特許第5829902号(P5829902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5829902
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】フィルタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/70 20060101AFI20151119BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20151119BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20151119BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20151119BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20151119BHJP
   C04B 41/84 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   B01D71/70
   B01D69/10
   B01D69/12
   C01B33/12 C
   C04B41/85 C
   C04B41/84 B
【請求項の数】22
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-280341(P2011-280341)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-128886(P2013-128886A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】高木 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲一
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−046668(JP,A)
【文献】 特開平06−170188(JP,A)
【文献】 特開平11−246287(JP,A)
【文献】 特開平11−255570(JP,A)
【文献】 特開2010−149002(JP,A)
【文献】 特開2011−194283(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118252(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/02、71/70
B01D 69/10
B01D 69/12
C01B 33/12
C04B 41/84
C04B 41/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材の表面に設けられて、膜厚100nm以下で有機官能基を含むシリカ膜と、を備え、
前記シリカ膜の質量(g)に対する前記シリカ膜に含まれる前記有機官能基の質量(g)の比R、前記シリカ膜に含まれる前記有機官能基の平均密度ρ(g/cm)、および前記シリカ膜の細孔容積V(cm/g)が下記式(I)を満たすとともに、前記Rが0.15〜0.60で、前記Vが0.19〜0.42であるフィルタ。
式(I):(R+ρV)/(ρV+1)≧0.4
【請求項2】
前記Rが0.25〜0.50である請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記Vが0.19〜0.29である請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記シリカ膜の膜厚T(nm)および前記多孔質基材の平均細孔径D(nm)が下記式(II)を満たす請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルタ。
式(II):T≦5D
【請求項5】
前記多孔質基材の平均細孔径Dが5〜50nmである請求項1〜のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記シリカ膜に含まれる前記有機官能基が、アリール基および/またはアルキル基である請求項1〜のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記アルキル基の炭素数が2〜10である請求項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記アリール基の炭素数が6〜10である請求項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記アリール基がフェニル基である請求項に記載のフィルタ。
【請求項10】
有機官能基を有するシリカ化合物(A)および有機官能基を有さないシリカ化合物(B)[但し、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)のみを用いて前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を用いない場合も含む]をSP値11以下の溶媒を含む反応系で重合させ、希釈して、前駆体ゾルを含む成膜用ゾル溶液を得るとともに、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)と前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)との割合がモル比で(A)/(B)>1である第一の工程と、
前記成膜用ゾル溶液に含まれる前記前駆体ゾルを前記多孔質基材に付着させて前記多孔質基材の表面に前記前駆体ゾルの膜を形成する第二の工程と、
前記多孔質基材に付着させた前記前駆体ゾルを乾燥し、次いで、前記前駆体ゾルに含まれる前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)に由来する有機官能基のうちの一部の該有機官能基を残存させるように熱処理する第三の工程と、を有し、前記第一の工程においては、前記重合により、まずは前記前駆体ゾルを10質量%以上にて含む初期ゾル溶液を得ておき、次いで、前記初期ゾル溶液を希釈することにより、前記前駆体ゾルを5質量%以下にて含む前記成膜用ゾルを得るフィルタの製造方法。
【請求項11】
前記第一の工程においては、前記重合により、まずは前記前駆体ゾルを10質量%以上にて含む初期ゾル溶液を得ておき、次いで、前記初期ゾル溶液を希釈することにより、前記前駆体ゾルを2質量%以下にて含む前記成膜用ゾルを得る請求項10に記載のフィルタの製造方法。
【請求項12】
前記第二の工程においては、前記成膜用ゾル溶液を多孔質基材に接触させ、前記成膜用ゾル溶液の自重による落下によって、前記成膜用ゾル溶液に含まれる前記前駆体ゾルを前記多孔質基材に付着させることにより、前記多孔質基材の表面に前記前駆体ゾルの膜を形成する請求項10または11に記載のフィルタの製造方法。
【請求項13】
前記第三の工程においては、前記熱処理を200〜600℃にて行う請求項1012のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項14】
前記第一の工程においては、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)として有機官能基を有するアルコキシシラン化合物を用い、かつ、前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)として有機官能基を有さないアルコキシシラン化合物を用いる請求項1013のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項15】
