(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1実施形態
図1は、本発明の車載発電システムの一実施形態(第1実施形態)の概略構成図であり、
図2は、
図1に記載される車載発電システムにおける第1デバイスが配置される部分の要部拡大図である。
【0021】
図1において、自動車11は、車載発電システム1を備えている。
【0022】
車載発電システム1は、エンジン2と、エンジン2から排気ガスを排出させるための排気管5と、排気管5内に配置される第1デバイス3と、第1デバイス3から電力を取り出すための第2デバイス4とを備えている。
【0023】
エンジン2は、自動車11の動力を出力する装置であって、例えば、単気筒型または多気筒型(例えば、2気筒型、3気筒型、4気筒型、6気筒型)が採用されるとともに、その各気筒において、多サイクル方式(例えば、2サイクル方式、4サイクル方式、6サイクル方式など)が採用される。
【0024】
以下において、4気筒型、4サイクル方式が採用されるエンジンを用いて、説明する。
【0025】
このエンジン2は、図示しない複数(4つ)の気筒を備えており、詳しくは後述するように、各気筒において、ピストンの昇降運動が繰り返され、吸気工程、圧縮工程、爆発工程、排気工程が順次実施されることにより、燃料が燃焼され、動力が出力されている。
【0026】
また、エンジン2の各気筒の前側(車両前後方向における前側。以下同様。)には、排気管5(詳しくは、分岐管18(後述))の上流側端部が接続されている。すなわち、エンジン2として、排気ガスをエンジン2の前方から排気管5に排出可能とする前方排気型のエンジンが、採用されている。
【0027】
また、エンジン2には、
図2に示されるように、各気筒と分岐管18との接続部分において、エンジン側フランジ25が形成されている。
【0028】
エンジン側フランジ25は、分岐管18が延びる方向と交差する方向、好ましくは、直交する方向(分岐管18の径方向)に沿って延びる円環状の平板部材であり、複数(4つ)の気筒のそれぞれに対応するように、複数(4つ)設けられている。
【0029】
また、各エンジン側フランジ25には、厚み方向を貫通する貫通穴30が、分岐管18の周方向に沿って間隔を隔てて複数形成されている。これにより、貫通穴30にボルトなどの固定部材が挿通可能とされ、固定部材によってエンジン側フランジ25と収容部フランジ26(後述)とが締結可能とされ、分岐管18とエンジン2とが連結可能とされている。
【0030】
排気管5は、エンジン2の各気筒から排出される排気ガスを収束するために設けられる排気多岐管(エキゾーストマニホールド)であって、
図1に示されるように、エンジン2の各気筒に接続される複数(4つ)の分岐管18と、それら分岐管18の下流側において、各分岐管18を1つに統合する集気管19とを備えている。
【0031】
複数(4つ)の分岐管18は、自動車11の車幅方向に沿って、互いに間隔を隔てて並列配置されている。なお、
図1(a)では、車両上下方向における上面視概略図を取り出して示している。以下において、複数(4つ)の分岐管18を区別する必要がある場合には、上面視概略図における上側から順に、分岐管18a、分岐管18b、分岐管18cおよび分岐管18dと称する。
【0032】
このような排気管5では、分岐管18の上流側端部が、それぞれ、エンジン2の各気筒に接続されるとともに、分岐管18の下流側端部と集気管19の上流側端部とが接続されている。また、集気管19の下流側端部は、後述する触媒搭載部12の上流側端部に接続されている。
【0033】
そして、このような分岐管18(排気管5)の上流側端部には、後述する第1デバイス3が配置されており、
図2に示されるように、その第1デバイス3(後述)が配置される部分の分岐管18(排気管5)が、分岐管18(排気管5)の長手方向途中において、分割可能とされている。
【0034】
より具体的には、分岐管18は、分岐管18の周方向にわたって区画される円環状(断面視O字状)の境界S1において、その上流側部分に区画され、第1デバイス3を収容可能とする収容部16と、その下流側部分に区画され、第1デバイス3を収容しない非収容部17とに分割可能とされている。
【0035】
収容部16は、複数(4つ)の分岐管18のそれぞれにおいて、第1デバイス3が配置される部分に対応するように、複数(4つ)形成されている。
【0036】
また、この収容部16は、その上流側端部および下流側端部の両端部において、収容部フランジ26を備えている。
【0037】
収容部フランジ26は、分岐管18が延びる方向と交差する方向、好ましくは、直交する方向(分岐管18の径方向)に沿って延びる円環状の平板部材であり、収容部16の上流側端部および下流側端部における外周表面から、分岐管18の径方向に沿って突出するように、設けられている。
