(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記段面の上に置かれたセパレータの前記段面での移動可能な距離の最大値よりも、前記移動可能な方向に係る前記段面の長さが大きく設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)実施形態の概要
凹部13(
図1(a))は、段部51を有する2段構造となっている。そして、段部51の上に置かれたセパレータ7によって、上下の電極5、6が隔てられている。
セパレータ7の大きさは、セパレータ7が最大限ずれたとしても、段部51による開口部がセパレータ7によって覆われる大きさに設定されている。
そのため、セパレータ7がずれたとしても、電極5と電極6が短絡する不具合を効果的に抑制することができる。
また、凹状容器2は、シート材41〜44を積層して焼成することにより形成する。シート材43、44に凹部13の形状に対応する開口部を形成しておくことにより、容易に凹部13、及び段部51を形成することができる。
【0014】
(2)実施形態の詳細
(第1の実施の形態)
本実施の形態の電子部品を構成する電気化学セルについて図面を参照して説明する。なお、以下では、実施の形態として電気二重層キャパシタを例として説明するが、電子部品を非水電解質電池など、他の種類の電気化学セルとすることも可能である。
【0015】
図1(a)は、第1の実施の形態に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。電気二重層キャパシタ1は直方体形状を有しており、大きさは、例えば、高さが1[mm]以下、縦が2.5[mm]程度、横が3.0[mm]程度の直方体形状を有している。
【0016】
電気二重層キャパシタ1、中段に段部51が形成された凹部13を有する凹状容器2、下側の面に金属層15が形成された封口板3、負極として使用される電極5、正極として使用される電極6、セパレータ7、接合金属層8、金属層9、金属層11、端子10、端子12、及び、凹部13に封入された電解質(図示せず)などを用いて構成されている。
端子10、12は、表面実装のための端子であり、以下では、端子10、12の側を下方向、封口板3の側を上方向とする。
なお、
図1では、部材の接合関係が分かりやすいように、電極5、セパレータ7、電極6の間に間隙を図示しているが、凹部13にこれらの部材を隙間なく詰め込んでもよい。
【0017】
凹状容器2は、例えば、アルミナ成分を90wt%以上含有するセラミックスで構成されており、グリーンシートと呼ばれる柔軟性を有するセラミックスのシート材41〜44を複数枚重ねて焼成して一体化することにより形成される。焼成後の各シートの厚さは、100〜300μmとすることができ、側面の壁の厚さは、100〜500μmとすることができる。
図1(a)では、シート材41〜44の接合部を破線で示してある。
シート材43とシート材44には、開口部が形成されており、シート材43の開口部は、シート材44の開口部よりも、段部51の大きさだけ小さく形成されている。
このため、シート材41〜44を積層して焼成すると、段部51が形成された凹部13を有する凹状容器2が形成される。
このように、凹状容器2は、シート材を積層して形成するため、段形状を容易に形成することができる。
【0018】
金属層11は、シート材42の表面にタングステン(W)等の金属粉末を含有するペーストをあらかじめ導体印刷し、凹状容器2を焼成することにより形成される。金属層11のうち、電極6と接する部分は集電体として機能する。
更に、金属層11は、シート材42の表面に沿って凹状容器2を貫通し、凹状容器2の側面を経て端子12に接続している。当該凹状容器2の外側の側面に形成された部分は、凹状容器2を積層した後、追加形成されたものである。金属層11は、電極6と端子12を電気的に接続している。
金属層9も同様に凹状容器2の側面に形成され、接合金属層8と端子10を電気的に接続しており、電極5と端子10は、金属層15、接合金属層8、金属層9を介して電気的に接続している。
凹状容器2の金属層9が形成された側面では、シート材41〜46の上面に補助電極が設けてあり、側面での電気的接続がより確実となるようにしている。
【0019】
