特許第5829168号(P5829168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許5829168二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法
<>
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000005
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000006
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000007
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000008
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000009
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000010
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000011
  • 特許5829168-二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5829168
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム及びこれを用いた二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20151119BHJP
   B01D 3/00 20060101ALI20151119BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20151119BHJP
   C02F 1/16 20060101ALI20151119BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20151119BHJP
   C01B 31/20 20060101ALI20151119BHJP
   B01D 53/62 20060101ALN20151119BHJP
   B01D 53/18 20060101ALN20151119BHJP
【FI】
   B01D53/04 G
   B01D3/00 A
   C02F1/04 A
   C02F1/16
   B01D5/00 Z
   C01B31/20 B
   !B01D53/34 135Z
   !B01D53/18 ZZAB
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-79869(P2012-79869)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208534(P2013-208534A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晃平
(72)【発明者】
【氏名】金枝 雅人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 周一
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−110279(JP,A)
【文献】 特開昭60−153919(JP,A)
【文献】 特開昭61−161189(JP,A)
【文献】 特開昭61−283325(JP,A)
【文献】 特開平04−029712(JP,A)
【文献】 特開平09−108653(JP,A)
【文献】 特開2000−229214(JP,A)
【文献】 特表2001−526959(JP,A)
【文献】 特開2003−175311(JP,A)
【文献】 特開2005−262001(JP,A)
【文献】 特開2011−140021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−5/00
B01D 53/02−53/12
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/85
C01B 31/20
C02F 1/04
C02F 1/16
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素捕捉剤を有する二酸化炭素吸収塔に二酸化炭素含有ガスを流入させて二酸化炭素を捕捉させた後、前記二酸化炭素吸収塔に再生ガスを流入させて前記二酸化炭素捕捉剤から二酸化炭素を脱離して二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムにおいて、
