(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆止弁は、前記EGR弁が全閉状態にあり、かつ、前記排気通路における排気圧力が排気脈動により上昇した場合に前記EGRガスを前記上流端側から前記下流端側へ流入させるよう開弁することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気循環装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の燃料消費量の低減を図るために燃焼室において燃焼したガスを、EGRガスとして吸気通路に再循環させる排気循環装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された排気循環装置は、排気通路を流れる排気の一部を吸気通路に再循環させるEGR通路と、このEGR通路に設けられ、吸気通路に再循環させるEGRガスの流量を調整するEGRバルブと、EGRバルブより排気通路側に設けられ、再循環させるEGRガスを機関冷却水との熱交換により冷却するEGRクーラとを有している。EGRクーラには電動ウォーターポンプから吐き出される機関冷却水の一部が供給され、EGRクーラの内部を流れるEGRガスと機関冷却水との熱交換によりEGRガスが冷却される。
【0004】
このように、従来の排気循環装置は、冷却されたEGRガスを循環させることにより、窒素酸化物の発生を抑制したり、ポンピングロスを低減して燃費の向上を図るようになっていた。
【0005】
また、近年ではターボチャージャーを搭載した車両に前述した排気循環装置を適用したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示された排気循環装置は、ターボチャージャーのタービンより下流の排気通路を流れる排気の一部をターボチャージャーのコンプレッサより上流の吸気通路に循環させる低圧の排気循環装置である。
【0006】
この特許文献2に開示された排気循環装置は、EGRクーラやEGR通路に発生した凝縮水を除去するようになっている。具体的には、特許文献2に開示された排気循環装置は、内燃機関に加圧した吸気を供給する過給装置と、内燃機関の排気通路に流れる排気の一部を内燃機関の吸気通路の過給装置より上流側に還流させるEGR通路と、EGR通路を経由して吸気通路に還流する排気の量を調整するEGR流量調節装置と、過給装置によって加圧された吸気の一部をEGR通路に流入させるバイパス通路と、内燃機関が所定の運転状態の時に、バイパス通路を介してEGR通路に吸気を導くとともに、EGR流量調整装置を制御して該吸気をEGR通路の下流側から上流側へ逆流させる掃気手段と、を備えている。
【0007】
このような構成により、特許文献2に開示された排気循環装置は、EGRガスを増加させた場合に、EGR通路やEGRクーラにおいて凝縮水が発生してしまっても、EGR流量調整装置の停止時にEGRガスを逆流させることができる。この結果、EGRクーラを含むEGR通路において未燃燃料や凝縮水を吹き飛ばして除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施の形態について、
図1ないし
図5を参照して説明する。
【0022】
なお、本実施の形態においては、本発明に係る排気循環装置を4気筒のガソリンエンジンを搭載した車両に適用した場合について説明する。
【0024】
図1に示すように、エンジン1は、シリンダヘッド10と、不図示のシリンダブロックを備えており、シリンダヘッド10およびシリンダブロックは、4つの気筒5を形成している。これらの気筒5には、ピストンにより燃焼室7がそれぞれ画成されている。また、シリンダヘッド10には、外気を気筒5に導入するための吸気ポートおよび排気ガスを気筒5から排出するための排気ポートが形成されている。
【0025】
各吸気ポートには、燃料を噴射するためのインジェクタが設置されており、噴射された燃料は空気と混ざり混合気として燃焼室7に導入される。シリンダヘッド10には、各燃焼室7に導入された混合気に点火するための点火プラグ15が配置されており、点火プラグ15は後述するECU(Electronic Control Unit)100によって点火時期を制御されるようになっている。
【0026】
