特許第5828863号(P5828863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5828863
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/344 20060101AFI20151119BHJP
【FI】
   F04C18/344 351L
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-113742(P2013-113742)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-58961(P2014-58961A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-183394(P2012-183394)
(32)【優先日】2012年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】島口 博匡
(72)【発明者】
【氏名】津田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】廣野 幸治
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 達也
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−155985(JP,A)
【文献】 特開2004−027920(JP,A)
【文献】 実公平01−018867(JP,Y2)
【文献】 実開昭56−150886(JP,U)
【文献】 特開昭62−247195(JP,A)
【文献】 特開2002−161882(JP,A)
【文献】 特開2006−291800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回りに回転する略円柱状のロータと、前記ロータを、その外周面の外方から前記ロータを取り囲む輪郭形状の内周面を有するシリンダと、前記ロータに形成されたベーン溝からの背圧を受けて前記ロータから外方に突出自在に設けられた複数枚の板状のベーンと、前記ロータおよび前記シリンダの両端面側にそれぞれ設置された2つのサイドブロックとを有し、
前記ロータと前記シリンダと前記両サイドブロックと前記ベーンとによって仕切られた複数の圧縮室が内部に形成され、各圧縮室が前記ロータの1回転の期間に気体の吸入、圧縮および前記シリンダに形成された吐出部を通じての吐出を1サイクルのみ行うように形成された圧縮機本体、および前記圧縮機本体を覆うハウジングを備え、前記シリンダの内周面の断面輪郭形状が、圧縮行程および吐出行程を吸入行程に対して長くなるように、かつ前記ロータの1回転の期間に、下記(1)から(4)の領域が順次連なるように形成されていることを特徴とする気体圧縮機。
(1)圧縮室の容積が急激に増大する領域
(2)圧縮室の容積が急激に減少する領域
(3)圧縮室の容積減少率が(2)の領域における容積減少率よりも小さくなる領域
(4)圧縮室の容積減少率が(3)の領域における容積減少率よりも大きくなる領域
【請求項2】
前記ロータの回転により前記圧縮室が前記吐出部に臨む以前の段階で前記圧縮室の内部の気体の圧力が吐出圧力に達したときに、前記圧縮室の内部の気体を吐出させる第2の吐出部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。
【請求項3】
前記吐出部と前記第2の吐出部とが連通していることを特徴とする請求項2に記載の気体圧縮機。
【請求項4】
前記ロータの1回転の期間中に前記ベーンの姿勢が水平状態となる2つの回転角度位置に挟まれる回転角度範囲のうち、相対的に下方となる回転角度範囲に、前記シリンダの内周面のうち前記ロータの外周面と最も離れた遠隔部が配置されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の気体圧縮機。
【請求項5】
前記ロータの1回転の期間中に前記ベーンの姿勢が水平状態となる2つの回転角度位置に挟まれる回転角度範囲のうち、相対的に上方となる回転角度範囲に、前記シリンダの内周面のうち前記ロータの外周面と最も近接した近接部が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の気体圧縮機。
【請求項6】
前記相対的に上方となる回転角度範囲のうち、前記近接部を挟んで前記ロータの回転方向の上流側端の回転角度位置での前記ベーンの突出長さと下流側端の回転角度位置での前記ベーンの突出長さとが等しくなるように設定されていることを特徴とする請求項5に記載の気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体圧縮機に関し、詳細には、ベーンロータリ形式の気体圧縮機における吐出効率の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和システムには,冷媒ガスなどの気体を圧縮して,空気調和システム(空調システム)に気体を循環させるための気体圧縮機が用いられている。
