特許第5830194号(P5830194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5830194有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5830194
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20151119BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20151119BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20151119BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/12 C
   H05B33/28
   H05B33/22 D
   H05B33/22 B
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-505265(P2015-505265)
(86)(22)【出願日】2014年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2014001149
(87)【国際公開番号】WO2014141623
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-50585(P2013-50585)
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】山江 和幸
(72)【発明者】
【氏名】井出 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】高野 仁路
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/071195(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/024787(WO,A1)
【文献】 特表2010−526420(JP,A)
【文献】 特開2011−233289(JP,A)
【文献】 特開2006−324536(JP,A)
【文献】 特開2005−166637(JP,A)
【文献】 特開2006−236748(JP,A)
【文献】 特開2012−037912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H05B 33/12
H05B 33/28
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基板と、この基板の表面に設けられた光拡散層と、この光拡散層の表面に設けられた光透過性電極と、この光透過性電極と対をなす光反射性電極と、前記光透過性電極と前記光反射性電極との間に離間して設けられた複数の発光層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層のうち、前記光反射性電極から第m番目に配置された前記発光層を第m番発光層とし(mは1以上の整数である)、
前記第m番発光層の重み平均発光波長をλとし、
前記第m番発光層で生じた光における、下記式(1)で示される前記光反射性電極で生じる位相シフトをφとし、
【数1】
(この式において、n、kは、光反射性電極と接する層の屈折率及び消衰係数をそれぞれ表し、n、kは、反射層の屈折率及び消衰係数をそれぞれ表し、n、n、k及びkは、λの関数である)
前記光反射性電極から前記第m番発光層までの間を満たす媒質の平均屈折率をn(λ)とし、及び、
前記光反射性電極から前記第m番発光層までの間の距離をdとしたときに、
下記式(2)及び下記式(3)の関係が、前記複数の発光層において満たされ
【数2】
(この式において、lは0以上の整数である)
【数3】
前記光拡散層は、前記基板側から第1透明材料層と第2透明材料層とを有し、
前記第1透明材料層と前記第2透明材料層との界面には周期がλ〜20λである凹凸構造が形成されていることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記光反射性電極と第1番発光層との間に、電荷輸送性媒体にドナー物質がドーピングされたキャリア輸送層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記光反射性電極は陰極を構成し、
前記光透過性電極は陽極を構成し、
前記光反射性電極と第1番発光層との間に、前記第1番発光層側から電荷反転層と正孔輸送層とがこの順で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記凹凸構造は、複数の凸部又は凹部が面状に配置された構造であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記複数の凸部又は凹部は、前記基板の表面に垂直な方向から見たときに内接する楕円の軸長さ又は内接円の直径が、0.4〜4μmの範囲であることを特徴とする、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記複数の凸部又は凹部は、格子状の区画に一区画分の凸部又は凹部がランダムに割り当てられて配置されていることを特徴とする請求項又はに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記凸部は、前記格子状の区画に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置され、
前記凹部は、前記格子状の区画に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置されていることを特徴とする、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記基板の前記光拡散層とは反対側の表面に光取り出し層が設けられていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置に関し、より詳しくは、複数の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下「有機EL素子」ともいう)として、透明基板の表面に、透明電極からなる陽極、ホール輸送層、発光層、電子注入層、陰極が順に積層された構造のものが一般的に知られている。有機EL素子では、陽極と陰極の間に電圧を印加することによって、発光層で発した光が、透明電極、透明基板を通して外部に取り出される。
【0003】
有機EL素子の光取り出し効率については、一般に20〜30%程度と言われている。これは、いわゆる発光として有効に活用できていない光が全発光量の70〜80%を占める、ということである。屈折率の異なる界面での全反射、材料による光の吸収などによって、発光を観測する外界へ有効に光を伝播できないためである。したがって、光取り出し効率向上による有機EL素子効率向上の期待値は、非常に大きい。
【0004】
光取り出し効率を向上するための試みがこれまで非常に多くなされている。中でも特に、有機層から基板層への到達光を増やす試みが多くなされている。一般的に、有機層の屈折率が約1.7以上であり、また通常、基板として用いられるガラス層の屈折率が約1.5であるため、有機層とガラス層の界面で発生する全反射ロス(薄膜導波モード)は、全放射光の約50%に達する。この有機層−基板間の全反射ロスを低減することで、有機EL素子の光取り出し効率を大きく改善することが可能である。
【0005】
光取り出し効率を高めるための手段の一つとして干渉作用を利用することが考えられる。例えば、特許文献1(日本国特開2004−165154号公報)では、位相のずれを考慮した干渉作用を利用して、光の成分が極大値になるように光学膜厚を調整することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機EL素子においては、上記の特許文献に記載されたような光学設計でも光取り出し効率は十分に高められているとは言えず、これよりもさらに光取り出し性を高める構造が求められている。
【0007】
ところで、近年、有機EL素子のさらなる高輝度化、高効率化、長寿命化が大きな課題とされており、複数の発光層を積層させた構造の有機EL素子が注目されている。例えば、マルチユニット構造の有機EL素子では、中間層とよばれる電気伝導層を介して複数の発光層を直列に接続することで、有機エレクトロルミネッセンスの特長である薄型光源のメリットを確保しつつ、高輝度、高効率、長寿命を実現することが可能である。同じ輝度を得るための電流密度を減らすことにより、高効率化、長寿命化を達成することができるのである。しかし、高輝度化・長寿命化でメリットのある複数の発光層を有する構造においては、発光位置が複数になったり発光波長が複数になったりするため、特許文献1の方法で好適な膜厚条件にすることがさらに難しくなる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、光取り出し効率が高く、視野角依存性の抑制された有機EL素子及び照明装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、光透過性を有する基板と、この基板の表面に設けられた光拡散層と、この光拡散層の表面に設けられた光透過性電極と、この光透過性電極と対をなす光反射性電極と、前記光透過性電極と前記光反射性電極との間に離間して設けられた複数の発光層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層のうち、前記光反射性電極から第m番目に配置された前記発光層を第m番発光層とし(mは1以上の整数である)、
前記第m番発光層の重み平均発光波長をλとし、
前記第m番発光層で生じた光における、下記式(1)で示される前記光反射性電極で生じる位相シフトをφとし、
【0010】
【数1】
【0011】
(この式において、n、kは、光反射性電極と接する層の屈折率及び消衰係数をそれぞれ表し、n、kは、反射層の屈折率及び消衰係数をそれぞれ表し、n、n、k及びkは、λの関数である)
前記光反射性電極から前記第m番発光層までの間を満たす媒質の平均屈折率をn(λ)とし、及び、
前記光反射性電極から前記第m番発光層までの間の距離をdとしたときに、
下記式(2)及び下記式(3)の関係が、前記複数の発光層において満たされることを特徴とする。
【0012】
【数2】
【0013】
(この式において、lは0以上の整数である)
【0014】
【数3】
【0015】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、好ましくは、前記光反射性電極と第1番発光層との間に、電荷輸送性媒体にドナー物質がドーピングされたキャリア輸送層が形成されている。
【0016】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、好ましくは、前記光反射性電極は陰極を構成し、前記光透過性電極は陽極を構成し、前記光反射性電極と第1番発光層との間に、前記第1番発光層側から電荷反転層と正孔輸送層とがこの順で形成されている。
【0017】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では前記光拡散層は、前記基板側から第1透明材料層と第2透明材料層とを有し、前記第1透明材料層と前記第2透明材料層との界面には周期がλ〜20λである凹凸構造が形成されている。
【0018】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、好ましくは、前記凹凸構造は、複数の凸部又は凹部が面状に配置された構造である。
【0019】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、好ましくは、前記複数の凸部又は凹部は、前記基板の表面に垂直な方向から見たときに内接する楕円の軸長さ又は内接円の直径が、0.4〜4μmの範囲である。
【0020】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、好ましくは、前記複数の凸部又は凹部は、格子状の区画に一区画分の凸部又は凹部がランダムに割り当てられて配置されている。