また、インジェクタは電磁駆動式の開閉弁により構成されており、ECU100により所定電圧が印加されると、開弁して各気筒5の吸気ポートに燃料を噴射するようになっている。
【0027】
エンジン1は、さらに、シリンダヘッド10に接続される吸気マニホールド11aを有しており、この吸気マニホールド11aは吸気通路11の一部を構成している。吸気通路11には、上流側から順に図示しないエアクリーナやエアフロメータ22が設けられている。吸気通路11には、さらに、吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ18が吸気マニホールド11aの上流側に設けられている。
【0028】
スロットルバルブ18は、その開度を無段階に調整することが可能な電子制御式の開閉弁により構成されており、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整するようになっている。ECU100は、スロットルバルブ18に設置されたスロットルモータを制御してスロットルバルブ18の開度を調節するようになっている。
【0029】
エンジン1は、さらに、シリンダヘッド10に接続される排気マニホールド12aを有しており、この排気マニホールド12aは排気通路12の一部を構成している。排気通路12には、三元触媒により構成される触媒装置13が配置されている。
【0030】
エンジン1は、さらに、EGR装置30を備えている。EGR装置30は、排気通路12を流れる排気ガスの一部を吸気通路11に還流させて、各気筒5の燃焼室7へEGRガスとして供給するようになっている。これにより、燃焼室7内の燃焼温度が低下し、NOx発生量が低減する。また、ポンピングロスが低減し、燃費が向上するようになっている。したがって、本実施の形態に係るEGR装置30は、本発明に係る排気循環装置を構成する。
【0031】
EGR装置30は、吸気管14と排気管16とを接続し、内部にEGR通路34が形成されたEGR管33を備えている。このEGR管33には、EGRガス流れの上流側から順に、EGR通路34を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ31およびEGRバルブ32が設けられている。
【0032】
EGRバルブ32は、その内部に設けられたリニアソレノイド32aと、基端部分がリニアソレノイド32aに挿通された状態で配設され、その先端部分にEGR通路34を開閉する弁体32bが設けられたシャフト32cとを備えている。そして、リニアソレノイド32aを通電制御することにより、その電磁力と図示しないスプリングの付勢力によりシャフト32cがその軸方向に往復駆動され、弁体32bによりEGR通路34が開閉される。
【0033】
ECU100は、EGRバルブ32の開度を調整することによって、排気通路12から吸気通路11に導入されるEGRガス量、すなわち排気還流量を調整するようになっている。
【0034】
EGRクーラ31は、筐体内におけるEGRガスの通路の外周部に冷却水配管が張り巡らされた構成を有している。EGR通路34から供給されたEGRガスは、EGRガスの通路を通過する際に冷却水配管を流れる冷却水との熱交換により冷却され、下流側へ導かれるようになっている。
【0035】
本実施の形態に係るEGR装置30は、さらに、EGR管33から分岐し、EGRクーラ31の下流側のEGRガスをEGRクーラ31より上流側に戻すためのリターン通路45が内部に形成された連通管39と、連通管39に設置されたチェックバルブ35を有している。
【0036】
連通管39の上流端39aは、EGR管33におけるEGRクーラ31とEGRバルブ32との間に接続されており、EGR通路34とリターン通路45とが連通するようになっている。また、連通管39の下流端39bは、EGR管33におけるEGRクーラ31と排気管16との間に接続されており、EGR通路34とリターン通路45とが連通するようになっている。
【0037】
また、チェックバルブ35は、連通管39の上流端39aから下流端39bへ向かう一方向のみにEGRガスの流れを規制するようになっている。このチェックバルブ35は、EGRバルブ32の全閉状態において、排気脈動により背圧が高まり、この背圧の高まりによりEGR通路34内のEGRガスの圧力が全体に高まった際に、EGRクーラ31の上流側と下流側に生じるEGR圧の圧力差によって開弁するようになっている。ここで、本実施の形態に係るチェックバルブ35は、本発明に係る逆止弁を構成する。