【0038】
また、収容部フランジ26には、厚み方向を貫通する貫通穴30が、分岐管18の周方向に沿って間隔を隔てて複数形成されている。
【0039】
これにより、貫通穴30にボルトなどの固定部材が挿通可能とされ、固定部材によってエンジン側フランジ25と上流側の収容部フランジ26とが締結可能とされ、分岐管18とエンジン2とが連結可能とされるとともに、固定部材によって下流側の収容部フランジ26と非収容部フランジ27(後述)が締結可能とされ、収容部16と非収容部17とが連結可能とされている。
【0040】
非収容部17は、その上流側端部において、非収容部フランジ27を備えている。
【0041】
非収容部フランジ27は、分岐管18が延びる方向と交差する方向、好ましくは、直交する方向(分岐管18の径方向)に沿って延びる円環状の平板部材であり、非収容部17の上流側端部において、非収容部17の外周表面から分岐管18の径方向に沿って突出するように設けられている。
【0042】
また、非収容部フランジ27には、その厚み方向を貫通する貫通穴30が、分岐管18の周方向に沿って間隔を隔てて複数形成されている。これにより、貫通穴30にボルトなどの固定部材が挿通可能とされ、固定部材によって下流側の収容部フランジ26と非収容部フランジ27(後述)が締結可能とされ、収容部16と非収容部17とが連結可能とされている。
【0043】
このような車載発電システム1によれば、詳しくは後述するが、第1デバイス3(後述)が配置される部分の分岐管18(排気管5)が、分岐管18(排気管5)の長手方向途中において分割可能とされているので、その部分を分岐管18(排気管5)から分割することによって、第1デバイス3(後述)を分岐管18(排気管5)内に容易に配置することができる。
【0044】
また、このような車載発電システム1では、収容部16と、非収容部17またはエンジン2との接続部分などから、第2デバイス4を、容易に分岐管18の外側に取り出すことができる。
【0045】
また、排気管5の分割部分(上記の境界S1)には、断熱材28が、第2デバイス4の導線31(後述)を被覆するように介在される。
【0046】
断熱材28としては、特に制限されないが、グラスウール、セラミックスなどが挙げられる。
【0047】
このような車載発電システム1では、第1デバイス3(後述)が配置される部分の排気管5が分割されるとともに、その排気管5の分割部分に断熱材28が介在されるため、排気管5が分割可能とされる場合にも、排気管5が外部に対して熱的に遮断される。そのため、このような車載発電システム1によれば、効率的に第1デバイス3(後述)の加熱および冷却をコントロールすることができる。
【0048】
さらに、このような車載発電システム1では、排気管5の分割部分において、断熱材28が、第2デバイス4の導線31(後述)を被覆するように介在されるため、第2デバイス4の導線31(後述)を断熱材28によって保護することができ、第2デバイス4の導線31(後述)の損傷を抑制することができる。
【0049】
なお、このような断熱材28は、シール部材としても兼用され、断熱材28によって、収容部16と非収容部17との接合部がシールされる。
【0050】
第1デバイス3は、排気ガスの排気に伴って温度が経時的に上下され、電気分極するデバイスである。
【0051】
ここでいう電気分極とは、結晶の歪みにともなう正負イオンの変位により誘電分極し電位差が生じる現象、例えばピエゾ効果、および/または、温度変化により誘電率が変化し電位差が生じる現象、例えば焦電効果などのように、材料に起電力が発生する現象と定義する。
【0052】
このような第1デバイス3として、より具体的には、例えば、ピエゾ効果により電気分極するデバイス、焦電効果により電気分極するデバイスなどが挙げられる。
【0053】
ピエゾ効果は、応力または歪みが加えられたときに、その応力または歪みの大きさに応じて電気分極する効果(現象)である。
【0054】
このようなピエゾ効果により電気分極する第1デバイス3としては、特に制限されず、公知のピエゾ素子(圧電素子)を用いることができる。
【0055】
第1デバイス3としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、体積膨張が抑制された状態において、排気ガスに接触(曝露)されるように、分岐管18内に配置される。
【0056】
固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第2デバイス4(例えば、電極など)を用いることもできる。
【0057】
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、周期的に加熱または冷却されることによって、膨張または収縮する。
【0058】
