特許第5828394号(P5828394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5828394
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】被処理物の焼入装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/64 20060101AFI20151112BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20151112BHJP
   C21D 9/32 20060101ALI20151112BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   C21D1/64
   C21D1/18 J
   C21D1/18 U
   C21D1/18 V
   C21D9/32 B
   C21D1/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-233240(P2011-233240)
(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2013-91818(P2013-91818A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年1月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃伸
【審査官】 蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−007146(JP,A)
【文献】 特開2007−297664(JP,A)
【文献】 特開2004−052004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00−1/18、1/64
C21D 9/00−9/44、9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台に支持され上下段に平置き状態で多段に積層載置された加熱処理後の被処理物を昇降装置の下降により冷却槽内の冷却油に浸漬させて焼入れを行う被処理物の焼入装置において、
前記被処理物は歯車であり、前記冷却槽は、前記昇降装置によって載置台が下降する際に、前記冷却槽内の下降位置における冷却油に昇降軸線を水平に横切る循環流を起生させる攪拌装置が配置され、
前記冷却槽の側壁内部には、前記攪拌装置により前記載置台上に積層載置された前記被処理物間を横方向に通過する循環流を形成する流路が配置され、
前記載置台は、当該載置台上に千鳥状に配置されて垂直に立設され被処理物の中心に形成される取付け孔を挿通し複数の被処理物を上下に重ねて支持する複数の支柱と、重ねられる被処理物間にあって前記支柱に挿嵌支持される円筒カラーと、該円筒カラーの上端面に支持されて上段被処理物の横移動を規制するように上下段の間隔が離間した状態で積層支持する位置規制治具と、を備え、
前記載置台上に多段に積層される複数の前記被処理物が所定の間隔をもって平置き状態で載置されることを特徴とする被処理物の焼入装置。
【請求項2】
前記位置規制治具は、中心に前記支柱を挿通する挿通孔が形成され前記挿通孔の周縁上面に上段被処理物の取付け孔内周に嵌合すべく均等配置された複数の突起部と、該突起部の外周上面に前記上段被処理物の取付け孔周縁下面を支持すべく円周上に均等配置された複数の当接片とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の被処理物の焼入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動力伝達系に用いられる歯車等の被処理物の焼入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼製の機械加工部品(被処理物)などの焼き入れを行う焼入装置は、焼入れ温度に加熱されている被処理物を急冷するための焼入れ油等の冷却液が貯留された冷却槽を有している。前記焼入装置は、加熱された被処理物を、当該焼入装置に設けられた昇降装置のフォーク上に載置台を介して載置し、このフォークごと冷却液に浸漬して焼入(急冷)を行っている。
【0003】
前記焼入装置の冷却槽は、当該冷却槽の底部に冷却液の吐出口を備え、この吐出口から上方に向けて冷却液を吐出することで前記冷却液を冷却槽の内部で循環させる循環装置が配置されている。この循環装置は、吐出口からの冷却液の流れを当該冷却液に浸漬された被処理物に導き、所定の冷却速度を保ちつつ焼入が行われている(特許文献1参照)。
