特許第5829258号(P5829258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5829258エチレン系重合体パウダー、成形体、及びリチウムイオン二次電池用セパレーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5829258
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】エチレン系重合体パウダー、成形体、及びリチウムイオン二次電池用セパレーター
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20151119BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20151119BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   C08F10/02
   H01M2/16 P
   C08J3/16CES
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-250407(P2013-250407)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-133874(P2014-133874A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2013年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-270618(P2012-270618)
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 昭夫
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−235926(JP,A)
【文献】 特開平05−202130(JP,A)
【文献】 特開2006−002146(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/070886(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/140053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/00−10/14
C08F 110/00−110/14
C08F 210/00−210/18
C08J 3/00−3/28
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度平均分子量が150,000以上1,500,000以下であり、
総金属量が10ppm以上50ppm以下であり、
アルミニウム量が1ppm以上10ppm以下であり、
嵩密度が0.40g/cm3以上0.60g/cm3以下である、
エチレン系重合体パウダー。
【請求項2】
粘度平均分子量が150,000以上500,000以下である、請求項1に記載のエチレン系重合体パウダー。
【請求項3】
リチウムイオン二次電池用セパレーターとして用いられる、請求項1または2に記載のエチレン系重合体パウダー。
【請求項4】
粒子径355μmを超える粒子の含有率が、2質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
【請求項5】
平均粒子径が、100μm以上200μm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
【請求項6】
JIS K−6721:1997に記載された嵩比重測定装置の漏斗を用いて、エチレン重合体パウダー50gが全量落下する時間で測定されるパウダーの流動性が、40秒以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
【請求項7】
チーグラー・ナッタ系触媒にて製造された、請求項1〜6のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエチレン系重合体パウダーを含む、成形体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエチレン系重合体パウダーを含む、リチウムイオン二次電池用セパレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系重合体パウダー、成形体、及びリチウムイオン二次電池用セパレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン系重合体パウダーは、フィルム、シート、微多孔膜、繊維、発泡体、パイプ等多種多様な用途に用いられている。特に鉛蓄電池やリチウムイオン電池に代表される二次電池のセパレーター用微多孔膜及び高強度繊維の原料として、高分子量エチレン系重合体パウダーが用いられている。高分子量エチレン系重合体パウダーが用いられている理由としては、分子量が高いため、延伸加工性に優れ、強度が高く、化学的安定性が高く、かつ長期信頼性に優れること等が挙げられる。
【0003】
これらエチレン系重合体パウダーは、分子量が高いゆえに、一般に粘度が高い。そのため、溶剤に溶解させて、成形されることが多い。産業界、特に、リチウムイオン二次電池セパレーター及び高強度繊維の業界では、高い需要成長とともに、リチウムイオン二次電池セパレーターや高強度繊維部材に低コスト化が強く求められており、高い生産性が強く望まれている。また、特にリチウムイオン二次電池セパレーター及び高強度繊維では、長期信頼性の観点から、膜厚や繊維径等、高い製品寸法安定性が強く望まれている。
【0004】
近年、エチレン系重合体パウダーを用いたリチウムイオン二次電池セパレーター及び高強度繊維等の成形法が開発されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2010/070930号公報
【特許文献2】特開2002−128942号公報
【特許文献3】特開2005−29731号公報
【特許文献4】特開2005−225919号公報
【特許文献5】特開2011−74119号公報
【特許文献6】特開2011−233542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般にリチウムイオン二次電池セパレーターや高強度繊維等の成形部材用途においては、高分子量エチレン系重合体は、例えば原料ホッパーなどから押出し機に供給され、押出し機中で溶剤に溶解された状態で、高温下混練される。特にリチウムイオン二次電池セパレーター及び高強度繊維では、膜厚や繊維径等観点から、押出し機へのフィードの安定性が重要である。
【0007】
しかしながら、特許文献1〜6に開示された技術を用いても、従来のエチレン系重合体原料を用いた場合では、パウダーの流動性が悪い場合押出し機への原料の供給が不安定になり、製品の膜厚安定性が必ずしも十分なものではなかった。
【0008】
また、従来のエチレン系重合体は、触媒由来の残渣が多い物もあり、リチウムイオン二次電池セパレーターや高強度繊維等の製品安定性を必ずしも満足するものではなかった。特にリチウムイオン二次電池セパレーターでは、電池特性の安定性が非常に重要であるため、製品安定性が特に重要視される。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、流動性に優れ、連続加工生産性に優れ、かつ製品物性が高く、長期安定性に優れる成形品となるエチレン系重合体パウダー、並びに該エチレン系重合体パウダーを用いて得られる成形体及びリチウムイオン二次電池用セパレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定のエチレン系重合体パウダーであれば上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
粘度平均分子量が150,000以上1,500,000以下であり、
総金属量が10ppm以上50ppm以下であり、
アルミニウム量が1ppm以上10ppm以下であり、
嵩密度が0.40g/cm3以上0.60g/cm3以下である、
エチレン系重合体パウダー。
〔2〕
粘度平均分子量が150,000以上500,000以下である、前項〔1〕に記載のエチレン系重合体パウダー。
〔3〕
リチウムイオン二次電池用セパレーターとして用いられる、前項〔1〕または〔2〕に記載のエチレン系重合体パウダー。
〔4〕
粒子径355μmを超える粒子の含有率が、2質量%以下である、前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
〔5〕
平均粒子径が、100μm以上200μm以下である、前項〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
〔6〕
JIS K−6721:1997に記載された嵩比重測定装置の漏斗を用いて、エチレン重合体パウダー50gが全量落下する時間で測定されるパウダーの流動性が、40秒以下である、前項〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
〔7〕
チーグラー・ナッタ系触媒にて製造された、前項〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダー。
〔8〕
前項〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のエチレン系重合体パウダーを含む、成形体。
〔9〕
前項〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のエチレン系重合体パウダーを含む、リチウムイオン二次電池用セパレーター。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流動性に優れ、連続加工生産性に優れ、かつ製品物性が高く、長期安定性に優れる成形品となるエチレン系重合体パウダー、並びに該エチレン系重合体パウダーを用いて得られる成形体及びリチウムイオン二次電池用セパレーターを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく。その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
〔エチレン系重合体パウダー〕
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーは、粘度平均分子量が100,000以上1,500,000以下であり、総金属量が10ppm以上50ppm以下であり、アルミニウム量が1ppm以上10ppm以下であり、嵩密度が0.40g/cm3以上0.60g/cm3以下である。
【0015】