【0003】
この気体圧縮機は、回転駆動されて気体を圧縮する圧縮機本体がハウジングの内部に収容され,ハウジングの内部には、圧縮機本体から高圧の気体が吐出される吐出室がハウジングと圧縮機本体とによって区画して形成され,この吐出室からハウジングの外部に高圧の気体を排出するものである。
【0004】
このような気体圧縮機の一例として、いわゆるベーンロータリ形式のものが知られている。
【0005】
このベーンロータリ形式の気体圧縮機は、ハウジングの内部に圧縮機本体が収容されていて、圧縮機本体は、回転軸と一体的に回転する略円柱状のロータと、このロータを、その周面の外方から取り囲む輪郭形状の内周面を有するシリンダと、ロータに形成されたベーン溝に収容され、ロータの周面から外方に突出自在に設けられた複数枚の板状のベーンと、ロータの両端面から突出した回転軸を回転自在に支持する軸受がそれぞれ形成されているとともに、ロータおよびシリンダの両端面に接してこれら両端面を塞ぐサイドブロックとを備え、ロータの外周面とシリンダの内周面と両サイドブロックの各内側の面とによって、気体の吸入、圧縮、吐出が行われる空間であるシリンダ室が形成されている。
【0006】
このシリンダ室は、ロータの周面から突出した各ベーンの突出側先端がシリンダの内周面に接することで、ロータの外周面とシリンダの内周面と両サイドブロックの各内側の面とロータの回転方向に沿って相前後する2つのベーンの面によって、複数の圧縮室に区画される。
【0007】
そして、圧縮室で圧縮された高圧の気体は、シリンダに形成された吐出部を通って圧縮機本体の外部に吐出される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭54−28008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、先行技術文献に記載された気体圧縮機の圧縮機本体は、シリンダの内周面の断面輪郭形状が略真円に形成されていて、ロータの外周面の回転中心がシリンダの内周面の中心からずらされて偏心して配置されることで、内部の容積を変化させる圧縮室を形成しているが、このようにシリンダの内周面の断面輪郭形状を略真円にしたものは、圧縮室の容積が増大する期間と圧縮室の容積が減少する期間とが、ロータの1回転の期間の半々程度となる。
【0010】
そして、圧縮室の容積が減少する圧縮行程や吐出行程の占める期間が全体の期間に対して比較的短い上記先行技術の場合、急激な圧縮による過圧縮が発生したり、吐出流速が速いために吐出圧損が大きくなるなどして、動力の増大を招き、効率(成績係数またはCOP(Coefficient Of Performance:冷房能力/動力))を向上させることができない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、効率を向上させることができる気体圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る気体圧縮機は、シリンダの内周面の断面輪郭形状が、ロータの1回転の期間に、以下の(1)から(4)の領域が順次連なるように形成されていることにより、圧縮行程および吐出行程((2)から(4)の領域に対応した行程)を吸入行程((1)の領域に対応した行程)に対して長く形成し、さらに、圧縮行程後半で容積減少率を小さくすることにより、急激な圧縮による過圧縮の発生を防止するとともに、吐出流速を遅くして吐出圧損を小さくし、動力の増大を防止したものである。
(1)圧縮室の容積が急激に増大する領域
(2)圧縮室の容積が急激に減少する領域
(3)圧縮室の容積減少率が(2)の領域における容積減少率よりも小さくなる領域
(4)圧縮室の容積減少率が(3)の領域における容積減少率よりも大きくなる領域
【0013】
すなわち、本発明に係る気体圧縮機は、軸回りに回転する略円柱状のロータと、前記ロータを、その外周面の外方から前記ロータを取り囲む輪郭形状の内周面を有するシリンダと、前記ロータに形成されたベーン溝からの背圧を受けて前記ロータから外方に突出自在に設けられた複数枚の板状のベーンと、前記ロータおよび前記シリンダの両端面側にそれぞれ設置された2つのサイドブロックとを有し、前記ロータと前記シリンダと前記両サイドブロックと前記ベーンとによって仕切られた複数の圧縮室が内部に形成され、各圧縮室が前記ロータの1回転の期間に気体の吸入、圧縮および前記シリンダに形成された吐出部を通じての吐出を1サイクルのみ行うように形成された圧縮機本体、および前記圧縮機本体を覆うハウジングを備え、前記シリンダの内周面の断面輪郭形状が、圧縮行程および吐出行程を吸入行程に対して長くなるように、かつ前記ロータの1回転の期間に、上記(1)から(4)の領域が順次連なるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る気体圧縮機によれば、効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリコンプレッサの縦断面図である。