【0004】
この種の焼入装置では、フォークに被処理物を載置した状態でフォークごと被処理物を冷却液に浸漬させるため、冷却槽の底部側から上方へ向かう冷却液の流れが当該フォークにより妨げられ、被処理物に対して冷却液の流れを均等に導くことが出来ない場合があった。
例えば、バスケット内に多数の環状部材等の被処理物を積み重ねて三次元に配置された被処理物を熱処理する場合、当該被処理物に対して冷却液の流れを均等に導くことができないと、バスケット尚の各被処理物の冷却速度が不均一となり、各環状部材等の被処理物に生じる変形や歪の量のバラツキが大きくなる。
【0005】
このように、被処理物に生じる変形や歪の量のバラツキが大きくなると、熱処理後の加工工程で、旋削や研磨によって各環状部材等の被処理物の変形や歪を除去したり、サイジング等の塑性加工によって変形や歪を除去するに際し、加工時間が長時間に及ぶことがあり、生産効率の低下を招く要因となることがある。
【0006】
このような要因の対策として、冷却液の流速や流量等の条件を調整することで、冷却液、の流れを有る程度均等に導くように設定することが行われている。すなわち、前記被処理物を所定の個数、配置として、冷却後の流速や流量等の環境条件を適切な値として設定することで変形や歪の量のバラツキが抑制される。
【0007】
しかし前記被処理物は、大きさや個数、配置が異なる他の被処理物を熱処理する場合、冷却液の流速や流量等の環境条件を変える必要があるので、手間がかかる上、多量に貯留されている冷却液の温度も再調整が必要となる。このように、好適な環境条件は、被処理物の大きさや個数等によって異なるので、環境条件を被処理物に応じて適切に調整するのに多くの作業時間を要し、生産効率低下の問題は未だ解消されていなかった。
【0008】
上記の問題を解消する焼入装置として、冷却液が貯留された油槽と、上面に被処理物が載置される載置台と、被処理物を冷却液に浸漬するための昇降手段とを有し、前記冷却液を上方に向けて吐出する吐出口を前記油槽の底部に備えるとともに冷却液を循環する循環装置を更に有し、前記載置台に冷却油の流れをフォークの上方に導く整流板を備えたものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−350756号公報
【特許文献2】特開2010−7146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載された焼入装置の冷却槽は、当該冷却槽内の底部に冷却液を上方に向けて吐出する吐出口を備えるとともに載置台にも冷却油の流れをフォークの上方に導く整流板を備えている。
このため、被処理物を載置した載置台が浸漬される冷却槽内には、下方から上方に向く冷却液の循環流が形成される。
【0011】
このように特許文献2では特許文献1の冷却液流れの不均等化の問題は解消できるが、載置台上に複数の被処理物が多段に重ねて載置されている場合は、上段の被処理物は下段の被処理物によって上方に向く冷却液の流れが阻害されるので、積層された個々の被処理物に対する流れに斑ができる。
これにより、載置台上に積層載置された被処理物個々には焼入歪が生じ、多段に重ねる度に焼入歪差が顕著になる問題を有していた。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、載置台に平置き状態で多段に積層載置した被処理物を冷却槽内に浸漬して冷却する際に上下段での焼入歪差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る被処理物の焼入装置は、載置台に支持され上下段に平置き状態で多段に積層載置された加熱処理後の被処理物を昇降装置の下降により冷却槽内の冷却油に浸漬させて焼入れを行う被処理物の焼入装置において、前記被処理物は歯車であり、前記冷却槽は、前記昇降装置によって載置台が下降する際に、前記冷却槽内の下降位置における冷却油に昇降軸線を水平に横切る循環流を起生させる攪拌装置が配置され、前記冷却槽の側壁内部には、前記攪拌装置により前記載置台上に積層載置された前記被処理物間を横方向に通過する循環流を形成する流路が配置され、前記載置台は、当該載置台上に千鳥状に配置されて垂直に立設され被処理物の中心に形成される取付け孔を挿通し複数の被処理物を上下に重ねて支持する複数の支柱と、重ねられる被処理物間にあって前記支柱に挿嵌支持される円筒カラーと、該円筒カラーの上端面に支持されて上段被処理物の横移動を規制するように上下段の間隔が離間した状態で積層支持する位置規制治具と、を備え、前記載置台上に多段に積層される複数の前記被処理物が所定の間隔をもって平置き状態で載置されることを特徴とする。