本実施形態で用いるエチレン系重合体としては、特に限定されないが、具体的には、エチレン単独重合体、及びエチレンと、エチレンと共重合可能なオレフィンと、の共重合体が挙げられる。エチレンと共重合可能なオレフィンとしては、特に限定されないが、具体的には、炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2=CHR1(ここで、R1は炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状又は環状のジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィンが挙げられる。この中でも、共重合可能なオレフィンとしては、膜や繊維に代表される成形体の耐熱性及び強度の観点から、プロピレン及び1−ブテンが好ましい。エチレン系重合体がエチレンとオレフィンとの共重合を含む場合は、共重合体に占めるエチレンのモル比は、50%以上100%未満が好ましく、80%以上100%未満がより好ましく、90%以上100%未満がさらに好ましい。エチレンのモル比が上記範囲内であることにより、耐熱性及び/又は強度により優れる傾向にある。
【0016】
[粘度平均分子量]
粘度平均分子量(Mv)は100,000以上1,500,000以下であり、100,000以上1,400,000以下が好ましく、150,000以上1,300,000以下がより好ましく、200,000以上1,200,000以下であることがさらに好ましい。より優れた溶解性の観点から500,000以下であることが好ましい。粘度平均分子量が上記範囲であることにより、生産性により優れ、成形した場合には、延伸性及び膜強度により優れるエチレン系重合体パウダーとなる。このような特性を有するエチレン系重合体パウダーは、二次電池セパレーターに好適に用いることができ、特にリチウムイオン二次電池用セパレーターに好適に用いることができる。
【0017】
粘度平均分子量を上記範囲に制御する方法としては、エチレン系重合体を重合する際の反応器の重合温度を変化させることが挙げられる。一般には、重合温度を高温にするほど粘度平均分子量は低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど粘度平均分子量は高くなる傾向にある。また、粘度平均分子量を上記範囲にする別の方法としては、エチレン系重合体を重合する際に水素等の連鎖移動剤を添加することが挙げられる。このように連鎖移動剤を添加することで、同一重合温度でも生成するエチレン系重合体の粘度平均分子量が低くなる傾向にある。本実施形態においては、両者を組み合わせて制御する方が好ましい。
【0018】
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの粘度平均分子量(Mv)は、デカヒドロナフタレン溶液中にエチレン系重合体パウダーを異なる濃度で溶解させ、135℃で求めた還元粘度を濃度0に外挿して求めた極限粘度[η](dL/g)から、以下の数式Aにより算出することができる。より詳細には、実施例に記載の方法により求めることができる。
Mv=(5.34×104)×[η]1.49 ・・・数式A
【0019】
[総金属量]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーに含まれる総金属量は10ppm以上50ppm以下であり、10ppm以上40ppm以下が好ましく、15ppm以上35ppm以下であることがより好ましい。この総金属量は、重合工程において使用された触媒成分に由来するものであってもよい。総金属量が10ppm以上であることにより、リチイムイオン二次電池セパレーターとして使用した場合、電解塩の分解に由来し電池反応に悪影響を与えるフッ化水素を吸着しやすい。また、総金属量が50ppm以下であることにより、熱安定性により優れるエチレン系重合体パウダーとなり、その上、電池セパレーターや繊維とした場合には、それらの長期安定性にも優れるものとなる。
【0020】
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーに含まれる総金属量は、単位触媒あたりのエチレン系重合体の生産性により制御することが可能である。エチレン系重合体の生産性は、製造する際の反応器の重合温度、重合圧力、スラリー濃度により制御することが可能である。つまり、本実施形態で用いるエチレン系重合体の生産性を高くするには、重合温度を高くする、重合圧力を高くする、及び/又はスラリー濃度を高くすることが挙げられる。使用する触媒としては、特に限定されず、一般的なチグラー・ナッタ触媒を使用することができるが、後述する触媒を使用することがより好ましい。なお、触媒由来の総金属量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
[アルミニウム量]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーに含まれるアルミニウム量は、1ppm以上10ppm以下であり、1ppm以上8ppm以下であることが好ましく、1ppm以上5ppm以下であることがより好ましい。このアルミニウム量は、重合工程において使用された固体触媒成分と助触媒成分に由来するものであってもよい。
【0022】
アルミニウム量が10ppm以下であることにより、本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーを用いた電池セパレーターは、優れたサイクル特性を有する。また、電池セパレーター等の成形体中の異物が減少する。この理由は定かではないが、原料エチレン系重合体パウダーにアルミニウムが多く含まれると、アルミニウムを起点としたゲルが生成し、異物になり易いためであると推察される。また、そのような異物は、電池サイクル特性を低下させやすいものと推察される。一方、アルミニウム量が1ppm以上であることにより、電解塩の分解に由来し、電池反応に悪影響を与えるフッ化水素を吸着することができる。
【0023】
アルミニウム量は、単位触媒あたりのエチレン系重合体の生産性により制御することが可能である。エチレン系重合体の生産性は、製造する際の反応器の重合温度や重合圧力やスラリー濃度により制御することが可能である。つまり、本実施形態に係るエチレン系重合体の生産性を高くするには、重合温度を高くする、重合圧力を高くする、及び/又はスラリー濃度を高くすることが挙げられる。他の方法としては、エチレン系重合体を重合する際の、助触媒成分の種類の選択や、助触媒成分の濃度を低くすることや、エチレン系重合体を酸やアルカリで洗浄することでもアルミニウム量を制御することが可能である。なお、触媒由来のアルミニウム量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
【0024】
[嵩密度]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの嵩密度は、0.40g/cm3以上0.60g/cm3以下であり、0.42g/cm3以上0.55g/cm3以下であることが好ましく、0.44g/cm3以上0.50g/cm3以下であることがより好ましい。嵩密度が0.40g/cm3以上であることにより、エチレン系重合体パウダーの流動性が充分に高くなり、ハンドリング性に優れ、押し出し機へのフィードが安定し、膜や繊維の延伸性や膜厚、繊維径が安定する。一方、嵩密度が0.60g/cm3以下であることにより、電池セパレーターや繊維への加工等の際に、生産性及び/又は延伸性等に優れ、より良好な加工適用性を示す。
【0025】
一般的には、嵩密度は、使用する触媒によって異なるが、単位触媒あたりのエチレン系重合体の生産性により制御することが可能である。エチレン系重合体の嵩密度は、エチレン系重合体を重合する際の重合温度によって制御することが可能であり、重合温度を高くすることによりその嵩密度を低下させることが可能である。また、エチレン系重合体の嵩密度は重合器内のスラリー濃度によって制御することも可能であり、スラリー濃度を高くすることによりその嵩密度を増加させることが可能である。なお、エチレン系重合体の嵩密度は実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0026】
[粒子径が355μmを超える粒子の含有率]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーは、粒子径355μmを超える粒子(以下、「粗粒」ともいう。)を2.0質量%以下含有することが好ましく、1.5質量%以下含有することがより好ましく、1.0質量%以下含有することがさらに好ましい。粒子径が355μmを超えるエチレン系重合体粒子の含有率の下限値は、特に限定されないが、少なければ少ないほど好ましく、0質量%であることがより好ましい。粒子径355μmを超えるエチレン系重合体粒子の含有率が2.0質量%以下であることにより、電池セパレーターや繊維への加工等の際に、生産性及び/又は延伸性等に優れ、より良好な加工適用性を示す傾向にある。
【0027】
このような粒子径355μmを超える粒子は、重合工程、乾燥工程後に篩を通して分級することによって除去することができる。また、エチレン系重合体の重合に使用する触媒として、粒子径の小さい触媒や粒度分布の狭い触媒を使用すること、触媒中の粗粒部分をフィルター等で取り除くことでエチレン系重合体中の粗粒割合を制御できる。また、例えば重合圧力を下げたり、反応器の滞留時間を短くしたりして、エチレン系重合体の生産性を制御することで粗粒生成を制御することもできる。なお、粒子径が355μmを超えるエチレン系重合体粒子の含有率は、目開き355μmの篩を通過しない粒子の含有率として求めることがでる。「目開き355μmの篩を通過しない粒子の含有率」とは、後述する平均粒子径の測定において、目開き355μm以上の目開きを有する篩に残った粒子の質量の和の粒子全体の重量に対する比をいう。なお、粒子径が355μmを超えるエチレン系重合体パウダーの含有率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
[平均粒子径]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの平均粒子径は、100μm以上200μm以下であることが好ましく、110μm以上180μm以下であることがより好ましく、120μm以上160μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が100μm以上であることにより、エチレン系重合体パウダーの嵩密度と流動性が充分に高くなる傾向にあり、ホッパー等への投入やホッパーからの計量等のハンドリング性が充分に良好となる傾向にある。一方、平均粒子径が200μm以下であることにより、電池セパレーターや繊維への加工等の際に、生産性及び/又は延伸性等により優れ、良好な加工適用性を示す傾向にある。一般的には、エチレン系重合体の平均粒子径は、使用する触媒粒子径によって決まるが、単位触媒あたりのエチレン系重合体の生産性により制御することも可能である。なお、エチレン系重合体の平均粒子径は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0029】
