぞれ撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果である。
ライン1は、高結晶水鉱石の配合割合が低いため、比較例4よりも造粒性は向上するものと考えられるが、微粉原料「A
*」の粒度分布の影響や、撹拌機を使用しなかった影響で、粉率はベース1〜3よりも悪化した(×)。また、ライン2は、従来例3のライン1、2と同様の条件であるため、粉率はベース3と同程度であった(△)。
従って、実機で採用できなかった(総合評価:×)。
【0054】
更に、比較例7は、ライン1で上記した微粉原料「A
*」に生石灰を添加して、これを撹拌機で撹拌速度を1.0m/秒にして撹拌した後、造粒し、ライン2で易造粒性原料「B3」に生石灰を添加して、これを撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果である。
ライン1は、比較例3のライン1と同様の条件であるため、粉率はベース1〜3よりも悪化した(×)。また、ライン2は、従来例1、2のライン1と同様の条件であるため、粉率はベース1と同程度であった(△)。
従って、実機で採用できなかった(総合評価:×)。
【0055】
なお、上記した比較例4〜7も、前記した比較例1〜3と同様、原料への生石灰の添加量を、現状の2質量%から6〜10質量%以上に増量すると、粉率の評価が「×」から「△」〜「○」となるが、生石灰の通常の添加量は5質量%以下であるため、粉率の評価を「×」とし、総合評価も「×」とした。
【0056】
一方、実施例2〜7は、ライン1で難造粒性微粉原料「A」に生石灰を添加して、これを撹拌機で撹拌速度を2.0m/秒にして撹拌した後、造粒した場合の結果である。なお、実施例2〜4のライン2は、易造粒性原料「B1」、「B2」、「B3」に生石灰をそれぞれ添加して、これを撹拌機で撹拌することなく造粒した場合の結果であり、実施例5〜7のライン2は、易造粒性原料「B1」、「B2」、「B3」に生石灰をそれぞれ添加して、これを撹拌機で撹拌速度を1.0m/秒にして撹拌した後、造粒した場合の結果である。
実施例2〜7のライン1では、実施例1のライン1と同様の条件であるため、造粒性が良好になり、粉率がベース1〜3よりも低下した(○)。
【0057】
また、実施例2〜4のライン2は、実施例2が従来例3のライン1、2と、実施例3が従来例2のライン2と、実施例4が従来例1、2のライン1と、それぞれ同様の条件であるため、粉率はベース1〜3と同程度であった(△)。
なお、実施例5〜7のライン2は、実施例2〜4のライン2の条件において、撹拌機を用いたため、造粒性が更に良好になり、粉率がベース1〜3よりも低下した(○)。
従って、実施例2〜7のいずれについても、実機で採用できた(総合評価:○)。
以上に示したように、実施例1〜7では、破砕処理せずに、粗い状態の生石灰を難造粒性微粉原料の造粒に使用できるため、粉率全体の改善と、生石灰の安価化の両立が図れた。
【0058】
また、表5に示す実施例4については、凝結材を添加した造粒物を作製し、焼結生産性を検討した。
試験は、難造粒性微粉原料「A」に生石灰を添加して撹拌した造粒物50質量%と、易造粒性原料「B3」に生石灰を添加した造粒物50質量%を、吸引圧1000mmAq(9.8kPa)のラボ焼結機(80kg焼成)に装入し焼結させることで行った。なお、凝結材は、難造粒性微粉原料「A」と易造粒性原料「B3」の合計量に、外掛けで4質量%添加することを前提条件にして、難造粒性微粉原料「A」と易造粒性原料「B3」への添加量を種々変更した。
【0059】
上記した試験結果を、
図5に示す。
なお、
図5の横軸は、易造粒性原料「B3」への凝結材の添加量を示しており、横軸「0質量%」は全て(上記した外掛けの4質量%)の凝結材を難造粒性微粉原料「A」に添加して造粒した場合を、また横軸「100質量%」は全ての凝結材を易造粒性原料「B3」に添加して造粒した場合を、それぞれ示している。また、
図5の縦軸は、焼結生産性を示しており、全ての凝結材を難造粒性微粉原料「A」に添加して造粒した場合の焼結生産性を「1.00」として、評価している。なお、焼結生産性は、焼成速度と歩留の積で表され、焼成速度の単位は(kg/分)、歩留の単位は(質量%)、で表される。
【0060】
図5に示すように、易造粒性原料「B3」への凝結材の添加量が、0質量%から増加すると共に、一定の勾配で焼結生産性は増加し、全体の30質量%を添加すると、焼結生産性は1.03となった。そして、凝結材の添加量が30質量%から更に増加すると共に、勾配は少し緩やかに変化するものの焼結生産性は増加し、60質量%添加すると焼結生産性は1.05となった。凝結材の添加量を60質量%から更に増加すると、焼結生産性への効果は概ね飽和するものの徐々に増加し、100質量%添加すると、焼結生産性は1.06まで上昇した。
【0061】
以上のことから、本発明の焼結原料の事前処理方法を使用することで、バインダーの使用量増加を抑制し、焼結原料の造粒性を改善して、微粉原料の造粒を可能とし、更には、造粒物の崩壊を抑制して、焼結鉱の製造に使用できることを確認できた。
【0062】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の焼結原料の事前処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。