前記第一の工程においては、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)のみを用いて前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を用いない請求項1013のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項16】
前記第一の工程において、前記重合の際に、水を添加して加水分解を生じさせることにより、前記重合を促進させる請求項1015のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項17】
前記水を、硝酸水溶液の形態で添加する請求項16に記載のフィルタの製造方法。
【請求項18】
前記第一の工程において、前記重合によって得られる前記前駆体ゾルが、下記構造式(i)に示される構造を有する請求項1017のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【化1】


[式(i)中、ORは、水酸基もしくはメトキシ基を示す。]
【請求項19】
前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)の前記有機官能基が、アリール基および/またはアルキル基である請求項1018のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項20】
前記アルキル基の炭素数が2〜10である請求項19に記載のフィルタの製造方法。
【請求項21】
前記アリール基の炭素数が6〜10である請求項19に記載のフィルタの製造方法。
【請求項22】
前記アリール基がフェニル基である請求項19に記載のフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の成分からなる流体の中から特定の成分を分離または濃縮することが可能なフィルタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の成分からなる流体(気体、液体)の中から特定の成分を分離または濃縮する際には、分離膜を用いることがある。分離膜は、特定の物質を透過させやすい性質を持つ。こうした性質から、分離膜を透過しやすい成分とその他の成分とからなる流体を分離膜で処理した場合には、分離膜を透過しやすい成分が分離膜を透過し、その一方で、その他の成分が分離膜を透過せずにそのまま留まることになる。したがって、分離膜で流体を処理することにより、複数の成分からなる流体の中から特定の成分のみを分離あるいは濃縮することが可能になる。
【0003】
こうした分離膜の中の1つとして、シリカ膜が知られている。シリカ膜は、無数の細孔を有し、これらの細孔に特定の成分を選択的に通過させることを通じて、流体の中の特定の成分を分離または濃縮することが可能とされている。一般に、シリカ膜では、細孔の細孔径が比較的に小さい。そのため、シリカ膜は、水とエタノールとの混合液体から水を分離する場合や、燃焼ガスから二酸化炭素を分離する場合などの、分子径の小さな成分を分離または濃縮するのに適する(例えば、特許文献1,2)。また、シリカ膜は、無機成分を主成分とするため、耐熱性や耐薬品性や機械的強度にも優れているという特徴がある。
【0004】
そこで、シリカ膜に関しては、耐熱性や耐薬品性や機械的強度などに優れるという特徴を活かすべく、比較的に分子径が大きい芳香族化合物やアルコールを分離や濃縮する場合にも適用できるようにすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−162145号公報
【特許文献2】特開平10−249175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のシリカ膜では、芳香族化合物やアルコールなどの選択的な透過を安定的に行わせることは依然として困難である。また、シリカ膜によって芳香族化合物やアルコールなどの選択的な透過を安定させるためには、シリカ膜の膜厚を厚くせざるを得ないことが予想されるので、透過抵抗の増大を免れないと考えられている。
【0007】
上記の問題に鑑みて、本発明は、耐熱性や耐薬品性や機械的強度に優れるとともに、低透過抵抗で芳香族化合物やアルコールを分離または濃縮することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示すフィルタおよびその製造方法である。
【0009】
[1] 多孔質基材と、前記多孔質基材の表面に設けられて、膜厚100nm以下で有機
官能基を含むシリカ膜と、を備え、前記シリカ膜の質量(g)に対する前記シリカ膜に含
まれる前記有機官能基の質量(g)の比R、前記シリカ膜に含まれる前記有機官能基の平
均密度ρ(g/cm)、および前記シリカ膜の細孔容積V(cm/g)が下記式(I
)を満たすとともに、前記Rが0.15〜0.60で、前記Vが0.19〜0.42であるフィルタ。
式(I):(R+ρV)/(ρV+1)≧0.4
[2] 前記Rが0.25〜0.50である前記[1]に記載のフィルタ。
[3] 前記Vが0.19〜0.29である前記[1]または[2]に記載のフィルタ。
【0010】
] 前記シリカ膜の膜厚T(nm)および前記多孔質基材の平均細孔径D(nm)が
下記式(II)を満たす前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルタ。
式(II):T≦5D
【0012】
] 前記多孔質基材の平均細孔径Dが5〜50nmである前記[1]〜[]のいずれかに記載のフィルタ。
] 前記シリカ膜に含まれる前記有機官能基が、アリール基および/またはアルキル基である前記[1]〜[]のいずれかに記載のフィルタ。
] 前記アルキル基の炭素数が2〜10である前記[]に記載のフィルタ。
] 前記アリール基の炭素数が6〜10である前記[]に記載のフィルタ。
[9] 前記アリール基がフェニル基である前記[]に記載のフィルタ。
【0013】
10] 有機官能基を有するシリカ化合物(A)および有機官能基を有さないシリカ化合物(B)[但し、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)のみを用いて前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を用いない場合も含む]をSP値11以下の溶媒を含む反応系で重合させ、希釈して、前駆体ゾルを含む成膜用ゾル溶液を得るとともに、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)と前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)との割合がモル比で(A)/(B)>1である第一の工程と、前記成膜用ゾル溶液に含まれる前記前駆体ゾルを前記多孔質基材に付着させて前記多孔質基材の表面に前記前駆体ゾルの膜を形成する第二の工程と、前記多孔質基材に付着させた前記前駆体ゾルを乾燥し、次いで、前記前駆体ゾルに含まれる前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)に由来する有機官能基のうちの一部の該有機官能基を残存させるように熱処理する第三の工程と、を有し、前記第一の工程においては、前記重合により、まずは前記前駆体ゾルを10質量%以上にて含む初期ゾル溶液を得ておき、次いで、前記初期ゾル溶液を希釈することにより、前記前駆体ゾルを5質量%以下にて含む前記成膜用ゾルを得るフィルタの製造方法。