【0014】
かかる発明によれば、冷却槽が、当該冷却槽内の載置台下降位置における昇降軸線を水平に横切る循環流を起生させる攪拌装置を配置した構成となっているので、攪拌装置を起動させることで冷却槽内の載置台下降位置において昇降軸線を横切る横向きの循環流が起生される。従って、載置台の上下段に平置き状態で積層される個々の被処理物の歯車に対する冷却油の流速差が解消されるため焼入歪差を低減することができる。
【0015】
また、本発明は、前記載置台は、該載置台上に多段に積層される複数の前記被処理物が所定の間隔をもって平置き状態で載置さることを特徴とする。
かかる構成によれば、載置台上に多段に積層される複数の被処理物の歯車が平置き状態で載置さるので、安定した姿勢を採ることができる。これによって、冷却油の流れが載置台上に多段に積層載置される被処理物の歯車の姿勢に与える影響が低減される。
また、多段に積層載置される複数の被処理物の歯車の間には所定の間隙が形成されるので、被処理物の歯車の焼入条件に応じて攪拌装置の回転制御が可能となり上下段における焼入歪み差も低減できる。
【0016】
また、本発明は、前記載置台は、当該載置台上に千鳥状に配置されて垂直に立設され被処理物の中心に形成される取付け孔を挿通し複数の被処理物を上下に重ねて支持する複数の支柱と、重ねられる被処理物間にあって前記支柱に挿嵌支持される円筒カラーと、該円筒カラーの上端面に支持されて上段被処理物の横移動を規制するように上下段の間隔が離間した状態で積層支持する位置規制治具と、を備えることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、上下段の歯車間が前記円筒カラーと位置規制治具により所定の間隔を設けて積層されるので、歯車間への冷却油の供給が円滑に行われ、焼入条件に応じて長さの異なる円筒カラーに交換することができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、前記位置規制治具は、中心に前記支柱を挿通する挿通孔が形成され前記挿通孔の周縁上面に上段被処理物の取付け孔内周に嵌合すべく均等配置された複数の突起部と、該突起部の外周上面に前記上段被処理物の取付け孔周縁下面を支持すべく円周上に均等配置された複数の当接片とから構成されることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、上下段の歯車間には円筒カラーとともに位置規制治具を挟み込み、この位置規制治具が、中心に前記支柱を挿通する挿通孔が形成され前記挿通孔の周縁上面に上段の歯車の取付け孔内周に嵌合すべく均等配置された複数の突起部と、該突起部の外周上面に前記上段の歯車の取付け孔周縁下面を支持すべく円周上に均等配置された複数の当接片とから構成されるので、積層される複数の歯車の横ずれを防止し、支柱に対する求心性を高めることができる。これによって、積層される複数の歯車が安定に支持される。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく本発明によれば、冷却槽は、昇降装置によって載置台が下降する際に、冷却槽内の下降位置における冷却油に昇降軸線を水平に横切る循環流を起生させる攪拌装置を配置した構成とされ、攪拌装置を起動させることで冷却槽内の載置台下降位置において昇降軸線を横切る横向きの循環流が起生される。これにより、載置台の上下段に積層される個々の被処理物の歯車に対する冷却油の流速差が解消されるため焼入歪差を低減することができる。
また、載置台上に上下段に多段に積層される複数の被処理物の歯車が平置き状態で載置さるので、安定した姿勢を採ることができる。これにより、冷却油の流れが載置台上に多段に積層載置される被処理物の歯車の姿勢に与える影響が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る被処理物の焼入装置全体を示す模式図である。
図2】同じく焼入装置の冷却槽内部を示す断面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】同じく冷却槽内部において、載置台に所定間隔毎に平置きで積層した被処理物間に昇降軸線を水平に横切る循環流が起生される態様の説明図である。
図5】同じくパレット上に平置きで積層載置される被処理物を所定間隔毎に支持する支持治具を示す図である。
図6】同じくパレット上に積層載置される被処理物の間隔を焼入条件によって調整可能とした態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1は本発明に係る一実施形態に係る被処理物の焼入装置全体を示す模式図である。焼入装置1は、熱処理の対象となる複数の被処理物を同時に焼入(急冷)するための装置であり、焼入装置1には浸炭加熱炉10と冷却槽100を備えている。
