(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の縦枠材のうちの一方の縦枠材の一側面に、上下方向に間隔を空けて、それぞれが両縦枠材と同厚さとされた複数本の横桟材を略水平方向に突出させて設けた第1枠部材と、
前記一方の縦枠材の一側面に対向配置される他方の縦枠材の一側面に、前記第1枠部材の複数本の横桟材と上下方向でずれた位置となるように、上下方向に間隔を空けて、それぞれが両縦枠材と同厚さとされた複数本の横桟材を略水平方向に突出させて設けた第2枠部材と、を備えており、
前記第1枠部材及び前記第2枠部材のうちの一方の最上段に位置する横桟材は、前記縦枠材の一側面の上端部から突出するように設けられ、前記第1枠部材及び前記第2枠部材のうちの他方の最下段に位置する横桟材は、前記縦枠材の一側面の下端部から突出するように設けられており、
前記第1枠部材及び前記第2枠部材の横桟材同士の少なくとも一部が上下で重合するように配置された状態で、これら第1枠部材及び第2枠部材の表裏のそれぞれに面材が固定されることを特徴とする下地枠体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜
図4は、本実施形態に係る下地枠体及びこれを用いた袖壁構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、
図3(b)に示すY方向から見た状態を基準として、
図3(b)における上側を背面側、下側を手前側として、その方向等を原則的に説明する。
【0014】
本実施形態に係る下地枠体1は、
図1に示すように、一対の縦枠材12,15を備え、これらのうちの一方の縦枠材12を備えた第1枠部材11と、他方の縦枠材15を備えた第2枠部材14と、を備えている。
これら第1枠部材11及び第2枠部材14の各縦枠材12,15は、上下に長尺の角材状とされ、高さ寸法及び厚さ寸法が同寸法とされており、本実施形態では、幅寸法も同寸法とされている。
【0015】
第1枠部材11の縦枠材12の一側面12aには、上下方向に間隔を空けて、複数本(図例では、4本)の横桟材13が略水平方向に突出して設けられている。
この第1枠部材11の縦枠材12の一側面12aに対向配置される第2枠部材14の縦枠材15の一側面15aには、上下方向に間隔を空けて、複数本(図例では、4本)の横桟材16が略水平方向に突出して設けられている。この第2枠部材14の各横桟材16は、
図1(b)に示すように、各枠部材11,14のそれぞれの縦枠材12,15の一側面12a,15a同士を対向させた状態で、第1枠部材11の複数本の横桟材13と上下方向でずれた位置となるように設けられている。
【0016】
つまり、当該下地枠体1の幅方向(左右方向)に間隔を空けて配設される一対の縦枠材12,15のそれぞれの一側面(内側面)12a,15aにおいて、各枠部材11,14の複数本の横桟材13,16が上下方向に異なる高さ位置となるように設けられている。本実施形態では、各枠部材11,14のそれぞれの縦枠材12,15の内側面12a,15a同士を対向させた状態で、各枠部材11,14の横桟材13,16が上下方向に交互に配置されるように各横桟材13,16を設けている。なお、各枠部材11,14の各縦枠材12,15と各横桟材13,16とは、釘やねじ、タッカー等の固定止具乃至は接着剤等の固定連結手段で固定連結するようにしてもよい。
【0017】
これら第1枠部材11及び第2枠部材14の各横桟材13,16は、左右に長尺の角材状とされ、それぞれの厚さ寸法が両縦枠材12,15の厚さ寸法と同寸法とされている。また、本実施形態では、各横桟材13,16は、それぞれの長さ寸法(左右寸法)及び幅寸法(上下寸法)が同寸法とされている。
また、本実施形態では、
図1(a)に示すように、これら第1枠部材11及び第2枠部材14のそれぞれを、同寸同形状としている。つまり、各枠部材11,14の各縦枠材12,15の各一側面12a,15aが同じ方向に向くようにこれら各縦枠材12,15を厚さ方向に一致させた状態において、各枠部材11,14の各横桟材13,16同士が厚さ方向に一致する構成とされている。これによれば、当該下地枠体1を構成する第1枠部材11及び第2枠部材14を同一部材とでき、各枠部材11,14を予め工場等において形成する際の組み付け工程乃至はラインを簡素化でき、また、取り扱い性を向上させることができる。なお、これら枠部材11,14からなる下地枠体1を組み付ける際には、
