(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5830369
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】グロープラグ
(51)【国際特許分類】
F23Q 7/00 20060101AFI20151119BHJP
【FI】
F23Q7/00 605C
F23Q7/00 V
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-276671(P2011-276671)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-127326(P2013-127326A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098741
【弁理士】
【氏名又は名称】武蔵 武
(72)【発明者】
【氏名】大坪 将憲
(72)【発明者】
【氏名】平松 正行
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−010306(JP,A)
【文献】
特開2005−207721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通する中心孔を有すると共にエンジン側のプラグ取付孔の雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を自身の外周に有する筒状の主体金具と、
軸中心に貫通孔を有する軸筒体の外周面に円環状の鍔部を備えており、該鍔部の後面に前記主体金具の先端開口端面を当接させると共に前記鍔部の前面をテーパ面にして前記プラグ取付孔のテーパ座面に当接させるようにした金属製筒状体と、
通電により発熱する発熱体を先端側内部に備えると共に反対側に前記発熱体につながる一対の電極を備えており、前記金属製筒状体の両端から自身の両端が突出する状態にして該金属製筒状体の前記貫通孔に圧入された軸状のセラミックヒーターと、を有し、
前記金属製筒状体の前記鍔部によっても前記セラミックヒーターが締め付けられてなるグロープラグであって、
前記金属製筒状体は、
前記軸筒体の前記鍔部より前方を前筒状部とし、同じく後方を後筒状部として該後筒状部の少なくとも一部を前記主体金具の前記中心孔の内径より小さい外径で且つ軸方向の長さが前記鍔部の軸方向の厚さより大きく設定したものであることを特徴とするグロープラグ。
【請求項2】
前記金属製筒状体は、前記後筒状部の全体が主体金具の前記中心孔の内径より小さい外径であることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。
【請求項3】
前記金属製筒状体の前記鍔部は、前記主体金具に対して溶接されてなり、
さらに金属製筒状体は、前記後筒状部の先端又は先端近傍に前記主体金具の開口部内面に嵌合する位置決め太径部が突設されていることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。
【請求項4】
前記位置決め太径部の軸方向の長さは、前記後筒状部の残りの部分の長さより短くしたことを特徴とする請求項3に記載のグロープラグ。
【請求項5】
前記金属製筒状体は、前記後筒状部の前記主体金具の前記中心孔の内径より小さい部分の径方向の肉厚が0.3〜1.6mmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のグロープラグ。
【請求項6】
前記主体金具の内部にあって該主体金具の後端開口から外部に突出する通電用の中軸に前記セラミックヒーターの一つの電極を導通可能に接続し、
一方、前記セラミックヒーターのもう一つの電極を、前記金属製筒状体の前記後筒状部の後端近傍の内面に接触させて導通可能に接続したものであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のグロープラグ。
【請求項7】
前記金属製筒状体の前記後筒状部が、前記主体金具の前記雄ネジ部を設けた領域の内側に位置するようにしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンを予熱する用途などに使われるグロープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のグロープラグの一例を
図7(a),(b)(特許文献1の
図1)に基づき説明する。なお、説明の便宜上、グロープラグは、エンジンの燃焼室に臨む側を「前」、反対側を「後」とする。
【0003】