本発明の実施形態に係る被処理物として、例えばファイナルドライブギャとなる歯車Wが採用されている。
【0024】
前記浸炭加熱炉10の入口側及び出口側には搬入パージ室12並びに搬出パージ室14が配置されている。
前記搬入パージ室12には、載置台(パレット)80上に平置き状態で積層載置した複数の歯車Wを搬入するための搬送装置200が接続されており、搬入パージ室12の入口側には外気と遮断する搬入扉12aが開閉可能に設けられている。
【0025】
後述する搬出パージ室14にも、焼入後の歯車Wを搬出する搬送装置220が接続されており、搬出パージ室14の出口側には外気と遮断する搬出扉14bが開閉可能に設けられている。而して、前記搬入、搬出パージ室12、14には、浸炭加熱炉10との連通を遮断する中間扉12b,14aが開閉可能に設けられている。
【0026】
搬入パージ室12では、前記搬送装置200から受け入れたパレット80上に積層載置された多数の歯車Wを、外気から隔離された雰囲気中で前記歯車Wを400℃程度に加熱し、脱脂処理等の前処理を行っている。なお搬入パージ室12は、これに限定されるものではなく、その内部の雰囲気中が置換出きれば良い。
【0027】
前記浸炭加熱炉10は、温度制御可能な昇温室になっており、ここでは、RXガス等のキャリアガスの雰囲気中で歯車Wが900℃程度に予備加熱される。すなわち、浸炭加熱炉10内部の浸炭ゾーンでは、RXガス等のキャリアガスと炭化水素ガス等のエンリッチガスが供給される。
前記搬入パージ室12から浸炭加熱炉10内部に搬出されたパレット80上の歯車Wは、搬出パージ室14側に向けて移送される過程で浸炭ガスの雰囲気中の各ゾーンで略800℃、略900℃、略900℃に加熱されつつ浸炭処理が行われる。
【0028】
すなわち、加熱された浸炭加熱炉10の内部を移送するパレット80上の歯車Wは、浸炭深さによって異なるが8時間〜10時間掛けて移送される過程で炭素成分が歯車Wの表面に付着される。
浸炭加熱炉10の後方に配置される降温ゾーンでは、前記歯車Wを焼入処理前の温度とすべく850℃程度まで降温して均熱する。
【0029】
浸炭加熱炉10の後端に設けられた搬出パージ室14には、浸炭処理後の加熱された歯車Wを急冷させて焼入するための冷却槽100(後述する)に導入するエレベータ15が昇降可能に設けられている。
【0030】
次に、冷却槽100に付き図2図3を参照して説明する。図2は冷却槽100の正面断面図、図3は冷却槽100のA−A断面図である。
図2において、冷却槽100の内部には略100℃の冷却油102が充填されており、冷却槽100の略中央には、浸炭加熱炉10から搬出パージ室14に搬出されたパレット80上の歯車Wを下降させて冷却槽100内部の冷却油102中に浸漬させるためのエレベータ15が配置されている。
【0031】
前記エレベータ15には、平面視格子状に形成された水平な支持台16が図示しない駆動源により昇降可能に設けられており、前記搬出パージ室14内で複数の歯車Wを積層載置したパレット80が支持台16に支持されると、下降動作により冷却槽100内部に浸漬されるようになっている。
【0032】
冷却槽本体110は、横長の筐体で構成されており、長手方向で対面する垂直な端部側板112,113には2基の攪拌装置104a,104bがそれぞれ同一回転軸線20上に対向して水平横向きに一対状態で設置されている。
2基の攪拌装置104a,104bの回転軸線20は、長手方向の略中間部位でエレベータ15の昇降軸線18と直交しており、この中間部位の下方部位がエレベータ15下降時における支持台16の下降停止位置とされている。
【0033】
2基の攪拌装置104a,104bから冷却槽本体110の内部に延出する回転軸20a,20bの端部には、一対の攪拌羽根105a,105bが対向配置されており、一対の攪拌羽根105a,105bは、図示しない2台のモータによって軸線方向から見て同一方向に回転するように設定されている。
【0034】
図3の平面断面図(図2のA−A断面図)に示すように、冷却槽本体110の長手方向の一端に設けた端部側板112内側には、攪拌羽根105aにより吸引された冷却油102a,102bを回転軸20aの基部側から左右(図3では上下)に分岐する一対の湾曲ダクト108a,108bが回転軸線20に対し左右対称に配設されている。
前記湾曲ダクト108a,108bは、左右両端が冷却槽本体110の両側板114、115の内面に緩い傾斜で接合されており、一方の攪拌羽根105aから排出された冷却油102は、湾曲ダクト108a,108bの湾曲内面に沿って両側板114、115の内面に円滑な流れが形成されるようになっている。