図2図1に示したベーンロータリコンプレッサのコンプレッサ部のA−A線に沿った断面図である。
図3】ベーンの先端がシリンダの近接部に接している基準位置(基準線L)から回転角度を説明する、図2相当の概略図である。
図4】ロータの回転角度ごとの圧縮室の容積を示すグラフである。
図5】ロータの回転角度ごとの圧縮室の圧力を示すグラフである。
図6】ベーンが水平の姿勢となる2つの回転角度位置に挟まれる回転角度範囲のうち相対的に上方となる回転角度範囲に近接部を配置した実施形態を示す、図3相当の概略図である。
図7図6のコンプレッサにおける、上方の回転角度位置で水平の姿勢となるベーンを示す詳細図である。
図8図6のコンプレッサにおける、下方の回転角度位置で水平の姿勢となるベーンを示す詳細図である。
図9】ベーンが3枚のコンプレッサの実施形態を示す、図6相当の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る気体圧縮機の具体的な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る気体圧縮機の一実施形態である電動ベーンロータリコンプレッサ100(以下、単にコンプレッサ100という。)は、自動車等に設置された、蒸発器、気体圧縮機、凝縮器および膨張弁を有する空気調和システムにおける気体圧縮機として用いられている。
この空気調和システムは、冷媒ガスG(気体)を循環させることで冷凍サイクルを構成している。
【0018】
コンプレッサ100は、図1に示すように、本体ケース11とフロントカバー12とから主に構成されているハウジング10の内部に、モータ90と圧縮機本体60とが収容された構成である。
【0019】
本体ケース11は、略円筒形状であり、その円筒形状の一方の端部が塞がれたように形成され、他方の端部は開口して形成されている。
【0020】
フロントカバー12は、この本体ケース11の開口側の端部に接した状態でこの開口を塞ぐように蓋状に形成されていて、この状態で締結部材により本体ケース11に締結されて本体ケース11と一体化され、内部に空間を有するハウジング10を形成する。
【0021】
フロントカバー12には、ハウジング10の内部と外部とを通じさせて、空気調和システムの蒸発器から低圧の冷媒ガスGをハウジング10の内部に導入する吸入ポート12aが形成されている。
【0022】
一方、本体ケース11には、ハウジング10の内部と外部とを通じさせて、高圧の冷媒ガスGをハウジング10の内部から空気調和システムの凝縮器に吐出する吐出ポート11aが形成されている。
【0023】
本体ケース11の内部に設けられたモータ90は、永久磁石のロータ90aと電磁石のステータ90bとを備えた多相ブラシレス直流モータを構成している。
【0024】
ステータ90bは本体ケース11の内周面に嵌め合わされて固定され、ロータ90aには回転軸51が固定されている。
【0025】
そして、モータ90は、フロントカバー12に取り付けられた電源コネクタ90cを介して供給された電力によってステータ90bの電磁石を励磁することにより、ロータ90aおよび回転軸51をその軸心C回りに回転駆動させる。
【0026】
なお、電源コネクタ90cとステータ90bとの間に、インバータ回路90dなどを備えた構成を採用することもできる。
【0027】
本実施形態のコンプレッサ100は上述したとおり電動のものであるが、本発明に係る気体圧縮機は電動のものに限定されるものではなく、機械式のものであってもよく、本実施形態のコンプレッサ100を仮に機械式のものとした場合は、モータ90を備える代わりに、回転軸51をフロントカバー12から外部へ突出させて、その突出した回転軸51の先端部に、車両のエンジン等から動力の伝達を受けるプーリーや歯車等を備えた構成とすればよい。
【0028】
モータ90とともにハウジング10の内部に収容された圧縮機本体60は、回転軸51の延びた方向に沿ってモータ90と並んで配置されており、ボルト等の締結部材15により、本体ケース11に固定されている。
【0029】
ハウジング10の内部に収容された圧縮機本体60は、モータ90によって軸心C回りに回転自在の回転軸51と、回転軸51と一体的に回転する略円柱状のロータ50と、図2に示すように、このロータ50を、その外周面52の外方から取り囲む輪郭形状の内周面41を有するシリンダ40と、ロータ50の外周面52からシリンダ40の内周面41に向けて突出自在に設けられた5枚の板状のベーン58と、ロータ50およびシリンダ40の両端を塞ぐ2つのサイドブロック(フロントサイドブロック20、リヤサイドブロック30)とを備えている。
【0030】