金属層11の導体印刷は、例えば、タングステンなどの耐食性があり、凹状容器2の焼成に耐えうる高融点の金属材料を含むインキでスクリーン印刷することにより行われる。
タングステンは、融点が高く、酸化しにくく、セラミックス面との適度な密着強度を有し、焼成後も実用的な電気抵抗を有するため、凹部13に形成する電極として適している。しかし、タングステンを正極の集電体として使用する場合、電解質に接した状態で電圧を印加すると電解質中に電気化学的に溶け出すため、金属層11の表面のうち、少なくとも電解質に接する部分には、保護膜(導電性保護層)が必要である。
タングステンを使用した金属層11に導電性保護層を形成する場合、アルミニウム、チタン、ニオブなどの耐食性のよい金属を、真空蒸着法やRFスパッタリング法などの厚膜法などで形成する。また、導電性保護層として、導電性の樹脂を用いることも可能である。
なお、導電性保護層としては、Au、Cuによる湿式メッキを用いることで形成してもよい。さらにCu合金系メッキやAu合金系メッキにより形成してもよい。
本実施形態及び変形例では、金属層9、11に対する導電性保護層(保護膜)についての図示を省略するが、上記の通り形成されている。
【0020】
電極6は、金属層11の上面に炭素を含有する導電性接着剤によって接合している。
電極6は、活性炭を主成分とする電極活物質をシート状に形成して矩形に切断することにより形成されており、例えば、天然素材ではヤシガラ、人造材料では、石炭ピッチ、石油ピッチやフェノール系樹脂の炭化物をそれぞれ水蒸気や化学薬品または電気学的に賦活したものが用いられる。
【0021】
凹部13の開口部の端部には、封口板3と凹状容器2を接合する金属層である接合金属層8が形成されている。
接合金属層8は、開口部の端部の全周に形成されたメタライズ層と、メタライズ層の上に形成されたロウ材(銀ロウ、金ロウ、銀−銅ロウなど)の層から構成されている。接合金属層8は、封口板3と凹状容器2の間の気密性を確保するためシールリングと呼ばれることもある。
【0022】
接合金属層8は、例えば、コバール(Co:17、Ni:29、Fe:54の比率の合金)で構成されており、コバールの表面はニッケルや金、スズ等の金属を単体または複数種を重ねてメッキが施されており、コバール製の金属リングを凹状容器2の端部に設置して、前出の銀ロウ等のロウ材を溶着することにより固着される。
後述するように、封口板3を凹部13の開口部に設置して加熱すると、金属リング表面のニッケルがロウ材として溶けて、封口板3の金属層15と融着し、凹部13が封口板3により封口される。
【0023】
凹状容器2の側面から上面にかけて、接合金属層8と端子10に接続する金属層9が形成されており、これによって、接合金属層8と端子10が導通する。金属層9は、金属層11と同様の材質で構成されており、接合金属層8はシート材41〜44を積層した後に形成される。
【0024】
端子10、12は、タングステンを含むインキなどで導体印刷して焼成した後、その表面に金やニッケル、スズなどをメッキして形成されている。メッキには、電解メッキ、無電解メッキなどがあり、また、真空蒸着などの気相法によって形成してもよい。
これにより、端子10、12の高いハンダ濡れ性が確保され、電気二重層キャパシタ1を基板に良好に表面実装することができる。
なお、本実施の形態では、端子10、12を凹状容器2の外側底面部に設けたが、外側側面部に形成したり、あるいは、外側底面から側面に連続して形成してもよい。
【0025】
封口板3は、コバールなどで構成された金属部材である。コバールは、セラミックスと熱膨張率がおおよそ等しいため、リフロー時に電気二重層キャパシタ1を加熱した場合に封口板3と凹状容器2の間に発生する応力を抑制することができる。
封口板3の下側の面には、封口板3を接合金属層8に良好に接合するために、ニッケルメッキによる金属層15が形成されている。
金属層15が接合金属層8にロウ付けされると封口板3が凹部13の開口部に物理的、及び電気的に接合する。
【0026】
ロウ付けは、封口板3を加圧しながら加熱することにより溶解し、封口板3と凹状容器2を接合する。
より具体的には、ローラ電極を封口板3の縁部に適当な圧力で接触させ、通電しながら回転走行させるパラレルシーム溶接を用いることができる。接触抵抗により接合金属層8が加熱され、加圧と加熱が行われる。パラレルシーム溶接以外にも、レーザーを透過することができるガラス等で封口板3を加圧しながらパルスレーザによる加熱溶接も可能である。
