特許第5829840号(P5829840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5829840
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】排ガス浄化フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20151119BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20151119BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   B01D39/20 DZAB
   B01J35/04 301E
   F01N3/02 301C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-135457(P2011-135457)
(22)【出願日】2011年6月17日
(65)【公開番号】特開2013-680(P2013-680A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/002709(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/048156(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/113252(WO,A1)
【文献】 特開2002−121084(JP,A)
【文献】 特開2010−221155(JP,A)
【文献】 特開2007−296514(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/097634(WO,A1)
【文献】 特開2009−257321(JP,A)
【文献】 特開平09−217627(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013509(WO,A1)
【文献】 特開2003−193820(JP,A)
【文献】 特開2004−148308(JP,A)
【文献】 特開2003−236322(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/035823(WO,A1)
【文献】 特開2004−299966(JP,A)
【文献】 特開2007−296512(JP,A)
【文献】 特表2013−530332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
B01J 35/04
F01N 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路となる一方の端部から他方の端部まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質セラミックからなる隔壁を有するハニカム構造体と、
所定の前記セルの一方の開口端部と残余の前記セルの他方の開口端部とに配設された目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造体が、コージェライト、又は炭化珪素を有する材料からなり、
前記隔壁の厚さが、0.05mm以上、0.18mm以下であり、
前記隔壁の水銀圧入法により測定された平均細孔径が10μm以上、18μm以下であり、且つ前記隔壁の前記水銀圧入法により測定された細孔径分布において、前記平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合が5%以上、40%以下であって、
自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するフィルタであり、欧州のNEDC規制モード運転において、排ガス中の粒子状物質の排出量が2×1012個/km以下のエンジン用として用いられ、且つ、
前記NEDC規制モード運転にて運転した際における、前記粒子状物質の総排出個数に対する、前記排ガス浄化フィルタにより捕集された個数の比率により算出される捕集効率が、70%以上、99%未満である排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
前記粒子状物質の総排出個数に対する、前記排ガス浄化フィルタにより捕集された個数の比率により算出される捕集効率が、70%以上、80%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
前記細孔径分布が、単一ピークの分布曲線である請求項1又は2に記載の排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
前記ハニカム構造体のセル密度が13セル/cm以上、70セル/cm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
前記目封止部の、前記セルの延びる方向における長さが1mm以上、7mm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化フィルタに関する。更に詳しくは、エンジンから排出される排ガスに含まれる粒子状物質の除去に好適に用いられる排ガス浄化フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境への影響や、資源節約の観点から、自動車の燃費低減が近年求められている。このため、ディーゼルエンジンや直噴ガソリンエンジン等の熱効率の良い内燃機関が、自動車用の動力源として使用される傾向にある。
【0003】
一方、これらの内燃機関では、燃焼時における煤の発生が問題となっている。大気環境の観点から、上記煤など粒子状物質を大気に放出しないための対策が必要とされている。
【0004】
上記した粒子状物質を大気に放出しないための対策として、排ガス浄化フィルタを用いて排ガス中の粒子状物質を除去することが提案されている。排ガス浄化フィルタとしては、例えば、排ガスの流路となる一方の端部から他方の端部まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、このハニカム構造体のセルの一方の端部と他方の端部とを交互に目封止する目封止部とを備えたウォールフロー型の排ガス浄化フィルタを挙げることができる。
【0005】