図1(b)に示すように、これら枠部材11,14のうちの一方(図例では、第2枠部材14)を、当該下地枠体1の厚さ方向に沿う水平軸廻りに180度回転させて配置し、組み付けられる。
【0018】
これら第1枠部材11と第2枠部材14とは、
図1(b)及び
図2に示すように、各枠部材11,14の横桟材13,16同士の少なくとも一部が上下で重合するように配置されて、壁体乃至は扉体の下地(芯材)10となる。また、これら第1枠部材11及び第2枠部材14からなる下地10の表裏10a,10bのそれぞれに面材17,18が固定され、壁体乃至は扉体が形成される。
また、本実施形態では、各枠部材11,14の横桟材13,16同士の少なくとも一部が上下で重合するように配置された状態で、互いに隣接する第1枠部材11の横桟材13と第2枠部材14の横桟材16とが上下に当接する構成としている。つまり、互いに隣接して向き合う第1枠部材11の横桟材13の一側面(上側面)13aと第2枠部材14の横桟材16の一側面(下側面)16aとが当接するように、これら第1枠部材11及び第2枠部材14のそれぞれに、各横桟材13,16を設けている。
【0019】
上記のように互いに隣接する第1枠部材11の横桟材13と第2枠部材14の横桟材16とが上下に当接する構成とすることで、互いに当接する横桟材13,16同士を上記同様の固定連結手段で固定連結することができる。これにより、当該下地枠体1の強度を向上させることができ、当該下地枠体1を用いて形成される壁体乃至は扉体の強度をより向上させることができる。また、第1枠部材11及び第2枠部材14の横桟材13,16同士を固定連結して組み付けた状態で、壁体の下地として建て付けることも可能となり、施工性を向上させることができる。または、第1枠部材11及び第2枠部材14の横桟材13,16同士を固定連結して組み付けた状態で、その表裏10a,10bに面材17,18を固定することができ、施工性乃至は組み付け性を向上させることができる。
【0020】
また、本実施形態では、第1枠部材11及び第2枠部材14のうちの一方(図例では、第2枠部材14)の最上段に位置する横桟材16を、縦枠材15の内側面15aの上端部15bから突出するように設けている。つまり、第2枠部材14の複数本の横桟材16のうちの最上段の横桟材16の上側面と縦枠材15の上端面とが略同一平面状となるように、最上段の横桟材16を、縦枠材15の上端部に固定連結している。
また、他方(図例では、第1枠部材11)の最下段に位置する横桟材13を、縦枠材12の内側面12aの下端部12bから突出するように設けている。つまり、第1枠部材11の複数本の横桟材13のうちの最下段の横桟材13の下側面と縦枠材12の下端面とが略同一平面状となるように、最下段の横桟材13を、縦枠材12の下端部に固定連結している。
【0021】
上記のような構成とすることで、当該下地枠体1の上端部及び下端部のそれぞれにいずれかの枠部材11,14の横桟材13,16が位置することとなるため、当該下地枠体1の上端部及び下端部における強度を向上させることができる。
また、当該下地枠体1が壁体の下地として設置されるような場合には、上端部及び下端部に位置する横桟材13,16を、廻り縁や巾木等の固定下地として利用することができ、固定下地を別途、配設するような場合と比べて、施工性を向上させることができる。
【0022】
なお、本実施形態では、互いに隣接する第1枠部材11の横桟材13と第2枠部材14の横桟材16とが上下に当接する構成としている。従って、第1枠部材11の最上段に位置する横桟材13は、その上側面13aから縦枠材12の上端面までの寸法が第2枠部材14の最上段の横桟材16の上下寸法と同寸法となるように縦枠材12の上端面から下方側に控えた位置に設けられている。また、第2枠部材14の最下段に位置する横桟材16は、その下側面16aから縦枠材15の下端面までの寸法が第1枠部材11の最下段の横桟材13の上下寸法と同寸法となるように縦枠材15の下端面から上方側に控えた位置に設けられている。
【0023】
これら各枠部材11,14を構成する各縦枠材12,15及び各横桟材13,16は、木質系材料から形成されたものとしてもよい。木質系材料としては、合板やLVL(単板積層材)等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などを採用するようにしてもよい。
