特許第5828915号(P5828915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5828915モールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法、及び、光学素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5828915
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】モールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法、及び、光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 11/00 20060101AFI20151119BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   C03B11/00 B
   C03B11/00 E
   G02B3/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-557608(P2013-557608)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2013053131
(87)【国際公開番号】WO2013118888
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-26776(P2012-26776)
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 克己
(72)【発明者】
【氏名】中村 謙吾
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−171555(JP,A)
【文献】 特開平06−100322(JP,A)
【文献】 特開平10−158019(JP,A)
【文献】 特開2010−260737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 11/00 − 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する成形面を有し互いに接近及び離間可能な上型及び下型であって、少なくとも前記下型の成形面に複数のガス噴出孔が形成された前記上型及び下型を用い、前記下型の前記ガス噴出孔からガスを噴出した状態で、前記下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給し、前記下型の成形面上に前記熔融ガラス塊を浮上させながら支持する工程と、
前記熔融ガラス塊が浮上した状態で前記上型及び下型を接近させる工程と、
前記上型の成形面と前記下型の成形面とが押切り位置に到達するまでに、前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止する工程と、
前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止した状態で、更に前記上型及び下型を接近させ、前記熔融ガラス塊を前記下型の成形面に接触させる工程と、
少なくとも前記押切り位置において、前記下型の前記複数のガス噴出孔内に前記熔融ガラス塊の一部が進入する程度にプレス成形する工程と
を含
プレス成形時の前記熔融ガラス塊の粘度は、20dPa・s〜300dPa・sである、
モールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【請求項2】
前記プレス成形する工程は、前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止したあと、前記ガスの残圧がある状態で前記ガスの残圧に抗して実行される
請求項1に記載のモールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【請求項3】
前記プレス成形する工程は、前記ガス噴出孔からの前記ガスの噴出が完全に停止した状態で実行される
請求項1に記載のモールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【請求項4】
前記下型には、その上下方向に貫通した前記複数のガス噴出孔が、前記下型の成形面の凹面形状に沿った同心円状に規則的に形成されている、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のモールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【請求項5】
対向する成形面を有し互いに接近及び離間可能な上型及び下型であって、少なくとも前記下型の成形面に複数のガス噴出孔が形成された前記上型及び下型を用い、前記下型の前記ガス噴出孔からガスを噴出した状態で、前記下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給し、前記下型の成形面上に前記熔融ガラス塊を浮上させながら支持する工程と、
前記熔融ガラス塊が浮上した状態で前記上型及び下型を接近させる工程と、
前記上型の成形面と前記下型の成形面とが押切り位置に到達するまでに、前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止する工程と、
前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止した状態で、更に前記上型及び下型を接近させ、前記熔融ガラス塊を前記下型の成形面に接触させる工程と、
少なくとも前記押切り位置において、前記下型の前記複数のガス噴出孔内に前記熔融ガラス塊の一部が進入する程度にプレス成形し、前記下型の成形面側の面に前記ガス噴出孔の形状に対応する凸部が形成されたモールドプレス成形用ガラスプリフォームを得る工程と、
得られたモールドプレス成形用ガラスプリフォームをモールドプレス成形することで、前記凸部が消失した光学素子を得る仕上げ成形工程と、
を含
プレス成形時の前記熔融ガラス塊の粘度は、20dPa・s〜300dPa・sである、
光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記プレス成形する工程は、前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止したあと、前記ガスの残圧がある状態で前記ガスの残圧に抗して実行される
請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記プレス成形する工程は、前記ガス噴出孔からの前記ガスの噴出が完全に停止した状態で実行される
請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記下型には、その上下方向に貫通した前記複数のガス噴出孔が、前記下型の成形面の凹面形状に沿った同心円状に規則的に形成されている、
請求項5乃至請求項7のうちのいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
対向する成形面を有し、互いに接近及び離間可能な上型及び下型であって、少なくとも前記下型の成形面に複数のガス噴出孔が形成された上型及び下型を用いて熔融ガラス塊をプレス成形することによりモールドプレス成形用ガラスプリフォームを得るモールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法において、
前記下型の前記ガス噴出孔からガスを噴出した状態で、前記下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給し、前記下型の成形面上に前記熔融ガラス塊を浮上させながら支持する工程と、
前記下型の成形面上に前記熔融ガラス塊を供給したあとに、前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止する工程と、
前記ガス噴出孔へのガスの供給を停止した状態で、前記上型と前記下型を接近させ、前記熔融ガラス塊を前記下型の成形面に接触させて、前記下型の前記複数のガス噴出孔内に前記熔融ガラス塊の一部が進入する程度にプレス成形する工程と、
を含
プレス成形時の前記熔融ガラス塊の粘度は、20dPa・s〜300dPa・sである、
モールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【請求項10】
前記ガスの供給を停止する工程は、前記上型の成形面と前記下型の成形面とが押切り位置に到達するまでに行われる、
請求項に記載のモールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【請求項11】
前記プレス成形する工程は、押切り位置において行われる、
請求項9又は請求項10に記載のモールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【請求項12】
前記下型には、その上下方向に貫通した前記複数のガス噴出孔が、前記下型の成形面の凹面形状に沿った同心円状に規則的に形成されている、