[流動性]
50gのエチレン系重合体パウダーが漏斗を落下する際の時間(以下、「流動性」という。)は、40秒以下であることが好ましく、35秒以下であることがより好ましく、30秒以下がさらに好ましい。流動性の下限は特に限定されないが低いほど好ましい。エチレン系重合体パウダーの流動性が40秒以下であることにより、電池セパレーターや繊維への加工等の際に、生産性及び/又は延伸性等より優れ、良好な加工適用性を示す傾向にある。特に、流動性が40秒以下であることにより、エチレン系重合体パウダーをホッパーから押出し機にフィードする際に、ブリッジを起こすことなく連続的にフィードすることが可能であり、押し出し機へのフィードが安定し、膜や繊維の延伸性や膜厚、繊維径が安定する。
【0030】
エチレン系重合体パウダーの流動性は、重合温度によって制御することが可能であり、より高い重合温度で重合を行うことにより流動性をより高くすることが可能である。また、エチレン系重合体の流動性は、重合器内の攪拌強度によって制御することが可能であり、攪拌強度を増加させる、すなわち攪拌速度を高めることにより流動性を高くすることが可能である。その他の方法としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、又はステアリン酸亜鉛等の滑剤を添加することによっても流動性を良くすることができる。なお、エチレン系重合体パウダーの流動性は実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0031】
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーを用いた加工において、「連続加工生産性に優れる」とは、フィルター付近の圧力の上昇が遅いか、ほとんど圧力上昇が見られないことをいう。例えば、二次電池セパレーターに代表される微多孔膜を加工する場合、押出し機等を用い、エチレン系重合体パウダーを溶媒に溶解させて膜を成形加工する際、異物等の除去を目的として、ダイスの上流側にフィルター等を設ける。このとき、フィルターに蓄積するものが存在すると、徐々にフィルター直近の圧力が上昇し、押出し機のトルク限界に近づいたり、膜厚の均一な製品取得が困難になったりする。結果として、フィルター交換のために押出し機を停止したり、スクリーンチェンジャー等でフィルター交換したりすることにより、製品加工の連続生産が妨げられ、製品収率を下げることになる。したがって、フィルター付近の圧力の上昇が遅いか、ほとんど圧力上昇が見られないことが連続加工生産性に優れることになる。
【0032】
一方、高強度繊維に代表される糸を紡糸加工する場合、押出し機等を用い、エチレン系重合体パウダーを溶媒に溶解させて糸を成形加工する際、やはり異物等の除去を目的として、ダイスの上流側にフィルター等を設ける。このとき、フィルターに蓄積するものが存在すると、徐々にフィルター直近の圧力が上昇し、押出し機のトルク限界に近づいたり、糸径の均一な製品取得に困難になったり、糸切れが発生したりする。結果として、フィルター交換のために押出し機を停止したり、スクリーンチェンジャー等でフィルター交換したり、製品収率を下げることになる。したがって、フィルター付近の圧力の上昇が遅いか、ほとんど圧力上昇が見られないことが連続加工生産性に優れることになる。
【0033】
工業的視点からみて、この連続加工生産性を向上させることが、製品収率向上に直結することになり、エチレン系重合体パウダーには極めて重要な特性となる。
【0034】
[エチレン系重合体の重合方法]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの製造に使用される触媒成分には特に限定されず、一般的なチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造することが可能であり、後述するチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造することが好ましい。
【0035】
チーグラー・ナッタ触媒としては、固体触媒成分[A]及び有機金属化合物成分[B]からなる触媒であって、固体触媒成分[A]が、式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(A−1)と式2で表される塩素化剤(A−2)との反応により調製された担体(A−3)に、式3で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(A−4)と式4で表されるチタン化合物(A−5)とを担持することにより製造されるオレフィン重合用触媒が好ましい。
(A−1):(M1)α(Mg)β(R2a(R3b(OR4c ・・・式1
(式中、M1は周期律表第12族、第13族、及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R2、R3、及びR4はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、b、及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ここで、kはM1の原子価である。))
(A−2):HdSiCle5(4-(d+e)) ・・・式2
(式中、R5は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす実数である。0<d、0<e、0<d+e≦4)
(A−4):(M2)γ(Mg)δ(R6f(R7gh ・・・・式3
(式中、M2は周期律表第12族、第13族、及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R6及びR7は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Yはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C−R8,R9、−SR10(ここで、R8、R9、及びR10は炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。hが2の場合には、Yはそれぞれ異なっていてもよい。)、β−ケト酸残基のいずれかであり、γ、δ、f、g、及びhは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦f、0≦g、0≦h、0<f+g、0≦g/(γ+δ)≦2、nγ+2δ=f+g+h(ここで、nはM2の原子価である。))
(A−5):Ti(OR11i(4-i) ・・・・・式4
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R11は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0036】
まず、(A−1)について説明する。(A−1)は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物及びこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。式1の記号α、β、a、b、及びcの関係式kα+2β=a+b+cは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0037】
上記式中、R2及びR3で表される炭素数2以上20以下の炭化水素基は、特に限定されないが、例えば、それぞれアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられる。このなかでも、好ましくはR2及びR3は、それぞれアルキル基である。α>0の場合、金属原子M1としては、周期律表第12族、第13族、及び第14族からなる群に属する金属原子が使用でき、例えば、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられる。このなかでも、アルミニウム、亜鉛が好ましい。
【0038】
金属原子M1に対するマグネシウムの比β/αは、特に制限されず、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。また、α=0である有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R2が1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本実施形態に好ましい結果を与える。式1において、α=0の場合のR2、R3は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが好ましい。
【0039】
(1)R2、R3の少なくとも一方が炭素数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基であることが好ましく、より好ましくはR2、R3がともに炭素数4以上6以下であり、少なくとも一方が二級又は三級のアルキル基であること。
(2)R2とR3とが炭素数の互いに相異なるアルキル基であることが好ましく、より好ましくはR2が炭素数2又は3のアルキル基であり、R3が炭素数4以上のアルキル基であること。
(3)R2、R3の少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくはR2、R3に含まれる炭素数の和が12以上になるアルキル基であること。
【0040】
以下、これらの基を具体的に示す。(1)において炭素数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が挙げられる。このなかでも、1−メチルプロピル基が好ましい。
【0041】
次に(2)において炭素数2又は3のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、エチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられる。このなかでも、エチル基が好ましい。また、炭素数4以上のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル、ヘキシル基が好ましい。
【0042】
さらに、(3)において炭素数6以上の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基がより好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなる傾向にあり、溶液の粘度が高くなる傾向にある。そのため、適度な長鎖のアルキル基を用いることが取り扱い上好ましい。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されうるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0043】