【0021】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、好ましくは、前記凸部は、前記格子状の区画に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置され、前記凹部は、前記格子状の区画に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置されている。
【0022】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子では、好ましくは、前記基板の前記光拡散層とは反対側の表面に光取り出し層が設けられている。
【0023】
本発明に係る照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プラズモンロスを考慮した光干渉作用を利用することによって外部に出射される光を効率よく増やすことができる。その結果、光取り出し効率が高く、視野角依存性が抑制された発光特性の優れた有機エレクトロルミネッセンス素子及び照明装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図2】有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図3】有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図4】有機エレクトロルミネッセンス素子のモデルを示す概略断面図である。
図5】プラズモンロスを説明するグラフである。
図6】プラズモンロスを考慮した設計を説明する解析結果である。
図7】第2番発光層の位置を変化させたときの光取り出し効率及び色差の変化を示すグラフである。
図8】第1番発光層の位置を変化させたときの光取り出し効率及び色差の変化を示すグラフである。
図9】有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図10】有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図11図11図11A及び図11Bから構成される。図11Aは、凹凸構造の一例を説明する説明図であり、平面図を示す。図11Bは、凹凸構造の一例を説明する説明図であり、断面図を示す。
図12図12図12A及び図12Bから構成される。図12Aは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図12Bは、凹凸構造の一例を示す平面図である。
図13図13図13A図13Cから構成される。図13Aは、凹凸構造のブロック(区画)の配置を説明する説明図である。図13Bは、凹凸構造のブロック(区画)の配置を説明する説明図である。図13Cは、凹凸構造のブロック(区画)の配置を説明する説明図である。
図14図14図14A及び図14Bから構成される。図14Aは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図14Bは、凹凸構造の平均ピッチの計算に用いる楕円を説明する説明図である。
図15】凹凸構造の一例を示す平面図である。
図16図16図16A図16Cから構成される。図16Aは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図16Bは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図16Cは、凹凸構造の一例を示す平面図である。
図17図17図17A図17Cから構成される。図17Aは、凹凸構造の構造サイズと光取り出し効率との関係を示すグラフである。図17Bは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図17Cは、凹凸構造の一例を示す平面図である。
図18図18図18A図18Dから構成される。図18Aは、凹凸構造の凹凸高さと光取り出し効率との関係を示すグラフである。図18Bは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図18Cは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図18Dは、凹凸構造の一例を示す平面図である。
図19】有機EL素子の光強度を測定する方法の一例を示す断面図である。
図20図20図20A図20Cから構成される。図20Aは、凹凸構造の違いによる光強度の変化を示すグラフである。図20Bは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図20Cは、凹凸構造の一例を示す平面図である。
図21図21図21A図21Dから構成される。図21Aは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図21Bは、凹凸構造をフーリエ変換した様子を示している。図21Cは、凹凸構造の一例を示す平面図である。図21Dは、凹凸構造をフーリエ変換した様子を示している。
図22】凹凸構造の一例を示す平面図である。
図23】照明装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の第1実施形態を示す。図2は、有機EL素子の第2実施形態を示す。図3は、有機EL素子の第3実施形態を示す。有機EL素子の各実施形態の共通事項を中心にしながら各実施形態について説明する。
【0027】
有機EL素子は、光透過性を有する基板1と、光拡散層2と、光透過性電極3と、光反射性電極4と、複数の発光層Eとを備えている。光拡散層2は、基板1の表面に設けられている。光透過性電極3は、光拡散層2の表面に設けられている。光反射性電極4は、光透過性電極3と対をなす電極である。複数の発光層Eは、光透過性電極3と光反射性電極4との間に設けられている。複数の発光層Eは、互いに離間して設けられている。図1〜4等において「E」は発光層を示す。
【0028】
第1実施形態及び第3実施形態では、発光層Eは二つ設けられている。第2実施形態では、層構成の途中を省略しており、発光層Eが複数(二以上又は三以上)設けられていることを説明している。これらはマルチユニット構造の有機EL素子である。第2実施形態は発光層Eの数を一般化したものと言える。
【0029】
第3実施形態は、第1実施形態の変形例であり、基板1の光拡散層2とは反対側の表面に光取り出し層7が設けられている。
【0030】
発光層Eの番号付けを一般化した第2実施形態を用いて説明する。もちろん、以下の説明は各実施形態においても適用される。
【0031】
本明細書では、発光層Eのうち、光反射性電極4から第m番目に配置された発光層Eを第m番発光層Emとして表す。このとき、mは1以上の整数である。例えば、第1番目の発光層Eは第1番発光層E1として表される。また、第2番目の発光層Eは第2番発光層E2として表される。
【0032】
第m番発光層Emの重み平均発光波長をλとして表す。例えば、第1番発光層E1の重み平均発光波長はλとして表される。また、第2番発光層E2の重み平均発光波長はλとして表される。
【0033】
第m番発光層Emで生じた光における、下記式(1)で示される光反射性電極4で生じる位相シフトをφとして表す。
【0034】
【数4】
【0035】
この式において、n、kは、光反射性電極と接する層の屈折率及び消衰係数をそれぞれ表し、n、kは、反射層の屈折率及び消衰係数をそれぞれ表し、n、n、k及びkは、λの関数である。
【0036】
例えば、第1番発光層E1の光における位相シフトはφとして表される。また、第2番発光層E2の光における位相シフトはφとして表される。
【0037】
光反射性電極4から第m番発光層Emまでの間を満たす媒質の平均屈折率をn(λ)として表す。例えば、光反射性電極4から第1番発光層E1までの間を満たす媒質の平均屈折率はn(λ)として表される。また、光反射性電極4から第2番発光層E2までの間を満たす媒質の平均屈折率はn(λ)として表される。平均屈折率は発光波長に依存するため、発光波長ごとに屈折率が算定される。
【0038】
光反射性電極4から第m番発光層Emまでの間の距離をdとして表す。例えば、光反射性電極4から第1番発光層E1までの間の距離はdとして表される。また、光反射性電極4から第2番発光層E2までの間の距離はdとして表される。距離dは、物理的な距離を表す。
【0039】
距離dについては、
< d < d < ・・・
の関係が満たされる。
【0040】
有機EL素子においては、下記式(2)の関係が第m番発光層Emにおいて満たされる。
【0041】
【数5】
【0042】
この式において、lは0以上の整数である。
【0043】
有機EL素子においては、上記式(2)の関係が、複数の発光層Eにおいて満たされる。このとき、複数の発光層Eの全てにおいて満たされることが好ましい。なお、「l」はLの小文字であり、数字の1とは区別される。
【0044】
さらに、有機EL素子においては、下記式(3)の関係が、第m番発光層Emにおいて満たされる。
【0045】
【数6】
【0046】
上記の式(3)の関係は、複数の発光層Eの全てにおいて満たされることが好ましい。
【0047】
上記式(2)及び式(3)の関係式は、後述するように、プラズモンロスの影響を考慮した光干渉作用を利用している。そのため、外部に出射される光を効率よく増やすことができる。その結果、光取り出し効率が高く、視野角依存性が抑制された発光特性の優れた有機EL素子を得ることができる。
【0048】
ここで、媒質の平均屈折率は、下記式(4)によって求められる。
【0049】
【数7】
【0050】
ただし、上式においては、dは媒質を構成する個々の層の厚みを示し、nは媒質を構成する個々の層の屈折率を示す。mは1以上の整数であり、個々の層に順番に付けられた番号を示す。すなわち、この式でいうd、n及びmは、式(1)〜(3)とは異なるものである。
【0051】
上式で示すように、媒質の平均屈折率は、発光材料のスペクトルの重み平均発光波長λにおける媒質の屈折率の平均値ということができる。いわば、厚さで重み付けした屈折率の平均値である。
【0052】
ここで、重み平均発光波長とは、発光波長の強度のスペクトル(発光スペクトル)を測定して得たスペクトル強度の積分を用いて算出される波長であり、正確には、下記の式(5)で表される。
【0053】
【数8】
【0054】
この式において、λは波長(nm)であり、P(λ)は各波長におけるスペクトル強度を表す。
【0055】
位相シフトについて説明する。有機EL素子は発光層の膜厚が数百nmと比較的薄く、光の波長(媒質内を伝播する波長)と非常に近いため、有機EL素子内部で薄膜干渉が生じる。その結果、有機層の膜厚によって内部の発光が干渉し、出射する光の強度が大きく増減する。出射する光の強度を最大限に高めるためには、発光層から光取り出し側へ直接向かう光(直接光)と、発光層から反射性の電極へ向かった後にこの電極で反射されてから光取り出し側へ向かう光(反射光)とが、干渉しあって強めあうようにする。光が反射層において反射すると、その前後で位相シフトπが生じる。そこで、理想モデルにおいては、発光源と反射層の表面との間の膜厚dに屈折率nを乗じて導出される光学膜厚(光学的距離)が、光の波長λの1/4πの奇数倍と略等しくなるように設計される。これにより、基板から正面方向に出射する光の成分量が極大値となる。いわゆるキャビティ設計である。この方法は、光が内部で増幅されることを意味するわけではなく、光の方向を変更させ、特定の方向、例えば、大気中へ光を取り出しやすい正面方向への光を強めることを意味する。しかしながら、実際には、光の位相シフトはπとはならず、有機層及び反射層における屈折、消衰が関わってくることとなり、より複雑な挙動を示す。このときの光の位相シフトをφと表している。有機EL素子ではこの位相シフトφを用いて素子を設計することができる。
【0056】
発光層Eと光反射性電極4との間の距離dを考える際、本明細書では、特に言及のない限り、発光層Eはその厚みの中心の位置を基準とし、光反射性電極4は発光層E側の表面を基準とする。すなわち、距離dは、より正確に言えば、光反射性電極4の発光層E側の表面から、発光層Eの厚み中央までの距離ということができる。光反射性電極4の表面を基準とすることは、光が反射層の表面で反射することから理解できるであろう。一方、発光層Eについては、厳密には電子とホールとの再結合点とすることが好ましいが、再結合点は材料や素子の特性により変化し得るし、また、発光層Eの厚みは全体に占める割合としては薄いことが多いので、基準の位置を発光層Eの中央と考えてもよいのである。もちろん、再結合点が分かる場合、再結合点を距離dの基準としてもよい。例えば、再結合点は、厚みの中央の他に、表面(光反射性電極4側の表面又は光透過性電極3側の表面)などとなる可能性がある。
