【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1は、分注ノズルのシールド部とアームに取り付けられた導電性物体の接触・非接触により、電気信号の変化を検出し、容器底面を検知する例である。
【0021】
図1は、本発明の実施例1である液体分注装置が適用された自動分析装置の概略構成図である。
【0022】
図1において、自動分析装置は、搬送ライン101と、ローター102と、試薬ディスク103と、反応ディスク104と、分注機構105と、攪拌機構106と、分光器107と、反応容器洗浄機構108と、ノズル洗浄機構109と、制御部115とを備えている。
【0023】
搬送ライン101は、検体を入れた検体容器110を保持する検体ラック111を、生化学反応を利用した比色分析を行うために、反応ディスク104上に配置された反応容器112へ必要量移送する分注機構105が分注動作を行えるポジションまで移送する。搬送ライン101は更に、ローター102と接続されており、ローター102を回転させることにより、他の搬送ライン101との間で検体ラック111のやり取りを行う。
【0024】
試薬ディスク103は、試薬を入れた試薬容器113を保持し、分析対象となる検体中の成分と反応する試薬を、比色分析に必要な量だけ反応ディスク104上に配置された反応容器112へ移送するために、分注機構105が分注動作を行えるポジションまで回転移送する。
【0025】
反応ディスク104は、水を代表とする恒温媒体上に、検体中の成分と試薬とが化学反応している間、両者の混合物である反応液を入れた反応容器112を保持するとともに、比色分析を行う分光器107や攪拌機構106、反応容器洗浄機構108等の動作ポジションまで各動作の対象となる反応容器112を回転移送する。
【0026】
分注機構105は、比色分析を行う上で、検体と分析対象に応じた試薬を必要量だけ検体容器110や試薬容器113から吸引し、反応容器112に吐出する。
【0027】
分注機構105に備えられたノズル116には、静電容量変化により液体の有無を検出する液面センサ117が接続されており、ノズル116と液面センサ117はアーム118に保持される。分注機構105が分注動作を行うポジションの近傍には、シールド部114が備えられている。また、分注機構105を上下方向、または回転方向に移動させるために分注機構用モーター119が備えられている。
【0028】
攪拌機構106は、検体容器110から反応容器112に吐出された検体中の分析対象成分と、試薬容器113から反応容器112に吐出された試薬の反応を促進するために、反応容器112中の反応液の攪拌を行う。
【0029】
分光器107は、攪拌機構106により攪拌され化学反応した反応液を吸光度測定による比色分析を行う。
【0030】
また、反応容器洗浄機構108は、比色分析を終了した反応容器112から反応液の吸引を行い、洗剤などを吐出し、反応容器112の洗浄を行う。
【0031】
また、ノズル洗浄機構109は、検体や試薬を分注した分注機構105のノズル先端を、残留物により次の分析対象に影響をおよぼさないように洗浄する。
【0032】
次に、
図2及び
図3を用いて、本発明とは異なる例であり、本発明との比較のための例示である静電容量方式を用いた液面検知手段について説明する。
【0033】
図2及び
図3に、ノズル116の内部と、容器201(検体容器110または試薬容器113)の断面図を示す。
図2及び
図3において、ノズル116の内部構造は中心が空洞でその内部を液体が流れる流路206となっている。流路206を囲うようにノズル内部金属207が位置し、流路の壁として、また、液面検知用静電容量検出部としての役目を持つ。ノズル内部金属207は液面検知用静電容量検出部であるため、外部からの影響を軽減するためシールド用の金属管204を備える。
【0034】
そして、シールド用の金属管204を誘電体205が保持する。ノズル内部金属207と接地された筐体203間の静電容量は、ノズル内部金属207と接地されたシールド用の金属管204の静電容量C1と、ノズル内部金属207と検体または試薬である液体208間の静電容量C2と、検体または試薬208と接地された筐体間の検体容器110又は試薬容器113用フォルダ202の静電容量C3により決定する。
【0035】
図2に示すように、ノズルの内部金属207が液面に接触しない時、ノズル内部金属207と接地された筐体203間の静電容量は、C1+(C2*C3/(C2+C3))となる。
【0036】
