特許第5829710号(P5829710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エレクトロニクス インコーポレイティドの特許一覧

特許5829710MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置
<>
  • 特許5829710-MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置 図000003
  • 特許5829710-MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置 図000004
  • 特許5829710-MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置 図000005
  • 特許5829710-MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置 図000006
  • 特許5829710-MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置 図000007
  • 特許5829710-MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置 図000008
  • 特許5829710-MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5829710
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】MU−MIMOをサポートする多重フレーム送信方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20151119BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20151119BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20151119BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20151119BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20151119BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04J11/00 Z
   H04B7/04
   H04W84/12
   H04W16/28 130
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-47065(P2014-47065)
(22)【出願日】2014年3月11日
(62)【分割の表示】特願2012-526621(P2012-526621)の分割
【原出願日】2010年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-143715(P2014-143715A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年3月11日
(31)【優先権主張番号】61/236,887
(32)【優先日】2009年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/245,656
(32)【優先日】2009年9月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ソク ヨン ホ
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/061110(WO,A1)
【文献】 特開2009−164751(JP,A)
【文献】 特開2006−054673(JP,A)
【文献】 特開2007−215244(JP,A)
【文献】 DIONYSIOS SKORDOULIS AND QIANG NI, et al.,IEEE 802.11N MAC FRAME AGGREGATIONMECHANISMS FOR NEXT-GENERATIONHIGH-THROUGHPUT WLANS,IEEE Wireless Communications. February 2008,2008年 2月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04B 7/04
H04J 11/00
H04W 16/28
H04W 84/12
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
WLAN(wireless local area network)システムにおけるMIMO(multi user multiple input multiple output)通信のための方法であって、
前記方法は、受信ステーションにより実行され、
前記方法は、
複数のA−MPDU(Aggregate−Medium Access Control Protocol Data Unit)サブフレームを含むA−MPDUを受信することを含み、