【0027】
パラレルシーム溶接を行う場合、接合金属層8と封口板3の相性がよい材料を選択するのが望ましく、例えば、接合金属層8に電解ニッケル、無電解ニッケルを用いた場合は、封口板3は、コバールに電解ニッケル、または無電解ニッケルを施したものを用いる。これにより、必要以上に溶接パワーを上げなくて済む。
また、金属層9と接合金属層8を接合するロウ材として、金ロウ、銀ロウ、銀−銅ロウなどのロウ材やハンダ材を用いることも可能である。
【0028】
金属層15の下側の表面には、電極活物質で構成された電極5が炭素を含有する導電性接着剤により接合している。
電極5の材質と形状、大きさは電極6と同様である。金属層15の電極5と接している部分は、集電体として機能する。そして、金属層15の電極5と接していない部分は、集電体と接合する導電体として機能している。
このようにして、電極5は、金属層15、接合金属層8、金属層9を介して端子10に電気的に接続している。
【0029】
電極5、6は、凹部13と封口板3により構成される空洞部内で対面しており、電極5、6の間には、電極5、6の接触による短絡を防止するためのセパレータ7が設置されている。
セパレータ7の材質としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、変性PEEKなどの耐熱性樹脂などの表面に親水性を付与した材料からなる不織布、やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製や前出の樹脂の多孔製フィルム、またはガラス繊維を用いることができる。またセルロース系のセパレータを用いてもよい。
セパレータ7は、電極5と電極6との短絡防止機能を備える他、より多くの電解質を含ませておく機能、すなわち、電解質の高い保液機能を備えるいことが好ましい。本実施形のセパレータ7としては、PTFEを使用するが、保液機能の観点からガラス繊維が最も望ましい。
【0030】
段部51の高さは、電極6の上面付近より上側に形成されている。そして、セパレータ7の大きさは、段部51による開口部よりも大きく設定されており、セパレータ7の端部は、段部51の上に設置されている。
また、後述するように、セパレータ7の大きさは、セパレータ7が段部51の上でスライドしても段部51から脱落しない大きさに設定されている。
このようにセパレータ7の大きさを設定すると、セパレータ7が最大限移動したとしても、段部51による開口部が常にセパレータ7によって覆われており、電極5と電極6が短絡しない。
図1(b)のように、壁面がテーパ形状であると、接合金属層8と封口板3を溶着する際の荷重によっても割れにくく、電極も挿入しやすくなる。テーパの角度は、1度〜5度がよい。なお、図示しないが他の壁面もテーパ形状に形成してある。
【0031】
更に、凹部13と封口板3より構成される空洞部内には電解質が封入されている。
電解質は、例えば、PC(プロピレンカーボネート)やSL(スルホラン)などの非水溶媒に(CH3)・(CH4)3N・BF4などの支持塩を溶かした溶液で構成されている。このように本実施の形態では支持塩として液体を用いるが、ゲル状や固体状の電解質を併用または単体で用いることも可能である。封止方法にも依存するが、電解質として、液体の溶媒を用いる場合は、沸点が200℃以上あることが望ましい。
【0032】
更に、封口時に印加された熱によって蒸気圧が上がらないことが望ましい。電解液中に沸点が100℃未満の低沸点の溶媒を添加することはできるが、少なくとも樹脂の融点における蒸気圧が0.2MPa−G以下が望ましい。電解液を注入する場合、電解液を凹部13に注液後、減圧や加熱や加圧を単独又は組み合わせることによって、電解質を電極の細部にまで含浸させることができる。
【0033】
以上のように構成された電気二重層キャパシタ1を、端子10を負極、端子12を正極として基板に表面実装し、例えば、携帯電話のメモリやクロックのバックアップ電源として使用することができる。
また、Li4Ti5O12、Li4Mn5O12,LiCoO2などの正極活物質を有する電極や、Li−Si−O、Li−AL等を含有する負極、更に、PCにLiBF4を1M溶解した電解液などを用いることで、リチウムイオン電池を構成することができる。この時、各活物資に、導電助剤や結着剤を併用できる。