【0057】
電極と発光層Eとの間、及び、複数の発光層Eの間には、有機EL素子を駆動可能にさせる適宜の層が形成される。例えば、電荷輸送層5や中間層6である。図1図3では、電荷輸送層5及び中間層6が図示されている。電荷輸送層5は、ホール又は電子を注入したり輸送したりする層であってよい。中間層6は、電荷を発生させる層であってよい。第1から第3実施形態では、中間層6は電荷輸送層5に挟まれている。なお、発光層Eと発光層Eとの間に、バイポーラ性の層が形成される構造であってもよい。その場合、中間層6を設けずに、発光層E間の距離を離したり近づけたりすることができ、発光層Eの位置を容易に調整することができる。
【0058】
図1などで示すように、電荷輸送層5は、光反射性電極4側から、第1電荷輸送層5a、第2電荷輸送層5b、第3電荷輸送層5c、第4電荷輸送層5d、・・・、とナンバリングされる。第1電荷輸送層5aは電子輸送性の層として構成することができる。第2電荷輸送層5bはホール輸送性の層として構成することができる。第3電荷輸送層5cは電子輸送性の層として構成することができる。第4電荷輸送層5dはホール輸送性の層として構成することができる。もちろん、電荷輸送層5は、途中で電荷転換される構造であってもよい。
【0059】
ところで、本明細書では、一つの発光ユニットに一つの発光層Eが形成された素子の例を中心に説明するが、一つの発光ユニットに複数の発光層Eが積層されていてもよい。一つの発光ユニット内に、複数の発光層Eが積層される場合、発光層Eは直接接して重ねられる構造にすることができる。一つの発光ユニットが、複数の発光層Eを有する場合、発光特性の寄与(光取り出し効率及び色差)の大きい発光層Eにおいて、上記式(2)及び(3)の関係式を満たすように設計するようにできる。もちろん、全ての発光層Eで上記式(2)及び(3)を満たすことがより好ましい。
【0060】
第3実施形態では、基板1の光拡散層2とは反対側の表面に光取り出し層7が設けられている。光取り出し層7を設けると、基板1と外部(大気)との間での全反射が抑制され、より多くの光を外部に取り出すことができる。
【0061】
なお、発光層Eから光透過性電極3の基板1側の表面までの距離はDとする。距離Dに用いる発光層Eの位置の基準は、上記の距離dの場合と同じであってよく、例えば、発光層Eの厚み中央であってよい。
【0062】
[素子の設計]
有機EL素子の設計モデルにより、上記の関係式が好ましいことを説明する。
【0063】
図4は、有機EL素子の設計モデルである。この設計モデルにより、有機EL素子の好適化を行う。この有機EL素子は、基板1、光透過性電極3、発光層E、及び、光反射性電極4を備えている。発光層Eは一つであり、シングルユニットである。また、有機EL素子は、電荷輸送層5を備えている。ただし、光拡散層2は設けられていない。発光層Eを一つにし、光拡散層2を除いて単純化することにより、光を取り出す好適条件を設計することができる。
【0064】
有機EL素子の設計にあたって、光取り出し効率を高めるための一方策としてプラズモンロスを抑制することが考えられる。
【0065】
図5により、プラズモンロスを説明する。図5は、発光源と反射層との間の膜厚変化に対する光取り出し性を示すグラフである。このグラフでは光がどのモードでロスするかが表される。MODE Iは大気を示しており、外部(大気)に取り出される光の干渉を示している。また、MODE IIは基板、MODE IIIは薄膜、MODE IVはプラズモン、を示しおり、素子内部内に閉じ込められて外部に出ない光を示している。MODE Iでは、膜厚の変化により干渉の波形が見られている。そして、キャビティとして、膜厚が大きくなるにつれて、1次干渉、2次干渉が確認されている。ここで、1次干渉の膜厚ではプラズモンロスが大きくなってしまい、全体としての光取り出し性が低下するおそれがある。これは、発光層と反射層との距離が近すぎると反射層によって光が吸収されるためである。この光の吸収は入射角度が大きいほど起こるものと考えられている。そのため、プラズモンロスを抑制する2次以上の干渉を作り出すことが好ましいと考えられる。プラズモンロスの抑制作用により、効率改善が期待できる。ただし、2次干渉(セカンドキャビティ(2ndキャビティ))よりも大きくなるほど(3次干渉、4次干渉、・・・)、輻射寿命が長くなり効率が低下する可能性もある。よって、干渉の次数は小さい方がよく、例えば、5次干渉以下に設定できる。
【0066】
有機EL素子の設計では、光反射性電極4(反射層)と発光層Eとの距離に着目する。発光層Eの距離の基準点は厳密には発光再結合が起こる位置であるが、前述の通り、素子設計を容易にするために、厚みの中間位置、又は、発光層Eの表面位置であってよい。プラズモンロスを抑制するためには、反射層から発光層Eまで距離を離すことが好ましい。そこで、図4の有機EL素子モデルで、発光層と反射層Eとの距離の好適条件の設計を行った。
【0067】
図4のモデルは、単色の発光を示すシングルユニットの素子である。重み平均発光波長λは600nmとした。発光層Eが発する光がどのモードに存在するかを、発光層Eと光反射性電極4との間の距離dをパラメータとして検討した。
【0068】
図6は、発光層Eと光反射性電極4との間の距離dを変化させたときの発光層Eから生じる光の配分の変化を示すグラフである。図6では、各モードの配分が比率で示されている。図6から、プラズモンロスは発光層Eが光反射性電極4に近づけば近づくほど強く現れていることが確認される。すなわち、距離dが小さい領域では、発光層Eの伝搬光が金属表面のプラズモンに結合するため、プラズモンモードが促進し、光にならない成分が多くなる。一方、発光層Eが光反射性電極4から離れるにしたがって、プラズモンロスの影響が徐々に弱まっていることが分かる。ここで、発光層Eと光反射性電極4との間の距離について、波長及び屈折率との関係に着目する。すると、グラフの横軸の下方に表示した数値で示すように、およそ波長(λ)を屈折率(n)で除した値(λ/n)の0.6倍以上の距離を離すとプラズモンロスの作用はきわめて少なくなっている。このときの屈折率は、光反射性電極4と発光層Eとの間を満たす媒質の平均屈折率である。この結果は、モデルの一例であるが、波長及び屈折率が異なる場合でも同様の結果が示される。よって、上記に示した式(3)の関係が好ましいことが示されることになる。
【0069】
なお、プラズモンモードは発光層Eから発した光(P偏光成分)の広角度成分が特に寄与するため、もともと外に取り出される低角度成分(大気到達光)では影響をあまり受けない。そのため、プラズモンロスを抑制して光取り出し効率を上げるためには、基板モード及び薄膜モードの光(入射角が大きく全反射しやすい光)を取り出すことが前提となる。したがって、実際の有機EL素子では、光拡散層2が設けられることが求められる。光拡散層2を設けることにより、プラズモンロス抑制作用が有効に発揮する。光拡散層2は、有機層と基板との界面での光の角度を変化させることができるため、光拡散層2によって、有機層と基板の界面で全反射する成分を抑制し、薄膜モードを取り出すことができるからである。
【0070】
ところで、上記の特許文献1の方法は、正面方向の光の取り出し量を極大化しようとするものであり、プラズモンロスが考慮されておらず、かえって光が取り出しにくくなる場合がある。
【0071】
有機EL素子の更なる好適化にあたっては、発光素子の特性として、効率(光取出し効率)に加えて、視野角による色差(u’v’座標のズレ)に着目している。色差のズレとは、図4で示すように、正面方向で取り出される光と、角度θで取り出される光との色のズレである。有機EL素子は、発光層Eから直接出射する光と光反射性の電極で反射する光とが干渉することで特定の出射方向への光が増減し、配光パターンが変化する。光拡散層や基板へ到達する配光パターンは効率や色差に直接影響を及ぼす。したがって、各発光色の発光層Eと反射層との距離dが、効率と色差とを決定する重要なファクターとなる。そこで、本設計では、主に発光位置と反射層との距離を詳細に制御することで、好ましい効率と色差を実現する配光パターンを得るようにしている。
【0072】
マルチユニット構造の有機EL素子においては、二つ以上の発光層Eを備えるため、特に視野角特性(色度のズレの抑制)が重要となる。そこで、マルチユニットの有機EL素子の視野角特性を、色差(Δu’v’)を用いて確認した。このΔu’v’は、色度のu’v’座標が正面から視野角80°の範囲において平均値からのずれた量の2乗平均(Δu’^2+Δv’^2)^(1/2)の最大値を意味している。ここで、「^」は乗数を示す記号である。EnergyStarの規格(Program Requirements for Solid State Lighting Luminaires,Eligibility Criteria - Version 1.1, 2008)によれば、Δu’v’<0.007にすることが照明品質として好ましい。
【0073】
まず、マルチユニットの有機EL素子を試作した。層構成は、図1に示す第1実施形態の層構成にした。全体の発光色は、白色とした。白色発光は、照明用途などにおいて重要である。第1番発光層E1の重み平均発光波長(λ)は600nmとした。第1番発光層E1の発光色は橙色である。第2番発光層E2の重み平均発光波長(λ)は470nmとした。第2番発光層E2の発光色は青色である。第1番発光層E1と光反射性電極4との間を満たす媒質の平均屈折率(n)は1.80とした、消衰係数(k)は0.0005とした。この屈折率及び消衰係数は波長λにおける平均値である。第2番発光層E2と光反射性電極4との間を満たす媒質の平均屈折率(n)は1.80、消衰係数(k)は0.0005とした。この屈折率及び消衰係数は波長λにおける平均値である。また、光反射性電極4をAgで構成した。この光反射性電極4の、波長λにおける屈折率(n)は、0.119であり、消衰係数(k)は3.51であった。また、光反射性電極4の、波長λにおける屈折率(n)は、0.135であり、消衰係数(k)は2.66であった。光透過性電極3にはITOを用いた。光透過性電極3を陽極として構成し、光反射性電極4を陰極として構成した。基板1はガラス基板(屈折率1.5)を用いた。この有機EL素子では、プラズモンロスの影響の大きい斜め方向の光を活用するため、光拡散層2を基板1と光透過性電極3との間に挿入した。光拡散層2の導入により、光の進行方向が変更されるため、斜め方向の光をより多く取り出すことができる。
【0074】
ここで、距離dの好適化にあたり、ファクターAを導入する。本明細書では、キャビティからのずれについて、下記式(6)で規定するファクターAを用いる。
【0075】
【数9】
【0076】
ファクターAは、光学距離(n×d)において、距離が1次干渉の距離から波長の何倍ずれているかを表す数値である。ファクターAは、1次干渉の距離からの距離のズレを表すファクターとして表される。以下に示すグラフでは、ファクターAを横軸にしている。
【0077】
1次干渉の条件となる距離dは、下記式(7)によって示される。
【0078】
【数10】
【0079】
1次干渉では、A=0である。よって、上記の式では、ファクターA=0の場合の距離dとしてd(0)と規定されている。上記の式では、第1番発光層E1の距離dを規定しているが、第2番以降の発光層Eも同様に算出できる。
【0080】
ファクターAは、距離d(A)、d(0)を用いて、次の式(8)で表される。
【0081】
【数11】
【0082】
すなわち、d(A)を求める式として、次の式(9)が導出される。
【0083】
【数12】
【0084】
同様に、d(A)を求める式として、次の式(10)が導出される。
【0085】
【数13】
【0086】
位相差シフトφは、屈折率及び消衰係数を用いて、式(1)から定数として得られる。
【0087】
上記の素子では、位相差シフトφは、
φ(λ) = 0.7π
φ(λ) = 0.58π
である。
【0088】
ファクターAは、1次干渉ではA=0となり、2次干渉ではA=0.5となり、3次干渉ではA=1となる。すなわちα次の干渉ではA=0.5×(α−1)となる。したがって、ファクターAと距離dとの関係が導かれる。
【0089】
上記の素子において、第1番発光層E1を1次干渉で設定すると、式(7)に、φ=0.7π、λ=600、n=1.80を代入して、
(0)=58nm
が得られる。
【0090】
上記の素子において、第1番発光層E1を2次干渉で設定すると、式(9)に、φ=0.7π、λ=600、n=1.80、A=0.5を代入して、
