特許第5831025号(P5831025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831025
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/04 20060101AFI20151119BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   B32B9/04
   B32B27/30 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-171540(P2011-171540)
(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2012-56311(P2012-56311A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-178400(P2010-178400)
(32)【優先日】2010年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上林 浩行
(72)【発明者】
【氏名】廣田 草人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 実
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/120600(WO,A1)
【文献】 特開2006−334865(JP,A)
【文献】 特開2008−119990(JP,A)
【文献】 特開2009−172991(JP,A)
【文献】 特開2002−174809(JP,A)
【文献】 特開2010−125748(JP,A)
【文献】 特開2010−131756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルム基材の片面または両面に、X線光電子分光法(XPS法)により測定される膜表層のO/AL比が1.7〜2.3の範囲であって、X線反射測定法(GIXR法)により測定される膜密度が2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲である酸化アルミニウム層を有し、かつ該酸化アルミニウム層の膜厚が3〜12.1nmであり、さらに該酸化アルミニウム層の前記高分子フィルム基材と反対の面の上に有機化合物層が配置されており、前記有機化合物層は、アクリロニトリル(単量体1)と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(単量体2)とメチルメタクリレート(単量体3)との少なくとも3成分を単量体とするアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物と、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび/または3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物またはその反応物との混合物とを含むことを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記酸化アルミニウム層において、蛍光X線分析により測定されるアルミニウム原子のX線強度が0.8kcps〜8.0kcpsの範囲である請求項1記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記有機化合物層は、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物を含む請求項1または2のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物が四塩基酸無水物またはその反応物である請求項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
高分子フィルム基材の片面または両面に、X線光電子分光法(XPS法)により測定される膜表層のO/AL比が1.7〜2.3の範囲であって、X線反射測定法(GIXR法)により測定される膜密度が2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲である酸化アルミニウム層を有し、かつ該酸化アルミニウム層の膜厚が3〜12.1nmであり、さらに該酸化アルミニウム層の前記高分子フィルム基材と反対の面の上に有機化合物層が配置されており、前記有機化合物層は、アクリロニトリル(単量体1)と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(単量体2)とメチルメタクリレート(単量体3)との少なくとも3成分を単量体とするアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物と、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび/または3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物またはその反応物との混合物とを含むことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記酸化アルミニウム層において、蛍光X線分析により測定されるアルミニウム原子のX線強度が0.8kcps〜8.0kcpsの範囲である請求項5に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記有機化合物層は、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物を含む請求項5または6のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物が四塩基酸無水物またはその反応物である請求項7に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いガスバリア性および透明性に優れた透明ガスバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高分子フィルム基材の表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の無機物(無機酸化物を含む)を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(以下、CVD法という)等を利用して、その無機物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品や医薬品などの包装材として用いられている。