このとき、ピエゾ素子は、固定部材により体積膨張が抑制されているため、ピエゾ素子は、固定部材に押圧され、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、ピエゾ素子から電力が取り出される。
【0059】
また、このようなピエゾ素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定(すなわち、体積一定)になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
【0060】
そのため、ピエゾ素子が周期的に、繰り返し加熱および冷却されると、ピエゾ素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
【0061】
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
【0062】
焦電効果は、例えば、絶縁体(誘電体)などを加熱および冷却する時に、その温度変化に応じて絶縁体が電気分極する効果(現象)であって、第1効果および第2効果を含んでいる。
【0063】
第1効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により自発分極し、絶縁体の表面に、電荷を生じる効果とされている。
【0064】
また、第2効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により結晶構造に圧力変形が生じ、結晶構造に加えられる応力または歪みにより、圧電分極を生じる効果(ピエゾ効果、圧電効果)とされている。
【0065】
このような焦電効果により電気分極するデバイスとしては、特に制限されず、公知の焦電素子を用いることができる。
【0066】
第1デバイス3として焦電素子が用いられる場合には、焦電素子は、排気ガスに接触(曝露)されるように、分岐管18内に配置される。
【0067】
このような場合において、焦電素子は、周期的に加熱または冷却されることによって、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、焦電素子から電力が取り出される。
【0068】
また、このような焦電素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
【0069】
そのため、焦電素子が周期的に、繰り返し加熱および冷却されると、焦電素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
【0070】
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
【0071】
このような第1デバイス3として、具体的には、上記したように、公知の焦電素子(例えば、BaTiO
3、CaTiO
3、(CaBi)TiO
3、BaNd
2Ti
5O
14、BaSm
2Ti
4O
12、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O
3)など)、公知のピエゾ素子(例えば、水晶(SiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム)(KNaC
4H
4O
6)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O
3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)、リチウムテトラボレート(Li
2B
4O
7)、ランガサイト(La
3Ga
5SiO
14)、窒化アルミニウム(AlN)、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)などを用いることができる。
【0072】
これら第1デバイス3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0073】
第1デバイス3のキュリー点は、例えば、−77℃以上、好ましくは、−10℃以上であり、例えば、1300℃以下、好ましくは、900℃以下である。
【0074】
また、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
【0075】
このような車載発電システム1では、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率が高いほど、エネルギー変換効率が高く、高電圧で電力を取り出すことができるが、第1デバイス3の比誘電率が上記下限未満であれば、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
【0076】
