特許第5829503号(P5829503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5829503
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09G 1/00 20060101AFI20151119BHJP
   C09G 1/04 20060101ALI20151119BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20151119BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20151119BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20151119BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   C09G1/00 A
   C09G1/04
   C09K3/18 104
   C09D183/04
   C09D183/06
   C09D5/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-265106(P2011-265106)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-116972(P2013-116972A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106771
【氏名又は名称】シーシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150681
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 荘助
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100105061
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 喜博
(72)【発明者】
【氏名】田口 勝博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 儀明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 健太
(72)【発明者】
【氏名】大橋 貴侑
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−328158(JP,A)
【文献】 特開2011−063794(JP,A)
【文献】 特開昭59−030876(JP,A)
【文献】 特開平03−207776(JP,A)
【文献】 特開平08−183949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09G
C09D
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂を0.05〜0.5重量%、ジメチルシリコーンオイル及び両末端水酸基含有シリコーンオイルを含有し、アミノ変成シリコーンを含有しない、塗装被膜、金属、セラミック、紙、木部又は布帛表面用の水性表面処理剤。
【請求項2】
ジメチルシリコーンオイルが25℃において50〜10000cStの粘度を有するものである請求項記載の水性表面処理剤。
【請求項3】
エタノールを含有する請求項1又は2に記載の水性表面処理剤。
【請求項4】
両末端水酸基含有シリコーンオイルの含有割合が0.1〜3.0重量%である請求項1〜のいずれかに記載の水性表面処理剤。
【請求項5】
両末端水酸基含有シリコーンオイルの粘度は25℃において10000〜300000cStである請求項1〜のいずれかに記載の水性表面処理剤。
【請求項6】
該ジメチルシリコーンオイルの含有割合が0.01〜2.0重量%である請求項1〜5のいずれかに記載の水性表面処理剤。
【請求項7】
エタノールの含有割合が1.0〜10.0重量%である請求項3のいずれかに記載の水性表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌や建築物等の表面を処理するための表面処理剤であり、表面の摩擦性を低下させるための表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、シリコーン樹脂、ジメチルシリコーンオイルを含有する有機溶剤系の防錆・耐汚染性の組成物は知られている。
さらに、車の特に金属部分に該防錆・耐汚染性の組成物を塗布して、その車の所定箇所を保護することは知られている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、ワックス、乳化剤、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、有機溶剤及び水を含むW/O型エマルジョンである洗浄艶出し剤は知られている。
【0004】
特許文献3に記載されているように、ポリオルガノシロキサンおよびポリオルガノシルセスキオキサン粉末を含むO/Wエマルジョン組成物は艶出し剤として使用されることも知られている。
【0005】
特許文献4に記載されているように、シリコーン樹脂、界面活性剤、ジメチルシリコーンオイルを含有する自動車用洗浄撥水艶出し剤も公知である。
【0006】
特許文献5に記載されているように、ポリオルガノシロキサン、非イオン性界面活性剤、特定のエステル又はエステル化合物を含有する、自動車用の光沢を向上させかつ艶出しを行う組成物は公知である。
【0007】
上記特許文献1〜5に記載されている各組成物は、自動車などの艶出し等を行う作用を有し、そのためにジメチルシリコーンオイルやシリコーン樹脂等を含有する処理用組成物とされた物であるが、これらの組成物はその処理によって処理対象の表面の艶が向上し、撥水効果が高くなるという効果を奏していた。