ここで、回転軸51は、フロントカバー12に形成された軸受12b、圧縮機本体60の各サイドブロック20,30にそれぞれ形成された軸受27,37により、回転自在に支持されている。
【0031】
また、圧縮機本体60は、ハウジング10の内部の空間を、図1において圧縮機本体60を挟んだ左側の空間と右側の空間とに仕切っている。
【0032】
これらハウジング10の内部に仕切られた2つの空間のうち圧縮機本体60に対して左側の空間は、吸入ポート12aを通じて蒸発器から低圧の冷媒ガスGが導入される低圧雰囲気の吸入室13であり、圧縮機本体60に対して右側の空間は、吐出ポート11aを通じて高圧の冷媒ガスGが凝縮器に吐出される高圧雰囲気の吐出室14である。
【0033】
なお、モータ90は吸入室13に配置されている。
【0034】
圧縮機本体60の内部には、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52と両サイドブロック20,30とに囲まれた略C字状の単一のシリンダ室42が形成されている。
【0035】
具体的には、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52とが、回転軸51の軸心C回りの1周(角度360[度])の範囲で1箇所だけ近接するように、シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状が設定されていて、これにより、シリンダ室42は単一の空間を形成している。
【0036】
なお、シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状のうちシリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52とが最も近接した部分として形成された近接部48は、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52とが最も離れた部分として形成された遠隔部49から、ロータ50の回転方向W(図2において時計回り方向)に沿って下流側に角度270[度]以上(360[度]未満)離れた位置に形成されている。
【0037】
シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状は、回転軸51およびロータ50の回転方向Wに沿って遠隔部49から近接部48に至るまで、ロータ50の外周面52とシリンダ40の内周面41との間の距離が徐々に減少するような形状(例えば、楕円形状)に設定されているが、詳細については後述する。
【0038】
ベーン58はロータ50に形成されたベーン溝59に収容されていて、ベーン溝59に供給される冷凍機油Rや冷媒ガスGによる背圧により、ロータ50の外周面52から外方に突出する。
【0039】
また、ベーン58は単一のシリンダ室42を複数の圧縮室43に仕切るものであり、回転軸51およびロータ50の回転方向Wに沿って相前後する2つのベーン58によって1つの圧縮室43が形成される。
したがって、5枚のベーン58が回転軸51回りに角度72[度]の等角度間隔で設置された本実施形態においては、5つ乃至6つの圧縮室43が形成される。
【0040】
なお、2枚のベーン58,58の間に近接部48が存在する圧縮室43については、近接部48と1枚のベーン58とによって1つの閉じた空間を構成するため、2枚のベーン58,58の間に近接部48が存在する圧縮室43は結果的に2つの圧縮室43,43となるため、5枚のベーンのものであっても6つの圧縮室43が形成される。
【0041】
ベーン58によりシリンダ室42を仕切って得られた圧縮室43の内部の容積は、回転方向Wに沿って圧縮室43が遠隔部49から近接部48に至るまで徐々に小さくなる。
【0042】
このシリンダ室42の、回転方向Wの最上流側の部分(回転方向Wに沿って、近接部48に対する下流側の直近部分)には、フロントサイドブロック20に形成された、吸入室13に通じる吸入孔23(図2において、フロントサイドブロック20は断面よりも紙面手前側に位置するため、このフロントサイドブロック20に形成された吸入孔23は想像線(二点鎖線)で記載している。)が臨んでいる。
【0043】
一方、シリンダ室42の、ロータ50の回転方向Wの最下流側の部分(回転方向Wに沿って、近接部48に対する上流側の直近部分)には、シリンダ40に形成された第1の吐出部45の吐出チャンバ45aに通じた吐出孔45bが臨み、その上流側には、シリンダ40に形成された第2の吐出部46の吐出チャンバ46aに通じた吐出孔46bが臨んでいる。
【0044】
シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状は、吸入室13からフロントサイドブロック20に形成された吸入孔23を通じた冷媒ガスGの圧縮室43への吸入、圧縮室43内での冷媒ガスGの圧縮および圧縮室43から吐出孔45bを通じた吐出チャンバ45aへの冷媒ガスGの吐出を、ロータ50の1回転の期間に1つの圧縮室43につき1サイクルだけ行うように設定されている。