(0.5)=225nm
が得られる。
【0091】
上記の素子において、第2番発光層E2を2次干渉で設定すると、式(10)に、φ=0.58π、λ=470、n=1.80、A=0.5を代入して、
(0.5)=168nm
が得られる。
【0092】
上記の素子において、第2番発光層E2を3次干渉で設定すると、式(10)に、φ=0.58π、λ=470、n=1.80、A=1を代入して、
(1)=300nm
が得られる。
【0093】
同様に、第2番発光層E2の4次干渉では、d(1.5)=430nmが得られる。
【0094】
このように、ファクターAを考慮して発光層Eの位置の好適化を図ることができる。
【0095】
上記式(2)の関係式を、2次干渉及び3次干渉に展開した関係式を以下に示す。
【0096】
第1番発光層E1の2次干渉の式は、l=1を代入して、次の式(11)となる。
【0097】
【数14】
【0098】
第2番発光層E2の3次干渉の式は、l=2を代入して、次の式(12)となる。
【0099】
【数15】
【0100】
4次以降の干渉の式も同様に導出される。すなわち、α次の干渉を利用する場合には、l=α−1を代入すればよい。
【0101】
図7及び図8は、上記のマルチユニット構造の有機EL素子において、発光層Eの位置を変化させたときの光取り出し効率及び色差の変化を示すグラフである。
【0102】
図7は、第1番発光層E1を2次干渉の位置(d(0.5)=225nm)に固定し、第2番発光層E2の位置を変化したときのグラフである。第2番発光層E2は3次干渉(A=1)の付近において光特性が向上されると見込まれることから、A=0.9〜1.4の範囲で検討した。この素子では、上記式(3)の関係が満たされている。図7のグラフから、A=0.95〜1.3の範囲において光取り出し効率が高く、色差が低いことが確認された。
【0103】
図8は、第2番発光層E2を4次干渉の位置(d(1.5)=430nm)に固定し、第1番発光層E1の位置を変化したときのグラフである。第1番発光層E1は2次干渉(A=0.5)の付近において光特性が向上されると見込まれることから、A=0.4〜0.9の範囲で検討した。この素子では、上記式(3)の関係が満たされている。図8のグラフから、A=0.45〜0.8の範囲において光取り出し効率が高く、色差が低いことが確認された。
【0104】
これらの結果から、発光層Eの位置について、干渉の次数(キャビティの次数)に応じて、式(2)の関係式を満たすことが好ましいことが分かる。
【0105】
ところで、図7及び図8のグラフでは、干渉位置で合わせたA=0.5やA=1といった場合よりも、Aがこれらの値からずれたところで、ピークの極大値を示している。その理由は、上記の素子では光拡散層2を用いて基板モードまたは薄膜モードを取り出していることに起因するものと考えられる。また、広角成分に出射した光が強め合ったキャビティ効果が相対的に多くなるため、正面方向で干渉条件を合わせたA=0.5やA=1といった条件が必ずしも最適でないことを示唆している。したがって、上記の式(2)においても、干渉の位置(A=0.5やA=1)からは、範囲の中心がずれるようにして範囲が設定されている。
【0106】
有機EL素子の発光層Eの位置の好適化についてさらに説明する。
【0107】
表1は、第1番発光層E1及び第2番発光層E2の位置を変化させたマルチユニット構造の有機EL素子の光取り出し効率及び色差の結果である。有機EL素子は、橙発光層と青発光層とを有するものである。
【0108】
【表1】
【0109】
設計例1、2は実施例であり、設計例3、4は比較例である。設計例1、2では、二つの発光層Eを離間させている。設計例3、4では、二つの発光層Eを隣接して形成している。
【0110】
設計例3では、第1番発光層E1が1次干渉になるように設計されている。そのため、干渉効果による光取り出し性の向上は考慮されている。ただし、反射層と発光点の間の距離は小さく、式(3)の関係を満たさない。設計例3を基準に他の設計例を比較する。
【0111】
設計例4は、第1番発光層E1が2次干渉になるように設計されている。そのため、式(3)の関係は満たされている。よってプラズモンロスの抑制が考慮されている。また、式(2)の関係も満たす。しかしながら、第1番発光層E1と第2番発光層E2は、直接接して形成されており、離間されていない。そのため、設計例4は、設計例3に比べて、光取り出し効率が若干向上する傾向があるものの、色差が大きくなっている。
【0112】
設計例1は、第1番発光層E1が2次干渉になるように設計され、第2番発光層E2が3次干渉になるように設計されている。そのため、式(2)及び式(3)の関係は満たされている。設計例1では、設計例3に比べて光取り出し効率が向上し、色差も格段に抑制されている。また、設計例4との比較から、発光層Eを離間すると、光取り出し効率が向上するとともに、色差が格段に改善されることが示唆される。
【0113】
設計例2は、第1番発光層E1が2次干渉からややずれてA=0.6となって設計されている。第1番発光層E1の干渉からのずれをAの差分としてΔAで表すと、ΔA=0.1となる。また、設計例2は、第2番発光層E2が3次干渉からややずれてA=1.15となって設計されている。第2番発光層E2の干渉からのずれはΔA=0.15となる。設計例2では、設計例3に比べて光取り出し効率が格段に向上し、色差も格段に抑制されている。このように発光層Eを干渉の位置から距離が大きくなる方向にややずらすことが好ましいことが示唆されている。例えば、式(2)を満たす範囲において、ΔA≧0.05にしてもよいし、さらにΔA≧0.1にしてもよい。
【0114】
複数の発光層Eを有する場合、複数の発光層Eを2次以上の干渉位置で調整しようとすると、発光波長の異なる発光層Eが同時に好適条件を満たすことは難しくなるおそれがある。また、発光層Eが積層されると発光点のずれが生じる場合がある。また、色差が大きくなる可能性がある。そのため、発光層Eを離間させたマルチユニット構造にすることにより、好適化を容易に図ることができる。
【0115】
[素子設計から導かれる好適な構造例1]
上記の素子設計により作製された有機EL素子は、第1番発光層E1と光反射性電極4との間の距離が大きくなる可能性がある。光反射性電極4と第1番発光層E1との間の層(主に第1電荷輸送層5a)の電荷の輸送性が乏しい場合、電荷輸送層5の厚みが厚くなると、駆動電圧が大きくなってしまうおそれがある。特に、光反射性電極4が陰極の場合、電荷輸送層5は電子輸送層を有することになり、この層の電子の輸送性が乏しいと、電圧が大きくなってしまう。
【0116】
そこで、構造例1として、図9に示す有機EL素子を第4実施形態として例示する。この有機EL素子では、光反射性電極4と第1番発光層E1との間に、電荷輸送性媒体にドナー物質がドーピングされたキャリア輸送層8が形成されている。第1電荷輸送層5aのうちのキャリア輸送層8以外の部分は、ドナー物質がドーピングされていない電荷輸送媒体の層であり、この層を非ドープ層8aと定義する。すなわち、第1電荷輸送層5aは、キャリア輸送層8と非ドープ層8aとによって構成される。キャリア輸送層8を形成することにより、電荷の輸送性を高めることができるため、駆動電圧を低下させることができる。
【0117】
構造例1では、キャリア輸送層8は光反射性電極4側に形成され、非ドープ層8aは第1番発光層E1側に形成されている。構造例1のように、キャリア輸送層8は、発光層Eと接していないことが好ましい。ドープされたキャリア輸送層8と発光層Eとの界面ではエネルギー消光が生じることがあるためである。非ドープ層8aを第1番発光層E1に隣接させることにより、消光の影響を低減することができる。
【0118】
電荷輸送媒体が電子輸送性の場合、ドナー物質としてはn型のドナーが用いられる。電荷輸送媒体がホール輸送性の場合、ドナー物質としてはp型のドナーが用いられる。
【0119】
キャリア輸送層8の厚みは、発光層Eにおけるキャリアバランス調整のために適宜調整され得るものであるが、電荷の輸送性を高めるためには厚い方が好ましい。例えば、第1番発光層E1と光反射性電極4との間の厚み(第1電荷輸送層5aの厚み)の10%以上の厚みで、キャリア輸送層8を設けることができる。電圧低減の観点からは、さらに厚みを厚くすることが好ましく、第1電荷輸送層5aの厚みの50%以上の厚みにすることが好ましく、さらに90%以上にすることが好ましい。ただし、前記の通り、発光層Eとキャリア輸送層8とは接しない方が好ましいため、例えば、少なくとも5%分の非ドープ層8aを確保するとして、キャリア輸送層8の厚みは第1電荷輸送層5aの厚みの95%以下にすることができる。
【0120】
ドープ濃度は、キャリアバランスによって調整されるが、例えば1〜30%程度であってよい。ドープ濃度がこの範囲になることにより、キャリア輸送性を高く得ることができるとともに、ドーパントの拡散などの悪影響を抑制することができる。
【0121】
構造例1においては、光反射性電極4を陰極として構成し、光透過性電極3を陽極として構成することができる。この場合、第1電荷輸送層5aは電子輸送性の媒体で形成される。すなわち、キャリア輸送層8及び非ドープ層8aは電子輸送性を有する。そして、ドナーとしてn型のドナーが用いられる。n型ドナーとしては、Li、Scなどのアルカリ金属を用いることができる。また、米国特許5093698号に開示されているような電子輸送性のドナー分子を用いてもよい。これらのドナーをドープすることにより、高輸送性の電子輸送層を得ることができる。
【0122】
構造例1においては、光反射性電極4を陽極として構成し、光透過性電極3を陰極として構成することもできる。この場合、第1電荷輸送層5aはホール輸送性の媒体で形成される。すなわち、キャリア輸送層8及び非ドープ層8aはホール輸送性(正孔輸送性)を有する。そして、ドナーとしてp型のドナーが用いられる。p型ドナーとしては、F4−TCNQ、FeCl、SbClなどが例示される。また、塗布型のpドープ層(PEDOT、PANI、PPYなどを溶解したPSSなど)で形成してもよい。塗布型の場合、厚みを厚くして塗布することによりキャリア輸送層8を形成することができる。
【0123】
表2は、光反射性電極4で陰極を構成した場合の有機EL素子において、キャリア輸送層8を設けた場合と設けていない場合を比較した結果を示している。第1電荷輸送層5aの厚みは200nmとしている。
【0124】
素子例A1は、第1電荷輸送層5aを非ドープ型の電子注入層LiFと電子輸送層とで構成した例である。素子例A2及びA3は、第1電荷輸送層5aをキャリア輸送層8(nドープ電子注入層)と非ドープ層8a(電子輸送層)とで構成した例である。素子例A2と素子例A3では、キャリア輸送層8の厚みが異なっている。表2から、キャリア輸送層8をより厚く設けることにより、電圧が低下し、光取り出し効率が向上することが確認される。
【0125】
【表2】
【0126】
[素子設計から導かれる好適な構造例2]
上記の素子設計により作製された有機EL素子から導かれる構造例2として、図10に示す有機EL素子を第5実施形態として例示する。この有機EL素子では、光反射性電極4は陰極を構成し、光透過性電極3は陽極を構成する。そして、光反射性電極4と第1番発光層E1との間に、第1番発光層E1側から電荷反転層9と正孔輸送層14とがこの順で形成されている。すなわち、第1電荷輸送層5aは、電荷反転層9と正孔輸送層14とを有する。さらに、第1電荷輸送層5aは、電荷反転層9よりも第1番発光層E1側に電子輸送層13を有することが好ましい。図10の例では、第1電荷輸送層5aは、正孔輸送層14と電荷反転層9と電子輸送層13とによって構成されている。電荷を反転させることにより、電子輸送層13よりも一般的にキャリア輸送性の高い正孔輸送層14によって電荷を移動させることができる。そのため、駆動電圧を低くすることが可能になる。
【0127】
ここで、正孔輸送層14を伝達するキャリアはホールであるが、陰極(光反射性電極4)の陰性に引かれてホールが陰極に到達するため、光反射性電極4は実質的に陰極として機能することができる。
【0128】
電荷反転層9は、陰極(光反射性電極4)側から正孔引き抜き層9aとブロッキング層9bとを有する複層構造にすることができる。正孔引き抜き層9aを設けることにより、正孔を移動させることができる。ブロッキング層9bを設けることにより、電子が陰極側に流れることをブロックして、実質的に電子を発光層E側に送ることができる。ブロッキング層9bは絶縁材料で形成することができる。ただし、完全に電気を通さないのではなく、正孔を発光層E側から引き抜くとともに、電子が陰極側に流れない程度の絶縁性であるようにする。電荷反転層9の材料は既知の材料を用いることができる。