前記複数のA−MPDUサブフレームの各々は、MPDU(Medium Access Control Protocol Data Unit)デリミタフィールドを含み、前記複数のA−MPDUサブフレームの各々は、ゼロ以上のパディングオクテットをさらに含み、
前記MPDUデリミタフィールドは、ナルフィールドおよびMPDU長さフィールドを含み、前記ナルフィールドは、対応するA−MPDUサブフレームが前記A−MPDUをパディングするのに使われるか否かを示し、前記MPDU長さフィールドは、前記対応するA−MPDUサブフレームのMPDUの長さを示し、
前記ナルフィールドは、1ビット情報フィールドであり、前記対応するA−MPDUサブフレームにMPDUが存在しないか否かに基づいて設定される、方法。
【請求項2】
前記ナルフィールドは、前記対応するA−MPDUサブフレームにMPDUが存在しない場合に1に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MPDUデリミタフィールドは、4バイト情報であり、直後にMPDUが続き、前記MPDUの直後にパディングフィールドが続く、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MPDUデリミタフィールドは、CRC(Cyclic Redundancy Check)フィールドをさらに含み、前記CRCフィールドの直後にデリミタシグネチャフィールドが続く、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対応するA−MPDUサブフレームの前記MPDUは、前記ナルフィールドが「1」に設定される場合に、ナルデータのみを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
WLAN(wireless local area network)システムにおけるMIMO(multi user multiple input multiple output)通信のための受信ステーションであって、
前記受信ステーションは、
無線周波数ユニットと、
前記無線周波数ユニットに連結されたプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
複数のA−MPDU(Aggregate−Medium Access Control Protocol Data Unit)サブフレームを含むA−MPDUを受信するように構成され、
前記複数のA−MPDUサブフレームの各々は、MPDU(Medium Access Control Protocol Data Unit)デリミタフィールドを含み、前記複数のA−MPDUサブフレームの各々は、ゼロ以上のパディングオクテットをさらに含み、
前記MPDUデリミタフィールドは、ナルフィールドおよびMPDU長さフィールドを含み、前記ナルフィールドは、対応するA−MPDUサブフレームが前記A−MPDUをパディングするのに使われるか否かを示し、前記MPDU長さフィールドは、前記対応するA−MPDUサブフレームのMPDUの長さを示し、
前記ナルフィールドは、1ビット情報フィールドであり、前記対応するA−MPDUサブフレームにMPDUが存在しないか否かに基づいて設定される、受信ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に関し、より詳しくは、MU−MIMO(multi user multiple input multiple output)をサポートする無線LANシステムにおける多重フレーム送信方法及びこれをサポートする無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信技術の発展とともに多様な無線通信技術が開発されている。このうち無線LAN(WLAN)は、無線周波数技術に基づいて個人携帯用情報端末機(Personal Digital Assistant;PDA)、ラップトップコンピュータ、携帯型マルチメディアプレーヤ(Portable Multimedia Player;PMP)などのような携帯型端末機を用いて家庭や企業または特定サービス提供地域で無線でインターネットに接続することができるようにする技術である。
【0003】
WLAN技術の標準化機構であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802が1980年2月に設立された以来、多くの標準化作業が実行されている。初期のWLAN技術は、IEEE802.11を介して2.4GHz周波数を使用して周波数ホッピング、帯域拡散、赤外線通信などで1〜2Mbpsの速度をサポートした以来、最近にはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)を適用して最大54Mbpsの速度をサポートすることができる。その他、IEEE802.11ではQoS(Quality for Service)の向上、アクセスポイント(AccessPoint)プロトコル互換、セキュリティ強化(Security Enhancement)、無線リソース測定(Radio Resource measurement)、車両環境のための無線接続(Wireless Access Vehicular Environment)、速いローミング(Fast Roaming)、メッシュネットワーク(Mesh Network)、外部ネットワークとの相互作用(Interworking with External Network)、無線ネットワーク管理(Wireless network Management)等、多様な技術の標準を実用化または開発中である。
