特許第5829318号(P5829318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5829318末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの安定化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5829318
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/32 20060101AFI20151119BHJP
【FI】
   C08G77/32
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-148192(P2014-148192)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-21135(P2015-21135A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】10 2013 214 312.5
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(72)【発明者】
【氏名】アグネス、バスカーコフ
(72)【発明者】
【氏名】ギルベルト、ガイスベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエラ、タンザー
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/013980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して環状シロキサンの含有量が5重量%以下である、前記末端ヒドロキシ基を有するシロキサンを安定化させる方法であって、アンモニアを、気体状形態で、又はプロトン性又は非プロトン性溶剤に入れた溶液として、
もしくはアンモニア放出性化合物の形態で、それぞれの場合にアンモニアとして計算し、前記末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの前記総重量に対して、少なくとも0.01重量ppm、及び100重量ppm以下の量で加え、
前記末端ヒドロキシ基を有するシロキサンが、一般式(II)を有し、
HO(R3R4SiO)nH (II)
式中、
R3が、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R4が、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、又は5〜30個の炭素原子を有するアリール基、もしくは2〜12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、かつ
nが、2〜1000の整数であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
アンモニアが、気体状形態で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アンモニアが、末端前記Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの前記総重量に対して、少なくとも0.01重量ppm、及び100重量ppm以下の量で使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
圧力1000〜10000hPaで、温度10〜100℃で行われる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
i)第一工程で、環状シロキサンを、環状シロキサン及び末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの混合物から除去するために、前記環状シロキサンを、蒸気流により、圧力1〜500hPaで分離する、及び
ii)第二工程で、安定化を行うために、アンモニアを、気体状形態で、又はプロトン性又は非プロトン性溶剤に入れた溶液として、もしくはアンモニア放出性化合物の形態で、それぞれの場合にアンモニアとして計算し、前記末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの前記総重量に対して、少なくとも0.01重量ppm、及び100重量ppm以下の量で、前記末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの前記総重量に対して5重量%以下の環状シロキサンの含有量を有する末端Si−結合したヒドロキシ基を有する、得られたシロキサンに加える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシロキサンの安定化方法。
【請求項6】
前記環状シロキサンが、一般式(I)を有し、
(R1R2SiO)m (I)
式中、
が、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、
が、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、又は5〜30個の炭素原子を有するアリール基、もしくは2〜12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、かつ
mが、3〜20の整数である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程i)における前記圧力が10〜100hPaである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
工程i)における前記温度が50〜200℃ある、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
i)第一工程で、環状シロキサンを、環状シロキサン及び末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを含む混合物から除去するために、前記環状シロキサンを蒸気流により、圧力1〜500hPaで、温度140〜180℃で、分離し、3〜6個のSi原子を有する環状シロキサンの割合が、それぞれの場合に前記末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの前記総重量に対して、50000重量ppm未満である末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを形成し、かつ