【0035】
他端に設けた端部側板113の内側には、湾曲ダクト108c、108dが回転軸線20に対し左右対称(図3では上下)に配設されている。
前記湾曲ダクト108c、108dの左右両端は、冷却槽本体110の両側板114、115の内面に緩い傾斜で接合されており、前記端部側板112側から両側板114、115の内面に沿って流下してきた冷却油102は他方の攪拌羽根105bの吸引力によって回転軸20b基部側で合流するようになっている。
【0036】
また、一方の湾曲ダクト108a,108b及び他方の湾曲ダクト108c、108dの内側には、内部ダクト106a,106bが左右対称(図3では上下)に配設されている。
一方の攪拌羽根105aと他方の攪拌羽根105bを収容する両ハウジング120a,120bの後端部には、前記内部ダクト106a,106bの湾曲した両末端が連結されている。
これら内部ダクト106a,106bと湾曲ダクト108a,108b及び湾曲ダクト108c、108dによって囲まれる空間が流路として形成され、この流路によって冷却油102が両攪拌羽根105a,105b間を循環する循環流102a,102b(後述する)を形成することができる。
【0037】
尚、湾曲ダクト108a,108b及び他方の湾曲ダクト108c、108dの上下部位は、冷却槽本体110内部に開放されており冷却油102の一部を順次循環流102a,102bの中に取り込まれることで、冷却槽本体110内部の冷却油102温度の均一化を図っている。
この回転軸線20に沿う冷却油102の流れは、昇降軸線18と水平に直交する流れとなり、支持台16の下降停止位置においてパレット80上に積層載置される複数の歯車W間を通過する循環流102a,102bとして形成される。
【0038】
次に、パレット80の冷却槽100内での焼入れ時における作用に付き図1図3を参照して説明する。
まず、加熱後の歯車Wを多段に積層したパレット80は、搬出パージ室14からエレベータ15の支持台16に移載されると約7〜8秒間で下降しつつ、冷却槽100内では、対向配置される2基の攪拌装置104a,104bを同時に起動させることで、同軸上に配置された攪拌羽根105a,105bが互いに逆回転することによって、冷却槽100内の冷却油102に点線矢印で示される循環流が起生される。
【0039】
すなわち、対向する個々の攪拌羽根105a,105bを逆回転することによって一方の攪拌羽根105aが冷却油102の吸引作用を行うと共に、対向する他方の攪拌羽根105bによって冷却油102の排出作用が行われる。
これによって、攪拌装置104bから攪拌装置104aに向かう循環流102a,102bが起生され、加熱後の歯車Wは循環流102a,102bが形成されている冷却油102内に浸漬される。
この循環流102a,102bは、支持台16の下降停止位置において前記昇降軸線18を横切るように複数の歯車Wの間隙を通過する。
【0040】
冷却槽100内で起生される循環流102a,102bは、図4に示すように所定間隔を保ってパレット80上に複数段に積載された歯車W1,W2,W3の間隙を、昇降軸線18に対し水平に横切る方向に通過する。
この状態で、冷却油内でエレベータ15を約10分間停止させて歯車Wの焼入処理がなされると、再び約7〜8秒間で元の搬出パージ室14まで上昇し、前記搬出パージ室14から搬出用の搬送装置220上に搬出される。
【0041】
このように、パレット80上に積層された個々の歯車W1,W2,W3間を循環流102a,102bが、横方向に通過することで循環流102a,102bの流速差が減少するので、上下段歯車W1,W2,W3の焼入歪差を低減することができる。
【0042】
次に、前記パレット80上に複数の歯車Wを所定の間隔を保つように安定した姿勢で積層状態を保持する位置規制治具90に付き図5図6を参照して説明する。
図5(a)はパレット上に平置き状態で積層載置される歯車Wを所定間隔毎に支持する位置規制治具90を示す図、(b)は(a)のB−B断面図、図6(a)はパレットの平面図、(b)は(a)のC−C断面を示す図であって、焼入条件に応じてパレット上に積層載置される歯車Wの間隔を長さの異なる円筒カラーによって調整可能とした態様を示す説明図である。
【0043】
図5(a)、(b)において、位置規制治具90は、パレット80上に立設した支柱(図6参照)に挿通支持されて複数の歯車Wを同軸上に重ねて保持するもので、中心部に挿通孔93が形成された内輪92と、内輪92の外周に120度毎に配置された3本のアーム95a,95b,95cに連結される外輪94とが同心円上に配置されており、3本のアーム95a,95b,95cの略中間上面には歯車Wの取付け孔Waの内周に挿嵌する求心用の突起部92a,92b,92c(クロスハッチ部)が突設している。