前記二酸化炭素吸収塔の内部または外部の少なくとも一方に前記二酸化炭素捕捉剤を冷却する冷却手段を設置するとともに、前記冷却手段は、冷媒ラインと、該冷媒ラインを流れる冷媒を気化させる気化手段と、気化した冷媒を減圧する減圧ポンプと、気化した冷媒の蒸気を回収する冷媒回収ラインとを有することを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
請求項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、前記冷媒ラインに通す冷媒として水を80質量%以上含む液体を使用し、さらに気化した水蒸気を圧縮する圧縮機と、気化した水蒸気を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で発生した凝縮熱を他の媒体に与える熱交換器と、生成した凝縮水を回収する凝縮水回収ラインを設置することを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
請求項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、前記冷媒ラインに通す冷媒として海水を使用することを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、前記気化手段は高表面積素材を有することを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
二酸化炭素吸収塔に二酸化炭素含有ガスを流入させて二酸化炭素捕捉剤で二酸化炭素を捕捉させた後、前記二酸化炭素吸収塔に再生ガスを流入させて前記二酸化炭素捕捉剤から二酸化炭素を脱離して回収し、前記二酸化炭素吸収塔の内部または外部の少なくとも一方に前記二酸化炭素捕捉剤を冷却する冷却手段を設置し、
前記冷却手段は、冷媒ラインと、該冷媒ラインを流れる冷媒を気化させる気化手段と、気化した冷媒を減圧する減圧ポンプと、冷媒蒸気を回収する冷媒回収ラインとを有し
前記冷媒として水を80質量%以上含む液体を使用し、さらに気化した水蒸気を圧縮する圧縮機と、凝縮器と、該凝縮器で発生した凝縮熱を他の媒体に与える熱交換器と、生成した凝縮水を回収する凝縮水回収ラインを有する二酸化炭素回収システムを用いた二酸化炭素回収方法において、
二酸化炭素の回収操作と同時に前記冷媒の蒸留操作を実施することにより、冷媒中の水の質量濃度を上げて、蒸留操作前より純度の高い凝縮水を回収することを特徴とする二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO2)捕捉剤を利用した二酸化炭素(CO2)回収システム及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を抑制するために、温室効果ガスとして影響が大きいCO2の排出量削減が求められている。CO2排出抑制の具体的システムとしては、吸収液や吸着材等を用いた分離回収技術がある。
【0003】
一例として、ガスの吸着分離技術には特許文献1が知られている。特許文献1では、試料ガス中のある特定成分を吸着分離するため、まず吸着剤を収容した吸着塔の吸着剤に特定成分を吸着させ、その後、特定成分を一定量吸着させた吸着塔への加熱と通気により、特定成分を脱離して吸着剤を再生している。
【0004】
回収した特定成分のガス純度の低下を防止するためには、流入させるガスとして、常温で容易に気液分離が可能な水蒸気が望ましい。しかし、加熱水蒸気の流入によってCO2捕捉剤を再生すると、加熱水蒸気よりも低い温度であるCO2捕捉剤と接触することにより水蒸気が凝縮して液体の水が生成する可能性がある。CO2捕捉剤が水に浸漬すると、CO2捕捉剤のCO2捕捉機能を果たさなくなる恐れがあった。
【0005】
そのため、CO2捕捉剤を用いたCO2回収システムとしては、CO2捕捉剤の再生時に加熱水蒸気を流入するシステムではなく、吸着量の圧力差を利用した手法が大半である。圧力変化によって生じるCO2捕捉剤のCO2捕捉量の差を用いたCO2回収システムとしては、例えば特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−91127号公報