この場合、携帯電話は、主電源の電池を装着すると同時に電気二重層キャパシタ1を充電しておき、電池交換時や主電源の電圧が低下した場合に、電気二重層キャパシタ1に蓄積された電荷を放電してメモリに電力を供給したり、クロック等の機能を保持する。
【0034】
以上では、凹状容器2をアルミナを主成分とするセラミックス(HTCC)で構成したが、例えば、耐熱性樹脂、ガラス、セラミックスガラス、低温同時焼成セラミックス(LTCC)などの耐熱材料で構成することも可能である。
凹状容器2をガラスやガラスセラミックスで形成する場合は、低融点のガラスやガラスセラミックスに銀を主成分とする低融点な金属材料を導体印刷により配線を施し、積層した後、低温で焼成する。
【0035】
(変形例1)
図1(c)は、第1の実施の形態に係る変形例1を説明するための図である。
先に説明した第1の実施の形態では、電極5、6の互いに面する面が同じ大きさに設定されていたが、変形例1では、電極5が大きく設定されている。
電極5の電極6と面する面(下側の面)は、段部51で形成される開口部よりも大きく設定されている。
そして、電極5の下側の面と段部51の間の距離は、セパレータ7の厚さよりも小さくなるように設定されている。
【0036】
このため、凹部13を封口板3で封口すると、セパレータ7の端部61が段部51と電極5の下側の面で挟まれて固定される。
このように、セパレータ7の端部61を段部51の上面と電極5の下面で挟んで固定するため、セパレータ7のずれを防止することができる。
更に、加熱によってセパレータ7が縮む場合であっても、端部61を固定することにより縮みを抑制することができる。
【0037】
(変形例2)
図2は、第1の実施の形態に係る変形例2を説明するための図である。
この例では、電極5の下側の面は、電極6の上側の面よりも小さく形成されている。
この場合、正極電極(電極6)の方が負極電極(電極5)よりも大きいため、以下のように蓄電に有利となる。
【0038】
電気二重層キャパシタは、例えば、電極5に0V、電極6に2.6Vを越える電圧を印加する。この時、電極5は、マイナス側に電圧が印加されるので、カチオンが吸着し、電極6は、プラス側に電圧が印加されるので、アニオンが吸着する。
この電圧を印加し続けることで、電解液中に溶媒や電解液の支持塩を構成するカチオンやアニオンが分解する。各電極に印加される電圧をポテンシャルウインドー内に収めることで、この電解液の構成成分の分解を抑制・回避できる。
ポテンシャルウインドーに納める方法として、両極に印加される電圧を保ったまま、電位をシフトする方法があり、電極に吸着するイオンの密度をさげることによって、電位をシフトさせることができる。
【0039】
電極に吸着するイオンの密度を下げるのは、一方の電極の比表面積を他方と比較して、変化させることで実現が可能である。つまり、上述の変形例2の様に、単位体積当たりの比表面積の電極を用いた場合、電極5の下側の面は、電極6の上側の面よりも小さく形成ことで実現可能である。
この電位をシフトさせることによって、両電極に印加される電圧をポテンシャルウインドー内に収めることができ、電解液の劣化を抑え、安定した品質のキャパシタを得ることができる。
【0040】
図3は、セパレータ7の大きさを説明するための図である。
ここで、セパレータ7が、段部51a、51bの上に設置されているとし、セパレータ7の移動方向が段部51a、51bが形成された方向であるとする。図に示したように、セパレータ7は、段部51a、51bによる開口部よりも大きく設定されている。
また、セパレータ7と凹部13の壁面の間の距離をL1、L2とし、段部51a、51bの長さ(凹部13の壁面から突出している距離)をM1、M2とする。
この場合、セパレータ7が段部51a、51bの上をスライドしても、セパレータ7が常に段部51a、51bによる開口部を覆っている長さ、あるいは、段部51a、51bから脱落しない長さは、L1+L2>(M1とM2のうち小さい方)・・・式(1)、である。
図3の例では、M1<M2であるため、式(1)は、L1+L2>M1となる。
なお、セパレータが収縮する場合などを考慮し、理論上必要な最低値よりもセパレータ7を大きめにつくって余裕を持たせている。
【0041】
図4の各図は、段部51の形成パターンを説明するための図である。