しかしながら、処理後の対象表面を手で触った際の感触等を向上させる効果を発揮する発明ではなく、むしろ逆に撥水性を向上させるなど、一般には親水性を示す肌に触れて、その感触がすべすべである、あるいは艶が向上されているという性質を求めた表面処理剤はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−095999号公報
【特許文献2】特開2010−144025号公報
【特許文献3】特開平09−291215号公報
【特許文献4】特開平11−106708号公報
【特許文献5】特開2011−006500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、これまでの表面処理剤は、単に表面を撥水性にしたり、ツヤを向上させたりするに留まり、貯蔵安定性を向上させながら手で触れた際のすべり性を向上させ、かつ表面を低摩擦性とすることによる作業性の向上を図る表面処理剤ではなかった。そのため、例えば自動車の表面のツヤを向上させると、その自動車の外観は、光の反射によってより高級感が表れる等とすることが可能であるが、そのようなことは極めて困難であった。
つまり、このようなすべり性を向上させ、さらにツヤを向上させてなる表面を求めていても、そのような表面を得るために必要な処理剤が知られていない。
そこで本発明においては、貯蔵安定性に優れた表面処理剤を用いて、撥水性を向上させつつ、ツヤや良好なすべり性を呈する表面を、優れた作業性によって実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.シリコーン樹脂を0.05〜0.5重量%及び両末端水酸基含有シリコーンオイルを含有してなる水性表面処理剤。
2.さらにジメチルシリコーンオイルを含有する1記載の水性表面処理剤。
3.ジメチルシリコーンオイルが25℃において50〜10000cStの粘度を有するものである2記載の水性表面処理剤。
4.エタノールを含有する1〜3のいずれかに記載の水性表面処理剤。
5.両末端水酸基含有シリコーンオイルの含有割合が0.1〜3.0重量%である1〜4のいずれかに記載の水性表面処理剤。
6.両末端水酸基含有シリコーンオイルの粘度は25℃において10000〜300000cStである1〜5のいずれかに記載の水性表面処理剤。
7.該ジメチルシリコーンオイルの含有割合が0.01〜2.0重量%である2〜6のいずれかに記載の水性表面処理剤。
8.エタノールの含有割合が1.0〜15.0重量%である4〜7のいずれかに記載の水性表面処理剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、いずれの表面であっても、貯蔵安定性に優れた表面処理剤を用いて、撥水性を向上させつつ、ツヤやすべり性を呈する表面を、優れた作業性で実現することができる。
本発明の表面処理剤により表面を処理すると、その表面を掃除するために表面を擦る際にはより少ない力でスムーズに擦ることができ、ひいては撥水性を有する表面であっても掃除をより楽に行うことができる。
また、つるつる感の向上により皮膚に触れた際の手触りや肌触りが滑らかになると共に、表面で反射する光の光輝性も向上するので、外観がより華やかになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水性表面処理剤は、塗装被膜、樹脂、金属、セラミック、紙、木部、布帛等の各材質からなる表面に対する処理に使用されるものであり、また、自動車、機械、家具、建築物、建具等各種用途を対象にして使用することができる。
さらに、本発明の水性表面処理剤は、スプレー、浸漬、ローラー、刷毛等公知の手段によって上記の対象物表面に対して使用することができ、噴霧後必要に応じて布等により磨くことにより、あるいは、布等にスプレー等によって付着させた後にその布を用いて対象物表面を拭くことによって、対象物表面に対してより強いつるつる感や低摩擦性を与えることができる。
本発明の水性表面処理剤により処理する際には、対象物表面は乾燥した表面でもよいが、水滴が付着する湿潤した表面でもよい。本発明の水性表面処理剤を布等にスプレー等により付着させ、この布によって水滴が付着した状態の対象物表面を拭き上げることも可能である。
その後、使用するにつれて、表面の表面処理剤による被膜が失われてきた場合には、再度表面処理を行うことによって、再び表面のツヤやすべり性(低摩擦性)を向上させることが可能である。
【0013】
本発明にて使用するシリコーン樹脂は、三次元網目構造を有するか、または形成し得るもの、具体的にはメチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂などのストレートシリコーン樹脂、アルキッド変性シリコーン樹脂、ポリエステル変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、フェノール変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、メラミン変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0014】
本発明の水性表面処理剤に含有されるシリコーン樹脂の濃度は、0.05〜0.5重量%であり、好ましくは0.08〜0.3重量%、さらに好ましくは0.10〜0.2重量%である。0.05重量%未満では、表面にすべり性、十分なツヤ、撥水性を与えることが困難になり、0.5重量%以上であると、水性表面処理剤における分散性が悪化する。
【0015】
本発明にて使用する両末端水酸基含有シリコーンオイルは、25℃における粘度は10000〜300000cStが好ましく、より好ましくは30000〜200000cSt、さらに好ましくは50000〜150000cStである。
また使用する両末端水酸基含有シリコーンオイルは1種類でも良いが、例えば粘度や構造が異なる2種類以上の両末端水酸基含有シリコーンオイルを組み合わせて使用することもできる。
【0016】
本発明にて使用するジメチルシリコーンオイルは、作業性を向上させる目的にて使用することができる。さらに25℃における粘度は50〜10000cStが好ましく、より好ましくは150〜5000cStである。