なお、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))は、排気ガスの温度変化によって電気分極するが、その電気分極は、電子分極、イオン分極および配向分極のいずれでもよい。
【0077】
例えば、配向分極によって分極が発現する材料(例えば、液晶材料など)では、その分子構造を変化させることにより、発電効率の向上を図ることができるものと期待されている。
【0078】
このような第1デバイス3は、上記したように、分岐管18(排気管5)内において、第2デバイス4(および必要により設けられる固定部材(図示せず))により固定されており、これにより、第1デバイス3は、分岐管18内において、第2デバイス4を介して、排気ガスに接触(曝露)可能とされている。
【0079】
第2デバイス4は、第1デバイス3から電力を取り出すために設けられる。
【0080】
このような第2デバイス4は、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)と、それら電極に接続される導線31とを備えており、第1デバイス3に電気的に接続されている。
【0081】
また、このような第2デバイス4は、好ましくは、衝撃吸収材29によって被覆されている。
【0082】
具体的には、
図1(b)および
図2に示すように、この車載発電システム1では、上記した第1デバイス3が、分岐管18(排気管5)の内周面から所定間隔を隔てて配置されており、第1デバイス3と分岐管18(排気管5)の内周面との間には、衝撃吸収材29が、第2デバイス4を被覆するように介在されている。なお、
図1(b)では、分岐管18の径方向に沿う断面図を、拡大して示している。
【0083】
衝撃吸収材29は、衝撃吸収性を備える緩衝材であって、例えば、金属ウールなどの熱伝導性クッション材などが挙げられる。
【0084】
そして、第2デバイス4が、このような衝撃吸収材29に挿通され、衝撃吸収材29の中を通過するとともに、分岐管18の外側に取り出し可能とされている。
【0085】
このような車載発電システム1では、第1デバイス3と分岐管18(排気管5)の内周面との間において、第2デバイス4が衝撃吸収材29によって被覆されるため、第2デバイス4を衝撃吸収材29によって保護することができ、第2デバイス4が排ガスに曝露されるなどによって損傷することを、抑制することができる。
【0086】
また、第2デバイス4は、
図1に示すように、昇圧器8、交流/直流変換器(AC−DCコンバーター)9およびバッテリー10に、順次、電気的に接続されている。
【0087】
また、このような車載発電システム1は、さらに、第1デバイス3が配置される排気管5を冷却するための排気管冷却手段としての冷却フィン6および前面開口部7(走行風導入手段)とを備えている。
【0088】
冷却フィン6は、分岐管18における収容部16(排気管5)を冷却するための放熱部材であって、収容部16の外周表面から径方向に沿って放射状に突出するように複数(8つ)設けられている。
【0089】
複数の冷却フィン6は、収容部16の軸線方向において、第1デバイス3が配置される部分にわたって延びるように設けられており、収容部16の周方向に沿って互いに間隔を隔てるように、互いに等間隔に配置されている。
【0090】
なお、各冷却フィン6が延びる方向は、走行風(後述)が流れる方向にも沿っている。
【0091】
前面開口部7は、自動車11の走行時に生じる走行風(自動車11の進行方向と対向する方向に向かって生じる空気流。
図1矢印参照。)を、排気管5に導入するために、自動車11の前面パネルを貫通するように設けられている。
【0092】
具体的には、前面開口部7は、分岐管18と前後方向に対向する自動車11の前面パネルにおいて、開口されることにより形成されており、走行風を収容部16に向かって案内するための複数の風向板24が、その開口内において、上下方向に間隔を隔てて設けられている。
【0093】
そして、この自動車11は、上記した車載発電システム1のほか、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14および排出パイプ15を備えている。
【0094】
触媒搭載部12は、例えば、触媒担体およびその担体上にコーティングされる触媒を備えており、エンジン2から排出される排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO
x)、一酸化炭素(CO)などの有害成分を浄化するために、エンジン2の下流側端部に接続されている。具体的には、第1デバイス3の下流側近傍の集気管19の下流側端部に接続されている。
【0095】
エキゾーストパイプ13は、触媒搭載部12において浄化された排気ガスをマフラー14に案内するために設けられており、上流側端部が触媒搭載部12に接続されるとともに、下流側端部がマフラー14に接続されている。