【0014】
11] 前記第一の工程においては、前記重合により、まずは前記前駆体ゾルを10質量%以上にて含む初期ゾル溶液を得ておき、次いで、前記初期ゾル溶液を希釈することにより、前記前駆体ゾルを2質量%以下にて含む前記成膜用ゾルを得る前記[10]に記載のフィルタの製造方法。
【0015】
12] 前記第二の工程においては、前記成膜用ゾル溶液を多孔質基材に接触させ、前記成膜用ゾル溶液の自重による落下によって、前記成膜用ゾル溶液に含まれる前記前駆体ゾルを前記多孔質基材に付着させることにより、前記多孔質基材の表面に前記前駆体ゾルの膜を形成する前記[10]または[11]に記載のフィルタの製造方法。
【0016】
13] 前記第三の工程においては、前記熱処理を200〜600℃にて行う前記[10]〜[12]のいずれかに記載のフィルタの製造方法。
【0017】
14] 前記第一の工程においては、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)として有機官能基を有するアルコキシシラン化合物を用い、かつ、前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)として有機官能基を有さないアルコキシシラン化合物を用いる前記[10]〜[13]のいずれかに記載のフィルタの製造方法。
【0018】
15] 前記第一の工程においては、前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)のみを用いて前記有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を用いない前記[10]〜[13]のいずれかに記載のフィルタの製造方法。
16] 前記第一の工程において、前記重合の際に、水を添加して加水分解を生じさせることにより、前記重合を促進させる前記[10]〜[15]のいずれかに記載のフィルタの製造方法。
17] 前記水を、硝酸水溶液の形態で添加する前記[16]に記載のフィルタの製造方法。
18] 前記第一の工程において、前記重合によって得られる前記前駆体ゾルが、下記構造式(i)に示される構造を有する前記[10]〜[17]のいずれかに記載のフィルタの製造方法。
【化1】
[式(i)中、ORは、水酸基もしくはメトキシ基を示す。]
19] 前記有機官能基を有するシリカ化合物(A)の前記有機官能基が、アリール基および/またはアルキル基である前記[10]〜[18]のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
20] 前記アルキル基の炭素数が2〜10である前記[19]に記載のフィルタの製造方法。
21] 前記アリール基の炭素数が6〜10である前記[19]に記載のフィルタの製造方法。
22] 前記アリール基がフェニル基である前記[19]に記載のフィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルタによれば、耐熱性や耐薬品性や機械的強度に優れるとともに、低透過抵抗で芳香族化合物やアルコールを分離または濃縮することが可能になる。また、本発明のフィルタの製造方法によれば、耐熱性や耐薬品性や機械的強度に優れるとともに、低透過抵抗で芳香族化合物やアルコールを分離または濃縮することが可能なフィルタを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のフィルタのシリカ膜を構成する要素に関する説明図である。
図2】本発明のフィルタの一実施形態の概略図である。
図3】本発明のフィルタの一実施形態におけるシリカ膜の説明図である。
図4】本発明のフィルタの製造方法の第二の工程の一実施形態の説明図である。
図5A】本発明のフィルタの製造方法の一実施形態の過程で得られる前駆体ゾルの膜の説明図である。
図5B図5Aの前駆体ゾルの膜より得られたシリカ膜の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0022】
1.フィルタ:
本発明のフィルタは、多孔質基材と、多孔質基材の表面に設けられて膜厚100nm以下で有機官能基を含むシリカ膜とを備える。本発明のフィルタのようにシリカ膜の膜厚が100nm以下と薄い場合には、流体中の成分をシリカ膜に透過させる際の透過抵抗を抑制することが可能になる。
【0023】
ここで、有機官能基とは、シリカ膜に含まれるケイ素原子に直接結合した炭素を含み、かつ、他に炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン元素のうち、少なくとも一種を含む原子団のことを言う。また、1個のケイ素原子に1〜3個の有機官能基が結合していてよい。1個のケイ素原子に2個または3個の有機官能基が結合している場合には、これらの同一のケイ素原子に結合している有機官能基は、同一の種類であっても、互いに異なる種類であってもよい。
【0024】
ここで、シリカ膜とは、膜内部にケイ素原子と酸素原子からなる(−Si−O−Si−)3次元網目構造を持つシリカを含む膜のことを言う。
【0025】
さらに、本発明のフィルタでは、シリカ膜の質量(g)に対するシリカ膜に含まれる有機官能基の質量(g)の比R、シリカ膜に含まれる有機官能基の平均密度ρ(g/cm)、およびシリカ膜の細孔容積V(cm/g)が下記式(I)を満たす。
式(I):(R+ρV)/(ρV+1)≧0.4
【0026】
上記式(I)は、シリカ膜の細孔内に有機官能基が充填されたと仮定した上で、細孔内に有機官能基が充填されたシリカ膜の質量に対する、シリカ膜に現実に含まれている有機官能基の質量と細孔内に充填されたと仮定した有機官能基の質量との総和の比が0.4以上であることを意味している。
【0027】
すなわち、(シリカ膜の有機官能基の質量+細孔内に有機官能基が充填されたと仮定した時の細孔内に充填された有機官能基の質量)/(シリカ膜のシリカ分の質量+シリカ膜の有機官能基の質量+細孔内に有機官能基を充填したと仮定した時の充填された当該有機官能基の質量)≧0.4、という関係式を満たすことを意味する。
【0028】
図1は、本発明のフィルタのシリカ膜を構成する要素に関する説明図である。シリカ膜全体の質量をWとして表す場合、シリカ膜のシリカ分の質量がW(1−R)、シリカ膜に含まれる有機官能基の質量がWR、細孔内に有機官能基を充填したと仮定した時の充填された当該有機官能基の質量がWρVに該当する。これらを上記の関係式に当てはめると、以下の式(a)を導き出すことができる。
式(a):(WR+WρV)/{W(1−R)+WR+WρV}≧0.4
【0029】
さらに、上記の式(a)を整理すると、上記式(I)を導き出すことができる。なお、図1中の破線に囲まれた式が整理後のものである。
【0030】
以上から、本発明のフィルタに備えられるシリカ膜が上記式(I)を満たすということは、当該シリカ膜を構成するシリカ分、有機官能基、細孔という要素のうちで、有機官能基および細孔の比率が多くなっていることを意味している。本発明のフィルタでは、シリカ膜が上記式(I)を満たす場合には、シリカ膜中の有機官能基および細孔の存在量が増え、その結果として、シリカ膜による細孔を通じた芳香族化合物やアルコールなどを分離または濃縮する性能が高くなり、特に、芳香族化合物およびアルコールのうちでは芳香族化合物を分離または濃縮する性能がより高くなる傾向にある。
【0031】
また、シリカ膜に含まれる有機官能基の平均密度ρ(g/cm)は、どのような種類の有機官能基であっても、1程度の値となるため、ρ=1(g/cm)で近似して、上記式(I)に導入してもよい。
