(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を適用し得る蒸気タービンを備えた蒸気プラントの概略構成を例示する模式図である。
図1において、蒸気タービン4には、例えば地熱発電設備の生産井5から供給される地熱蒸気が高圧セパレータ6で蒸気と熱水とに分離し、分離された蒸気が蒸気を洗浄してミストを除去するスクラバー7を介して供給される。この蒸気タービン4に供給された蒸気によって、タービンロータ4rが回転される。
【0014】
そして、蒸気タービン4から排出される殆どのエネルギーを使い果たした蒸気は復水器8で凝縮して復水し、その復水はホットウェルポンプ9で加圧され、その大部分が冷却塔10に供給されて冷却されるとともに、残りが凝縮水再注入ポンプ11で再加圧されて還元井12に供給されて地中に戻される。
冷却塔10で冷却された冷水は、復水器8の散水ヘッダ8aに戻される。
【0015】
ここで、蒸気タービン4は、
図2に示すように、ケーシング21と、このケーシング21内に回転自在に配設されたタービンロータ4rとを有する。ケーシング21にはその中央部にスクラバー7から供給される蒸気が入力される蒸気供給口22が形成されている。タービンロータ4rの蒸気供給口22に対向する位置に一対の反動翼23が形成されている。そして、タービンロータ4rの反動翼23の外側にそれぞれタービン翼列としての低圧翼列24が形成され、これら低圧翼列24の軸端部側に蒸気排出口25が形成されている。
【0016】
低圧翼列24は、
図3に拡大図示するように、タービンロータ4rに取付けられた動翼24mとケーシング21に取付けられた静翼24sとが交互に設けられて構成されている。動翼24m及び静翼24sの半径方向の長さはタービンロータ4rの中心側から外側に向かうにしたがって順次長くなるように設定されている。ここで、タービンロータ4rは例えば1%CrMoV鋼、12%Cr鋼等で形成され、動翼24mは例えば13%Cr鋼で形成されている。
【0017】
そして、低圧翼列24の軸方向の中央部における動翼24mの先端と近接対向するケーシング21の内周面のロータ嵌め込み部側の上部位置に腐食環境モニタリングシステム30の腐食環境モニタリングセンサ31が配設されている。
この腐食環境モニタリングセンサ31は、
図4〜5に示すように、ケーシング21を構成する外部ケーシング21a、内部ケーシング21bを通じて静翼リング21cの近傍に達する二重管構成の外筒32とこの外筒32内で挿脱可能とされた内筒33と、外筒32の先端が球座34を介して傾動可能に取付けられる静翼リング21cに固定された蒸気導入部35と、内筒33の先端に取り付けられたセンサブロック50とを備えている。
【0018】
蒸気導入部35は、
図5に示すように、静翼リング21cに固定された取付台座37と、この取付台座37に取付けられた外筒38と、この外筒38内に固定配置されたセンサブロック50を着脱可能に支持するセンサブロック支持部39とを備えている。
ここで、取付台座37には、静翼リング21cの動翼24mの先端より軸方向に内側にずれた位置に穿設されたケーシング21の内周面に開口する蒸気抽出孔40に連通する連通孔41が形成されている。この連通孔41に連通して半径方向の内方に延長する蒸気入力プラグ42が配設され、この蒸気入力プラグ42の先端がセンサブロック支持部39に形成された内周面に開口する蒸気入口43に連通されている。
【0019】
また、センサブロック支持部39は、右端側を開放した有底円筒状に形成されており、その開放端面に形成された段部39aに球座34が内装されている。この球座34は、外周面が球面34aとされたリング形状を有し、内周面側に右端側に行くに従い徐々に内径が広くなるテーパー案内面34bが形成され、右端面が外筒32に固定されている。
このセンサブロック50は、