ii)第二工程で、安定化を行うために、アンモニアを、気体状形態又はプロトン性もしくは非プロトン性溶剤に入れた溶液として、又はアンモニア放出性化合物の形態で、それぞれの場合にアンモニアとして計算し、前記末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの前記総重量に対して、少なくとも0.01重量ppm、及び100重量ppm以下の量で、前記第一工程で得た前記末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンに加える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、バッチ様式で、半連続的又は完全に連続的に行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンの安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,569,688号は、架橋性に悪影響を及ぼさずに圧縮永久ひずみを下げるために、白金触媒、及びアルケニル基を有するシロキサンを含む付加架橋性シリコーン組成物に、アンモニア又はアンモニア放出性化合物を添加することを記載している。
【0003】
米国特許出願公開第2007/0066783A1号(独国特許出願公開第102005045336A1号)は、貯蔵安定性を改良するために、焼成疎水性シリカ及びSiH架橋剤を含む、付加架橋性シリコーン組成物に、アンモニア又はアンモニア放出性化合物を添加することを開示しているが、ここで、貯蔵安定性とは、シリコーン組成物の流動性及び粘度がほとんど一定していることを意味する。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0137362A1号(欧州特許出願公開第1544252A1号)では、貯蔵安定性を増加するために、特にゲル化による粘度増加を回避するために、ヒドロキシ基を含み、Si−結合した塩素原子の残留量を含む樹脂状オルガノポリシロキサンに、有機アミンを添加している。Si−結合した塩素原子の残留量は、これらが、例えばシラノール基Si−OH、大気中の湿分、残留する痕跡量の水及びアルコールにより、貯蔵期間中に塩化水素に成り、この塩化水素が縮合触媒として作用し、樹脂状オルガノポリシロキサンのゲル化により、粘度増加につながるので、不利である。アミノ基を含む化合物は、アミノ基上に1、2または3個の有機ラジカルを含み、大量に、例えば100重量ppmの量で使用される。
【0005】
独国特許出願公開第102011079751A1号は、末端ヒドロキシ基を有する短鎖シロキサンから、蒸気流による、環状シロキサンの除去を記載している。しかし、得られるシロキサンは、Si結合したヒドロキシ基Si−OHが不安定であり、自己縮合により、水が除去されて、Si−OH−Siシロキサン結合を形成するので、長期間にわたって貯蔵安定性ではない。この安定性の不足は、水の形成、物質の曇り、環形成及び鎖の延長を引き起こすので、不利である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、上記の欠点を回避し、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの貯蔵安定性を改良し、特に、環状シロキサンの含有量も低い方法を提供することである。この目的は、本発明により達成される。
【0007】
本発明は、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して5重量%以下の環状シロキサンの含有量を有する末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを安定化させる方法であって、アンモニアを、気体状形態で、又はプロトン性又は非プロトン性溶剤に入れた溶液として、もしくはアンモニア放出性化合物の形態で、それぞれの場合にアンモニアとして計算し、末端ヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、少なくとも0.01重量ppm、好ましくは少なくとも1重量ppm、より好ましくは少なくとも2.5重量ppm、及び100重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下の量で加える、方法を提供する。
【0008】
末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンは、鎖長が、好ましくは2個〜1000個、より好ましくは2個〜150個のSi原子である。
【0009】
環状シロキサンは、好ましくは3個〜20個、より好ましくは3個〜6個のSi原子である。
【0010】
末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンは、環状シロキサンの含有量が、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、好ましくは2重量%以下である。
【0011】
アンモニアは、好ましくは気体状形態で使用する。
【0012】
気体状形態のアンモニアは、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、好ましくは1〜20重量ppm、より好ましくは2.5〜10重量ppmの量で使用する。
【0013】
アンモニアが溶解した形態で中に存在するプロトン性溶剤の例は、水である。
【0014】
アンモニアが溶解した形態で中に存在する非プロトン性溶剤の例は、飽和及び不飽和の直鎖状及び環状形態にある炭化水素、例えばヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン及び石油エーテル、キシレン、トルエン及びベンゼンのような芳香族炭化水素、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2−ジクロロエタン及びクロロベンゼンのようなハロゲン化脂肪族及び芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテルのような直鎖状及び環状エーテル、アセトン及びメチルエチルケトンのようなケトン及び酢酸エチルのようなエステルである。
【0015】
溶剤は、個別に、又は溶剤の混合物の形態で使用することができる。
【0016】
アンモニア放出性化合物の例は、尿素、尿酸、アンモニウム塩、シラザン及び第一級アミドの誘導体、例えばカルバメート、カルバミネート、セミカルバジド及びセミカルバゾン、又はそれらの有機もしくは無機エステルである。
【0017】
アンモニア放出性化合物は、個別に、又はアンモニア放出性化合物の混合物の形態で使用することができる。
【0018】
シロキサンを安定化させる方法で、アンモニアを気体状形態で使用する場合、この方法は、圧力1000〜10000hPa、好ましくは1000〜4000hPaで行うことができる。
【0019】
この方法は、好ましくは温度10〜100℃、より好ましくは20〜50℃で行う。
【0020】
気体状形態にある、又はプロトン性又は非プロトン性溶剤に入れた溶液、もしくはアンモニア放出性化合物の形態にあるアンモニアは、系の中に、どのような様式でも、及び様々な場所で導入することができる。
【0021】