【0044】
また、前記3本のアーム95a,95b,95cが存在しない前記外輪94の上面には、前記各突起部92a,92b,92cに対向する前記各アーム95a,95b,95cの延長線上に3つの円弧状当接片94a,93b,94c(クロスハッチ部)が突設している。
このように形成された位置規制治具90は、仮想線で示される歯車Wを保持するに際し各突起部92a,92b,92cを歯車Wの取付け孔Waの内周に挿嵌させた状態で、歯車Wの下面Wbが当接片94a,93b,94cの上端で当接支持されるようになっている。
【0045】
図6(a)において、パレット80の上面には複数(4個)の嵌合孔82が形成され千鳥状に配置されている。これら嵌合孔82には円筒状のスリーブ84が挿嵌されており、当該スリーブ84には円形断面の支柱85が垂直に立設保持されている。
【0046】
次に、パレット80上面に複数の歯車Wを積層支持する手順に付き図6(b)を参照して説明する。
図6(b)の右側に示す図は、歯車W間の間隔を広げて複数の歯車Wを支柱85に積層支持した状態を示している。
先ず、支柱85の上端から下方に挿通した短尺の円筒カラー96は、スリーブ84上面に当接支持される。次いで、支柱85の上端から歯車Wを保持した位置規制治具90を挿通下降させて前記円筒カラー96の上端面に当接保持させる。
【0047】
最下段に位置する歯車Wを保持した位置規制治具90の内輪92上面には、支柱85の上端から挿通した長尺の円筒カラー97が当接保持されると、該円筒カラー97の上端面に次の段に位置する歯車Wを保持した位置規制治具90の内輪92下面が当接保持される。
以下、同様の手順により歯車Wを保持した位置規制治具90は、一定長さの円筒カラー97により所定間隔毎に支柱85上に挿通された状態で最上段まで積層保持される。
【0048】
図6(b)の左側に示す図は、歯車W間の間隔を狭めて複数の歯車Wを支柱85に積層支持した状態を示している。
先ず、支柱85の上端から下方に挿通した短尺の円筒カラー98は、スリーブ84上面に当接支持される。次いで、支柱85の上端から歯車Wを保持した位置規制治具90を挿通下降させて前記円筒カラー98の上端面に当接保持する。
最下段に位置する歯車Wを保持した位置規制治具90の内輪92上面には、支柱85の上端から下方に挿通した中尺の円筒カラー99が当接保持されると、該円筒カラー99の上端面に次の段に位置する歯車Wを保持した位置規制治具90の内輪92下面が当接保持される。
【0049】
以下、同様の手順により歯車Wを保持した位置規制治具90は、一定長さの円筒カラー99により所定間隔毎に支柱85上に挿通された状態で最上段まで積層保持される。
このようにして、左図に示されるパレット80には、焼入条件に応じて長さの異なる円筒カラーを交換することで右図に示される間隔より短い間隔で複数の歯車Wが積層保持されることになる。
【0050】
このように、パレット上に多段に積層支持される複数の歯車W間に位置規制治具90を介在させることで、平置き状態でパレット上に支持される複数の歯車Wが安定した姿勢で
積層保持されるので、焼入条件に応じて攪拌装置の回転制御が可能となり歯車Wの形状に応じた焼入速度を選択することができる。
また、多段に積層保持される複数の歯車W間に介在される円筒カラーを長さの異なる円筒カラー97、99に交換できる積載態様を採ることにより、焼入条件によって複数の歯車W間の間隙を抑制する配列を採用することで、歯車Wの内側薄肉部と外側厚肉部を同等の焼入性能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、載置台に平置き状態で多段に積層載置した被処理物を冷却槽内に浸漬して冷却する際に上下段での焼入歪差を低減することができるので、被処理物の焼入装置へ適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 焼入装置
15 エレベータ(昇降装置)
18 昇降軸線
80 パレット(載置台)
85 支柱
90 位置規制治具
92a,92b,92c 突起部
93 挿通孔
94a,93b,94c 当接片
96〜99 円筒カラー
100 冷却槽
102 冷却油
102a,102b 循環流
104a,104b 攪拌装置
105a,105b 攪拌羽根
108a〜108d ダクト(流路)
112、113 側板内面(内部側壁)
W 歯車(被処理物)
Wa 取付孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6