特許第5830050号(P5830050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5830050
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】圧電/電歪素子及び配線基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20151119BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20151119BHJP
   H01L 41/29 20130101ALI20151119BHJP
   C04B 35/491 20060101ALI20151119BHJP
   C04B 35/48 20060101ALI20151119BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20151119BHJP
   C04B 41/90 20060101ALI20151119BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   H01L41/047
   H01L41/187
   H01L41/29
   C04B35/49 A
   C04B35/48 D
   C04B41/88 C
   C04B41/90 C
   B32B18/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-63483(P2013-63483)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-192186(P2014-192186A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柏屋 俊克
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−182288(JP,A)
【文献】 特開平05−298918(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0225197(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02495778(EP,A2)
【文献】 特開2000−331866(JP,A)
【文献】 特開2010−103987(JP,A)
【文献】 特開昭63−080585(JP,A)
【文献】 特開2011−254569(JP,A)
【文献】 特開平06−237026(JP,A)
【文献】 特開2002−134805(JP,A)
【文献】 特開昭62−198198(JP,A)
【文献】 特開2005−101577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00 − 41/47
B32B 18/00
C04B 35/48
C04B 35/491
C04B 41/88
C04B 41/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスを主成分として含有する基板と、
前記基板の主面上に形成され、金属酸化物を主成分として含有する密着層と、
前記密着層上に形成される第1導電層と、
前記密着層上に形成され前記第1導電層に食い込んでおり、ガラスを主成分として含有するアンカー部と、
前記基板を挟んで前記第1導電層の反対側に配置される第2導電層と、
を備え
前記アンカー部が含有するガラスは、酸化シリコン及び酸化ホウ素を含み、
前記アンカー部におけるシリコンのホウ素に対する重量濃度比は、2.5以上である、
圧電/電歪素子。
【請求項2】
前記密着層が含有する金属酸化物は、酸化ビスマス、酸化鉛及び酸化バナジウムの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の圧電/電歪素子。
【請求項3】
前記アンカー部は、前記第1導電層の結晶粒の三重点に位置する、
請求項1又は2に記載の圧電/電歪素子。
【請求項4】
前記基板が含有するセラミックスは、鉛系圧電セラミックスである、
請求項1乃至のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
【請求項5】
前記第1導電層は、金、銀、銅及び白金の少なくとも1つを主成分として含有する、
請求項1乃至のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
【請求項6】
セラミックスを主成分として含有する基板と、
前記基板の主面上に形成され、金属酸化物を主成分として含有する密着層と、
前記密着層上に形成される導電層と、
前記密着層上に形成され前記導電層に食い込んでおり、ガラスを主成分として含有するアンカー部と、