図に示したように、上方から見ると、凹状容器2、及び凹部13は、矩形形状を有している。
なお、円形に形成することもできるが、基板上に設置した場合にデッドスペースが生じるため、電気二重層キャパシタ1では、矩形形状を採用した。
上方から見ると、接合金属層8(シールリング)は、Rを持つロの字の形状。厚みは約0.15mm。金属層9は上面にニッケルメッキの上に、防錆のため金メッキが施されている。
【0042】
図4(a)は、凹部13の全周に段部51を形成した例である。全周に段部51を形成することにより、セパレータ7がどの方向に移動しても段部51による開口部がセパレータ7に覆われ、電極5と電極6の短絡を効果的に防止することができる。
図4(b)は、矩形形状の長い方の辺に段部51を設定した例であり、
図4(c)は、矩形形状の短い方の辺に段部51を設定した例である。
このように、矩形形状の2対の辺のうち、1対に段部51を形成すると、電極6の設置面積を広くすることができ、電極6を大きくすることができる。
図5(d)は、凹部13の四隅に段部51を形成した例であり、
図5(e)は、凹部13の4辺に四隅を除いて段部51を形成した例である。
【0043】
(第2の実施の形態)
図6(a)は、第2の実施の形態に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。
本実施の形態では、電極5と端子10、及び、電極6と端子12を凹状容器2の本体内部を貫通する貫通電極21、22によって接続する。
以下、貫通電極21、22について説明する。なお、貫通電極は、タングステン(W)製で、VIAとも呼ばれる。
【0044】
凹状容器2の凹部13の下には、貫通電極22用の孔のあいたシート材41、42を積層することにより、凹部13の底面と凹状容器2の底面に開口部を有する直径が約0.1mmの貫通孔が形成されている。
そして、当該貫通孔には、金属層11と端子12を電気的に接続する円柱形状の貫通電極22が形成されている。
貫通電極22の外径と貫通孔の内径は同じに設定されており、貫通電極22と貫通孔の内壁の間には間隙が生じないように、貫通孔の断面積よりも大きな中間電極を形成している。
【0045】
貫通電極22は、この貫通孔に予め金属タングステンの粒子を含有するペーストを流しいれ、容器の焼成と同時に形成することもできる。さらに、導電ペーストを注入して固化させたり、あるいは、金属製の棒材を挿入することにより形成される。金属の材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレススチール、タングステン、ニッケル、銀、金、あるいは、炭素を含む導電性樹脂などを用いることができる。電極6は、保護層を介した金属層11、貫通電極22を介して端子12に電気的に接続している。
【0046】
また、シート材41〜44には、それぞれ直径が約0.1mmの貫通電極21用の孔があいており、シート材41〜44を積層することにより、凹部13を囲む側壁内に、凹部13の開口部の端部と凹状容器2の底面に開口部を有する貫通孔が形成されている。
そして、当該貫通孔には、接合金属層8と端子10を電気的に接続する円柱形状の貫通電極21が形成されておりこれによって、接合金属層8と端子10が電気的に接続している。このため、電極5は、金属層15、接合金属層8、貫通電極21を介して端子10に電気的に接続する。
貫通電極21の外径と貫通孔の内径は同じに設定されており、貫通電極21と貫通孔の内壁の間には間隙が生じないようになっている。
貫通電極21の材質や形成方法は貫通電極22と同様である。
【0047】
第1の実施の形態の金属層9、11のように、凹状容器2の側面に配線が形成されている場合、電気二重層キャパシタ1を基板に表面実装する際に、ハンダが金属層9、11を這い上がり、短絡の原因となる可能性が考えられるが、本実施の形態では、電極5と端子10、及び電極6と端子12を接続する配線が、凹状容器2の本体内部に形成されているため、ハンダの這い上がりを防止することができる。
また、貫通電極22の貫通孔の両端が金属層11、端子12により封口されているため、リフロー時に加熱して凹部13内の電解質の蒸気圧が上がった場合でも、電解質の漏れを防ぐことができる。
【0048】