このような排ガス浄化フィルタでは、ハニカム構造体の一方の端部が開口したセルに排ガスを流入させると、排ガスが隔壁を通過する際に、その排ガス中の粒子状物質が隔壁に捕集される。その後、粒子状物質が除去された浄化ガスが、他方の端部が開口したセルから流出する。
【0006】
しかし、このような排ガス浄化フィルタを内燃機関等のエンジンの排気系に設置した場合には、その排気系の圧損増加を招く。その結果、エンジン出力の低下が、エンジンとしての許容範囲を超えてしまうことがある。
【0007】
また、排ガス中の粒子状物質(以下、「PM」、「パティキュレート」ともいう)の排出濃度が非常に高い従来のディーゼルエンジン用のフィルタにおいては、排ガス浄化フィルタを構成するハニカム構造体の隔壁の表面に、排ガス中の粒子状物質が層状に積層し、その粒子状物質の層(以下、「PM層」ともいう)自体が、捕集フィルタの役割を果たす。このため、粒子状物質の捕集効率を高く保つことができた。一方で、ディーゼルエンジンの燃焼改善により、従来のディーゼルエンジンよりも排ガス中の粒子状物質の濃度が低下した場合には、上記PM層の形成が期待されず、排ガス浄化フィルタの捕集効率が十分に維持できなくなってしまう。即ち、従来のディーゼルエンジン用の排ガス浄化フィルタは、排ガス中の粒子状物質の濃度が高いことを想定して作製されたものであるため、ディーゼルエンジン自体の燃焼改善により、排ガス中の粒子状物質の濃度が低下した場合には、従来の排ガス浄化フィルタでは、仮に、少ない量の粒子状物質であったとしても、その粒子状物質を十分に除去することが困難になってしまう。
【0008】
また、直接噴射式ガソリンエンジンのように、ディーゼルエンジンと比較して粒子状物質の量が少ないものであっても、粒子状物質を捕集するための排ガス浄化フィルタによる排ガスの浄化が必要とされつつある。このような排ガス浄化フィルタにおいても、上述した燃焼改善されたディーゼルエンジンと同様に、PM層の形成が期待されず、排ガス浄化フィルタの捕集効率が十分に維持できなくなってしまう。また、天然ガス圧縮着火方式のエンジン等においても、上記直噴式ガソリンエンジンと同様の問題が挙げられる。
【0009】
このように、直接噴射式ガソリンエンジンや天然ガス圧縮着火方式のエンジン、また、先進技術のディーゼルエンジン(例えば、燃焼改善されたディーゼルエンジン)は、従来の一般的なディーゼルエンジンと比較して、排ガス中の粒子状物質の量が少なく、排ガス浄化フィルタにより捕集しなければならない粒子状物質の絶対量が少ないものの、従来の排ガス浄化フィルタでは、排ガスの浄化を十分に行うことができない。
【0010】
また、粒子状物質の捕集効率を高めるためには、ハニカム構造体の隔壁の細孔径を小さくすることが考えられる。しかし、単に隔壁の細孔径を小さくした場合には、排ガス浄化フィルタの圧損が増大してしまう。
【0011】
粒子状物質の捕集効率を高めることと、粒子状物質が隔壁上に堆積した際の圧損を低く抑えることとのトレードオフの問題を解決する手段として、粒子状物質の排出濃度が非常に高い従来のディーゼルエンジン用の排ガス浄化フィルタにおいて、隔壁の細孔径分布をシャープにするという技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3272746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される排ガス中の粒子状物質の量が多いため、排ガス規制をクリアするために必要なフィルタの要求捕集効率が高く設定されている。例えば、排ガス中の粒子状物質の個数による排ガス規制の場合には、フィルタの要求捕集効率は99%以上である。
【0014】
これに対し、直接噴射式ガソリンエンジンや天然ガス圧縮着火方式のエンジン(即ち、粒子状物質の量が低減されたエンジン)では、エンジンから排出される排ガス中の粒子状物質の量が、従来のディーゼルエンジンと比較して少ない。このため、このようなエンジンに使用されるフィルタにおいては、その要求捕集効率が、上述したディーゼルエンジンの場合と比較して低く設定されている。例えば、粒子状物質の量が低減されたエンジンの場合には、フィルタの要求捕集効率が70%程度である。
【0015】
このように、粒子状物質の量が低減されたエンジンに使用される排ガス浄化フィルタと、従来のディーゼルエンジン用に開発された排ガス浄化フィルタ(例えば、従来のディーゼルパティキュレートフィルタ)とは、フィルタの要求捕集効率が異なるため、良好な浄化を行うためのフィルタの構成が異なることとなる。例えば、圧損の低減と捕集効率の向上を両立させる観点からの最適な隔壁の細孔径分布は、従来のディーゼルエンジン用のフィルタと粒子状物質の量が低減されたエンジン用のフィルタとで異なることとなる。従って、従来のディーゼルエンジン用として最適であった特許文献1に記載された技術が、粒子状物質の量が低減されたエンジンにそのまま適用することができないという問題があった。
【0016】
また、直接噴射式ガソリンエンジンや天然ガス圧縮着火方式のエンジン、及び燃料噴射圧力の高圧化、燃料噴射ノズル孔の小径化等の対策を行った先進ディーゼルエンジン(即ち、粒子状物質の量が少ないディーゼルエンジン)では、エンジンから排出される高温の排ガスと、その排ガスに含まれる窒素酸化物(NO)とにより、煤等の粒子状物質が酸化され、排ガス中の粒子状物質が除去される。このため、このようなエンジンに使用される排ガス浄化フィルタにおいては、隔壁上に粒子状物質が堆積していない状態における圧損の低減が重要となる。この点も、従来のディーゼルエンジン用のフィルタとは異なる点であり、粒子状物質の量がより少ないエンジン用として好適に用いられ、圧損が低く且つ適切な浄化性能を有する排ガス浄化フィルタの開発が要望されている。
【0017】
本発明は、このような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、エンジン、特に、排ガス中に含まれる粒子状物質の量が低減されたエンジンに好適に用いることができ、圧損の上昇を抑制しつつ、排ガス中の粒子状物質を適切に除去することが可能な排ガス浄化フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来のディーゼルエンジンよりも排ガス中の粒子状物質が少なく、要求捕集効率が低く設定されたエンジン用の排ガス浄化フィルタにおいては、特許文献1に記載されたような隔壁の細孔径分布をシャープにするのではなく、逆に、細孔径分布をブロードにし、更に、隔壁の厚さ及び平均細孔径を所定の範囲とすることにより、上記要求捕集効率を満足しつつ、圧損の上昇を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す、排ガス浄化フィルタが提供される。