図3に示すように、ノズルの内部金属207が液体208の液面に接触すると、ノズル内部金属207と接地された筐体203間の静電容量は、C2が物理的に無くなりC1+C3となる。このノズルと接地された筐体203間の静電容量の変化を検出し、CV変換、信号処理回路を経て、判定回路により液面の接触を判断する。
【0037】
図4に、本発明とは異なり、本発明との比較のために例示する例である液面検知に必要なアーム118とノズル116の断面図を示す。
図4は分注機構内のアーム底面を中心に記載するため、アーム上面やノズル先端は省略する。
【0038】
図4において、ノズル116を保持するため、金属管404(シールド用)にドーナツ状の第1の金属405が備えられている。金属管404(シールド用)とドーナツ状の第1の金属405は物理的に接合させ、常に電気的に接続された状態とする。
【0039】
ドーナツ状の第1の金属405とアーム上面間にはバネ等の弾性体を使用し、ノズルの振動を抑える。金属管404の内部側に誘電体406が形成され、この誘電体406の内部側に信号用のノズル内部金属403が形成される。そして、内部金属403の内部側が流体流路402となっている。
【0040】
アーム内壁401は導電塗料が塗られ、接地された筐体203と電気的に接続された状態となる。また、アーム内壁401とドーナツ状の第1の金属405は接触しているため、金属管404(シールド用)も接地された状態となる。
【0041】
次に、接触・
非接触を利用した容器底面検知の概要を説明する。
【0042】
図5は、本発明の実施例1における容器底面検知に必要なアーム118とノズル116の断面図である。
図5に示したノズルの内部構造は、
図2及び
図3に示したノズル内部構造と同様である。
【0043】
つまり、金属管504の内部側に誘電体508が形成され、この誘電体508の内部側に信号用のノズル内部金属503が形成される。そして、内部金属503の内部側が流体流路502となっている。
【0044】
図5は分注機構内のアーム底面を中心に記載するため、アーム上面やノズル先端は省略する。
【0045】
図5に示した例は、
図4に示した液面検知に必要な構造に加え、アーム内壁501とドーナツ状の第1の金属505との間にドーナツ状の第2の金属506を取り付け、プローブが容器底面に接触した時にドーナツ状の第1の金属505とドーナツ状の第2の金属506とが離れる構造とする。アーム内壁501は導電塗料が塗られ、接地された筐体702(自動分析装置の筐体(液体分注装置の筐体))と電気的に接続され、接地された状態となる。
【0046】
また、ドーナツ状の第1の金属
506は金属管504(シールド用)と同電位であるが、接地された状態ではなくなるため電気的に浮いた状態となる。金属管504(シールド用)を浮いた状態にするため、振動を抑えるためにドーナツ状の第1の金属505とアーム上面間に使用するバネは絶縁体または一部絶縁体とする。
【0047】
ノズルが容器底面に未到達時は、ドーナツ状の第1の金属505とドーナツ状の第2の金属506とが接触しているため、金属管504(シールド用)は接地された状態となる。
【0048】
上記構造とすることで、ノズルが容器底面に接触するとノズルに垂直方向の力が加わり、
図6に示すように、ドーナツ状の第1の金属505とドーナツ状の第2の金属506とが離れ非接触となる。ドーナツ状の第2の金属
506は、導電塗料が塗られたアーム内壁501と電気的に接続されていて、接地された筐体203と電気的に接続された状態となる。
【0049】
また、ドーナツ状の第1の金属505は金属管504(シールド用)と同電位であるが、接地された状態ではなくなるため電気的に浮いた状態となる。金属管504(シールド用)を浮いた状態にするため、振動を抑えるためにドーナツ状の第1の金属505とアーム上面間に使用するバネは絶縁体または一部絶縁体とする。
【0050】
図7は、本発明の実施例1におけるノズル116の内部と、反応容器112の断面図である。
【0051】
図7において、ノズル内部金属706と接地されたシールド用の金属管703の静電容量C1は
図2の液面検知と同じであるが、導電性の液体が容器701内にないため、静電容量C2とC3が無くなり、ノズル内部金属706と接地された装置の筐体702との間の静電容量C4が存在する。なお、ノズル内部金属706の内部側が流路705となっている。
【0052】
ノズルの内部金属706が反応容器701底面に接触しない時、ノズル内部金属706と接地された筐体との間の全静電容量は、C1+C4となる。
【0053】