請求項9乃至11のうちのいずれか1項に記載のモールドプレス成形用ガラスプリフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子(例えば非球面レンズ)の予備成形体であるガラスプリフォームの製造方法及びガラスプリフォーム、並びにこのガラスプリフォームを精密プレス成形することにより光学素子(例えば非球面レンズ)を得る光学素子の製造方法及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
モールドプレス成形では、まず、ガラスの原料(バッチやカレット)を所定の割合で調合し、熔解、均質、清澄工程を経て、熔融ガラス塊をプリフォーム成形型に供給してプレス成形することにより、プリフォーム成形型の成形面の形状に応じた形状のガラスプリフォームを得る。そして、ガラスプリフォームをプレス成形型に供給して精密プレス成形することにより非球面レンズ等の光学素子を得る。
【0003】
ガラスプリフォームの製造方法として、特許文献1(特開2010−138052号公報)に開示された製造方法のように、流出パイプの流出口より流出する熔融ガラスを切断して熔融ガラス塊を得て、この熔融ガラス塊を上型と離間した状態の下型の成形面上に供給し、上型及び下型を接近させて上型及び下型の成形面の間で熔融ガラス塊をプレス成形してガラスプリフォームを得る、いわゆるダイレクトプレス方式のものが知られている。
【0004】
このダイレクトプレス方式では、熔融ガラス塊を熔融ガラス塊よりも低温の下型の成形面上に供給したときに両者が接触するので、熔融ガラス塊のうち下型の成形面に接触した部分だけが急冷されて粘度が高くなる。このためガラスプリフォームをプレス成形したときに、熔融ガラス塊と下型の接触面と非接触面の境界(ゴブライン)に、熔融ガラス塊の温度差に起因する段差やシワが発生する。このガラスプリフォームの段差やシワは、後工程において精密プレス成形を行ったとしても完全には消失せずに光学素子の光学機能面に残存するので、光学素子の光学性能が劣化して歩留まりが低下する。
【0005】
このガラスプリフォームの段差やシワの発生を抑制するために、下型の成形面にガス(浮上ガス)を噴出する微細孔を形成して熔融ガラス塊を非接触で浮上支持し、この状態で上型(プレス装置)の成形面から噴出される気体を熔融ガラス塊に吹き付けることにより、熔融ガラス塊をプレスしてガラスプリフォームを得る方法が、特許文献2(特開2006−290702号公報)に提案されている。
【0006】
しかしながら、プレス時に熔融ガラス塊が上型及び下型の成形面と非接触であるため、ガラスプリフォームに成形面の形状を正確に転写できずに所望の形状が得られず、ガラスプリフォームの形状バラツキも大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−138052号公報
【特許文献2】特開2006−290702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、段差やシワの少ないガラスプリフォームを所望の形状に再現性よく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のガス噴出孔が形成された下型の成形面上に熔融ガラス塊を浮上させた状態から上型及び下型を接近させてガラスプリフォームをプレス成形する際に、遅くとも上型の成形面と下型の成形面とが最も近づく押切り位置に到達する前にガス噴出孔へのガス(浮上ガス)の供給を停止すれば、熔融ガラス塊と下型の成形面との接触時間を極限まで少なくして段差やシワの発生を抑えるとともに、熔融ガラス塊に成形型(上型及び下型)の成形面の形状が正確に転写されて所望の形状となったガラスプリフォームを再現性よく製造できる、との着眼に基づいて完成されたものである。
【0010】
本発明の一形態に係るガラスプリフォームの製造方法は、対向する成形面を有し互いに接近及び離間可能な上型及び下型であって、少なくとも下型の成形面に複数のガス噴出孔が形成された上型及び下型を用い、下型のガス噴出孔からガスを噴出した状態で、下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給し、下型の成形面上に熔融ガラス塊を浮上させながら支持する工程と、熔融ガラス塊が浮上した状態で上型及び下型を接近させる工程と、上型の成形面と下型の成形面とが押切り位置に到達するまでに、ガス噴出孔へのガスの供給を停止する工程と、ガス噴出孔へのガスの供給を停止した状態で、更に上型及び下型を接近させ、熔融ガラス塊を下型の成形面に接触させる工程と、及び少なくとも押切り位置において、下型のガス噴出孔内に熔融ガラス塊の一部が進入する程度にプレス成形する工程と、を備える。
【0011】
プレス成形する工程は、ガス噴出孔へのガスの供給を停止したあと、ガスの残圧がある状態でガスの残圧に抗して実行することができる。あるいは、プレス成形する工程は、ガス噴出孔からのガスの噴出が完全に停止した状態で実行することもできる。
【0012】
本発明の一形態に係るガラスプリフォームは、上記いずれかのガラスプリフォームの製造方法によって製造したものであって、ガラスプリフォームの下型の成形面側の面には、ガス噴出孔の形状に対応する凸部が形成されている。更に、隣り合う凸部の間には、曲面によって形成される凹部が形成されている。
【0013】
本発明の一形態に係る光学素子の製造方法は、対向する成形面を有し互いに接近及び離間可能な上型及び下型であって、少なくとも下型の成形面に複数のガス噴出孔が形成された上型及び下型を用い、下型のガス噴出孔からガスを噴出した状態で、下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給し、下型の成形面上に熔融ガラス塊を浮上させながら支持する工程と、熔融ガラス塊が浮上した状態で上型及び下型を接近させる工程と、遅くとも上型の成形面と下型の成形面とが最も近づく押切り位置に到達するまでに、ガス噴出孔へのガスの供給を停止する工程と、ガス噴出孔へのガスの供給を停止した状態で、更に上型及び下型を接近させ、熔融ガラス塊を下型の成形面に接触させる工程と、少なくとも押切り位置において、下型のガス噴出孔内に熔融ガラス塊の一部が進入する程度にプレス成形し、下型の成形面側の面にガス噴出孔の形状に対応する凸部が形成されたガラスプリフォームを得る工程と、及び得られたガラスプリフォームを精密プレス成形することで、凸部が消失した光学素子を得る仕上げ成形工程と、を備える。
【0014】
プレス成形する工程は、ガス噴出孔へのガスの供給を停止したあと、ガスの残圧がある状態でガスの残圧に抗して実行することができる。あるいは、プレス成形する工程は、ガス噴出孔からのガスの噴出が完全に停止した状態で実行することもできる。
【0015】
本発明の一形態に係る光学素子は、上記いずれかの光学素子の製造方法によって製造したものである。
【0016】
本発明の一形態に係るガラスプリフォームの製造方法は、対向する成形面を有し、互いに接近及び離間可能な上型及び下型であって、少なくとも前記下型の成形面に複数のガス噴出孔が形成された上型及び下型を用いて熔融ガラス塊をプレス成形することによりガラスプリフォームを得るガラスプリフォームの製造方法において、下型のガス噴出孔からガスを噴出した状態で、下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給し、下型の成形面上に熔融ガラス塊を浮上させながら支持する工程と、下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給したあとに、ガス噴出孔へのガスの供給を停止する工程と、ガス噴出孔へのガスの供給を停止した状態で、上型及び下型を接近させ、熔融ガラス塊を下型の成形面に接触させてプレス成形する工程と、を含む。
【0017】
ガスの供給を停止する工程は、上型の成形面と下型の成形面とが押切り位置に到達するまでに行われる。
【0018】
プレス成形する工程は、押切り位置において行われる。
【0019】
本発明の一形態に係るガラスプリフォームは、上記いずれかのガラスプリフォームの製造方法によって製造したものであって、ガラスプリフォームは、凸部及び凹部を有し、凸部及び凹部は、凸部の頂部から凹部の底部までの差が20μm以下に形成される。
【0020】
凸部及び凹部は、ガラスプリフォームの中央部に形成される凸部の頂部から底部までの第1の差より、ガラスプリフォームの周縁部に形成される凸部の頂部から底部までの第2の差の方が大きく形成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、段差やシワの少ないガラスプリフォームを所望の形状に再現性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によるガラスプリフォームの製造方法に用いるプリフォーム成形型の上型及び下型の離間状態の構成を示す断面図である。
図2】本発明によるガラスプリフォームの製造方法に用いるプリフォーム成形型の上型及び下型の接近状態の構成を示す断面図である。
図3】本発明によるガラスプリフォームの製造方法に用いる回転移送式のガラスプリフォームの製造装置の構成を示す平面図である。