【0004】
また、無線LANで脆弱点と指摘されてきた通信速度に対する限界を克服するために、比較的最近に制定された技術規格としてIEEE802.11nがある。IEEE802.11nは、ネットワークの速度と信頼性を増加させ、無線ネットワークの運営距離を拡張することを目的にする。より具体的に、IEEE802.11nでは、データ処理速度が最大540Mbps以上である高処理率(HighThroughput;HT)をサポートし、また、送信エラーを最小化してデータ速度を最適化するために、送信部と受信部の両方に多重アンテナを使用するMIMO(Multiple Inputs Multiple Outputs)技術に基づいている。また、この規格は、データ信頼性を高めるために、重複する写本を複数個送信するコーディング方式を使用するだけでなく、速度を増加させるために、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplex;OFDM)を使用することもできる。
【0005】
WLANの普及が活性化され、これを用いたアプリケーションが多様化されることによって、最近にはIEEE802.11nがサポートするデータ処理速度より高い処理率をサポートするための新たなWLANシステムに対する必要性が台頭されている。然しながら、IEEE802.11n媒体接続制御(MediumAccess Control;MAC)/物理階層(Physical Layer;PHY)プロトコルは、1Gbps以上のスルーフットの提供時に効果的でない。なぜならば、IEEE802.11nMAC/PHYプロトコルは、単一STA、即ち、一つのネットワークインターフェースカード(Network Interface Card;NIC)を有するSTAの動作のためのものであり、既存のIEEE802.11nMAC/PHYプロトコルをそのまま維持しつつフレームの処理量を増加させる場合、これによって付加的に発生するオーバーヘッド(Overhead)も増加するためである。結局、既存のIEEE802.11nMAC/PHYプロトコル、即ち、単一STAアーキテクチャをそのまま維持しつつ無線通信ネットワークのスルーフットを向上させることは限界がある。
【0006】
従って、無線通信ネットワークで1Gbps以上のデータ処理速度を達成するためには既存の単一STAアーキテクチャであるIEEE802.11nMAC/PHYプロトコルとは異なる新たなシステムが要求される。VHT(VeryHigh Throughput)無線LANシステムは、IEEE802.11n無線LANシステムの次バージョンであり、MACサービス接続ポイント(Service Access Point;SAP)で1Gbps以上のデータ処理速度をサポートするために、最近に新たに提案されているIEEE802.11無線LANシステムのうち一つである。
【0007】
VHT無線LANシステムは、無線チャネルを効率的に用いるために、複数のVHT STAが同時にチャネルにアクセスして使用することを許容する。このために、多重アンテナを用いたMU−MIMO(multi user multiple input multiple output)方式の送信をサポートする。VHT APは、複数のVHT STAに空間多重化(spatial multiplexing)されたデータを送信するSDMA(spatial division multiple access)送信が可能である。
【0008】
然しながら、MU−MIMOをサポートする無線LANシステムで、複数のSTAに同時にフレームを送信する場合、各々のSTAに対して送信すべきデータの量が異なって各STA間の同期化が維持されない場合があり、これは無線リソース利用の効率を落とし、STAの複雑度を高め、具現費用を増加させる問題を招くことができる。このような問題は、複数のSTAの各々に対して多重フレームを送信する場合にさらに著しく発生することができ、このような問題点を解決するためのフレーム送信方法に対する考慮が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、MU−MIMOをサポートする無線LANシステムで多重フレーム送信方法を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする他の課題は、MU−MIMOをサポートする無線LANシステムで多重フレーム送信方法をサポートする無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様において、MU−MIMO(Multi User Multiple Input Multiple Output)をサポートする無線LANシステムにおける多重フレーム送信方法は、第1のステーション(Station;STA)に第1のフレームと第2のフレームを連続して送信し、及び第2のSTAに第3のフレームと第4のフレームを連続して送信することを含み、前記第1のフレームの送信開始時点と前記第3のフレームの送信開始時点は一致し、前記第2のフレームの送信開始時点と前記第4のフレームの送信開始時点は一致する。
【0012】
前記第1のフレームの長さと前記第3のフレームの長さの差ほど前記第1のフレームと前記第3のフレームのうち短いフレームにナルデータをパディングし、前記第1のフレームの長さと前記第3のフレームの長さを同じにする。