【0019】
[1] 排ガスの流路となる一方の端部から他方の端部まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質セラミックからなる隔壁を有するハニカム構造体と、所定の前記セルの一方の開口端部と残余の前記セルの他方の開口端部とに配設された目封止部と、を備え、前記ハニカム構造体が、コージェライト、又は炭化珪素を有する材料からなり、前記隔壁の厚さが、0.05mm以上、0.18mm以下であり、前記隔壁の水銀圧入法により測定された平均細孔径が10μm以上、18μm以下であり、且つ前記隔壁の前記水銀圧入法により測定された細孔径分布において、前記平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合が5%以上、40%以下であって、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するフィルタであり、欧州のNEDC規制モード運転において、排ガス中の粒子状物質の排出量が2×1012個/km以下のエンジン用として用いられ、且つ、前記NEDC規制モード運転にて運転した際における、前記粒子状物質の総排出個数に対する、前記排ガス浄化フィルタにより捕集された個数の比率により算出される捕集効率が、70%以上、99%未満である排ガス浄化フィルタ。
【0020】
[2] 前記粒子状物質の総排出個数に対する、前記排ガス浄化フィルタにより捕集された個数の比率により算出される捕集効率が、70%以上、80%以下である、前記[1]に記載の排ガス浄化フィルタ。
[3] 前記細孔径分布が、単一ピークの分布曲線である前記[1]又は[2]に記載の排ガス浄化フィルタ。
【0022】
[4] 前記ハニカム構造体のセル密度が13セル/cm以上、70セル/cm以下である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の排ガス浄化フィルタ。
【0023】
[5] 前記目封止部の、前記セルの延びる方向における長さが1mm以上、7mm以下である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の排ガス浄化フィルタ。
【発明の効果】
【0024】
本発明の排ガス浄化フィルタは、多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、所定のセルの一方の開口端部と残余のセルの他方の開口端部とに配設された目封止部と、を備え、隔壁の厚さが、0.05mm以上、0.18mm以下であり、隔壁の水銀圧入法により測定された平均細孔径が10μm以上、18μm以下であり、且つ隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、上記平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合が5%以上、40%以下である。このように、本発明の排ガス浄化フィルタにおいては、上記細孔径分布における平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合を特定(即ち、5%以上、40%以下と)することにより、隔壁の細孔径分布を従来のディーゼルエンジン用のフィルタにおける隔壁の細孔径分布に比してブロードにしている。また、本発明の排ガス浄化フィルタにおいては、従来のディーゼルエンジン用のフィルタと比較して、隔壁の厚さを薄く(即ち、0.05mm以上、0.18mm以下と)するとともに、水銀圧入法により測定された平均細孔径を特定の範囲(即ち、10μm以上、18μm以下)としている。このような細孔径分布の形状、隔壁厚さ、及び平均細孔径とすることで、夫々により奏される効果が相俟って、排ガス中に含まれる粒子状物質の量が低減されたエンジンにおいて、圧損の上昇を抑制しつつ、排ガス中の粒子状物質を良好に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の排ガス浄化フィルタの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】欧州のNEDC(New European Driving Cycle)規制モード運転の条件を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0027】
[1]排ガス浄化フィルタ:
本発明の排ガス浄化フィルタの一実施形態を、図を参照しながら説明する。ここで、図1は、本発明の排ガス浄化フィルタの一実施形態を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100は、排ガスの流路となる一方の端部15aから他方の端部15bまで延びる複数のセル11を区画形成する多孔質セラミックからなる隔壁12を有するハニカム構造体10と、所定のセル11aの一方の開口端部と残余のセル11bの他方の開口端部とに配設された目封止部13(13a,13b)と、を備えた排ガス浄化フィルタ100である。なお、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100は、直接噴射式ガソリンエンジンや天然ガス圧縮着火方式のエンジン、及び燃料噴射圧力の高圧化、或いは燃料噴射ノズル孔の小径化等の対策を行った先進ディーゼルエンジン等の、粒子状物質の量が少ないエンジンから排出される排ガス中の粒子状物質の除去に好適に用いられる排ガス浄化フィルタである。
【0028】
そして、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100は、ハニカム構造体10の隔壁12の厚さが、0.05mm以上、0.18mm以下であり、この隔壁12の水銀圧入法により測定された平均細孔径が10μm以上、18μm以下であり、且つ隔壁12の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、上記平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合が5%以上、40%以下となるように構成されたものである。
【0029】