次にアルコキシ基(OR4)について説明する。R4で表される炭素数2以上20以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1以上12以下のアルキル基又はアリール基が好ましく、炭素数3以上10以下のアルキル基又はアリール基がより好ましい。具体的には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチル及び2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0044】
(A−1)の合成方法は、特に制限されず、式R2MgX及びR22Mg(R2は前述の意味であり、Xはハロゲン原子である。)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、式M13k及びM13(k-1)H(M1、R3及びkは前述の意味である。)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下の温度で反応させ、必要な場合には続いてR3(R3は前述の意味である。)で表される炭化水素基を有するアルコール、不活性炭化水素溶媒に可溶なR3で表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物、及び/又はR3で表される炭化水素基を有するアルコキシアルミニウム化合物を反応させる方法が好ましい。
【0045】
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については特に制限されず、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、又は両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本実施形態において不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に制限されないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(α+β)は0≦c/(α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1であることが好ましい。
【0046】
次に、(A−2)について説明する。(A−2)は式2で表される、少なくとも一つはSi−H結合を有する塩化珪素化合物である。
(A−2):HdSiCle5(4-(d+e)) ・・・・・式2
(式中、R5は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす実数である。0<d、0<e、0<d+e≦4)
【0047】
式2においてR5で表される炭素数1以上12以下の炭化水素基は、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられる。このなかでも炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル基等の炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。また、d及びeは、0<d、0<e、0<d+e≦4の関係を満たす数であり、dが2以上3以下であることが好ましい。
【0048】
このような(A−2)としては、特に限定されないが、例えば、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl225、HSiCl2(C37)、HSiCl2(2−C37)、HSiCl2(C49)、HSiCl2(C65)、HSiCl2(4−Cl−C64)、HSiCl2(CH=CH2)、HSiCl2(CH265)、HSiCl2(1−C107)、HSiCl2(CH2CH=CH2)、H2SiCl(CH3)、H2SiCl(C25)、HSiCl(CH32、HSiCl(C252、HSiCl(CH3)(2−C37)、HSiCl(CH3)(C65)、HSiCl(C652等が挙げられる。このなかでも、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl(CH32、HSiCl225が好ましく、HSiCl3、HSiCl2CH3がより好ましい。(A−2)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
次に(A−1)と(A−2)との反応について説明する。反応に際しては(A−2)を予め溶媒に希釈した後に利用することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の不活性炭化水素溶媒;1,2−ジクロルエタン、o−ジクロルベンゼン、ジクロルメタン等の塩素化炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体;及びこれらの混合媒体が挙げられる。このなかでも、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒が好ましい。(A−1)と(A−2)との反応比率は、特に制限されないが、(A−1)に含まれるマグネシウム原子1モルに対する(A−2)に含まれる珪素原子が0.01モル100モル以下であることが好ましく、0.1モル以上10モル以下であることがより好ましい。
【0050】
(A−1)と(A−2)との反応方法は、特に制限されず、(A−1)と(A−2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、(A−2)を予め反応器に仕込んだ後に(A−1)を反応器に導入させる方法、又は(A−1)を予め反応器に仕込んだ後に(A−2)を反応器に導入させる方法のいずれの方法でもよいが、(A−2)を予め反応器に仕込んだ後に(A−1)を反応器に導入させる方法が好ましい。上記反応により得られる担体(A−3)は、ろ過あるいはデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物あるいは副生成物等を除去することが好ましい。
【0051】
(A−1)と(A−2)との反応温度は、特に制限されず、25℃以上150℃以下であることが好ましく、30℃以上120℃以下であることがより好ましく、40℃以上100℃以下であることがさらに好ましい。(A−1)と(A−2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法においては、予め反応器の温度を所定温度に調節し、同時添加を行いながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度は所定温度に調節することが好ましい。(A−2)を予め反応器に仕込んだ後に(A−1)を反応器に導入させる方法においては、該塩化珪素化合物を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、該有機マグネシウム化合物を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度を所定温度に調節することが好ましい。(A−1)を予め反応器に仕込んだ後に(A−2)を反応器に導入させる方法においては、(A−1)を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、(A−2)を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度を所定温度に調節することが好ましい。
【0052】
次に、有機金属化合物(A−4)について説明する。(A−4)は、前述の式3で表される。
(A−4):(M2)γ(Mg)δ(R6f(R7gh ・・・・式3
(式中、M2は周期律表第12族、第13族、及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R6及びR7は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Yはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C−R8,R9、−SR10(ここで、R8、R9、及びR10は炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。hが2の場合には、Yはそれぞれ異なっていてもよい。)、β−ケト酸残基のいずれかであり、γ、δ、f、g、及びhは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦f、0≦g、0≦h、0<f+g、0≦g/(γ+δ)≦2、nγ+2δ=f+g+h(ここで、nはM2の原子価である。))
【0053】
式1において、R6及びR7で表される炭素数2以上20以下の炭化水素基は、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基であり、例えば、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられる。この中でも、好ましくはアルキル基である。α>0の場合、金属原子M2としては、周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子が使用でき、例えば、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられる。この中でもアルミニウム、亜鉛が好ましい。
【0054】
金属原子M2に対するマグネシウムの比δ/γには特に限定されないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがより好ましい。また、γ=0である所定の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R2が1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本実施形態に好ましい結果を与える。式1において、γ=0の場合のR6、R7は次に示す三つの群(1)、群(2)、群(3)のいずれか一つを満たすものであることが好ましい。
【0055】
群(1)R6、R7の少なくとも一方が炭素原子数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基であること、好ましくはR6、R7がともに炭素原子数4以上6以下のアルキル基であり、少なくとも一方が二級又は三級のアルキル基であること。
群(2)R6とR7とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR6が炭素原子数2又は3のアルキル基であり、R7が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
群(3)R6、R7の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR6、R7に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0056】