【0032】
さらに、本発明のフィルタでは、シリカ膜の膜厚T(nm)と多孔質基材の平均細孔径D(nm)が下記式(II)を満たすことが好ましい。本発明のフィルタが下記式(II)を満たす場合には、多孔質基材およびシリカ膜に流体中の成分を透過させる際の透過抵抗を抑制することが可能になる。
式(II):T≦5D
【0033】
本発明のフィルタでは、芳香族化合物やアルコールを分離または濃縮する性能をより高めることが可能になるとの観点から、シリカ膜の質量に対するシリカ膜に含まれる有機官能基の質量の比Rが0.15以上であることが好ましく、さらに、比Rが0.20〜0.60であることがより好ましく、特に、比Rが0.25〜0.50であることが最も好ましい。
【0034】
本発明のフィルタでは、シリカ膜の質量に対するシリカ膜に含まれる有機官能基の質量の比Rが0.15以上である場合には、シリカ膜の細孔の内部に露出する有機官能基の数が増し、その結果、シリカ膜の細孔内は芳香族化合物やアルコールとの親和性がより高い状態になる。
【0035】
したがって、本発明のフィルタでは、シリカ膜の質量に対するシリカ膜に含まれる有機官能基の質量の比Rが0.15以上である場合には、シリカ膜は芳香族化合物やアルコールを選択的に透過させ易い性質をより一層確実に有するようになる。
【0036】
本発明のフィルタでは、シリカ膜の質量に対するシリカ膜に含まれる有機官能基の質量の比Rが0.60以下である場合には、シリカ膜が芳香族化合物やアルコールにより膨潤して分離性能が低下してしまう不具合を抑制することが可能になる。
【0037】
本発明のフィルタでは、透過流束をより高める観点から、多孔質基材の平均細孔径Dが5〜50nmであることが好ましい。
【0038】
本発明のフィルタに用い得る多孔質基材としては、アルミナ、チタニア、シリカ、コージェライト、ジルコニア、ムライトなどのうちの少なくとも1種を主成分とした多孔質セラミックスからなるものを用いることが望ましい。ここに挙げたアルミナなどが主成分の場合には、多孔質基材が耐熱性、耐薬品性、機械的強度などに優れたものとなる。
【0039】
また、本発明のフィルタでは、多孔質基材は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。
【0040】
本発明のフィルタでは、多孔質基材の形状については、特に限定されないが、例えば、円筒、角筒等の筒(チューブ)状の形状や、円柱、角柱などの柱状の形状や、円板状、多角形板状等の板状の形状などを挙げることができる。本発明のフィルタでは、フィルタの容積に対するシリカ膜の表面積の比率を大きくできることから、多孔質基材の好ましい形状としてはモノリス形状を挙げることができる。本発明のフィルタの多孔質基材がモノリス形状の場合には、レンコン状に開いている穴の内壁面にシリカ膜を設けておくことが好ましい。
【0041】
本発明のフィルタでは、芳香族化合物やアルコールを分離または濃縮する性能をより高めることが可能になるという観点から、シリカ膜に含まれる有機官能基が、アリール基および/またはアルキル基を有するものであることが好ましい。
【0042】
さらに、本発明のフィルタでは、芳香族化合物やアルコールを分離または濃縮する性能をより一層確実に高めることが可能になるという観点から、シリカ膜に含まれる有機官能基にアルキル基が含まれる場合には、当該アルキル基の炭素数が2〜10であることがより好ましく、また、シリカ膜に含まれる有機官能基にアリール基が含まれる場合には、当該アリール基の炭素数が6〜10であることがより好ましい。
【0043】
図2は、本発明のフィルタの一実施形態の概略図である。図示されるように、本実施形態のフィルタ30では、シリカ膜50が多孔質基材80の表面に設けられている。本実施形態のフィルタ30のシリカ膜50は、ベンゼンを高効率で、シクロヘキサンを低効率で透過させる性質を有する(詳しくは後述)。そのため、本実施形態のフィルタ30によってベンゼンとシクロヘキサンとの混合流体を処理すると、処理後の混合流体の組成については、高濃度のベンゼンと低濃度のシクロヘキサンとから構成されたものとなる。すなわち、本実施形態のフィルタ30によってベンゼンを濃縮することが可能になる。
【0044】
図3は、本実施形態のフィルタ30のシリカ膜50の説明図である。本実施形態のフィルタ30のシリカ膜50は、有機官能基としてフェニル基を有する。図示されるように、このシリカ膜50では、フェニル基が細孔60の内部に露出した状態となっている。細孔60内に露出したフェニル基は、ベンゼンなどの芳香族化合物と親和性が高い傾向がある。そのため、本実施形態のフィルタ30のシリカ膜50の細孔60は、ベンゼンなどの芳香族化合物を選択的に透過させ易い性質を有する。
【0045】
また、本実施形態のフィルタ30では、シリカ膜50の細孔60内は、フェニル基を露出させているためにアルコールに対しても高い親和性を有し、その結果、アルコールを選択的に透過させ易い性質をも併せ持つ。
【0046】
図3に示されるように、本実施形態のフィルタ30では、細孔60がベンゼンを収められる程度の大きさを有する。したがって、本実施形態のフィルタ30では、シリカ膜50の細孔60の細孔径が、ベンゼンなどの芳香族化合物を透過させるのに適した大きさとなる。
【0047】
また、本実施形態のフィルタ30では、シリカ膜50の細孔60の大きさが、アルコールを透過させるのにも適した大きさとなっている。
【0048】
2.フィルタの製造方法:
本発明のフィルタの製造方法は、次に述べる第一の工程、第二の工程、および第三の工程を有する。
【0049】
まず、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、有機官能基を有するシリカ化合物(A)および有機官能基を有さないシリカ化合物(B)[但し、有機官能基を有するシリカ化合物(A)のみを用いて有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を用いない場合も含む]をSP値11以下の溶媒を含む反応系で重合させ、希釈して、前駆体ゾルを含む成膜用ゾル溶液を得る。
【0050】
なお、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、有機官能基を有するシリカ化合物(A)と有機官能基を有さないシリカ化合物(B)との割合をモル比で(A)/(B)>1[換言すると、有機官能基を有するシリカ化合物(A)のモル数/有機官能基を有さないシリカ化合物(B)のモル数>1]にて用いる。
【0051】
本発明のフィルタの製造方法の第一の工程のように、有機官能基を有するシリカ化合物(A)と有機官能基を有さないシリカ化合物(B)とをモル比(A)/(B)>1以上で用いる場合には、有機官能基を豊富に含んだ前駆体ゾルを形成することが可能になる。
【0052】
特に、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、前駆体ゾルに含まれる有機官能基の量を増やす観点から、有機官能基を有するシリカ化合物(A)と有機官能基を有さないシリカ化合物(B)とのモル比(A)/(B)>4であることが好ましく、さらに、有機官能基を有するシリカ化合物(A)のみを用いて有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を用いないこと[すなわち、有機官能基を有さないシリカ化合物(B)と有機官能基を有するシリカ化合物(A)とのモル比(B)/(A)=0]がより好ましい。
【0053】