【0013】
前記第1のフレーム及び第3のフレームは、A−MPDUフォーマットである。
【0014】
前記第1のフレームを構成する各A−MPDUサブフレームは、後続するA−MPDUがナルデータか否かを指示するナルビットを含む。
【0015】
前記ナルビットが、前記ナルビットを含むA−MPDUサブフレームに後続するA−MPDUサブフレームがナルデータであることを指示する場合、前記第1のステーションは、前記ナルビットを含むA−MPDUサブフレームに後続するA−MPDUサブフレームを廃棄する。
【0016】
本発明の他の態様において、MU−MIMO(Multi User Multiple Input Multiple Output)をサポートする無線LANシステムで、AP(Access Point)により実行される、多重フレーム送信方法は、第1のステーション(Station;STA)に第1のフレームと第2のフレームを連続して送信し、及び第2のSTAに第3のフレームと第4のフレームを連続して送信することを含み、前記第1のフレームの送信開始時点と前記第3のフレームの送信開始時点は一致し、前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間隔及び前記第3のフレームと前記第4のフレームとの間隔は、OFDMシンボル区間の倍数に設定される。
【0017】
前記OFDMシンボル区間は、4μsである。
【0018】
前記第1のSTA及び前記第2のSTAは、前記APから、前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間隔及び前記第3のフレームと前記第4のフレームとの間隔がOFDMシンボル区間の倍数に設定されるIFS設定情報を受信する。
【0019】
前記IFS設定情報は、ビーコンフレームを介して前記第1のSTA及び前記第2のSTAに送信される。
【0020】
本発明の他の態様において、多重フレームを送信するAPは、多重フレームを送信する送受信機及び前記送受信機と機能的に連結されているプロセッサを含み、前記プロセッサは、第1のステーション(Station;STA)に第1のフレームと第2のフレームを連続して送信し、及び第2のSTAに第3のフレームと第4のフレームを連続して送信するように設定され、前記第1のフレームの送信開始時点と前記第3のフレームの送信開始時点を一致させ、前記第2のフレームの送信開始時点と前記第4のフレームの送信開始時点を一致させるように設定される。
(項目1)
MU−MIMO(Multi User Multiple Input Multiple Output)をサポートする無線LANシステムにおける多重フレーム送信方法において、
第1のステーション(Station;STA)に第1のフレームと第2のフレームを連続して送信し、及び
第2のSTAに第3のフレームと第4のフレームを連続して送信し、
前記第1のフレームの送信開始時点と前記第3のフレームの送信開始時点は一致し、
前記第2のフレームの送信開始時点と前記第4のフレームの送信開始時点は一致する、多重フレーム送信方法。
(項目2)
前記第1のフレームの長さと前記第3のフレームの長さの差ほど前記第1のフレームと前記第3のフレームのうち短いフレームにナルデータをパディングし、前記第1のフレームの長さと前記第3のフレームの長さを同じにする、項目1に記載の多重フレーム送信方法。
(項目3)
前記第1のフレーム及び第3のフレームは、A−MPDUフォーマットである、項目2に記載の多重フレーム送信方法。
(項目4)
前記第1のフレームを構成する各A−MPDUサブフレームは、後続するA−MPDUがナルデータか否かを指示するナルビットを含む、項目3に記載の多重フレーム送信方法。
(項目5)
前記ナルビットが、前記ナルビットを含むA−MPDUサブフレームに後続するA−MPDUサブフレームがナルデータであることを指示する場合、前記第1のステーションは、前記ナルビットを含むA−MPDUサブフレームに後続するA−MPDUサブフレームを廃棄する、項目4に記載の多重フレーム送信方法。
(項目6)
MU−MIMO(Multi User Multiple Input Multiple Output)をサポートする無線LANシステムで、AP(Access Point)により実行される多重フレーム送信方法において、
第1のステーション(Station;STA)に第1のフレームと第2のフレームを連続して送信し、及び
第2のSTAに第3のフレームと第4のフレームを連続して送信し、
前記第1のフレームの送信開始時点と前記第3のフレームの送信開始時点は一致し、
前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間隔及び前記第3のフレームと前記第4のフレームとの間隔は、OFDMシンボル区間の倍数に設定される、多重フレーム送信方法。
(項目7)
前記OFDMシンボル区間は、4μSである、項目6に記載の多重フレーム送信方法。
(項目8)
前記第1のSTA及び前記第2のSTAは、前記APから、前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間隔及び前記第3のフレームと前記第4のフレームとの間隔がOFDMシンボル区間の倍数に設定されるIFS設定情報を受信する、項目6に記載の多重フレーム送信方法。
(項目9)
前記IFS設定情報は、ビーコンフレームを介して前記第1のSTA及び前記第2のSTAに送信される、項目8に記載の多重フレーム送信方法。