以下これらの基を具体的に示す。群(1)において炭素原子数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が挙げられる。このなかでも1−メチルプロピル基が好ましい。
【0057】
次に群(2)において炭素原子数2又は3のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、エチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられる。このなかでもエチル基が好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル、ヘキシル基が好ましい。
【0058】
さらに、群(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基がより好ましい。
【0059】
一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなる傾向にあるが、一方で溶液の粘度が高くなる傾向にある。そのために適度な長鎖のアルキル基を用いることが取り扱い上好ましい。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶媒で希釈して使用することができるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、又は残存していても差し支えなく使用できる。
【0060】
次にYについて説明する。式1においてYはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C−R8,R9、−SR10(ここで、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立に炭素数2以上20以下の炭化水素基を表す。)、β−ケト酸残基のいずれかである。
【0061】
式1においてR8、R9、及びR10で表される炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、炭素原子数1以上12以下のアルキル基又はアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基又はアリール基がより好ましい。このような炭化水素基としては、特に限定されないが、具体的には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチル及び2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0062】
また、式1においてYはアルコキシ基又はシロキシ基であることが好ましい。アルコキシ基としては、特に限定されないが、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1−メチルエトキシ、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、1,1−ジメチルエトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、2−メチルペントキシ、2−エチルブトキシ、2−エチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、2−エチル−4−メチルペントキシ、2−プロピルヘプトキシ、2−エチル−5−メチルオクトキシ、オクトキシ、フェノキシ、ナフトキシ基であることが好ましい。このなかでも、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、2−メチルペントキシ及び2−エチルヘキソキシ基であることがより好ましい。シロキシ基としては、特に限定されないが、具体的には、ヒドロジメチルシロキシ、エチルヒドロメチルシロキシ、ジエチルヒドロシロキシ、トリメチルシロキシ、エチルジメチルシロキシ、ジエチルメチルシロキシ、トリエチルシロキシ基等が好ましい。このなかでも、ヒドロジメチルシロキシ、エチルヒドロメチルシロキシ、ジエチルヒドロシロキシ、トリメチルシロキシ基がより好ましい。
【0063】
(A−4)の使用量は、(A−5)に含まれるチタン原子に対する(A−4)に含まれるマグネシウム原子のモル比で0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがより好ましい。
【0064】
次に、(A−5)について説明する。(A−5)は前述の式4で表されるチタン化合物である。
(A−5):Ti(OR11i(4-i) ・・・・・式4
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R11は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
11で表される炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル基等の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基;フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。このなかでも、R11としては脂肪族炭化水素基が好ましい。Xで表されるハロゲンとしては、特に限定されないが、例えば、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。このなかでも、Xとしては塩素が好ましい。(A−5)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
次に、(A−4)と(A−5)の反応について説明する。該反応は、不活性炭化水素溶媒中で行われることが好ましく、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒中で行われることがさらに好ましい。
【0066】
(A−5)の使用量については、式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(A−1)と式2で表される塩素化剤(A−2)との反応により調製された担体(A−3)中のMg原子に対する、(A−5)に含まれるTi原子のモル比(Ti/Mg)が0.001以上0.5以下であることが好ましく、0.005以上0.3以下であることがより好ましい。
【0067】
(A−4)と(A−5)とのモル比については特に限定されないが、(A−4)に含まれるMg原子に対する、(A−5)に含まれるTi原子のモル比(Ti/Mg)が0.1以上10以下であることが好ましく、0.3以上3以下であることがより好ましい。
【0068】
(A−4)と(A−5)との反応温度については、特に限定されないが、−80℃以上100℃以下の範囲で行うことが好ましく、−40℃以上50℃以下の範囲で行うことがより好ましい。
【0069】
(A−4)と(A−5)の添加順序は、特に制限されず、(A−4)に続いて(A−5)を加える方法、(A−5)に続いて(A−4)を加える方法、(A−4)と(A−5)とを同時に添加する方法、のいずれの方法も可能であるが、(A−4)と(A−5)とを同時に添加する方法が好ましい。
(A−4)と(A−5)を添加する時間については、特に限定されないが、1時間以上10時間以下の範囲で行うことが好ましく、2時間以上5時間以下がより好ましい。(A−4)と(A−5)の反応時間については、限定されないが、1時間以上10時間以下の範囲で行うことが好ましく、2時間以上5時間以下がより好ましい。
【0070】
本実施形態においては、(A−4)と(A−5)の反応後に、未反応の(A−4)と(A−5)を除去することが好ましい。未反応の(A−4)、(A−5)をそのままエチレン系重合体の重合反応器に供給した場合における、塊等の不定形重合物の発生や、反応器壁面への付着や抜取配管への詰り等を抑制することができ、連続生産性に優れる傾向にある。未反応の(A−4)及び(A−5)は、触媒スラリーを沈降した状態で上澄み液を抜き、フレッシュな不活性炭化水素溶媒を加えることを繰り返すことにより低減することが可能である。またフィルター等の濾過により取り除くこともできる。特に(A−5)に由来する残存塩素濃度を1mmol/L以下にすることが好ましい。
【0071】
本実施形態においては、上記反応により得られた固体触媒成分[A]は、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用されうる。
【0072】
次に、本実施形態における有機金属化合物成分[B]について説明する。本実施形態で用いる固体触媒成分[A]は、有機金属化合物成分[B]と組み合わせることにより、より高活性な重合用触媒となる。有機金属化合物成分[B]としては、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群に属する金属を含有する化合物であることが好ましく、特に有機アルミニウム化合物及び/又は有機マグネシウム化合物が好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、下記式5で表される化合物を単独又は混合して使用することが好ましい。
AlR12k(3-k) ・・・・・・・・・・・・・式5
(式中、R12は炭素数1以上20以下の炭化水素基、Zは水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、シロキシ基からなる群に属する基であり、kは2以上3以下の数である。)
【0073】
上記の式5において、R12で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基は、特に限定されないが、具体的には、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基が挙げられる。このようなR12としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリ(3−メチルブチル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハライド、ジイソブチルアルミニウムハライド等のジアルキルアルミニウムハライド化合物;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム化合物;ジエチルアルミニウムエトキシド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム化合物;ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルミニウム化合物;及びこれらの混合物が好ましい。このなかでも、トリアルキルアルミニウム化合物又はジアルキルアルミニウムハライド化合物の混合物がより好ましい。