を備え
前記アンカー部が含有するガラスは、酸化シリコン及び酸化ホウ素を含み、
前記アンカー部におけるシリコンのホウ素に対する重量濃度比は、2.5以上である、
配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基板と導電層を備える圧電/電歪素子及び配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、有機金化合物と、有機ロジウムと有機ビスマスと有機亜鉛を所定割合で含有する有機金属組成物が開示されている。この有機金属組成物によれば、ガラス質基材の表面に導電層を形成する際の成膜性を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−87378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の有機金属組成物を用いてセラミックス基板上に導電層を形成すると、セラミックス基板に対する導電層の密着力が低いため、導電層が剥離しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、セラミックス基板に対する導電層の密着力を向上可能な圧電/電歪素子及び配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧電/電歪素子は、基板と、基板の主面上に形成される密着層と、密着層上に形成される導電層と、密着層上に形成され導電層に食い込むアンカー部と、を備える。基板は、セラミックスを主成分として含有する。密着層は、金属酸化物を主成分として含有する。アンカー部は、ガラスを主成分として含有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セラミックス基板に対する導電層の密着力を向上可能な圧電/電歪素子及び配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】圧電/電歪素子の構成を示す断面図
図2図1の部分拡大図
図3】実施例の断面を示すSEM画像
図4】引っかき試験後のサンプルNo.3の表面を示す光学顕微鏡写真
図5】引っかき試験後のサンプルNo.4の表面を示す光学顕微鏡写真
図6】引っかき試験後のサンプルNo.19の表面を示す光学顕微鏡写真
図7】引っかき試験後のサンプルNo.20の表面を示す光学顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本発明に係る電極構造が適用された圧電/電歪素子について説明する。このような圧電/電歪素子は、インクジェットヘッド用のアクチュエータ、ジャイロセンサ、発振子、或いはインジェクター用アクチュエータなどに利用することができる。
【0010】
なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(圧電/電歪素子100の構成)
圧電/電歪素子100の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、圧電/電歪素子の構成を示す断面図である。図2は、図1の部分拡大図である。
【0012】
圧電/電歪素子100は、圧電体10と、第1密着層20と、第1導電層30と、複数の第1アンカー部40と、第2密着層50と、第2導電層60と、複数の第2アンカー部70と、を備える。
【0013】
圧電体10は、第1導電層30と第2導電層60の間に配置される。圧電体10は、板状に形成され、第1主面10Sと第2主面10Tを有する。第1主面10S上には第1密着層20が形成され、第2主面10T上には第2密着層50が配置される。圧電体10の厚みは、3μm〜500μmとすることができる。
【0014】
圧電体10は、従来用いられている圧電セラミックス材料を主成分として含有する。この圧電セラミックスとしては、鉛系圧電セラミックスのほか、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマスなどが挙げられる。鉛系圧電セラミックスとしては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛などが挙げられる。
【0015】
特に、第1密着層20及び第2密着層50がビスマス(Bi)や鉛(Pb)を含有する場合、圧電体10は、BiやPbとの反応性が良好な鉛系圧電セラミックスを主成分として含有すること好ましい。なお、本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含有する」とは、組成物X全体のうち、物質Yが好ましくは60重量%以上を占め、より好ましくは70重量%以上を占め、さらに好ましくは90重量%以上を占めることを意味する。
【0016】