【0038】
このような構成を有することにより、後述するように、エンジン1の暖機中においてEGR装置30に流入した高温の排気ガスは、滞留することなく短時間でEGRクーラ31を通過するので、凝縮水が発生することを抑制できる。
【0039】
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係るエンジン1を搭載した車両は、冷却水温センサ21、エアフロメータ22、吸気温センサ23、圧力センサ24、A/Fセンサ25、排気温センサ26、スロットル開度センサ27、アクセル開度センサ29、リフトセンサ36、エンジン回転数センサ37および車速センサ38を備えている。これらのセンサは、検出結果を表す信号をECU100にそれぞれ出力するようになっている。
【0040】
冷却水温センサ21は、エンジン1のシリンダブロックに形成されたウォータージャケットに配置されており、エンジン1の冷却水温THWに応じた検出信号をECU100に出力する。エアフロメータ22は、吸気通路11のスロットルバルブ18の上流側に配置され、吸入空気量に応じた検出信号をECU100に出力する。
【0041】
吸気温センサ23は、吸気マニホールド11aに配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号をECU100に出力する。圧力センサ24は、吸気マニホールド11aに配置され、吸気圧に応じた検出信号をECU100に出力する。
【0042】
A/Fセンサ25は、触媒装置13の上流側の排気通路12に配置されており、排気ガス中の酸素濃度(排気A/F)に応じた検出信号をECU100に出力する。また、排気温センサ26は、触媒装置13の下流側の排気通路12に配置されており、排気温度に応じた検出信号をECU100に出力する。
【0043】
スロットル開度センサ27は、スロットルバルブ18の開度に応じた検出信号をECU100に出力する。アクセル開度センサ29は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号をECU100に出力する。
【0044】
エンジン回転数センサ37は、エンジン1のクランクシャフトの回転数を検出し、エンジン回転数としてECU100に出力する。車速センサ38は、車輪の回転数を検出し、車速を表す信号としてECU100に出力する。
【0045】
リフトセンサ36は、直流駆動される抵抗体と、抵抗体の表面を摺動するブラシとを有している。ブラシは、EGRバルブ32のシャフト32cと一体に作動し得るように構成されている。そして、シャフト32cのリフト位置、すなわちEGRバルブ32の開度に応じた電圧信号がブラシに現れる。従って、ECU100は、リフトセンサ36のブラシに現れる信号を取得することにより、EGRバルブ32の開度を検出することができる。
【0046】
ECU100は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103およびバックアップRAM104などを備えている。
【0047】
ROM102は、排気還流量制御を実施するためのプログラムおよび気筒5に対する燃料噴射量を制御するための制御プログラムを含む各種制御プログラムや、これらの各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップなどが記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行するようになっている。また、RAM103は、CPU101による演算結果や、上述した各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するようになっている。バックアップRAM104は、不揮発性のメモリにより構成されており、例えばエンジン1の停止時に保存すべきデータ等を記憶するようになっている。
【0048】
CPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105および出力インターフェース106と接続されている。
【0049】