図6に示すように、円柱状のセンサ保持部51と、このセンサ保持部51の先端を覆うようにボルト締めされた蓋体52とで構成されている。そして、センサ保持部51、蓋体52及びセンサブロック支持部39の内周面とで蒸気凝縮部53が形成されている。ここで、センサブロック50の材質は、異種金属の存在による腐食環境の変化を排除するため、タービンのブレード材と同等の腐食性を示す材料とすることが好ましい。
【0020】
この蒸気凝縮部53は、
図6に示すように、センサ保持部51の端面側に形成された略垂直な凝縮水貯留部54を有する。この凝縮水貯留部54は、センサ保持部51の先端外周面に形成された比較的浅い円環状溝55と、この円環状溝55の底面に連通する円環状溝55に比較して比較的深く形成された蓋体52のセンサ保持部51との対向面に形成された円環状溝55に比較して比較的深い円環状溝56と、この円環状溝56と連通し、センサ保持部51の端面と蓋体52の端面との間の垂直面に形成したタービン内隙間での塩素イオン濃縮を模擬してイオン交換を行う例えば0.2mmの隙間を有する円形の隙間模擬部57と、センサ保持部51の外周面とセンサブロック支持部39の内周面との間に形成され隙間58と、蓋体52の外周面とセンサブロック支持部39の内周面との間に形成された隙間59とで構成されている。
【0021】
ここで、隙間模擬部57は、隙間と円環状溝56との境界長さ(円環状溝56の内側の円周長)がタービンのブレード翼脚の部分での隙間長をある程度模擬するだけの長さに選定されている。この隙間模擬部57では、周囲の円環状溝56から凝縮水が供給されることにより、塩化物イオンなど腐食性成分を濃縮させる。この塩化物イオンの濃縮は、先ず、酸素の供給が比較的乏しい隙間模擬部57で、酸素濃淡電池の作用により腐食が生じ、これによって生じた鉄などの陽イオンが陰イオンを引き寄せることで濃縮が起こる。
【0022】
また、隙間59は、蓋体52の先端側外周面が僅かな傾斜角のテーパー面とされて、凝縮水の収容容積を確保している。
そして、円環状溝55の上端に蒸気入力プラグ42の先端が連結された蒸気入口43が開口され、この蒸気入口43から
図7で見て時計方向に約30度離れた位置に凝縮水出口60が形成され、この凝縮水出口60に凝縮水排出プラグ61が連結されている。
【0023】
一方、円環状溝56の蒸気入口43及び凝縮水出口60間には凝縮水の短絡を阻止するとともに、蒸気入口43から入力される蒸気を
図7で見て反時計方向に案内する深さが比較的浅い案内溝62aを外周面に形成した仕切部としての蒸気案内部材63が配設されている。この蒸気案内部材63の凝縮水出口60に対向する位置には案内溝62aと同様の案内溝62bが形成されている。
【0024】
また、センサ保持部51は、外周面に冷却水を通水する円環状溝71が軸方向に所定間隔を保って複数形成され、これら複数の円環状溝71が上部で連通する連通路72と下部連通する連通路73とで交互に連通され、軸方向の蓋体52とは反対側の円環状溝71がセンサ保持部51の内部に形成された冷却水供給路74に連結され、蓋体52側の円環状溝71がセンサ保持部51の内部に形成された冷却水排出路75に連通されている。円環状溝71の外周面側が円筒体76によって閉塞されている。
【0025】
そして、冷却水供給路74及び冷却水排出路75がセンサ保持部51の蓋体52とは反対側の端部に連結された冷却水配管77a及び77bを通じてケーシング21外に配設された冷却水源となるチラー78に接続されている。
また、センサ保持部51の隙間模擬部57に対面する端部に、
図8に示すように、中央部に配置された参照電極80を中心として、この参照電極80の周囲に電解腐食電位(ECP)センサ81、pHセンサ82、塩化物イオンセンサ83、2つの温度センサ84a,84bが配設されている。なお、電解腐食電位(ECP)センサ81、pHセンサ82、塩化物イオンセンサ83は、それぞれ、腐食電位計測用、pH計測用、塩化物イオン計測用の各センサ電極から構成される。さらに、センサブロック50をセンサブロック支持部39内に挿通する際の空気抜き孔85a,85bが形成されている。