ノズルの内部金属207が反応容器701底面に接触するとノズルに垂直方向の力が加わり、金属管703(シールド用)は、接地された状態ではなくなるため電気的に浮いた状態となる。このため、ノズル内の誘電体704の内部側のノズル内部金属706とシールド用の金属管703間の静電容量C1が0となり、ノズル内部金属706と接地された筐体間の全静電容量は、
図8に示す静電容量C4のみとなる。
【0054】
静電容量C1は通常数十pFであるため、反応容器701の底面に接触すると、数十pFの静電容量の変化が起きる。液面センサ117は約0.1pFの容量変化で液面を検出可能なため、同一回路を使用すれば感度に十分尤度があり容器底面検出が容易に可能となる。
【0055】
次に、容器底面検知と液面検知とを可能とする回路構成について説明する。
【0056】
まず、
図9は接地状態を示す図である。
図9において、ノズルの容器底面到達前は、筐体、アーム内壁、液面センサ117のGND、ノズルの金属管が全て接地された状態とする。従来の技術である液面検知も同じ接地の状態であるため、副作用は無い。
【0057】
一方、ノズルの容器底面到達後は、金属管のみ接地された状態ではなくなるため電気的に浮いた状態となる。この状態で意図して液面検知させる状況は無いため、容器底面到達前同様に液面検知への副作用は無い。
【0058】
本発明の実施例1による静電容量式液面センサ117の機能ブロック図を
図10に示す。
図10において、プローブと接地された筐体間の静電容量が液面センサ117に入力される。入力された静電容量をCV変換回路115aにより電圧に変える。この電圧は整流回路等の役割を持つ信号処理回路115bを経てDCに変えられ、判定回路117cにより一定電圧と比較され、液面検知信号を出力する。
【0059】
判定回路117cから出力された液面検知信号は、制御部115に入力される。制御部115は、入力された液面検知信号に従って、分注機構105の動作を制御する。
【0060】
液面接触時より容器底面に接触時のほうが、静電容量の変化が大きいため比較回路を変える必要が無い。よって、容器底面検出は、静電容量式液面検知の機能ブロック図と同じであり、液面センサ回路の変更は一切必要がない。
【0061】
液面検知と容器底面検知は1回の下降で両方の検知をさせるような装置の使い方はしない。また、下降する場所により、液面検知をさせるか容器底面検知をさせるかが決まっている。
【0062】
よって、装置状態監視としては、分注機構が液体吐出時の下降であるか、液体吸引時の下降であるかにより、液面検知と容器底面検知を区別させることが可能となる。つまり、静電容量変化が液面検知レベル以上となったとき、判定回路117cからの出力信号を制御部115に供給すれば、分注機構の動作が液体吐出か吸引化により、液面検知と容器底面検知とを区別することが可能である。
【0063】
上記のことから、現行品で使用している1つの液面センサで液面検知と容器底面検知の両方の検知が可能となる。そのため、容器底面検知を可能にさせても、追加のセンサや取付けスペースを必要とせず、低コスト・省スペースを実現できる。
【0064】
次に、液面、容器底面、異常下降検知の区別方法について説明する。
【0065】
まず、
図11に異常下降または容器底面検出方法を示す。異常下降検知センサとして、アーム内部に固定されたアーム内基板1103にフォトインタラプタ1102が取り付けられている。フォトインタラプタ1102の出力信号は制御部115に入力されている。
【0066】
通常状態では、ノズル1101に取り付けられた遮蔽板1105がフォトインタラプタ1102に干渉しないため、異常下降は非検知状態となる。
【0067】
ここで、分注機構用モータ119により分注機構が降下すると、ノズル1101が容器底面または異物1104に接触する。このままモータ119が動作を続けると、ノズル1101に垂直方向の力が加わり、遮蔽板1105がフォトインタラプタ1102内部に入り込む。
【0068】
これにより、フォトインタラプタ1102内の光を遮り容器底面または異常下降検知状態となる。
【0069】
次に、液面、容器底面、異常下降検知を検出する必要があるタイミングを説明する。
【0070】
液面検知は、試料を吸引する際にノズルの液中への突っ込み量を最小限に抑えるため必要となる。一方、容器底面検知は、吸引した試料を吐出する際に検出が必要となる。また、異常下降検知はノズルの異物や容器外への接触、または液面検出失敗を検出するため、吸引・吐出の双方で必要となる。
【0071】
よって、液体を吸引するために分注機構が下降する際は、液面、異常下降を検出可能とし、液体を吐出するために分注機構が下降する際は、容器底面、異常下降を検出可能とする必要がある。
【0072】