図4】本発明によるガラスプリフォームの製造方法の各工程を示す図である。図4(A)はハロゲンヒータにより下型を加熱する工程、図4(B)はフィーダから下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給する工程、図4(C)は上型及び下型の成形面によりガラスプリフォームをプレス成形する工程、図4(D)はプレス成形後のガラスプリフォームを突き上げて徐冷する工程、図4(E)はプレス成形後のガラスプリフォームを取り出す工程、図4(F)はガラスプリフォーム取り出し後に下型を下降させる工程をそれぞれ示している。
図5図4(C)のガラスプリフォームのプレス成形中に熔融ガラス塊に起きるミクロな現象を説明するための図である。図5(A)は熔融ガラス塊が下型の成形面に接触する前の状態、図5(B)は熔融ガラス塊が下型の成形面に接触している状態をそれぞれ示している。
図6】ガス噴出孔からのガスの残圧がある状態でプレス成形して得られたガラスプリフォームの断面を示す図である。
図7】ガス噴出孔からのガスの噴出が完全に停止した状態でプレス成形して得られたガラスプリフォームの断面を示す図である。
図8】精密プレス成形型の構成を示す図である。
図9】別の回転テーブルを介して熔融ガラス塊を成形型にキャストする別実施形態を示す図である。
図10】別の回転テーブルに設けられたアームを開いて熔融ガラス塊を成形型に供給する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明によるガラスプリフォームの製造方法及びガラスプリフォーム、並びに光学素子の製造方法及び光学素子の一実施形態を説明する。以下の説明における上下方向は、図中に記載した矢線方向を基準としている。
【0024】
「ガラスプリフォームの製造方法及びガラスプリフォーム」
(1)ガラスプリフォーム成形型の構成
図1は、ガラスプリフォームの製造方法に用いるプリフォーム成形型の上型及び下型の離間状態の構成を示す断面図である。図2は、ガラスプリフォームの製造方法に用いるプリフォーム成形型の上型及び下型の接近状態の構成を示す断面図である。ガラスプリフォーム成形型100は、上型110と、上型胴型120と、下型130と、下型支持部材140と、下型胴型150とを備えている。
【0025】
上型110は、上方から順に、大径部111と、この大径部111よりも小径の中径部112と、この中径部112よりも小径の小径部113とを有している。小径部113の下面には精密な面形状が施された凸面形状の成形面114(曲率半径R1)が形成されている。上型110は、例えば離型膜を施したステンレス(SUS)材料により構成することができる。
【0026】
上型胴型120は、上方から順に、大径筒状部121と、この大径筒状部121よりも小径の中径筒状部122と、この中径筒状部122よりも小径の小径筒状部123とを有する両端が開口した筒状部材である。小径筒状部123の上端面に上型110の大径部111の下端面を当接させた状態で上型110の上側部分に設けられた貫通孔内に図示しない上型主軸が固定され、上型主軸と上型胴型120は一体化されている。この上型110と上型胴型120の結合体は、図示しない上型昇降機構によって上下方向に昇降移動可能となっている。
【0027】
下型130は、外周面の中間部分に環状段部131が形成され、その上面に精密な面形状が施された凹面形状の成形面132(曲率半径R2)が形成されている。この下型130の成形面132の曲率半径R2は、上型110の成形面114の曲率半径R1より小さく形成されている(R1>R2)。下型130には、その上下方向に貫通させて複数(多数)のガス噴出孔(微細ガス噴出孔、マルチ孔)133が下型130の成形面132の凹面形状に沿った同心円状に、規則正しく形成されている(図5参照)。
【0028】
下型支持部材140は、上方から順に、大径部141と、この大径部141よりも小径の小径部142とを有し、内部に上下方向に貫通する筒状空間143が形成された筒状部材である。大径部141の上端面に環状段部131を係合させることで、下型130が下型支持部材140上に支持されて両者が一体化される。下型支持部材140内の筒状空間143は、大径部141の上端面近傍だけがその他の部位に比べて大径になっており、下型130のガス噴出孔133の大部分がこの筒状空間143内に露出している。下型支持部材140の下端面側には、窒素ガス(Nガス)などのガス(不活性ガス)を供給するガス供給源Hが接続されている。このガス供給源Hを介して、下型支持部材140の筒状空間143内に下端面側からガス(以下、浮上ガスと記載する)を供給すると、この浮上ガスは、下型支持部材140の筒状空間143内を上昇して、下型支持部材140の上端面に支持された下型130の各ガス噴出孔133に入り込み成形面132から噴出する。つまり下型支持部材140の筒状空間143は、ガス供給源Hから供給された浮上ガスのガス流路となっている。
【0029】
下型胴型150は、上方から順に、下型130と下型支持部材140の大径部141の外周面が所定量(例えば200μm)のクリアランスで嵌る大径筒状部151と、下型支持部材140の小径部142の外周面が所定量(例えば200μm)のクリアランスで嵌る小径筒状部152とを有している。下型130と下型支持部材140の結合体は、図示しない下型昇降機構によって下型胴型150の筒状空間143内を上下方向に昇降可能となっている。ここで、下型130が下型胴型150の上端面153からややつき出した位置が下型130の上昇端であり(図4(A)参照)、下型支持部材140の大径筒状部141の下端面144が下型胴型150の小径筒状部152の上端面154に当接する位置が下型130の下降端である。
【0030】
(2)ガラスプリフォームの製造装置の構成
図3は回転移送式のガラスプリフォームの製造装置200の構成を示す平面図である。このガラスプリフォームの製造装置200は、周方向に30°間隔で並べて配置された12個の処置位置1−12を有している。ガラスプリフォームの製造装置200には、上述したガラスプリフォーム成形型100の下型130側の部材(下型130と下型支持部材140と下型胴型150の結合体であり、以下において成形型220ともいう)を載せる回転テーブル210(間欠割出装置)が設けられている。この回転テーブル210が図示しない駆動源により所定時間毎に間欠的に反時計方向に30°ずつ回転することで、回転テーブル210に載せた成形型220が各処置位置1−12に順次移送されていく。つまりこの実施形態のガラスプリフォームの製造装置200は、同時に12セットのガラスプリフォーム成形型100の下型130側の部材(成形型220)を収容することができる。一方、ガラスプリフォームの製造装置200の処置位置3には、ガラスプリフォーム成形型100の上型110側の部材(上型110と上型胴型120の結合体)が配置されている。
【0031】
(3)ガラスプリフォームの製造方法
上述した図1図3に加えて、図4(A)−図4(F)及び図5(A)−図5(B)の各工程図を参照しながら、本実施形態のガラスプリフォームの製造方法について詳細に説明する。図4は、ガラスプリフォームの製造方法の各工程を示す図である。図4(A)はハロゲンヒータにより下型を加熱する工程、図4(B)はフィーダから下型の成形面上に熔融ガラス塊を供給する工程、図4(C)は上型及び下型の成形面によりガラスプリフォームをプレス成形する工程、図4(D)はプレス成形後のガラスプリフォームを突き上げて徐冷する工程、図4(E)はプレス成形後のガラスプリフォームを取り出す工程、図4(F)はガラスプリフォーム取り出し後に下型を下降させる工程をそれぞれ示している。
【0032】
本実施形態のガラスプリフォームの製造方法を実施する前提の工程として、対向する成形面114と成形面132とを有し、互いに接離可能な上型110と下型130であって、少なくとも下型130の成形面132に複数のガス噴出孔133が形成された下型130と上型110とを準備する。
【0033】
まず処置位置1では、図4(A)に示すように、図示しない下型昇降機構によって下型130を上昇端まで上昇させて、ハロゲンヒータによって下型130を加熱する。ハロゲンヒータによる下型130の加熱温度は、例えば、240℃である。加熱が完了した下型130は、下型昇降機構によって下降端まで下降され、その後、回転テーブル210を回転することにより処置位置2へと移送される。
【0034】
次いで処置位置2では、図4(B)に示すように、図示しない下型昇降機構によって下型130を上昇端よりもやや下方のキャスト位置まで上昇させて、下型130の成形面132の直上位置からフィーダによって熔融ガラス塊(軟化ガラス塊)YGを供給する。ここでは、熔融ガラス流の下端部(先端部)を下型130の成形面132によって受け、熔融ガラスが所定量流出したときに、下型昇降機構によって下型130を急降下させることにより熔融ガラス流を切断し、熔融ガラス塊YGを成形面132上に供給している(降下切断法)。供給される熔融ガラス塊YGの温度は、例えば、ガラスの粘度が1〜20poiseに相当する温度である。このとき、下型130の成形面132からはガス供給源Hから供給された浮上ガスがガス噴出孔133を介して噴出している(キャスト時及び浮上時のガス流量:0.20L/min)ので、熔融ガラス流の下端部を下型130の成形面132によって受けているときの熔融ガラス、及び、成形面132上に供給された熔融ガラス塊YGは、下型130の成形面132上に浮上した状態で支持される。すなわち、熔融ガラスの下端部又は熔融ガラス塊YGと、下型130の成形面132との間に浮上ガスが介在している。この工程が、下型130のガス噴出孔133から浮上ガスを噴出した状態で、下型130の成形面132上に熔融ガラス塊YGを供給し、下型130の成形面132上に熔融ガラス塊YGを浮上させながら支持する工程である。その後、回転テーブル210を30°回転することにより下型130及び熔融ガラス塊YGは処置位置3へと移送される。なお、熔融ガラスからガラスプリフォームGPを成形するにあたり、下型130の成形面132上に供給する熔融ガラス及び熔融ガラス塊YGが下型130の成形面132と瞬間的に接触することがあるが、本明細書において、熔融ガラス及び熔融ガラス塊YGが下型130に対して融着が生じない範囲内での接触は、浮上させながら支持するあるいは浮上した状態として表現している。
