特許第5830911号(P5830911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5830911
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】吸気マニホールド
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/104 20060101AFI20151119BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   F02M35/104 A
   F02M35/104 N
   F02M35/104 B
   F02M35/10 301P
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-88282(P2011-88282)
(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公開番号】特開2012-219754(P2012-219754A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】大槻 守
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3183186(JP,B2)
【文献】 特開2002−106432(JP,A)
【文献】 特開2000−179419(JP,A)
【文献】 特開平11−107870(JP,A)
【文献】 特開2007−107481(JP,A)
【文献】 特開2004−169637(JP,A)
【文献】 実開平05−073258(JP,U)
【文献】 特開2010−159662(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2533951(JP,Y2)
【文献】 実公平01−041901(JP,Y2)
【文献】 特開2008−008164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気マニホールドであって、
4つの気筒を有するエンジンに吸気を導く吸気管部と、
前記吸気管部の吸気下流側の端部に設けられたフランジ部と、
前記フランジ部及び前記吸気管部を繋ぐリブとを備え、
前記フランジ部のみが前記エンジンに対する締結部とされることで吸気マニホールドが前記締結部を固定点とする片持ち梁状態で前記エンジンに支持され、
吸気マニホールドが前記片持ち梁状態で振動したときに発生する放射音の音圧レベルの周波数特性線には、周波数が相対的に低い低周波数域で前記放射音の音圧レベルが最大となる低域側ピークを有する低域側山形形状部と、前記低周波数域よりも周波数が高い高周波数域で前記放射音の音圧レベルが最大となる高域側ピークを有する高域側山形形状部とが存在し、且つ、前記低域側ピークと前記高域側ピークとの間の周波数域には前記放射音の音圧レベルが最大となるピークを有する山形形状部が存在せず、
全負荷状態で前記エンジンの回転速度を4000rpmから6000rpmまで上昇させるときの前記エンジンのトルク変動に基づいて発生する放射音の回転4次成分の周波数域である250Hz〜400Hzの領域を特定放射音領域としたとき、
吸気マニホールドを前記エンジンにより支持するための前記締結部が、前記低域側ピークが前記特定放射音領域よりも低い周波数となる支持剛性を有し、
前記リブにより剛性が高められる前記フランジ部及び前記フランジ部から前記吸気管部に至るまでの部位が、前記高域側ピークが上記特定放射音領域よりも高い周波数となる剛性を有する
吸気マニホールド。
【請求項2】
前記吸気管部の吸気上流側にサージタンク部が一体に設けられている請求項1に記載の吸気マニホールド。
【請求項3】
全体が樹脂により形成されている請求項1又は請求項2に記載の吸気マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに吸気を導く吸気マニホールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるエンジンの各気筒(燃焼室)に吸気を導く吸気マニホールドとして、例えば、特許文献1には、吸気の脈動を抑制するサージタンク部を一体に設けたものが記載されている。この吸気マニホールドは、吸気管部の吸気下流側の端部に設けられたフランジ部においてエンジンのシリンダヘッドに締結されるとともに、サージタンク部においてエンジンのシリンダブロックに締結される。このように、フランジ部及びサージタンク部においてエンジンに締結されることで吸気マニホールドは、その全体でエンジンに略均等に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8164号公報(図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸気マニホールドはエンジンの振動に共振して放射音を発生する。