使用するジメチルシリコーンオイルは1種類でも良いが、例えば粘度が異なる2種類以上のジメチルシリコーンオイルを組み合わせて使用することもできる。
本発明において、ジメチルシリコーンオイルを使用しない場合には、処理された表面は、つるつるとした感触とすることによるすべり性、ツヤ、撥水性が極めて良好であり、作業性及び貯蔵安定性も特段の問題を生じないという性質を有する。他方、25℃における粘度が50cSt未満のジメチルシリコーンオイルを使用する場合には、さらに作業性を良好にすることができ拭き上げた処理面にムラがない。
25℃における粘度が50cSt以上のジメチルシリコーンオイルを使用する場合には、処理された表面は、ツヤ、撥水性が極めて良好であり、拭き上げた処理面にムラがなく作業性も極めて良好となることに加え、非常につるつるとした感触とすることができる。
このようにジメチルシリコーンオイルを使用することにより作業性を向上させることができる。
加えて、ジメチルシリコーンオイルの25℃における粘度を50〜10000cStの範囲とすることによりさらにすべり性を向上させることができる。
【0017】
本発明の水性表面処理剤の溶媒としては、水でも良いがエタノールを含有する水でも良い。エタノールを含有する場合には、エタノールの濃度は1重量%以上15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下であり、エタノールを含有させることにより貯蔵安定性を向上させることができる。なお、15重量%を超えると、かえって貯蔵安定性が悪化する可能性がある。
【0018】
本発明においては界面活性剤を添加することもできる。
その界面活性剤としては、水不溶性のシリコーン樹脂や両末端水酸基含有シリコーンオイル、さらにはジメチルシリコーンオイルを水性溶媒に分散させることが可能な界面活性剤であればよい。そのような界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いてもよい。
【0019】
ノニオン系界面活性剤としては、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルのようなグリセリン脂肪酸エステル;同様の脂肪酸残基を有するポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;オキシエチレン・オキシプロピレンブロック共重合体;ならびにポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが例示される。
【0020】
アニオン系界面活性剤としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ミリスチルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ブチルナフチルスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフチルスルホン酸ナトリウム;ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンイコシルエーテル硫酸エステルナトリウムのようなポリオキシエチレンモノアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩;ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムのようなポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテル硫酸エステルナトリウム塩などが例示される。
【0021】
カチオン系界面活性剤としては、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、牛脂トリメチルアンモニウムクロリド、ヤシ油トリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドのような第四級アンモニウム塩が例示される。
【0022】
両性界面活性剤としては、特に限定されず、各種の両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、アルキルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタインなどのベタイン系界面活性剤、例えば、アルキルイミダゾリンの誘導型両性界面活性剤であるイミダゾリン系両性界面活性剤、例えば、N−アルキルアミノ酸またはその塩からなるアミノ酸型両性界面活性剤、例えば、アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシンのナトリウム塩や塩酸塩である両性界面活性剤が挙げられる。
【0023】
これらの界面活性剤は、通常、同一系統または異なる系統の2種以上のものが併用され、良好なエマルジョンが容易に得られ、また他のエマルジョンと組合せて、または他のエマルジョン中に配合して用いることが可能なことから、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0024】
本発明の水性表面処理剤に含有される界面活性剤の濃度は、シリコーン樹脂や両末端水酸基含有シリコーンオイル、さらにはジメチルシリコーンオイルの種類や量によっても変わるが、5重量%までの濃度となるように含有させることができる。
【0025】
さらに、本発明において、水性表面処理剤の溶媒は水を基本とした溶媒であり、さらにアルコールを配合することにより、低温における貯蔵安定性を向上させることが可能となる。
このようなアルコールとしては入手容易性の点からみてエタノールが好ましいが、プロパノールやメタノールでもよい。
さらに溶媒中には、低温安定性に支障がない範囲で他の有機溶媒を5重量%までの濃度の範囲、好ましくは3重量%まで、さらに好ましくは1重量%までの範囲内となるように混合させることができる。そのような有機溶媒としては、例えば酢酸エチル、ジメチルエーテル、エタノール以外のアルコール等を採用することができ、これらのアルコールを併用することにより、水性表面処理剤の保存安定性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の水性表面処理剤にはワックスを添加してもよく添加しなくてもよい。