グロープラグ100は、エンジン101側のプラグ取付孔102に取り付けられる筒状の主体金具103と、該主体金具103の前方側に固着される筒状の金属製筒状体104と、該金属製筒状体104に圧入された軸状のセラミックヒーター105と、前記主体金具103の内部から外部に突出する通電用の中軸106と、から概略構成される。
【0004】
前記主体金具103は、筒状であって、エンジン101側のプラグ取付孔102の雌ネジ部102aに螺合する雄ネジ部107を自身の外周に有する。
【0005】
前記金属製筒状体104は、軸中心に貫通孔104aを有する軸筒体104bと、該軸筒体104bの外周面の軸方向の途中に突設した円環状の鍔部104cと、を備えており、該鍔部104cの後面に主体金具103の先端開口端面を当接させると共に鍔部104cの前面104dをテーパ面にして前記プラグ取付孔102のテーパ座面102bに密着状に当接させ、そうしてエンジン101の燃焼室108とプラグ取付孔102の通気を遮断する。また、金属製筒状体104は、前記軸筒体104bの鍔部104cより前方を前筒状部104eとし、同じく後方を後筒状部104fとして該後筒状部104fが主体金具103の先端開口に圧入されている。
【0006】
前記セラミックヒーター105は、通電により発熱する発熱体105aを絶縁性セラミックからなる基体120の先端内部に備えると共に反対側に発熱体105aにつながる一対の電極105b,105cを備えており、前記金属製筒状体104の前後両端から自身の両端が突出する状態にして該金属製筒状体104の貫通孔104aに圧入されている。
【0007】
さらに前記中軸106は、主体金具103の内部にあって後端開口から外部に突出する状態に取り付けられている。この中軸106の先端にはリード線109が接続されており、該リード線109が前記セラミックヒーター105の一つの電極105b(詳細には、基体120の外表面に露出する電極105bの一部)に端子リング110を介して接続されている。したがって中軸106とセラミックヒーター105の発熱体105aが電気的に接続されている。一方、もう一つの電極105c(詳細には、基体120の外表面に露出する電極105cの一部)は、金属製筒状体104の内周面に接触しており、したがって発熱体105aは金属製筒状体104を介してエンジン101側に接地されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−205148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
グロープラグ100は、
図7、
図8(a)に示したように、エンジン101のプラグ取付孔102に装着された状態でセラミックヒーター105の先端部が燃焼室108内に突き出すようになっており、その状態で発熱体105aに通電して燃焼室108を予熱するものである。しかし、エンジン101の仕様によっては、
図8(b)に示したようにセラミックヒーター105の燃焼室108内への突き出し寸法yをほぼ同じにしつつ、プラグ取付孔102のテーパ座面102bの位置を変更(例えば、テーパ座面102bの位置を
図8(a)に対してxmm前側に変更)する場合がある。
【0010】
その場合、グロープラグ100の構造を
図8(a)のままにすると、
図8(b)に示したようにプラグ取付孔102のテーパ座面102bと鍔部104cの前面との間にxmm相当の隙間Sが生じるため、鍔部104cの軸方向の厚さを増やすか、或は鍔部104cの形成位置を前方側にずらして形成した上で主体金具103と後筒状部104fの嵌合部分の軸方向の長さを増やして前記隙間Sを埋める必要がある。
【0011】
ところが、金属製筒状体104の鍔部104cは、径方向の肉厚が厚いためセラミックヒーター105を締め付ける力が強い領域である。また、後筒状部104fと主体金具103との嵌合領域(接触領域)についても後筒状部104fに対して主体金具103から受ける力が加算されるため、鍔部104cと同様にセラミックヒーター105を締め付ける力が強くなる。つまり、これらの領域を軸方向に長くすればセラミックヒーター105が大きな応力を受ける範囲が長くなる。そのため、圧入工程でのセラミックヒーター105の折損率が上昇する。
【0012】
なお、上記以外に、金属製筒状体104の鍔部104cと後筒状部104fの寸法を変えずに前筒状部104eを短くして、
図8(a)のエンジンから
図8(b)のエンジンに対応可能なグロープラグを準備することもできるが、その場合は、金属製筒状体104の全長が短くなるため、セラミックヒーター105の支持強度と安定度が低下する問題がある。電極105c(詳細には、基体120の外表面に露出する電極105cの一部)と金属製筒状体104の内周面との電気的な接点が確保できなくなるため、セラミックヒーター105の構造までも変更する必要が出てくるため、現実的でない。