本実施形態では、各縦枠材12,15及び各横桟材13,16は、繊維方向を長手方向に沿わせたLVLを角材状に加工して形成されている。このように、当該下地枠体1の各縦枠材12,15及び各横桟材13,16を、LVLから形成しているので、寸法安定性に比較的に優れ、強度ばらつきが比較的に少なくなるため、壁体や扉体の下地乃至は芯材として好適なものとなる。
なお、各縦枠材12,15及び各横桟材13,16は、上記した木質系材料以外のものから形成するようにしてもよい。例えば、合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉(木質)・プラスチック複合材(WPC)や、その他の合成樹脂系材料、金属系材料等から形成されたものとしてもよい。
【0024】
次に、上記構成とされた下地枠体1を用いて壁体乃至は扉体を形成する組み付け手順の一例について説明する。
まず、
図1(b)に示すように、各枠部材11,14の縦枠材12,15を当該下地枠体1の幅方向に間隔を空けて対向させ、各枠部材11,14の横桟材13,16同士の少なくとも一部が上下で重合するように配置し、壁下地乃至は扉芯材となる下地10を形成する。この際、当該下地枠体1(下地10)の幅寸法が、当該下地枠体1を用いて形成される壁体乃至は扉体の幅寸法に応じた寸法となるように、互いの縦枠材12,15の間隔を調整する。また、このように幅調整した後、本実施形態では、互いに隣接する第1枠部材11の横桟材13と第2枠部材14の横桟材16とが上下に当接する構成としているので、当接する横桟材13,16同士を上記固定連結手段で固定連結するようにしてもよい。
【0025】
次いで、
図2(a)、(b)に示すように、各枠部材11,14の縦枠材12,15及び横桟材13,16の表面及び裏面によって構成される下地10の表面10a及び裏面10bのそれぞれに面材17,18を固定し、壁体(乃至は扉体)19が形成される。これら表裏の面材17,18の下地10への固定は、上記同様の固定止具や接着剤等によって固定するようにしてもよい。
【0026】
なお、面材17,18としては、無垢材や上記同様の木質系材料、無機質系材料、合成樹脂系材料等を板状に加工したものとしてもよい。また、それぞれの外側表面に、合成樹脂化粧シートや化粧紙、クロス等の化粧シートまたは突板等の表面化粧材を貼着するようにしてもよい。また、当該下地枠体1を、壁体の下地10として用いる場合には、これら面材17,18を、石膏ボードからなるものとしてもよい。また、当該下地枠体1を用いて形成される壁体としては、後記する袖壁体に限られず、施工現場等において幅調整が必要となる間仕切壁等の他の壁体としてもよい。また、当該下地枠体1を用いて形成される扉体としては、引戸や開き戸、折戸等、開口幅に応じた戸幅寸法とする必要のある扉体(建具)としてもよい。また、当該下地枠体1を用いて形成される壁体乃至は扉体の高さ寸法に応じて、各縦枠材12,15の長さ寸法を適宜、設定するようにしてもよい。また、各横桟材13,16の長さ寸法を、壁体乃至は扉体の幅調整に対応可能なように、壁体乃至は扉体の必要となる調整幅(調整度合い)に応じて適宜設定しておくようにしてもよい。
【0027】
上記構成とされた本実施形態に係る下地枠体1によれば、簡易な構造でありながらも壁体乃至は扉体の幅寸法の違いに容易に対応することができるとともに強度を向上させることができる。
つまり、それぞれに横桟材13,16を設けた第1枠部材11及び第2枠部材14の互いの縦枠材12,15の間隔を調整することで、当該下地枠体1を用いて形成される壁体乃至は扉体の幅寸法の違いに容易に対応することができる。つまりは、各枠部材11,14の縦枠材12,15に上下に間隔を空けて複数本の横桟材13,16を設けた極めて簡易な構造でありながらも、当該下地枠体1を用いて形成される壁体乃至は扉体の幅寸法の違いに容易に対応することができる。
また、各枠部材11,14の横桟材13,16同士の少なくとも一部が上下で重合するように配置されて、これら枠部材11,14の縦枠材12,15間に複数本の横桟材13,16が上下に配設されることとなるため、縦枠材12,15間の強度を向上させることができる。これにより、当該下地枠体1を用いて形成される壁体乃至は扉体の強度を向上させることができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る下地枠体1を用いた袖壁構造の一例について、