【0096】
マフラー14は、エンジン2(とりわけ、後述する爆発工程)において生じる騒音を、静音化すために設けられており、その上流側端部がエキゾーストパイプ13の下流側端部に接続されている。また、マフラー14の下流側端部は、排出パイプ15の上流側端部に接続されている。
【0097】
排出パイプ15は、エンジン2から排出され、排気管5、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13およびマフラー14を順次通過し、浄化および静音化された排気ガスを、外気に放出するために設けられており、その上流側端部がマフラー14の下流側端部に接続されるとともに、その下流側端部が、外気に開放されている。
2.発電方法
以下において、上記した車載発電システム1を用いた発電方法について、詳述する。
【0098】
このような車載発電システム1では、自動車11の製造時などにおいて、
図2に示すように、まず、第1デバイス3、第2デバイス4および衝撃吸収材29を、予め、収容部16に収容する。このとき、第2デバイス4は、衝撃吸収材29内を通過し、衝撃吸収材29によって被覆されるように、配置される。
【0099】
次いで、下流側の収容部フランジ26と非収容部フランジ27とを、ボルトなどの固定部材により締結することによって、収容部16と非収容部17とを連結する。これにより、分岐管18を形成するとともに、その分岐管18内に、第1デバイス3を配置する。
【0100】
その後、上流側の収容部フランジ26とエンジン側フランジ25とを、ボルトなどの固定部材により締結し、その接続部分から、第2デバイス4の導線31を断熱材28により被覆するとともに取り出し、エンジン2と分岐管18とを接続する。なお、これとともに、分岐管18の下流側端部を、集気管19に接続する。
【0101】
そして、このような車載発電システム1では、自動車11の走行時にエンジン2が駆動され、各気筒において、ピストンの昇降運動が繰り返され、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が順次実施されるとともに、排気工程において、高温の排気ガスが、第1デバイス3に供給される。
【0102】
より具体的には、例えば、分岐管18aに接続される気筒、および、分岐管18cに接続される気筒の2つの気筒において、ピストンが連動し、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が、同位相で実施される。これにより、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、排気工程において、高温の排気ガスが、分岐管18aおよび分岐管18cに供給され、その内部を通過する。一方、排気工程以外の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)では、排気ガスの供給が停止される。
【0103】
このとき、エンジン2の熱が、排気ガス(熱媒体)を介して伝達され、分岐管18aおよび分岐管18cの内部温度は、排気工程において上昇し、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)において下降する。そのため、分岐管18aおよび分岐管18cの内部温度、および、分岐管18内の第1デバイス3の温度は、ピストンサイクルに応じて経時的に上下し、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
【0104】
また、それら2つの気筒とはタイミングを異にして、分岐管18bに接続される気筒、および、分岐管18dに接続される気筒の2つの気筒において、ピストンが連動し、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が、同位相で実施される。これにより、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、分岐管18aおよび分岐管18cとは異なるタイミングで実施される排気工程において、高温の排気ガスが、分岐管18bおよび分岐管18dに供給され、その内部を通過する。一方、排気工程以外の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)では、排気ガスの供給が停止される。
【0105】