【0045】
ロータ50の回転方向Wの最上流側では、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52との間隔が小さい状態から急激に大きくなるように内周面41の横断面輪郭形状が設定されていて、遠隔部49を含んだ角度範囲では回転方向Wへの回転に伴って圧縮室43の容積が拡大してフロントサイドブロック20に形成された吸入孔23を通じて圧縮室43内に冷媒ガスGが吸入される行程(吸入行程)となる。
【0046】
次いで、回転方向Wの下流側に向かって、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52との間隔が徐々に小さくなるように内周面41の横断面輪郭形状が設定されているため、その範囲ではロータ50の回転に伴って圧縮室43の容積が減少し、圧縮室43内の冷媒ガスGが圧縮される行程(圧縮行程)となる。
【0047】
さらに、ロータ50の回転方向Wの下流側は、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52との間隔がさらに小さくなって冷媒ガスGの圧縮がさらに進み、冷媒ガスGの圧力が吐出圧力に達すると冷媒ガスGは後述する吐出孔45b,46bを通じて各吐出部45,46の吐出チャンバ45a,46aに吐出される行程(吐出行程)となる。
【0048】
そして、ロータ50の回転に伴って、各圧縮室43が吸入行程、圧縮行程、吐出行程をこの順序で繰り返すことにより、吸入室13から吸入された低圧の冷媒ガスGは高圧になって圧縮機本体60の外部となるサイクロンブロック70(油分離器)に吐出される。
【0049】
各吐出部45,46は、シリンダ40の外周面と本体ケース11とによって囲まれた空間である吐出チャンバ45a,46aと、吐出チャンバ45a,46aと圧縮室43とを通じさせる吐出孔45b,46bと、圧縮室43内の冷媒ガスGの圧力が吐出チャンバ45a,46a内の圧力(吐出圧力)以上のとき、差圧により吐出チャンバ45a,46aの側に反るように弾性変形して吐出孔45b,46bを開き、冷媒ガスGの圧力が吐出チャンバ45a,46a内の圧力(吐出圧力)未満のとき弾性力により吐出孔45b,46bを閉じる吐出弁45c,46cと、吐出弁45c,46cが吐出チャンバ45a,46aの側に過度に反るのを防止する弁サポート45d,46dとを備えている。
【0050】
なお、2つの吐出部45,46のうち、回転方向Wの下流側に設けられている吐出部、すなわち近接部48に近い側の第1の吐出部45は主たる吐出部である。
【0051】
この主たる吐出部である第1の吐出部45には、内部の圧力が常に吐出圧力に達している圧縮室43が臨んでいるため、圧縮室43が第1の吐出部45を通過している期間中は常に、その圧縮室43の内部で圧縮された冷媒ガスGが吐出され続けている。
【0052】
一方、2つの吐出部45,46のうち、回転方向Wの上流側に設けられている吐出部、すなわち近接部48から遠い側の第2の吐出部46は副次的な吐出部である。
【0053】
この副次的な吐出部である第2の吐出部46は、圧縮室43が下流側の吐出部45に臨む以前の段階で吐出圧力に達したときに、圧縮室43内の過圧縮(吐出圧力を超える圧力に圧縮されること)を防止するために設けられたものであり、圧縮室43が第2の吐出部46に臨んでいる期間中に圧縮室43内の圧力が吐出圧力に達した場合にのみ、圧縮室43の内部の冷媒ガスGを吐出させ、圧縮室43内の圧力が吐出圧力に達していない場合は、圧縮室43の内部の冷媒ガスGを吐出させない。
【0054】
第1の吐出部45の吐出チャンバ45aは、リヤサイドブロック30の外面(吐出室14に向いた面)まで貫通して形成された吐出路38に臨んでいて、この吐出チャンバ45aは吐出路38を介してリヤサイドブロック30の外面に取り付けられたサイクロンブロック70に通じている。
【0055】
一方、第2の吐出部46の吐出チャンバ46aは、サイクロンブロック70に直接的に通じているものではなく、シリンダ40の外周面に形成された切欠きが第1の吐出部45の吐出チャンバ45aに通じた連通路39となっていて、この連通路39、吐出チャンバ45aおよび吐出路38を介してサイクロンブロック70に通じている。
【0056】
したがって、第2の吐出部46の吐出チャンバ46aに吐出された冷媒ガスGは、連通路39、吐出チャンバ45aおよび吐出路38をこの順序で通って、サイクロンブロック70に吐出される。
【0057】
サイクロンブロック70は、圧縮機本体60に対して冷媒ガスGの流れの下流側に設けられていて、圧縮機本体60から吐出された冷媒ガスGに混ざった冷凍機油Rを冷媒ガスGから分離するものである。
【0058】