液面、容器底面、異常下降検知を区別する方法を、
図12、
図13を用いて2通り説明する。
図12、
図13に示した動作は制御部115により判断及び制御が行われる。
【0073】
1つめの方法は、フォトインタラプタを使用し分注機構の異常下降を検出する方法である。上述したように、液体を吸引するために分注機構が下降する際は、液面検知及び異常下降検知を可能とし、液体を吐出するために分注機構が下降する際は、容器底面検知及び異常下降検知を可能とする必要がある。
【0074】
図12において、まず、液体を吐出するために分注機構が下降開始すると(ステップ100A)、静電容量変化を検出した場合は(ステップ
101a)、容器底面を検知したことになり(ステップ
101b)、吐出を行なう(ステップ
101c)。
【0075】
一方、フォトインタラプタの論理反転を検出した場合は(ステップ102a)、異常下降を検知したことになり(ステップ102b)、吐出を行なわずにアラーム等によりユーザに異常状態であることを知らせる(ステップ102c)。
【0076】
次に、液体を吸引するために分注機構が下降開始すると(ステップ100B)、静電容量変化を検出した場合は(ステップ
103a)、液面を検知したことになり(ステップ
103b)、吸引を行なう(ステップ103c)。
【0077】
一方、フォトインタラプタの論理反転を検出した場合は(ステップ104a)、異常下降を検知したことになり(104b)、吸引を行なわずにアラーム等によりユーザに異常状態であることを知らせる(ステップ104c)。
【0078】
2つめの方法は、分注機構用モーター119の下降パルス数を監視し、液面、容器底面、異常下降検知を区別する方法である。分注機構用モーター119の下降は、一般的にある決められた高さ(上限点)から下降を始めるため、下降パルス数を監視することで、ノズル先端の位置がどこにあるかを把握することが可能である。
【0079】
上述したように、液体を吸引するために分注機構が下降する際は、液面検知及び異常下降検知を可能とし、液体を吐出するために分注機構が下降する際は、容器底面検知及び異常下降検知を可能とする必要がある。
【0080】
図13において、まず、液体を吐出するために分注機構が下降を開始すると(ステップ200A)、静電容量変化を検出した場合(ステップ201a)、下降パルス数が設定範囲内か否かを判断し(ステップ201b)、設定範囲内であれば容器底面と判断し(ステップ201c)、吐出を行なう(ステップ201d)。
【0081】
一方、ステップ201bで、下降パルス数が設定範囲外であれば、異常下降を検知したことになり(ステップ201e)、吐出を行なわずにアラーム等によりユーザに異常状態であることを知らせる(ステップ201f)。
【0082】
下降パルス数の設定範囲は容器底面の高さ方向のばらつきにある程度の尤度を持たせた範囲とすればよい。生化学自動分析装置の場合、容器底面の高さ方向のばらつきは0.3mm以下であるため、下降パルス数の設定範囲は約0.3mmとなり、容器底以外に誤って吐出する可能性は極めて低い。
【0083】
次に、液体を吸引するために分注機構が下降開始すると(ステップ200B)、静電容量変化を検出した場合(ステップ202a)、下降パルス数が設定値内か否かを判断する(ステップ202b)。下降パルス数が設定値内であれば、液面と判断し(202c)、吸引を行なう(ステップ202d)。
【0084】
一方、ステップ202bで、下降パルス数が設定値外であれば、異常下降を検知したと判断し(202e)、吸引を行なわずにアラーム等によりユーザに異常状態であることを知らせる(ステップ202f)。下降パルス数の設定値は、吸引する液体が格納された容器に入りうる最大と最小の液量から換算した高さにある程度の尤度を持たせた範囲とすればよい。生化学自動分析装置の場合、吸引する液体が格納された容器(試験管)に入りうる液量から換算した高さは数センチとなってしまうが、吸引時の圧力を監視し空吸いを検出可能とすることで、異物を液面と誤検知してしまった場合もアラーム等によりユーザに異常状態であることを知らせることが可能となる。
【0085】
その他、上記方法を組み合わせ、フォトインタラプタと下降パルスの双方を監視することでより信頼性を高める手段も考えられる。
【0086】
以上のように、本発明の実施例1によれば、静電容量検出とフォトインタラプタによる検出とを組み合わせて、液面検出、容器底面検出、異常下降検出を行うように構成、又は、静電容量検出と下降パルス数カウントによる検出とを組み合わせて、液面検出、容器底面検出、異常下降検出を行うように構成したので、安価でありながら、容器底面、液面、異常下降検知を検出できる液体分注装置及びそれを用いた自動分析装置を実現することができる。