【0013】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、既存のグロープラグに対して、セラミックヒーターの燃焼室内への突き出し寸法を変更せずに、プラグ取付孔のテーパ座面の位置を変更したい要求が出た際にも、セラミックヒーターの折損率を高めず且つ支持強度も低下させずに対応することが可能なグロープラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため本発明は、軸方向に貫通する中心孔を有すると共にエンジン側のプラグ取付孔の雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を自身の外周に有する筒状の主体金具と、
軸中心に貫通孔を有する軸筒体の外周面に円環状の鍔部を備えており、該鍔部の後面に前記主体金具の先端開口端面を当接させると共に前記鍔部の前面をテーパ面にして前記プラグ取付孔のテーパ座面に当接させるようにした金属製筒状体と、
通電により発熱する発熱体を先端側内部に備えると共に反対側に前記発熱体につながる一対の電極を備えており、前記金属製筒状体の両端から自身の両端が突出する状態にして該金属製筒状体の前記貫通孔に圧入された軸状のセラミックヒーターと、を有
し、
前記金属製筒状体の前記鍔部によっても前記セラミックヒーターが締め付けられてなるグロープラグであって、
前記金属製筒状体は、
前記軸筒体の前記鍔部より前方を前筒状部とし、同じく後方を後筒状部として該後筒状部の少なくとも一部を前記主体金具の前記中心孔の内径より小さい外径で且つ軸方向の長さが前記鍔部の軸方向の厚さより大きく設定したものであるグロープラグを提供する。
【0015】
また、請求項2に記載したように前記金属製筒状体は、前記後筒状部の全体が主体金具の前記中心孔の内径より小さい外径である請求項1に記載のグロープラグを提供する。
【0016】
また、請求項3に記載したように前記金属製筒状体
の前記鍔部は、前記主体金具に対し
て溶接されて
なり、
さらに
金属製筒状体は、前記後筒状部の先端又は先端近傍に前記主体金具の開口部内面に嵌合する位置決め太径部が突設されている請求項1に記載のグロープラグを提供する。
【0017】
また、請求項4に記載したように前記位置決め太径部の軸方向の長さは、前記後筒状部の残りの部分の長さより短くした請求項3に記載のグロープラグを提供する。
【0018】
また、請求項5に記載したように前記金属製筒状体は、前記後筒状部の前記主体金具の前記中心孔の内径より小さい部分の径方向の肉厚が0.3〜1.6mmである請求項1〜4の何れか1項に記載のグロープラグを提供する。
【0019】
また、請求項6に記載したように、前記主体金具の後端開口から内部に差し込まれた通電用の中軸に前記セラミックヒーターの一つの電極を導通可能に接続し、一方、前記セラミックヒーターのもう一つの電極を、前記金属製筒状体の前記後筒状部の後端近傍の内面に接触させて導通可能に接続したものである請求項1〜5の何れか1項に記載のグロープラグを提供する。
【0020】
また、請求項7に記載したように、前記金属製筒状体の前記後筒状部が、前記主体金具の前記雄ネジ部を設けた領域の内側に位置するようにしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のグロープラグを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のグロープラグは、後筒状部の少なくとも一部の外径を主体金具の内径より小さくして該後筒状部と該主体金具との接触に伴うセラミックヒーターへの締め付け力を生ずる部位を減じる一方、後筒状部の軸方向の長さを鍔部の軸方向の厚さより大きくすることで、トータルで必要なセラミックヒーターの締め付け力を確保しながら、鍔部によるセラミックヒーターの締め付けすぎを回避することができる。その結果、セラミックヒーターの支持強度を損なうことなく折損リスクを低下させることができる。なお、本発明による効果を有効に得るには、後筒状部の軸方向長さの少なくとも1/2以上を主体金具の中心孔の内径より小さい外径に設定することが好ましい。また、本発明において、後筒状部の軸方向の長さ、及び、前記鍔部の軸方向の厚さは、それぞれの部位の外周部における軸方向の長さを指すものとする。
【0022】
前記後筒状部は、請求項2のように、その全体を主体金具の内径より小さい外径とすることで前記した後筒状部の締め付け力を減じる効果を最大とすることができる。