この点、特許文献1に記載されているような吸気マニホールドの全体をエンジンに略均等に支持する構造では、放射音が問題となる周波数域(特定放射音領域)で放射音がピークとなり、車内の乗員に異音感を感じさせるおそれがある。特定放射音領域は、例えば、4気筒エンジンを全負荷状態でエンジン回転速度を上昇させる場合、250Hz〜400Hzの周波数領域である。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、異音感を感じさせる放射音の発生を抑制することのできる吸気マニホールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、吸気マニホールドであって、4つの気筒を有するエンジンに吸気を導く吸気管部と、前記吸気管部の吸気下流側の端部に設けられたフランジ部と、前記フランジ部及び前記吸気管部を繋ぐリブとを備え、前記フランジ部のみが前記エンジンに対する締結部とされることで吸気マニホールドが前記締結部を固定点とする片持ち梁状態で前記エンジンに支持され、吸気マニホールドが前記片持ち梁状態で振動したときに発生する放射音の音圧レベルの周波数特性線には、周波数が相対的に低い低周波数域で前記放射音の音圧レベルが最大となる低域側ピークを有する低域側山形形状部と、前記低周波数域よりも周波数が高い高周波数域で前記放射音の音圧レベルが最大となる高域側ピークを有する高域側山形形状部とが存在し、且つ、前記低域側ピークと前記高域側ピークとの間の周波数域には前記放射音の音圧レベルが最大となるピークを有する山形形状部が存在せず、全負荷状態で前記エンジンの回転速度を4000rpmから6000rpmまで上昇させるときの前記エンジンのトルク変動に基づいて発生する放射音の回転4次成分の周波数域である250Hz〜400Hzの領域を特定放射音領域としたとき、吸気マニホールドを前記エンジンにより支持するための前記締結部が、前記低域側ピークが前記特定放射音領域よりも低い周波数となる支持剛性を有し、前記リブにより剛性が高められる前記フランジ部及び前記フランジ部から前記吸気管部に至るまでの部位が、前記高域側ピークが上記特定放射音領域よりも高い周波数となる剛性を有することを要旨とする。
【0007】
上記の構成によれば、エンジンの運転に伴い、吸気マニホールドがエンジンの振動に共振して放射音を発生する。この放射音の周波数特性は、低周波数域側の周波数で音圧レベルが最大となる低域側山形形状部と、同低域側山形形状部よりも高周波数域側の周波数で音圧レベルが最大となる高域側山形形状部とを有する。
【0008】
さらに、上記周波数特性には、放射音が問題となる250Hz〜400Hzの周波数域(特定放射音領域)があり、低域側山形形状部のピーク(低域側ピーク)、及び高域側山形形状部のピーク(高域側ピーク)の各周波数がこの特定放射音領域に属していると、放射音を聞いた人に異音感を感じさせるおそれがある。
【0009】
この点、請求項1に記載の発明では、低域側ピーク及び高域側ピークの各周波数が上記特定放射音領域から外れ、異音感を感じさせる放射音の発生が抑制される。こうした現象は、次のようにして起こるものと考えられる。
【0010】
請求項1に記載の発明では、吸気マニホールドは、フランジ部にのみ設けられた締結部においてエンジンに支持された状態、いわゆる片持ち梁状態となる。この状態により、吸気マニホールド全体のエンジンに対する支持剛性が低下し、低い周波数域でも吸気マニホールドが動きやすくなり、低域側ピークの周波数が上記特定放射音領域よりも低周波数域側へ外れるようになる。
【0011】
また、吸気マニホールドが片持ち梁状態にされた場合、高域側ピークの周波数も低くなるおそれがある。しかし、フランジ部及び吸気管部を繋ぐリブが設けられることにより、フランジ部及びフランジ部から吸気管部に至るまでの部位の剛性が高められ、高域側ピークの周波数が上記特定放射音領域から高周波数域側へ外れるようになる。このようにして、低域側ピーク及び高域側ピークの各周波数が上記特定放射音領域から外れ、異音感を感じさせる放射音の発生が抑制される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吸気管部の吸気上流側にサージタンク部が一体に設けられていることを要旨とする。
ここで、サージタンク部が一体に設けられている吸気マニホールドでは、そうでないタイプの吸気マニホールドよりも加振力が大きくなることから、上記特定放射音領域で放射音がピークとなりやすい。
【0013】