末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを安定化させる方法は、バッチ様式で、半連続的に、又は完全に連続的に行うことができる。
【0022】
安定化を行う方法で使用する、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して5重量%以下、好ましくは2重量%以下の環状シロキサンの含有量を有する末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンは、好ましくは、環状シロキサン及び末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを含む混合物から環状シロキサンを除去するために、環状シロキサン及び少量の非常に短鎖の揮発性シロキサンを、蒸気流を使用して、圧力1〜500hPa、好ましくは10〜100hPa、より好ましくは20〜30hPaで分離する方法によって得られる。環状シロキサンを除去する方法は、好ましくは温度50〜200℃、より好ましくは140〜180℃、特に好ましくは155〜180℃で行われる。
【0023】
従って、
i)第一工程で、環状シロキサンを、環状シロキサン及び末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを含む混合物から、蒸気流により、圧力1〜500hPaで分離し、かつ
ii)第二工程で、安定化を行うために、アンモニアを、気体状形態で、又はプロトン性又は非プロトン性溶剤に入れた溶液として、もしくはアンモニア放出性化合物の形態で、それぞれの場合にアンモニアとして計算し、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、少なくとも0.01重量ppm、好ましくは少なくとも1重量ppm、より好ましくは少なくとも2.5重量ppm、及び100重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下の量で、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して5重量%以下、好ましくは2重量%以下の環状シロキサンの含有量を有する末端Si−結合したヒドロキシ基を有する、得られたシロキサンに加える、シロキサンを安定化する方法が好ましい。
【0024】
工程i)で環状シロキサンに加えて、少量の非常に短鎖の揮発性シロキサンを除去することも同様に好ましい。
【0025】
環状シロキサンは、好ましくは一般式(I)
(R1R2SiO)m (I)
式中、
は、1〜12個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、
は、1〜12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、又は5〜30個の炭素原子を有するアリールラジカル、もしくは2〜12個の炭素原子を有するアルケニルラジカルであり、及び
mは、3〜20、好ましくは3〜6の整数である。
【0026】
アルキルラジカルRの例は、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチル及びヘキシルラジカルであり、メチルラジカルが好ましい。
【0027】
ラジカルRの例は、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチル及びヘキシルラジカルのようなアルキルラジカル、フェニル、トリル、キシリル及びナフチルラジカルのようなアリールラジカル、及びビニルラジカルのようなアルケニルラジカルである。各ラジカルRが、独立してメチル及びビニルラジカルの中から選択されるのが好ましい。Rがメチル及びビニルラジカルの中から選択され、各Rが同一であり、全てのラジカルRがメチル又はビニルラジカルであるのが特に好ましい。
【0028】
末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサン中の、3〜6個のSi原子を有する環状シロキサン、好ましくは式(I)の環状シロキサン(式中mが3〜6である)の割合は、環状シロキサンを除去する方法を適用した後、それぞれ場合に末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、好ましくは50000重量ppm未満、好ましくは20000重量ppm未満、より好ましくは10000重量ppm未満である。
【0029】
末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンは、一般式(II)を有し、
HO(R3R4SiO)nH (II)
式中、
は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、又は5〜30個の炭素原子を有するアリール基、もしくは2〜12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
nは、2〜1000、好ましくは2〜150の整数である。
【0030】
の例及びRの好ましい意味は、上にRに関して記載してある。Rの例及びRの好ましい意味は、上にRに関して記載してある。
【0031】
式(II)は、T単位、即ち式R*SiO3/2の、RがラジカルR又はRであり、R及びRは、上に記載した意味を有する単位、及びQ単位、即ち式SiOの単位を、D単位、即ち式RSiOの単位に加えて含むことができ、T及びQ単位は、それぞれの場合に末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%の量で存在する。
【0032】
末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンは、クロロシランの加水分解により得ることができる。例えば、式(II)のシロキサンは、ジメチルジクロロシラン又はメチルビニルジクロロシランもしくはそれらの混合物の加水分解により得ることができる。得られた生成物を水相から分離し、好ましくは蒸留により精製する。加水分解生成物は、環状シロキサン及び末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの混合物である。
【0033】
環状シロキサン、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサンD3、オクタメチルシクロテトラシロキサンD4、デカメチルシクロペンタシロキサンD5及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンD6は、加水分解で形成されるので、その含有量を下げるのが有利である。
【0034】
従って、特に好ましいのは、シロキサンを安定化させる方法であって、