【0003】
ガスバリア性向上技術としては、例えば、有機珪素化合物の蒸気と酸素を含有するガスを用いてプラズマCVD法により基材上に、珪素酸化物を主体とし、炭素、水素、珪素及び酸素を少なくとも1種類含有した化合物とすることによって、透明かつガスバリア性を向上させる方法が用いられている(特許文献1)。また、さらにハイバリア化を目的として、真空蒸着法により形成された酸化金属薄膜の上にプラズマCVD法により形成されたシリコン化合物薄膜を順次積層した構成とすることにより、酸化金属薄膜に存在するピンホールやクラックを抑制でき、透明かつガスバリア性を向上させる方法が用いられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−361774号公報([0017]〜[0029]段落)
【特許文献2】特開2003−25476号公報([0017]〜[0022]段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような有機珪素化合物の蒸気と酸素を含有するガスを用いてプラズマCVD法により珪素酸化物薄膜を形成する方法では、形成された珪素酸化物薄膜が非常に緻密な膜質であるため、包装用途のガスバリア性フィルムのように、熱水殺菌処理や印刷、ラミネートといった高温処理や後加工に珪素酸化物薄膜が追従できず、膜にクラックが発生し、ガスバリア性が低下するという課題があった。
【0006】
また、真空蒸着法により形成された酸化金属薄膜の上にプラズマCVD法により形成されたシリコン化合物薄膜を順次積層した方法は、プラズマや蒸着源からの熱ダメージが大きく、高分子フィルム基材が熱負けによる反りが発生し、後工程の加工で作業性が悪くなるなどの問題があった。本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、膜形成によるフィルムの反りを低減し、かつフィルム搬送や印刷、ラミネート、熱水殺菌処理といった高温処理や後工程においても、ガスバリア性が悪化しない、透明かつ高度なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。すなわち、
(1)高分子フィルム基材の片面または両面に、X線光電子分光法(XPS法)により測定される膜表層のO/AL比が1.7〜2.3の範囲であって、X線反射測定法(GIXR法)により測定される膜密度が2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲である酸化アルミニウム層を有し、かつ該酸化アルミニウム層の膜厚が3〜12.1nmであり、さらに該酸化アルミニウム層の前記高分子フィルム基材と反対の面の上に有機化合物層が配置されており、前記有機化合物層は、アクリロニトリル(単量体1)と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(単量体2)とメチルメタクリレート(単量体3)との少なくとも3成分を単量体とするアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物と、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび/または3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物またはその反応物との混合物とを含むことを特徴とするガスバリア性フィルム。
(2)前記酸化アルミニウム層において、蛍光X線分析により測定されるアルミニウム原子のX線強度が0.8kcps〜8kcpsの範囲である前記(1)記載のガスバリア性フィルム。
)前記有機化合物層は、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物を含む前記(1)または(2)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
)前記2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物が四塩基酸無水物またはその反応物である前記(3)に記載のガスバリア性フィルム。
である。
(5)高分子フィルム基材の片面または両面に、X線光電子分光法(XPS法)により測定される膜表層のO/AL比が1.7〜2.3の範囲であって、X線反射測定法(GIXR法)により測定される膜密度が2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲である酸化アルミニウム層を有し、かつ該酸化アルミニウム層の膜厚が3〜12.1nmであり、さらに該酸化アルミニウム層の前記高分子フィルム基材と反対の面の上に有機化合物層が配置されており、前記有機化合物層は、アクリロニトリル(単量体1)と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(単量体2)とメチルメタクリレート(単量体3)との少なくとも3成分を単量体とするアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物と、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび/または3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物またはその反応物との混合物とを含むことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