【0026】
そして、外筒32は、外部ケーシング21aの外側で2分割され、それぞれの分割端面にフランジ32a及び32bが固定されている。これらフランジ32a及び32bがゲートバルブ90の一方の取付フランジ90a及び他方の取付フランジ90bに接続され、内筒33についてはゲートバルブ90内を貫通して他端側に突出されている。
【0027】
そして、蒸気凝縮部53の凝縮水排出プラグ61に直径6mmΦ程度の比較的径の大きい例えば配管91が接続され、この配管91が外筒32の外周面に螺旋状に巻回されながら外部ケーシング21aの外側まで引き出され、この配管91の端部が、ゲートバルブ90の外側に延長する外筒32の先端に固定された貫通孔を有するフランジ部92に管継ぎ手94aによって固定されている。このフランジ部92の管継ぎ手94aの反対側には比較的細い径(例えば直径2mmφ)で所定長さに設定されたキャピラリ管93の一端が管継ぎ手94bによって着脱自在に連結され、このキャピラリ管93の他端が同様にフランジ部92に管継ぎ手95によって着脱自在に連結され、このフランジ部92の他端に管継ぎ手96によって戻り配管97が接続され、この戻り配管97が外筒32の外周面に螺旋状に巻回されながら蒸気導入部35側に戻されて真空に引かれた内部ケーシング21b内に送られる。
【0028】
ここで、キャピラリ管93は透明なテトラフルオロエチレン等の合成樹脂パイプで構成されている。このキャピラリ管93とフランジ部92とを接続する管継ぎ手94b,95は、
図9に示すように、一端に管用テーパー雄ねじ100が形成され、他端に雄ねじ101が形成された固定部側継ぎ手部102と、この固定部側継ぎ手部102の雄ねじ101に螺合する雌ねじ103を有するチューブ固定用継ぎ手部104とを備えている。そして、固定部側継ぎ手部102をフランジ部92に固定した状態で、キャピラリ管93の一端に例えばテトラフルオロエチレン製のフェルール105を装着してチューブ固定用継ぎ手部104に挿通し、この状態でチューブ固定用継ぎ手部104の雌ねじ103を固定部側継ぎ手部102の雄ねじ101に螺合させて締付けることにより、キャピラリ管93の一端をフランジ部92に固定する。また、キャピラリ管93の他端についてもチューブ固定用継ぎ手部104に挿通してからその先端側にフェルール105を装着し、この状態でチューブ固定用継ぎ手部104の雌ねじ103を固定部側継ぎ手部102の雄ねじ101に螺合させて締付けることにより、キャピラリ管93の他端をフランジ部92に固定する。
【0029】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、蒸気タービン4に設けられた外筒32内に新たな内筒33が挿通されて、この内筒33の先端に形成されたセンサブロック50が静翼リング21cに固定された蒸気導入部35のセンサブロック支持部39内に挿入されて支持されているものとする。
この状態で、蒸気タービン4が停止しているものとすると、蒸気抽出孔40から蒸気が入力されず、蒸気凝縮部53の凝縮水貯留部54には凝縮水が貯留されていない。
【0030】
この状態から蒸気タービン4を運転状態として、タービン内圧が上がると、タービン内の蒸気が蒸気導入部35の蒸気抽出孔40から連通孔41及び蒸気入力プラグ42を介して蒸気凝縮部53に入力される。
このとき、センサブロック50にチラー78から冷却水が冷却水配管77aを介して冷却水供給路74に供給され、円環状溝71を順次先端側に通って、冷却水排出路75から冷却水配管77bを通じてチラー78に戻る冷却水循環路が形成されているので、センサブロック50全体が例えば40℃以下に冷却される。
【0031】
したがって、蒸気凝縮部53に蒸気入力プラグ42から入力された蒸気は、