このとき、エンジン2の熱が、排気ガス(熱媒体)を介して伝達され、分岐管18bおよび分岐管18dの内部温度は、排気工程において上昇し、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)において下降する。そのため、分岐管18bおよび分岐管18dの内部温度、および、分岐管18内の第1デバイス3の温度は、ピストンサイクルに応じて経時的に上下し、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。なお、この周期的な排気ガスの供給および停止は、分岐管18aおよび分岐管18cの周期的な排気ガスの供給および停止とは、周期が同じである一方、位相が異なる。
【0106】
すなわち、この車載発電システム1では、上記したように、各分岐管18の内部に、第1デバイス3が配置されているため、排気ガスが、排気工程においてエンジン2から周期的に排出され、分岐管18内において第1デバイス3に周期的に供給されることにより、第1デバイス3が周期的に加熱され、高温状態とされる。また、排気工程以外の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)において、その排気ガスの供給が、周期的に停止されることにより、第1デバイス3が周期的に冷却され、低温状態とされる。
【0107】
このように、第1デバイス3を周期的に高温状態または低温状態にすることによって、第1デバイス3を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果など)により、周期的に電気分極させることができる。
【0108】
そして、この車載発電システム1では、自動車11の走行時には、走行風が前面開口部7によって自動車11内に導入され、風向板24によって案内されて、排気管5、詳しくは、分岐管18における収容部16の冷却フィン6が設けられる部分に導入される。
【0109】
これにより、冷却フィン6が走行風に曝され、冷却フィン6によって分岐管18における収容部16が冷却される。その結果、収容部16の内部温度が低下され、第1デバイス3の温度が低下される。
【0110】
なお、このとき、収容部16の内部温度および第1デバイス3の温度は、高温状態における温度と、低温状態における温度との両方が低下されるが、排気ガスが導入され、加熱されるとき(すなわち、高温状態)に比べ、排気ガスの導入が停止され、冷却されるとき(すなわち、低温状態)の方が、収容部16の内部温度および第1デバイス3の温度は、より効率的に低下される。
【0111】
そのため、このような車載発電システム1では、第1デバイス3の高温状態における温度と、低温状態における温度との温度差を、大きくすることができる。
【0112】
具体的には、このような車載発電システム1において、第1デバイス3の温度は、高温状態における温度が、例えば、200〜1200℃、好ましくは、700〜900℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満、より具体的には、例えば、100〜800℃、好ましくは、200〜400℃であり、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜600℃、好ましくは、50〜500℃である。
【0113】
また、それら高温状態と低温状態との繰り返し周期は、例えば、10〜400サイクル/秒、好ましくは、30〜100サイクル/秒である。
【0114】
このように、第1デバイス3の温度を周期的に上下させることにより、第1デバイス3を周期的に電気分極させることができ、第2デバイス4を介して、電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
【0115】
そして、このような車載発電システム1によれば、上記したように、収容部16の内部温度、とりわけ、排気ガスの供給が停止されたときの収容部16の内部温度を低下させることができ、その結果、第1デバイス3の低温状態における温度を、より一層低下させることができる。
【0116】
そのため、この車載発電システム1によれば、第1デバイス3に排気ガスが供給されたときの高温状態における温度と、排気ガスの供給が停止されたときの低温状態における温度との温度差を、より大きくすることができ、その結果、発電効率の向上を図ることができる。
【0117】
なお、上記により得られた電力は、必要により、第2デバイス4に接続される昇圧器8において、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)の状態で昇圧され、次いで、昇圧された電力は、交流/直流変換器9において直流電圧に変換された後、バッテリー10に蓄電される。バッテリー10に蓄電された電力は、自動車11や、自動車11に搭載される各種電気部品の動力などとして、適宜、用いることができる。
【0118】
また、この車載発電システム1で排出される排気ガスは、各分岐管18を通過した後、集気管19に供給され、集気された後、触媒搭載部12に供給され、その触媒搭載部12に備えられる触媒により浄化される。その後、排気ガスは、エキゾーストパイプ13に供給され、マフラー14において静音化された後、排出パイプ15を介して、外気に排出される。