(6)前記酸化アルミニウム層において、蛍光X線分析により測定されるアルミニウム原子のX線強度が0.8kcps〜8.0kcpsの範囲である(5)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(7)前記有機化合物層は、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物を含む(5)または(6)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(8)前記2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物またはその反応物が四塩基酸無水物またはその反応物である(7)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、酸素ガス、水蒸気等に対する高いガスバリア性、透明性、耐熱性、加工適性を有するガスバリア性フィルムであるから、例えば、食品、医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として有用なガスバリア性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のガスバリア性フィルムの構造を示した断面図である。
図2】本発明のガスバリア性フィルムを製造するための巻き取り式真空蒸着装置を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明のガスバリア性フィルムの構造の一例を示す断面図である。本例のガスバリア性フィルムは、図1に示すように、高分子フィルム基材1の片側の表面に、酸化アルミニウム層2を有し、該酸化アルミニウム層2の高分子フィルム基材1と反対面の上にシラン化合物を含む有機化合物層3を、配置したものである。
【0011】
本発明に使用する高分子フィルム基材としては、有機高分子化合物からなるフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーからなるフィルムを使用することができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである。高分子フィルム基材を構成するポリマーは、ホモポリマー、コポリマーのいずれでもよいし、また、単独またはブレンドして用いることができる。
【0012】
また、高分子フィルム基材として、単層フィルム、あるいは、2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムや、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用することができる。さらに、混合薄膜層を形成する側の表面には、密着性を良くするために、コロナ処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、粗面化処理や有機物、無機物あるいはこれらの混合物のアンカーコート層が施されていても構わない。
【0013】
本発明に使用する高分子フィルム基材の厚さは特に限定されないが、フレキシブル性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から5μm以上、200μm以下がより好ましい。
【0014】
本発明に使用する高分子フィルム基材には、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加したフィルム等も用いることができる。
【0015】
本発明において用いる酸化アルミニウム層は、X線光電子分光法(以下、XPS法という)により測定される膜表層のアルミニウム(Al)原子濃度に対する酸素(O)原子濃度の比率(以下、O/AL比率という)が1.7〜2.3の範囲であって、X線反射測定法(以下、GIXR法という)により測定される膜密度が2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲であるという特定のO/AL比率、膜密度範囲にある酸化アルミニウム層を有するフィルムである。
【0016】
本発明において、膜密度はGIXR法により測定することができる。すなわち、本発明の高分子フィルム基材の上に形成された酸化アルミニウム層に斜方向からX線を照射すると、酸化アルミニウム層表層で反射したX線と高分子フィルム基材の表層で反射したX線とが生じ、両者の光路差に伴う反射波の干渉信号の解析から膜密度を求めることができる。
【0017】
また、本発明にかかる酸化アルミニウム層は、ガスバリア性及びフレキシブル性の向上の観点から、GIXR法により測定した膜密度の値は、前述のように、2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲であり、2.65g/cm〜2.75g/cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2.68〜2.73g/cmの範囲である。膜密度が2.5g/cmより小さくなると、酸化アルミニウム層内部の空隙部分が増加し、酸素分子や水分子が透過しやすくなるためガスバリア性は低下する。膜密度が2.8g/cmより大きくなると膜質が緻密になるため酸素分子や水分子は透過しにくくなるが、熱水殺菌処理などの高温処理による熱変形や印刷、ラミネートといった後工程における外部応力に酸化アルミニウム層が追従できず、膜にクラックが発生し、ガスバリア性が低下する。
【0018】
本発明において、O/AL比率は、XPS法を用いることにより求めることができる。すなわちワイドスキャン、ナロースキャンを行い、ナロースキャンの化学シフトから元素の化学状態を判断する。次いで、ナロースキャンスペクトルをピーク分割することにより求めることができる。本発明において高分子フィルム基材の上に形成された酸化アルミニウム層表層のO/AL比率は、光電子脱出角度が10°以下の低角度になるように、試料面を傾けてX線を斜方向から照射することで求めることができる。
【0019】
また、本発明にかかる酸化アルミニウム層の表面において、XPS法により測定されるO/AL比率は、有機化合物層形成の際に酸化アルミニウム層の欠陥にシラン化合物を含む有機化合物が含浸してガス透過性を抑える観点から、1.7〜2.3の範囲であり、1.75〜2.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.90〜2.05の範囲である。シラン化合物は、有機化合物に含まれる水分及び乾燥時の加熱処理により加水分解されてシラノールになり、酸化アルミニウム層と有機化合物層の界面のアルミニウム原子に結合した水酸基と脱水縮合反応して、アルミニウム原子と化学的に結合する。従って、アルミニウム原子の濃度が大きい方が酸化アルミニウム層の欠陥部分に有機化合物を効率よく含浸できガスバリア性は向上するため、O/AL比率は小さい方が好ましい。しかし、酸化アルミニウム層表層のO/AL比率は1.7より小さくなると、酸化アルミニウム層の粒成長に伴う欠陥数が増加するため、酸化アルミニウム層内部の全ての欠陥を有機化合物で含浸することができなくなり、ガスバリア性は悪化する。従って、O/AL比率は1.7以上で形成することが好ましい。また、O/AL比率は2.3より大きくなると、外気の湿気により水酸化されたアルミニウム成分が増えることにより、欠陥数は増加して有機化合物の含浸効率が低下するためガスバリア性は悪化する。従って、酸化アルミニウム層表層のO/AL比率は2.3以下で形成することが好ましい。