図7に示すように、蒸気入口43から蒸気案内部材63の案内溝62aによって案内されて反時計方向に移動し、案内溝62aの終端から円環状溝56に入る。そして、円環状溝56内を凝縮水出口60側に向かって
図7で反時計方向に通過する。
【0032】
このときの、蒸気や凝縮水の流速は、蒸気排出プラグ61の排出口が配管91を介してケーシング21外に配置されたキャピラリ管93に接続され、このキャピラリ管93で径が絞られているので、流路抵抗が大きくなって蒸気凝縮部53での蒸気の流速が制御される。このときの流速の制御はキャピラリ管93の長さ及び内径の少なくとも一方を調整することにより行う。
ここで、キャピラリ管93は圧力の調整代が大きく圧力制御が容易となる。例えば、キャピラリ管93のサイズとして、例えば直径1.0mmφ、長さ10mにすることで、蒸気の出入口の圧力差が150kPa程度である場合でも導入蒸気流速を制御することができる。
【0033】
そして、円環状溝56内を通過する蒸気は、センサブロック50の端面で冷却されて凝縮されることにより、蒸気の一部が凝縮水となる。この凝縮水が徐々に凝縮水貯留部54内に貯留されて行く。
このようにして、凝縮水貯留部54内に凝縮水が貯留されると、この凝縮水がタービン内隙間での塩素イオン濃度を模擬する隙間模擬部57に流入する。この隙間模擬部57では、塩化物イオンなどの腐食性成分を濃縮させる。隙間模擬部57では、酸素の供給が比較的乏しく、酸素濃淡電池の作用により腐食が生じ、これによって生じた鉄などの陽イオンが塩素イオンなどの陰イオンを引き寄せることで濃縮が起こる。
【0034】
そして、この隙間模擬部57に露出された参照電極80、電解腐食電位(ECP)センサ81、pHセンサ82、塩化物イオンセンサ83で凝縮水の性状が計測される。
なお、参照電極80と、電解腐食電位(ECP)センサ81のセンサ電極(試料部材電極)との電位差から腐食電位を計測する。また、参照電極80と、pHセンサ82のセンサ電極との電位差からpHを計測する。また、参照電極80と、塩化物イオンセンサ83のセンサ電極との電位差から塩化物イオン濃度を計測する。
【0035】
そして、各センサの計測結果が腐食因子分析装置110に送られる。この腐食因子分析装置110で、電解腐食電位センサ81、pHセンサ82及び塩化物イオンセンサ83で検出された電解腐食電位、pH及び塩化物イオン濃度に基づいて腐食因子分析を行う。
この腐食因子分析としては、(a)蒸気タービンにおける複数の腐食因子(腐食電位、pH、塩化物イオン濃度)について、
塩化物イオン濃度は、蒸気タービンにおける主要な腐食因子であり、塩化物の形成、その加水分解による水素イオン発生、水素イオン濃度の上昇をもたらす。つまり、塩化物イオンにより孔食ピットを生じた場合、孔食ピット内で塩化物イオン濃度が増加しやすくなる。
【0036】
pHは、溶液中の水素イオン濃度を現すものである。水素イオン濃度の増加(pHの低下)は、部材のイオン化(酸化反応)を加速することになる。
腐食電位は、各部材の接している溶液に対する腐食性を示すものであり、電位が大きいほど腐食し易くなる。水素イオン濃度が増加すると腐食電位は高くなる。
(b)地熱蒸気タービンにおける特有な腐食因子について、地熱蒸気タービンにおいては、炭酸ガス、硫化水素を含む。
【0037】
炭酸ガスは、凝縮水では炭酸となり水素イオンを生じる。
硫化水素は、硫化鉄を形成し部材表面の保護的役割も生じ得るが、塩化物イオンにより分解することが考えられ、孔食の原因となる。
以上のように、腐食電位は、塩化物イオン濃度、pHの影響を受け、部材の腐食性状況のパラメータとなるが、予防保全上重要な点は、腐食電位変動の要因を知ることであり、pHや塩化物イオン濃度などの基本因子についても計測することによって、腐食状況のより正確な把握及び予測と、蒸気環境に対する注意点もより精度が向上し、的確な維持管理対応策が判断可能となる。
ここで、維持管理対応策としては、動翼24mの交換周期の設定や、腐食防止薬品の注入制御等が挙げられる。