入力インターフェース105には、冷却水温センサ21、エアフロメータ22、吸気温センサ23、圧力センサ24、A/Fセンサ25、排気温センサ26、スロットル開度センサ27、アクセル開度センサ29、リフトセンサ36、エンジン回転数センサ37および車速センサ38が接続されている。なお、車両がECU100以外の他のECUを搭載し、これらのセンサのうち少なくとも一部から出力された信号が、当該他のECUを介してECU100に入力されるようにしてもよい。
【0050】
出力インターフェース106は、点火プラグ15、スロットルバルブ18、EGRバルブ32およびインジェクタなどに接続されている。
【0051】
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力に基づいて、スロットルバルブ18の開度、EGRバルブ32の開度およびインジェクタによる燃料噴射量を制御する排気還流量制御や燃料噴射量制御などの各種制御を実行するようになっている。
【0052】
図3は、本実施の形態に係るEGR装置30に冷却水を供給する冷却水回路40を示す模式図である。冷却水回路40は、ウォーターポンプ44から吐出した冷却水を、エンジン1、ヒータコア41、EGRクーラ31、EGRバルブ32およびスロットルバルブ18の順に供給し、ウォーターポンプ44に戻す第1経路47と、エンジン1を構成するシリンダヘッド10の下流に設置されている図示しない三方弁により第1経路47から分岐され、エンジン1から流出した冷却水の一部をラジエータ42に供給し、ウォーターポンプ44に戻す第2経路48とを有している。
【0053】
第1経路47を還流する冷却水は、エンジン1を構成するシリンダブロックおよびシリンダヘッド10との熱交換により加熱されると、ヒータコア41との熱交換により冷却され、その後EGRクーラ31に供給される。
【0054】
一方、第2経路48を還流する冷却水は、シリンダヘッド10の下流に設置されている図示しない三方弁により第1経路47から分岐されると、ラジエータ42に供給され外気との熱交換により冷却される。また、第2経路48には、図示しないサーモスタットが設置されており、暖機中や寒冷地域の走行に起因してエンジン1の冷却水温THWが通常走行時の冷却水温と比較して低温となっている場合には、ラジエータ42とウォーターポンプ44との間の経路を遮断するようになっている。また、サーモスタットは、冷却水温THWが上昇するにしたがって、ラジエータ42とウォーターポンプ44との間の経路を徐々に開放し、第1経路47を還流する冷却水量に対する第2経路48を還流する冷却水量の割合を増加するようになっている。
【0055】
本実施の形態に係るECU100は、さらに、冷却水温センサ21から入力される信号に基づいて、冷却水温THWが所定値THWth未満であると判断すると、EGRバルブ32を閉状態に移行するようになっている。
【0056】
所定値THWthとしては、例えば、70℃などエンジン1の暖機が終了しEGR制御が開始される温度に設定されている。ここで、排気ガスの露点温度は60℃以下であり、また、EGRクーラ31により低下するEGRガスの温度は2、3℃程度である。したがって、冷却水温THWが70℃以上である場合には、EGR装置30に供給された排気ガスが露点温度以下になることはなく、EGR装置30内において凝縮水が発生することを抑制できる。なお、本実施の形態に係るEGR装置30は、後述するように、エンジン1の暖機中においても凝縮水が発生することを抑制するようになっている。
【0057】
また、ECU100は、冷却水温センサ21から入力される信号に基づいて冷却水温THWが70℃を超えたと判断した場合には、エンジン1の燃焼状態に応じてEGRバルブ32を制御し、EGRガスの流量を調節するEGR制御を実行するようになっている。ECU100は、エンジン回転数及びエンジン負荷とEGRバルブ32の開度とを対応付けた開度マップをROM102に記憶しており、エンジン回転数センサ37により検出されたエンジン回転数およびエアフロメータ22により検出された吸入空気量から求められるエンジン負荷を取得すると、ROM102に記憶されている開度マップを参照してEGRバルブ32の開度を設定するようになっている。
【0058】