本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程において有機官能基を有するシリカ化合物(A)と有機官能基を有さないシリカ化合物(B)とのモル比(A)/(B)>4にて用いる場合には、最終的に、上述した式(I)の関係を満たすシリカ膜を得やすくなる。すなわち、本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程において有機官能基を有するシリカ化合物(A)と有機官能基を有さないシリカ化合物(B)とのモル比(A)/(B)>4にて用いる場合には、最終的に芳香族化合物やアルコールの選択的な透過により適したシリカ膜を得ることが可能になる。
【0054】
本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程においては、有機官能基を有するシリカ化合物(A)として有機官能基を有するアルコキシシラン化合物を用い、かつ、有機官能基を有さないシリカ化合物(B)として有機官能基を有さないアルコキシシラン化合物を用いることが好ましい。
【0055】
本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程において、有機官能基を有するシリカ化合物(A)として有機官能基を有するアルコキシシラン化合物を用い、かつ有機官能基を有さないシリカ化合物(B)として有機官能基を有さないアルコキシシラン化合物を用いる場合には、得られるシリカ膜の細孔の細孔径を芳香族化合物やアルコールの透過に適した大きさにすることができ、また、シリカ膜の細孔内における芳香族化合物やアルコールとの親和性を高めることが可能となる。すなわち、本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程において、有機官能基を有するシリカ化合物(A)として有機官能基を有するアルコキシシラン化合物を用い、かつ有機官能基を有さないシリカ化合物(B)として有機官能基を有さないアルコキシシラン化合物を用いる場合には、得られるシリカ膜の細孔を芳香族化合物やアルコールの選択的な透過により適した状態にすることが可能になる。
【0056】
本発明のフィルタの製造方法の第一の工程で用い得る有機官能基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、アルコキシシラン化合物の中に1〜3種のアルキル基を有するもの(具体例としてジエチルジメトキシシラン)や、アルコキシシラン化合物の中に1〜3種のアリール基を有するもの(具体例としてジフェニルジメトキシシラン)や、アルコキシシラン化合物の中にアルキル基およびアリール基の両方を有するもの(具体例としてフェニルメチルジメトキシシラン)を挙げることができる。
【0057】
本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程において有機官能基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合、当該アルコキシシラン化合物の有機官能基は炭素数2〜10のアルキル基および/または炭素数6〜10のアリール基であることが好ましい。本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程において炭素数2〜10のアルキル基および/または炭素数6〜10のアリール基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合、最終的に得られるシリカ膜の細孔の状態を芳香族化合物やアルコールの選択的な透過により一層適したものとすることが可能になる。
【0058】
特に、本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程において炭素数6〜10のアリール基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合、最終的に得られるフィルタのシリカ膜における細孔の状態を、アルコールの選択的な透過よりも、芳香族化合物の選択的な透過により一層適したものとすることが可能になる。
【0059】
本発明のフィルタの製造方法の第一の工程で用い得るアリール基および/またはアルキル基を有するアルコキシシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノリルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどを挙げることができる。ここに列挙したアリール基やアルキル基を有するアルコキシシラン化合物は、1種のみを用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いても、本発明のフィルタの製造方法には好適である。
【0060】
本明細書にいうSP値(solubility parameter)とは、Hildebrandにより提唱された溶解度の目安とされる値である(参考文献:J. Hildebrand,“The Solubility of Non−electrolytes”、3rd Ed.,Reinhold Publishing Crop.,1949)。
【0061】
具体的には、SP値[単位:(cal/cm1/2]とは、下記の式(A)により算出される値である。一般に、溶媒は、SP値が高くなるにつれて親水性を増す傾向がある。
式(A):δ=2.05(ΔE/V)1/2
[但し、式(A)中で、δはSP値、ΔEは凝集エネルギー(J/mol)、Vは、モル体積(cm/mol)を表す。また、SP値のSI単位系は、(J/cm1/2であるが、2.05を乗じて慣習的に使用されている(cal/cm1/2に換算した。すなわち、1(cal/cm1/2≒2.05(J/mol)1/2]に近似した。
【0062】
本発明のフィルタの製造方法の第一の工程のように、SP値11以下の溶媒を用いる場合には、有機官能基を有しないシリカ化合物(A)や有機官能基を有さないシリカ化合物(B)、これらの化合物を重合させて作られた前駆体ゾルが溶媒に馴染み易くなる。その結果、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、前駆体ゾルの粒径を大きく成長させることが可能になる。
【0063】
さらに詳しく述べると、一般に、有機官能基を有するシリカ化合物(A)と有機官能基を有さないシリカ化合物(B)とのモル比(A)/(B)が増えるにつれて、これらの化合物を重合させて得られる前駆体ゾルが溶媒に馴染みにくくなり、その結果、前駆体ゾルを大きく成長させることが困難になる傾向がある。本発明のフィルタの製造方法の第一の工程のように、SP値11以下の溶媒を用いて重合させると、上述のモル比(A)/(B)が大きな場合であっても、前駆体ゾルの粒径を大きく成長させることが可能になる。すなわち、本発明のフィルタの製造方法によれば、従来技術では困難とされていた、有機官能基を豊富に含んだ前駆体ゾルを大きな粒径のものにして得ることが可能になる。
【0064】
こうして粒径の大きな前駆体ゾルが得られると、前駆体ゾルを多孔質基材の表面に付着させる際に、多孔質基材の細孔内に前駆体ゾルを浸入させてしまうことが抑制され、これに伴って前駆体ゾルを多孔質基材の表面上に堆積させ易くなる。したがって、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程で得られた前駆体ゾルを用いると、多孔質基材の表面上に前駆体ゾルの薄膜を形成することが可能になり、ひいては、薄いシリカ膜、すなわち、膜厚100nm以下のシリカ膜を形成することが可能になる。
【0065】