【0119】
そして、このような車載発電システム1では、上記したように、第1デバイス3が配置される部分の分岐管18(排気管5)が、分岐管18(排気管5)の長手方向途中において分割可能とされているので、その部分を分岐管18(排気管5)から分割することによって、第1デバイス3を分岐管18(排気管5)内に容易に配置することができる。
【0120】
すなわち、このような車載発電システム1では、分岐管18を、収容部16と非収容部17とに分割できるので、予め、収容部16に第1デバイス3を収容しておくことができ、その結果、収容部16と非収容部17とを連結させることにより、第1デバイス3を容易に分岐管18内に配置することができる。
【0121】
具体的には、このような車載発電システム1によれば、その製造における第1デバイス3の組み付け時、および、その後の第1デバイス3のメンテナンス時における作業性を向上させることができる。
【0122】
また、このような車載発電システム1によれば、排気管5の分割部分において、断熱材28が介在されるため、効率的に第1デバイス3の加熱および冷却をコントロールすることができ、さらには、断熱材28によって、第2デバイス4の導線31の損傷を抑制することができる。
3.第2実施形態
図3は、本発明の車載発電システムの他の実施形態(第2実施形態)の概略構成図である。なお、以降の各図面において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0123】
上記した説明では、エンジン2として、前方排気型のエンジンを用いたが、エンジン2としては、これに限定されず、例えば、後方排気型のエンジンを用いることもできる。
【0124】
以下において、エンジン2として後方排気型のエンジンが用いられる実施形態(第2実施形態)について、
図3を参照して説明する。
【0125】
図3において、エンジン2の各気筒の後側(車両前後方向における後側。以下同様。)には、排気管5(詳しくは、分岐管18における収容部16)の上流側端部が接続されている。すなわち、エンジン2として、排気ガスをエンジン2の後方から排気管5に排出可能とする後方排気型のエンジンが、採用されている。
【0126】
また、この車載発電システム1は、走行風導入手段として、上記した前面開口部7と、走行風導入管20とを備えている。
【0127】
走行風導入管20は、前面開口部7により自動車11内に導入された走行風を、排気管5、詳しくは、分岐管18の冷却フィン6が設けられる部分に導入するために設けられている。具体的には、走行風導入管20は、その上流側端部が、前面開口部7と前後方向に対向配置され、前面開口部7に向かうように開口されるとともに、エンジン2を迂回してその後側に引き回されている。また、走行風導入管20の下流側端部は、排気管5、詳しくは、分岐管18における収容部16の冷却フィン6と上下方向に対向配置され、収容部16の冷却フィン6が設けられる部分に向かうように、開口されている。
【0128】
この車載発電システム1では、自動車11の走行時には、走行風が前面開口部7によって自動車11内に導入された後、走行風導入管20によって案内され、排気管5、詳しくは、分岐管18における収容部16の冷却フィン6が設けられる部分に導入される。
【0129】
これにより、冷却フィン6が走行風に曝され、冷却フィン6によって収容部16が冷却される。その結果、収容部16の内部温度が低下され、第1デバイス3の温度が低下される。
【0130】
このような車載発電システム1によっても、上記と同様、収容部16の内部温度、とりわけ、排気ガスの供給が停止されたときの収容部16の内部温度を低下させることができ、その結果、第1デバイス3の低温状態における温度を、より一層低下させることができる。
【0131】
そのため、この車載発電システム1によれば、第1デバイス3に排気ガスが供給されたときの高温状態における温度と、排気ガスの供給が停止されたときの低温状態における温度との温度差を、より大きくすることができ、その結果、発電効率の向上を図ることができる。
4.第3実施形態
図4は、本発明の車載発電システムの他の実施形態(第3実施形態)の概略構成図である。
【0132】
上記した説明では、排気管冷却手段として、冷却フィン6を用い、走行風を導入することにより、排気管5を冷却したが、排気管冷却手段としては、これに限定されず、例えば、冷却水導入管23を用いることもできる。
【0133】
以下において、排気管冷却手段として冷却水導入管23が用いられる実施形態(第3実施形態)について、
図4を参照して説明する。
【0134】
図4において、自動車11は、ラジエータ21を備えている。
【0135】