なお、吸入空気量とエンジン負荷との対応は予め実験的な測定により求められており、ECU100は、吸入空気量とエンジン負荷とを対応付けたエンジン負荷マップを予めROM102に記憶している。なお、エンジン負荷は、例えば、吸入空気量の代わりにエンジン1における燃料噴射量から算出する方法など、公知の方法により算出されていればよい。
【0059】
本実施の形態に係るEGR装置30の特徴について、
図4および
図5を用いてより詳細に説明する。
【0060】
図4は、エンジン1の暖機時における排気通路12内の背圧を示しており、背圧には各気筒5から排出される排気による排気脈動が現れている。エンジン1の暖機時には、暖機を促進するとともに燃焼が不安定になることを防止するため、EGRバルブ32は閉状態となっている。このため、排気通路12内の背圧が高まると、EGR通路34内のEGRガス圧が全体に高くなる。また、EGRバルブ32の閉状態においては、EGRガスの圧力は、排気通路12から奥に入るほど、すなわちEGRバルブ32やチェックバルブ35の近傍ほど高くなる。
【0061】
図5は、
図4に示す時点57におけるEGR通路34内の圧力分布を示したものである。
図5に示すように、EGRクーラ31の下流側におけるEGRガスの圧力は、EGRクーラ31の上流側と比較してEGRガスの圧力が高い状態になっている。ここで、チェックバルブ35は、排気脈動に応じてEGRガスの圧力が高くなるごとに、EGR通路34のEGRクーラ31の上流側と下流側との間で発生するEGRガスの圧力差によって開弁するようになっている。したがって、排気通路12からEGR通路34に流入する排気ガスは、排気脈動のピーク近傍で背圧が高まった際に開弁するチェックバルブ35を通過し、連通管39に形成されたリターン通路45を介して排気通路12に戻るようになっている。
【0062】
一方、背圧が低下すると、チェックバルブ35は閉弁する。したがって、EGRバルブ32が全閉となるエンジン1の暖機中には、排気脈動により背圧が高まるごとに、EGRガスがEGRクーラ31およびチェックバルブ35を一方向に通過する。これにより、暖機中において高温のEGRガスがEGR通路34に流入し続けるので、EGRクーラ31やEGRバルブ32の加熱を促進することが可能となる。また、EGRガスがEGRクーラ31に滞留し冷却されることにより、露点温度以下となり凝縮水が発生するということを抑制できる。
【0063】
一方、従来のチェックバルブ35を有しないEGR装置においては、暖機中にはEGRバルブ32が全閉状態となっており、連通管39を有していないため、排気脈動により排気通路12の背圧が上昇と下降を繰り返すたびに、EGR通路34への排気ガスの流入および流出が繰り返される。この流入と流出の繰り返しにより、EGR管33内では高温の排気ガスとすでに存在していたEGRガスとが拡散により徐々に混ざり合いながら滞留する。そのため、EGRガスの温度が一旦上昇するが、滞留しているEGRガスがEGR管33の壁面により冷却され、露点温度以下となることにより、凝縮水が発生していた。
【0064】
このように凝縮水が発生すると、排気ガスに含まれる硫黄成分や、燃料に含まれる塩素成分により凝縮水が酸性となり、EGR装置30を腐食させる原因となっていた。
【0065】
これに対し、本実施の形態に係るEGR装置30は、エンジン1が始動すると、排気脈動の1回のピークごとに高温の排気がEGR装置30に容易に流入するので、EGRクーラ31やEGR管33により露点温度以下に冷却されることがなく、凝縮水の発生が抑制されるようになっている。
【0066】
また、連通管39がチェックバルブ35を有しているので、排気還流量制御の実行中にEGRガスがEGRクーラ31を通過せずに還流することを防止できるとともに、EGRバルブ32が全閉状態となる暖機時には、EGRガスがEGR通路34を双方向に流れ、結果としてEGRクーラ31の近傍に滞留し、EGRクーラ31により冷却され凝縮水が発生するという現象も防止できる。
【0067】
また、暖機終了後においては、EGRバルブ32が開弁しEGR管33内の圧力が低下するので、チェックバルブ35は閉弁状態を保つ。したがって、ECU100は、EGRバルブ32の開度に応じた排気還流量制御を実行することが可能となる。
【0068】
次に、本発明の実施の形態に係る排気循環装置の動作について説明する。
【0069】
ECU100は、まず、冷却水温センサ21から取得した信号に基づいて、冷却水温THWが所定値THWth以上であるか否かを判断する。