有機マグネシウム化合物としては、前述記載の式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物が好ましい。
(A−1):(M1)α(Mg)β(R2a(R3b(OR4c ・・式1
(式中、M1は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R2、R3、及びR4はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、b、及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ここで、kはM1の原子価を表す。))
【0074】
この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジアルキルマグネシウム化合物及びこの化合物と他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。α、β、a、b、c、M1、R2、R3、OR4についてはすでに述べたとおりであるが、この有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶媒に対する溶解性が高いほうが好ましいため、β/αは0.5〜10の範囲にあることが好ましく、またM1がアルミニウムである化合物がより好ましい。
【0075】
固体触媒成分[A]及び有機金属化合物成分[B]をエチレン系重合条件下である重合系内に添加する方法については特に制限はなく、両者を別々に重合系内に添加してもよいし、予め両者を混合させた後に重合系内に添加してもよい。また組み合わせる両者の比率には特に限定されないが、固体触媒成分[A]1gに対し有機金属化合物成分[B]は0.1mmol以上3,000mmol以下であることが好ましく、1mmol以上1,000mmol以下がより好ましく、10mmol以上500mmol以下がさらに好ましい。両者を混合させる他の目的としては、保存タンクや配管等に静電付着を防止することも挙げられる。
【0076】
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの製造方法における重合法は、懸濁重合法又は気相重合法により、エチレン又はエチレンを含む単量体を(共)重合させることができる。このなかでも、重合熱を効率的に除熱できる懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0077】
上記不活性炭化水素媒体としては、特に限定されないが、具体的には、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;又はこれらの混合物等を挙げることができる。
【0078】
上記範囲の金属残渣及びアルミニウム量を得るためのエチレン系重合体パウダーの製造方法における重合温度は、通常、20℃以上100℃以下であることが好ましく、30℃以上95℃以下がより好ましく、40℃以上90℃以下がさらに好ましい。重合温度が20℃以上であることにより、工業的に効率的な製造が可能である。一方、重合温度が100℃以下であることにより、連続的に安定運転が可能である。
【0079】
上記範囲の金属残渣及びアルミニウム量を得るためのエチレン系重合体パウダーの製造方法における重合圧力は、通常、常圧以上2MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上1.5MPa以下がより好ましく、0.2MPa以上1.0MPa以下がさらに好ましい。重合圧力が常圧以上であることにより、総金属量及び全塩素量の高いポリエチレンが得られる傾向にあり、重合圧力が2MPa以下であることにより、総金属量及び全塩素量の低いポリエチレンを安定的に生産できる傾向にある。
【0080】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行なうことができる。
【0081】
また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行なうことも可能である。さらに、例えば、西独国特許出願公開第3127133号明細書に記載されているように、得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、又は重合温度を変化させることによって調節することもできる。重合系内に連鎖移動剤として水素を添加することにより、分子量を適切な範囲で制御することが可能である。重合系内に水素を添加する場合、水素のモル分率は、0mol%以上30mol%以下であることが好ましく、0mol%以上25mol%以下であることがより好ましく、0mol%以上20mol%以下であることがさらに好ましい。なお、本実施形態では、上記のような各成分以外にもエチレン共重合の製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
【0082】
一般的にエチレン系重合体パウダーを重合する際には、重合反応器へのポリマーの静電気付着を抑制するため、The Associated Octel Company社製(代理店丸和物産)のStadis450等の静電気防止剤を使用することも可能である。Stadis450は、不活性炭化水素媒体に希釈したものをポンプ等により重合反応器に添加することもできる。この際の添加量は、単位時間当たりのエチレン系重合体の生産量に対して、0.1ppm以上20ppm以下の範囲で添加することが好ましく、0.2ppm以上10ppm以下の範囲で添加することがより好ましい。
【0083】
[その他の成分]
上記のようなエチレン系重合体パウダーは、必要に応じて公知の各種添加剤と組み合わせて用いてもよい。熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ジステアリルチオジプロピオネート等の耐熱安定剤;又はビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、2−(2−ヒドロキシ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の耐候安定剤等が挙げられる。また、滑剤や塩化水素吸収剤等として公知であるステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩も、好適な添加剤として挙げることができる。
【0084】
[エチレン系重合体パウダーの製造方法]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーは、上述の通り金属成分が特定量であり、かつ嵩密度が特定範囲であることを特徴としている。金属成分を特定範囲とするには、上述の通りエチレン系重合体の生産性を制御することにより達成される。通常、エチレン系重合体の生産性は高い方が望ましく、当業者はこれを高めようと試みる。しかしながら、生産性を高めるために重合活性の高い触媒を用いる等の手段を講じた場合は、重合系内で局部的な重合が進行することがあるため重合の途中でパウダーが割れたりすることがある。そのような場合、得られるパウダーの嵩密度が小さくなってしまう。したがって、両者を満足するように、当業者の常識に従って重合条件を調整する必要がある。
【0085】
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーは、特に限定されないが、上述したように、重合条件を制御することによって、得ることができる。これらの重合条件は、用いる触媒によっても異なり一概に確定することは出来ないが、当業者の常識に従って調整することが可能である。例えば、重合圧力について言えば、上述の通り総金属量の観点からは高い方が望ましいが、嵩密度の観点からは高すぎない方が望ましい。この場合、例えば重合圧力を制御しつつ水素濃度を合わせて制御することで、両者を適切な範囲に制御することができる。
【0086】
[用途]
上記のようにして得られるエチレン系重合体パウダーは、高度な延伸加工性と高い連続加工生産性を有することができ、種々の加工方法により、加工することができる。また、エチレン系重合体パウダーを含む成形体は、種々の用途に応用されることができる。例えば、ポリエチレンパウダーを含む成形体は、二次電池用セパレーター、特にはリチウムイオン二次電池セパレーター、高強度繊維、微多孔膜やゲル紡糸として好適である。微多孔膜の製造方法としては、具体的には、溶剤を用いた湿式法において、Tダイを備え付けた押出し機にて、押出し、延伸、抽出、乾燥を経る加工方法が挙げられる。このような微多孔膜は、リチウムイオン二次電池や鉛蓄電池に代表される二次電池用セパレータ、特にはリチウムイオン二次電池セパレーターに好適に使用できる。なお、エチレン系重合体パウダーを含む成形体やリチウムイオン二次電池セパレーター等は、エチレン系重合体パウダーを用いて得られる成形体やリチウムイオン二次電池セパレーター等であってもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0088】
〔測定方法及び条件〕
(1)粘度平均分子量(Mv)
エチレン系重合体パウダーの粘度平均分子量については、ISO1628−3(2010)従って、以下に示す方法によって求めた。まず、溶融管にエチレン系重合体パウダー20mgを秤量し、溶融管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/L加えたもの)を加え、150℃で2時間攪拌してエチレン系重合体パウダーを溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、キャノン−フェンスケの粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号−100)を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、エチレン系重合体パウダー量を10mg、5mg、2mgに変えたサンプルついても同様に標線間の落下時間(ts)を測定した。ブランクとしてエチレン系重合体パウダーを入れていない、デカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従って求めたエチレン系重合体パウダーの還元粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)(単位:g/dL)とエチレン系重合体パウダーの還元粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度([η])を求めた。
ηsp/C=(ts/tb−1)/0.1 (単位:dL/g)
次に下記数式Aを用いて、上記極限粘度[η]の値を用い、粘度平均分子量(Mv)を算出した。
Mv=(5.34×104)×[η]1.49 ・・・数式A
【0089】
(2)総金属量、アルミニウム量、及び全塩素量