【0129】
構造例2では、正孔輸送層14は、電荷反転層9及び電子輸送層13よりも厚みが厚いことが好ましい。特に、この例では、実質的に正孔輸送層14の輸送性によってキャリア輸送するので、正孔輸送層14の厚みは、第1番発光層E1と光反射性電極4との間の厚み(第1電荷輸送層5aの厚み)の50%以上の厚みが好ましく、70%以上の厚みがさらに好ましい。ただし、電荷反転層9と電子輸送層13との厚みを確保することが求められるので、正孔輸送層14の厚みは、第1電荷輸送層5aの厚みの90%以下にすることができる。電荷反転層9は、電荷を反転する機能を有する範囲で厚みを調整することができる。電荷反転層9の厚みは、例えば、第1電荷輸送層5aの厚みの5〜30%の範囲にすることができる。また、電子輸送層13の厚みは、例えば、第1電荷輸送層5aの厚みの5〜30%の範囲にすることができる。
【0130】
なお、光反射性電極4で陽極を構成し、光透過性電極3で陰極を構成した素子においても、電荷反転層9を設けて電荷を反転させてキャリア輸送することも可能である。ただし、通常、電子輸送層13よりも正孔輸送層14の方がキャリア輸送性が高いので、電荷反転層9を設ける形態は、光反射性電極4で陰極を構成する方が有利である。
【0131】
表3は、光反射性電極4で陰極を構成した場合の有機EL素子において、電荷反転層9を設けた場合と設けていない場合を比較した結果を示している。第1電荷輸送層5aの厚みは200nmとしている。
【0132】
素子例B1は、第1電荷輸送層5aを電子注入層LiFと電子輸送層13とで構成した例である。素子例B2は、第1電荷輸送層5aを正孔輸送層14と電荷反転層9と電子輸送層13とで構成した例である。表3から、電荷を反転させることにより、電圧が低下し、光取り出し効率が向上することが確認される。
【0133】
【表3】
【0134】
[有機EL素子の材料]
有機EL素子を構成する材料を説明する。有機EL素子は、有機EL素子を製造するために通常用いられる適宜の材料で形成され得る。
【0135】
基板1としては、ガラス基板を用いることができる。ガラスとしてはソーダガラスを用いることができる。無アルカリガラスを用いてもよいが、ソーダガラスの方が一般的に安価であり、コスト面で有利である。また、ソーダガラスを用いても、光拡散層2が有機層の下地層として存在しているため、ITO等の光透過性電極3へのアルカリ拡散の影響を抑制することができる。
【0136】
光拡散層2は、例えば、母材に散乱粒子を配合して塗布した薄膜で構成することができる。この場合、光拡散層2の母材の屈折率はなるべく高い方がよく、発光層E及び電荷輸送層5と同等以上であることが好ましい。また、光取り出し性を高めるために、なるべく光を吸収しない材料が好ましい。母材としては樹脂を用いることができる。また、母材にTiOなどの高屈折率の無機材料を混合して屈折率を高めてもよい。ただし、粒子の凝集によって突起が生じるなどすると、ショートが発生しやすくなるので、品質を損なうことのないような処理、例えばコーティング処理などがなされていることが好ましい。また、散乱粒子は母材と合わせて光を拡散する機能が発揮されるものであれば、特に制限はないが、散乱粒子は光を吸収しないことが好ましい。光拡散層2は、光拡散層2の材料を基板1の表面に塗布することによって形成することができる。材料の塗布方法はスピンコートでもよいし、スリットコート、バーコート、スプレーコート、インクジェットなどのコーティング方法を、用途や基板サイズなどに応じて用いてもよい。光拡散層2の好ましい形態については後述する。
【0137】
光拡散層2上に、発光構造を構成する有機発光積層体が形成される。有機発光積層体は、陽極と陰極との間に有機EL層が形成された構成となっている。本明細書では、有機EL層とは、陽極と陰極との間の層として定義する。有機EL層は、例えば、陽極側から、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を備える構成とすることができる。有機EL素子では、光透過性電極3を陽極として構成し、光反射性電極4を陰極として構成することができる。
【0138】
有機EL層の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、陽極とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよく、例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよい。あるいは、発光層は、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、陽極と陰極とで挟んで電圧を印加すれば発光する機能を有する有機EL層を1つの発光ユニットとして、複数の発光ユニットを光透過性および導電性を有する中間層を介して積層したマルチユニット構造を採用してもよい。マルチユニット構造とは、1つの陽極と1つの陰極との間に、厚み方向に重なる複数の発光ユニットが電気的に直列接続して配置された構造である。
【0139】
陽極は、ホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。陽極の電極材料としては、例えば、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、IZOなどの金属酸化物や、ヨウ化銅などの金属化合物、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、陽極は、基板1に設けられた光拡散層2の表面に、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。なお、陽極のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、陽極の膜厚は500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲で設定するのがよい。陽極を薄くすればするほど光の透過率が改善するが、シート抵抗が膜厚と反比例して増加するため、有機EL素子の大面積化の際に高電圧化や輝度均斉度の不均一化(電圧降下による電流密度分布の不均一化による)が発生する。このトレードオフを回避するため、メタルなどの補助配線(グリッド)を透明陽極上に形成することも一般的に有効である。材料としては導電性に優れたものが望ましく、Ag、Cu、Au,Al,Rh、Ru、Ni、Mo、Cr、Pdなどやこれらの合金、例えば、MoAlMo、AlMo、AgPdCuなどを用いるとよい。この際、メタルグリッドが遮光材料として働かないよう、グリッド部から陰極に電流が流れないような絶縁処理をグリッド部表面に施すとなおよい。また、拡散した光がグリッドで吸収される影響を最小化するため、グリッドに用いる金属はなるべく高反射率のものを用いることが好ましい。
【0140】
陽極にITOを用いる場合、ITOが結晶化する150℃以上で成膜するか、低温成膜したあとでアニール処理(150℃以上)を行うことが好ましい。結晶化させると導電性が改善し、前記トレードオフ条件が緩和する。また、構造が密になることから、光拡散層2に樹脂を用いた場合に発生するアウトガス(水など)が有機EL層に伝わるのを抑制する効果も期待される。
【0141】
ホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、陽極との強固な密着性を示す材料などがその例である。例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であってもよい。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0142】
ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0143】
発光層Eの材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層Eは、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0144】
中間層6は、各発光ユニットに対して電荷を発生させることができる材料により形成することができる。光を取り出すためには、光透過性を有することが好ましい。例えば、金属薄膜により中間層6を構成することができる。銀、アルミなどが例示される。また、有機材料を用いて中間層6を構成してもよい。
【0145】
電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0146】
電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、シリコンなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiOやSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0147】
陰極は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウムなど、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属の導電材料、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。
【0148】
有機EL素子においては、発光積層体は封止材により封止されることが好ましい。有機EL層は水などに弱いため、空気との接触を避けるため、露点管理(例えば−70℃以下)されたグローブボックス内でキャップガラスなどを用いて基板1の有機EL層側が封止される。乾燥剤等を封止の内部に含めることにより、さらに保管寿命を改善することが可能である。
【0149】
光取り出し層7は、基板1の光拡散層2とは反対側に設けることができる。これにより基板と大気の界面で生じる全反射ロスを抑制することが可能である。光取り出し層7は、接着剤で貼り付けた拡散フィルム、プリズムシート、マイクロレンズシートなどで構成することができる。あるいは、光取り出し層7は、基板1をブラストやエッチングなどで直接加工して得られる光の拡散構造(例えば微細凹凸)で形成されてもよい。
【0150】
[光拡散層]
有機EL素子では、光拡散層2を設けることによって有機層と基板との界面での全反射を抑制し、光をより多く外部に取り出せるようにしている。そのため、光拡散層2を好適化することによって、さらなる光取り出し性の向上を行うことができる。光拡散層2は、透明材料によって形成される。
【0151】
以下、光拡散層2の好ましい態様について説明する。
【0152】
光拡散層2は、基板1側から第1透明材料層21と第2透明材料層22とを有していることが好ましい。それにより、二つの層の界面で容易に凹凸構造20を形成することができる。第2透明材料層22は、基板1よりも屈折率が大きいことが好ましい。それにより、屈折率差を低減して、光取り出し効率をさらに高めることができる。第1透明材料層21と第2透明材料層22との界面に、凹凸構造20が形成されていることが好ましい。このような界面に凹凸構造20を有する複層構成の光拡散層2によって、凹凸構造20によって光が拡散されるため、光取り出し性をさらに高めることができる。
【0153】
また、光拡散層2が二つの透明材料層21,22で構成されていると、第2透明材料層22が被膜層として機能して、凹凸構造20が平坦化されるため、発光積層体を安定して設けることができる。そのため、凹凸に起因する断線不良やショート不良を抑制することができる。また、被覆層を設けた場合、高さ(深さ)の大きい凹凸構造を設けた場合であっても、発光積層体を良好に積層形成することが可能になる。このように、第2透明材料層22は平坦化層として機能することが可能であり好ましい。また、二つの透明材料層21,22は透明であり光透過性を有するため、光を有効に取り出すことができる。
【0154】
第2透明材料層22は、可視光波長領域での屈折率nが1.75以上であることが好ましい。それにより、屈折率差をより低減して、広い角度において全反射ロスを抑制して、光をより多く取り出すことができる。基板1の屈折率nは、例えば、1.3〜1.55の範囲である。第2透明材料層22の屈折率nは、有機EL層の屈折率(平均屈折率)と同等以上であることも好ましい。有機EL層の平均屈折率は、例えば、1.6〜1.9の範囲である。この平均屈折率は可視光領域の波長のものであってよい。屈折率nの上限は、特に限定されるものではないが、例えば2.2であってよく、あるいは2.0であってもよい。また、隣接する層である光透過性電極3との間の屈折率差を小さくすることが好ましい。例えば、この屈折率差を1.0以下にすることができる。