また、圧電体10には、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン、セリウム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチモン、鉄、イットリウム、タンタル、リチウム、ビスマス、スズの少なくとも1つが添加されていてもよい。例えば、鉛系圧電セラミックスにランタンやストロンチウムを添加することによって、抗電界や圧電特性を調整することができる。
【0017】
第1密着層20は、圧電体10の第1主面10S上に形成される。第1密着層20は、圧電体10と第1導電層30に挟まれている。第1密着層20の厚みは、2nm〜200nmとすることができ、5nm〜100nmがより好ましい。
【0018】
第1密着層20は、第1導電層30のうち圧電体10と密着している密着面30Sの略全面を覆っていることが好ましい。ただし、第1密着層20には局所的に空隙が形成されていてもよく、その空隙において圧電体10と第1導電層30は直接接触していてもよい。第1密着層20による密着面30Sの被覆率は、90%以上であることが好ましい。
【0019】
第1密着層20は、金属酸化物を主成分として含有する。第1密着層20が含有する金属酸化物は、酸化ビスマス、酸化鉛及び酸化バナジウムの少なくとも1つを含む。この金属酸化物は、圧電体10が含有するセラミックスと化学結合していことが好ましい。これによって、圧電体10に対する第1密着層20の密着力が向上される。
【0020】
なお、第1密着層20は、結晶性であってもよい。すなわち、第1密着層20を構成する粒子は、繰り返し規則正しく配列されていてもよい。
【0021】
第1導電層30は、第1密着層20上に形成される。第1導電層30は、圧電体10を挟んで第2導電層60の反対側に設けられる。第1導電層30は、圧電/電歪素子100の電極として機能する。第1導電層30の厚みは、50nm〜5μmとすることができる。
【0022】
第1導電層30は、従来用いられている電極材料を主成分として含有する。このような電極材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)及び白金(Pt)の少なくとも1つ又はこれらの合金が挙げられる。第1導電層30の平面形状は特に問わないが、矩形、櫛形、丸形などにすることができる。
【0023】
第1アンカー部40は、第1密着層20上に形成され、第1導電層30に食い込んでいる。第1アンカー部40は、第1導電層30の結晶粒の三重点に位置していてもよい。
【0024】
第1アンカー部40の断面形状は、半楕円形や半円形やくさび形であればよいが、第1導電層30の内部に深く食い込んでいることが好ましい。第1アンカー部40の食い込み深さは、5nm〜50nmとすることができる。このような第1アンカー部40によるアンカー効果によって、第1導電層30は第1密着層20に密着する。
【0025】
第1アンカー部40は、ガラスを主成分として含有する。このガラスは、酸化シリコン(SiO)と酸化ホウ素(B)を含んでいることが好ましい。このようなガラスとしては、例えば、SiO-B-ZnO系ガラス、SiO-B-NaO系ガラス、SiO-B-KO系ガラス、SiO-B-Al系ガラスなどが挙げられる。第1アンカー部40が含有するガラスは、第1密着層20が含有する金属酸化物と化学結合していることが好ましい。これによって、第1密着層20に対する第1アンカー部40の密着力をより向上させることができる。
【0026】
第1アンカー部40において、Si濃度(重量%)のB濃度(重量%)に対する比(以下、重量濃度比という。)は、2.5以上であることが好ましい。
【0027】
第2密着層50は、圧電体10の第2主面20T上に形成される。第2密着層50は、第1密着層20と同様の構成を有する。第2密着層50は、第1密着層20を構成する金属酸化物を主成分として含有する。
【0028】
第2導電層60は、第2密着層50上に形成される。第2導電層60は、圧電体10を挟んで第1導電層30の反対側に設けられる。第2導電層60は、圧電/電歪素子100の電極として機能する。第2導電層60は、第1導電層30を構成する電極材料を主成分として含有する。
【0029】
第2アンカー部70は、第2密着層50上に形成され、第2導電層60に食い込んでいる。第2アンカー部70は、第1アンカー部40を構成するガラスを主成分として含有する。
【0030】
(圧電/電歪素子100の製造方法)
次に、圧電/電歪素子100の製造方法について説明する。
【0031】
まず、圧電セラミックス粉末、ビヒクル、分散剤及び可塑剤からなるグリーンシートを所定温度に加熱して脱脂する。
【0032】
次に、グリーンシートを電気炉に投入して所定条件(900℃〜1300℃、1時間〜10時間)で焼成して圧電体10を作製する。
【0033】