【0035】
次いで処置位置3では、図4(C)に示すように、下型130の成形面132が下型胴型150の上端面153から所定量下がった状態で、図示しない上型昇降機構によって上型110を下降させる。この工程が、熔融ガラス塊YGが浮上した状態で上型110と下型130を接近させる工程である。このとき、上型110の小径部113の外周面を下型胴型150の大径筒状部151の内周面に接触しないように下降させる。その後、図示しないサーボモータを駆動させ、上型110の成形面114に対して下型130の成形面132を接近させて熔融ガラス塊YGを押圧することでガラスプリフォームGPをプレス成形する。このプレス成形時において、上型110と下型130とが最も近づく位置を押切り位置と表し、この押切り位置は、得ようとするガラスプリフォームGPの形状や厚さなどを考慮して決めることができる。また、プレス成形時の熔融ガラス塊YGの粘度は、例えば、20dPa・s〜300dPa・s程度とすることができる。なお、ここでは、上型110と下型130とを接近させたあと、サーボモータによって下型130を上昇させガラスプリフォームGPをプレス成形する態様を示したが、上型110と下型130との接近位置から上型110を更に下降させてガラスプリフォームGPをプレス成形することもできる。また、プレス成形は、ガラスプリフォームGPの形状精度を高めるために押切り位置で行うことが好ましいが、上型110と下型130とを接近させ押切り位置に到達する前において行うこともできる。
【0036】
ここで、図5(A)−図5(B)を参照して、ガラスプリフォームGPのプレス成形中に熔融ガラス塊YGに起きるミクロな現象について説明する。図5は、図4(C)のガラスプリフォームのプレス成形中に熔融ガラス塊に起きるミクロな現象を説明するための図である。図5(A)は熔融ガラス塊が下型の成形面に接触する前の状態、図5(B)は熔融ガラス塊が下型の成形面に接触している状態をそれぞれ示している。なお、図5(A)−図5(B)では、本発明の内容をより一層理解し易くするために、ガス噴出孔133の孔径とピッチを実際よりも誇張して描いている。
【0037】
熔融ガラス塊YGを浮上させた状態で上型110と下型130を接近させていくと、まず図5(A)に示すように、熔融ガラス塊YGの上面が上型110の成形面114に接触する。一方、熔融ガラス塊YGの下面は、下型130のガス噴出孔133から噴出される浮上ガスによって下型130の成形面132に接触せず、熔融ガラス塊YGが下型130のガス噴出孔133内に入り込まない状態で、熔融ガラス塊YGがプレス成形される。このときのプレス成形とは、次の段落で説明するプレス成形とは作用が異なり、上型110の成形面114が熔融ガラス塊YGの上側に接触することで、熔融ガラス塊YGを上型110の成形面114の面形状に近づくように変形させ、上型110の成形面114の面形状を熔融ガラス塊YGに転写し、熔融ガラス塊YGの下側と下型130の成形面132とは非接触状態を維持したまま、浮上ガスにより下型130の成形面132の面形状に近づくように変形させることを意味する。
【0038】
本実施形態では、上型110の成形面114と下型130の成形面132とが最も近づく押切り位置に到達するまでに、ガス供給源Hからガス噴出孔133への浮上ガスの供給を停止する工程を備えている。この浮上ガスの供給を停止する工程を実行するタイミングは、例えば、上型110と下型130とを接近させる前、上型110と下型130とを接近させ上型110の成形面112と熔融ガラス塊YGとが接触したとき(上述のプレス成形開始時)、又は、更に上型110と下型130とを接近させ上述のプレス成形中のいずれかとすることができる。ここでは、本実施形態の一例として、上型110と下型130とを接近させ上述のプレス成形中に浮上ガスの供給を停止する場合について説明する。
【0039】
上述のプレス成形中にガス噴出孔133への浮上ガスの供給を停止したあと、ガス噴出孔133からの浮上ガスの残圧がある状態で、上型110の成形面114が熔融ガラスYGに接触しているため、下型130の成形面132と熔融ガラスYGとが接触するまでに熔融ガラスYGの外径を広げることができる。このとき、熔融ガラスYGの外径は下型胴型150の大径筒状部151の内径と等しくてもよく、小さくてもよい。更に浮上ガスの残圧がある状態で上型110と下型130を接近させていくと、図5(B)に示すように、熔融ガラス塊YGの下面の一部が下型130の成形面132に接触する。この工程が、ガス噴出孔133への浮上ガスの供給を停止した状態で、更に上型110と下型130を接近させ、熔融ガラス塊YGを下型130の成形面132に接触させる工程である。
【0040】
本実施形態では、その最終工程として、上型110の成形面114と下型130の成形面132が最も近づく押切り位置において、下型130のガス噴出孔133内に熔融ガラス塊YGの一部(下型130の成形面132に接触していない部分)が進入する程度にプレス成形する工程を備えている。これにより熔融ガラス塊YGがプレス成形されてガラスプリフォームGPが得られる。このとき、ガラスプリフォームGPの外周面は、下型胴型150の内周面により規制されるため、所望の寸法(下型胴型150の内周面と同径)となる。なお、本実施形態においては、上型110と下型130とが押切り位置に到達するまでに浮上ガスを停止しているため、できるだけ長い時間熔融ガラス塊YGを浮上させておくことができる。これにより、ガラスプリフォームの段差やシワを抑制することができる。また、浮上ガスの供給を停止したあとは、熔融ガラス塊YGを下型130の成形面132に対して接触した状態でプレス成形することができるため、下型130の成形面132がプレス成形中に熔融ガラス塊YGから十分に熱を奪うことができ、結果、高い形状精度(段差やしわの少ない(浅い)ガラスプリフォーム)を得ることができる。これは、熔融ガラス塊YGを供給したあと、できるだけ長い時間(言い換えればプレス成形直前まで)熔融ガラス塊YGを浮上させておくことにより、熔融ガラス塊YGと下型130の成形面132との接触時間を短くすることができるからである。
【0041】
このようにしてプレス成形したガラスプリフォームGPには、下型130の成形面132側の面に、ガス噴出孔133の形状に対応する微小な凸部GTが形成されている。つまり、上記最終工程としてのプレス成形工程は、少なくとも上型110の成形面114と下型130の成形面132が最も近づく押切り位置において、下型130のガス噴出孔133内に熔融ガラス塊YGの一部(下型130の成形面132に接触していない部分)が進入する程度にプレス成形し、下型130の成形面132側の面にガス噴出孔133の形状に対応する凸部GTが形成されたガラスプリフォームGPを得る工程である。また隣り合う凸部GTの間には、曲面によって形成される微小な凹部GRが形成されている。この凹部GRは、プレス成形時に下型130の成形面132と熔融ガラスYGの接触面において、熔融ガラスYGの温度が下がって熔融ガラスYGが収縮することによって形成される。
【0042】
このとき、図5(B)における1つの成形面132に着目すると、成形面132の両端部と接触する熔融ガラス塊YGに比べて成形面132の中央部と接触する熔融ガラス塊YGは、より多くの熱を奪われるため、成形面132の両端部に接触する熔融ガラス塊YGよりも多く収縮する。そのため、凹部GRは曲線(曲面形状)に形成される。
【0043】
次に、図5(B)における隣り合う2つの成形面132間に設けられた1つのガス噴出孔133に着目する。注目した1つのガス噴出孔133内に進入した熔融ガラス塊YGのうち、ガス噴出孔133の中央部に進入する熔融ガラス塊YGは、ガス噴出孔133の端部(成形面132の端部)近傍に進入する熔融ガラス塊YGに比べて抵抗が少なく、また、下型130の成形面132と非接触であるため冷却されにくく、ガラスが低粘性状態に維持されることで、スムーズに進入する。このため、ガス噴出孔133の中央部に進入する熔融ガラス塊YGは、ガス噴出孔133内への進入距離(=凸部GTの山の高さ)が最大となる。この進入距離とは、隣り合う2つの成形面132の内側の端部同士を仮想の直線で結び、その直線から熔融ガラス塊YGまでの最短距離を意味する。一方、成形面132のガス噴出孔133内に進入した熔融ガラス塊YGのうち、ガス噴出孔133の端部(周辺)に進入する熔融ガラス塊YGは、下型130の成形面132の端部と接触することにより冷却され、ガラスの粘性が高まるため、抵抗が最大となり、ガス噴出孔133内にほとんど進入しない。そして、ガス噴出孔133の中央部に進入する熔融ガラス塊YGからガス噴出孔133の端部に進入する熔融ガラス塊YGにかけて、進入時の抵抗が漸増するため、滑らかな曲線(曲面形状)の凸部GTを形成することができる。そして、このように形成された凸部GTの曲線と凹部GRの曲線とは、ガス噴出孔133の端部において接続する。そのため、下型130のガス噴出孔133の端部(成形面132の端部)が凸部GTと凹部GRの曲線の変曲点となっている。