なお、端子10、12の端部は、凹状容器2の底面の端部まで形成せず、端子10、12の端部と凹状容器2の底部の端部が揃っていない。
このように構成すると、大判のシート材に多数の電気二重層キャパシタ1を一度に作成し、分割して個々の電気二重層キャパシタ1を取り出す場合に(チョコレートブレークと呼ばれることがある)、分割に伴って端子10、12が剥がれたり、割れたりするのを防止することができる。なお、これは一例であって、端子10、11を凹状容器2の底面の端部まで形成してもよい。
あるいは、端子10、11を底面から側面に連続して形成してもよい。この場合、端子10、12の端部が凹状容器2の側面にかかって、基板に対して垂直となっている。
このため、電気二重層キャパシタ1をリフローすると、ハンダが端子10、12の垂直部分を這い上がって固化し、電気二重層キャパシタ1と基板との接合強度が向上する。
【0049】
(変形例1)
図6(b)は、第2の実施の形態の変形例1に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。
本変形例では、貫通電極22について、シート材42での直径をシート材41での直径よりも大きく設定してあり、リフロー時に加熱して凹部13の圧力が上昇した場合であっても、当該圧力が貫通電極22に作用し、貫通電極22が凹状容器2から抜け落ちることを防止することができる。
同様に、貫通電極21について、シート材44での直径をシート材41〜43での直径よりも大きく設定してある。
【0050】
(変形例2)
図7は、第2の実施の形態の変形例2に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。
凹状容器2は、シート材41〜45を積層して形成されている。
本変形例では、シート材43の開口部よりもシート材44の開口部を大きく設定し、更に、シート材44の開口部よりもシート材45の開口部を大きく設定してある。
これによって、シート材43によって、段部51が形成され、更に、シート材44によって段部52が形成されている。
このように、本変形例では、凹部13に2つの段部51、52を設けているが、凹状容器2は、シート材を積層して形成するため、このように更に複雑な段部も容易に形成することができる。
【0051】
段部51には、第1の実施の形態と同様にセパレータ7が設置されている。
段部52の上側の面には、貫通電極21側の段部52の辺に金属層16が形成されている。金属層16は、金属層11と同様の材質、製法により形成されている。
そして、金属層16の上には、電極5の一方の端部が接合している。
なお、電極5の他方の端部と段部52の間には間隙が設けてあり、当該間隙を介して電極5と電極6の間に電解質が注入される。
【0052】
金属層16は、シート材44の表面に沿って凹状容器2の本体内部に侵入しており、凹状容器2の本体内部で貫通電極21に接合している。
このため、電極5は、金属層16、貫通電極21を介して端子10に電気的に接続している。
変形例2では、封口板3を集電体として使用しないため、封口板3を樹脂製のシート材などの絶縁部材で形成することができる。
【0053】
そのため、シート材41〜45を樹脂製のシート材を積層して形成し、同じく樹脂製のシート材である封口板3で封口する構成とすることも可能である。
樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を用いることができる。
【0054】
また、電極5の上側の面にアルミ箔を設置すると共に、当該アルミ箔の端部を金属層16に接合することにより、電極5の上側の面にアルミ箔の集電体を設けて電気二重層キャパシタ1の蓄電・放電機能を高めることもできる。
【0055】
次に、セパレータ7に関する変形例について説明する。
なお、以下に説明するセパレータ7の変形例については、段部51上に配置する場合を例に説明するが、段部51が形成されていない電気二重層キャパシタ(例えば、
図10参照)に対しても適用することが可能である。
【0056】
図8は、第1の実施形態とその変形例1、2、及び第2の実施形態とその変形例1に対する、他の変形例3を説明するための図であり、セパレータ7と電極5について表したものである。
図8(a)は、
図1(a)で説明した各実施形態や変形例に適用した基本形状のセパレータ7と電極5を表したものである。この