(項目10)
多重フレームを送信するAPにおいて、
多重フレームを送信する送受信機;及び、
前記送受信機と機能的に連結されているプロセッサ;を含み、
前記プロセッサは、第1のステーション(Station;STA)に第1のフレームと第2のフレームを連続して送信し、及び
第2のSTAに第3のフレームと第4のフレームを連続して送信し、
前記第1のフレームの送信開始時点と前記第3のフレームの送信開始時点を一致させ、
前記第2のフレームの送信開始時点と前記第4のフレームの送信開始時点を一致させるように設定されたAP。
【発明の効果】
【0021】
多重フレームの送信時に、オーバーヘッドを減らして無線リソース活用の効率を上げ、無線装置の複雑度を低めて具現費用を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】MU−MIMO方式によるフレーム送信の一例を示す。
図2】多重フレーム送信の一例を示す。
図3】SDMA送信で各STAに送信されるフレーム間の同期化が維持されない問題点を示す。
図4】本発明の一実施例による多重フレーム送信を示す。
図5】本発明が提案する同期化された(synchronized)多重フレーム送信方式の一例を示す。
図6】本発明の実施例に係るナルデータパディングに使われるA−MPDUサブフレームフォーマットの一例である。
図7】本発明の実施例が具現される無線装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施例に対して詳細に説明する。
【0024】
本発明の実施例が具現されるWLAN(wireless local area network)システムは、少なくとも一つのBSS(basicservice set)を含む。BSSは、互いに通信するために成功的に同期化されたステーション(station;STA)の集合である。BSSは、独立(Independent)BSS(IBSS)とインフラストラクチャ(Infrastructure)BSSに分類することができる。
【0025】
BSSは、少なくとも一つのSTAとAP(access point)を含む。APは、BSS内のSTAに無線媒体(wireless medium)を介して連結を提供する機能媒体である。APは、集中制御器(centralized controller)、BS(basestation)、スケジューラなどのような他の名称と呼ばれることもある。
【0026】
STAは、IEEE802.11標準を充たすMAC(medium access control)及びPHY(wireless−medium physical layer)インターフェースを含む任意の機能媒体である。STAは、APまたはnon−AP STAであるが、以下、別途に表示しない限りnon−AP STAを意味する。STAは、UE(user equipment)、MS(mobile station)、MT(mobile terminal)、携帯用機器、インターフェースカードなどのような他の名称と呼ばれることもある。
【0027】
STAは、VHT−STA、HT−STA、及びL(Legacy)−STAに区分されることができる。HT−STAは、IEEE802.11nをサポートするSTAを意味し、L−STAは、IEEE802.11nの下位バージョン、例えば、IEEE802.11a/b/gをサポートするSTAを意味する。L−STAは、non−HTSTAと呼ばれることもある。
【0028】
以下、APからSTAに対する送信をダウンリンク送信(downlink transmission)といい、STAからAPへの送信をアップリンク送信(uplinktransmission)といい、複数のSTAに対して空間多重化(spatial multiplexing)されたSDMAデータを送信することをSDMA送信という。以下、説明の便宜のために、ダウンリンク送信の場合を例示して説明するが、本発明が提案する多重フレーム送信方法は、アップリンク送信においても同じ方式に適用されることができる。
【0029】
図1は、MU−MIMO方式によるフレーム送信の一例を示す。
【0030】
図1の例でAP100は、STA1、STA2、及びSTA3に対して空間多重化されたSDMAデータ104をMU−MIMO(multi user multiple input multiple output)送信する。
【0031】
STA1、STA2、及びSTA3の各々に対して送信されるデータフレームは、複数のPPDU(physical layer convergence procedure(PLCP)Protocol Data Unit)である。以下、APが複数のPPDUをSIFS(short interframe space)またはRIFS(reduced interframe spacing)間隔に連続的に送信することを多重フレーム送信(Multiple frame transmission)という。
【0032】