【0044】
このことを発明者らは、以下のように推測する。成形面132の中央部近傍にて、熔融ガラス塊YGは、下型130との接触による冷却効果によりガラスが収縮し、成形面132に対する上方への離間距離(凹み深さ)が極大(極値)となる。一方、ガス噴出孔133の中央近傍にて、熔融ガラスYGは、その冷却速度が最も遅くなり、低粘性状態が維持されるため、ガラスの進入により成形面132から下方への離間距離(山の高さ)が極大(極値)となる。そして、ガス噴出孔133の最周縁部では成形面132とガラスが接触し、これら2つの極値の間の高さとなるので、発明者は下型130のガス噴出孔133の端部(成形面132の端部)が凸部GTと凹部GRの曲線の変曲点となると推測する。
【0045】
なお、ここでは、変曲点の位置がガス噴出孔133の端部(成形面132の端部)となる例を示したが、これに限られず、成形条件、又は用いる下型130のガス噴出孔133の孔径若しくはピッチにより変曲点の位置はずれてもよい。また、本実施形態において、凸部GTと凹部GRとが変曲点を介して接続される場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
図5(B)では理解し易くするために、凸部GT、凹部GR、及びガス噴出孔133を拡大して描いているが、実際には、凸部GT、凹部GR、及びガス噴出孔133の径は小さく形成されており、下型130の成形面132の凹面形状に沿って規則正しく(等ピッチに)配列されている。凸部GTの山の高さは、下型130の成形面132の凹面形状の中心部近傍が最も低く、周縁部に向かうに連れて徐々に高くなる傾向がある。これは、プレス成形中の熔融ガラス塊YGの表面温度分布によって以下のように説明される。すなわち、熔融ガラス塊YGの下面は、キャストからプレス成形開始まで浮上ガスによって冷却されるため、下型130の成形面132の凹面形状の中心部近傍に接触するガラスは、プレス成形開始時に比較的低温、すなわち高粘性となっている。一方、下型130の成形面132の凹面形状の周縁部側に接触するガラスは、プレス成形中に熔融ガラス塊YGの内部から押し出され供給されたガラスであるため、浮上ガスによる冷却がなされておらず、下型130の成形面132の凹面形状の中心部近傍に接触するガラスと比較して高温であり、すなわち低粘性である。これにより、凸部GTの山の高さは、下型130の成形面132の凹面形状の中心部近傍が最も低く、周縁部に向かうに連れて徐々に高くなる傾向にある。ただし、凸部GTの山の高さの差、つまり、下型130のガス噴出孔133への熔融ガラスYGの進入距離の差は、プレス前のガラス表面であるか、又は、プレスによって熔融ガラスYGの内部から表面に出たガラスによって新たにできた表面であるかの差であると考えられるため、厳密にはプレス前の熔融ガラス塊YGの外径周辺部分において不連続に変化している。
【0047】
ここで、ガス供給源Hからガス噴出孔133への浮上ガスの供給を停止したあとも、ガス流路である下型支持部材140の筒状空間143内には既に供給された浮上ガスが存在している(残圧がある)ため、この浮上ガスがガス噴出孔133から所定時間継続して噴出する。図5(B)のプレス成形は、この浮上ガスの噴出が継続している状態で浮上ガスの残圧に抗して実行してもよいし、この浮上ガスの噴出が完全に停止した状態で実行してもよい。前者の場合は、ガス噴出孔133内へ進入した熔融ガラス塊YGに後述する凹部GTRが形成されるため、凸部GTの高さ(ガス噴出孔132内への進入量)を抑制することができる。後者の場合は、凸部GTと凹部GRとを滑らかな曲線で接続することができ、段差やシワの少ないガラスプリフォームGPを成形することができる。図5(B)のプレス成形を、浮上ガスの噴出が継続した状態(残圧のある状態)で浮上ガスに抗して実行するか又は完全に停止した状態(残圧のない状態)で実行するか、更に浮上ガスの噴出量がどのレベルの状態で実行するかについては、目的とするガラスプリフォームGPひいては光学素子の形状や性能等に応じて適宜設定することができる。
【0048】
図6は、ガス噴出孔からのガスの残圧がある状態でプレス成形して得られたガラスプリフォームGPの断面を示す図である。すなわち、図6は、図5(B)のプレス成形を浮上ガスの噴出が継続した状態で浮上ガスに抗して実行した場合のガラスプリフォームGPを示している。このガラスプリフォームGPの下面側には、下型130の成形面132によって成形された各凸部GTの先端部に浮上ガスの残圧によって微小な凹部GTRが形成されている。また、ガラスプリフォームGPの上面側には、上型110の成形面114によって成形された曲率半径R1に近似する、又は、同じ曲率半径R1からなる曲面が成形されており、このガラスプリフォームGPの上面側の曲率半径R1は、上記ガラスプリフォームGPの下面側に形成された各凸部GTの変曲点を結んだときの曲率半径R2よりも大きくなっている(R1>R2)。更に、図5(B)のプレス成形を浮上ガスの噴出が継続した状態で浮上ガスに抗して実行することで、ガス供給の停止のタイミングに関わらず、ガラスプリフォームGPの段差やシワの発生を抑制することができる。なお、このときにおける浮上ガスの噴出量や圧力は、ガラスプリフォームに形成される凹部GTRや凸部GTの高さを考慮して設定されている。
【0049】
図7は、ガス噴出孔からのガスの噴出が完全に停止した状態でプレス成形して得られたガラスプリフォームGPの断面を示す図である。すなわち、図7は、図5(B)のプレス成形を残圧のない状態で実行した場合のガラスプリフォームGPを示している。このガラスプリフォームGPの下面側は、下型130の成形面132(図5(B)参照)によって成形された各凸部GTの先端部が滑らかな曲線形状となっている。またこのガラスプリフォームGPの凹凸の高さは、図6に示す図5(B)のプレス成形を浮上ガスの噴出が継続した状態で浮上ガスに抗して実行した場合のガラスプリフォームGPの凹凸の高さよりも大きくなる傾向がある。また、ガラスプリフォームGPの上面側には、上型110の成形面114によって成形された曲率半径R1に近似する、又は、同じ曲率半径R1からなる曲面が成形されている。よって、このガラスプリフォームGPの上面側の曲率半径R1は、上記ガラスプリフォームGPの下面側に形成された各凸部GTの変曲点を結んだときの曲率半径R2よりも大きくなっている(R1>R2)。なお、図6、7に関する説明において、R1>R2とする態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、ガラスプリフォームGPの上面側と下面側の両方の面を凸形状に形成することもできる。
【0050】
ガラスプリフォームGPのプレス成形が完了すると、図示しない上型昇降機構によって上型110を上昇させることで上型110と下型130とを離間させ、所定時間経過後にガス供給源Hからガス噴出孔133への浮上ガスの供給を再開させる。ここでいう「所定時間」とは、プレス成形が完了した直後からガラスの粘性が所望の粘性となるまでに要する十分な時間を示している。これにより、ガラスプリフォームGPは下型130の成形面132から離れ、下型130の成形面132上に非接触で浮上させながら支持される。この状態で、回転テーブル210を所定量回転させ、ガラスプリフォームGP及び下型130を処置位置4へ移送する。なお、ガス供給源Hからガス噴出孔133への浮上ガスの供給を再開させるタイミングは、プレス成形が完了したあとの任意のタイミングに設定することができ、プレス成形が完了した直後や処置位置4(図3参照)に移送してから浮上ガスの供給を再開することもできる。プレス成形が完了した直後に浮上ガスの供給を再開する場合には、成形したガラスプリフォームGPの形状が変形しないようにガス流量を調整することが好ましい。
【0051】
処置位置4では、図4(D)に示すように、図示しない下型昇降機構によって下型130を上昇端まで上昇させる。このとき、プレス成形されたガラスプリフォームGPを下型胴型150の上端面153よりつき出させ、下型胴型150とガラスプリフォームGPの外周面との接触を早期に終了させることで、ガラスプリフォームGPの外周面の冷却が過剰となることを防ぐことができる。これにより、ガラスプリフォームGPの中心部と外周面の冷却速度差に起因するカン、ワレの抑止が可能となる。その後、ガラスプリフォームGPの外周面の一部が下型胴型150の大径筒状部151の上端から出る程度に下型130を下降させ、その状態で回転テーブル210を回転させることにより下型130及びガラスプリフォームGPは処置位置5へと移送され、その後、順次、処置位置6−10へと移送される。下型130を上昇端から所定量下降させることにより移送時にガラスプリフォームGPの外周面が下型胴型150の大径筒状部151の内周面により規制され、ガラスプリフォームGPは下型130の成形面132上で位置を保った状態で移送される。処置位置5−10では、プレス成形されたガラスプリフォームGPが徐冷される。このとき、下型130の上方に配置された図示しないガス噴出ノズルを処置位置毎に設置して徐冷を行うことができ、各処置位置に配置されたガス噴出ノズルの位置は、所定の冷却効率を得られるように調整すればよい。
【0052】