従って、吸気管部の吸気上流側にサージタンク部が一体に設けられている請求項2に記載の発明にあって、請求項1に記載の発明の構成は、異音感を感じさせる放射音の発生を抑制するうえで特に有効に作用する。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、全体が樹脂により形成されていることを要旨とする。
ここで、吸気マニホールドを樹脂製とした場合、一般に樹脂のヤング率が金属等の他の材料のヤング率に比べて低いことから、放射音が上記特定放射音領域でピークとなって、放射音を聞いた人に異音感を感じさせやすい。
【0017】
従って、吸気マニホールドの全体が樹脂により形成されている請求項に記載の発明にあって、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の構成は、異音感を感じさせる放射音の発生を抑制するうえで特に有効に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を具体化した一実施形態における吸気マニホールドの斜視図。
図2】同じく吸気マニホールドの側面図。
図3】放射音の周波数特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、車両に搭載される4気筒エンジンに適用されて、そのエンジンの気筒毎の燃焼室に吸入空気(吸気)を導く吸気マニホールドに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態の吸気マニホールド10は、吸気の脈動を抑制するためのサージタンク部11と、そのサージタンク部11の吸気下流側に設けられた複数本(本実施形態ではエンジン14の気筒数と同数本(4本))の吸気管部12とを備えている。
【0021】
サージタンク部11の吸気上流側の端部には、スロットルボディ等のデバイスを取付けるための被着部11Aが設けられている。各吸気管部12は湾曲形成されており、内部に吸気通路13を有している。各吸気管部12は、その吸気上流側の端部(図1及び図2の下端部)において、サージタンク部11に連通されている。各吸気通路13は吸気管部12毎の下流端で開口している。
【0022】
複数の吸気管部12の各吸気下流側の端部は、図2において二点鎖線で示すエンジン14の気筒配列方向(図1では左右方向、図2では紙面に直交する方向)に互いに接近させられた状態で配置されている。複数の吸気管部12の各吸気下流側の端部の周りには、フランジ部16が設けられている。フランジ部16の複数箇所(本実施形態では5箇所)には、ボルト挿通孔17が形成されている。フランジ部16においてボルト挿通孔17の周りは、吸気マニホールド10がエンジン14(シリンダヘッド15)に締結される箇所である締結部18を構成している。
【0023】
上記サージタンク部11、吸気管部12及びフランジ部16は樹脂によって一体形成されている。こうした樹脂製の吸気マニホールド10には、金属製の吸気マニホールドと比較して、(i)軽量化を図ることができる、(ii)成形自由度が高いため、吸気慣性効果を得るうえで必要な吸気管部12の長さを確保しながらも、エンジンルーム内への搭載性向上を図ることができる等のメリットがある。また、サージタンク部11、吸気管部12及びフランジ部16が一体形成されることで、吸気マニホールド10の部品点数の削減が図られている。
【0024】
そして、各吸気管部12の吸気通路13が、エンジン14のシリンダヘッド15の吸気ポートに連通するように、フランジ部16がそのシリンダヘッド15に当接されている。フランジ部16の各ボルト挿通孔17に挿通されたボルト(図示略)が、シリンダヘッドに設けられたボルト穴に螺入されることにより、吸気マニホールド10がフランジ部16においてエンジン14(シリンダヘッド15)に締結されている。この締結状態では、サージタンク部11が各吸気管部12の下側に位置する。
【0025】
なお、本実施形態の吸気マニホールド10は、特許文献1を含む従来のものとは異なり、上記以外の箇所、例えばサージタンク部11においてエンジン14に締結されていない。吸気マニホールド10は、フランジ部16のみにおいてエンジン14に支持された状態、いわゆる片持ち梁状態となっている。
【0026】
さらに、フランジ部16と、所定の吸気管部12においてフランジ部16の周辺部となる箇所との間には、それらを繋ぐリブ19が設けられている。本実施形態では、このリブ19が気筒配列方向についての2箇所に設けられているが、この数は適宜変更可能である。また、各リブ19は板状をなし、気筒配列方向について隣合う吸気管部12間に位置しており、両吸気管部12の吸気下流側の部分の外壁面に繋がっている。これに代えて、各リブ19は、隣合う吸気管部12の片方にのみ繋がるものであってもよい。両リブ19は、吸気マニホールド10におけるフランジ部16及び同フランジ部16から吸気管部12に至るまでの部位、すなわちエンジン14に対する取付け部の剛性を高めるための補強部として設けられている。
