(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態に対して施され得る各種の変更(変形例:modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0019】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態である燃料電池車10の概略構成を示す図である。本実施形態の燃料電池車10は、燃料電池11と、FC昇圧コンバータ12と、バッテリ13と、バッテリ昇圧コンバータ14と、インバータ15と、モータ16と、FC冷却機構17と、EV冷却機構18と、制御部19と、を備えている。この燃料電池車10は、燃料電池11及び/又はバッテリ13から出力された電力を、インバータ15を介してモータ16に供給することで、駆動輪Wを駆動するようになっている。
【0020】
燃料電池11及びバッテリ13は、インバータ15及びモータ16と並列に接続されている。すなわち、燃料電池11は、FC昇圧コンバータ12を介して、インバータ15と電気的に接続されている。また、バッテリ13は、バッテリ昇圧コンバータ14を介して、インバータ15と電気的に接続されている。そして、インバータ15は、FC昇圧コンバータ12及びバッテリ昇圧コンバータ14と、モータ16と、の間に設けられている。換言すれば、インバータ15の入力端子側において、FC昇圧コンバータ12及びバッテリ昇圧コンバータ14の出力が合流するように、FC昇圧コンバータ12、バッテリ昇圧コンバータ14、及びインバータ15が接続されている。
【0021】
本発明の電圧変換器に相当するFC昇圧コンバータ12は、一方向昇圧型のDC−DCコンバータであって、入力された燃料電池11の端子電圧(以下、「燃料電池電圧」と称する。)Vfcmesを昇圧してインバータ15側に出力可能に構成されている。バッテリ昇圧コンバータ14は、昇圧型DC−DCコンバータであって、入力されたバッテリ13の端子電圧を昇圧してインバータ15側に出力可能に構成されている。
【0022】
FC昇圧コンバータ12は、U相コンバータ120u、V相コンバータ120v、及びW相コンバータ120wを並列に接続した構成を有しており、負荷(モータ16等)の要求出力等に応じて、U相のみを使用した一相駆動、U相とV相とを使用した二相駆動、及び、U相とV相とW相とを使用した三相駆動の間で、駆動相数を切り換え可能に構成されている(特開2011−19338号公報等参照)。また、U相コンバータ120u、V相コンバータ120v、及びW相コンバータ120wは、後述するように、昇圧比を変更可能に構成されている。
【0023】
図2は、
図1に示されているFC昇圧コンバータ12の電気回路構成を示す図である。
図3は、
図1及び
図2に示されているFC昇圧コンバータ12を構成する1相分(例えばU相コンバータ120u)の電気回路構成を示す図である。なお、
図2及び
図3においては、図示の簡略化のため、バッテリ13及びバッテリ昇圧コンバータ14については図示が省略されているものとする。また、図中、負荷回路LCは、インバータ15、及び、燃料電池11からインバータ15を介して供給される電力によって動作可能なすべての機器(モータ16等)を総称したものである。
【0024】
以下の説明において、FC昇圧コンバータ12を構成する1相分のコンバータ(U相コンバータ120u、V相コンバータ120v、及びW相コンバータ120w)の各々を特に区別する必要がない場合には、単に「単相昇圧コンバータ120」と称する。また、単相昇圧コンバータ120に入力される昇圧前の電圧を「コンバータ入力電圧Vin」と称し、FC昇圧コンバータ12から出力される昇圧後の電圧を「コンバータ出力電圧Vout」と称するものとする。さらに、
図2及び
図3中、“C”はコンデンサを示し、“D”はダイオードを示し、“L”はコイル(リアクトル)を示し、“S”はスイッチング素子を示す。
【0025】