このように、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100においては、水銀圧入法により測定された隔壁12の細孔径分布において、細孔の全容積に対する平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合を5%以上、40%以下とすることにより、隔壁12の細孔径分布を従来のディーゼルエンジン用のフィルタにおける隔壁の細孔径分布に比してブロードにしている。即ち、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100においては、「細孔径分布における平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合」により、水銀圧入法により測定された隔壁の細孔径分布の形状を規定している。以下、「細孔径分布における平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合」のことを「2倍の平均細孔径の割合」ということがある。
【0030】
また、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100においては、従来のディーゼルエンジン用のフィルタと比較して、隔壁12の厚さ(以下、「隔壁厚さ」ということがある)を薄く(即ち、0.05mm以上、0.18mm以下と)するとともに、水銀圧入法により測定された平均細孔径を特定の範囲(即ち、10μm以上、18μm以下)としている。
【0031】
このような細孔径分布の形状、隔壁厚さ、及び平均細孔径とすることで、夫々により奏される効果が相俟って、排ガス中に含まれる粒子状物質の量が低減されたエンジンにおいて、圧損の上昇を抑制しつつ、そのエンジンから排出される排ガス中の粒子状物質を良好に除去することができる。即ち、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100は、粒子状物質の量が少ないエンジンから排出される排ガスの処理(浄化)を行うためのものであり、このようなエンジンにおける排ガス規制に適合し、且つ、そのエンジンの排気系の圧損を極力抑制するように開発されたものである。
【0032】
このため、上記細孔径分布の形状、隔壁厚さ、及び平均細孔径は、それぞれが相互に連関し、各構成により奏される効果は、他の構成を満たしていることを前提として発現するものである。換言すれば、上記細孔径分布の形状、隔壁厚さ、及び平均細孔径のうち、一の構成がその数値範囲を満たしていない場合には、他の構成により奏される効果は十分に発現しなくなる。例えば、従来のディーゼルエンジン用に開発された排ガス浄化フィルタにおいて、上記細孔径分布の形状、隔壁厚さ、及び平均細孔径のうちの一の構成を満たす場合も想定されるが、従来のディーゼルエンジン用の排ガス浄化フィルタとは、対象とする排ガス規制の内容(例えば、排ガス中の粒子状物質の個数による排ガス規制)が全く異なり、これまで上記3つの構成を同時に満たすようなフィルタは開発されていなかった。特に、本実施形態の排ガス浄化フィルは、単に捕集効率を高くするためのものではなく、対象とする排ガス規制に応じた適切な捕集効率が実現されるものである。
【0033】
上記2倍の平均細孔径の割合を5%以上とすることにより、細孔径分布の形状がブロードな形状となる。即ち、上記2倍の平均細孔径の割合が5%未満であると、細孔径分布のピークの裾が狭くなり、細孔径分布の形状がシャープになる。従来のディーゼルエンジンのように、排ガス中の粒子状物質の量が多い場合には、排ガス規制をクリアするために必要なフィルタの要求捕集効率が高く設定されているため、隔壁の細孔径分布の形状がシャープなものが適当とされていた。しかしながら、粒子状物質の量が低減されたエンジンの場合には、フィルタの要求捕集効率がより低く設定されることとなり、要求捕集効率を向上させる有利な効果よりも、細孔径分布の形状をシャープにすることによる圧損増加という不利益な欠点が増大してしまう。
【0034】
一方、上記2倍の平均細孔径の割合を40%以下とすることにより、細孔径分布の形状が過剰にブロードになるのを抑制することができる。即ち、本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいては、隔壁の水銀圧入法により測定された平均細孔径が10μm以上、18μm以下であるため、2倍の平均細孔径の割合を40%超とした場合には、本実施形態において規定される平均細孔径程度の大きさの細孔が相対的に減少し、細孔径がより大きな細孔が増加してしまう。細孔径が大きな細孔は、隔壁の透過性(パ−ミアビリティー)を大きくして圧損を下げることができるが、捕集効率を大きく低下させてしまうこともある。このため、粒子状物質の量が低減されたエンジンの要求捕集効率を満足させるためには、2倍の平均細孔径の割合を40%以下とすることが必要である。このように、ある程度小細孔を有し、一方で大細孔により透過性を良くすることで、圧損の抑制と、十分な捕集効率(即ち、要求捕集効率を満足する捕集効率)を実現することができる。
【0035】
2倍の平均細孔径の割合の下限値は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましい。また、2倍の平均細孔径の割合の上限値は、30%以下であることが好ましく、25%以下であることが更に好ましい。このように構成することによって、適切な捕集効率と、圧損抑制とのバランスを良好に維持することができる。
【0036】
また、隔壁の細孔径分布が、単一ピークの分布曲線であることが好ましい。例えば、小細孔と大細孔とを混在させる方法としては、2山以上のピークの分布曲線とすることを挙げることもできるが、本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいては、隔壁の細孔径分布がガウス分布のような単一ピークの分布曲線であることが好ましい。このように構成することによって、隔壁の細孔により粒子状物質を良好に捕集しつつ、圧損を有効に低減することができる。
【0037】
なお、本発明における細孔径分布とは、水銀圧入法により測定された隔壁の細孔径を常用対数で示したときの細孔径分布のことであり、例えば、横軸を細孔径(常用対数)とし、縦軸をlog微分細孔容積とするグラフにより示すことができる。隔壁の平均細孔径及び細孔径分布は、水銀ポロシメータ(例えば、島津製作所社製 商品名:ポロシメータ 型式9810)で測定することができる。
【0038】
また、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、水銀圧入法により測定された隔壁の平均細孔径が10μm以上、18μm以下のものである。平均細孔径を上記範囲とし、且つ上記2倍の平均細孔径の割合及び隔壁厚さを所定の数値範囲とすることにより、排ガス中の粒子状物質を良好に捕集することができる。隔壁の平均細孔径が10μm未満では、2倍の平均細孔径の割合及び隔壁厚さを、上記数値範囲とした場合に、圧損が大きくなってしまう。また、隔壁の平均細孔径が18μm超では、2倍の平均細孔径の割合及び隔壁厚さを、上記数値範囲とした場合に、所望の捕集効率を実現することが困難になる。