【0023】
また、請求項3のように、後筒状部の先端又は先端近傍に主体金具の中心孔の開口部内面に嵌合する位置決め太径部を突設することにより、主体金具に鍔部を溶接する際に金属製筒状体の軸がずれないため、主体金具と金属製筒状体を精度良く接合することができる。なお、後筒状部の位置決め太径部は、径方向の肉厚が厚いことからセラミックヒーターを強く締め付ける要因になり得るが、請求項4に記載したように位置決め太径部の軸方向の長さを後筒状部の残りの部分の長さより短くすることで締め付け力が調整できる。
【0024】
また、請求項5のように前記金属製筒状体の後筒状部の前記主体金具の中心孔の内径より小さい部分の径方向の肉厚は、0.3〜1.6mmにするのがよい。後筒状部のこの部分の肉厚が0.3mmより薄いと、セラミックヒーターの圧入に耐え得る強度が不足し、一方、同肉厚が1.6mmより厚いとセラミックヒーターを強く締め付け過ぎる可能性があるためである。
【0025】
また、請求項6のようにセラミックヒーターの一つの電極を中軸に接続し、もう一つの電極を後筒状部の後端近傍の内面に接続させるようにした場合は、両電極の位置が燃焼室から遠くなるため、該燃焼室から高温のガスが、仮にセラミックヒーターと金属製筒状体の間のごく僅かな隙間から侵入したとしても両電極にまで到達する可能性は低く、よって電極が酸化して接触抵抗が増大する、という問題が生じにくい。
【0026】
また、請求項7のように金属製筒状体の後筒状部を、主体金具の雄ネジ部を設けた領域の内側に位置させるようにした場合には、後筒状部の熱が主体金具の雄ネジ部を介してエンジン側に伝わり易くなるため、温度の上昇が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図3】金属製筒状体の一部を断面にして示す斜視図である。
【
図4】エンジンのプラグ取付孔に装着する状態を示すグロープラグの正面図である。
【
図5】他の形態を示すグロープラグの要部拡大断面図である。
【
図6】実施形態2を示すもので、(a)はグロープラグの要部拡大断面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は(b)の位置決め用太径部を変形させた例を示す要部拡大図である。
【
図7】従来例を示すもので、(a)はグロープラグの縦断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【
図8】従来例を示すもので、(a)はグロープラグの要部拡大断面図、(b)はテーパ座面の位置がxmm前側に変更された状態を示すグロープラグの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施形態1]
以下に本発明の実施形態1を
図1〜
図4を参照しつつ説明する。
グロープラグ1は、エンジン2側のプラグ取付孔3に取り付けられる筒状の主体金具4と、該主体金具4に取り付けられる筒状の金属製筒状体5と、該金属製筒状体5に圧入された軸状のセラミックヒーター6と、前記主体金具4の内部から外部に突出する通電用の中軸7と、から概略構成される。
【0029】
[プラグ取付孔]
エンジン2側の前記プラグ取付孔3は、
図4に示したように、燃焼室8に向かって段階的に縮径する段付孔形態であって、外方に開口する雌ネジ部3aと、燃焼室8側に開口する先端孔部3bと、雌ネジ部3aと先端孔部3bの間に位置する中間孔部3cと、を有し、該中間孔部3cと前記先端孔部3bの境界にテーパ座面3dを有する。
【0030】
[主体金具]
前記主体金具4は、軸方向に貫通する中心孔4aを有し、
図1、
図4に示したように、プラグ取付孔3の雌ネジ部3aに螺合する雄ネジ部4bを外周に有すると共に後端にプラグレンチ等の締め付け工具に係合し得る例えば六角柱形の工具係合部4cを有する。材質は、例えば鋼材(S40C)である。
【0031】
[金属製筒状体]
前記金属製筒状体5は、例えばステンレス(SUS430)等の金属製であって、
図3に示したように、軸中心に内径一定の貫通孔5aを有する軸筒体5bと、該軸筒体5bの外周面の途中に突設した円環状の鍔部5cを備えており、該鍔部5cの後面5dに主体金具4の先端開口端面を同心状に当接させて溶接(例えばレーザー溶接)によって主体金具4に接合されている。
【0032】
[金属製筒状体−鍔部]
金属製筒状体5の鍔部5cは、前面5eが先に向かって細くなる円錐台形のテーパ面になっており、そのテーパ面を前記プラグ取付孔3のテーパ座面3dに当接させて中間孔部3c以降への燃焼ガスの漏れ出しをシールする。
【0033】
[金属製筒状体−軸筒体]