具体的には、第1の吐出部45の吐出孔45bから吐出チャンバ45aに吐出され、吐出路38を通って圧縮機本体60から吐出された冷媒ガスGおよび第2の吐出部46の吐出孔46bから吐出チャンバ46aに吐出され、連通路39、第1の吐出部45の吐出チャンバ45aおよび吐出路38を通って圧縮機本体60から吐出された冷媒ガスGを、螺旋状に旋回させることで、冷媒ガスGから冷凍機油Rを遠心分離する。
【0059】
そして、冷媒ガスGから分離された冷凍機油Rは吐出室14の底部に溜まり、冷凍機油Rが分離された後の高圧の冷媒ガスGは吐出室14に吐出された後、吐出ポート11aを通って凝縮器に吐出される。
【0060】
吐出室14の底部に溜められた冷凍機油Rは、吐出室14の高圧雰囲気により、リヤサイドブロック30に形成された油路34aおよびリヤサイドブロック30に形成された背圧供給用の凹部であるサライ溝31,32を通じて、並びに、リヤサイドブロック30に形成された油路34a,34b、シリンダ40に形成された油路44、フロントサイドブロック20に形成された油路24およびフロントサイドブロック20に形成された背圧供給用の凹部であるサライ溝21,22を通じて、それぞれベーン溝59に供給される。
【0061】
すなわち、ロータ50の両端面まで貫通したベーン溝59が、ロータ50の回転により、各サイドブロック20,30のサライ溝21,31またはサライ溝22,32にそれぞれ通じたときに、その通じたサライ溝21,31またはサライ溝22,32からベーン溝59に冷凍機油Rが供給されて、供給された冷凍機油Rの圧力がベーン58を外方に突出させる背圧となる。
【0062】
ここで、リヤサイドブロック30の油路34aとサライ溝31との間で冷凍機油Rが通過する通路は、リヤサイドブロック30の軸受37とこの軸受37に支持された回転軸51の外周面との間の非常に狭い隙間である。
【0063】
そして、冷凍機油Rは、油路34aにおいては吐出室14の高圧雰囲気と同じ高圧であったにもかかわらず、この狭い隙間を通過する間に圧力損失を受けた影響で、サライ溝31に到達したときは、吐出室14の内部の圧力よりも低い圧力である中圧になっている。
【0064】
ここで、中圧とは、吸入室13における冷媒ガスGの圧力である低圧よりも高く、吐出室14における冷媒ガスGの圧力である高圧よりも低い圧力である。
【0065】
同様に、フロントサイドブロック20の油路24とサライ溝21との間で冷凍機油Rが通過する通路は、フロントサイドブロック20の軸受27とこの軸受27に支持された回転軸51の外周面との間の非常に狭い隙間である。
【0066】
そして、冷凍機油Rは、油路24においては吐出室14の高圧雰囲気と同じ高圧であったにもかかわらず、この狭い隙間を通過する間に圧力損失を受けた影響で、サライ溝21に到達したときは、吐出室14の内部の圧力よりも低い圧力である中圧になっている。
【0067】
したがって、サライ溝21,31からベーン溝59に供給されてベーン58をシリンダ40の内周面41に向けて突出させる背圧は、冷凍機油Rの中圧となっている。
【0068】
一方、サライ溝22,32は、油路24、34と圧力損失なしで通じているため、サライ溝22,32には、吐出室14の内部の圧力と同等の高い圧力である高圧の冷凍機油Rが供給され、したがって、サライ溝22,32にベーン溝59が通じる圧縮行程の終盤では、ベーン58に高圧の背圧を供給して、ベーン58のチャタリングを防止している。
【0069】
なお、冷凍機油Rは、ベーン58とベーン溝59との間の隙間や、ロータ50とサイドブロック20,30との間の隙間等から滲みだして、ロータ50と両サイドブロック20,30との間の接触部分や、ベーン58とシリンダ40や両サイドブロック20,30との間の接触部分などにおける潤滑や冷却の機能も発揮し、その冷凍機油Rの一部が、圧縮室43内の冷媒ガスGと混ざるため、サイクロンブロック70により、冷凍機油Rの分離が行われる。
【0070】
以上のように構成された本実施形態のコンプレッサ100によれば、第1の吐出部45と第2の吐出部46とが、サイクロンブロック70よりも上流側で連通路39により通じているため、第2の吐出部46から吐出された冷媒ガスGは、第1の吐出部45から吐出された冷媒ガスGが吐出される通路である吐出路38を通ってサイクロンブロック70に流入する。
【0071】
これにより、第1の吐出部45から吐出された冷媒ガスGを圧縮機本体60の外部に吐出させるための吐出路38と、第2の吐出部46から吐出された冷媒ガスGを圧縮機本体60の外部に吐出させるための吐出路とを、圧縮機本体60の外面やサイクロンブロック70にそれぞれ別個独立して形成する必要がなく、圧縮機本体60やサイクロンブロック70の構造を簡素化することができる。
【0072】