【0039】
隔壁の平均細孔径の下限値は、11μm以上であることが好ましく、12μm以上であることが更に好ましい。また、隔壁の平均細孔径の上限値は、16μm以下であることが好ましく、14μm以下であることが更に好ましい。
【0040】
また、本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいては、隔壁の厚さが0.05mm以上、0.18mm以下である。この隔壁の厚さは、従来のディーゼルエンジン用のフィルタと比較して、より薄く、且つ極めて狭い数値範囲のものである。これは、本実施形態の排ガス浄化フィルタが、排ガス中の粒子状物質の量が少ないエンジン用のフィルタを想定しているからである。即ち、従来のディーゼルエンジン用のフィルタのような99%以上の捕集効率を必要としないため、隔壁の厚さにおいて、圧損の低減に重きを置いたためである。例えば、上記2倍の平均細孔径の割合及び平均細孔径を上記数値範囲とし、従来のディーゼルエンジン用のフィルタのように99%以上の捕集効率とするためには、隔壁の厚さを0.18mm超の厚さとしなければならない。本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいて、隔壁の厚さが0.05mm未満であると、フィルタの強度が低下してしまう。一方、隔壁の厚さが0.18mm超であると、圧損が大きくなり過ぎてしまう。
【0041】
隔壁の厚さの下限値は、0.075mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることが更に好ましい。また、隔壁の厚さの上限値は、0.15mm以下であることが好ましく、0.13mm以下であることが更に好ましい。
【0042】
本実施形態の排ガス浄化フィルタは、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するフィルタであって、欧州のNEDC(New European Driving Cycle)規制モード運転において、排ガス中の粒子状物質の排出量が、2×1012個/km以下のエンジン用のフィルタとして好適に用いることができる。欧州のNEDC規制モード運転とは、図2に示すような条件(時間(秒)及び速度(km/h))での運転のことをいう。ここで、図2は、欧州のNEDC規制モード運転の条件を示すグラフであり、横軸が時間(秒)を示し、縦軸が速度(走行速度)(km/h)を示す。
【0043】
図2に示すように、欧州のNEDC規制モード運転は、まず、ECE15サイクルを4回繰り返し、その後、EUDCサイクルを1回行うものである。ECE15サイクルは、都市部での走行状態を想定したもの(市街地モード)であり、最高速度が50km/hで、平均速度が18.7km/hである。一方、EUDCサイクルは、高速運転を想定したもの(高速モード)であり、最高速度が120km/hで、平均速度が62.6km/hである。この欧州のNEDC規制モード運転は、車両を最低6時間の室温で放置した後、アイドリングすることなく行われる。
【0044】
本実施形態の排ガス浄化フィルタは、上記欧州のNEDC規制モード運転における排ガス中の粒子状物質の排出量が2×1012個/km以下の、排ガス中の粒子状物質の量の少ないエンジンにおいて、排ガスの浄化、特に、エンジンから最終的に排出される粒子状物質の個数を所定個数以下に低減するために、好適に用いられる排ガス浄化フィルタである。このように、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、予め粒子状物質の個数が少ないエンジン用のフィルタとして好適に用いられるものであるため、従来のディーゼルエンジン用のフィルタよりも、フィルタの捕集効率自体は低くなっている。
【0045】
本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいては、ハニカム構造体のセル密度が13セル/cm以上、70セル/cm以下であることが好ましい。このように構成することによって、フィルタの強度を維持しつつ、圧損の上昇を抑制することができる。セル密度の下限値は、15.5セル/cm以上であることが好ましい。また、セル密度の上限値は、42セル/cm以下であることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいては、隔壁の気孔率が35%以上、50%以下であることが好ましい。このように構成することによって、フィルタの強度を維持しつつ、圧損の上昇を抑制することができる。例えば、上記2倍の平均細孔径の割合、平均細孔径及び隔壁厚さを上記数値範囲とした場合に、隔壁の気孔率が35%未満であると、圧損が増大することがある。また、隔壁の気孔率が50%超であると、フィルタの強度が低下してしまう。特に、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、隔壁の厚さが薄いため、隔壁の過剰な高気孔率化は強度低下を招来し易い。気孔率とは、水銀圧入法により測定された気孔率のことを意味する。
【0047】
図1に示すように、本実施形態の排ガス浄化フィルタ100に用いられるハニカム構造体10は、排ガスの流路となる一方の端部15aから他方の端部15bまで延びる複数のセル11を区画形成する多孔質セラミックからなる隔壁12を有するものである。
【0048】
ハニカム構造体は、上記2倍の平均細孔径の割合、平均細孔径及び隔壁厚さが、これまでに説明した数値範囲を満たすものであれば、その他の構成については、従来公知の排ガス浄化フィルタに用いられるハニカム構造体と同様の構成を採用することができる。
【0049】
ハニカム構造体の全体形状については特に制限はなく、例えば、図1に示されるような円柱状の他、楕円柱状、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0050】
また、ハニカム構造体に形成されたセルの形状(セルの貫通方向に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、例えば、図1に示されるような四角形セルの他、六角形セル、八角セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。但し、ハニカム構造体に形成されたセルの形状としては、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。