【0027】
次に、上記のように構成された本実施形態の吸気マニホールド10の作用について説明する。
エンジン14の運転に伴い、吸気マニホールド10では吸気がサージタンク部11及び複数の吸気管部12を順に流れる。吸気マニホールド10は、エンジン14の振動に共振して放射音を発する。図3中、実線は、本実施形態における吸気マニホールド10の放射音の周波数特性線を示している。また、図3中、二点鎖線は、フランジ部及びサージタンク部においてエンジンに締結されて全体がエンジンに略均等に支持された、特許文献1を含む従来の吸気マニホールドの放射音の周波数特性線を示している。なお、4気筒エンジンでは、2,4,6,・・・回(エンジン1回転に変動する回転)でトルク変動が発生し、振動強制力により騒音を発する。これを、回転の2次、4次、6次成分というが、図3はこのうち回転4次成分の放射音についての周波数特性を示している。
【0028】
上記両周波数特性線はいずれも、低周波数域側の周波数で音圧レベルが最大となる低域側山形形状部と、その低域側山形形状部よりも高周波数域側の周波数で音圧レベルが最大となる高域側山形形状部とを有する。
【0029】
さらに、上記周波数特性には、放射音が問題となる周波数域(特定放射音領域)があり、低域側山形形状部のピーク(低域側ピーク)、及び高域側山形形状部のピーク(高域側ピーク)の各周波数がこの特定放射音領域に属していると、乗員等に異音感を感じさせるおそれがある。特定放射音領域は、例えば、全負荷状態でエンジン14の回転を上昇させた場合、エンジン回転速度が4000〜6000rpm(回転4次成分では250〜400Hz)となる周波数領域である。
【0030】
この点、本実施形態では、低域側ピーク及び高域側ピークの各周波数が上記特定放射音領域から外れ、異音感を感じさせる放射音の発生が抑制される。こうした現象は、次のようにして起こるものと考えられる。
【0031】
本実施形態では、吸気マニホールド10は、フランジ部16に設けられた締結部18のみにおいてエンジン14(シリンダヘッド15)に締結されることにより、フランジ部16においてエンジン14に支持された状態、いわゆる片持ち梁状態となる。この状態により、吸気マニホールド10全体のエンジン14に対する支持剛性が低下し、低い周波数域でも吸気マニホールド10が動きやすくなり、低域側山形形状部における低域側ピークの周波数が上記特定放射音領域よりも低周波数域側へ外れる(本実施形態では200Hz付近の値となる)ようになる。なお、この場合には、エンジン回転速度が比較的低いことから、加振力が小さく、吸気マニホールド10からの放射音はさほど気にならない。
【0032】
また、吸気マニホールド10が片持ち梁状態にされた場合、高域側ピークの周波数も低くなるおそれがある。しかし、フランジ部16及び吸気管部12の吸気下流側の部分を繋ぐリブ19が設けられることにより、同フランジ部16及び同フランジ部16から吸気管部12に至るまでの部位の剛性が高められ、高域側山形形状部における高域側ピークの周波数が上記特定放射音領域から高周波数域側へ外れる(400Hzよりも高い値になる)ようになる。なお、この高域側ピークは、エンジン回転速度が、エンジン14の通常運転時に採り得る値よりも高くなったときに発生するものであるため、音圧レベルが高くても特に問題とならない。
【0033】
さらに、上記特定放射音領域では、フランジ部及びサージタンク部においてエンジンに締結されて吸気マニホールドの全体がエンジンに略均等に支持された場合に比べ、放射音の音圧レベルが全体的に低減される。この現象は、次のようにして起こるものと考えられる。
【0034】
周波数特性の上記低域側山形形状部では、低域側ピークよりも低い周波数域と高い周波数域とで放射音が逆相となる。同様に、高域側山形形状部では、高域側ピークよりも低い周波数域と高い周波数域とで放射音が逆相となる。低域側山形形状部の低域側ピークよりも高い周波数域と、高域側山形形状部の高域側ピークよりも低い周波数域とでは、放射音が逆相となる。これらの逆相の関係にある放射音の周波数成分は互いに打消し合って低減される。
【0035】
特に、本実施形態では、上述したように低域側ピークの周波数が特定放射音領域よりも低くされ、高域側ピークの周波数が特定放射音領域よりも高くされる。このことから、各ピークの周波数が特定放射音領域に属している場合に比べ、両ピーク間の周波数域が広くなり、上述した逆相の関係にある放射音の周波数成分が、広い周波数域で互いに打消し合う。結果として、放射音の音圧レベルが図3において矢印で示すように、特定放射音領域の広い領域で低減される。