図2に示されているように、FC昇圧コンバータ12を構成する各単相昇圧コンバータ120は、コンデンサC1〜C3と、ダイオードD1〜D6と、スイッチング素子S1及びS2と、コイル(リアクトル)L1及びL2と、を備えている。これらのうち、コンデンサC1、ダイオードD6、及びコイルL2は、各相に共通のものとして設けられている。すなわち、コンデンサC2及びC3と、ダイオードD1〜D5と、コイルL1は、U相コンバータ120u、V相コンバータ120v、及びW相コンバータ120wに、それぞれ1つずつ設けられている。一方、コンデンサC1、ダイオードD6、及びコイルL2は、U相コンバータ120u、V相コンバータ120v、及びW相コンバータ120wに共通のものとして、FC昇圧コンバータ12内にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0026】
FC昇圧コンバータ12は、U相コンバータ120u、V相コンバータ120v、及びW相コンバータ120wの他に、フリーホイール回路121を備えている。このフリーホイール回路121は、各相に共通のフリーホイールダイオードである、上述のダイオードD6であって、コイルL2の通電中にスイッチング素子S2を破壊するようなサージ電圧の発生を未然に防ぐフェールセーフ機能を実現するために設けられている。
【0027】
図3を参照すると、単相昇圧コンバータ120は、昇圧動作を行うための主昇圧回路122と、ソフトスイッチング動作を行うための補助回路123と、を備えている。主昇圧回路122は、IGBTからなるスイッチング素子(メインスイッチ)S1とダイオードD4とによって構成されるスイッチング回路のスイッチ動作によって、コイルL1に蓄えられたエネルギーを、ダイオードD5を介して負荷回路LCに向けて解放することで、燃料電池11の出力電圧を昇圧するようになっている。
【0028】
また、単相昇圧コンバータ120は、昇圧動作時にはスイッチング素子S1におけるスイッチングデューティー比を調整することで昇圧比を変更可能であるとともに、昇圧動作の停止時にはコイルL1及びダイオードD5を介して燃料電池電圧を直接的に負荷回路LCに伝達可能に構成されている。なお、
図2及び
図3に示されている電気回路構成を見れば、当業者であればFC昇圧コンバータ12が具体的にどのように製造されどのように動作するものであるかは容易に理解可能であるが、必要であれば、本出願人の先願公開公報(例えば、特開2009−165244号公報、特開2011−19337号公報、特開2011−19338号公報、等参照。)を参照のこと。
【0029】
再び
図1を参照すると、FC冷却機構17は、冷却媒体流路に冷却媒体(冷却水)を循環させることよって燃料電池11を冷却するための機構であり、冷却水ポンプ、ラジエータ、切換弁、等を備えている。同様に、EV冷却機構18は、冷却媒体流路に冷却媒体(冷却水)を循環させることによってFC昇圧コンバータ12やバッテリ昇圧コンバータ14等の機器(EV機器)を冷却するための機構であり、冷却水ポンプ、ラジエータ、切換弁、等を備えている。
【0030】
制御部19は、燃料電池車10における各部の動作を制御するための、いわゆるマイクロコンピュータであって、CPUと、ROMと、RAMと、バックアップRAMと、インターフェースと、これらを接続する双方向バスと、を備えている。ROMには、CPUが実行するルーチン(プログラム)、及びこのルーチンの実行時に参照されるテーブル(ルックアップテーブル、マップ)、等が、予め格納されている。
【0031】
制御部19は、上述のインターフェースを介して、センサ群190(このセンサ群190には、燃料電池車10の走行速度に対応する出力を生じる車速センサ191、運転者のアクセル操作量に対応する出力を生じるアクセル操作量センサ192、U相コンバータ120u〜W相コンバータ120wにおけるスイッチング素子S1の温度に対応する出力を生じる素子温度センサ193u〜193w、FC冷却機構17における冷却媒体の温度に対応する出力を生じるFC温度センサ194、及びEV冷却機構18における冷却媒体の温度に対応する出力を生じるEV温度センサ195の他に、図示しない電流センサや電圧センサ等が含まれる。)と電気的に接続されている。
【0032】
また、制御部19は、FC昇圧コンバータ12、バッテリ昇圧コンバータ14、インバータ15、モータ16、FC冷却機構17、及びEV冷却機構18と、上述のインターフェースを介して電気的に接続されていて、これらの動作を制御するようになっている。特に、本実施形態においては、制御部19は、U相コンバータ120u〜W相コンバータ120wにおける各スイッチング素子S1(
図2及び3参照)のスイッチング周波数を変更可能に構成されている(特開2005−312279号公報参照)。