【0070】
ECU100は、冷却水温THWが所定値THWth以上であると判断した場合には、EGRバルブ32の開度を制御する排気還流量制御を実行する。具体的には、ECU100は、エンジン回転数センサ37からエンジン回転数を表す信号を取得するとともに、エアフロメータ22から入力された信号とROM102に記憶されているエンジン負荷マップによりエンジン負荷を算出する。そして、ECU100は、ROM102に記憶されている開度マップに基づいてEGRバルブ32の開度を設定する。
【0071】
このとき、チェックバルブ35は閉状態を維持している。したがって、各燃焼室7から排気通路12に排出された排気ガスの一部は、EGR通路34に流入しEGRクーラ31を通過すると、リターン通路45に流入することなくEGRバルブ32を介して吸気通路11に流入し、車両の外部から導入された外気と混合され、各燃焼室7に再び供給される。
【0072】
一方、ECU100は、冷却水温THWが所定値THWthに達していないと判断した場合には、EGRガスが燃焼室7に流入し燃焼が不安定になったり、エンジン1の暖機終了に時間がかかることを防止するため、EGRバルブ32を閉状態に移行する。
【0073】
このとき、各燃焼室7から排気通路12に排出された排気ガスの一部は、EGR通路34に流入する。そして、排気通路12の背圧が排気脈動に応じて高まると、EGR通路34内の圧力差によりチェックバルブ35が開弁する。したがって、EGR通路34にEGRガスとして流入した排気ガスは、EGRクーラ31を通過する際に熱交換が行われ、EGRクーラ31を加熱した後、リターン通路45に流入し、チェックバルブ35を介してEGR通路34に戻り、再び排気通路12に流入する。この排気ガスおよびEGRガスの流れは、1回の排気脈動ごとに発生するので、EGRガスはEGRクーラ31により冷却され露点温度以下となる前に排気通路12に戻る。
【0074】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る排気循環装置においては、EGRバルブ32が全閉状態になっている場合においても、リターン通路45を介してEGRガスを一方向に流通させることができる。したがって、エンジン1の暖機中にEGRバルブ32が全閉状態となっていても、排気脈動により、EGRガスが徐々にEGR通路34に流入し、EGRバルブ32やEGRクーラ31により冷却されて露点温度以下となり、凝縮水が発生することを防止できる。
【0075】
また、EGRバルブ32が全閉状態の場合に、排気脈動に応じてEGRガスを上流端39a側から下流端39b側に流すことが可能となる。したがって、エンジン1の暖機時にEGRバルブ32が全閉となっている場合においても、EGR通路34に流入した排気ガスがEGRクーラ31やEGRバルブ32などにより冷却され露点温度以下となる前にチェックバルブ35を介して排気通路12側に流出するので、凝縮水が発生することを抑制できるとともに、EGRガスによりEGRクーラ31およびEGRバルブ32を加熱することができる。
【0076】
また、連通管39の下流端39bは、EGRクーラ31よりも上流側のEGR管33に接続されることにより、連通管39の上流端39aおよび下流端39bのいずれもがEGR管33に接続されているので、連通管39を短くすることができる。また、EGR装置30を車両に容易に搭載することが可能となる。
【0077】
なお、以上の説明においては、EGR管33が触媒装置13の下流側に接続される場合について説明したが、これに限定されず、EGR管33が触媒装置13の上流側に接続されていてもよい。
【0078】
また、本実施の形態に係るEGR装置30は、ターボユニットを備えた車両に搭載されてもよい。この場合、EGR装置30は、タービンホイールの上流側から排気ガスを取得してコンプレッサホイールの下流側にEGRガスとして還流するいわゆるHPL(High-Pressure Loop)を構成してもよい。また、EGR装置30は、タービンホイールの下流側から排気ガスを取得してコンプレッサホイールの上流側にEGRガスとして還流するLPL(Low-Pressure Loop)を構成していてもよい。
【0079】
また、以上の説明においては、連通管39の下流端39bがEGR管33と接続される場合について説明した。しかしながら、以下に第2の実施の形態として示すように、EGR装置は、下流端が排気管16に接続される連通管56を備えるようにしてもよい。