金属製筒状体5の軸筒体5bは、前記鍔部5cより前方を前筒状部5fとし、鍔部5cより後方を後筒状部5rとして、
図1、
図2に示したように前記前筒状部5fがプラグ取付孔3の先端孔部3bの内部に収まり、一方、後筒状部5rが主体金具4の内部に収まっている。
【0034】
前記後筒状部5rは、後端外周のテーパ部5gを除いて太さ一様の軸筒であって、その外径が主体金具4の中心孔4aの内径より若干小さくなっており、したがって後筒状部5rの外周と主体金具4の中心孔4aの内周との間には
図2の拡大図に示したように適度な隙間9が形成されている。実施形態の後筒状部5rの径方向の肉厚は、0.3〜1.6mmに設定されている。後筒状部5rの肉厚が0.3mmより薄いと、強度が不足してセラミックヒーター6の圧入に耐え得ない可能性があり、一方、肉厚が1.6mmより厚いとセラミックヒーター6を強く締め付け過ぎる可能性があるためである。
【0035】
また、後筒状部5rは、自身の後端から鍔部5cの後面5dまでの軸方向の長さが、前記鍔部5cの軸方向の厚さより大きく形成されている。実施形態の後筒状部5rは、後端が主体金具4の中心近傍に達する長さになっており、
図1に示したように主体金具4の雄ネジ部4bを設けた領域の内側に位置している。
【0036】
一方、前記前筒状部5fは、太さ一様の軸筒であって、その外径が後筒状部5rより若干大径でプラグ取付孔3の先端孔部3bより若干小径である。
【0037】
[セラミックヒーター]
前記セラミックヒーター6は、円形軸状であって、前記金属製筒状体5の前後両端から自身の両端が突出する状態にして該金属製筒状体5の前記貫通孔5aに圧入されている。また、セラミックヒーター6は、通電により発熱する発熱体6a(抵抗発熱体)を先端内部に備えると共にこれとは反対側に発熱体6aにつながる一対の電極6b,6cを備えており、このうち一つの電極6bが前記後筒状部5rの後端近傍の内面に接触する位置に設けられている。よって発熱体6aは、電極6bから金属製筒状体5を介してエンジン2側に接地されている。なお、セラミックヒーター10の構成は公知であるため、詳細は省略するが、導電性セラミックから構成される発熱体6a及び一対の電極6b,6cを、窒化ケイ素等の絶縁性セラミックからなる基体60内に埋設した構成を有する。
【0038】
[中軸]
前記中軸7は、
図1に示したように主体金具4の内部(具体的には主体金具4の中心近傍)から後端開口を通って外部に突出するように配設されており、主体金具4の内周面との間に隙間を空けた状態でOリング10、及び、絶縁ブッシュ11を介在させ、絶縁ブッシュ11上に配置した加締めリング12を中軸7に向けて加締めることで、主体金具4に保持されている。
さらに中軸7は、先端部に嵌合した導電性の端子リング13を介して前記セラミックヒーター6の後端部に連結されている。
また、前記端子リング13の内周には、セラミックヒーター6のもう一つの電極6cが接触しており、したがって中軸7とセラミックヒーター6は、端子リング13を介して機械的・電気的に接続されている。
【0039】
以上の構成であるグロープラグ1は、
図4矢示のようにプラグ取付孔3にセラミックヒーター6側から差し入れ、プラグ取付孔3の雌ネジ部3aに雄ネジ部4bを螺合させて鍔部5cの前面5eがプラグ取付孔3のテーパ座面3dに密着するまで締め付けてエンジン2に装着する。そうすると、その状態でセラミックヒーター6の発熱体6aを有する先端部が
図1のように燃焼室8内に臨む。この装着状態で、例えばバッテリプラス極(図示せず)〜中軸7〜端子リング13〜電極6c〜発熱体6a〜電極6b〜金属製筒状体5〜エンジン2〜バッテリマイナス極(図示せず)、からなる概略の電気回路を閉じると、発熱体6aが発熱して燃焼室8内の温度を急激に上昇させることができる。
【0040】
なお、本発明のグロープラグ1は、セラミックヒーター6を締め付ける力が
図8(a)に示した既存のグロープラグの構造のものと殆ど変化しない。そのため、
図8(a)のエンジンに装着された既存のグロープラグから、
図8(b)に示したようにセラミックヒーターの突き出し寸法yを変更せずに、プラグ取付孔3のテーパ座面3dの位置を変更したい要求が出た際にも、本発明のグロープラグ1であれば容易に対応することができる。また、その対応の際に、後筒状部5rの軸方向の長さが鍔部5cの軸方向の厚さより大きく設定されているため、既存のグロープラグのセラミックヒーターの構造を変更せずに、セラミックヒーターの一方の電極と金属製筒状体5(後筒状部5r)の内周面との電気的な接点を確保することも可能となる。
【0041】