【0033】
[動作の概要]
制御部19は、アクセル操作量センサ192によって検知されたアクセル操作量Accp等に基づいて、燃料電池車10全体の要求電力(車両走行電力と補機電力との合計値)を算出するとともに、燃料電池11とバッテリ13とのそれぞれの出力電力の配分を決定する。また、制御部19は、燃料電池11の発電量が目標電力に一致するように、燃料電池11を駆動するための燃料ガス供給系や酸化ガス供給系を制御する。
【0034】
さらに、制御部19は、FC昇圧コンバータ12やバッテリ昇圧コンバータ14の動作制御を介して、インバータ電圧、及び、燃料電池11の運転ポイント(動作点:燃料電池電圧Vfcmes及び出力電流Ifcmes)を制御する。具体的には、制御部19は、バッテリ昇圧コンバータ14における昇圧動作によってインバータ電圧を制御するとともに、FC昇圧コンバータ12によって燃料電池11の運転ポイントを制御する。加えて、制御部19は、アクセル操作量Accp等に応じた目標トルクが得られるように、インバータ15を介して、モータ16の出力トルク及び回転数を制御する。
【0035】
本実施形態の燃料電池車10においては、燃料電池11とインバータ15との間に介在するFC昇圧コンバータ12における電力損失を低減することが、燃料電池車10全体の効率向上に大きく寄与すると考えられる。そこで、本実施形態の燃料電池車10においては、FC昇圧コンバータ12の間欠運転制御を行うことで、FC昇圧コンバータ12におけるスイッチング損失が可及的に抑制される。これにより、システム効率が向上する。
【0036】
ここで、上述の構成を有する本実施形態のFC昇圧コンバータ12においては、制御部19が各相のスイッチング素子S1におけるスイッチングデューティー比を調整することで、昇圧比(すなわちコンバータ入力電圧Vinに対するコンバータ出力電圧Voutの比)が制御される。また、スイッチング素子S1のスイッチング動作において補助回路123におけるスイッチング素子S2のスイッチング動作を介在させることで、ソフトスイッチングが実現される。一方、補助回路123を機能させなければ(すなわち補助回路123のスイッチング素子S2を常時オフとしておくことで)、FC昇圧コンバータ12においてハードスイッチングが実現される。
【0037】
また、本実施形態においては、スイッチング素子S1の温度(素子温度センサ193u〜193wの出力に基づく検出値)をTc、燃料電池車10の速度(車速センサ191の出力に基づく検出値)である車速をVC、アクセル操作量(アクセル操作量センサ192の出力に基づく検出値)をAccp、とすると、制御部19は、以下のように動作する:(1)Tc≦Tc0が成立し且つVC≦VC0又はAccp≦Accp0が成立する場合には、U相コンバータ120u〜W相コンバータ120wにおける各スイッチング素子S1の動作周波数を可聴域(20〜20kHz)よりも高く設定し、(2)Tc≦Tc0、VC≦VC0、及びAccp≦Accp0が成立しない場合には、各スイッチング素子S1の動作周波数を可聴域に設定し、(3)Tc≦Tc0が成立せず且つVC≦VC0又はAccp≦Accp0が成立する場合には、各スイッチング素子S1の動作周波数を可聴域に設定するとともに、FC昇圧コンバータ12におけるリアクトル電流(コイルL1を流れる電流)を低減して当該リアクトル電流を不連続モードとすべく、前記(2)の場合よりもFC昇圧コンバータ12における昇圧比を上昇させたり駆動相数を前記(2)の場合よりも増加させたりする。
【0038】
具体的には、スイッチング素子S1の温度が低い(Tc≦Tc0)場合、動作周波数を可聴域よりも高い周波数に設定しても、素子過熱の問題は生じない。そこで、燃料電池車10の内外が静粛であってノイズが乗員に感知されやすい運転条件である、低車速(VC≦VC0)又は低加速要求(Accp≦Accp0)においては、制御部19は、スイッチング素子S1の温度が低い場合に動作周波数を可聴域よりも高い周波数に設定する。これにより、リアクトルに起因するFC昇圧コンバータ12におけるノイズの発生が、可及的に抑制される。
【0039】
なお、スイッチング素子S1の温度が低い場合であっても、高車速(VC>VC0)且つ高加速要求(Accp>Accp0)のときには、ノイズは燃料電池車10の乗員(運転者を含む)には感知され難い。よって、このときには、制御部19は、システム効率を優先して、スイッチング素子S1の動作周波数を、可聴域内の周波数(損失が最も少ない周波数:例えば10kHz程度)に設定する。