【0155】
第1透明材料層21は、可視光波長領域での屈折率nが1.3〜1.5の範囲内であることが好ましい。それにより、光をより多く取り出すことができる。第1透明材料層21と基板1との間の屈折率差は小さい方がよい。例えば、この屈折率差を1.0以下にすることができる。第1透明材料層21の屈折率nが基板1の屈折率よりも小さいことも好ましい。その場合、第1透明材料層21と基板1との界面での全反射を抑制することができる。もちろん、光拡散層2によれば、光の拡散によって光を取り出すことができるので、第1透明材料層21は基板1よりも屈折率が高くてもよい。
【0156】
基板1と第1透明材料層21とは、屈折率が低いほどよく(下限は大気と同じ1)、屈折率が1に近づくほど、基板1と大気との界面での全反射が発生しにくくなる。そのため、光取り出し層7を設けなくても光を取り出すことが可能になるため、より構造を簡単にすることができる。第1透明材料層21の光透過率は高い方がよい。例えば、第1透明材料層21は、可視光の80%以上、好ましくは90%以上の透過性を有することがよい。
【0157】
光拡散層2は、例えば、第1透明材料層21を低屈折率層として構成し、第2透明材料層22を高屈折率層として構成することができる。第1透明材料層21の可視光波長領域での屈折率nが1.3〜1.5の範囲内であり、かつ、第2透明材料層22の可視光波長領域での屈折率nが1.75以上であることがより好ましい。
【0158】
光拡散層2(第1透明材料層21及び第2透明材料層22)は、樹脂により形成されていることが好ましい。それにより、屈折率を容易に調整することができるとともに、凹凸の形成と凹凸の平坦化とを簡単に行うことができる。樹脂材料を用いた場合、比較的高屈折率のものを容易に得ることができる。また、樹脂は塗布によって層を形成することができるため、凹部に樹脂を侵入させて表面が平坦面となった層をより簡単に形成することができる。
【0159】
第1透明材料層21に用いる材料としては、アクリル系やエポキシ系などの有機樹脂が例示される。また、樹脂には、樹脂を硬化させるための添加剤(硬化剤、硬化促進剤、硬化開始剤など)が添加されていてもよい。第1透明材料層21の材料は、消衰係数kがなるべく小さいことが好ましく、理想的にはk=0(または測定不能なレベルの数値)となることが好ましい。したがって、第1透明材料層21は、好ましくは全可視波長領域で消衰係数k=0であるが、材料の膜厚によって許容される範囲が決定されるものであってよい。なお、樹脂以外の材料としては、無機系材料が例示される。例えば、スピンオンガラスを用いて第1透明材料層21を構成することができる。
【0160】
第2透明材料層22の材料としては、TiOなどの高屈折率ナノ粒子を分散した樹脂などが挙げられる。樹脂は、アクリル系やエポキシ系などの有機樹脂であってよい。また、樹脂には、樹脂を硬化させるための添加剤(硬化剤、硬化促進剤、硬化開始剤など)が添加されていてもよい。また、第2透明材料層22の材料は、消衰係数kがなるべく小さいことが好ましく、理想的にはk=0(または測定不能なレベルの数値)となることが好ましい。なお、樹脂以外の材料としては、SiNなどで構成される無機膜や、無機酸化物(SiOなど)の膜などが例示される。
【0161】
第2透明材料層22によって被覆された表面(光透過性電極3側の面)は平坦な面であることが好ましい。それにより、ショート不良や積層不良を抑制して、発光積層体をより安定して形成することができる。
【0162】
なお、第2透明材料層22を設けなくても発光性能などに影響がないのであれば、第2透明材料層22は設けられなくてもよい。第2透明材料層22を設けない場合、層の数を減らすことができるので、素子をより簡単に製造することが可能になる。例えば、第1透明材料層21の凹凸形状の高さが上層の成膜に影響を与えない程度の高さであるならば、第2透明材料層22は設けないようにしてもよい。第2透明材料層22を設けていない場合であっても、凹凸構造20で構成された光拡散層2によって光取り出し性を高めることが可能である。ただし、ショート不良や断線不良の抑制のためには上記したように第2透明材料層22を形成することが好ましい。
【0163】
第1透明材料層21及び第2透明材料層22は、その材料を塗布することにより基板1の表面に設けることができる。材料の塗布方法は、適宜のコート法を採用することができ、スピンコートを用いてもよく、あるいは、スリットコート、バーコート、スプレーコート、インクジェットなどの方法を用途や基板サイズなどに応じて採用することができる。
【0164】
第1透明材料層21と第2透明材料層22との間の凹凸構造20は適宜の方法により形成することができる。例えば、透明材料にビーズのような粒子を混合して、その粒子形状に起因して凹凸を形成することができる。また、インプリント法により凹凸構造20の凹凸を形成することも好ましい。インプリント法によれば、微細な凹凸を効率よく精度高く形成することができる。また、後述するように、凹凸区画ごとに凸部又は凹部を割り当てて凹凸を形成する場合、インプリント法を用いれば、精度高く微細な凹凸を形成することが可能になる。インプリント法によって凹凸を形成する場合、一つの凹凸区画は、プリントを行う一ドットにより構成されるものであってよい。インプリント法は微細構造を形成し得るものが好ましく、例えば、ナノインプリントと称せられる方法を用いることができる。
【0165】
インプリント法は大きく分けてUVインプリント法と熱インプリント法があり、両者のどちらを用いてもよい。例えば、UVインプリント法を用いることができる。UVインプリント法により簡単に凹凸をプリント(転写)して凹凸構造を形成することができる。UVインプリント法では、例えば、周期2μm、高さ1μmの矩形(ピラー)構造をパターニングしたNiマスターモールドから型取りしたフィルムモールドを用いる。そして、UV硬化性のインプリント用透明樹脂を基板に塗布し、この基板の樹脂表面にモールドを押し付ける。その後、UV光(例えば波長λ=365nmのi線など)を基板側から基板を通して、またはモールド側からフィルムモールドを通して照射し、樹脂を硬化させる。そして、樹脂の硬化後にモールドを剥離する。このとき、モールドには事前に離型処理(フッ素系コーティング剤など)を施していることが好ましく、それにより、容易に基板からモールドを剥離することができる。これにより、モールドの凹凸形状を基板に転写することができる。なお、このモールドには、凹凸構造20の形状と対応した凹凸が設けられている。そのため、モールドの凹凸が転写されたときには、所望の凹凸形状が透明材料の層に形成される。例えば、モールドとして不規則に凹部が区画ごとに割り当てられて形成されているものを用いれば、不規則に凸部が割り当てられた凹凸構造20を得ることができる。
【0166】
図11は、光拡散層2の凹凸構造20の一例である。図11図11A及び図11Bから構成される。光拡散層2における凹凸構造20は、複数の凸部11又は凹部12が面状に配置された構造であることが好ましい。それにより、角度依存性なく光の拡散作用を高めて、より多くの光を外部に取り出すことができる。複数の凸部11又は凹部12が配置される面は基板1の表面と平行な面であってよい。図11では、複数の凸部11が面状に配置されている様子が示されている。また、複数の凹部12が面状に配置された様子が示されているともいえる。凹凸構造20は、複数の凸部11及び凹部12が面状に配置された構造であってもよい。
【0167】
光拡散層2における凹凸構造20においては、図11に示すように、複数の凸部11又は凹部12は、格子状の区画10に一区画分の凸部11又は凹部12がランダムに割り当てられて配置されていることが好ましい。それにより、角度依存性なく光の拡散作用を高めて、より多くの光を外部に取り出すことができる。格子状の区画10の一例は、一区画が四角形となったものである。四角形は正方形であることがさらに好ましい。この場合、複数の四角形が縦横に敷き詰められるマトリックス状の格子(四角格子)となる。格子状の区画10の他の一例は、一区画が六角形となったものである。六角形は正六角形であることがさらに好ましい。この場合、複数の六角形が充填構造で敷き詰められるハニカム状の格子(六角格子)となる。なお、格子としては、三角形が敷き詰められた三角格子であってもよいが、四角格子又は六角格子の方が凹凸の制御が容易になる。
【0168】
図11の凹凸構造20は、高さが略等しい複数の凸部11がマトリックス状の凹凸の一区画(格子状の区画10)ごとに割り当てられて面状に配置することにより形成されるものである。そして、凹凸構造20は、平面視での単位領域における凸部11の面積率が各領域において略同一であるように形成されている。このような、凹凸構造20を設けることにより、光取り出し性を効率よく向上させることができる。
【0169】
図11の凹凸構造20において、図11Aは基板1の表面と垂直な方向から見た様子を示し、図11Bは基板1の表面と平行な方向から見た様子を示している。図11Aでは凸部11が設けられている区画を斜線で示している。図11AにおけるラインL1、L2、L3は、図11BにおけるラインL1、L2、L3にそれぞれ対応する。
【0170】
図11Aに示すように、この凹凸構造20は、縦横に複数の正方形がマス目(行列型)のように並んで構成されるマトリックス状の凹凸区画に、凸部11が割り当てられて配置されて形成されている。各凹凸区画は面積が等しく形成されている。凹凸の一区画(一つの凹凸区画)には一つの凸部11及び凹部12のいずれかが割り当てられている。凸部11の割り当ては規則的であってもよいし、不規則であってもよい。図11の形態では、ランダムに凸部11が割り当てられている形態が示されている。図11Bに示すように、凸部11が割り当てられた区画では、凹凸構造20を構成する材料が光透過性電極3側に突出することにより凸部11を形成している。また、複数の凸部11は高さが略等しく設けられている。ここで、凸部11の高さが略等しいとは、例えば、凸部11の高さを平均した場合、平均の高さの±10%以内に、あるいは好ましくは±5%以内に、凸部11の高さが収まって揃うことであってよい。
【0171】
図11Bでは、凸部11の断面形状は矩形状になっているが、ひだ状、逆三角形状、台形状、半円状、半楕円状、正弦波状など適宜の形状であってよい。一の凸部11と他の凸部11とが隣り合う部分では、凸部11は連結して、大きな凸部が形成されている。また、一の凹部12と他の凹部12とが隣り合う部分では、凹部12は連結して、大きな凹部が形成されている。凸部11及び凹部12の連結個数は、特に限定されるものではないが、連結個数が大きくなると微細な凹凸構造20にならなくなるおそれがあるため、例えば、100個以下、20個以下、10個以下などに適宜設定することができる。3個以上又は2個以上連続で凹部12または凸部11が続いた場合に次の領域を反転(凹の場合は凸、凸の場合は凹)させるという設計ルールを設けてもよい。このルールにより、光拡散効果が高まり、効率および色差の改善が期待できる。
【0172】
凹凸構造20においては、単位領域における凸部11の面積率が各領域において略同一となるように形成される。例えば、図11Aでは、縦10個、横10個の合計100個の凹凸区画が図示されており、このような100区画分の領域を単位領域にすることができる。そして、このとき、凹凸構造20の面内において、凸部11の形成された面積率は、各単位領域ごとにほぼ等しいものとなる。すなわち、図11Aに示すように、単位領域において、50個分の凸部11が設けられているとすると、凹凸の区画数が同じで面積の等しい他の領域においても50個分程度(例えば45〜55個又は48〜52個)の凸部11が設けられるものであってよい。単位領域は100区画分に限られるものではなく、適宜の区画数分の大きさにすることができる。例えば、1000区画、10000区画、1000000区画、又はそれ以上の区画数であってもよい。凸部11の面積率は、領域の取り方によって多少異なる場合があるが、この例では、面積率は略同一であるようにする。例えば、面積率の上限及び下限の範囲を平均の10%以下にすることが好ましく、5%以下にすることがより好ましく、3%以下にすることがさらに好ましく、1%以下にすることがさらにより好ましい。面積率がより等しくなることにより面内においてより均一に光取り出し性を高めることができる。単位領域における凸部11の面積率は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜80%の範囲内に、好ましくは30〜70%の範囲内に、より好ましくは40〜60%の範囲内に設定することができる。