【0036】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)吸気マニホールド10においてエンジン14に締結される箇所である締結部18をフランジ部16のみに設ける。また、フランジ部16と吸気管部12の吸気下流側の部分とを繋ぐリブ19を、フランジ部16及び同フランジ部16から吸気管部12に至るまでの部位の剛性を高めるための補強部として設けている。
【0037】
そのため、低域側ピーク及び高域側ピークの各周波数を特定放射音領域から外れさせ、全負荷状態でエンジン回転速度を上昇させた場合等に、車両の乗員に異音感を感じさせる放射音の発生を抑制することができる。
【0038】
(2)吸気管部12の吸気上流側にサージタンク部11が一体に設けられている本実施形態のような吸気マニホールド10では、そうでないタイプの吸気マニホールドよりも加振力が大きくなることから、特に放射音が特定放射音領域でピークとなって異音感を感じさせやすい。そのため、サージタンク部11が一体に設けられた吸気マニホールド10に上記(1)の構成を採用することで、車両の乗員に異音感を感じさせる放射音の発生を抑制する点において、より大きな効果が得られる。
【0039】
なお、特許文献1を含む従来のサージタンク一体型の吸気マニホールドでは、吸気マニホールド全体の剛性を高めて共振を抑制するという考え方のもと、フランジ部に加え、サージタンク部においても吸気マニホールドがエンジンに締結される。従って、この考え方を採る以上、吸気マニホールド10を片持ち梁状態でエンジン14に支持したり、フランジ部16及びその周辺部の剛性を高めたりするといった本実施形態の構造は採用されない。本実施形態の構造は、吸気マニホールド10を、フランジ部16のみにおいてエンジン14に締結された片持ち梁状態とすることで、低域側ピークの周波数を特定放射音領域よりも低くでき、フランジ部16及び同フランジ部16から吸気管部12に至るまでの部位の剛性を高めることで、高域側ピークの周波数を特定放射音領域よりも高くできることに着目してはじめて採用されるものである。そして、本実施形態の構造が採用されることで、吸気マニホールドの全体を均等にエンジンに支持する場合には得られない、放射音の低減効果がはじめて得られるようになる。
【0040】
(3)一般に樹脂のヤング率(伸びにくさ)が金属等の他の材料のヤング率に比べて低いことから、樹脂製の吸気マニホールド10は金属製等の吸気マニホールドよりも振動しやすい。そして、低域側ピーク及び高域側ピークの各周波数が上記特定放射音領域に属しやすい。そのため、樹脂製の吸気マニホールド10に上記(1)の構成を採用することで、車両の乗員に異音感を感じさせる放射音の発生を抑制する点において、より大きな効果が得られる。
【0041】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・リブ19は、少なくともフランジ部16の周辺部であることを条件に、フランジ部16と吸気管部12とを繋ぐものであればよい。従って、リブ19はフランジ部16から吸気管部12の吸気下流側の部分まで延びる上記実施形態よりも吸気管部12の吸気上流側へ延ばされてもよい。極端な場合、リブ19はサージタンク部11まで延ばされて、フランジ部16、吸気管部12及びサージタンク部11を繋ぐものであってもよい。
【0042】
図1に示すようにフランジ部16において、上記ボルト挿通孔17とは異なる箇所に、新たなボルト挿通孔21を有する新たな締結部22を設け、これを補強部としてもよい。この場合には、新たな締結部22の新たなボルト挿通孔21にもボルトが挿通されてエンジン14(シリンダヘッド15)に締結される。すなわち、フランジ部16のエンジン14に対する締結箇所が、新たな締結部22の分だけ増えることとなり、フランジ部16及び同フランジ部16から吸気管部12に至るまでの部位の剛性が高められる。
【0043】
・吸気マニホールド10においてエンジン14に締結される箇所である締結部が、フランジ部16の周辺部であることを条件に、そのフランジ部16から離れた箇所に設けられてもよい。この場合、ボルト挿通孔を有する取付けボスを締結部とすることができる。この場合、取付けボスは、フランジ部16及び同フランジ部16から吸気管部12に至るまでの部位の剛性を高めるための補強部も兼ねることとなる。
【0044】
・補強部として、フランジ部16の少なくとも一部の肉厚が厚くされてもよい。
・本発明は、以下の吸気マニホールドにも適用可能である。
(i)吸気管部12の吸気上流側にサージタンク部11が一体に設けられていないタイプの吸気マニホールド。
【0045】
(ii)樹脂以外の材料によって形成された吸気マニホールド。
(iii )4気筒以外の気筒数のエンジンに取付けられる吸気マニホールド。
【符号の説明】
【0046】
10…吸気マニホールド、11…サージタンク部、12…吸気管部、14…エンジン、16…フランジ部、18…締結部、19…リブ(補強部)、22…新たな締結部(補強部)。
図1
図2
図3