i)第一工程で、環状シロキサンを、環状シロキサン及び末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを含む混合物から除去するために、環状シロキサンを蒸気流により、圧力1〜500hPa、好ましくは10〜100hPaで、温度140〜180℃、好ましくは155〜180℃で、分離し、3〜6個のSi原子を有する環状シロキサンの割合が、それぞれの場合に末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、50000重量ppm未満、好ましくは20000重量ppm未満、より好ましくは10000重量ppm未満である、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンを形成し、かつ
ii)第二工程で、安定化を行うために、アンモニアを、気体状形態又はプロトン性もしくは非プロトン性溶剤に入れた溶液として、又はアンモニア放出性化合物の形態で、それぞれの場合にアンモニアとして計算し、末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンの総重量に対して、少なくとも0.01重量ppm、好ましくは少なくとも1重量ppm、より好ましくは少なくとも2.5重量ppm、及び100重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下の量で、第一工程で得た末端Si−結合したヒドロキシ基を有するシロキサンに加える方法である。
【0035】
環状シロキサンの除去は、好ましくは蒸気の流れにより、例えば蒸気蒸留により、例えば独国特許出願公開第102011079751A1号に記載されている方法により行う。この方法は、独国特許出願公開第102011079751A1号と対照的に、好ましくは減圧下、即ち1〜500hPa、好ましくは10〜100hPa、より好ましくは20〜30hPaで、及び好ましくは高温、即ち50〜200℃、好ましくは140〜180℃、より好ましくは155〜180℃で行う。
【0036】
この環状シロキサンの除去方法は、バッチ様式で、半連続的又は完全に連続的に行うことができる。
【0037】
蒸気及び分離された環状シロキサンの混合物は、当業者には公知の方法により、例えば冷却器中で凝縮により、凝縮する。本方法の温度より低い温度で水に溶解し難い環状シロキサンは、好ましくは凝縮した蒸気から物理的分離操作、例えば相分離、により分離される。次いで、環状シロキサン及び少量の、非常に短鎖の揮発性シロキサンは、好ましくはシロキサンの製造方法で再使用する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1は、様々なアンモニア濃度[重量ppm]における貯蔵安定性を測定する、Si−OH含有量[重量%]の、時間d[日]に対する依存性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
例1
式(I)のR=R=CHである環状シロキサン、及び式(II)のR=R=CHである末端Si−結合したヒドロキシ基を有する直鎖状シロキサンの混合物からなり、Si−OH含有量が2.36重量%であり、表1に組成を示す、加水分解方法から得た粗製生成物を、環状シロキサンを除去するために、第一工程で、160℃及び20hPaで、処理量600kg/hで、0.9m/hの蒸気流により精製する。留出物は、シロキサン製造方法に循環使用する。
【0040】
得られた生成物は、Si−OH含有量が3.6重量%であり、表2に見られるような組成を有する。第二工程で、気体状アンモニアを、進入圧3,000〜4,000hPaで、20℃及び流量約4l/hで圧力容器から、この出発混合物に導入し、この出発混合物は、50℃の温度を有し、連続流量350kg/h及び圧力1013〜1200hPaで搬送される。安定化された生成物は、アンモニア含有量が20重量ppmであり、ドラム中に分配される。アンモニア含有量は、滴定により測定した。すなわち試料溶液トルエン/イソプロパノール中、指示溶液クロロホルム中、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル0.2%濃度、標準溶液0.01mol/lエタノール性HClであった。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表2に関して
環状シロキサン含有量を測定する方法:ガスクロマトグラフィー(CES-Centre Europeen des Silicones、題名:シリコーン製品における揮発性シロキサンの残留量の定量、発行日付、4月16日2013年の方法による)
【0044】
平均鎖長の測定方法:DIN 55672-1 ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、第一部:溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)(しかし、この例では溶離液としてトルエンをTHFの代わりに使用する)又はISO 16014−1:2012(E)、プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーを使用する重合体の平均分子質量及び分子質量分布の測定−第一部、一般的原理、
及びISO 16014−1:2012(E)、プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーを使用する重合体の平均分子質量及び分子質量分布の測定−第三部、低温方法。
【0045】
方法に対するさらなる情報:
カラム:Agilent PLGel 10000Å+500Å+100Å(カラム材料及び細孔サイズ分布及び分子質量測定範囲−600000−10000/30000−500/−4000)、各300x7.5mm、5μm(長さx直径、固定相の粒子径)。
溶離液:トルエン
流量:1.0ml/min
カラム温度:45℃
検出器:RI
校正:ポリスチレン標準、第三オーダー
内部標準:フローマーカー
注入容積:100μm
試料濃度:3mg/mlトルエン中に溶解
【0046】
例2
例1と同様に製造し、Si−OH含有量が3.85重量%であり、アンモニア含有量が18.3重量ppmである生成物を、アンモニアをまだ含まない(0重量ppm)、表2に示す組成の材料で、2.5〜10重量ppmのアンモニア含有量に希釈する。続いて、生成物を室温で何か月も貯蔵し、規則的な間隔で分析にかけ、Si−OH含有量を定量した。図1に結果をまとめる。
【0047】
図1は、様々なアンモニア濃度[重量ppm]における貯蔵安定性を測定する、Si−OH含有量[重量%]の、時間d[日]に対する依存性を示す。Si−OH含有量は、25℃におけるFT-NIR分光法により測定した(基準法:H-NMR)。
【0048】
アンモニア安定化(0重量ppmのNH)が無ければ、Si-OH含有量は、急速に低下し、僅か2ヶ月後に25%低下する。これは、末端基の反応性低下、水の排除及びシロキサン鎖長の増加によるものである。アンモニア濃度が約2.5重量ppm以上でも、安定性が明らかに増加する。8ヶ月後にも材料は初期Si−OH含有量の97%を有し、12か月を超えても安定している。
図1