【0051】
また、ハニカム構造体においては、異なるセル形状を組み合わせることもできる。隣接するセルの一方のセルを八角形とし、他方のセルを四角形にすることで、一方のセル(即ち、八角形セル)を他方のセル(即ち、四角形セル)に比べ大きくすることができる。
【0052】
ハニカム構造体の材質は、強度、耐熱性、耐食性等の観点から、コージェライト、炭化珪素のうちのいずれかである。これらの材質の中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0053】
目封止部は、ハニカム構造体の所定のセルの一方の開口端部と残余のセルの他方の開口端部とに配置され、セルのいずれか一方の開口端部を封止するためのものである。この目封止部は、従来の排ガス浄化フィルタに用いられる目封止部と同様に構成されたものを用いることができる。目封止部は、ハニカム構造体の隔壁と同様のセラミック材料を用いて形成することができる。
【0054】
本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいては、一方の開口端部が封止され且つ他方の開口端部が開放されたセル(即ち、上記所定のセル)と、他方の開口端部が封止され且つ一方の開口端部が開放されたセル(即ち、上記残余のセル)とが交互に並び、目封止部が配置されたハニカム構造体の一方の端面において、目封止部とセルの開口端部とにより市松模様が形成されていることが好ましい。
【0055】
また、本実施形態の排ガス浄化フィルタにおいては、セルの開口端部を封止する目封止部の、セルの延びる方向における長さが1mm以上、7mm以下であることが好ましい。セルの延びる方向における長さが1mm未満であると、目封止部がハニカム構造体から脱離し易くなることがある。目封止部の、セルの延びる方向における長さが7mm超であると、セルの封止部分の長さが長くなり過ぎて、排ガスを浄化するための隔壁の有効面積(換言すれば、実質的な隔壁のセルの延びる方向の長さ)が減少し、フィルタの浄化性能が低下することがある。
【0056】
また、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、ハニカム構造体の隔壁の表面や隔壁に形成された細孔の内面に、触媒が担持されたものであってもよい。このように触媒を担持することにより、隔壁表面に堆積した粒子状物質を触媒作用により燃焼除去され易くすることができる。
【0057】
触媒としては、三元触媒、NO浄化触媒、酸化触媒等を挙げることができる。三元触媒としては、Pt、Pd、Rh等の貴金属をアルミナ、セリアを主成分とする担体に担持したもの等を挙げることができる。NO浄化触媒としては、Ptと、「NO吸蔵成分としてのBa又はK」とを、アルミナを主成分とする担体に担持したもの、「Fe又はCuにより金属置換されたゼオライト」を主成分とするもの、等を挙げることができる。
【0058】
触媒の担持量については特に制限はないが、ハニカム構造体の単位体積当りの担持量(g/L)が、30g/L以下であることが好ましい。本実施形態の排ガス浄化フィルタは、粒子状物質の量が少ない排ガスを対象としており、過剰に触媒を担持すると、圧損が大きくなることがある。なお、これまでに説明した隔壁の平均細孔径等の各値については、ハニカム構造体の隔壁に触媒が担持された場合には、触媒が担持される前のハニカム構造体の隔壁において測定された値とする。
【0059】
[2]排ガス浄化フィルタの製造方法:
以下、本発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法について説明する。本発明のハニカム構造体を製造する方法としては、まず、排ガスの流路となる一方の端部から他方の端部まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質セラミックからなる隔壁を有するハニカム構造体を作製する。この際、得られるハニカム構造体の隔壁の厚さを、0.05mm以上、0.18mm以下とし、隔壁の水銀圧入法により測定された平均細孔径を10μm以上、18μm以下とし、且つ隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合を5%以上、40%以下とする。
【0060】
隔壁の厚さについては、ハニカム構造体を作製するための成形用坏土を押出成形するための成形用口金のスリットの寸法を調整することによって実現することができる。
【0061】
また、得られるハニカム構造体の隔壁の平均細孔径、及び細孔径分布については、成形用坏土の調製に用いられるセラミック原料の粒子径及び配合処方を調整することにより、実現することができる。以下、成形用坏土の調製方法について、コージェライト化原料を用いて成形用坏土を調製する場合と、炭化珪素原料を用いて成形用坏土を調製する場合とについて、それぞれ具体的に説明する。
【0062】
コージェライト化原料を用いて成形用坏土を調製する場合には、コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び所望により造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を添加して混練することによって、可塑性の成形用坏土を得る。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料を意味する。コージェライト化原料は、シリカ(SiO)が42〜56質量%、アルミナ(Al)が30〜45質量%、マグネシア(MgO)が12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように「所定の原料」が混合されたセラミック原料である。「所定の原料」としては、例えば、タルク、カオリン、アルミナ源原料、シリカ等を挙げることができる。なお、アルミナ源原料とは、アルミニウム酸化物、水酸化アルミニウム、ベーマイト等、焼成により酸化物化し、コージェライトの一部を形成する原料のことをいう。コージェライト化原料等の成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0063】