なお、ここでは下型130を上昇端から所定量下降する例を示したが、これに限られず、下型130を上昇端の位置に維持したまま移送しガラスプリフォームGPを取り出してもよく、成形面132上でガラスプリフォームGPの位置ズレを防止するために、例えば、処理位置8−10において下型130を所定量下降する等してもよい。
【0053】
次いで処置位置11では、図4(E)に示すように、吸引機能を備えた吸着パッドを用いて、下型130の成形面132上に浮上した状態で支持されたガラスプリフォームGPを吸着してプリフォーム成形型100の外部に取り出す。最後に処置位置12では、図4(F)に示すように、図示しない下型昇降機構によって下型130を下降端まで下降させる。
【0054】
以上のように、本実施形態のガラスプリフォームの製造方法は、下型130の成形面132上に熔融ガラス塊YGを浮上させた状態で、上型110と下型130を接近させ、上型110の成形面114と下型130の成形面132とが押切り位置に到達するまでに、ガス噴出孔133への浮上ガスの供給を停止し、ガス噴出孔133への浮上ガスの供給を停止した状態で、更に上型110と下型130を接近させ、熔融ガラス塊YGを下型130の成形面132に接触させ、少なくとも押切り位置において、下型130のガス噴出孔133内に熔融ガラス塊YGの一部が進入する程度にプレス成形している。これにより、熔融ガラス塊YGと下型130の成形面132との接触時間を極限まで少なくして段差やシワの発生を抑えることで所望の形状となったガラスプリフォームGPを再現性よく製造することができる。
【0055】
本実施形態のガラスプリフォームの製造方法は、扁平状(両凸曲面状)に予備成形したゴブプリフォームなどのあらゆるプリフォームに適用可能であるが、とりわけ最終製品である光学素子の形状に近似させた近似形状プリフォームを製造するのに好適である。近似形状プリフォームは、精密プレス成形時の変形量を小さくする必要のある硝材を成形する場合に、ガラスプリフォームの製造段階で所望の形状を得ることが要求され、このような場合に有用である。また、精密プレス成形時におけるプレス温度の低減による精密プレス成形型及び精密プレス成形型に形成した融着防止膜の長寿命化に対しても有用である。
【0056】
また精密プレス成形の成形型との融着を引き起こし易い硝材からなるガラスプリフォームの場合、ガラスプリフォームの表面に融着防止用のコーティングを施すことがある。しかし精密プレス成形時のガラスプリフォームの変形量(変化率)が大きいと、コーティングが破断して内部のガラスが飛び出し、飛び出したガラスが成形型に融着して精密プレス品の表面に欠損を発生させ、所望の性能の光学素子が得られない。成形型表面へガラスの融着が発生するとそれ以降の精密プレス成形を行うことができなくなる。この点においても、精密プレス成形時の変形量を小さくしてコーティングの破断を防ぐために、ガラスプリフォームの製造段階で所望の形状を得ることが要求される。
【0057】
そこで本実施形態のガラスプリフォームの製造方法は、プレス成形の最終段階で、ガス噴出孔133への浮上ガスの供給を停止した状態で、上型110の成形面114を熔融ガラス塊YGの上面に接触させ、下型130の成形面132を熔融ガラス塊YGの下面に接触させてプレス成形している。これにより、段差がなくシワの少ない所望の形状の近似形状ガラスプリフォームGPを製造することができる。また精密プレス成形時のガラスプリフォームGPの径方向の変形量が小さくなるので、ガラスプリフォームGPの融着防止用のコーティングが破損するおそれがない。
【0058】
これに対し、例えば上述の特許文献2は、プレス成形時に熔融ガラス塊が上型及び下型の成形面と非接触であるため、熔融ガラス塊から熱を吸収できないこと、ガラスプリフォームに成形面の形状が転写されないこと、及び、ガラスプリフォームの外径が規制されていないことから、所望の形状が得られず、ガラスプリフォームの形状バラツキも大きい。したがって、近似形状プリフォームを製造するのには不向きであり、また精密プレス成形時に融着防止用のコーティングが破損するといった不具合がある。
【0059】
「光学素子の製造方法及び光学素子」
上述のようにして製造したガラスプリフォームGPは、トレー等の容器に一旦収容されたあと、洗浄工程や融着防止用の成膜工程等の所定の工程を経て、精密プレス成形型に供給される。
【0060】
図8は本実施形態で使用する精密プレス成形型160の構成を示している。精密プレス成形型160は、上型161、下型162、及び、胴型163により構成されている。上型161及び下型162は、精密な面形状が施された凸面形状の成形面161a及び凹面形状の成形面162aをそれぞれ有する小径部と、この小径部より径の大きい大径部とから構成されている。また胴型163は両端が開口する円筒形状に形成されている。
【0061】
精密プレス成形型160は次のようにして組み立てる。まず胴型163の内側に上型161を挿入して、胴型163の小径内胴部の上面に上型161の大径部の下面を当接させることにより、上型161及び胴型163を予め組み込む。そして、下型162の成形面162aを上型161の成形面161aと対向させた状態で下型162を胴型163に下側から挿入して、上型161、下型162、及び、胴型163を一体化させる。
【0062】
精密プレス成形型160にガラスプリフォームGPを供給したら、図示しないプレス成形装置によって精密プレス成形を行う。以下では、精密プレス成形型160とガラスプリフォームGPを一緒に加熱してプレス成形する、いわゆる等温プレス成形と呼ばれる精密プレス成形方法を説明する。しかし、精密プレス成形は、精密プレス成形型160とガラスプリフォームGPを別々に予熱したあとにプレス成形する、いわゆる非等温プレス成形によっていってもよく、その方法を問わない。
【0063】
等温プレス成形では、まず、精密プレス成形型160とガラスプリフォームGPを一緒に、ガラスプリフォームGPのガラス転移点(Tg)以上の温度まで加熱する。すると上型161、下型162及びガラスプリフォームGPが互いに等温となり、ガラスプリフォームGPのガラス粘度が精密プレス成形にとって適切な10〜1012ポアズになる。また、より好ましくは、10〜1011ポアズの粘度を示す温度に加熱して精密プレス成形を行うことが好ましい。
【0064】
次いで、図示しない加圧ロッドを動かすことにより、上型161を押圧して、上型161及び下型162を互いに近接させ、ガラスプリフォームGPを押圧することで、精密プレス成形を行う。この工程が、得られたガラスプリフォームGPを精密プレス成形することで、凸部GTが消失した光学素子を得る仕上げ成形工程である。このとき、ガラスプリフォームGPの平面視位置(中心軸)と、上型161の成形面161a及び下型162の成形面162aの平面視位置(中心軸)とを高精度に一致させることで、ガラスプリフォームGPの中心部を正確にプレスすることができる。
【0065】
精密プレス成形により、ガラスプリフォームGPに形成された凸部GTと凹部GRは完全に消失する。別言すると、上述したガラスプリフォームGPの製造段階では、精密プレス成形型160による精密プレス成形によって確実に消失する程度の凸部GTと凹部GRをガラスプリフォームGPに形成することが重要である。ここで精密プレス成形によりガラスプリフォームGPに形成された凸部GTと凹部GRが消失するのは、凸部GTと凹部GRの断面形状が波形状(熔融ガラス塊YGの浮上安定性を考慮して下型130の成形面132の凹面形状に等ピッチで配列、断面形状が波のように曲率が徐変するような形状)となっているためだと考えられる。
【0066】
まず、発明者らは、上述したガラスプリフォームGPを製造し、得られたガラスプリフォームGPを用いて精密プレス成形を行い、得られた光学素子を観察したところ、ガラスプリフォームGPに形成されていた凸部GTと凹部GRが完全に消失していることを確認した。このときのガラスプリフォームGPの成形に用いた下型130は、ガス噴出孔の径が50μm、ガス噴出孔のピッチが200μmである。このように形成された下型130を使用した場合には、凸部GTの山の頂上から凹部GRの底部までの高さは、成形面132の中央部近傍において0.50μm〜0.55μm(第1の差)であり、成形面132の周縁部近傍において1.60μm〜1.70μm(第2の差)であった。これは、精密プレス成形に用いたガラスプリフォームGPと同一ロットのガラスプリフォームGPについて測定した結果であり、発明者らは、凸部GTの頂部と凹部GRの底部との差が、具体的には20μm以下であれば本発明が成立つと推測する。また、凸部GTの頂部と凹部GRの底部との差が小さいほど凸部GTと凹部GRは消失し易いため、10μm以下が好ましく、5.0μm以下が更に好ましく、2.0μm以下となることが望ましい。
【0067】
また、上述の例において、ガラスプリフォームGPに形成される凸部GTの頂部のピッチ(下型130のガス噴出孔のピッチ)に対する凸部GTの頂部と凹部GRの底部との差の割合(%)は、0.25%[(0.50μm/200μm)×100)]〜10%[(20μm/200μm)×100)]の範囲であり、上限値を5.0%[(10μm/200μm)×100]としてもよい。また、この割合の上限値は、2.5%[(5.0μm/200μm)×100]、1.0%[(2.0μm/200μm)×100]、0.85%[(1.70μm/200μm)×100]、0.80%[(1.60μm/200μm)×100]、0.275%[(0.55μm/200μm)×100]に設定することができる。この割合からわかるように、本発明におけるガラスプリフォームGPに形成される凸部GTの頂部のピッチに対する凸部GTの頂部と凹部GRの底部との差の割合は小さく、一番大きなものにおいても10%となっている。