【0020】
本発明において、酸化アルミニウム層に含まれるアルミニウム原子の量は、蛍光X線分析によって、定量することができる。すなわち、酸化アルミニウム層にX線を照射したときにアルミニウム原子の内殻電子が励起されて生じた空孔に、外殻の電子が遷移する際に放出されるアルミニウム原子の特性X線の強度を測定することによって、アルミニウム原子の濃度を得ることができる。
【0021】
本発明において、酸化アルミニウム層と有機化合物層との密着性を向上させる観点及び高分子フィルム基材と酸化アルミニウム層との密着性を向上させる観点から、蛍光X線分析により測定したアルミニウム原子の濃度は、0.8kcps〜8.0kcpsの範囲であることが好ましく、0.9g/cm〜2.0g/cmの範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.5g/cmの範囲である。アルミニウム原子の濃度が0.8kcpsより小さくなると、有機化合物層に含まれるシラノールとアルミニウム原子が化学的に結合する反応点が減少するため、酸化アルミニウム層と有機化合物層の密着性が不十分となる。アルミニウム原子の濃度が8.0kcpsより大きくなると、酸化アルミニウム層の表層で有機化合物層に含まれるシラノールとアルミニウム原子の化学的な結合が過度に起こるため、有機化合物層を形成する際に有機化合物が酸化アルミニウム層全体に渡って、酸化アルミニウム層に含浸することができなくなり、有機化合物層と酸化アルミニウム層との密着性が不十分となる。 高分子フィルム基材上に酸化アルミニウム層を形成する方法は特に限定されず、例えば、アルミニウムの金属を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。好ましくは、真空蒸着法である。上記において、アルミニウム金属の加熱方式としては、例えば、エレクトロンビーム方式(EB方式)、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式などが用いられる。
【0022】
本発明にかかる酸化アルミニウム層の膜密度を制御する方法としては、種々の方法が適用できるが、例えばプラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることができる。好ましくは、プラズマアシスト法である。蒸着機内の真空中でアルミニウム金属を蒸気化し、酸素ガスとの反応性蒸着により酸化アルミニウム層を形成する。その際、酸素ガスや炭酸ガス、不活性ガスなどとの混合ガスをプラズマ化して導入することによって、蒸気化したアルミニウムは活性化されるため、酸化アルミニウム層の膜質は緻密に形成され、膜密度は増加する。プラズマは、アルミニウム蒸気に導入しても良いし、酸化アルミニウム層を有する高分子フィルム基材の面に照射しても良い。プラズマ投入電力は高くなるほど処理強度は強くなり、膜密度を増加させることが可能である。また、フィルム搬送速度の減速やプラズマ照射面積を増加させ、高分子フィルム基材がプラズマに暴露される時間を長くすることによっても膜密度を増加させることが可能である。
【0023】
本発明にかかる酸化アルミニウム層表面のO/AL比率を制御する方法としては、酸素ガス導入ノズルの位置を調整することによって制御可能である。アルミニウム蒸気の雰囲気において、巻き取り側の酸素ガス濃度が増加するように酸素ガス導入ノズルを設置した場合は、酸化アルミニウム層表面の酸化度は高くなり、O/AL比率を高くすることができる。逆に、巻き取り側の酸素ガス濃度を減少するように、酸素ガス導入ノズルを設置した場合は、酸化度は低くなり、O/AL比率を低くすることが可能である。
【0024】
本発明に使用する酸化アルミニウム層の膜厚は、酸化アルミニウム層のガスバリア性が発現する膜厚として3nm以上、500nm以下である。膜厚が3nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生し、ガスバリア性フィルムの面内でガスバリア性がばらつくなどの問題が生じる。また、膜厚が500nmより厚くなると、酸化アルミニウム層の膜応力が大きくなるため、膜内部にクラックが発生し、ガスバリア性が低下する問題が生じる。従って、酸化アルミニウム層の膜厚は3nm以上、500nm以下が好ましく、フレキシブル性を確保する観点から5nm以上、300nm以下がより好ましい。
【0025】
また、本発明のガスバリア性フィルムは、酸化アルミニウム層の上にシラン化合物を含む有機化合物層が積層されているものである。シラン化合物は加水分解反応によってシラノール基を形成し、有機化合物層と酸化アルミニウム層の親和性が良くなるため、有機化合物層を酸化アルミニウム層の欠陥部分に効率よく含浸でき、ガスバリア性を向上させることが可能である。さらに、シラノール基はアルミニウム原子と化学的に結合するため、酸化アルミニウム層と有機化合物層の密着性を向上することができ、熱水殺菌処理や印刷、ラミネートといった高温処理や後加工においてもガスバリア性劣化及び密着性の低下が抑制できる。
【0026】
本発明に使用するシラン化合物としては、熱水殺菌処理に対する密着性を確保する観点から、アミノ基、ビニル基、エポキシ基の群から選択される1つ以上の官能基を有することが好ましい。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、Nー2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、Nー2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が例示できる。これらのシラン化合物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。また、上記シラン化合物は水と溶剤を配合し、公知の技術を用いて加水分解させたものを使用しても良い。これらの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが熱水殺菌処理に対するガスバリア性劣化及び密着性の低下が抑制できるため、特に好ましい。