【0038】
そして、腐食因子の評価判定処理としては、腐食電位センサ81のセンサ電極(試料部材電極)と参照電極80との電位差を電位差計で測定して、腐食電位を計測し、計測した腐食電位の変動と同時に計測したpHや塩化物イオン濃度の変動とを比較することにより、腐食電位の変動要因がpHの低下及び塩化物イオン濃度の増加によるものかを判定し、その判定結果に応じてpHの低下や塩化物イオン濃度の増加を抑制する腐食防止薬品の注入制御を行う。
【0039】
また、腐食因子分析装置110は、腐食電位と、例えば動翼24mの損傷劣化特性データとを用いて動翼24mの寿命予測を行う余寿命診断装置を備えている。ここで、損傷劣化特性データは、例えば動翼24mの腐食損傷への影響度を表す損傷劣化速度と腐食電位との相関関係を予め実験で求め、この相関関係を特性マップ又は予測モデル式として表したものであり、特性マップ又は予測モデル式を予め記憶装置に記憶しておく。そして、測定した腐食電位に基づいて特性マップを参照するか測定した腐食電位を予測モデル式に代入することにより、動翼24mの損傷劣化の進行状況を予測し、動翼24mの余寿命を予測する。そして、予測した動翼24mの余寿命に基づいて動翼24mの交換周期を設定する。
【0040】
また、腐食因子分析装置110では、腐食環境モデリングセンサ31で計測した腐食電位、pH、塩化物イオン濃度等の腐食因子計測データと、対応する腐食因子の管理基準範囲とを比較し、前記腐食因子計測データが前記管理基準範囲を逸脱したときに警報を発する腐食環境状態判定装置を内装している。
一方、キャピラリ管93を通過した蒸気又は凝縮水は戻し配管97を通って真空に引かれた内部ケーシング21b内に送られる。
【0041】
この蒸気タービン4の運転状態では、抽出する蒸気の圧力制御をキャピラリ管93で行い、前述した従来例のように圧力調節弁等の弁機構を設ける必要がないので、析出物の発生による詰まりを懸念することはなく、安定した腐食環境のモニタリングを長期に亘って安定して行うことができる。
しかも、ケーシング21内の配管91及び97については内径を十分に太くすることにより、析出物の発生による詰まりを抑制することができる。
【0042】
また、キャピラリ管93が透明であるので、析出物の詰まり状態を常時視認することができ、析出物が詰まりだしたらキャピラリ管93を交換する。
この場合のキャピラリ管93の交換は、キャピラリ管93がケーシング21の外側に配置されているので、単にフランジ部92からチューブ固定用継ぎ手部104を取り外してキャピラリ管93を抜き出し、新たなキャピラリ管93をチューブ固定用継ぎ手部104に装着して固定部側継ぎ手部102に接続し直せば良く、キャピラリ管93の交換を容易に行うことができる。
【0043】
また、センサブロック50に配置した各種センサの何れかに異常が発生した場合やメンテナンスを行う場合には、蒸気タービン4の稼動を継続している状態で、チラー78を外してから内筒33をケーシング21の外側から引き抜くことにより、センサブロック50をケーシング21の外部に引き出すことができる。そして、センサブロック50の引出しが完了した時点でゲートバルブ90を閉じることにより、蒸気タービン4のケーシング21内の蒸気が外部に漏れることを確実に防止することができる。
【0044】
そして、センサブロック50の修理、交換やメンテナンスが完了した時点で、ゲートバルブ90を開いて、センサブロック50を装着した内筒33を外筒32内に挿入することにより、センサブロック50がセンサブロック支持部39に支持される。このとき、センサブロック支持部39の球座34の内周面にテーパー案内面34bが形成されているので、このテーバー案内面34bによってセンサブロック50の先端が案内されてセンサブロック支持部39内に正確に装着される。
【0045】