得られるハニカム構造体の隔壁の水銀圧入法により測定された平均細孔径、及び細孔径分布は、原料として使用するタルクやシリカの粒子径と配合比率によってコントロールすることができる。より具体的には、隔壁の平均細孔径を10μm以上、18μm以下とし、且つ平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合を5%以上、40%以下とするためには、平均粒子径が35μm以上のシリカを原料として用いることと、平均粒子径が30μm以上のタルクを用いることと、の少なくとも一方の方法により実現することができる。勿論、シリカ及びタルク以外のその他の原料粒子の粒子径等も、隔壁の平均細孔径や細孔径分布に少なからず影響を与えるものであるが、上述した平均粒子径が35μm以上のシリカ及び平均粒子径が30μm以上のタルクのうちの少なくとも一方を、コージェライト化原料として適切な量を使用し、得られるハニカム構造体の隔壁の平均細孔径が10μm以上、18μm以下となるように成形用坏土を調製することにより、得られるハニカム構造体の隔壁の細孔径分布がブロードとなり、その結果、平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合が5%以上、40%以下を満足するようになる。
【0064】
炭化珪素原料を用いて成形用坏土を調製する場合には、炭化珪素原料に、水等の分散媒、及び所望により造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を添加して混練することによって、可塑性の成形用坏土を得る。
【0065】
得られるハニカム構造体の隔壁の水銀圧入法により測定された平均細孔径、及び細孔径分布は、炭化珪素原料の粒子径分布によってコントロールすることができる。より具体的には、隔壁の平均細孔径を10μm以上、18μm以下とし、且つ平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合を5%以上、40%以下とするためには、炭化珪素原料である炭化珪素粉末の粒子径分布において、粒子径の対数に対する粒子容積の分布をとった際、対数標準偏差の値が0.3μm以上である原料粒子径分布の原料(炭化珪素粉末)を用いることにより実現できる。このような原料粒子径分布の原料を使用し、得られるハニカム構造体の隔壁の平均細孔径が10μm以上、18μm以下となるように成形用坏土を調製することにより、得られるハニカム構造体の隔壁の細孔径分布がブロードとなり、その結果、平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合が5%以上、40%以下を満足するようになる。
【0066】
次に、得られた成形用坏土を所定の形状に成形してハニカム成形体を作製する。成形用坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0067】
次に、ハニカム成形体のセルの開口端部を、目封止部を形成するためのスラリーによって目封止して目封止部を形成する。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を焼成(本焼成)する。ハニカム成形体を焼成する前に、仮焼きを行ってもよい。
【0068】
上記した仮焼きは、脱脂のために行われるものである。例えば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0069】
「焼成(本焼成)」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、焼成温度は一般的には、約1400〜1500℃前後程度であるが、これに限定されるものではない。仮焼きと本焼成とは、別工程としてもよいが、仮焼き後に、引き続き温度を上げて、連続的に本焼成を行ってもよい。
【0070】
以上のようにして、本発明の排ガス浄化フィルタを製造することができる。上記製造方法においては、セルの開口端部を目封止する目封止部を形成した後に、仮焼き、及び本焼成を行って排ガス浄化フィルタを製造する例について説明しているが、目封止部は、ハニカム成形体の焼成を行った後に、別途形成してもよい。目封止部の形成方法については、所定のセルの一方の開口部にマスクを配設し、残余のセルの開口部に目封止スラリーを充填する方法を挙げることができる。なお、このような目封止部の形成方法は、例えば、公知のハニカム構造体における目封止部の作製方法に準じて行うことができる。
【0071】
目封止部の原料としては、上述したハニカム構造体の原料と同様の原料を用いると、ハニカム構造体と目封止部の焼成時の膨張率を同じにすることができ、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0072】
また、上記製造方法においては、ハニカム構造体が、一体的に押出成形(即ち、一体成形)される場合の例について説明しているが、例えば、複数本のハニカムセグメントを接合したハニカムセグメント接合体からなるハニカム構造体を作製してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
(1)排ガス浄化フィルタの作製:
コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用し、コージェライト化原料100質量部に、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して成形用坏土を調製した。分散媒として水を使用し、有機バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0075】
実施例1においては、タルクの平均粒子径を20μmとし、シリカの平均粒子径を20μmとした。
【0076】
調製した成形用坏土を押出成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体をマイクロ波乾燥機を使用して乾燥し、更に熱風乾燥機を使用して完全に乾燥させた。その後、乾燥させたハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法の長さのハニカム乾燥体を得た。次いで、ハニカム乾燥体のセルの両端面を、隣接するセルが互い違いに目封止されるように目封止部を形成した後、1410〜1440℃で5時間焼成することによって、排ガス浄化フィルタを得た。
【0077】
得られた排ガス浄化フィルタの全体形状(換言すれば、ハニカム構造体の全体形状)は、円柱形状(端面の直径が118mm、セルの延びる方向における長さが127mm)であった。また、隔壁の気孔率が41%であり、隔壁厚さが0.05mmであり、セル密度が31セル/cmであった。目封止部のセルの延びる方向における長さは4mmであった。隔壁の気孔率は水銀圧入法により測定した値である。実施例1の排ガス浄化フィルタの隔壁の気孔率(%)、隔壁厚さ(mm)、及びセル密度(セル/cm)を表1に示す。