【特許文献2】特開2009−220101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、CO2含有ガス中からCO2を捕捉した後、CO2捕捉剤を再生するために高温の再生ガスをCO2捕捉剤に流入してCO2を脱離させるCO2回収システムにおいて、CO2捕捉反応熱で生じるCO2吸収塔内の温度上昇によってCO2捕捉量が低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、二酸化炭素捕捉剤を有する二酸化炭素吸収塔に二酸化炭素含有ガスを流入させて二酸化炭素を捕捉させた後、二酸化炭素吸収塔に再生ガスを流入させて二酸化炭素捕捉剤から二酸化炭素を脱離して二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムにおいて、二酸化炭素吸収塔の内部または外部の少なくとも一方に二酸化炭素捕捉剤を冷却する冷却手段を設置したことを特徴とする。
【0009】
また、二酸化炭素回収システムにおいて、二酸化炭素吸収塔内に、冷媒ラインと冷媒ラインを流れる冷媒を気化させる気化手段と、気化した冷媒を減圧する減圧ポンプと、気化した冷媒の蒸気を回収する冷媒回収ラインとを設置することを特徴とする。
【0010】
また、二酸化炭素回収システムにおいて、冷媒ラインに通す冷媒として水を80質量%以上含む液体を使用し、さらに気化した水蒸気を圧縮する圧縮機と、気化した水蒸気を凝縮させる凝縮器と、凝縮器で発生した凝縮熱を他の媒体に与える熱交換器と、生成した凝縮水を回収する凝縮水回収ラインを設置することを特徴とする。
【0011】
また、二酸化炭素回収システムにおいて、冷媒ラインに通す冷媒として海水を使用することを特徴とする。
【0012】
また、二酸化炭素回収システムにおいて、気化手段は高表面積素材を有することを特徴とする。
【0013】
また、二酸化炭素回収システムにおいて、二酸化炭素吸収塔内に冷却手段として冷却水を流す冷却水配管を設置し、二酸化炭素吸収塔内を流入させた冷却水と他の媒体を熱交換する熱交換器を二酸化炭素吸収塔外部に設置することを特徴とする。
【0014】
さらに、二酸化炭素吸収塔に二酸化炭素含有ガスを流入させて二酸化炭素捕捉剤で二酸化炭素を捕捉させた後、二酸化炭素吸収塔に再生ガスを流入させて二酸化炭素捕捉剤から二酸化炭素を脱離して回収し、二酸化炭素吸収塔の内部または外部の少なくとも一方に二酸化炭素捕捉剤を冷却する冷却手段を設置し、二酸化炭素吸収塔内に、冷媒ラインを流れる冷媒を気化させる気化手段と、気化した冷媒を減圧する減圧ポンプと、冷媒蒸気を回収する冷媒回収ラインとを設置し、冷媒として水を80質量%以上含む液体を使用し、さらに気化した水蒸気を圧縮する圧縮機と、凝縮器と、凝縮器で発生した凝縮熱を他の媒体に与える熱交換器と、生成した凝縮水を回収する凝縮水回収ラインを有する二酸化炭素回収システムを用いた二酸化炭素回収方法において、二酸化炭素の回収操作と同時に冷媒の蒸留操作を実施することにより、冷媒中の水の質量濃度を上げて、蒸留操作前より純度の高い凝縮水を回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二酸化炭素捕捉剤を有する二酸化炭素吸収塔に二酸化炭素含有ガスを流入させて二酸化炭素を捕捉させた後、二酸化炭素吸収塔に再生ガスを流入させて二酸化炭素捕捉剤から二酸化炭素を脱離して二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムにおいて、二酸化炭素吸収塔の内部または外部の少なくとも一方に二酸化炭素捕捉剤を冷却する冷却手段を設置したことにより、吸収塔内にCO2が捕捉された時、捕捉反応熱で吸収塔内の温度が上昇しても、CO2捕捉量が低下することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1におけるCO2回収システムを示す模式図。
図2】本発明の実施例2におけるCO2回収システムを示す模式図。
図3】本発明の実施例3におけるCO2回収システムを示す模式図。
図4】本発明の実施例4におけるCO2回収システムを示す模式図。
図5】本発明の比較例におけるCO2回収システムを示す模式図。
図6】CO2捕捉剤の脱離曲線を示すグラフ。
図7】CO2含有ガス流入経過時間に対するCO2回収率変化を示すグラフ。
図8】本発明の比較例におけるCO2吸収塔の温度分布とCO2捕捉量の経時変化を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施する為の形態について説明する。まず、本発明の前提として、冷却手段を設置しない場合のCO2回収システムについて次の比較例によって説明する。
[比較例]
図5に示すCO2回収システムを比較例として挙げる。比較例のCO2吸収塔140は、一種類のCO2捕捉剤141を利用している。
【0018】
捕捉工程においては、CO2含有ガスライン142から流入させたCO2含有ガス中のCO2がCO2捕捉剤141によって捕捉され、CO2除去ガスがCO2除去ガスライン143から排出される。このCO2捕捉時にCO2捕捉反応によってCO2捕捉剤141が発熱する。