エチレン系重合体パウダーをマイクロウェーブ分解装置(型式ETHOS TC、マイルストーンゼネラル社製)を用い加圧分解し、内部標準法にて、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、型式Xシリーズ X7、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にて、エチレン系重合体パウダー中の金属としてマグネシウム、チタン、アルミニウム、ケイ素の元素濃度を測定した。この測定値から総金属量及びアルミニウム量を求めた。
また、全塩素量については、エチレン系重合体パウダーを自動試料燃焼装置(三菱化学アナリテック社製 AQF−100)で燃焼後、吸収液(Na2CO3とNaHCO3混合溶液)に吸収させ、その吸収液をイオンクロマトグラフ装置(ダイオネクス社製、ICS1500、カラム(分離カラム:AS12A、ガードカラム:AG12A)サプレッサー ASRS300)に注入させ全塩素量を測定した。
なお、この方法では、膜や糸等の成形体を切り出し、上記測定によって、成形体中の総金属量、アルミニウム量を測定することもできる。
【0090】
(3)嵩密度
エチレン系重合体パウダーの嵩密度は、JIS K−6721:1997に従い測定した。
【0091】
(4)粒子径355μmを超える粒子の含有率
エチレン系重合体パウダーの粒子径355μmを超える粒子の含有率は、下記(5)の平均粒子径の測定において、目開き355μm以上の目開きを有する各篩に残った粒子の重量の和の、測定に用いたポリエチレン粒子の重量に対する比として求めた。
【0092】
(5)平均粒子径
エチレン系重合体パウダーの平均粒子径は、JIS Z8801で規定された10種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、355μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gの粒子を分級した際に得られる各篩に残った粒子および53μmの篩を通過した粒子の重量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の重量になる粒子径を平均粒子径とした。
【0093】
(6)流動性
エチレン系重合体パウダーの流動性は、JIS K−6721:1997に記載された嵩比重測定装置の漏斗を用いて、エチレン系重合体パウダー50gが全量落下する時間により測定した。
【0094】
(7)連続加工生産性の評価
実施例及び比較例で得られた各エチレン系重合体パウダーに、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量%添加し、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、エチレン系重合体パウダー組成物を得た。得られたエチレン系重合体パウダー組成物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。溶融混練し、押し出される全組成物中に占める流動パラフィン量比が65質量%、ポリマー濃度が35質量%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリュー回転数240rpm、吐出量12kg/hとした。
【0095】
続いて、溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、原反膜厚1,400μmのゲルシートを得た。この時T−ダイの上流側に、JIS Z8801規格に準拠した目開き150μm/53μm/150μmのステンレス製平織スクリーンを用い、その直近の樹脂圧力を圧力計にて計測した。そして、以下の評価基準に従って、連続生産性を評価した。具体的には、押出し開始後1時間経過時の樹脂圧力(P0)を基準とし、ある経過時間の樹脂圧力をPとしたとき、増加率を以下にて定義した。
増加率(%)=(P−P0)/P0 ×100
(評価基準)
◎:120時間後の樹脂圧力の増加率が±5%以内であるもの。
○:72時間後の樹脂圧力の増加率が5%以下で、かつ120時間後の樹脂圧力の増加率が5%を超え、10%以内であるもの。
△:72時間後の樹脂圧力の増加率が5%以下で、かつ120時間後の樹脂圧力の増加率が10%を超えるもの。
×:72時間後の樹脂圧力の増加率が5%を超えるもの。
【0096】
(8)製品中の膜厚分布の評価
(7)で得た原反膜厚1,400μmのゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率7.0倍(即ち、7×7倍)、二軸延伸温度125℃とした。次に、延伸後のゲルシートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬し、ゲルシートから流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
【0097】
次に、乾燥後のゲルシートに対して熱固定を行なうためにTDテンターに導き、熱固定温度125℃、延伸倍率1.4倍で熱固定を行い、その後、0.8倍の緩和操作(即ち、熱固定緩和率が0.8倍)を行った。得られた膜厚20μmのフィルム(以下、「微多孔膜セパレーター」ともいう。)中から、500mm×500mmのフィルムを切り出しランダムに20か所を、膜厚東洋精機製の微小測厚器(タイプKBM)を用いて室温23±2℃で測定し、そのフィルムの膜厚分布をついて評価した。
(評価基準)
○:膜厚分布が、±1.0μm以下である。
△:膜厚分布が、±1.0μm以上1.5μm以下である。
×:膜厚分布が、±1.5μm以上である。
【0098】
(9)耐異物特性及び電池サイクル特性の評価
(9−1)電池の作製
非水電解液の調製:
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0099】
帯状負極:
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を、精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコートで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗布量は106g/m3、活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにして、帯状負極を得た。
【0100】
帯状正極:
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO2を92.2質量%、導電材としてリン片上グラファイト2.3質量%とアセチレンブラック2.3質量%、バイダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコートで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、正極の活物質塗布量は250g/m2、活物質嵩密度は3.00g/cm3になるようにして、帯状正極を得た。
【0101】
電池組立て:
(8)で得られた微多孔膜セパレーター(以下、単に「セパレーター」ともいう。)、帯状正極、及び帯状負極を、帯状負極、セパレーター、帯状正極、セパレーターの順に重ねて渦巻状に12回捲回することで電極板積層体を作製した。この電極板積層体を70℃の温度条件下2MPaで30秒間平板状にプレスし、電池捲回体を得た。
【0102】
作製した電池捲回体をアルミニウム製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製リードを容器壁に、負極集電体から導出したニッケル製リードを容器蓋端子部に接続した。この容器内に前記の非水電解液を注入して密閉した。こうして作製されたリチウムイオン電池は、縦(厚み)6.3mm、横30mm、高さ48mmの大きさであった。この電池容量は600mAhであった。
【0103】
(9−2)耐異物特性
上記リチウムイオン電池を充電後、アルゴンボックス内でその電池内部より捲回電極体を取り出した。その捲回電極体の最外周の絶縁テープをはさみで電池の円筒軸と平行な方向に切断し、捲回電極体の捲回を途中まで解いた。捲回電極体の切断した位置から捲回方向に20mmの部分に接触するように、A)直径0.8mmの鉄球5mg、及び、B)直径0.8mm、長さ1.6mmの円柱状の鉄片5mgを配置し、捲回電極体を巻き戻した後、絶縁テープで再度固定した。なお、上記Bの円柱状の鉄片は、電極エッジ部からの滑落物質を想定しており、セパレーターのMD方向に鉄片の長辺が平行になるようにその鉄片を配置した。
【0104】
巻き戻した後の捲回電極体をチャック付きのPE製袋に入れ、捲回電極体の鉄球及び鉄片を配置した部分が上方を向くようにして台上に置いた。次いで、10mm角の横断面を有する金属角柱の底部に2mm厚のニトリルゴムシートを貼付した加圧治具を準備した。その加圧治具のニトリルゴムシート側を上記捲回電極体に対向させた状態で、その加圧治具を0.1mm/秒の速度で下降させた。そして、加圧治具を捲回電極体に押し付けた後、更に加圧して、発火した際の圧力(N)を測定した。この圧力の値を、耐異物特性(A+B)と規定した。また、別途、上記直径0.8mm、長さ1.6mmの円柱状の鉄片5mgのみを同様に配置、加圧し、発火した際の圧力(N)を測定した。この圧力の値を、耐異物特性(B)と規定した。これらの圧力が高いことは耐異物特性が良好であることを意味しており、特に耐異物特性(B)に関して、電極エッジ部からの滑落物質への耐性を想定している。
【0105】
(9−3)電池サイクル特性(500サイクル)
組立てた電池の初充放電として、まず1/6Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後に4.2Vの定充電を保持するように電流値を絞り始めて合計8時間の初充電を行い、次に1/6Cの電流で2.5Vの終止電圧まで放電を行った。続いてサイクル充放電として(i)電流量0.5C、上限電圧4.2V、合計8時間の定電流定電圧充電、(ii)10分間の休止、(iii)電流量0.5C、終止電圧2.5Vの定電流放電、(iv)10分間の休止、の(i)〜(iv)のサイクル条件で計500サイクルの充放電を行った。以上の充放電処理は全て20℃の雰囲気下で実施した。その後、上記初充電での放電容量W1に対する上記500サイクル目の放電容量W500の比を100倍することで、容量維持率(%)を求めた。求めた容量維持率(%)より、下記評価基準でサイクル特性を評価した。
容量維持率(%)=W500/W1×100
(評価基準)
○:容量維持率が90%以上である。
×:容量維持率が90%未満である。
【0106】
[参考例1:触媒合成例1:固体触媒[A]の調製]
〔固体触媒成分[A]の調製〕
(1)(A−1)担体の合成