【実施例2】
【0087】
次に、本発明の実施例2について説明する。この実施例2は、分注ノズルのシールド部とアームに取り付けられた導電性物体間の静電容量変化により、電気信号の変化を検出し、液面の検知、容器底面の検知を行う例である。
【0088】
本発明の実施例2を適用した自動分析装置の概略構成図は実施例1の
図1と同様である。
【0089】
静電容量変化を利用した容器底面検知の概要を説明する。
【0090】
図14は、容器底面検知に必要なアーム118とノズル116との断面図である。ノズル内部構造は
図2及び
図3に示した例と同一とする。
図14は分注機構内のアーム底面を中心に記載するため、アーム上面やノズル先端は省略する。
【0091】
図14に示した例においては、
図4に示した液面検知に必要な構造に加え、アーム内壁1301とドーナツ状の金属1305との間にドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306を取り付け、プローブが容器底面に接触した時にドーナツ状の金属1305とドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306とが離れる構造とする。
【0092】
なお、金属管1304の内部側に誘電体1307が形成され、誘電体1307の内部側にノズル内部金属1303が形成され、このノズル内部金属1303内部側が流路1302となっている。
【0093】
アーム内壁1301は液面センサのGNDと電気的に接続し、接地された状態とする。また、金属管1304も同様に液面センサのGNDと電気的に接続し、接地された状態とする。
【0094】
ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306の金属部と接地された筐体間の静電容量は、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306とドーナツ状の金属1305との間の静電容量C5と、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306とアーム内壁1301との間の静電容量C6の和となる。
【0095】
上記構造とすることで、ノズルが容器底面に接触するとノズルに垂直方向の力が加わり、ドーナツ状の金属1305とドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306が離れる。この時、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306の金属部とドーナツ状の金属1305間の静電容量C5が変化する。この静電容量の変化を検出し、容器底面を検出する。振動を抑えるためにドーナツ状の金属1305とアーム上面間に使用するバネは導体でも絶縁体でもよい。
【0096】
次に、静電容量の変化について説明する。例えば、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306の金属部とドーナツ状の金属1305の表面積を1×10
−4mm
2、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306の誘電体の厚さが0.25mm、空気中の誘電率を8.85×10
−12とする。このとき、容器底面に接触し、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306とドーナツ状の金属1305との間に0.01mmの隙間が出来れば、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306の金属部とドーナツ状の金属1305との間の静電容量C5は約0.13pF変化することになる。
【0097】
液面センサ117は約0.1pFの容量変化で液面を検出可能なため、この液面センサ117を使用すれば0.01mmの感度で容器底面検出が容易に可能となる。
【0098】
次に、容器底面検知と液面検知とを可能とする回路構成について説明する。
【0099】
まず、接地の状態について説明する。本発明の実施例2においては、実施例1とは異なり、容器底面到達前後共に、筐体、アーム内壁、液面センサ117のGND、ノズルの金属管が全て接地された状態とする。従来の技術においても、液面検知は同様な接地状態であるため、副作用は無い。
【0100】
実施例2における機能ブロック図を