ラジエータ21は、エンジン2を冷却するために設けられる装置であって、冷却水貯留槽22と、複数(2つ)のラジエータホース(図示せず)とを備えている。
【0136】
冷却水貯留槽22は、冷却水を貯留するタンクであって、自動車11の前方において、前面開口部7の後側に対向配置されている。これにより、冷却水貯留槽22は、前面開口部7から導入される走行風に曝露可能とされており、水を冷却可能としている。
【0137】
複数(2つ)のラジエータホース(図示せず)は、一方側端部が冷却水貯留槽22に接続されるとともに、他方側端部がエンジン2(詳しくは、図示しないウォータージャケット)に接続されている。これらラジエータホース(図示せず)は、一方の管(以下、往路管)によって、冷却水を冷却水貯留槽22からエンジン2に供給可能とし、エンジン2を冷却可能としており、また、他方の管(以下、復路管)によって、エンジン2で加熱された冷却水を、冷却水貯留槽22に還流可能としている。
【0138】
そして、
図4において、車載発電システム1は、排気管冷却手段として、冷却水導入管23を備えている。
【0139】
冷却水導入管23は、一方側端部が、ラジエータホースの往路管(図示せず)の流れ方向途中に接続されるとともに、他方側端部が、ラジエータホースの復路管(図示せず)の流れ方向途中に接続されている。これにより、冷却水貯留槽22から往路管(図示せず)に供給される冷却水の一部が、往路管(図示せず)から分岐して冷却水導入管23に導入可能とされ、冷却水導入管23を通過した後、復路管(図示せず)に還流可能とされている。
【0140】
また、冷却水導入管23は、排気管5、詳しくは、分岐管18の第1デバイス3が配置される部分(収容部16)に巻きつけられるように設けられている。これにより、冷却水は、収容部16の外周面を通過可能とされている。
【0141】
このような車載発電システム1では、自動車11の走行時にエンジン2が駆動されるとともに、ラジエータ21によって冷却水がラジエータホースの往路管(図示せず)に供給される。
【0142】
往路管(図示せず)に供給された冷却水は、冷却水導入管23に供給され、収容部16の外周面において、冷却水導入管23内を通過する。これにより、冷却水は、収容部16を冷却させる。その後、冷却水は、ラジエータホースの復路管(図示せず)に還流され、冷却水貯留槽22に輸送される。
【0143】
このような車載発電システム1によっても、上記と同様、収容部16の内部温度、とりわけ、排気ガスの供給が停止されたときの収容部16の内部温度を低下させることができ、その結果、第1デバイス3の低温状態における温度を、より一層低下させることができる。
【0144】
そのため、この車載発電システム1によれば、第1デバイス3に排気ガスが供給されたときの高温状態における温度と、排気ガスの供給が停止されたときの低温状態における温度との温度差を、より大きくすることができ、その結果、発電効率の向上を図ることができる。
5.第4実施形態および第5実施形態
図5は、本発明の車載発電システムの他の実施形態(第4実施形態)の要部拡大図であり、
図6は、本発明の車載発電システムの他の実施形態(第5実施形態)の要部拡大図である。
【0145】
上記した説明では、分岐管18の上流側端部を収容部16とし、収容部16より下流側を非収容部17として、それらを分割および連結可能としたが、収容部16の位置は上記に限定されず、例えば、
図5に示すように、分岐管18の中流部分(途中部分)を収容部16とするとともに、その他の部分(上流側端部および下流側端部)を非収容部17とすることもでき(第4実施形態)、さらには、
図6に示すように、分岐管18の下流側端部を収容部16とするとともに、その他の部分(収容部16より上流側)を非収容部17とすることもできる(第5実施形態)。
【0146】
なお、このような場合には、収容部16と非収容部17とが分割および連結可能とされるように、分岐管18の適宜の箇所に、収容部フランジ26および非収容部フランジ27が設けられる。
【0147】
また、上記した説明では、エンジン側フランジ25、収容部フランジ26および非収容部フランジ27を、分岐管18が延びる方向と直交する方向(分岐管18の径方向)に沿って延びるように形成したが、これらは、分岐管18が延びる方向と交差する方向に沿って延びるように形成されていれば、特に制限されず、その交差角度は、目的および用途に応じて、適宜設定することができる。
【0148】
さらに、上記した説明では、複数(4つ)の分岐管18をそれぞれ別体として形成したが、分岐管18の形態はこれに限定されず、詳しくは図示しないが、例えば、単数(1つ)の管の内部に内壁を設け、その内部を複数(4つ)に分岐させることにより、複数(4つ)の分岐管18をまとめて形成することもできる。このような場合には、収容部16も、内部が複数(4つ)に分岐された単数(1つ)の管として形成される。