AP100は、SDMA送信前にSDMA送信の対象となるSTAとのチャネル推定(channel estimation)のためにTRQ(Training request)フレーム102を送信する。TRQフレーム102には、SDMA送信の対象となるSTAを指示する情報と送信期間(transmission duration)を指示する情報が含まれることができる。TRQフレーム102を受信したSTAは、TRQフレーム102に含まれたSDMA送信の対象となるSTAを指示する情報により自体がSDMA送信のターゲットSTAか否かを判断し、SDMA送信のターゲットSTAでない場合、送信期間(transmission duration)を指示する情報に基づいてNAV(Network AllocationVector)を設定し、送信期間(transmissionduration)中チャネルアクセス(channel access)を延期(defer)することができる。
【0033】
もし、SDMA送信のターゲットSTAである場合、該当STAとAPとのチャネル推定に使われるサウンディング(Sounding)PPDUをAPに送信する。図1の例で、STA1、STA2、及びSTA3は、送信ターゲットSTAであり、各々、サウンディングPPDU112、サウンディングPPDU122、サウンディングPPDU132をAP100に送信する。
【0034】
サウンディングPPDU112、サウンディングPPDU122、及びサウンディングPPDU132を受信したAP100は、受信したサウンディングPPDUを用いてチャネル推定を実行する。以後、APは、チャネル推定結果に基づいてSTA1、STA2、及びSTA3にSDMAデータ104をSDMA送信する。
【0035】
STA1、STA2、及びSTA3は、SDMAデータ104を受信し、確認応答としてブロックACK114、ブロックACK124、及びブロックACK134をAPに送信する。
【0036】
この時、AP100がSTA1、STA2、及びSTA3に送信するデータの量は、互いに異なる。言い換えれば、互いに異なる長さを有するデータフレームがSTA1、STA2、及びSTA3の各々に同時に送信されることができる。この時、無線リソースを効率的に活用するために、SDMA送信区間(transmission duration)の範囲内で複数のデータフレームを連続的に送信する多重フレーム送信が行われることができる。
【0037】
図2は、多重フレーム送信の一例を示す。
【0038】
図1のSDMAデータ104は、図1のSTA1に送信されるSDMAデータ210と、STA2に送信されるSDMAデータ220、SDMAデータ221、及びSDMAデータ222と、STA3に送信されるSDMAデータ230及びSDMAデータ231と、で構成されることができる。
【0039】
図2の例でSTA2へ送信されるSDMAデータフレーム220は、SDMA送信期間に比べて短い長さを有する。これによって、SDMA送信期間中、追加にSDMAデータ221、SDMAデータ222を連続的にさらに送信することができる。
【0040】
図2のように、SDMA送信期間中、STA1にSDMAデータ210が送信され、STA2にSDMAデータ220、SDMAデータ221、及びSDMAデータ222が多重フレーム送信される場合、各STAに同時に送信されるSDMAデータ間の同期化維持可否が問題になることができる。
【0041】
図3は、SDMA送信で各STAに送信されるフレーム間の同期化が維持されない問題点を示す。
【0042】
図3は、図2の200部分を拡大したものである。データフレームは、OFDM(orthogonal frequency division multiplexing)シンボル(symbol)(図3のIFFT/FFT期間)とシンボル間干渉を避けるための保護間隔(Guard Interval;GI)で構成される。IEEE802.11n標準によると、IFFT/FFT期間(period)は3.2μsであり、GIは0.8μsである。以下、IFFT/FFT期間とGIとを合わせてOFDMシンボル区間(symbol duration)という。即ち、IEEE802.11n標準でOFDMシンボル区間は4.0μsである。
【0043】
図3でSTA1に送信されるSDMAデータ210とSTA2に送信されるSDMAデータ220は、同時に送信が開始される。SDMAデータ220の送信が終わる前まで同じ長さを有するOFDMシンボル区間が繰り返されつつ、STA1とSTA2の同期化は維持される。図3には示していないが、STA3に送信されるSDMAデータ230も同様に同期化が維持される。
【0044】
然しながら、SDMAデータ220の送信が終わった後、連続的にSDMAデータ221の送信が開始されると、SDMAデータ210とSDMAデータ221は同期化が維持されない。これはSDMAデータ220に連続して送信されるSDMAデータ221は、SDMAデータ220送信後、RIFS300以後に送信が行われるためである。IEEE802.11n標準によると、RIFS300は2μsである。以後、SDMAデータ210とSDMAデータ221は、互いに同期化が維持されず、これは受信STA側で信号の干渉レベル(interference level)が高まり、具現上の複雑度(complexity)が高まる問題点を招く。従って、SDMA送信をサポートする無線LANシステムにおける多重フレーム送信で、各STAに送信されるデータフレーム間の同期化を維持するための方法が必要である。
【0045】
図4は、本発明が提案するSlotted RIFSの一例を示す。
【0046】
前述した多重フレーム送信で発生する各STAに送信されるフレーム間の同期化が維持されない問題点は、多重フレーム送信でIFS(Inter−Frame Space)としてRIFSを適用することによって発生する。IEEE802.11n標準によると、RIFSは2μsであり、これはOFDMシンボル区間の倍数ではない。