なお、本実施形態のコンプレッサ100は、第2の吐出部46に吐出した冷媒ガスGを第1の吐出部45に吐出させて、第1の吐出部45に臨む吐出路38を通じて圧縮機本体60の外部に吐出させるものであるが、これとは反対に、第2の吐出部46の吐出チャンバ46aに臨むように、リヤサイドブロック30の外面まで貫通する吐出路を形成し、一方、上述した実施形態において第1の吐出部45の吐出チャンバ45aに臨むように形成されていた吐出路38を削除して、第1の吐出部45の吐出チャンバ45aに吐出した冷媒ガスGを、連通路39、第2の吐出部46の吐出チャンバ46aおよび吐出路を通じて、圧縮機本体60の外部に吐出させるようにしてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態のコンプレッサ100は、第1の吐出部45の上流側に第2の吐出部46を備えているため、圧縮室43が第1の吐出部45に臨む以前の段階で吐出圧力に達した場合であっても、その圧縮室43が第1の吐出部45より上流側にある第2の吐出部46に臨んでいるときは、その圧縮室43の内部の冷媒ガスGは、第2の吐出部46を通じて圧縮室43から吐出されるため、圧縮室43内の過圧縮(吐出圧力を超える圧力に圧縮されること)を防止することができる。
【0074】
次に、本実施形態のコンプレッサ100のシリンダ40の横断面輪郭形状について、図3,4を参照して詳しく説明する。
【0075】
シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状は、図3に示すように、近接部48と軸心Cとを結んだ基準線Lからの、ロータ50の回転方向Wに沿った角度θに対応して設定されている。
【0076】
具体的には、複数の圧縮室43のうち特定の圧縮室43Aに注目し、この特定の圧縮室43Aの回転方向Wの上流側(後ろ側)に位置するベーン58の、シリンダ40の内周面41との接触点と軸心Cとを結んで得られた直線Kと基準線Lとの間の角度θ(ロータ50の回転角度に対応)ごとの、圧縮室43Aの容積が、図4に示すような対応関係を有するものとなっている。
【0077】
すなわち、シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状は、ロータ50の1回転(1回転の基準となる始点の位置(角度θ=0[度])は、圧縮室43Aの回転方向Wの上流側のベーン58の、シリンダ40側の先端58aが近接部48に接触しているときの位置(図3に示した状態の位置)である。)の期間に、図4に示すように、下記(1)から(4)の領域が順次連なるように形成されている。
(1)圧縮室43Aの容積が急激に増大する領域
(2)圧縮室43Aの容積が急激に減少する領域
(3)圧縮室43Aの容積減少率(角度変化Δθに対する容積の減少の割合(率))が(2)の領域における容積減少率よりも小さくなる領域
(4)圧縮室43Aの容積減少率が(3)の領域における容積減少率よりも大きくなる領域
【0078】
なお、(1)の領域は具体的には例えば角度θ=0〜60[度]の範囲に対応した領域であり、(2)の領域は具体的には例えば角度θ=60〜150[度]の範囲に対応した領域であり、(3)の領域は具体的には例えば角度θ=150〜250[度]の範囲に対応した領域であり、(4)の領域は具体的には例えば角度θ=250〜360[度]の範囲に対応した領域である。
【0079】
以上のように、シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状が形成された本実施形態のコンプレッサ100によれば、圧縮行程および吐出行程((2)から(4)の領域に対応した行程)を吸入行程((1)の領域に対応した行程)に対して長く形成し、さらに、圧縮行程後半で容積減少率を小さくすることにより、急激な圧縮による過圧縮の発生を防止することができるとともに、吐出行程での吐出流速を遅くすることができるため吐出圧損を小さくすることができる。
【0080】
したがって、動力の増大を防止することができ、効率(成績係数またはCOP(Coefficient Of Performance:冷房能力/動力))を向上させることができる。
【0081】
さらに、シリンダ40の内周面41の横断面輪郭形状が、ロータ50の1回転の期間に、上記(1)から(4)の領域が順次連なるように形成されていることで、圧縮室43A内の圧力の上昇率(角度変化Δθに対する圧力の上昇の割合(率))を、図5に示すように略一定の直線状に調整することができる。
【0082】
しかも、圧縮室43A内の圧力の上昇率が一定の期間(圧力上昇率が直線状の期間)を長く、かつ圧力の上昇率を小さく(圧力上昇を緩やかに)することができる。
【0083】
したがって、圧縮室43A内の圧力が急激に変化するのを防止することができ、圧縮行程の終盤においても、圧縮室43A内で過圧縮が発生するのを適切に防止することができる。
【0084】
上述した実施形態のコンプレッサ100においては、図6,7,8に示すように、ロータ50の1回転の期間中にベーン58の姿勢が水平状態となる2つの回転角度位置α1,α2(図7,8)に挟まれる回転角度範囲のうち相対的に下方となる回転角度範囲β(図6)に遠隔部49が配置されていることが好ましい。