【0068】
また、上述のガス噴出孔の径及びガス噴出孔のピッチは、熔融ガラス塊YGの浮上安定性を考慮して、適宜変更可能である。
【0069】
これに対し、上述の特許文献1のような従来方式のダイレクトプレスにより製造したガラスプリフォームは、断面形状が鋭いエッジとなっている段差が形成されているため、この段差が精密プレス成形によっても消失せず、光学素子の光学性能が劣化してしまう。
【0070】
精密プレス成形が完了すると、精密プレス成形型160とガラスプリフォームGPをガラスプリフォームGPのガラス転移点(Tg)より低い温度まで冷却する。そして精密プレス成形型160及びガラスプリフォームGPを所定時間冷却したら、精密プレス成形型160の下型162を胴型163から抜き取り、下型162の成形面162aから完成した光学素子(例えば非球面レンズ)を取り出す。このようにして得られた光学素子は、表面に上型161の成形面161a及び下型162の成形面162aが正確に転写された偏芯精度の高い光学素子である。
【0071】
精密プレス成形により形成した光学素子は、トレー等の容器に一度収容され、必要に応じて芯取り加工に供される。芯取り加工とは、光学素子の余計な肉を除去するために行う研削・研磨加工を意味し、従来既知の方法を採用することができる。
【0072】
以上の実施形態では、回転移送式のガラスプリフォームの製造装置200の処置位置2において、下型130の成形面132の直上位置からフィーダによって熔融ガラス塊YGを直接的に供給している。しかし、図9及び図10に示すような、熔融ガラス塊YGをガラスプリフォームの製造装置200とは別の回転テーブル170に、アーム171を介して設けられた割型(以下、浮上皿172と記載する)で一旦保持して、その後にプリフォームの製造装置200の成形型220にキャストする別実施形態も可能である。
【0073】
図9は、別の回転テーブル170を介して熔融ガラス塊YGを成形型220にキャストする別実施形態(ガラスプリフォームの製造装置230)を示す図である。図10は、別の回転テーブル170に設けられたアーム171を開いて熔融ガラス塊YGを成形型220に供給する様子を示す図である。回転テーブル170は、平板状に形成された1対のアーム171と、このアーム171の先端部に設けられた1対の多孔質製の浮上皿172とを備えており、前述の実施例の回転テーブル210よりも上方(フィーダに近い側)に配置されている。1対のアーム171は、幅方向に分割されるように開閉自在となっている。アーム171に設けられたアーム開閉機構(図示せず)によって1対のアーム171を閉じて浮上皿172で熔融ガラス塊YGを浮上した状態で支持し(浮上皿172の下方から出ている浮上ガスの上方に熔融ガラス塊YGを浮上支持し)、アーム171を開いて浮上皿172で浮上支持した熔融ガラス塊YGを供給する。このとき、熔融ガラス塊YGは、上述の実施例に比べて高い位置にてキャストされている。また、キャスト時及び浮上時のガス流量は上述の実施形態と同じ0.20L/minとしている。回転テーブル170が所定時間毎に間欠的に時計方向に回転することで、アーム171がポジション1−6を順次通過していく。まずアーム171は、ポジション1において、先端部を閉じた状態で浮上皿172によりフィーダから熔融ガラス塊YGを受け取る(高位置キャスト)。次いでアーム171は、ポジション2に移動して先端部を幅方向(水平方向)に開くことで、ガラスプリフォームの製造装置230の処置位置2において、浮上皿172で浮上支持した熔融ガラス塊YGを解放して下型130の成形面132に供給する(図10)。熔融ガラス塊YGの供給が終わると、アーム171は、幅方向(水平方向)に開いたまま、又は、ポジション3以降においてアーム171を閉じて、ポジション3−6を順次移送してポジション1に戻る。このとき、ポジション3−6を移送することによりアーム171が冷却され、ポジション1のときの状態に戻る。このように、回転テーブル170を仲介して熔融ガラス塊YGをガラスプリフォーム成形型100に供給することで、熔融ガラスYGの温度や形状が均一になって高品質なガラスプリフォームGPを製造することができる。
【0074】
以上の実施形態では、下型130には、その上下方向に貫通させて複数(多数)のガス噴出孔(微細ガス噴出孔、マルチ孔)133が下型130の成形面132の凹面形状に沿った同心円状に、規則正しく形成される例について説明したが、ガス噴出孔133の孔径やピッチは、硝材の比重や得ようとするガラスプリフォームの形状、大きさ、成形精度に応じて所望の大きさに設定することができる。
【0075】
以上の実施形態では、ガラスプリフォームGPのプレス成形時に、上型110の成形面114と下型130の成形面132との外周に下型胴型150の大径筒状部151が位置している。このためガラスプリフォームGPの外周面が下型胴型150の大径筒状部151に当接し、ガラスプリフォームGPの外径が規制されて公差バラツキが小さくなり、ガラスプリフォームGPの肉厚バラツキも小さくすることができる。このように成形されたガラスプリフォームGPであれば、精密プレス成形時に、サイド当て方式の成形型(胴型ありの成形型)を使用する場合であっても、成形型内にガラスプリフォームGPが入らないといった問題は発生しない。またガラスプリフォームGPの成形精度が高いため、高精度な光学素子が成形可能となる。
【0076】
これに対し、下型に胴型と同様の機能を持たせることもでき、又は胴型を省略したサイドフリー方式も採用可能である。サイドフリー方式の場合は、ガラスプリフォームGPの外径が規制されないため、外径や肉厚の寸法バラツキ(分布)がサイド当て方式に比べて大きくなる。しかしサイドフリー方式の成形型(胴型無しの成形型)であっても、チルトを修正する機構が成形装置に設けられているため、ガラスプリフォームGPの外径寸法の精度に限ってはサイド当て方式より劣るものの、芯取り加工などの処理を適宜施すことによりサイド当て方式と同等に使用可能とすることができる。
【0077】
以上の実施形態では、浮上ガスを噴出した状態で上型110の成形面114を熔融ガラス塊YGに接触させ、その後、押切位置に到達するまでにガスの供給を停止する例を示したが、これに限定されるものではない。精密プレス成形によって確実に消失する程度の凸部GTと凹部GRをガラスプリフォームGPに形成することが重要であり、例えば、上型110の成形面114が熔融ガラス塊YGに接触する前にガスの供給を停止し、その後、押切位置に到達させることができる。その場合には、ガスが完全に停止する前に上型110の成形面114が熔融ガラス塊YGに接触し、下型130の成形面132と熔融ガラス塊YGとが接触したあと、残圧のある状態でプレス成形してもよく、また、残圧のない状態でプレス成形してもよい。
【0078】
また、ガスの供給を停止し、上型110の成形面114が熔融ガラスYGに接触する前に、熔融ガラスYGが下型130の成形面132に接触してもよく、この場合にはプレス成形後にガラスプリフォームGPに残るシワ等が精密プレス成形時に消失する範囲において本発明を適用することができる。好ましくは、熔融ガラス塊YGが上型110の成形面114及び下型130の成形面132に同時に接触するのがよい。
【0079】
以上の実施形態では、上型110の成形面114を凸面形状に形成し、下型130の成形面132を凹面形状に形成した例を示したが、これに限定されず、成形面の形状は適宜変更可能である。例えば、上型110の成形面114を凹面形状や平面形状にしてもよいし、下型130の成形面132を凸面形状や平面形状に形成してもよい。
【0080】
また、以上の実施形態では、ガラスプリフォームGPの上側の面の曲率半径R1が、ガラスプリフォームGPの下側の面の曲率半径R2よりも大きく形成した例を示したが、これに限定されず、ガラスプリフォームGPの形状は、ガラスプリフォームGPの上側の面の曲率半径R1が、ガラスプリフォームGPの下側の面の曲率半径R2よりも小さく形成されていてもよい。また、ガラスプリフォームGPの上側の面が凹面であり、ガラスプリフォームGPの下側の面が凸面となる例を示したが、これに限られず、上下の面を逆に形成してもよく、あるいは、ガラスプリフォームGPの上下の面を凸面、又は、凹面とすることができる。
【0081】
本発明においては、各種光学素子、例えばレンズ、プリズムなどを作製することができる。作製できるレンズは例えば、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどである。作製するレンズはその第1面と第2面を球面若しくは非球面又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0082】
光学素子の表面には必要に応じて、反射防止膜などのコーティング、面取り加工、芯取り加工を行ってもよい。またプレス成形時のガラス素材の延伸性を高めること、及びガラス素材と成形型との融着を防ぐことを目的として、成形型の成形面に炭素コート等の薄膜を成膜してもよい。成膜の方法としては従来から既知の方法を用いることができ、例えばスパッタリングや化学気相蒸着法(CVD)等を用いることができる。
【0083】