【0047】
本発明は、このような問題点を解決するために、IFSをOFDMシンボル期間の倍数に設定することを提案する。この場合、多重フレーム送信においてフレーム間の間隔は、IEEE802.11n標準によるRIFS、即ち、2μsでないOFDMシンボル期間(4μs)の倍数である0μs、4μs、8μs、…などになることができる。以下、本発明が提案するOFDMシンボル期間(4μs)の倍数に設定される新たなIFSをSlotted RIFSという。Slotted RIFSという名称は任意である。
【0048】
図4は、本発明の一実施例による多重フレーム送信を示し、Slotted RIFS400は4μsに設定された。図3の例と違って、SDMAデータ220とSDMAデータ221のフレーム間の間隔に4μsのSlotted RIFS400が適用された結果、SDMAデータ210とSDMAデータ221は相変らず同期化を維持することができるようになる。
【0049】
本発明が提案するSlotted RIFSは、MU−MIMOで多重フレーム送信のために使われることができ、SU−MIMOにおける多重フレーム送信においてはSlotted RIFS外にもRIFSが使われることができる。
【0050】
APは、Slotted RIFSの使用可能可否をSTAに知らせることができる。一例に、SlottedRIFSの使用可能可否を知らせるSlotted RIFSビット(bit)を含むVHT運用情報要素(VHT operationinformation element)をSTAに送信することができる。VHT運用情報要素は、IEEE802.11標準のプローブ応答フレーム(probe response frame)またはビーコンフレーム(beacon frame)などに含まれてSTAに送信されることができる。プローブ応答フレームまたはビーコンフレームを受信したSTAは、VHT運用情報要素のSlotted RIFSビットによりSlotted RIFSを使用することができるか否かを知ることができる。SlottedRIFSビットが0に設定された場合、Slotted RIFSは使われることができず、この時、多重フレーム送信におけるIFSはSIFSに設定されることができる。IEEE802.11a/n標準によると、SIFSは、16μsであり、OFDMシンボル期間(4μs)の倍数である。Slotted RIFSビットが1に設定された場合、多重フレーム送信におけるIFSはSlotted RIFSに設定されることができる。従って、多重フレーム送信は、SlottedRIFS間隔に発生するようになる。
【0051】
一方、IEEE802.11n標準は、オーバーヘッドを減らすために、選択的に短い(short)GIを使用することができるようにしている。短いGIは、0.4μsであり、PLCPヘッダ(Header)のシグナル(signal;SIG)フィールドに短いGIの使用可否を指示するフィールドの設定によってデータフィールドに使われることができる。短いGIは、データフィールドに使われるため、短いGIが使われる場合、PLCPヘッダとデータフィールドに使われるOFDMシンボル区間が変わることができる。言い換えれば、PLCPヘッダに使われるOFDMシンボル区間は4.0μsであり、データフィールドに使われるOFDMシンボル区間は3.6μsである。
【0052】
短いGIが使われる場合、多重フレーム送信において、同期化を維持するためには、全てのSTAに対して送信されるフレームに短いGIが使われなければならない。図1の例でSTA1に対して送信されるフレームに短いGIが使われると、STA2、STA3に対して送信されるフレームにも短いGIが使われなければならない。言い換えれば、SDMA送信において、全ての空間ストリームには同じGIが使われなければならない。併せて、短いGIは、データフィールドにのみ適用されるため、多重フレーム送信において各々のフレームはその送信開始時点を同じに設定すべきである。従って、短いGIが使われる場合、本発明が提案するSlotted RIFSをIFSとして使用することのみでは、多重フレーム送信で同期化が維持されない問題を解決することができない。
【0053】
図5は、本発明が提案する同期化された(synchronized)多重フレーム送信方式の一例を示す。
【0054】
本発明が提案する同期化された多重フレーム送信方式は、多重フレーム送信で各フレームの送信開始時点を同期化して送信することである。言い換えれば、APは、STA1に多重フレーム送信するデータフレーム510とデータフレーム515を送信し、STA2に多重フレーム送信するデータフレーム520とデータフレーム525を送信する時には、データフレーム520の送信が終わった場合、RIFSまたはSIFS以後、次のフレーム525を送信しない。APは、データフレーム510の送信が終わることを待って、データフレーム510以後に送信されるデータフレーム515の送信が開始される時、データフレーム525の送信を開始する。即ち、データフレーム515の送信開始時点とデータフレーム525の送信開始時点をt_n+1に一致させる。多重フレーム送信において各フレームの送信開始時点は、図5のようにt_n、t_n+1に一致させて送信される。STA1、STA2、及びSTA3に対して送信されるフレームの送信開始時点は一致させ、いずれか一つのSTAに対する送信が終わっても、残りのSTAに対する送信が終わった後に、次のフレームの送信開始時点を再び一致させて送信する。これによって、短いGIを使用する場合にも各STAに送信されるフレーム間の同期化が維持されることができる。