【0019】
CO2捕捉剤141は、CO2吸収塔140の上流側(CO2含有ガスライン142側)では最初CO2捕捉反応によって温度が上昇する。しかし、捕捉量が飽和状態に近付くと、CO2捕捉剤141は供給されるCO2含有ガスに常時接触するため、CO2含有ガス温度まで冷却される。
【0020】
一方、CO2吸収塔140の下流側(CO2除去ガスライン143側)では、CO2捕捉反応熱によって加熱されたCO2含有ガスが徐々に流入し、またCO2捕捉反応が上流側より遅れて始まることから、上流側よりも一定時間遅れて高温になる。
【0021】
CO2捕捉剤141として、図6に示す脱離曲線を持つ材料を用いた場合のCO2回収率、CO2吸収塔内温度、及びCO2捕捉量の経時変化を計算した。ただし、計算の諸条件は表1〜表3に示した値を用いた。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】

図7にCO2含有ガス流入経過時間に対するCO2回収率を示す。CO2回収率として、例えば90%以上を設定した場合には、このCO2捕捉剤性能及び捕捉材容積では、CO2含有ガス流入時間として20分以内が望ましいことが分かる。
【0026】
次に、CO2吸収塔140内のCO2捕捉剤位置に対する温度分布、及びCO2捕捉量の経時変化を図8に示す。20分経過後にはCO2捕捉剤の約7割の領域で温度が105℃まで上昇しており、それに伴いCO2捕捉量は0.36mol/Lまで減少していた。一方、入口に近い部分(上流側)では、捕捉量が飽和した後にCO2含有ガスによって冷却されたため、CO2含有ガス温度と同じ50℃まで低下していたことが確認できる。
【0027】
また、50℃においてはCO2が0.95mol/L捕捉可能だが、温度が105℃まで上昇すると50℃の時の半分以下である0.36mol/Lしか捕捉できないことが判明した。
【0028】
次に、本発明の実施形態について、実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は実施例1のCO2回収システムを示す模式図である。CO2回収システムは、CO2捕捉剤101でCO2を捕捉する工程(以下、捕捉工程)と、CO2捕捉剤101より高い温度のCO2以外のガス(以下、再生ガス)を流入してCO2を脱離させ、CO2捕捉剤101を再生する工程(以下、再生工程)を繰り返すことによりCO2の回収を実現する。この二つの工程はガスラインの切換で実施する。また、再生工程の後に吸収塔を冷却する工程を加える場合もあるが、図1では省略している。
【0030】
捕捉工程では、CO2含有ガスライン102から流入するCO2含有ガスがCO2吸収塔100に流入する。CO2含有ガスは、CO2捕捉剤101と接触してCO2を捕捉され、CO2を除去されたガスとしてCO2除去ガスライン103から排出される。また、再生工程では、CO2吸収塔に再生ガスライン104から再生ガスを流入させ、CO2捕捉剤101と接触してCO2を脱離させ、CO2回収ライン105より脱離したCO2を回収する。
【0031】
捕捉工程では、CO2捕捉反応の反応熱によって、CO2吸収塔100内のCO2捕捉剤101の温度が上昇する。発生した熱は、CO2含有ガスの流れによってCO2吸収塔100の下流側(図1では下方)へ移動する。上流側より下流側の方が温度は高くなり、CO2捕捉剤は一般に温度が高いほどCO2捕捉量が減少するため、下流側ではCO2捕捉量が減少する。そこで、CO2吸収塔の内部又は外部の少なくとも一方に冷却手段106を設置するCO2回収システムを提案する。このCO2回収システムによって、捕捉工程におけるCO2捕捉剤を冷却することによって、CO2捕捉量の減少を抑制することができる。
【0032】
比較例の結果から、CO2捕捉剤141と同じ捕捉剤を用いた場合、捕捉工程終了時にはCO2吸収塔の上流側から約20%の部分を除いて、残りの約80%のCO2捕捉剤では温度が上昇する。そこで、実施例1では温度上昇部分に冷却手段106を設置して、CO2捕捉量の減少を抑制した。
【0033】
CO2吸収塔100は、捕捉工程において、内部にCO2捕捉剤101を有し、CO2含有ガスラインからCO2を流入してCO2捕捉剤101とCO2を接触させることにより、CO2を捕捉して残りのガスをCO2除去ガスライン103から排出する。また捕捉工程の次に実施する再生工程において、再生ガスライン104から再生ガスを流入させ、CO2捕捉剤101から脱離したCO2をCO2回収ライン105から回収する。
【0034】
比較例の結果によれば、捕捉工程では冷却しない場合にCO2捕捉剤温度は105℃まで上昇することが分かっている。冷却手段106によってCO2捕捉剤温度を50℃まで冷却することにより、CO2吸収塔の全域においてCO2捕捉量を0.95mol/Lまで向上させることができる。