さらに、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程のように、粒径の大きな前駆体ゾルを得ることが可能になると、最終的に得られるフィルタが上述の式(II):T≦5D [式(II)中で、Tはシリカ膜の膜厚(nm)、Dは多孔質基材の平均細孔径(nm)]、を満たすものとなる傾向が高まり、その結果、低透過抵抗のシリカ膜を備えたフィルタを得ることが容易になる。
【0066】
本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、溶媒のSP値が7.0〜11.0であることが好ましく、さらに、溶媒のSP値が8.0〜10.5であることがより好ましい。
【0067】
本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、溶媒のSP値が7.0以上である場合、有機官能基を有するシリカ化合物(A)や有機官能基を有さないシリカ化合物(B)にアルコキシシラン化合物を用いるときに、アルコキシシラン化合物の加水分解のために添加する水と溶媒とが相溶し易くなり、その結果、アルコキシシラン化合物の加水分解の速度の低下を抑制することが可能になる。
【0068】
また、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、溶媒のSP値が10.5以下である場合には、溶媒は、有機官能基を有しないシリカ化合物(A)や有機官能基を有さないシリカ化合物(B)、およびこれらの化合物を重合させて作られた前駆体ゾルとより馴染み易くなる。
【0069】
本発明のフィルタの製造方法に用い得るSP値11以下の溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、アセトン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、エチレングリコールジメチルエーテル、オクタン、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、p−キシレンなどを挙げることができる。
【0070】
本発明のフィルタの製造方法では、第一の工程においてアルコキシシラン化合物を重合させて前駆体ゾルを得る場合、アルコキシシラン化合物の加水分解のために添加した水と任意の割合で相溶できるという理由から、アセトン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルアセテートなどを溶媒として用いることが好ましい。
【0071】
さらに、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、例えば、有機官能基を有するシリカ化合物(A)と有機官能基を有さないシリカ化合物(B)とを予め混在させておき、これらの化合物を重合させて成膜用ゾル溶液を得る手法や、有機官能基を有するシリカ化合物(A)を先に重合させているところに有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を加えて引き続き重合させて成膜用ゾル溶液を得る手法を用いることが可能である。あるいは、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、有機官能基を有するシリカ化合物(A)を重合させて前駆体ゾル(α)を得ておき、これとは別途で有機官能基を有さないシリカ化合物(B)を重合させて前駆体ゾル(β)を得ておいて、次いで2種類の前駆体ゾル(α)と前駆体ゾル(β)とを混合して成膜用ゾル溶液を得る手法を用いてもよい。
【0072】
本発明のフィルタの製造方法の第一の工程での希釈の手法としては、重合時に溶媒などを追加することによって希釈する手法や、まずは重合によって前駆体ゾルを含む初期ゾル溶液を得ておき、次いで初期ゾル溶液を溶媒などで希釈して成膜用ゾル溶液を得る手法を用いるとよい。
【0073】
本発明のフィルタの製造方法では、多孔質基材に薄いシリカ膜を形成し易くなるという理由から、第一の工程においては、重合により、まずは前駆体ゾルをシリカ換算にて10質量%以上にて含む初期ゾル溶液を得ておき、次いで、初期ゾル溶液を希釈することにより、前駆体ゾルをシリカ換算にて2質量%以下にて含む成膜用ゾルを得ることが好ましい。なお、初期ゾル溶液や成膜用ゾル溶液における前駆体ゾルのシリカ換算の濃度は、以下の通りである。
初期ゾル溶液あるいは成膜用ゾル溶液における前駆体ゾルのシリカ換算の濃度(質量%)=100×前駆体ゾルに含まれるケイ素(Si)をシリカ(SiO)に換算した場合の質量(g)/初期ゾル溶液あるいは成膜用ゾル溶液全体の質量(g)
【0074】
本発明のフィルタの製造方法の第二の工程では、成膜用ゾル溶液に含まれる前駆体ゾルを多孔質基材に付着させて多孔質基材の表面に前駆体ゾルの膜を形成する。
【0075】
特に、本発明のフィルタの製造方法の第二の工程では、成膜用ゾル溶液を多孔質基材に接触させ、成膜用ゾル溶液の自重による落下によって、成膜用ゾル溶液に含まれる前駆体ゾルを多孔質基材に付着させることにより、多孔質基材の表面に前駆体ゾルの膜を形成することが好ましい。
【0076】
本発明のフィルタの製造方法の第二の工程において、上述のように成膜用ゾル溶液の自重による落下を利用して多孔質基材の表面に前駆体ゾルの膜を形成する場合には、多孔質基材の細孔内への前駆体ゾルの浸入を抑制することが可能となり、また、多孔質基材の表面上での前駆体ゾルの過剰な堆積を抑制させつつ、多孔質基材の表面上に前駆体ゾルの膜を形成することも可能となる。その結果、本発明のフィルタの製造方法の第二の工程において、上述のように成膜用ゾル溶液の自重による落下を利用して多孔質基材の表面に前駆体ゾルの膜を形成する場合には、多孔質基材の表面上に前駆体ゾルの薄膜を形成することが可能となる。
【0077】
図4は、本発明のフィルタの製造方法の第二の工程の一実施形態の説明図である。図示されるように、本実施形態では、多孔質セラミックスによって作られたレンコン形状(モノリス形状)の多孔質基材3を用意し、セル5の貫通方向を鉛直方向に合わせた状態にしておく。次いで、本実施形態では、多孔質基材3の上側の端面13からセル5内に成膜用ゾル溶液1を注ぎこむ。
【0078】
こうして成膜用ゾル溶液1を多孔質基材3のセル5内に注ぎ込むと、成膜用ゾル溶液1はセル5内を通過して、多孔質基材3の下側の端面15からセル5の外へと排出される。このとき、成膜用ゾル溶液1に含まれる前駆体ゾルは、多孔質基材3の上側の端面13周辺でセル5の内壁面9に付着する。続いて、上側の端面13の周辺でセル5の内壁面9に付着した前駆体ゾルは、自重によって次第に上側から下側に向かって拡がりながら内壁面9上を膜状に覆っていく。前駆体ゾルが内壁面9を下側の端面15まで覆い尽くすと、内壁面9に付着しきれない余剰の前駆体ゾルは多孔質基材3の下側の端面15からセル5外へ排出される。
【0079】
上述したように前駆体ゾルを自重によって内壁面9上で拡げていく場合には、多孔質基材3の細孔内への前駆ゾルの浸入や内壁面9上での過剰な前駆体ゾルの堆積を抑制できる。その結果、本実施形態では、多孔質基材3のセル5の内壁面9上に前駆体ゾルの薄い膜を形成することが可能になる。
【0080】
特に、多孔質基材3のセル5内に成膜用ゾル溶液1を注ぎ込むのに先立って、図4に示されるように、予め多孔質基材3の外周面17をマスキングテープ11でマスクしておくことが好ましい。こうして多孔質基材3の外周面17をマスクしておくと、多孔質基材3の細孔内への前駆体ゾルの浸入をより一層確実に抑制することが可能になる。その結果、多孔質基材3の内壁面9上に前駆体ゾルの薄い膜をより一層確実に形成し易くなる。
【0081】