【0027】
シラン化合物の添加量は有機化合物層の形成に用いる主剤と硬化剤の和100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、有機化合物層の経時安定性の観点から0.1〜2質量部程度がより好ましい(有機化合物層の形成に用いる主剤と硬化剤については後述する)。0.1質量部以下の添加量の場合にはシラン化合物の効果が薄く、十分な密着力が得られないことがある。一方、10質量部より多く添加した場合にはシラン化合物が有機化合物層中で可塑剤のような働きをするため有機化合物層のガスバリア性が低下することがある。
【0028】
本発明に使用する有機化合物層は、ガスバリア性、透明性などの特性を阻害しないものから選ばれる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂またはこれら樹脂の複数のモノマーから成る共重合体を主剤とした二液硬化型樹脂等が挙げられる。ガスバリア性の観点から、アクリロニトリル(単量体1)と、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(単量体2)と、不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(単量体3)との少なくとも3成分を単量体とするアクリル系共重合体を含む主剤と架橋剤(イソシアネート化合物:後述する)を含む硬化剤とを組合せた二液硬化型樹脂を使用して形成することが好ましい。主剤に使用する溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。これら溶剤の中でもアクリル系共重合体の溶解性の観点から、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)が好ましい。
【0029】
単量体2としては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等の不飽和化合物の単量体が挙げられる。これらの水酸基を有する非芳香族不飽和化合物は単独で、または2種類以上組み合わせて選択することができる。これらの水酸基を有する非芳香族不飽和化合物のうち、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートが、良好な重合安定性が得られるため特に好ましい。
【0030】
単量体3としては、不飽和カルボン酸エステルは、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0032】
また、エポキシアクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ、ノボラック型エポキシ等を原料とするものが挙げられる。
【0033】
その他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0034】
これらのうち、好ましいのは、不飽和カルボン酸エステルである。不飽和カルボン酸エステルのうちメチルメタクリレート、メチルアクリレートが特に好ましく、メチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0035】
硬化剤としては、主剤に含まれる重合体を架橋する成分を含み、ガスバリア性、透明性などの特性を阻害しないものであれば、特に限定されることはなく、イソシアネート系、エポキシ系などの一般的な硬化剤を使用することができる。塗膜強度及び熱水処理耐性の観点から、イソシアネート基を有する化合物が好ましい。例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−、2,3−又は1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示できる。本発明においては、ガスバリア性の観点から、1,3−キシレンジイソシアネート(XDI)およびその部分縮合物、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)およびその部分縮合物を含むことが好ましい。硬化剤に使用する溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。これら溶剤の中でもアクリル系共重合体の溶解性の観点から、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)が好ましい。
【0036】
本発明にかかる有機化合物層には、熱水殺菌処理や高温処理などにおいて、有機化合物層の密着性の低下を生じにくくするため、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物を含有してもよい。1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、トリメリット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0037】
無水カルボン酸基を持つ化合物としては無水マレイン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、四塩基酸無水物等あるが、酸化アルミニウム層の上へ塗工する場合は、特に四塩基酸無水物のように2つ以上の無水カルボン酸基を持つ化合物が良好である。四塩基酸無水物としては、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7ーナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を使用する。 本発明において有機化合物層を形成する際に用いる主剤と硬化剤との配合比は特に制限されるものではないが、硬化剤が少なすぎると主剤との間で生じる架橋反応が不十分なものとなり、有機化合物層の塗膜強度が十分発現せずに熱水処理耐性、酸化アルミニウム層との密着性等も不足する場合がある。また硬化剤の配合量が多すぎる場合にはブロッキングを生じる原因となるだけでなく、余剰のイソシアネート化合物が他の層に移行するなどして後加工等において不都合を生じる場合がある。
【0038】