【0055】
図5の例で、データフレーム515、データフレーム525、及びデータフレーム535の送信開始時点をt_n+1に一致させるために、ナルデータパディング(null data padding)が使われることができる。データフレーム510以前に送信が終わるデータフレーム520及びデータフレーム530に対し、データフレーム510と送信終了時点が同じにするために、パッド521をデータフレーム520に、パッド531をデータフレーム530にパディング(padding)することである。このようなナルデータパディングによりSTA1、STA2、及びSTA3に対して送信されるフレームの長さを同じにすることができる。
【0056】
ナルデータパディングの一例に、パッド521及びパッド531は、何らのデータを含まない0のビット列である。他の一例に、ナルデータパディングにA−MPDU(aggregate MAC protocol data unit)を用いることができる。
【0057】
図6は、本発明の実施例に係るナルデータパディングに使われるA−MPDUサブフレームフォーマットの一例である。
【0058】
本発明の実施例に係るナルデータパディングに使われるA−MPDUサブフレームは、MPDUデリミタ610、MPDU620、パッド630を含む。パッド630は、A−MPDUの最後のA−MPDUサブフレームを除き、各A−MPDUサブフレームの長さを4オクテットの倍数に設定するために付加される。MPDUデリミタ610は、4オクテットの長さを有することができる。表1は、MPDUデリミタフィールド610の構造(structure)の一例である。
【0059】
【表1】
表1のフィールド名称は任意であり、一部フィールドが追加されたり省略されることができる。ナルフィールド(Null field)612は、1ビットの大きさを有することができ、1に設定されると、以後に送信されるMPDUはナルデータであることを指示することができる。
【0060】
APは、特定STAに送信するMPDUを集成(aggregation)し、これ以上集成するMPDUがない、或いは受信STAのA−MPDU大きさの制限により、これ以上A−MPDU大きさを増やすことができない場合、送信開始時点を一致させるためにナルパディングが使われる。APは、A−MPDUサブフレームのナルビットを1に設定し、以後送信されるMPDUはナルデータを送信する。
【0061】
STAは、A−MPDUを受信し、A−MPDUの各A−MPDUサブフレームのナルビットを確認する。ナルビットが1に設定されていることを確認すると、以後送信されるA−MPDUサブフレームは、ナルデータであることを知るようになり、STAは、以後送信されるA−MPDUサブフレームをバッファに格納せずに、すぐに廃棄(discard)することができる。
【0062】
図7は、本発明の実施例が具現される無線装置の一例を示すブロック図である。無線装置700は、APまたはnon−APステーションである。
【0063】
無線装置700は、プロセッサ710、メモリ720、及び送受信機730を含む。送受信機730は、無線信号を送信/受信し、IEEE802.11の物理階層が具現される。送受信機730は、多重アンテナを用いてMIMO送信をサポートすることができる。プロセッサ710は、送受信機730と機能的に(operatively)連結され、IEEE802.11のMAC階層及び物理階層を具現する。プロセッサ710が前述した方法のうち、APの動作を処理する時、無線装置700はAPになる。プロセッサ710が前述した方法のうち、STAの動作を処理する時、無線装置700はSTAになる。
【0064】
プロセッサ710に具現された無線装置のMAC階層は、前述した多重フレームを生成し、前述したA−MPDUサブフレームを集成してA−MPDUを生成する。A−MPDUは、PLCP階層、PMD階層を経て送受信部730を介して送信される。本発明によるマルチャネルでのフレーム送信方法をサポートするMAC階層及びPHY階層は、各々、モジュール化し、プロセッサ710及び送受信機730に具現されることができる。
【0065】
プロセッサ710及び/または送受信機730は、ASIC(application−specific integrated circuit)、他のチップセット、論理回路及び/またはデータ処理装置を含むことができる。メモリ720は、ROM(read−only memory)、RAM(random access memory)、フラッシュメモリ、メモリカード、格納媒体及び/または他の格納装置を含むことができる。実施例がソフトウェアで具現される時、前述した技法は、前述した機能を遂行するモジュール(過程、機能など)で具現されることができる。モジュールは、メモリ720に格納され、プロセッサ710により実行されることができる。メモリ720は、プロセッサ710の内部または外部にあり、よく知られた多様な手段でプロセッサ710と連結されることができる。
【0066】
前述した実施例は多様な態様の例示を含む。多様な態様を示すための全ての可能な組合せを記述することはできないが、該当技術分野の通常の知識を有する者は、他の組合せが可能であることを認識することができる。従って、本発明は、特許請求の範囲内に属する他の交替、修正及び変更を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7