本発明のフィルタの製造方法の第三の工程では、多孔質基材に付着させた前駆体ゾルを乾燥し、次いで、前駆体ゾルに含まれる有機官能基を有するシリカ化合物(A)に由来する有機官能基のうちの一部の有機官能基を残存させるように熱処理する。
【0082】
本発明のフィルタの製造方法の第三の工程のように、前駆体ゾルに含まれる有機官能基を有するシリカ化合物(A)に由来する有機官能基のうちの一部の有機官能基を残存させるように熱処理する場合には、前駆体ゾルに含まれる有機官能基のうちの一部の有機官能基が分解して、芳香族化合物やアルコールを透過させることを可能とする細孔が形成される一方で、熱処理後でも残存した有機官能基の作用により、得られるシリカ膜の細孔内が芳香族化合物やアルコールとの親和性を有するになる。すなわち、本発明のフィルタの製造方法の第三の工程により、芳香族化合物やアルコールの選択的な透過に適したシリカ膜を得ることが可能になる。
【0083】
本発明のフィルタの製造方法の第三の工程では、前駆体ゾルに含まれる有機官能基のうちの一部の有機官能基を確実に残存させることが可能になるという観点から、熱処理を200〜600℃にて行うことが好ましい。よって、本発明のフィルタの製造方法では、第三の工程において熱処理を200〜600℃にて行う場合には、芳香族化合物やアルコールの選択的な透過に適したシリカ膜をより確実に得ることが可能になる。
【0084】
例えば、本発明のフィルタの製造方法の第一の工程では、フェニルトリメトキシシラン[有機官能基を有するシリカ化合物(A)に該当する]のみを用いて、フェニルトリメトキシシランを加水分解および重縮合させることにより、下記構造式(i)に示される構造を有する前駆体ゾルを得ることができる。また、この前駆体ゾルでは、下記構造式(i)に示される鎖構造が所々で分枝して網目状の構造が作り上げてられている。
【0085】
【化1】
【0086】
[式(i)中、ORは、水酸基もしくはメトキシ基を示す。]
【0087】
図5Aは、本発明のフィルタの製造方法においてフェニル基を有するアルコキシシラン化合物を用いた一実施形態により得られる前駆体ゾルの膜20の説明図である。上述したように、本実施形態においも、前駆体ゾルの膜20では、フェニル基を有するアルコキシシラン化合物に由来した鎖構造[上記構造式(i)を参照]によって網目状の構造が形成されている。このとき、アルコキシシラン化合物のフェニル基が三次元構造上の障害になりながら、鎖構造や網目状の構造が形成されていく。その結果、図示されるように、本実施形態で得られる前駆体ゾルの膜20では、フェニル基を有するアルコキシシラン化合物に由来した鎖構造同士の間に、アルコキシシラン化合物に由来するフェニル基をちょうど収めるかたちで、網目状の構造の網の目の部分が形成されると推察される。
【0088】
図5Bは、本発明のフィルタの製造方法の一実施形態において、図5Aに示した前駆体ゾルの膜20を熱処理して得られたシリカ膜50の説明図である。図示されるように、本実施形態において前駆体ゾルの膜20を熱処理すると、網目状の構造の網の目の部分を占めていた複数のフェニル基のうちの一部のフェニル基が分解し、フェニル基の分解によって生じる空間から細孔が形成されると推察される。こうしてフェニル基の分解で生じた空間から細孔が形成されるので、細孔内の形状がフェニル基の構造とちょうど相補的な関係となることが推察される。その結果、シリカ膜50の細孔は、フェニル基と類似した構造を持つベンゼンなどの芳香族化合物を通過させるのに適した大きさや形状になると推察される。
【0089】
また、図5Bに示されるように、シリカ膜50の細孔内には、前駆体ゾルの膜20の熱処理でも残存したフェニル基が露出している。フェニル基は、ベンゼンとの親和性が高い傾向にある。そのため、本実施形態で得られたシリカ膜50の細孔内は、ベンゼンなどの芳香族化合物を選択的に透過させ易い性質を有するようになる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
(1)フィルタの作製
(実施例1)
フェニルトリメトキシシランとアセトンを混合して4℃で攪拌し、混合溶液を作製した(表1にアセトンのSP値を示す)。次に、硝酸水溶液を少量ずつ添加することによってpHを調整しつつ、混合溶液を4℃で1時間攪拌し、次いで、混合容器を50℃にして6時間攪拌して、初期ゾル溶液を得た。初期ゾル溶液におけるSiO換算でのシリカゾル(前駆体ゾル)の濃度は13.5質量%であった(表1)。続いて、SiO換算でのシリカゾル濃度が2.0質量%となるように、初期ゾル溶液にアセトンを加え、成膜用ゾル溶液を得た。成膜用ゾル溶液160mlを測り採り、図4に示した方法で、両端部をガラスでシールした直径30mm、長さ160mmのモノリス型セラミックス基材[平均細孔径10nm(表1)]の上部よりセル内に成膜用ゾル溶液を流下させた。これにより、セルの内壁面に前駆体ゾルを付着させた(表1では「流下」と表記)。続いて、前駆体ゾルを乾燥させた後、前駆体ゾルを付着させたモノリス型セラミックス基材を400℃で1時間にわたり熱処理を行った。なお、上述した成膜用ゾル溶液を流下させて前駆体ゾルを付着させる工程およびこれ続く熱処理の工程は、モノリス型セラミックス基材の内壁面全体がシリカ膜によって完全に覆われた状態になったことを確認するまで繰り返し行った。
【0092】
(実施例2〜4)
モノリス型セラミックス基材を表1に示された平均細孔径のものを用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルタを作製した。
【0093】
(実施例5)
シリカ化合物としてn−オクチルトリエトキシシランを用い(表1)、前駆体ゾルを付着させたモノリス型セラミックス基材を250℃で1時間にわたり熱処理を行った以外は、実施例1と同様にしてフィルタを作製した。
【0094】
(実施例6〜8)
シリカ化合物や溶媒を表1に示されたものを用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルタを作製した。
【0095】
(実施例9)
ディップ法を用いて、モノリス型セラミックス基材のセルの内壁面に前駆体ゾルを付着させた以外は、実施例1と同様にしてフィルタを作製した。
【0096】
(比較例1)
フェニルトリメトキシシランとエタノールを混合して4℃で攪拌し、混合溶液を作製した(表1にエタノールのSP値を示す)。次に、硝酸水溶液を少量ずつ添加することによってpHを調整しつつ、混合溶液を4℃で1時間攪拌し、次いで、混合容器を50℃にして3時間攪拌して、初期ゾル溶液を得た以外は、実施例1と同様にしてフィルタを作製した。
【0097】
(比較例2)
溶媒に水を用いた以外は、実施例1と同様にして成膜用ゾル溶液を調製した。ところが、成膜用ゾル溶液中に白色の沈殿物を生じ、均一な液状の前駆体ゾルを得ることができなかった。その結果、モノリス型セラミックス基材[平均細孔径10nm]の内壁面に前駆体ゾルを膜状に付着させることが不可能であった(表1)。
【0098】
(比較例3)
シリカゾル(前駆体ゾル)の濃度が2.0質量%になるように、アセトンの添加量を増やし、初期ゾル溶液を作製した。初期ゾル溶液を希釈せずにそのまま成膜用ゾル溶液として用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。しかし、成膜用ゾル溶液を流下させて前駆体ゾルを付着させる工程と、これに続く熱処理の工程とを繰り返し行っても、モノリス型セラミックス基材の内壁面全体がシリカ膜により完全に覆われた状態になったことを確認することができなかった。すなわち、成膜不可能であった。
【0099】
(比較例4)