本発明の有機化合物層には、ガスバリア性、もしくは酸化アルミニウム層との密着力が損なわない範囲であれば、各種の添加剤が含まれていてもよい。かかる場合に使用する添加剤としては、公知の耐候剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤等が挙げられる。また、同時にガスバリア性、もしくは酸化アルミニウム層との密着力を損なわない程度であれば、無機または有機の粒子が含まれていても良い。例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化珪素、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、アルミナ、硫酸バリウム、ジリコニア、リン酸カルシウム、架橋ポリスチレン系粒子などが例示される。
【0039】
本発明にかかる有機化合物層を製造する方法としては、特に制限はなく、既知の方法で製造することができる。例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法などの印刷方式やロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法、ナイフエッジコーティング法、グラビアコーティング法、キスコーティング法、スピンコーティング法等やこれらを組み合わせた方法を用いて、コーティング液をコーティングすればよい。
【0040】
酸化アルミニウム層上に設ける有機化合物層の厚みは、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.2〜2μmである。有機化合物層の厚みが、0.1μm以上であると、ガスバリア性の十分な向上が得られ、コーティング時の加工性も高まり、膜切れやはじきなどの欠陥のない有機化合物層を形成することができる。一方、有機化合物層の厚みが3μm以下であると、コーティング時の乾燥条件が低温、短時間であっても溶剤が十分に乾燥するので、フィルムにカール等の変形が生じることがなく、製造コストが増加するといった問題点も起こらず好ましい。
【0041】
本発明の製造方法で得られるガスバリア性フィルムを用いて積層体を得る方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で好ましく製造される。
【0042】
本発明で得られたガスバリア性フィルムの表面に、必要に応じて、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を施した上で、ポリエステル系、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他のラミネート用接着剤等を使用して、公知の包装材料をラミネートする方法等により製造することができる。ここで、ラミネート方法は特に限定されず、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、共押し出しインフレーション法、その他の方法等を使用することができる。
【0043】
本発明のガスバリア性フィルムは、例えば、他の樹脂フィルム、紙基材、金属素材、合成紙、セロハンなどの素材から形成された機能性部材と任意に組み合わせ、ラミネートして種々の積層体を製造することができる。これらの積層体は、本発明品の特徴である高ガスバリア性、耐熱性、高透明性に加え、耐候性、導電性、装飾性などを付与して多機能化することができるため、例えば、食品、医薬品、電子部品等の包装や、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の薄型ディスプレイ、太陽電池などの電子デバイス部材として使用することができる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例を挙げて、具体的に本発明を説明する。なお、ガスバリア性フィルムの特性は下記の条件下で測定した。部数は、質量部を表す。
【0045】
(1)酸素透過率
酸素透過率は、温度23℃、湿度0%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(機種名、オキシトラン(登録商標)(OXTRAN 2/20))を使用して、JIS K7126(2000年版)に記載のB法(等圧法)に基づいて測定した。また、測定は各実施例・比較例について2枚の試験片について2回ずつ行い、合計4つの測定値の平均値を各実施例、比較例における酸素透過率の値とした。
【0046】
(2)水蒸気透過率
水蒸気透過率は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率透過率測定装置(機種名、パ−マトラン(登録商標)W3/31)を使用してJIS K7129(2000年版)に記載のB法(赤外センサー法)に基づいて測定した。また、測定は各実施例・比較例について2枚の試験片について2回ずつ行い、合計4つの測定値の平均値を各実施例、比較例における水蒸気透過率の値とした。
【0047】
(3)密着強度
密着強度は、引っ張り試験機((株)オリエンテック製テンシロンPTM−50)を使用して評価した。実施例および比較例で作製した積層フィルムから、幅15mm、長さ100mmの短冊を切り出して評価サンプルとした。後述する実施例および比較例で作製した積層フィルム(構成:ガスバリア性フィルム/接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルム)のガスバリア性フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムの間を長さ30mm分だけ剥がし、剥がした評価サンプルのガスバリア性フィルム側を引っ張り試験機の一方のフィルムチャックで固定し、さらに剥がしたもう一方側の無延伸ポリプロピレンフィルムを他方のチャックで固定し、引っ張り試験機を用いて、速度300mm/分、T型剥離(剥離界面角度90°)で引っ張り、ガスバリア性フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルム間の密着強度を長さ40mm分測定した。この時の測定値としては長さ40mm分の測定値の平均値とした。各実施例、比較例において、5枚の評価サンプルを上記方法で評価し、その平均値を密着強度とした。
【0048】
(4)耐レトルト性評価