【0040】
一方、スイッチング素子S1の温度が高い(Tc>Tc0)場合であって、低車速(VC≦VC0)及び/又は低加速要求(Accp≦Accp0)のときは、素子過熱及びノイズの双方が問題となる。そこで、本実施形態においては、制御部19は、スイッチング素子S1の動作周波数を可聴域(損失が最も少ない周波数:例えば10kHz程度)に設定するとともに、リアクトル電流を不連続モードとすることでノイズの発生を可及的に抑制すべく、FC昇圧コンバータ12における昇圧比を上昇させたり駆動相数を増加させたりする。
【0041】
スイッチング素子S1の動作周波数を可聴域に設定することにより、素子過熱が効果的に防止される。また、一方向昇圧型のFC昇圧コンバータ12における昇圧比を上昇させたり、駆動相数を増加させたりすることで、リアクトル電流が抑制され、その結果、リアクトル電流が不連続モードとなる。これにより、リアクトルに起因するFC昇圧コンバータ12におけるノイズの発生が抑制される。
【0042】
このように、本実施形態によれば、素子過熱が効果的に防止されつつ、リアクトルに起因するFC昇圧コンバータ12におけるノイズの発生が可及的に抑制される。
【0043】
[動作の具体例]
図4は、
図1に示されている制御部19内のCPU(以下、単に「CPU」と称する。)によって実行される、FC昇圧コンバータ12のスイッチング周波数設定処理の一具体例を示すフローチャートである。なお、
図4のフローチャートにおいて、「ステップ」は「S」と略記されている。
【0044】
CPUは、
図4に示されているスイッチング周波数設定ルーチン400を、所定時間毎に実行する。かかるルーチン400の実行が開始されると、CPUは、後述する各ステップにおいて必要なパラメータ(スイッチング素子S1の温度Tc、アクセル操作量Accp、車速VC、等)を取得した後、ステップ410において、スイッチング素子S1の温度Tcが所定温度Tc0よりも高いか否かを判定する。
【0045】
まず、スイッチング素子S1が高温である場合(Tc>Tc0:ステップ410=Yes)について説明すると、この場合、処理がステップ415に進行して、FC昇圧コンバータ12(スイッチング素子S1)のスイッチング周波数が可聴域の通常の周波数Fnormに設定された後、処理がステップ420に進行する。
【0046】
ステップ420においては、CPUは、アクセル操作量Accpが所定値Accp0よりも大きいか否かを判定する。アクセル操作量Accpが所定値Accp0よりも大きい場合(Accp>Accp0:ステップ420=Yes)、処理がステップ430に進行する。ステップ430においては、CPUは、車速VCが所定値VC0よりも大きいか否かを判定する。アクセル操作量Accpが所定値Accp0よりも大きく(Accp>Accp0:ステップ420=Yes)且つ車速VCが所定値VC0よりも大きい(VC>VC0:ステップ430=Yes)場合、本ルーチンが一旦終了する。
【0047】
スイッチング素子S1が高温であって(VC>VC0:ステップ410=Yes)、アクセル操作量Accpが所定値Accp0以下(Accp≦Accp0:ステップ420=No)あるいは車速VCが所定値VC0以下(VC≦VC0:ステップ430=No)である場合、処理がステップ440に進行する。ステップ440においては、CPUは、現在のFC昇圧コンバータ12の駆動相数が三相であるか否かを判定する。
【0048】
現在のFC昇圧コンバータ12の駆動相数が三相である場合(ステップ440=Yes)、これ以上駆動相数を増加させることができない。そこで、この場合、処理がステップ450に進行して、CPUは、リアクトル電流を低減して不連続モードとするために、FC昇圧コンバータ12の昇圧比を上昇させる。一方、現在のFC昇圧コンバータ12の駆動相数が一相あるいは二相である場合(ステップ440=No)、FC昇圧コンバータ12の昇圧比を上昇させることなく、駆動相数を増加させることで、リアクトル電流を低減して不連続モードとすることが可能である。そこで、この場合、処理がステップ455に進行して、CPUは、FC昇圧コンバータ12の駆動相数を増加させる。ステップ450やステップ455の処理の後、本ルーチンが一旦終了する。
【0049】