【0173】
凸部11及び凹部12は、単位領域内においてランダムに割り当てられて配置されることが好ましい一形態である。それにより、角度依存性なく、複数の光をより多く取り出すことができる。これにより、白色の有機EL素子に特に適した構造となる。
【0174】
凹凸構造20は、微細な凹凸であることが好ましい。それにより、光取り出し性をより高めることができる。例えば、凹凸の一区画を一辺が0.1〜100μmの正方形の範囲にすることにより、微細凹凸構造を形成することができる。凹凸の一区画を形成する正方形の一辺は0.4〜10μmであってもよく、例えば、この一辺を1μmにすると、微細な凹凸構造20を精度よく形成することができる。また、単位領域は、縦1mm×横1mmの正方形の領域にしたり、あるいは、縦10mm×横10mmの正方形の領域にしたりすることができる。なお、凹凸構造20では、凹部12には凹凸構造20を構成する材料が設けられていなくてもよい。その場合、凹凸構造20における下層(第1透明材料層21)は、面全体で多数の微細な凸部11が島状に分散された層となっていてよい。例えば、凹部12の部分において、第2透明材料層22が基板1に直接接していてもよい。
【0175】
凸部11の高さは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜100μmの範囲であってよい。それにより、光取り出し性の高い凹凸構造20を得ることができる。例えば、凸部11の高さを1〜10μmの範囲にすると、微細な凹凸を精度よく形成することができる。
【0176】
凹凸構造20を構成する複数の凸部11は同一形状のものであってよい。図11Aでは、凸部11が一つの凹凸区画全体に設けられて、平面視における形状が矩形状(長方形又は正方形)である凸部11を示しているが、これに限定されるものでなく、凸部11の平面形状は他の形状であってもよい。例えば、円状や、多角形状(三角形、五角形、六角形、八角形など)であってもよい。このとき、凸部11の立体形状は、円柱状、角柱状(三角柱、四角柱など)、角錐状(三角錐、四角錐など)、半球状、半楕円体状、断面が正弦波状となった突起状などといった適宜の形状であってよい。
【0177】
凹凸構造20は、回折光学構造として形成されていることが好ましい一形態である。このとき、凸部11は回折構造となるように一定の規則性もって設けられていることが好ましい。回折光学構造では周期性をもって凸部11が形成されることがさらに好ましい。光拡散層2が回折光学構造を有する場合、光取り出し性を向上することができる。また、本形態では、光拡散層2を回折構造にした場合でも、基板1の反対側の一面に形成した光取り出し層7(光学フィルムなど)によって光散乱を生じさせることができるため、視野角依存性の影響を低減することができる。回折光学構造においては、二次元の凹凸構造20の周期P(周期性がない構造の場合は、凹凸構造の平均的な周期)は、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)として、おおよそ波長λの1/4〜100倍の範囲で適宜設定することが好ましい。この範囲は、発光層Eで発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合に設定されるものであってよい。このとき、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率を向上するか、あるいは回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率を向上することができる。また、特に小さな周期P(たとえば、λ/4〜λの範囲)で設定した場合には、凹凸構造部付近の有効屈折率が基板の表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなる。そのため、基板と、凹凸被覆の層、または陽極との間に、凹凸構造を形成する層の媒質の屈折率と、被覆層又は陽極の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となり、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期Pをλ/4〜100λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、光取り出し効率を向上することができる。この中でも、周期Pがλより小さい場合はフレネルロス抑制効果しか発揮できなくなり光取り出し効果が小さくなるおそれがある。一方、20λを超えるとそれに対応して凹凸の高さも大きくすることが求められ(位相差を得るため)、被覆層(第2透明材料層22)での平坦化が容易でなくなるおそれがある。被覆層を非常に厚くする手法(例えば10um以上)も考えられるが、透過率の低下や材料コスト、樹脂材料の場合はアウトガス増加など、非常に弊害が多いため、厚くする手法は不利益な点もある。そのため、周期Pを例えば、λ〜20λのように設定することが好ましいのである。
【0178】
凹凸構造20は、境界回折構造であってもよい。境界回折構造は、凸部11をランダムに配置して形成されるものであってよい。また、境界回折構造として、面内に部分的に微細領域内で形成された回折構造が、一面に配設された構造を用いることもできる。この場合、面内に独立した複数の回折構造が形成されている構造といってもよい。境界回折構造では、微細な回折構造によって、回折を利用して光を取り出すとともに、面全体の回折作用が強くなりすぎるのを抑えて、光の角度依存性を低下させることができる。そのため、角度依存性を抑制しつつ光取り出し効果を高めることができる。
【0179】
図11のようにランダムに凸部11及び凹部12を配設する場合、凸部11又は凹部12が連続しすぎると十分に光取り出し性を高めることができなくなるおそれがある。そこで、さらに好ましい凹凸構造20について説明する。
【0180】
[凹凸構造のランダム制御]
凹凸構造20の凹凸は、ランダム性が制御されていることが好ましい。ここで、凹凸構造20の形状について、次のように定義する。凹凸が完全にランダムに配置される場合は完全ランダム構造という。凹凸がある一定のルールの下でランダムに配置される場合は制御ランダム構造という。凹凸がランダムではなく一定の周期性をもって規則的に配置される場合は周期構造という。そして、格子状の区画10の一つをブロックとして考える。一つのブロックのサイズをwと定義する。ブロックのサイズは、四角形の場合、1辺と考えることができる。ブロックのサイズは、六角形の場合、この六角形に内接する円の直径と考えることができる。凸部11が繋がって形成された大きい凸部において、一の凸部とこの凸部に離間して隣り合う他の凸部との同じ側の端縁間の距離を平均周期として規定する。平均周期は、いわば平均ピッチと等しい。
【0181】
制御ランダム構造における制御では、同じブロック(凸部11及び凹部12の一方)が連続して所定個数以上並ばないというルールを設けることが好ましい。すなわち、凸部11は、格子状の区画10に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置され、凹部12は、格子状の区画10に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置されていることが好ましい。それにより、光取り出し効率を高めることができる。また、発光色の角度依存性を低減することができる。凸部11及び凹部12が連続して並ばない所定の個数は、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましく、5個以下がさらに好ましく、4個以下がさらにより好ましい。
【0182】
図12により凹凸構造20の考え方について説明する。図12図12A及び図12Bから構成される。図12Aは完全ランダム構造の凹凸構造20を示し、図12Bは周期構造の凹凸構造20を示している。斜線部分が凸部11であり、白抜き部分が凹部12である。以降の凹凸構造20の説明図でも同様とする。
【0183】
図12Bのように、あるサイズwのブロックを周期的に規則性をもって並べた場合、平均周期は2wとなる。すなわち、凸部11と凹部12が交互に配置される構造であるので、2ブロック分の平均周期で凸部11が配置される。なお、図12Bの例では、凹凸構造20は、チェック状となる。
【0184】
図12Aのように、あるサイズwのブロックを完全にランダムに並べた場合、平均周期は4wとなる。
【0185】
図13により、完全ランダム構造における平均周期の求め方を説明する。図13図13A図13B及び図13Cから構成される。ランダムな配置では、同じブロックが並ぶ確率を考える。図13Aに示すように、まず、幅wのブロック(凸部11)が存在する確率は1/2である。図13Bに示すように、同じブロックが2つ並ぶ確率は、(1/2)^2である。図13Cに示すように、同じブロックが3つ並ぶ確率は、(1/2)^3である。「^n」はn乗を示す。以降、4つ以上同じブロックが並ぶ確率を考えると、次の式(13)の関係式が導き出される。
【0186】
【数16】
【0187】
上式において、wexpは、同じブロックが連続して形成される領域の幅の期待値である。
【0188】
上記の方法では、ブロックとして、凸部11と凹部12の2種類が考えられる。したがって、平均周期は、次の式(14)で求められる。
【0189】
【数17】
【0190】
上式において、pexpは、平均周期の期待値である。
【0191】
したがって、完全にランダムにブロックが配置された場合の平均周期は4wとなる。
【0192】
六角格子の場合も同様に確率論的な考え方で、平均周期P=4wを求めることができる。
【0193】
同様に確率論的な考え方で、ランダム性を制御した構造(制御ランダム構造)においても、平均周期を求めることができる。
【0194】
図14により、完全ランダム構造における平均周期の他の求め方を説明する。図14図14A及び図14Bから構成される。格子の幅wが示されている。図14では、構造のパターンから平均周期を求めることができる。
【0195】
図14Aに示すように、同じブロック(凸部11又は凹部12)が連続した部分には、境界線に内接して楕円Qを描画することができる。楕円Qを描画しようとして円になるときは内接円を描画する。そして、図14Bに示すように、楕円Qの長軸の長さq1及び短軸の長さq2を用いて平均周期を求める。内接円の場合は直径を用いる。図14Aの例では、内接する楕円の短軸の長さq2の最小値はw、すなわち境界幅となる。また、内接する楕円の長軸q1の長さの最大値は10wと考えることができる。なお、確率1/2で同じブロックを配設した場合、無限に同じブロックが連続した配置もあり得る。例えば、n個連続して凸部11が並ぶ確率は(1/2)^nとなる。ここで、10個連続して並ぶ確率は、(1/2)^10=1/1028=0.00097となる。すなわち、10個以上並ぶ配列は、0.1%以下になり、非常に小さく無視できる。そのため、上記のように、内接する楕円の長軸の長さq1の最大値は10wと考えてもよいのである。そして、構造的な計算から、内接する楕円Qの軸の長さの平均値として2wが定まる。この2wは平均境界幅である。よって、平均ピッチは4wとなる。
【0196】
図15は、六角格子の完全ランダム構造(境界回折構造)を有する凹凸構造20の一例である。格子の幅wが示されている。平均周期は、四角格子と同様に内接する楕円Qの軸の長さで考えることができる。すると、内接する楕円の短軸の長さq2の最小値はw、すなわち境界幅となる。また、内接する楕円の長軸q1の長さの最大値は10wと考えることができる。そして、内接する楕円Qの軸の長さの平均値として2wが求まる。この2wは平均境界幅である。よって、平均ピッチは4wとなる。
【0197】
図16A図16B及び図16Cに制御ランダム構造の凹凸構造20の例を示す。図16は、図16A図16B及び図16Cから構成される。図16Aは、四角格子の構造で平均ピッチ3wである。図16Bは、四角格子の構造で平均ピッチ3.3wである。図16Cは、六角格子の構造で平均ピッチ3.4wである。
【0198】