【0080】
以下、本発明の第2の実施の形態に係る排気循環装置について、
図6を参照して説明する。
【0081】
なお、第2の実施の形態に係る排気循環装置において、上述の第1の実施の形態に係る排気循環装置と同様の構成要素については、第1の実施の形態と同様の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0082】
第2の実施の形態に係るEGR装置50は、上流端56aがEGRクーラ31の下流側のEGR管33に接続され、下流端56bが触媒装置13より下流側の排気管16に接続される連通管56を有しており、この連通管56は、第1の実施の形態に係る連通管39と同様、内部にリターン通路58が形成されている。そして、エンジン1の暖機中にEGRバルブ32が閉弁していると、各燃焼室7から排出された排気ガスは、EGRガスとしてEGR通路34に流入する。そして、EGRガスは、EGRクーラ31を通過するとリターン通路58に流入し、チェックバルブ35を通過し、排気通路12に戻るようになっている。
【0083】
このような構成を有することにより、第2の実施の形態に係るEGR装置50は、上述した第1の実施の形態に係るEGR装置30と同様の効果を得られるとともに、リターン通路58が排気通路12に連通しているので、リターン通路58がEGR通路34に連通している場合と比較して、チェックバルブ35の上流側と下流側におけるEGRガスの圧力の差が大きくなる。したがって、EGR装置50は、暖機中に流入したEGRガスを、チェックバルブ35から排気通路12に戻すことが容易となる。
【0084】
なお、以上の説明においては、EGRクーラ31およびEGRバルブ32のいずれにも冷却水が供給される場合について説明したが、これに限定されず、冷却水がEGRクーラ31のみに供給されるようにしてもよい。
【0085】
また、以上の説明においては、冷却水回路40が、ウォーターポンプ44から吐出した冷却水を、エンジン1、ヒータコア41、EGRクーラ31、EGRバルブ32およびスロットルバルブ18の順に供給し、ウォーターポンプ44に戻す第1経路47と、エンジン1を構成するシリンダヘッド10の下流に設置されている図示しない三方弁により第1経路47から分岐され、エンジン1から流出した冷却水の一部をラジエータ42に供給し、ウォーターポンプ44に戻す第2経路48とを有する場合について説明した。しかしながら、冷却水回路40は、ラジエータ42を通過した冷却水がEGRクーラ31およびEGRバルブ32に供給される第1経路と、ラジエータ42を通過した冷却水がエンジン1およびヒータコア41に供給される第2経路とによって構成されていてもよい。
【0086】
また、EGR装置30および50は、ガソリンエンジンにより構成されたエンジン1を搭載した車両に適用される場合について説明したが、これに限定されず、EGR装置30および50は、ディーゼルエンジンなど公知の内燃機関を搭載した車両に適用されていればよい。
【0087】
また、以上の説明においては、燃料が吸気ポートに噴射されるポート噴射式エンジンにEGR装置30および50が適用される場合について説明したが、これに限定されず、燃料が各燃焼室7に直接噴射される筒内噴射式エンジンにEGR装置30および50が適用されていてもよい。また、筒内噴射およびポート噴射のいずれもが行われるエンジンにEGR装置30および50が適用されていてもよい。
【0088】
また、EGR装置30および50は、エンジン1のみを動力源とする車両のみならず、エンジンおよび回転電機を動力源とするハイブリッド車両に適用されていてもよい。この場合、ハイブリッド車両は、エンジンのみを動力源とする車両と比較して、エンジンの停止時間が長くなり冷却水温THWが所定値THWth未満となる状態が増加する。したがって、本実施の形態に係るEGR装置30および50をハイブリッド車両に適用することにより、EGR通路に凝縮水が発生することを抑制することができるという効果がより一層顕著になる。
【0089】
以上のように、本発明に係る内燃機関の排気循環装置は、EGRクーラを含むEGR通路における凝縮水の発生を抑制することができるという効果を奏するものであり、内燃機関の排気循環装置に有用である。