ワックスを配合すると表面の艶は向上するが、添加量が多すぎると滑り性が悪化する可能性がある。
使用可能なワックスとしては、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライトなどに代表される天然ワックス、α−オレフィンワックス、フィッシャー・トロプッシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体、酸化パラフィン、酸化マイクロクリスタリンワックス、カスターワックス、モンタンワックスをベースにした酸ワックスおよびエステルワックスおよびその誘導体、ラノリン誘導体、石油系のオレフィンベースのオレフィンと無水マレイン酸あるいはアクリル酸、または、酢酸ビニルからなるワックス、金属石鹸、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、硬化油、脂肪酸アマイド、ポリエーテルなどに代表されるワックス様物、あるいは、フッ素変性ワックス、シリコーン変性ワックス、樹脂変性ワックスなどの種々の変性ワックスなどが挙げられ、そのうち1種以上を使用して、0.5重量%まで添加することができる。
その他、本発明の水性表面処理剤には、香料、着色剤、顔料、防かび剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常の表面処理剤に使用される公知の添加剤を添加してもよい。
【0027】
本発明の水性表面処理剤の製造方法としては、必要に応じてエタノール等の水溶性有機溶剤を含有してなる水に、シリコーン樹脂、両末端水酸基含有シリコーンオイル、及び必要によりジメチルシリコーンオイルを任意の順に添加し、翼式の攪拌器やホモミキサー等の公知の攪拌装置を用いて攪拌する方法があげられる。
【0028】
(以下実施例及び比較例)
下記の表1に示す原料を用いて水性表面処理剤を製造した。
(すべり性測定方法及びその判定条件)
水性表面処理剤をアクリル樹脂塗装試験片に滴下し、拭き上げた後に表面に手を滑らせた際のつるつる感を評価した。
◎・・・非常につるつるとした感触
○・・・つるつるとした感触
△・・・僅かにつるつるとした感触
×・・・施工前と変わらない
【0029】
(ツヤ測定方法及びその判定条件)
水性表面処理剤をアクリル樹脂塗装試験片に滴下し、拭き上げた後にツヤを目視にて評価した。
○・・・ツヤがある
△・・・僅かにツヤがある
×・・・施工前と変わらない
【0030】
(撥水性測定方法及びその判定条件)
水性表面処理剤をアクリル樹脂塗装試験片に滴下し、拭き上げた後にトリガーズプレーを用いて水を噴霧した後の水滴の状態を評価した。
○・・・水滴が丸くなる
△・・・水滴の一部がつぶれた状態
×・・・水滴がつぶれている状態
【0031】
(作業性測定方法及びその判定条件)
水性表面処理剤を自動車外板表面にスプレーし、その後拭き上げることにより施工した後のムラの有無を確認した。
○・・・ムラなく仕上がる
△・・・多少ムラがあるが拭き上げ可能
×・・・ムラがあり拭き上げることができない
【0032】
(貯蔵安定性測定方法及びその判定条件)
水性表面処理剤を密閉容器に充填した。これを100℃、70℃、室温及び−20℃のそれぞれの温度条件下にて一月間保管し、その後外観を確認した。
上記の4通りの温度条件全てにおいて○でなければ全体の評価を○とはしなかった。1つでも△があれば全体の評価は△、また1つでも×があれば全体の評価を×とした。
○・・・水性表面処理剤を調整した直後と同じ外観
△・・・水性表面処理剤の外観に分離を認める
×・・・水性表面処理剤が分離して、所定の性質を備えていない
【0033】
【表1】
【0034】
注(1) KM9717 信越化学工業製 MQレジン
注(2) X−52−8005 信越化学工業製 MQレジン
注(3) YMR7212 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン製
注(4) Polon MF-17 信越化学工業製
注(5) X-51-1330 信越化学工業製
注(6) TSM630 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン製
注(7) TSM632 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン製
注(8) TSM6343 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン製
【0035】
実施例1〜4の水性表面処理剤により得られた表面のすべり性、ツヤ、撥水性はいずれも極めて良好であり、作業性及び貯蔵安定性は良好であった。
実施例5の例のように、実施例1の水性表面処理剤にさらに25℃における粘度が10cStであるジメチルシリコーンオイルを添加するとムラなく仕上げることができ作業性が向上した。
実施例5の水性表面処理剤のジメチルシリコーンオイルを、粘度200〜10000cStのより高いジメチルシリコーンオイルに置換してなる実施例6〜9の水性表面処理剤は、さらに非常につるつるとした感触となり、すべり性が向上した。かつ作業性が極めて良好なものであった。
実施例6の水性表面処理剤に、さらにエタノールを5重量%となるように配合して得た実施例10の水性表面処理剤は、さらにいずれの温度においても調整直後の外観を保つことができ、貯蔵安定性が極めて良好なものであった。
【0036】
これに対して、両末端水酸基含有シリコーンオイルを含有しない比較例1の水性表面処理剤によると、表面のツヤ及び撥水性は極めて良好であるものの、すべり性、作業性、貯蔵安定性が不良となる結果であった。
また、含有されるシリコーン樹脂を0.03重量%と、本発明の含有量よりも少ない場合には、作業性及び貯蔵安定性は極めて良好であったが、すべり性、ツヤ及び撥水性は不良であった。
これらの実施例及び比較例によって理解できるように、本発明は特定の構成を採用することにより、すべり性、ツヤ、撥水性、作業性、貯蔵安定性のいずれの性質も優れたものとなった。