図17Aは、凹凸構造20の構造サイズw(一区画の長さ)を変化させたときの光取り出し効率の変化を示すグラフである。図17は、図17A図17B及び図17Cから構成される。このグラフから、凹凸構造20の構造サイズwに、光取り出し効率が依存していることが分かる。この例では、凹凸の高さは1.0μmとした。基板1の屈折率は1.5とした。第1透明材料層21の屈折率は1.35とした。第2透明材料層22の屈折率は2.0とした。光の波長(重み平均発光波長λ)は550nmとした。グラフ中には、図17Bに示す完全ランダム構造の凹凸形状の結果(●)と、図17Cに示す周期構造の凹凸形状の結果(□)が示されている。このグラフから、完全ランダム構造の場合、構造サイズwは0.4〜2μmが好ましいことが理解される。また、周期構造の場合、構造サイズwは0.4〜4μmが好ましいことが理解される。
【0199】
光は波長よりも十分小さい構造によって回折されない。これにより、ランダム構造でも周期構造でも400nm以下(0.4μm以下)の構造単位を並べたときには効果が得られにくくなっている。すなわち、発光層Eの重み平均波長をλとするとブロックのサイズwは0.73(=400/550)λ以上が好ましいことが分かる。
【0200】
また、構造単位が波長よりも十分大きな領域では、ランダム構造の場合ではwは2μm以下が好ましく、周期構造の場合ではwは4μm以下が好ましい結果が得られている。このことと、完全ランダム構造の平均周期が4wであり、周期構造の平均周期が2wであることから、平均ピッチPとすると、Pは8μm以下が好ましいことが導出される。また、光の回折原理から光の回折パターンは構造サイズ(周期)と光の波長の比、即ちP/λで決まることから、平均ピッチPは14.5(=8/0.55)λ以下が好ましいことが分かる。なお、この結果から、構造のパターンによらず、平均ピッチでおおよその取り出し効率が決まっていることが分かる。
【0201】
以上のことから、複数の凸部11又は凹部12は、基板の表面に垂直な方向から見たときに内接する楕円Qの軸長さ又は内接円の直径が、0.4〜4μmの範囲であることが好ましいことが理解される。もちろん、このときの上限に用いられる凸部11及び凹部12は、複数区画に亘って連続して形成された凸部及び凹部のことであってよい。また、楕円Qは、上記で説明したように、仮想して描画されるものである。この楕円Qは、楕円Qを描画しようとして長軸と短軸とが等しくなった場合に円、すなわち真円となる。よって、上記の範囲においては、楕円Qが描画できる場合は楕円Qが用いられ、楕円Qを描画しようとして円になる場合は円が用いられる。軸長さは、上限については、長軸の長さが用いられ、下限について短軸の長さが用いられる。
【0202】
凹凸をランダムに並べたときと周期的に並べたときとの光取り出し効率に対する差異はそれほど大きくないが、周期構造にすると回折格子の性質により、波長依存性が大きくなり、視野角に対する色むらの発生が大きくなる。よって、凹凸形状は、ランダムに構造を並べた形状がより好ましい。また、格子状の区画10は、一区画の長さが、0.4〜4μmの範囲であることが好ましいことが理解される。
【0203】
図18Aは、凹凸構造20の凹凸高さを変化させたときの光取り出し効率の変化を示すグラフである。図18は、図18A図18Dから構成される。このグラフから、凹凸構造20の凹凸高さに対する光取り出し効率の依存性について分かる。この例では、基板1の屈折率は1.51とした。第1透明材料層21の屈折率は1.45とした。第2透明材料層22の屈折率は1.76とした。光の波長(重み平均発光波長λ)は550nmとした。凹凸構造20は、図18B図18C及び図18Dに示されるもので評価した。図18Bの構造サイズwは0.6μmとした。図18Cの構造サイズwは1.2μmとした。図18Dの構造サイズwは1.2μmとした。
【0204】
図18Aのグラフ中には、図18Bに示す完全ランダム構造の結果(●)と、図18Cに示す制御ランダム構造の結果(△)と、図18Dに示す制御ランダム構造の結果(□)が示されている。図18Cの制御ランダム構造では、同一方向に3つ以上ブロックが並ばないように制御している。図18Cでは、平均ピッチは3wである。図18Dの制御ランダム構造では、同一方向に4つ以上ブロックが並ばないように制御している。図18Dでは、平均ピッチは3.4wである。グラフに示すように、凹凸高さに関しては、いずれの構造においてもほとんど光取り出し効率に影響しないことが分かる。よって、凹凸高さの依存性は少ないと言える。
【0205】
一方、グラフから、凹凸のランダム性に関しては、(●)(△)(□)の順番で光取り出し効率が向上する変化を示す傾向にあることが分かった。この結果からは、まず、(●)(△)の比較から、ランダム性を制御し、ブロックが連続して並ぶことを制限する方が好ましいことが確認される。これは、ブロックが連続して並ぶと、実質的に構造のサイズが大きくなる領域ができてしまい、その領域における取り出し効率が低下してしまうからであると推測される。実際に図18Bの完全ランダム構造を見ると、6個以上連続して同一方向にブロックが並んでいる場所が存在することが示されている。つまり、構造サイズ0.6μmでは、ローカルに3.6μm(=0.6μm×6)以上の大きさの構造が存在する場合がある。図17Aにおいて、周期構造の結果を見ると、凹凸区画のサイズが3.6μmの場合は光取り出し効率があまり高くないことから、ローカルに大きなサイズの領域が現れることは取り出し効率の低下につながると言える。したがって、凸部11が同一方向に所定個数以上連続しないことが好ましいのである。同様に、凹部12が同一方向に所定個数以上連続しないことが好ましい。
【0206】
また、ブロック(格子状の区画10)は、四角形ではなく六角形で構成される方が好ましい。これは、正方形の場合よりも正六角形の方が方位方向に対する依存性が小さいことが要因であると考えられる。四角形では、対角の長さは辺の長さの√2倍(ルート2倍=約1.414)であり、正六角形の場合は対角の長さは辺の長さの√3/2倍(ルート3倍の半分=約0.8660)であるためである。つまり、正方形を並べた場合は、辺の方向あるいは対角の方向のどちらかの取り出し効率が低くなってしまうが、正六角形の場合は、方位によらず高い取り出し効率が得られる。ハニカム構造が、細密充填構造であることに起因するとも考えられる。
【0207】
ランダム性を制御したパターンの効果をより詳しく調べるために、図18B及び図18Cで説明した完全ランダム構造と制御ランダム構造の素子(凹凸高さ0.6μm)について、基板1内の光の強度分布を測定した。図19に、測定装置を示す。この測定装置では、半球レンズ30を用いることで、光の強度を確認することができる。各符号は、上記で説明した構成と同様であるため、説明を省略する。
【0208】
図20Aは、ランダム性の違いによる、角度と光強度との関係を示すグラフである。図20は、図20A図20B及び図20Cから構成される。このグラフでは、図20Bに示す完全ランダム構造の結果(破線)と、図20Cに示す制御ランダム構造の結果(実線)が示されている。このグラフから、完全にランダムな場合よりも、ランダム性を制御した構造(制御ランダム構造)の方が、高角度側(50〜70度付近)の光が増加していることが分かる。
【0209】
以上のように、連続して並んだ大きなブロックを抑制することによるランダム性の制御方法とその効果を示したが、このような大きなブロックを抑制することによる作用については、ランダムパターンをフーリエ変換することでも確認することができる。
【0210】
図21に、ランダムパターンをフーリエ変換し、空間周波数成分の振幅を示した図を示す。図21は、図21A図21Dから構成される。図21Aは制御ランダム構造のランダムパターンを示し、図21Bは、図21Aをフーリエ変換したものを示している。図21Cは完全ランダム構造のランダムパターンを示し、図21Dは、図21Cをフーリエ変換したものを示している。
【0211】
図21B及び図21Dにおいて、図の中心は、空間周波数が0の成分(直流成分)を表している。中心から外側に向かうに従い、空間周波数が高くなるように表示している。この図から理解されるように、制御されたランダムパターンの空間周波数では、低周波成分が抑制されていることが確認される。特に、空間周波数成分のうち1/(2w)より小さい成分が抑制されていることが分かる。このように、ランダム性を制御した場合、低周波成分が除去される。そのため、制御ランダム構造は低周波除去構造と呼ぶこともできる。
【0212】
ランダム性を制御した場合においても平均ピッチを求めることができる。そして、境界幅(構造サイズ)wは、0.73λ以上がより好ましいと言える。この0.73は400/550から導出される。平均ピッチの上限は8μmが好ましいと言える。
【0213】
また、構造サイズw(格子状の一区画の長さ)は、0.4〜4μmであることが好ましい。さらに、構造サイズwは、好ましくは、0.4〜2μmである。
【0214】
なお、上記の凹凸構造20においては、凹凸の高さを一定としたが、各々の高さをランダムにすることもできる。凹凸構造20では、二つの透明材料の積層により構造が形成されているので、これらの部分を通過する光の位相差に差が生じる。よって、もし高さがランダムでも、透過した光の平均位相差は、複数の平均高さで決定される。したがって、この場合においても、透過した光に十分な平均位相差を与えて光を取り出せるので、高さがランダムであってもよい。
【0215】
また、凹凸構造20は、各々の断面形状における角の部分をアール状に構成することもできる。例えば、切削加工及び積層プロセス等によりミクロンオーダーの構造を加工する際に、角の部分がアール状に加工される、或いは、段差の部分が斜面状に加工されていてもよい。光学シートなどで光拡散層2を形成する場合、加工の際に、これらの構造が形成される場合がある。凹凸の角部がアールになったり斜面になったりしたとしても、ランダムパターンの性質が失われない限り、光取り出し性及び視野角依存性の特性を向上させることができる。
【0216】
ところで、有機EL素子では、製造時に意図せず発生する大きさが0.73λ以下の小さい構造(ゴミなどが原因でできる)や、4μm以上の大きい構造(引っかき傷など)等のノイズが、凹凸構造に紛れ込む場合がある。そのような場合であっても、それらノイズが全体の面積に対して10%程度以下であれば十分効果は得られる。図22では、大きいノイズ構造T1と、小さいノイズ構造T2とを示している。意図的にこれらのノイズを10%程度入れても、効果が得られる限り、所望の有機EL素子を形成することができる。よって、上記で説明した凹凸構造20が、10%以下の割合で、部分的に破壊されていてもよく、この場合も上記の凹凸構造20に含まれる。
【0217】
なお、光拡散層2はマイクロレンズアレイ構造を有していてもよい。マイクロレンズアレイ構造は、凹凸構造20の1種である。凹凸構造20がマイクロレンズアレイ構造で構成された場合も、光取り出し性と視野角特性とを向上することができる。マイクロレンズアレイ構造におけるレンズの形状は、略半球状、半楕円体状、断面が正弦波状となった突状、角錐状(四角錐など)、など適宜の形状であってよい。
【0218】
[照明装置]
図23は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子101)を備えた照明装置100の一例である。有機EL素子101は、基板1と光拡散層2と光透過性電極3と複数の発光層Eと光反射性電極4と封止材50とを有している。光拡散層2は第1透明材料層21と第2透明材料層22とを有する。発光層Eを含む有機発光体は、封止材50によって封止されている。光の出射方向は、白抜き矢印で示されている。照明装置100は、有機EL素子101と、有機EL素子101の封止外部に形成された電極パッド102とを有する。電極パッド102と有機EL素子101の電極とは適宜の配線構造によって電気的に接続される。電極パッド102には配線104が接続されている。照明装置は配線104を集積したプラグ103を備えている。プラグ103は、外部配線105を通じて外部電源106と接続され得る。外部電源106に接続されることで、電極間に電気が流れ、発光層Eから光が生じる。それにより、照明装置100から光を出射することができる。
【符号の説明】
【0219】
E 発光層
E1 第1番発光層
E2 第2番発光層
Em 第m番発光層
1 基板
2 光拡散層
3 光透過性電極
4 光反射性電極
5 電荷輸送層
6 中間層
7 光取り出し層
8 キャリア輸送層
8a 非ドープ層
9 電荷反転層
9a 正孔引き抜き層
9b ブロッキング層
10 格子状の区画
11 凸部
12 凹部
20 凹凸構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23