図8(a)に示すように、基本形状のセパレータ7は平板形状をしている。なお、
図1(a)では、電極5がセパレータ7から離れた状態で表示されているが、
図8(a)に示すように電極5はセパレータと当接した状態であったり、電極5がセパレータを加圧している状態であってもよい。
【0057】
これに対して変形例3のセパレータ7では、
図8(b)、(c)に示すように、平板部7aとその外縁に形成された壁部7bとから形成されている。そしてセパレータ7の平板部7aで電極7と当接する(
図1(a)のように離れていても良い)一方、壁部7bが電極5の外周側面と対向するようになっている。
なお、壁部7bについては、平面部7aの外周全面にわたって形成されていても良く、一部について形成されていてもよい。一部で形成される場合としては、平面部7aの対向する2つの辺全体に形成する場合のほか、全ての辺に形成するが辺の全長ではなく一部に形成する場合、何れか1つの辺全体に形成する場合、何れかの辺の一部に形成する場合などがある。
この変形例3によれば、電極5と電極6との接触を、より確実に回避することができる。
【0058】
図8(b)は、変形例3のうち、セパレータ7の外縁部を湾曲したものである。この
図8(b)のように外縁部を湾曲させる場合のセパレータ7の材質としては、湾曲させた形状を維持する材質が好ましく、例えば、PTFEが適している。
図8(c)は、変形例3のうち、セパレータ7に凹部が形成されたものである。この場合、セパレータ7の凹部の内側底面外周部に湾曲部が形成されていても、いなくてもよい。この
図8(c)の凹部については、電極5の圧縮力によってセパレータ7との当接部とその周辺部が窪むことで形成されたものである。このように電極5の圧力で窪むセパレータ7の材質としては、例えば、不織布、セルロース系材料、ガラス繊維等が使用可能である。但し、セパレータ7の窪みは電極5の圧力により形成されるのではなく、予めセパレータ7に窪み部を形成しておき、その底部7aに電極5を当接させるようにしてもよい。
【0059】
なお、
図8(b)、(c)に示したセパレータ7の壁部7bは、電極5の厚さと略同一の高さに形成した場合について表しているが、壁部7bの高さとしては、電極5の厚さよりも低くする事も可能である。
すなわち、電極5の厚さをm1とした場合、壁部7bの高さm2は、m2≦m1であり、例えば、m2=(1/2)m、(2/3)m、(1/4)m、(1/5)mとしてもよい。
【0060】
図9は、第1の実施形態とその変形例1、2、及び第2の実施形態とその変形例1、2に対する、他の変形例4を説明するための図である。
図9(a)は、
図4や
図5で説明した各段部51上に配設される基本形状のセパレータ7を上からみた状態を表したもの(上面図)である。この
図9(a)に示すように、基本形状のセパレータ7は、凹部13の形状に合わせた形状、すなわち、長方形状をしている。
これに対して変形例4のセパレータ7では、凹部13内において電極5側と電極6側とを連通する連通部(連通手段)を設けたものである。この連通部は、電気二重層キャパシタを形成する際にセパレータ7の下側に入り込んだ気体を抜くためのものである。
連通部としては、
図9(b)、(c)に示すようにセパレータ7の隅に切欠き7dを形成する場合と、
図9(d)に示すように隅にガス抜き用の貫通孔7eを形成する場合がある。
なお、変形例4のセパレータ7を段部51上に配置する場合、連通部(切欠き7d、貫通孔7e)は、段部51からずれた位置(段部51と重ならない位置)に形成する。
【0061】
図9(b)は1箇所に、
図9(c)は4隅に、それぞれC面取りにより切欠き7dを形成したものであるが、R面取りにより形成してもよい。また、2箇所(平行する2隅、対角上の2隅)に、C面取りやR面取りによる切欠き7dを形成してもよい。
図9(d)は、1箇所にガス抜き用の貫通孔7eを形成したものである。この
図9(d)では断面形状円形の貫通孔としたが、断面形状は楕円、四角、三角など他の形でもよい。また、切欠き7dと同様に、2箇所、3箇所、4箇所の何れでもよい。2箇所の場合平行する2隅や、対向する2隅でもよい。
なお、
図9に示した各連通部はセパレータ7の隅に形成したが、何れかの片部に切欠きを設けたり、貫通孔を設けるようにしてもよい。
【0062】