なお、ベーン58の姿勢が水平状態というのは、ベーン58のうち、シリンダ40側の先端58a(シリンダ40側の端部)の鉛直方向Vに沿った高さ位置とロータ50側の末端58b(ロータ50側の端部)の鉛直方向Vに沿った高さ位置とが一致する状態を意味するものであり、換言すれば、ベーン58が水平方向Hに沿って延びた姿勢を意味する。
【0085】
遠隔部49は、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52との間の距離が最も離れた部分であるため、遠隔部49においては、ベーン58のシリンダ40側の先端58aの、ロータ50の外周面52からの突出量(突出長さ)は最も大きい。
シリンダ40の内周面41の輪郭形状は滑らかに連続した形状であるため、ベーン58の先端58aの、ロータ50の外周面52からの突出長さは、先端58aが遠隔部49に近いほど大きい。
したがって、2つの回転角度位置α1,α2に挟まれる回転角度範囲のうち遠隔部49が配置されている側の回転角度範囲βでは、遠隔部49が配置されていない側(相対的に上方)の回転角度範囲αよりも、ベーン58の先端58aの突出長さが相対的に大きくなる。
【0086】
ここで、コンプレッサ100が停止している(ロータ50が回転していない)とき、ベーン58には遠心力および冷凍機油Rの背圧が作用しないため、回転角度範囲αに配置されているベーン58は、自重によってベーン溝59に沈み、ベーン58の先端58aはシリンダ40の内周面41から離れた状態となって、圧縮室43が仕切られない状態となる。
このコンプレッサ100が、停止状態から運転状態(ロータ50が回転した状態)に切り替わると、ベーン溝59に沈んでいたベーン58に遠心力や背圧が作用してベーン58がロータ50の外周面52から突出する。
本実施形態のコンプレッサ100は、ベーン58の突出長さが相対的に大きくなる遠隔部49が下方の回転角度範囲βにあって、その回転角度範囲βにおけるベーン58がベーン溝59に沈むことがないため、ベーン58の先端58aがシリンダ40の内周面41に接して圧縮室43を仕切るのに要する時間が相対的に長くなるのを防止乃至抑制することができる。
圧縮室43を仕切るのに要する時間が相対的に短いことにより、圧縮行程をより早期に実現することができ、コンプレッサ100の起動性を向上させることができる。
【0087】
なお、上述したコンプレッサ100において、回転角度範囲αに近接部48が配置されていることが、より好ましい。
近接部48は、シリンダ40の内周面41とロータ50の外周面52との間の距離が最も近接した部分であるため、近接部48においては、ベーン58のシリンダ40側の先端58aの、ロータ50の外周面52からの突出長さは最も小さい(突出長さは、略零)。
したがって、コンプレッサ100が停止状態から運転状態(ロータ50が回転した状態)に切り替わってベーン58がロータ50の外周面52から突出したとき、近接部48を含む近接部48近傍のベーン58の突出長さはそれ以外の範囲のベーン58の突出長さより小さいため、回転角度範囲αにおけるベーン58の先端58aがシリンダ40の内周面41に接して圧縮室43を仕切るのに要する時間をより短くすることができる。
圧縮室43を仕切るのに要する時間が短いことにより、圧縮行程をより早期に実現することができ、コンプレッサ100の起動性をさらに向上させることができる。
【0088】
なお、上述した実施形態のコンプレッサ100において、相対的に上方となる回転角度範囲αのうち、近接部48を挟んでロータ50の回転方向Wの上流側端の回転角度位置α2でのベーン58の突出長さt2と下流側端の回転角度位置α1でのベーン58の突出長さt1とが等しくなるように設定されていることが、より好ましい。
このように設定されたコンプレッサ100によれば、回転角度範囲αの両端の回転角度位置α1、α2での突出長さt1,t2が等しいことにより、近接部48を挟んで上流側で停止したベーン58であっても、下流側で停止したベーン58であっても、ベーン溝59に沈んだベーン58の突出長さtを最大で突出長さt1(=t2)に抑えることができるからである。
【0089】
上述した実施形態のコンプレッサ100は、ベーン58を5枚有するものであるが、本発明に係る気体圧縮機はこの形態に限定されるものではなく、ベーンの数は図9に示す3枚であってもよいし、2枚、4枚、6枚等適宜選択可能であり、そのように選択された枚数のベーンを適用した気体圧縮機によっても、上述した実施形態とコンプレッサ100と同様の作用・効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 ハウジング
40 シリンダ
41 内周面
43,43A 圧縮室
45 第1の吐出部(吐出部)
46 第2の吐出部
48 近接部
49 遠隔部
50 ロータ
51 回転軸
58 ベーン
60 圧縮機本体
100 電動ベーンロータリコンプレッサ(気体圧縮機)
C 軸心
G 冷媒ガス(気体)
W 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9