図3及び
図4に基づいて説明する。
本実施形態では、下地枠体1を、
図3に示すように、建物内に設けられた開口部4に、引戸3が引き込まれる袖壁の下地(袖壁下地)10として配設した例を示している。図例では、一枚からなる片引き式の引戸3を納める袖壁の袖壁下地10として配設した例を示している。
【0029】
開口部4は、柱材や間柱、横桟(まぐさ)、飼木、床下地(乃至は床面)などの枠下地5によって正面視して略矩形状に形成されている(
図4も参照)。
この開口部4の内周面に沿うようにして、引戸3を建て付ける戸枠2が配設される。
開口部4の開口幅は、
図3(b)に示すように、開口部4に配設された戸枠2に建て付けられる引戸3が開閉自在にスライドし得るように引戸3の戸幅及び戸枠2の厚さ(引戸3の戸幅と同方向に沿う厚さ)に応じて形成される。つまり、本実施形態のように袖壁納めで施工される片引き式の引戸3を例にすれば、開口部4の開口幅は、当該引戸3の戸幅の略2倍程度の幅寸法とされる。
【0030】
戸枠2は、図例では、一対の縦枠21,22(戸先側縦枠21及び戸尻側縦枠22)と、これら縦枠21,22の上端部間に架設された上枠(鴨居)20と、これら縦枠21,22間の略中間部に設けられた中間縦枠(中方立)23とを備えている(
図4も参照)。
上枠20は、その下面側に、引戸3のスライド移動を案内する上吊レールや案内溝を長手方向に沿って有している。また、この上枠20は、戸先側が、開口部4の戸先側に形成される内壁7の壁厚に対応させて幅広部とされ、戸尻側が、下地枠体1を用いて形成される後記する袖壁体19の壁厚を加味して上記幅広部よりも幅の狭い幅狭部とされている。また、この上枠20の幅広部と幅狭部とを区切る長手方向略中央部には、中方立23の上端部が係合する切欠部が形成されている。
【0031】
戸先側縦枠21は、上枠20の上記幅広部に応じた幅寸法(壁厚方向の幅寸法、見込み方向の寸法)とされ、開口部4の戸先側の内側面に沿うように上下方向に沿って配設される。
戸尻側縦枠22は、上枠20の上記幅狭部に応じた幅寸法(壁厚方向の幅寸法)とされ、開口部4の戸尻側(袖壁側)の内側面に沿うように上下方向に沿って配設される(
図3も参照)。これら戸先側縦枠21及び戸尻側縦枠22には、引戸3の戸先側端部乃至は戸尻側端部を受け入れる戸じゃくり溝が上下方向に沿って形成されている。
中方立23は、開口部4の略中間位置において上下方向に沿って配設され、その壁厚方向に沿う幅寸法が、下地枠体1を用いて形成される袖壁体19の壁厚に応じた幅寸法とされている。この中方立23の壁厚方向背面側端面には、引戸3の手前側表面3aに摺接する隙間遮蔽部材(モヘア部材)が上下方向に沿って添設されている。
【0032】
上記構成とされた戸枠2は、上枠20の長手方向の各端面を、各縦枠21,22の上端部内側面に突き合わせ、これら縦枠21,22の上端部の外側面から木ねじ等の固定止具を螺入して、上枠20と各縦枠21,22とを連結するようにしてもよい。また、上枠20の上記切欠部に中方立23の上端部を係合させ、木ねじ等の固定止具を螺入して中方立23を上枠20に連結して、戸枠2を組み付けるようにしてもよい。
また、このように組み付けられた戸枠2は、
図4に示すように、開口部4の内周面に沿わせるようにして固定される。図例では、開口部4の内周天面を構成するまぐさや横桟などの枠下地5に沿わせるようにして上枠20を固定し、開口部4の内周両側面を構成する柱材などの枠下地5,5に沿わせるようにして一対の縦枠21,22を固定した例を示している。また、これら上枠20及び一対の縦枠21,22は、各枠下地5に対して飼木などのスペーサー材6を介して固定された例を示している。
また、中方立23の下端部は、床下地(乃至は床材)などの枠下地5に固定するようにしてもよい。
【0033】
引戸3は、上記構成とされた戸枠2にスライド自在に建て付けられる。本実施形態では、当該引戸3の上端部の両側端部にランナー部材3b,3bを連結固定し、これらランナー部材3b,3bを引戸3の戸幅方向に沿って走行自在に支持する走行案内部としての上吊レールを上枠20に設け、上吊式で開閉される構成とされている。なお、図示を省略しているが、床面には、引戸3のスライド移動をガイドするガイドピンが固定され、引戸3の下端面には、このガイドピンを受け入れる凹溝が形成されている。