実施例および比較例で作製した積層フィルム(15cm角)をそれぞれ2枚準備した。2枚の積層フィルムをシーラントフィルム面が面するようにして重ね、ヒートシーラーを用いて3辺の端部をシール巾1cmにて熱シールした。次いで、内容物として水道水100gを入れ、残りの1辺の端部を熱シールして15cm角のパッケージを作製した。各実施例、比較例について1つのパッケージを準備した。次にそのパッケージを、株式会社トミー精工製オートクレープSR−240を用いてレトルト処理(120℃、30分間)した。処理後、パッケージを切断して水道水を抜き、シール部以外の部分から、幅15mm、長さ100mmの短冊を切り出して評価サンプルとし、剥がしたガスバリア性フィルム側と剥がしたもう一方側の無延伸ポリプロピレンフィルムとの間の密着強度の測定を(3)項に記載の方法で引っ張り試験機を用いて行い、レトルト処理後の密着強度とした。また、レトルト処理を終え、内容物としての水道水を抜いた後、一晩室温下で乾燥した試験片について前述の方法に従い酸素透過率及び水蒸気透過率を測定して、レトルト処理後のバリア性の値とした。
【0049】
(5)膜厚測定方法
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム(日立製FB−2000A)を使用してFIB法(「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119)により作製した。透過型電子顕微鏡(日立製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、混合薄膜層及び珪素系薄膜層の膜厚を測定した。
【0050】
(6)酸化アルミニウム層表層のO/AL比率の測定方法
O/AL比率は、X線光電子分光法(XPS法)を用いることにより測定した。すなわちワイドスキャン、ナロースキャンを行い、ナロースキャンの化学シフトから元素の化学状態を判断する。次いで、ナロースキャンスペクトルをピーク分割することにより求めることができる。
【0051】
測定条件は下記の通りとした。
【0052】
・装置:Quantera SXM (PHI社製)
・励起X線:monochromatic AlKα1,2
・X線径100μm ・光電子脱出角度:10°
・データ処理 スムージング
・横軸補正:C1sメインピークを284.6eVにした
(7)酸化アルミニウム層の膜密度測定方法
X線反射測定法(GIXR法)により、酸化アルミニウム層の膜密度を測定した。すなわち、本発明の高分子フィルム基材の上に形成された酸化アルミニウム層に斜方向からX線を照射すると、酸化アルミニウム層表層で反射したX線と高分子フィルム基材の表層で反射したX線とに別れ、両者の光路差に伴う反射波の干渉信号の解析から膜密度を求めることができる。
【0053】
測定条件は下記の通りとした。
【0054】
・入射X線波長:0.1541nm(CuKα1線)
・測定範囲(試料表面とのなす角):0.05〜1.0°、0.01°ステップ
(8)酸化アルミニウム層のアルミニウム原子濃度測定方法
蛍光X線分析により、酸化アルミニウム層のアルミニウム原子濃度を測定した。すなわち、酸化アルミニウム層にX線を照射したときにアルミニウム原子の内殻電子が励起されて生じた空孔に、外殻の電子が遷移する際に放出されるアルミニウム原子の特性X線の強度を測定することによって、アルミニウム原子の濃度を得た。
【0055】
測定条件は下記の通りとした。
【0056】
・装置:Rigaku製 X線 SPECTROMETER RIX1000
・X線管:横型Crターゲット
・分光結晶:LIF1
(実施例1)
(酸化アルミニウム層の製造)
図2に示す装置構造の巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標) 12T705)を高分子フィルム基材とし、その片面に、アルミニウムを蒸着材料に用いて抵抗加熱方式によりアルミニウムを蒸気化し、酸素ガスを導入して酸化アルミニウム層を設けた。図2は本発明のガスバリア性フィルムの製造に当たり酸化アルミニウム層を形成する工程に用いるための巻き取り式真空蒸着装置の概略図である。まず、巻き取り式真空蒸着装置4の巻き取り室5の中で、巻き出しロール6にセットされた高分子フィルム基材1を搬送速度100m/minで巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、クーリングドラム11に通す。ボート7上にはアルミニウム等のワイヤーが導入されていて、ボート7からアルミニウムを蒸発させ、酸素導入ノズル12から酸素ガス0.4L/minを導入し、さらにプラズマ電極13から酸素プラズマを導入することにより、このクーリングドラム11上の位置において高分子フィルム基材1の表面に酸化アルミニウム層を形成した。このとき、プラズマ電極13には、酸素ガス0.2L/minを導入し、プラズマ投入電力は3.0kwとした。その後、この酸化アルミニウム層を形成した高分子フィルム基材をガイドロール14、15、16を介して、巻き取りロール17に巻き取った。
【0057】
次いで、得られた酸化アルミニウム層の膜厚、表層のO/AL比率、膜密度を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(アクリル系共重合樹脂の製造)
アクリロニトリル(AN)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)及びメチルメタクリレート(MMA)の各モノマーをそれぞれ20:50:30に示す割合(質量%)で配合し、公知の技術により共重合してアクリル系共重合樹脂を得た。得られたアクリル系共重合樹脂をメチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)の混合溶剤に溶解させて固形分濃度が30質量%のアクリル系共重合樹脂の溶液(主剤)を得た。
【0059】
(コーティング液)
上記アクリル系共重合樹脂の溶液 12.0部、キシレンジイソシアネートを主成分とする固形分濃度75質量%の硬化剤の溶液(DIC株式会社製 HX−75) 6.0部、メチルエチルケトン 66.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテル 5.0部、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)のアセトン希釈液(5質量%)8.0部、degussa社製シリカフィラー OK412 0.01部、さらに信越化学工業製3−アミノプロピルトリエトキシシランを主成分とするシランカップリング剤 KBE903 3.75部にアセトン20.33部、水0.92部添加し、公知の技術にて2時間加水分解させたもの 3.0部(固形分濃度15質量%)を30分間密閉攪拌して固形分濃度約9.0質量%のコーティング液を調整した。
【0060】
(有機化合物層の製造)