【実施例2】
【0035】
図2は、本発明の実施例2のCO2回収システムを示す模式図である。実施例2は、ヒートポンプを利用した冷却手段について記載している。CO2吸収塔107に冷却水ライン114から冷却水を流入させ、CO2捕捉反応熱を奪い、冷却水ライン114を流れる循環水と熱交換器113で熱交換することにより、CO2捕捉反応熱を有効活用できる。CO2吸収塔107内の冷却水ラインは、CO2捕捉剤108と配管の接触面積が大きくなることが望ましく、例えば塔内の配管がらせん状であっても良いし、直線状であっても良い。また配管は一本でも良いし二本以上であっても良い。
【0036】
実施例2では、図2に示すCO2吸収塔107に冷却水ライン114から冷却水を流入して、CO2吸収塔107の温度上昇を抑制する。
【0037】
捕捉工程において、CO2含有ガスライン109からCO2をCO2吸収塔107内に流入させ、CO2捕捉剤108でCO2を捕捉する。CO2を除去したガスはCO2除去ガスライン110から排気される。
【0038】
再生工程においては、CO2捕捉剤108からCO2を脱離させるための再生ガスを再生ガスライン111から流入して、CO2回収ライン112でCO2を回収する。
【0039】
CO2吸収塔107内では、冷却水ライン114は冷却水用配管を通して間接的にCO2捕捉剤108と接しているため、CO2捕捉剤108が濡れることはない。
【0040】
CO2捕捉反応熱を受け取り加熱された冷却水は、他の媒体と熱交換器113で熱交換を行い、循環水の加熱に利用される。以上のように、実施例2を活用すれば、CO2吸収塔107内の温度上昇を抑制することによりCO2捕捉量を増加させるとともに、CO2捕捉反応熱を他の媒体に与えて発生した反応熱を有効活用することができる。
【実施例3】
【0041】
図3は、本発明の実施例3のCO2回収システムを示す模式図である。実施例3はCO2捕捉反応熱で冷媒を気化して、CO2吸収塔内の温度上昇を抑制する例を示している。液体の冷媒を冷媒ライン121から気化手段122へ流入させる。
【0042】
既に捕捉工程で温度が上昇しているCO2捕捉剤116の周辺に設置された気化手段122で、CO2捕捉反応熱によって冷媒を気化させる。この際、液体の冷媒が気相と接する面積を大きくして気化しやすいよう、高表面積素材123を気化手段122内に設置しておくことが望ましい。高表面積素材123としては、熱交換フィン、折りたたみフィルタ、多孔質材料等の、気相液相を遮断してかつ熱交換の表面積が大きい素材であれば用いることができる。
【0043】
CO2捕捉剤温度に応じて、冷媒が気化しやすい温度となるよう減圧ポンプ124によって、気化手段122内を減圧する。これによって、例えば70℃程度の低温でも容易に気化させる事ができる。気化した冷媒は冷媒蒸気回収ライン125を通った後、圧縮機CP及び凝縮器CDで放出する凝縮熱を熱交換機によって他の媒体に受け渡す。
【0044】
蒸発しなかった冷媒は冷媒回収ライン126を通り、再度冷媒ライン121に輸送される。このシステムにより、CO2吸収塔115の高温部を選択的に冷却し、CO2捕捉反応熱を他の媒体に輸送して有効活用できる。
【0045】
実施例3では、CO2吸収塔115の冷却システムとして冷媒の気化熱を利用するシステムについて説明する。捕捉工程において、CO2含有ガスライン117からCO2をCO2吸収塔115内に流入させ、CO2捕捉剤116でCO2を捕捉する。CO2を除去したガスはCO2除去ガスライン118から排気される。
【0046】
再生工程においては、CO2捕捉剤116からCO2を脱離させるための再生ガスを再生ガスライン119から流入して、CO2回収ライン120でCO2を回収する。
【0047】
捕捉工程におけるCO2捕捉反応熱をCO2吸収塔から除去するために、冷媒ライン121より液体の冷媒を、CO2捕捉剤温度が上昇している部分周辺の気化手段122へ流入させる。
【0048】
CO2捕捉反応熱と減圧ポンプ124によって冷媒を気化させることにより、CO2捕捉剤116を非常速やかに冷却することができる。
【0049】
このように、実施例3のCO2回収システムを用いれば、捕捉工程におけるCO2捕捉剤の温度上昇を素早く抑制し、かつCO2捕捉反応熱を有効に活用することができる。
【実施例4】
【0050】
図4は、本発明の実施例4のCO2回収システムを示す模式図である。実施例4では、CO2吸収塔127の冷却と同時に海水の淡水化を実施するCO2回収システムについて説明する。
CO2捕捉反応熱で上昇する温度は、CO2捕捉剤の材料にもよるが20〜100℃程度である。従って、捕捉工程開始時のCO2捕捉剤温度を50℃とすると、最終的に70〜150℃程度までしか上昇しないため、CO2捕捉反応熱を有効に使うシステムは限られている。