このように、上記実施形態によると、垂直面に形成された蒸気凝縮部53の上部側に互いに近接して蒸気入口43及び蒸気出口を兼ねる凝縮水出口60が形成され、蒸気入口43から入った蒸気が蒸気案内部材63によって、凝縮水出口60に短絡することなく円環状溝56を通って凝縮水出口60に向かうことができる。この蒸気が凝縮されて凝縮水となり、凝縮水貯留部54に貯留される。このとき、蒸気入口43及び凝縮水出口60が上部に設けられているので、蒸気入口43から凝縮水出口60までの流路長を長くとなることができるとともに、凝縮水の貯留を凝縮水の滞留を生じることなく良好に行うことができ、タービン内部の圧力や、凝縮水流路内の凝縮水の充填具合などの変化に伴う、流路の圧力変化を抑制して、凝縮水貯留部54の凝縮水の液位を安定させることができる。そして、円環状溝56の内側に隣接して隙間模擬部57が設けられているので、円環状溝56内に貯留される凝縮水が隙間模擬部57にスムーズに流入するので、この隙間模擬部57でタービン内部の隙間を模擬して、塩化物イオンの濃縮を行うことができ、所定の腐食因子センサで腐食因子の測定を正確に行うことができる。
【0046】
因みに、
図10(a)及び(b)に示すように、凝縮水貯留部54の下側に蒸気入力プラグ42と蒸気入口43を設け、上側に凝縮水出口60及び凝縮水排出プラグ61を設けるようにした場合には、蒸気入口43から円環状溝56に流入した蒸気が円環状溝56の両側に分岐して凝縮水出口60に向かうことになり、蒸気の流路長が短くなるとともに、蒸気が直接凝縮水に接触することになるので、タービン内部の圧力や、凝縮水流路内の凝縮水の充填具合などの変化に伴う、流路の圧力変化により、凝縮水貯留部54の液位が変動してしまう。
【0047】
これに対して、本実施形態では、蒸気入口43が上部に形成されており、この蒸気入口43に対向して蒸気案内部材63が設けられていることと相俟って蒸気が直接貯留されている凝縮水に接触することがないので、タービン内部の圧力や、凝縮水流路内の凝縮水の充填具合などの変化に伴う、流路の圧力変化による凝縮水貯留部54の液位の変動を抑制する。
【0048】
なお、上記実施形態においては、円筒状のセンサ保持部51の端面と蓋体52とで蒸気凝縮部53を形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、予め所定隙間を有する隙間模擬部を形成したブロックを凝縮水貯留部54に埋め込むようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、1つの蒸気タービン4だけが設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば蒸気タービンが2つである場合にも本発明を適用することができ、さらには例えば蒸気タービンとして高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンが設けられている場合などにも本発明を適用することができる。
【0049】
また、上記実施形態においては、腐食因子センサとして電解腐食電位センサ81、pHセンサ82及び塩化物イオンセンサ83の3つを適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、腐食電位センサ81のみを設けるようにしてもよいとともに、凝縮水の導電率を検出する導電率センサを付加して、凝縮水の導電率も同時に測定して、腐食因子分析の精度向上を図るようにしてもよい。さらには、地熱発電設備の蒸気のように炭酸ガス及び硫化水素を含む場合には、腐食因子センサとして炭酸ガスセンサ及び硫化水素センサを付加して、腐食因子分析の精度をより向上させるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、蒸気タービン1を地熱発電設備に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、火力発電設備にも適用することができる。