本発明は、熔融ガラス塊をプレス成形するときに、下型130の成形面132に熔融ガラス塊YGを接触させることにより、熔融ガラス塊から熱を奪いながら下型130の成形面132に施された面形状を熔融ガラス塊YGに転写することができ、所望の形状精度を得ることができる範囲において適用することができる。
【0084】
最後に、本発明の実施の形態を、図等を用いて総括する。
【0085】
本発明の実施の形態に係るガラスプリフォームの製造方法は、図1図7に示すように、対向する成形面(114,132)を有し互いに接近及び離間可能な上型(110)と下型(130)であって、少なくとも下型(130)の成形面(132)に複数のガス噴出孔(133)が形成された上型(110)と下型(130)とを用い、下型(130)のガス噴出孔(133)からガスを噴出した状態で、下型(130)の成形面(132)上に熔融ガラス塊(YG)を供給し、下型(130)の成形面(132)上に熔融ガラス塊(YG)を浮上させながら支持する工程と、熔融ガラス塊(YG)が浮上した状態で上型(110)と下型(130)を接近させる工程と、上型(110)の成形面(114)と下型(130)の成形面(132)とが押切り位置に到達するまでに、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止する工程と、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止した状態で、更に上型(110)と下型(130)を接近させ、熔融ガラス塊(YG)を下型(130)の成形面(132)に接触させる工程と、少なくとも押切り位置において、下型(130)のガス噴出孔(133)内に熔融ガラス塊(YG)の一部が進入する程度にプレス成形する工程と、を含む。
【0086】
また、好ましくは、図4に示すように、プレス成形する工程は、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止したあと、ガスの残圧がある状態でガスの残圧に抗して実行される。
【0087】
また、更に好ましくは、図4に示すように、プレス成形する工程は、ガス噴出孔(133)からのガスの噴出が完全に停止した状態で実行される。
【0088】
また、本発明の実施の形態に係るガラスプリフォームは、図5図7に示すように、本実施の形態に係るガラスプリフォームの製造方法によって製造されたガラスプリフォーム(GP)であって、ガラスプリフォーム(GP)には、ガス噴出孔(133)の形状に対応する凸部が形成されている。
【0089】
また、好ましくは、図6に示すように、ガラスプリフォームの隣り合う凸部の間には、曲面によって形成される凹部が形成されている。
【0090】
また、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法は、図1図8に示すように、対向する成形面(114,132)を有し互いに接近及び離間可能な上型(110)と下型(130)であって、少なくとも下型(130)の成形面(132)に複数のガス噴出孔(133)が形成された上型(110)と下型(130)とを用い、下型(130)のガス噴出孔(133)からガスを噴出した状態で、下型(130)の成形面(132)上に熔融ガラス塊(YG)を供給し、下型(130)の成形面(132)上に熔融ガラス塊(YG)を浮上させながら支持する工程と、熔融ガラス塊(YG)が浮上した状態で上型(110)と下型(130)を接近させる工程と、上型(110)の成形面(114)と下型(130)の成形面(132)とが押切り位置に到達するまでに、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止する工程と、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止した状態で、更に上型(110)と下型(130)を接近させ、熔融ガラス塊(YG)を下型(130)の成形面(132)に接触させる工程と、少なくとも押切り位置において、下型(130)のガス噴出孔(133)内に熔融ガラス塊(YG)の一部が進入する程度にプレス成形し、下型(130)の成形面側(132)の面にガス噴出孔(133)の形状に対応する凸部が形成されたガラスプリフォーム(GP)を得る工程と、得られたガラスプリフォーム(GP)を精密プレス成形することで、凸部が消失した光学素子を得る仕上げ成形工程とを含む。
【0091】
また、好ましくは、図4に示すように、プレス成形する工程は、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止したあと、ガスの残圧がある状態でガスの残圧に抗して実行される。
【0092】
また、更に好ましくは、図4に示すように、プレス成形する工程は、ガス噴出孔(133)からのガスの噴出が完全に停止した状態で実行される。
【0093】
また、本発明の実施の形態に係る光学素子は、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法によって製造される。
【0094】
本発明の実施の形態に係るガラスプリフォームの製造方法は、図1図7に示すように、対向する成形面(114,132)を有し、互いに接近及び離間可能な上型(110)と下型(130)であって、少なくとも下型(130)の成形面(132)に複数のガス噴出孔(133)が形成された上型(110)と下型(130)を用いて熔融ガラス塊(YG)をプレス成形することによりガラスプリフォームを得るガラスプリフォームの製造方法において、下型(130)のガス噴出孔(133)からガスを噴出した状態で、下型(130)の成形面(132)上に熔融ガラス塊(YG)を供給し、下型(130)の成形面(132)上に熔融ガラス塊(YG)を浮上させながら支持する工程と、下型(130)の成形面(132)上に熔融ガラス塊(YG)を供給したあとに、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止する工程と、ガス噴出孔(133)へのガスの供給を停止した状態で、上型(110)と下型(130)を接近させ、熔融ガラス塊(YG)を下型(130)の成形面(132)に接触させてプレス成形する工程と、を含む。
【0095】
また、好ましくは、ガスの供給を停止する工程は、上型(110)の成形面(114)と下型(130)の成形面(132)とが押切り位置に到達するまでに行われる。
【0096】
また、更に好ましくは、プレス成形する工程は、プレス成形する工程は、押切り位置において行われる。
【0097】
また、本発明の実施の形態に係るガラスプリフォームは、図5図7に示すように、本実施の形態に係るガラスプリフォームの製造方法によって製造されたガラスプリフォーム(GP)であって、ガラスプリフォーム(GP)は、凸部(GT)及び凹部(GR)を有し、凸部(GT)及び凹部(GR)は、凸部(GT)の頂部から凹部(GR)の底部までの差が20μm以下に形成される。
【0098】
また、好ましくは、図6に示すように、凸部(GT)及び凹部(GR)は、ガラスプリフォーム(GP)の中央部に形成される凸部(GT)の頂部から底部までの第1の差より、ガラスプリフォームの周縁部に形成される凸部(GT)の頂部から底部(GR)までの第2の差の方が大きく形成される。
【0099】
また、本発明の実施の形態に係るガラスプリフォームは、ガラスプリフォームGPに形成される凸部(GT)の頂部のピッチに対する凸部(GT)の頂部と凹部(GR)の底部との差の割合(%)は、0.25%[(0.50μm/200μm)×100]〜10%[(20μm/200μm)×100]の範囲とすることができる。また、この割合の上限値を5.0%[(10μm/200μm)×100]としてもよい。
【0100】
また、この割合の上限値は、2.5%[(5.0μm/200μm)×100]、1.0%[(2.0μm/200μm)×100]、0.85%[(1.70μm/200μm)×100]、0.80%[(1.60μm/200μm)×100]、0.275%[(0.55μm/200μm)×100]のいずれかに設定することができる。
【0101】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内の全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
100 ガラスプリフォーム成形型
110 上型
111 大径部
112 中径部
113 小径部
114 成形面
120 上型胴型
121 大径筒状部
122 中径筒状部
123 小径筒状部
124 径方向孔
130 下型
131 環状段部
132 成形面
133 ガス噴出孔(微細ガス噴出孔、マルチ孔)
140 下型支持部材
141 大径部
142 小径部
143 筒状空間
144 下端面
150 下型胴型
151 大径筒状部
152 小径筒状部
153 上端面
160 精密プレス成形型
161 上型
161a 成形面
162 下型
162a 成形面
163 胴型
170 回転テーブル
171 アーム
172 浮上皿
200,230 ガラスプリフォーム製造装置
210 回転テーブル
220 結合体(成形型)
H ガス供給源
YG 熔融ガラス塊(軟化ガラス塊)
GP ガラスプリフォーム
GT 凸部
GR 凹部
GTR 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10