なお、戸枠2としては、図例のように下枠を備えない上吊式の戸枠(三方枠)に限られず、引戸の下端部に戸車を設け、この戸車をガイドするレールを備えた下枠を更に備えた戸枠(四方枠)としてもよい。また、図例のような固定枠に限られず、ケーシング額縁を備えたいわゆるケーシング枠を戸枠として採用するようにしてもよい。
【0034】
袖壁下地10は、上記した第1枠部材11及び第2枠部材14のそれぞれを予め工場において組み付けておき、施工現場において袖壁の幅寸法W(
図4(a)参照)に応じた寸法となるように幅調整してこれら各枠部材11,14を組み付けて形成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、袖壁下地10の表面(手前面)10a及び裏面(背面)10bのそれぞれに面材としての石膏ボード17,18を固定して袖壁となる袖壁体19を形成し、この袖壁体19を開口部4に配設した例を示している。この袖壁体19は、開口部4の戸尻側の内側面から戸先側に向けて突出するように配設され、背面側の面材18に、引き込まれた状態の引戸3の手前側表面3aが対面するように配設される。
【0035】
この袖壁体19を形成する下地枠体1の各枠部材11,14は、互いの横桟材13,16同士の少なくとも一部が上下で重合するように配置された状態で、一般的な汎用の各種の引戸の戸幅に対応可能なように形成されている。例えば、互いの横桟材13,16同士の長手方向の重なり度合いが比較的に小さい状態(例えば、数cm程度の重なり度合いの状態)で、汎用の最大幅の引戸に対応可能なように、これら横桟材13,16を形成しておくようにしてもよい。また、互いの横桟材13,16同士の長手方向の全体が上下に略一致するように重合した状態で、汎用の最小幅の引戸に対応可能なように、これら横桟材13,16を形成しておくようにしてもよい。
【0036】
本実施形態では、袖壁体19の幅寸法を、開口部4の袖壁側(戸尻側)の枠下地5の内側面から中方立23の袖壁側側面までの幅寸法と略同寸法としている。つまり、本実施形態では、袖壁体19の一側端面19aが、中方立23の袖壁側側面に当接し、袖壁体19の他側端面19bが開口部4の袖壁側枠下地内側面に当接するように、袖壁体19の幅寸法を設定した例を示している。なお、袖壁側枠下地内側面としては、柱材等の枠下地の袖壁側内側面に限られず、飼木等のスペーサー材を枠下地として把握し、これの袖壁側内側面を、袖壁側枠下地内側面として把握するようにしてもよい。
【0037】
また、この袖壁体19の厚さ寸法は、当該袖壁体19によって形成する袖壁の壁厚に応じた厚さ寸法とされる。この袖壁の厚さ寸法は、建物内の内壁7自体の壁厚に応じて設定され、それに応じて袖壁下地10(下地枠体1)の厚さ寸法を、表裏10a,10bに固定される石膏ボード17,18の厚さを加味して設定するようにすればよい。つまりは、一般的な壁厚に応じて規定される袖壁の厚さ寸法に応じた寸法となるように、その表裏に固定される石膏ボード17,18の厚さ寸法を加味して、袖壁下地10(下地枠体1)の厚さ寸法を設定するようにしてもよい。
本実施形態では、袖壁下地10とその裏面10bに固定された石膏ボード18とを合わせた厚さ寸法を、
図3(b)に示すように、開口部4に固定された戸尻側縦枠22の壁厚方向手前側端面から枠下地(内壁の下地ともなる下地)5の手前側表面までの壁厚方向の寸法と略同寸法としている。つまりは、袖壁下地10の裏面10bに固定された石膏ボード18の表面を戸尻側縦枠22の壁厚方向手前側端面に当接させた状態で、この袖壁下地10の手前側の表面10aが枠下地5の手前側表面と略同一平面状となるように形成されている。
【0038】
次に、本実施形態に係る袖壁構造の施工手順の一例について説明する。
まず、上述したように、組み付けた戸枠2を、
図4(a)に示すように、開口部4に固定する(
図4(b)も参照)。