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに2mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で攪拌しながら組成式AlMg5(C4911(OC492で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液2,550mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄した。この固体((A−1)担体)を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.31mmolであった。
【0107】
(2)固体触媒成分[A]の調製
上記(A−1)担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液110mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSiH)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液110mLとを同時に1時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1,100mL除去し、ヘキサン1,100mLで2回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。この固体触媒成分[A]1g中に含まれるチタン量は0.75mmolであった。
【0108】
[参考例2:触媒合成例2:固体触媒[B]の調製]
(1)(B−1)担体の合成
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに2mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で攪拌しながら組成式AlMg5(C4911(OC492で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液2,550mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄した。この固体((B−1)担体)を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.31mmolであった。
【0109】
(2)固体触媒成分[B]の調製
上記(B−1)担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液110mLと1mol/Lの上記(A−1)の合成に使用した有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液110mLとを同時に1時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1,100mL除去し、ヘキサン1,100mLで2回洗浄することにより、固体触媒成分[B]を調製した。この固体触媒成分[B]1g中に含まれるチタン量は0.85mmolであった。
【0110】
(実施例1:PE1)
ヘキサン、エチレン、水素、触媒を、攪拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に連続的に供給した。重合温度はジャケット冷却により83℃に保った。ヘキサンは40L/Hrで供給した。助触媒として、トリイソブチルアルミニウムと固体触媒成分[A]とを使用した。固体触媒成分[A]は0.2g/Hrの速度で重合器に添加し、トリイソブチルアルミニウムは10mmol/Hrの速度で重合器に添加した。エチレン系重合体の製造速度は10kg/Hrであった。水素は気相のエチレンに対する水素濃度が16mol%になるようにポンプで連続的に供給し重合圧力をエチレンを連続供給することにより0.5MPaに保った。触媒活性は30,000g−PE/g−固体触媒成分[A]であった。重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように連続的に圧力0.05Mpaのフラッシュドラムに抜き、未反応のエチレン及び水素を分離した。重合スラリーは、連続的に溶媒分離工程を経て、乾燥工程へ送られた。塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。得られたエチレン系重合体パウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去した。こうして得られたエチレン系重合体パウダーをPE1とする。
【0111】
実施例1のエチレン系重合体パウダーについては、上述した方法に従い、分子量、総金属量、アルミニウム量、及び全塩素量、嵩密度、粒子径355μmを超える粒子の含有率、平均粒子径、流動性を測定した。その結果を表1に示す。
【0112】
また、上述した方法に従い、連続加工生産性を評価し、結果を表1に示した。また得られた微多孔膜の性能については、上述した方法に従い、製品膜の膜厚と耐異物特性及び電池サイクル特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0113】
(実施例2:PE2)
気相のエチレンに対する水素濃度が5モル%になるように連続的に水素を供給したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2のエチレン系重合体パウダーPE2を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE2を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例3:PE3)
重合温度を78℃としたこと以外は実施例2と同様の操作を行い、実施例3のエチレン系重合体パウダーPE3を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE3を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例4:PE4)
固体触媒成分[A]を用いずに、固体触媒成分[B]を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例4のエチレン系重合体パウダーPE4を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE4を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0116】
(比較例1:PE5)
重合温度を90℃、重合圧力0.25MPaとし、分子量調整剤としての水素を用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例1のエチレン系重合体パウダーPE5を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE5を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0117】
(比較例2:PE6)
分子量調整剤としての水素濃度を32mol%とした以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例1のエチレン系重合体パウダーPE6を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE6を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0118】
(比較例3:PE7)
重合圧力を0.8MPaとしたこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、比較例3のエチレン系重合体パウダーPE7を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE7を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0119】
(比較例4:PE8)
重合圧力を0.25MPaとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例4のエチレン系重合体パウダーPE8を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE8を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0120】
(比較例5:PE9)
重合圧力を1.0MPaとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例5のエチレン系重合体パウダーPE9を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE9を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0121】
(比較例6:PE10)
エチレン系重合体の製造速度を20kg/Hrとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例6のエチレン系重合体パウダーPE10を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE10を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0122】
(比較例7:PE11)
重合温度を90℃、水素濃度を10mol%とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例7のエチレン系重合体パウダーPE11を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE11を用いて実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0123】
(比較例8:PE12)
重合に用いる助触媒をトリエチルアルミニウムとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例8のエチレン系重合体パウダーPE12を得た。得られたエチレン系重合体パウダーPE12を用いて実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
以上のことから、特定の分子量と触媒残渣と嵩密度、流動性を含有するエチレン系重合体パウダーが、連続加工生産性に優れ、高い製品品質と高い電池サイクル特性を示すことがわかる。
【0126】
またこれらのエチレン系重合体パウダーから得られる成形体が、リチウムイオン電池セパレーター、高強度繊維、鉛蓄電池セパレーターとしても好適に用いられることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のエチレン系重合体パウダーは、流動性に優れ、連続加工生産性に優れ、製品品質に優れ、電池サイクル特性に優れることから、リチウムイオン電池セパレーター、鉛蓄電池セパレーター、高強度繊維、成形用途、焼結用途等広い用途において産業上の利用可能性を有する。