【0078】
また、隔壁の平均細孔径、及び細孔径分布を、水銀圧入法により測定した。実施例1の排ガス浄化フィルタにおいては、水銀圧入法により測定された隔壁の平均細孔径が12μmであり、水銀圧入法により測定された隔壁の細孔径分布において、平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合(表1においては、「2倍の平均細孔径の割合」と記す)が6%であった。隔壁の平均細孔径及び2倍の平均細孔径の割合を表1に示す。水銀圧入法による測定は、島津製作所社製の商品名:ポロシメータ 型式9810を用いて行った。「2倍の平均細孔径の割合」は、細孔径分布を示すグラフの面積から算出した。
【0079】
【表1】
【0080】
(2)排ガス浄化フィルタの性能評価:
次に、以下の方法で、得られた排ガス浄化フィルタの「初期圧損(比率)」、及び「捕集効率(%)」を測定した。また、「初期圧損(比率)」及び「捕集効率(%)」の測定結果から、排ガス浄化フィルタの「総合評価」を行った。結果を表1に示す。
【0081】
[初期圧損(比率)]
まず、排ガス浄化フィルタの圧損を測定した。具体的は方法としては、まず、排ガス浄化フィルタに、室温の空気を10Nm/minの流量で流し、排ガス浄化フィルタの前後の圧力差(即ち、流入側と流出側とにおける差圧)を計測した。そして、実施例15の排ガス浄化フィルタにおける圧力差に対する、各実施例の排ガス浄化フィルタの圧力差の比率(即ち、実施例15の圧力差(圧損)を1とした場合における比率)を、各排ガス浄化フィルタの「初期圧損(比率)」として求めた。
【0082】
[捕集効率(%)]
排気量2リットルの直噴式ガソリンエンジンを持つ乗用車両の排気系に各実施例の排ガス浄化フィルタを搭載した際と、上記排ガス浄化フィルタを搭載しない際との、それぞれについて、シャシダイナモによる車両試験を行った。具体的には、欧州規制運転モード(NEDC)にて運転した際における排ガス中の粒子状物質の排出個数を、PMP(欧州規制のパティキュレート計測プロトコル)に沿った計測方法で計測し、その比率(粒子状物質の総排出個数に対する排ガス浄化フィルタにより捕集された個数の比率)より、「捕集効率(%)」を求めた。
【0083】
[総合評価]
各排ガス浄化フィルタの初期圧損(比率)の値を「A」とし、捕集効率(%)の値を「B」とした場合に、「B/A」の値を、各排ガス浄化フィルタの「総合評価」とした。この総合評価においては、その数値が大きいほど、排ガス浄化フィルタの評価が高いこととなる。即ち、「B/A」の値は、初期圧損(比率)が低いか、或いは捕集効率(%)が高い場合に、その数値が大きくなる。
【0084】
(実施例2〜15、比較例1〜4)
隔壁厚さ、平均細孔径、平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の割合、及びセル密度を、表1に示すように変更した以外は、実施例1の排ガス浄化フィルタと同様の方法により排ガス浄化フィルタを作製した。
【0085】
なお、成形用坏土を調製する際に、実施例2〜4、及び12〜15においては、タルクの平均粒子径を20μmとし、シリカの平均粒子径を25μmとした。実施例5及び6においては、タルクの平均粒子径を25μmとし、シリカの平均粒子径を25μmとした。
【0086】
また、実施例7においては、タルクの平均粒子径を30μmとし、シリカの平均粒子径を35μmとした。実施例8においては、タルクの平均粒子径を35μmとし、シリカの平均粒子径を35μmとした。実施例9においては、タルクの平均粒子径を40μmとし、シリカの平均粒子径を45μmとした。実施例10においては、タルクの平均粒子径を45μmとし、シリカの平均粒子径を45μmとした。実施例11においては、タルクの平均粒子径を50μmとし、シリカの平均粒子径を50μmとした。
【0087】
比較例1及び2においては、実施例5と同様に調製された成形用坏土を用いた。比較例3においては、タルクの平均粒子径を20μmとし、シリカの平均粒子径を15μmとした。比較例4においては、タルクの平均粒子径を50μmとし、シリカの平均粒子径を30μmとした。
【0088】
実施例2〜15、及び比較例1〜4の排ガス浄化フィルタについて、実施例1の排ガス浄化フィルタと同様の方法で、「初期圧損(比率)」及び「捕集効率(%)」を測定した。また、「初期圧損(比率)」及び「捕集効率(%)」の測定結果から、排ガス浄化フィルタの「総合評価」を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(結果)
表1の結果から明らかなように、実施例1〜15の排ガス浄化フィルタは、「初期圧損(比率)」と「捕集効率(%)」との結果が共に良好なものであり、総合評価についても高い値となっていた。即ち、「初期圧損(比率)」と「捕集効率(%)」とのそれぞれがバランスよく高い評価結果となっていた。
【0090】
一方、比較例1及び4の排ガス浄化フィルタは、「初期圧損(比率)」については良好な評価結果であったが、「捕集効率(%)」が極めて低く、総合評価が悪いという結果となった。また、比較例2及び3の排ガス浄化フィルタは、「捕集効率(%)」については良好な評価結果であったが、「初期圧損(比率)」が高く、総合評価が悪いという結果となった。
【0091】
以上の結果から、「隔壁厚さ」、「平均細孔径」、及び「平均細孔径の2倍の大きさ以上の細孔の容積の全細孔容積に対する割合(2倍の平均細孔径の割合)」のいずれか1つでも、本発明において規定される数値範囲を外れると、初期圧損又は捕集効率が著しく低下し、特定のエンジン用の排ガス浄化フィルタとして不適なものとなってしまうことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の排ガス浄化フィルタは、内燃機関、各種燃焼装置から排出される排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタとして用いることができる。特に、粒子状物質の量が少ない排ガスを浄化するフィルタとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
10:ハニカム構造体、11,11a,11b:セル、12:隔壁、13,13a,13b:目封止部、15a:一方の端部、15b:他方の端部、100:排ガス浄化フィルタ。
図1
図2