次いで、袖壁の幅寸法Wに応じた寸法となるように幅寸法を調整して組み付けた袖壁下地10の表裏10a,10bに、必要に応じて寸法調整した石膏ボード17,18を固定し、袖壁体19を形成する。そして、この袖壁体19を、開口部4の手前側から、開口部4の袖壁側枠下地内側面と、中方立23の袖壁側側面とによって幅方向が区画された開口部4内に嵌め込むようにして開口部4内に配置する。また、袖壁体19の幅方向の各端部を、戸尻側縦枠22及び中方立23のそれぞれに当接させて、当該袖壁体19を開口部4に固定する。
なお、この袖壁体19の開口部4への固定は、戸枠2及び枠下地5の両方または一方に対して、上記同様の固定止具を用いて固定するようにしてもよい。
【0039】
また、開口部4の周囲の壁下地に、内壁7を形成する石膏ボード等の壁面材8を固定する(
図3(b)参照)。このように壁面材8を固定した状態では、袖壁体19の表面側の石膏ボード17と、これに隣接する壁面材8とが、連なるように略面一状となる。そして、必要に応じて、袖壁体19の手前面及び背面並びに各壁面材8の表面に壁クロス等の表面化粧材を貼着するようにしてもよい。この状態では、
図3に示すように、開口部4の戸尻側には、引戸3のスライドスペース(走行スペース)の手前側に位置するように、袖壁が形成される。一方、開口部4の戸先側には、引戸3によって開閉される出入り口としての開口が形成される。そして、適宜、引戸3を、戸枠2に対して建て付けることで、袖壁納めの引戸構造となる。
また、
図3に示すように、袖壁体19の手前面の下端部及び各壁面材8の下端部に巾木9を固定するようにしてもよい。
【0040】
上記構造とされた袖壁構造によれば、本実施形態に係る下地枠体1を用いているので、上記同様の効果を奏する。
また、上記のように袖壁体19を開口部4に配設する態様とすることで、戸枠2を開口部4に固定した後、開口部4の一方側(手前側)から袖壁体19を容易に施工することができ、施工性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、袖壁体19の幅方向一端部の背面が戸尻側縦枠22の壁厚方向手前側端面に当接するように配設する構造としている。従って、袖壁体19の背面側の石膏ボード18の一側部が直線状に切断されていないような場合にも、戸尻側縦枠22によって、その一側部が隠蔽されて露出せず見栄えを阻害することがない。換言すれば、袖壁体19の背面側の石膏ボード18の一側部側を、精度良く加工する必要がなく、袖壁の施工性をより向上させることができる。
【0041】
なお、上記した例では、袖壁下地10の表裏10a,10bのそれぞれに石膏ボード17,18を固定した後に、開口部4に配設する態様を例示しているが、このような態様に限られない。例えば、背面側の石膏ボード18のみを袖壁下地10の裏面10bに固定し、開口部4に配設した後に、手前側の石膏ボード17を固定する態様としてもよい。このような態様によっても上記同様の効果を奏する。または、袖壁下地10を開口部4に配設した後に、その表裏10a,10bのそれぞれに石膏ボード17,18を固定する態様としてもよい。これらの場合には、袖壁下地10の表面10a側に固定する石膏ボードを、壁面材8によって一連状に構成する態様としてもよい。つまりは、袖壁下地10に応じた寸法の石膏ボード17を表面10aに固定する態様に代えて、内壁7を形成する壁面材8によって表面10a側の面材を構成するようにしてもよい。
【0042】
また、上記した例では、袖壁下地10の高さ寸法と、その表裏10a,10bのそれぞれに固定される石膏ボード17,18の高さ寸法を略同寸法とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、袖壁下地10の高さを背面側の石膏ボード18よりも上方に突出するものとし、この石膏ボード18の上端面が上枠20の下面に当接するように、石膏ボード18の高さ寸法を設定するようにしてもよい。
さらに、上記した例では、袖壁下地10の高さ寸法を開口部4の開口高さに応じた寸法とした例を示しているが、このような態様に限られず、少なくともその上端部が上枠20の一部に正面視して重合するような高さ寸法とすればよい。この場合は、この袖壁下地10乃至は袖壁体19の上端部を上枠20に対して固定するようにしてもよい。
【0043】