なお、変形例3と変形例4を組み合わせたセパレータ7とすることも可能である。すなわち、セパレータ7に壁部7bと連通部の両方を形成することも可能である。この場合、変形例3について説明した各例のいずれと、
図4について説明した各例のいずれとを組み合わせてもよい。
【0063】
以上に説明した実施の形態、及び変形例によって、次のような効果を得ることができる。
(1)シート材を積層して凹状容器2を形成することにより、電極5、6を収納する凹部13に段部51を容易に形成することができる。
(2)凹部13に段部51を設けることにより凹状容器2の内部構造を2段にし、セパレータ7の端部が常に段部51の上面に接することで、セパレータ7に対して上下にある電極5、6を完全に分離することができ、セパレータ7がずれても短絡しないようにすることができる。
(3)第1の実施の形態の変形例1では、セパレータ7が熱などにより収縮しても電極5と段部51によってセパレータ7の端部が挟まれているため、電極5と電極6の短絡を低減することができる。
(4)電極5と電極6の短絡を効果的に抑制することができるため、電気二重層キャパシタ1の歩留まりを向上させることができる。
(5)凹状容器2は、凹部13が開放している上段の面から下段の面に至る間に、更に、階段状の面が下段の面と平行な中段の面を有するため、中段の面をセパレータ7の設置に用いることができる。
【0064】
以上に説明した実施の形態、及び変形例によって、次のような構成を得ることができる。
凹状容器2は、シート材41〜44を積層して形成され、凹部13によって形成される空洞部は内壁に段部51を有するため、シート材を積層して形成され、内壁に段部が形成された空洞部を有する容器として機能している。
段部51の上面にセパレータ7が置かれ、凹状容器2が上下に二分されているため、セパレータ7は、前記段部の段面に接して設置され、前記空洞部を2つの領域に隔てるセパレータとして機能している。
電極5は、前記セパレータの一方の側の領域に設置された第1の電極として機能し、電極6は、前記セパレータの他方の側の領域に設置された第2の電極として機能している。
金属層15、接合金属層8、金属層9、及び端子10は、前記第1の電極に接続し、前記容器の外部に導通する第1の導電体として機能し、金属層11、端子12は、前記第2の電極に接続し、前記容器の外部に導通する第2の導電体として機能する。
また、凹部13に封入された電解質は、前記第1の電極、及び前記第2の電極に接する電解質として機能している。
【0065】
第1の実施の形態の変形例1では、セパレータ7が段部51と電極5に挟まれて固定されているため、前記セパレータの端部の少なくとも一部は、前記段面と前記第1の電極に挟まれて固定されている。
【0066】
段部51を凹部13の内壁全周に形成し、電極5と段部51でセパレータ7の端部を全周に渡って固定することができ、この場合、前記セパレータの端部は、全周に渡って前記段面と前記第1の電極に挟まれて固定されている。
【0067】
また、セパレータ7の大きさは、式(1)を満たしており、これによって、前記段面の上に置かれたセパレータの前記段面での移動可能な距離の最大値よりも、前記移動可能な方向に係る前記段面の長さが大きく設定されている。
更に、電極5が、金属リチウムによって活性化された酸化ケイ素(50wt%)と導電助剤(40wt%)とポリアクリル酸系の結着剤(20wt%)で構成された電極シート、電極6が、リチウムーマンガンー酸素の元素がスピネル型の結晶構造を有する活物質(85wt%)と導電助剤(10wt%)とPTFE系の結着剤(5wt%)で構成された電極シート、ガラス繊維で出来たセパレーター7と、1MのLiN(SO2CF3)2をPCに溶解して電解液で、構成される電池を提供することもできる。ここで、正極と負極の大きさは、長さ1mm×幅1.5mm×厚み0.2mmとすることができる。
【0068】
また、電気二重層キャパシタ1は、例えば、携帯電話のメモリやクロックのバックアップ電源として使用することができる。
この場合、当該携帯電話は、電気二重層キャパシタ1で構成された電子部品と、主電源の電池を装着すると同時に前記電子部品に蓄電する蓄電手段と、メモリやクロックなどの所定の機能を発揮するほかの電子部品と、蓄電した電荷を放電してメモリやクロックに電力を供給するなど、前記蓄電した電荷を用いて前記他の電子部品に電力を供給する電力供給手段を備えた電子装置として機能している。