【0051】
しかし、70〜150℃という温度領域は、減圧蒸留による海水淡水化(凝縮水生成)の条件に向いているため、CO2回収システムと減圧蒸留による海水淡水化を組み合わせるCO2回収システムがCO2捕捉反応熱の有効活用という観点から望ましい。
【0052】
図4において、捕捉工程では、海水ライン133から海水をCO2吸収塔127内のCO2捕捉剤温度が上昇している部分の海水蒸留手段134に流入させる。
【0053】
減圧ポンプ135を用いて、海水蒸留手段134中の海水を減圧蒸留し、得られた水蒸気を熱交換機136で凝縮して凝縮熱を放出し、海水ライン133中の海水を加熱するために利用する。生成した凝縮水は凝縮水回収ライン137を通って凝縮水貯留設備138に貯留される。
【0054】
再生工程では、海水ライン133からの海水の流入を停止し、海水蒸留手段134内部の海水を高濃度海水回収ライン139を経由して排出する。再生工程後に再度捕捉工程を実施するためにはCO2吸収塔127の冷却が必要であるが、海水ライン133から海水を海水蒸留手段134に流すことにより、速やかに冷却をすることができる。
【0055】
以上のように、捕捉工程時の冷却によるCO2捕捉量向上、冷却工程の時間短縮、及び海水から淡水の精製が可能となる点で優れている。また、実施例4に示した例では海水を淡水化する場合を記載しているが、海水ではなくても蒸留操作で水を抽出できるものであればどんな液体でも良く、例えば川の水や下水などを用いて凝縮水を生成しても良い。
【0056】
捕捉工程において、CO2含有ガスライン129からCO2をCO2吸収塔127内に流入させ、CO2捕捉剤128でCO2を捕捉する。CO2を除去したガスはCO2除去ガスライン130から排気される。
【0057】
再生工程においては、CO2捕捉剤128からCO2を脱離させるための再生ガスを再生ガスライン131から流入して、CO2回収ライン132でCO2を回収する。
【0058】
捕捉工程におけるCO2捕捉反応熱をCO2吸収塔127から除去するために、海水を海水ライン133よりCO2捕捉剤温度が上昇している部分周辺の海水蒸留手段134へ流入させる。ここでは海水の例を示しているが、例えば河川水、湖水、池水、または下水など水を主成分とする液体であれば何を用いても良い。
【0059】
また、海水蒸留手段134には実施例3と同様に高表面積材料を備えておくことが海水を気化させやすくする観点から望ましい。
【0060】
CO2捕捉剤が高温になった周辺の海水蒸留手段134に流入させた海水は、CO2捕捉反応熱と減圧ポンプ135によって気化する。気化した水蒸気は熱交換器136の前段で、図示しない圧縮機および凝縮器により圧縮及び凝縮されて放出する凝縮熱を、熱交換器136によって海水ラインの海水と熱交換する。
【0061】
凝縮水は凝縮水回収ライン137を経由し、凝縮水貯留設備138で淡水として貯留される。捕捉工程終了時には、海水は高濃度海水回収ライン139より回収される。また、再生工程終了後、再び捕捉工程を実施するためには、CO2吸収塔127への空気流入などによるCO2吸収塔の冷却が必要である。
【0062】
実施例4では、再び海水ライン133より海水を流入させることにより、CO2吸収塔127内を速やかに冷却することができるため、再生工程と捕捉工程の間の時間のロスを少なくすることができて効率がよい。
【0063】
以上のように、実施例4を用いると、CO2吸収塔内の温度上昇によるCO2捕捉量の減少を抑制し、かつCO2捕捉反応熱を利用して海水から淡水を精製することができ、さらに再生工程から再び捕捉工程を実施する間の時間のロスを小さくすることができるという三つの長所があるため、実用上の効果が高く非常に有効である。
【符号の説明】
【0064】
100、107、115、127:CO2吸収塔
101、108、116、128:CO2捕捉剤
102、109、117、119、129:CO2含有ガスライン
103、110、118、130:CO2除去ガスライン
104、111、120、131:再生ガスライン
105、112、132:CO2回収ライン
106:冷却手段
113:熱交換器
114:冷却水ライン
121:冷媒ライン
122:気化手段
123:高表面積素材
124:減圧ポンプ
125:冷媒蒸気回収ライン
126:冷媒回収ライン
133:海水ライン
134:海水蒸留手段
135:減圧ポンプ
136:熱交換器
137:凝縮水回収ライン
138:凝縮水貯留設備
139:高濃度海水回収ライン
CP:圧縮機
CD:凝縮器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8