次に、所定割合いの第1密着層20の金属酸化物、第1導電層30の電極材料、及び第1アンカー部40のガラスとなるように、各構成元素の有機金属化合物を有機溶剤に溶解することによって、有機金属化合物のペーストを作製する。同様に、所定割合いの第2密着層50の金属酸化物、第2導電層60の電極材料、及び第2アンカー部70のガラスとなるように、各構成元素の有機金属化合物を有機溶剤に溶解することによって、有機金属化合物のペーストを作製する。
【0034】
次に、スクリーン印刷法、スピンコート法或いはスプレーコート法などを用いて、有機金属化合物のペーストを圧電体10の第1及び第2主面10S,10Tそれぞれに塗布する。また、必要に応じて、例えばフォトリソ法などにより、ペーストをパターニングしてもよい。なお、このパターニングは有機金属化合物の焼成後に行っても良い。
【0035】
次に、有機金属化合物のペーストを所定条件(550℃〜900℃、0.1時間〜1時間)で焼成することによって、圧電体10の第1主面10S側に第1密着層20、第1導電層30及び第1アンカー部40が形成され、圧電体10の第2主面10T側に第2密着層50、第2導電層60及び第2アンカー部70が形成される。
【0036】
(作用及び効果)
圧電/電歪素子100は、圧電体10(基板の一例)と、第1密着層20(密着層の一例)と、第1導電層30(導電層の一例)と、第1アンカー部40(アンカー部の一例)と、を備える。圧電体10は、セラミックスを主成分として含有する。第1密着層20は、圧電体10の第1主面10S(主面の一例)上に形成され、金属酸化物を主成分として含有する。第1導電層30は、第1密着層20上に形成される。第1アンカー部40は、第1密着層20上に形成され第1導電層30に食い込む。第1アンカー部40は、ガラスを主成分として含有する。
【0037】
従って、第1アンカー部40は第1密着層20に密着し、第1密着層20は圧電体10に密着する。また、第1導電層30は、第1アンカー部40によるアンカー効果によって第1密着層20に密着する。このように、第1密着層20及び第1アンカー部40を介することによって、圧電体10に対する第1導電層30の密着力を向上させることができる。
【0038】
(他の実施形態)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態において、圧電/電歪素子100は、第2密着層50と第2アンカー部70を備えることとしたが、圧電/電歪素子100は、第2密着層50と第2アンカー部70を備えていなくてもよい。この場合、第2導電層60は、圧電体10の第2主面22T0T上に形成されていればよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、密着層20は、密着層20の構成元素を含む有機金属化合物のペーストを焼成することによって、圧電体10と第1導電層30の間に自然に形成されることとしたが、これに限られるものではない。密着層20は、密着層20の構成元素を含むターゲットを用いたスパッタ法などによっても形成することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、本発明に係る電極構造を圧電/電歪素子100に適用した場合について説明したが、これに限られるものではない。本発明に係る電極構造は、セラミックス基板上に形成された電気配線(導電層の一例)を有する配線基板にも適用可能である。この場合には、電気配線が第1密着層20と第1導電層30とを有していればよい。このような配線基板としては、セラミックス基板上にプリント配線が形成されたプリント基板などが挙げられる。このセラミックス基板は、圧電セラミックス材料以外の材料(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ))によって構成することができる。
【実施例】
【0042】
以下において本発明に係る実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0043】
[サンプルNo.1、3〜20の作製]
以下のようにして、サンプルNo.1、3〜20を作製した。
【0044】
まず、セラミックスにビヒクル、分散剤及び可塑剤を混合したスラリーを用いてグリーンシートを作製した。表1に示す通り、サンプルNo.1,3〜14,16〜20ではPTZを用い、サンプルNo.15ではYSZ(ZrO−6wt%Y)を用いた。
【0045】
次に、グリーンシートを電気炉に投入して、サンプルNo.1,3〜14,16〜20では1200℃で2時間、サンプルNo.15では1400℃で2時間焼成して基板を作製した。
【0046】
次に、表1に示す割合の有機金属化合物を有機溶剤に溶解することによって、有機金属化合物のペーストを作製した。
【0047】
次に、スクリーン印刷法を用いて、有機金属化合物のペーストを基板の一主面に塗布した。
【0048】