初期ゾル溶液を希釈せずに、そのまま成膜用ゾル溶液として用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0100】
(比較例5)
モル比で等量のフェニルトリメトキシシランとテトラエトキシシランとからなるシリカ化合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルタを作製した。
【0101】
(比較例6)
シリカ化合物として、テトラエトキシシラを用いた(表1)以外は、実施例1と同様にしてフィルタを作製した。
【0102】
【表1】
【0103】
(2)多孔質基材の平均細孔径の測定
実施例1〜9および比較例1〜6のフィルタに用いた多孔質基材の平均細孔径D(nm)は、パームポロメーターまたはナノパームポロメーターによって測定した。結果を表1に示す。
【0104】
(3)シリカ膜の膜厚の測定
実施例1〜9および比較例1,4〜6のフィルタについて、シリカ膜を含む一部の断片を切り出し、フィルタの断片を樹脂中に埋め込んだ。続いて、このフィルタの断片を埋め込まれた樹脂を、埋め込まれたシリカ膜の厚さ方向と平行に切断し、切断面を研磨し、必要に応じてアルゴンイオンミリングにて、さらに薄片化した。その後、樹脂の切断面を電子顕微鏡にて観察し、任意の点10箇所について、多孔質基材とシリカ膜との界面からシリカ膜と樹脂との界面までの距離を測定した。こうして得らえた10箇所の測定値の算術平均値を、シリカ膜の膜厚T(nm)とした。なお、実施例1〜9および比較例5,6のシリカ膜については、透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った。比較例1,4のシリカ膜については、シリカ膜の膜厚が厚かったために、走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(4)シリカ膜の細孔容積の測定
実施例1〜9および比較例1,4〜6のフィルタ作製に用いた成膜用ゾルを、ガラスプレートに塗布し、乾燥後剥離させ、その後焼成を施すことにより、シリカ膜を作製した。作製したシリカ膜を、真空中150℃にて5時間保持し、吸着している水などを除去した後、液体窒素温度での窒素ガス吸着測定を行った。相対圧(吸着平衡圧力/液体窒素温度での飽和蒸気圧)0.98の際の窒素ガス吸着量(液体換算)より、シリカ膜の細孔容積V(cm/g)を測定した。なお、実施例1〜9および比較例1,4〜6のフィルタのシリカ膜の細孔容積は、多孔質基材の表面に形成したシリカ膜を削り出し、削り出されたシリカ膜について測定した場合でも、上述のガラスプレートによる方法で測定したシリカ膜の細孔容積の誤差範囲内に収まる程度で実質的に同じ値になることを確認した。結果を表1に示す。
【0106】
(5)シリカ膜に含まれる有機官能基の評価
実施例1〜9および比較例1,4〜6のフィルタについて、赤外分光法による測定を行った。実施例1〜9および比較例1,4,5のフィルタについての赤外吸収スペクトルでは、アリール基に由来する芳香族環の環伸縮振動と面外変角振動に由来する吸収ピークまたはアルキル基に由来する吸収ピークが存在することを確認した。また、比較例6のフィルタについての赤外吸収スペクトルでは、アリール基に由来する芳香族環の環伸縮振動と面外変角振動とに由来する吸収ピークおよびアルキル基に由来する吸収ピークが存在しないことを確認した。
【0107】
実施例1〜9および比較例1,4〜6のフィルタについて、予めフィルタの質量を測定した後、大気中800℃にて、フィルタの質量減少が認められなくなるまで熱処理を行った。
【0108】
なお、当該熱処理後の実施例1〜9および比較例1,4,5のフィルタについての赤外吸収スペクトルでは、上述したアリール基に由来する吸収ピークやアルキル基に由来する吸収ピークが存在しないことを確認した。また、この熱処理の際に発生したガスをガスクロマトグラフ質量分析計により分析した。その結果、実施例1〜9および比較例1,4,5のフィルタから発生したガスについては、アリール基またはアルキル基の分解に由来したシグナルが検出された。すなわち、熱処理により、アリール基やアルキル基がフィルタから消失したことを確認した。
【0109】
続いて、実施例1〜9および比較例1,4〜6のフィルタについて、熱処理後のフィルタの質量を測定した。実施例1〜9および比較例1,4〜6のフィルタについて、熱処理前のフィルタの質量(M)と熱処理後のフィルタの質量との差からシリカ膜に含まれる有機官能基の質量(M)(g)を算出し、続いて、熱処理前のシリカ膜の質量(M)(g)に対する前記シリカ膜に含まれる有機官能基の質量(M)(g)の比R(=M/M)を算出した。結果を表1に示す。
【0110】
上述で算出されたシリカ膜の質量(M)(g)に対する前記シリカ膜に含まれる有機官能基の質量(M)(g)の比R、シリカ膜の細孔容積V(cm/g)、さらにシリカ膜に含まれる有機官能基の平均密度ρ(g/cm)を1として、式(I):(R+ρV)/(ρV+1)に当てはめて得られた値を表1に示す。
【0111】
(6)ベンゼン/シクロヘキサン系のパーベーパレーション試験
実施例1〜9と比較例1,4〜6のフィルタに対し、ベンゼン/シクロヘキサンのパーベーパレーション試験を実施した。ベンゼンとシクロヘキサンの混合液体[ベンゼン:シクロヘキサン=50:50(質量比)]を50℃にしておき、この混合流体をフィルタのセル内に流通させつつ基材側面から約10Torrの真空度で減圧して、基材側面からの透過蒸気を液体窒素で冷却したトラップに捕集した。捕集した透過蒸気の液化物の質量から全透過流束を算出した。また、透過蒸気の液化物をガスクロマトグラフィーにて分析し、透過蒸気の組成を決定した。結果を表2に示す。
【0112】
(7)エタノール/o−キシレン/n−オクタン系のパーベーパレーション試験
実施例1のフィルタに対し、上述したベンゼン/シクロヘキサン系のパーベーパレーション試験と同様の方法にて、エタノール/o−キシレン/n−オクタンのパーベーパレーション試験を実施した。エタノールとo−キシレンとn−オクタンの混合液体は、エタノール:o−キシレン:n−オクタン=33:33:33(質量比)のものを用いた。結果を表2に示す。
【0113】
(8)ベンゼン/n−ヘキサン系のパーベーパレーション試験
実施例1のフィルタに対し、上述したベンゼン/シクロヘキサン系のパーベーパレーション試験と同様の方法にて、ベンゼン/n−ヘキサンのパーベーパレーション試験を実施した。ベンゼン/n−ヘキサンの混合液体は、ベンゼン:n−ヘキサン=50:50(質量比)のものを用いた。結果を表2に示す。
【0114】
(9)トルエン/n−ヘプタン系のパーベーパレーション試験
実施例1のフィルタに対し、上述したベンゼン/シクロヘキサン系のパーベーパレーション試験と同様の方法にて、ベンゼン/n−ヘキサンのパーベーパレーション試験を実施した。ベンゼン/n−ヘキサンの混合液体は、トルエン:n−ヘプタン=50:50(質量比)のものを70℃にして用いた。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、複数の成分からなる流体の中から特定の成分を分離または濃縮することが可能なフィルタおよびその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0117】
1:成膜用ゾル溶液、3:多孔質基材、5:セル、7:隔壁、9:内壁面、11:マスキングテープ、13:(上側の)端面、15:(下側の)端面、17:外周面、20:前駆体ゾルの膜、30:フィルタ、50:シリカ膜、60:細孔、80:多孔質基材。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B