図15に示す。液面センサ117に入力される静電容量は、
図7に示したノズル内部金属706と接地された筐体702との間の静電容量(C1+C4)と、
図14に示したように、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体の金属部1306と接地された筐体間(C5+C6)の静電容量との和となる。
【0101】
容器液面検知の場合は、実施例1と同様に、ノズル内部金属1303と接地された筐体702との間の静電容量により行い、容器底面検知の場合は、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体の金属部1306と接地された筐体間(C5+C6)の静電容量により行う。その切り換えを行うためのスイッチ117dが設けられている。
【0102】
つまり、静電容量センサ117が検知した合成静電容量が第1の設定値(ノズルが容器内の液面に接触したときの合成静電容量値)以上であって、第2の設定値(ノズルが容器底面に接触したときの合成静電容量値)未満である場合は、液体容器の液面に分注ノズルが到達したと判断し、静電容量センサが検知した合成静電容量が第2の設定値以上である場合は、液体容器の底面に分注ノズルが到達したと判断し、移動機構119及び分注機構105の動作を停止させる
その他は、
図10の静電容量式液面センサの機能ブロック図と同様である。液面検知の際は静電容量C4が変化し、容器底面検知の際は静電容量C5が変化する仕組みである。また、実施例1でも記載したように、液面検知と容器底面検知は1回の下降で両方の検知をさせるような装置の使い方はしない。また、下降する場所により、液面検知をさせるか容器底面検知をさせるかが決まっている。よって装置状態監視としては、液面検知と容器底面検知を区別させることが可能となる。
【0103】
以上のように、本発明の実施例2によれば、実施例1と同様に、1つの液面センサで液面検知と容器底面検知の両方の検知が可能となる。そのため、容器底面検知を可能にさせても、追加のセンサや取付けスペースを必要とせず、低コスト・省スペースを実現することができる。
【0104】
なお、液面、容器底面、異常下降検知の区別方法は実施例1と同様であり、液体吐出のための下降動作時には容器底面検知及び異常下降検知であり、液面検知は不要、液体吸引のための下降動作時には液面検知及び異常下降検知であり、容器底面は不要となる。
【0105】
以上説明した本発明の実施例の他に、以下のような変形例も考えられる。
【0106】
つまり、実施例1において、振動によりドーナツ状の第1の金属505と、ドーナツ状の第2の金属506との接触が不安定になった場合、誤検知しないようにするため、液面センサ内の信号処理回路にノイズを除去する回路を加えることが可能である。
【0107】
例としては、コンデンサによるフィルタ回路、NF、NFマイコン、CPUが挙げられる。また、ドーナツ状の第1の金属505と、ドーナツ状の第2の金属506との接触部分に水が入り誤検知することを防ぐため、接触部分をカバーで覆う構造も考えられる。
【0108】
実施例2においても、同様に振動によりドーナツ状の第1の金属1305と、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体1306との接触が不安定になった場合、誤検知しないようにするため液面センサ内の信号処理回路にノイズを除去する回路を加えることが可能である。例としては、上記実施例1の場合と同様である。
【0109】
実施例1、実施例2において、形状はドーナツ状に限らず、安定して接触すればどのような形状でもよい。例えば、実施例1でドーナツ状の第1の金属505を球体状の金属としても検出に影響は無い。
【0110】
また、実施例1において、ドーナツ状の第1の金属505と接するアーム底面が導電性であればドーナツ状の第2の金属506は使用する必要はない。
【0111】
また、実施例1において、ドーナツ状の第1の金属505とドーナツ状の第2の金属506が容器底面到達時に互いに離れるのではなく、接触型スイッチ等で容器底面到達時にノズルが接触したことを検出する手段も考えられる。
【0112】
また、実施例1、実施例2において、振動を抑えるためにドーナツ状の金属とアーム上面間にバネを使用するが、弾性体であればバネに限る必要はない。
【0113】
さらに、実施例2において、ノズル内部金属と接地された筐体間の静電容量(C1+C4)と、ドーナツ状の金属を誘電体で挟んだ物体の金属部と接地された筐体間(C5+C6)を、タイミングによりスイッチで切り替える方法も考えられる。