上記蒸着フィルムの酸化アルミニウム層上に、ワイヤーバーを用いて上記のコーティング液を塗布し、120℃で20秒間乾燥し、乾燥後塗布量が0.6g/mとなるように有機化合物層を設け、ガスバリア性フィルムを製造した。
【0061】
(オーバーコート層の製造)
東洋モートン株式会社製ドライラミネート用接着剤 AD−503 20部、東洋モートン株式会社製硬化剤 CAT−10 1部、および酢酸エチル 20部を量りとり、30分間攪拌して固形分濃度19質量%のドライラミネート用接着剤溶液を調整した。
【0062】
この接着剤溶液を得られたガスバリア性フィルムの有機化合物層の上にワイヤーバーで塗布し、80℃で45秒間乾燥して3.5μmの接着剤層を形成した。
【0063】
次にこの接着剤層の上に、シーラントフィルムとして片面をコロナ処理した無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製 ZK93K)をコロナ処理面が接着剤層と向かい合うように重ね、ハンドローラを用いて貼り合わせた。この貼り合わせたフィルムを40℃に加熱したオーブン内で2日間エージングして積層フィルムを得た。
【0064】
(実施例2)
酸化アルミニウム蒸着時のプラズマ投入電力を3.5kwにする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0065】
(実施例3)
酸化アルミニウム蒸着時のプラズマ投入電力を2.0kwにする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0066】
(実施例4)
フィルムの搬送速度を60m/minにする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0067】
(実施例5)
酸素導入ノズル12を巻取り側へ5.5cm平行移動させて設置する以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0068】
(実施例6)
酸素導入ノズル12を巻出し側へ5.5cm平行移動させて設置する以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0069】
(実施例7)
高分子フィルム基材1を搬送速度を130m/minとし、酸素導入ノズル12から導入する酸素ガスを0.2L/minとする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0070】
(比較例1)
プラズマ投入電力を投入しない(電力0kw)以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0071】
(比較例2)
酸化アルミニウム蒸着時のプラズマ投入電力を4.5kwにする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0072】
(比較例3)
酸化アルミニウム蒸着時のフィルムの搬送速度を60m/min、プラズマ投入電力を4.5kwにする以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0073】
(比較例4)
酸素導入ノズル12を巻取り側へ10.0cm平行移動させて設置する以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0074】
(比較例5)
酸素導入ノズル12を巻出し側へ10.0cm平行移動させて設置する以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0075】
(比較例6)
コーティング液にシランカップリング剤を配合しない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、実施例1と同様にしてそれを用いた積層フィルムを得た。
【0076】
実施例1〜6、比較例1〜6で得られたガスバリア性フィルムについて、レトルト処理前後の酸素透過率(OTR)、水蒸気透過率(MVTR)及びレトルト処理後の密着強度を測定した。評価結果を表1に示す。ここで、実施例1〜4と比較例2、3の比較から、酸化アルミニウム層の膜密度が2.8g/cm以下なると、レトルト処理によるガスバリア性劣化が抑制できることが分かる。実施例1〜4と比較例1の比較から、酸化アルミニウム層の膜密度が2.5g/cm以上になると、未処理のガスバリア性能が優れることが分かる。また、実施例5、6と比較例4、5の比較から、酸化アルミニウム層表層のO/AL比率が1.7〜2.3の範囲になると未処理のガスバリア性能が優れることが分かる。実施例1〜6と比較例6の比較から、酸化アルミニウム層上に形成する有機化合物層にシランカップリング剤が含まれていると、レトルト処理後の密着強度は優れることがわかる。さらに、酸化アルミニウム層表層のO/AL比が1.7〜2.3の範囲であって、膜密度が2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲であっても、有機化合物層にシランカップリング剤が含まれていないと、未処理のガスバリア性能が向上しないことが分かる。実施例と比較例の比較から明らかなように、本発明品は高分子フィルム基材に膜表層のO/AL比が1.7〜2.3の範囲であって、膜密度が2.5g/cm〜2.8g/cmの範囲である酸化アルミニウム層を有し、さらに前記酸化アルミニウム層の上にシランカップリング剤を含む有機化合物層を積層することにより、ガスバリア性能を向上し、さらにレトルト処理後においても、ガスバリア性及び密着強度が悪化しない、高度なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムである。
【0077】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、酸素や水蒸気等に対する高ガスバリア性、耐熱性を有するものであるから、高度な特性が必要とされる食品、医療用包装用途や薄型テレビ、太陽電池等の電子デバイス用途に寄与することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1:高分子フィルム基材
2:酸化アルミニウム層
3:有機化合物層
4:巻き取り式真空蒸着装置
5:巻き取り室
6:巻き出しロール
7:ボート
8、9、10:巻き出し側ガイドロール
11:クーリングドラム
12:酸素導入ノズル
13:プラズマ電極
14、15、16:巻き取り側ガイドロール
17:巻き取りロール
図1
図2