さらには、袖壁下地10の高さ寸法を、開口部4の開口高さに応じて予め形成しておく態様に代えて、施工現場において、開口部4の開口高さ等に合わせて切断して高さ寸法を調整するようにしてもよい。この場合は、各枠部材11,14の縦枠材12,15の長手方向一端部側に余長部分を形成するようにして横桟材を当該余長部分に固定しないようにしてもよい。例えば、両縦枠材12,15の上端部側に余長部分を形成し、これら縦枠材12,15の余長部分を適宜切断して袖壁下地10とする態様としてもよい。なお、このような態様は、当該下地枠体1を袖壁下地として用いる場合に限られず、他の間仕切壁等の壁体の下地や、扉体の芯材として用いる場合にも適用可能である。
また、図例では、開口部4の上側に垂れ壁を形成するように開口部4を設けた例を示しているが、床面から天井面に略至る高さ寸法とされた開口部4に袖壁下地10乃至は袖壁体19を配設する態様としてもよい。
【0044】
さらに、上記した例では、袖壁体19の幅方向の各端面19a,19bを、開口部4の袖壁側枠下地内側面及び中方立23の袖壁側側面に当接させて、開口部4に固定した例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、袖壁体19の幅方向の一端部の端面を、中方立23の袖壁側側面に当接させ、幅方向の他端部を、戸尻側縦枠22に当接させるようにしてもよい。この場合、その他端部の背面側の表面を、戸尻側縦枠22の手前側端面に当接させるようにしてもよく、その他端部の端面を、戸尻側縦枠22の内方側(戸先側)側面に当接させるようにしてもよい。
【0045】
さらにまた、上記では、施工現場において袖壁下地10の幅調整をした後に、その表裏10a,10bのそれぞれに石膏ボード17,18を固定した例について説明したが、このような態様に限られない。例えば、当該袖壁下地10を戸枠2や引戸3とユニット化し、これらに応じた寸法となるように予め工場等において各石膏ボード17,18の寸法を形成しておくようにしてもよい。この場合は、袖壁下地10の表裏10a,10bの両方または一方に、予め工場等において石膏ボードを固定しておくようにしてもよい。
また、上記した例では、片引きの一枚の引戸3を納める袖壁として袖壁体19(袖壁下地10)を開口部4に配設した例を示しているが、このような態様に限られない。複数枚の引戸を納める袖壁として配設されるものとしてもよく、また、両引き(引き分け)の引戸を納める袖壁として、開口部の両側に、本実施形態に係る袖壁体19(袖壁下地10)をそれぞれ配設するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、各枠部材11,14に、4本の横桟材13,16を設けた例を示しているが、3本以下または5本以上の横桟材13,16をそれぞれに設けるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、第1枠部材11と第2枠部材14とを同寸同形状とされた同一部材からなるものとした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、各枠部材11,14の縦枠材12,15や横桟材13,16の寸法が互いに異なる寸法とされたものとしてもよく、また、各枠部材11,14の横桟材13,16の本数が互いに異なる本数とされたものとしてもよい。
さらにまた、本実施形態では、第1枠部材11の縦枠材12の下端部に最下段の横桟材13を設け、第2枠部材14の縦枠材15の上端部に最上段の横桟材16を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、いずれか一方の枠部材の長手方向一端部のみに最上段または最下段の横桟材を設けるようにしてもよく、さらには、両方の長手方向両端部に横桟材を設けずに、各縦枠材の中程の部位にのみ複数本の横桟材を設けるような態様としてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、互いに隣接する第1枠部材11の横桟材13と第2枠部材14の横桟材16とが上下に当接する構成とした例を示しているが、このような態様に限られない。各枠部材11,14の横桟材13,16同士の少なくとも一部が上下で重合するように、つまり、平面視において各横桟材13,16の少なくとも一部が上下で重なり合うように、隣接する横桟材13,16同士の間に隙間が形成される態様としてもよい。このような態様によっても、両縦枠材12,15の間には、複数本の横桟材13,16が上下に配設されることとなるため、縦枠材12,15間の強度を向上させることができる。