次に、有機金属化合物のペーストを700℃で10分間焼成して導電層を形成した。これによって、サンプルNo.1、3〜18では、図3の断面SEM画像に示すように、Au膜と密着層(酸化ビスマス、酸化バナジウム)とAu膜に食い込んだホウケイ酸ガラス粒が形成されていた。一方で、サンプルNo.19では密着層が形成されず、サンプルNo.20ではガラス粒が形成されていなかった。
【0049】
なお、表1に示すように、密着層の厚みはBi又はVの添加量と相関していた。
【0050】
[サンプルNo.2の作製]
以下のようにして、サンプルNo.2を作製した。
【0051】
まず、上述のサンプルNo.1、3〜20と同様に基板を作製した。
【0052】
次に、スパッタ法を用いて、基板の一主面上に10nm厚のBi膜を密着層として形成した。
【0053】
次に、表1に示す割合の有機金属化合物を有機溶剤に溶解することによって、有機金属化合物のペーストを作製した。
【0054】
次に、スクリーン印刷法を用いて、有機金属化合物のペーストをBi膜上に塗布した。
【0055】
次に、有機金属化合物のペーストを700℃で10分間焼成して、Bi膜上のガラス粒と導電層を形成した。
【0056】
[引っかき試験による剥離]
各サンプルのAu膜表面を針先で引っかいて、その引っかき傷を光学顕微鏡で確認した。Au膜の剥離状態を表1にまとめて示す。
【0057】
図4はサンプルNo.3の傷痕を示す光学顕微鏡写真であり、図5はサンプルNo.4の傷痕を示す光学顕微鏡写真である。また、図6はサンプルNo.19の傷痕を示す光学顕微鏡写真であり、図7はサンプルNo.20の傷痕を示す光学顕微鏡写真である。これらの光学顕微鏡では、斜めに走る引っかき傷内の黒色領域がAu膜の剥離した箇所である。
【0058】
【表1】
表1及び図4〜7から分かるように、Au膜とセラミック基板(PZT基板、YSZ基板)の間に密着層(酸化ビスマス、酸化バナジウム)とガラス粒を形成したサンプルNo.1〜18では、引っかき試験による剥離を抑制することができた。これは、セラミック基板及びガラス粒それぞれと密着層を化学結合で密着させるとともに、Au膜と密着層をガラス粒によるアンカー効果で密着させることによって、Au膜の密着性を向上できたためである。
【0059】
また、図4のサンプルNo.3ではAu膜がほとんど剥離していないのに対して、図5のサンプルNo.4ではサンプルNo.3よりも大きめにAu膜が剥離していた。これは、シリコンの比率を高めることで焼成時のガラス粒の硬さが維持され、ガラス粒をAu膜に深く食い込ませることができたためである。従って、シリコンのホウ素に対する重量濃度比は、2.5以上が好ましいことが分かった。
【0060】
また、サンプルNo.1とサンプルNo.2の引っかき試験では、共に良好な結果が得られた。従って、密着層の形成方法に関わらずAu膜の密着性を向上できることが分かった。
【0061】
また、サンプルNo.13とサンプルNo.14の引っかき試験では、サンプルNo.13の方が良好な結果であった。これは、酸化バナジウムよりも酸化ビスマスの方がPZTとの密着力が高いためであると考えられる。従って、鉛系セラミックスの基板には酸化ビスマスの密着層が好適であることが分かった。
【0062】
また、サンプルNo.13とサンプルNo.15の引っかき試験では、共に良好な結果が得られた。従って、基板の材料に関わらず、Au膜の密着性を向上できることが分かった。
【0063】
また、サンプルNo.17,18の引っかき試験でも良好な結果が得られたため、ガラス粒の数が少なくても十分にAu膜の密着性を向上できることが分かった。
【0064】
また、サンプルNo.1とサンプルNo.16の引っかき試験では、サンプルNo.1の方が良好な結果であった。このことから、密着層(酸化ビスマス)を10nm以上の厚みにすることによってAu膜の密着性をより向上できることが分かった。
【0065】
また、サンプルNo.10とサンプルNo.11の引っかき試験では、サンプルNo.10の方が良好な結果であった。これは、サンプルNo.11では密着層が厚すぎて、引っかき試験により密着層自体が損傷したためと考えられる。従って、密着層(酸化ビスマス)を100nm以下の厚みに制限することによってAu膜の密着性をより向上できることが分かった。
【0066】
さらに、表1には示されていないが、サンプルNo.1とサンプルNo.16の断面TEM画像を用いて、密着層(酸化ビスマス)によるAu膜の被覆率を測定した。具体的には、Au膜の基板側表面のうち酸化ビスマスによって覆われている割合を被覆率として算出した。その結果、サンプルNo.1の被覆率は91%であったが、サンプルNo.16の被覆率は78%であった。そして、被覆率と引っかき試験の結果を照らし合わせると、被覆率が高いほどAu膜の密着性を向上できることが分かった。
【符号の説明】
【0067】
10 圧電体
20 第1密着層
30 第1導電層
40 第1アンカー部
50 第2密着層
60 第2導電層
70 第2アンカー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7