また、グロープラグ1は、エンジン2の作動中に発熱体6aが発する熱や燃料の燃焼による熱を受けるが、それらの熱は、金属製筒状体5の鍔部5cからプラグ取付孔3のテーパ座面3dを介して効率的にエンジン2側に逃がすことができる。
また、本発明のグロープラグ1は、金属製筒状体5の後筒状部5rが、主体金具4の雄ネジ部4bを設けた領域の内側に位置するようになっているため、後筒状部5rから主体金具4の雄ネジ部4bを介してエンジン2側に熱を逃がし易くすることもできる。
【0042】
また、本発明のグロープラグ1は、セラミックヒーター6の一つの電極6cが中軸7に接続され、もう一つの電極6bが後筒状部5rの後端近傍の内面に接続されていて、両電極6b,6cの接触位置が燃焼室8から遠いため、該燃焼室8から高温のガスが、仮にセラミックヒーター6と金属製筒状体5の間のごく僅かな隙間から侵入したとしても、後筒状部5rの後端近傍まで到達する可能性は低く、よって、電極6b,6cの基体60から露出する部位が酸化して接触抵抗が増大する、というような問題が生じにくい。
【0043】
なお、以上で説明した実施形態の金属製筒状体5は、後筒状部5rの全部を主体金具4の中心孔4aの内径より小さい外径にしたものであるが、例えば
図5に示したように、後筒状部5rの電極6bに対応する部分の外径を主体金具4の中心孔4aの内径とほぼ同じにして電極6bとの接触圧を高め、それ以外の部分を主体金具4の中心孔4aの内径より小さい外径にするようにしてもよい。
【0044】
[実施形態2]
実施形態2のグロープラグ1は、実施形態1のグロープラグ1との対比において、
図6に示したように後筒状部5rの先端(
図6(b)参照)又は先端近傍(
図6(c)参照)に主体金具4の開口部内面に嵌合する位置決め太径部5hが突設されている点に特徴があり、それ以外の点については実施形態1と同じである。よって、
図6(a)〜(c)の
図1〜
図5と同じ符合を付した部分の説明は、実施形態1の説明を援用して省略する。
【0045】
この実施形態2のグロープラグ1は、主体金具4に鍔部5cを溶接するために後筒状部5rを主体金具4の中心孔4aに差し込んだとき、後筒状部5rの先端又は先端近傍に突設した位置決め太径部5hが主体金具4の中心孔4aの開口部内面に嵌合する。これにより主体金具4と金属製筒状体5の軸が溶接前でも殆どずれないため、主体金具4の中心孔4aと後筒状部5rとの隙間9を保った状態で、主体金具4と金属製筒状体5を高精度に接合することができる。
【0046】
なお、後筒状部5rの位置決め太径部5hは、径方向の肉厚を厚くすることになるからセラミックヒーター6を強く締め付ける要因になり得る。したがって、好ましくは位置決め太径部5hの軸方向の長さを後筒状部5rの残りの部分の長さの例えば1/3〜1/4程度(好ましくは1/4程度)に短くして締め過ぎの弊害が生じないようにするとよい。
【実施例1】
【0047】
グロープラグ1は、各部材の仕様が例えば次のように設定される。
[主体金具4]
雄ネジ部4bの呼び径10.0mm、先端部の外径8.0mm、中心孔4aの内径5.4mm。材質は、鋼材(S40C)。
[金属製筒状体5]
後筒状部5rの外径5.0mm、後筒状部5rの軸方向の長さ15.0mm、鍔部5cの外径8.0mm、鍔部5cの軸方向の厚さ4.0mm、前筒状部5fの外径5.2mm、前筒状部5fの軸方向の長さ9.0mm。材質は、ステンレス(SUS430)。
[セラミックヒーター6]
外径3.3mm、軸方向の長さ42.0mm。
【0048】
なお、セラミックヒーター6の折損は、多くの場合、金属製筒状体5への圧入工程で発生するが、上記金属製筒状体5へのセラミックヒーター6の圧入に関しては、50回の実施に対して折損率0%であった。
ちなみに上記金属製筒状体5の後筒状部5rの軸方向の長さを2.0mm、鍔部5cの軸方向の厚さを17.0mmに変更した場合の圧入時の折損率は50回の実施に対して8%、また、金属製筒状体5の後筒状部5rの軸方向の長さを8.0mm、鍔部5cの軸方向の厚さを11.0mmに変更した場合の圧入時の折損率は50回の実施に対して2%であり、これより後筒状部5rの軸方向の長さと鍔部5cの軸方向の厚さの組合せがセラミックヒーター6の折損率に影響を与えていることが確認でき、さらに本発明の有効性も確認できた。
【符号の説明】
【0049】
1 …グロープラグ
2 …エンジン
3 …プラグ取付孔
3a …雌ネジ部
3d …テーパ座面
4 …主体金具
4a …中心孔
4b …雄ネジ部
5 …金属製筒状体
5a …貫通孔
5b …軸筒体
5c …鍔部
5d …後面
5e …前面
5f …前筒状部
5r …後筒状部
5h …位置決め太径部
6 …セラミックヒーター
6a …発熱体
6b,6c …電極
60 …基体
7 …中軸