このように、本具体例においては、スイッチング素子S1の温度Tcが所定温度Tc0よりも高い場合にスイッチング周波数が可聴域の通常の周波数Fnormに設定されるとともに、低車速(VC≦VC0)又は低加速要求(Accp≦Accp0)のときには高車速(VC≦VC0)且つ高加速要求(Accp≦Accp0)よりもFC昇圧コンバータ12の昇圧比が上昇されたり駆動相数を増加されたりする。これにより、スイッチング素子S1の過熱を抑制しつつ、ノイズの発生を可及的に抑制することが可能になる。
【0050】
次に、スイッチング素子S1が低温である場合(Tc≦Tc0:ステップ410=No)について説明すると、この場合、処理がステップ460に進行して、CPUは、ステップ420と同様に、アクセル操作量Accpが所定値Accp0よりも大きいか否かを判定する。アクセル操作量Accpが所定値Accp0よりも大きい場合(Accp>Accp0:ステップ460=Yes)、処理がステップ470に進行する。ステップ470においては、CPUは、ステップ430と同様に、車速VCが所定値VC0よりも大きいか否かを判定する。
【0051】
スイッチング素子S1が低温であって(Tc≦Tc0:ステップ410=No)、アクセル操作量Accpが所定値Accp0よりも大きく(Accp>Accp0:ステップ460=Yes)且つ車速VCが所定値VC0よりも大きい(VC>VC0:ステップ470=Yes)場合、処理がステップ480に進行する。ステップ480においては、CPUは、ステップ415と同様に、FC昇圧コンバータ12(スイッチング素子S1)のスイッチング周波数を可聴域の通常の周波数Fnormに設定する。ステップ480の処理の後、本ルーチンが一旦終了する。
【0052】
スイッチング素子S1が低温であって(Tc≦Tc0:ステップ410=No)、アクセル操作量Accpが所定値Accp0以下(Accp≦Accp0:ステップ460=No)あるいは車速VCが所定値VC0以下(VC≦VC0:ステップ470=No)である場合、処理がステップ490に進行する。ステップ490においては、CPUは、FC昇圧コンバータ12(スイッチング素子S1)のスイッチング周波数を、可聴域よりも高い周波数Fhighに設定する。ステップ490の処理の後、本ルーチンが一旦終了する。
【0053】
このように、本具体例においては、スイッチング素子S1の温度が低い(Tc≦Tc0)場合であって、低車速(VC≦VC0)又は低加速要求(Accp≦Accp0)のときには、スイッチング周波数が可聴域よりも高い周波数Fhighに設定される。これにより、特に燃料電池車10の内外が静粛であってノイズが乗員に感知されやすい運転条件における、リアクトルに起因するFC昇圧コンバータ12におけるノイズの発生が、可及的に抑制される。一方、スイッチング素子S1の温度が低い(Tc≦Tc0)場合であっても、高車速(VC>VC0)且つ高加速要求(Accp>Accp0)のときには、スイッチング素子S1の動作周波数が可聴域内の周波数に設定される。これにより、高車速且つ高加速要求時における良好なシステム効率が達成される。
【0054】
[変形例の例示列挙]
なお、上述の実施形態は、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0055】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0056】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態や、下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
【0057】
本発明は、上述の実施形態にて開示された具体的な装置構成に限定されない。例えば、バッテリ13は、通常の自動車用の鉛蓄電池の他、リチウム系二次電池であってもよい。あるいは、バッテリ13に代えて、キャパシタ等が利用可能である。さらに、複数の燃料電池スタックや複数の蓄電装置が設けられた構成に対しても、本発明は好適に適用可能である。
【0058】
FC昇圧コンバータ12の回路構成(相数を含む)も、上述の具体例に何ら限定されない。
【0059】
本発明は、上記の実施形態にて開示された具体的な処理に限定されない。例えば、上述の具体例においては、スイッチング素子S1が低温であって低車速(VC≦VC0)と低加速要求(Accp≦Accp0)とのうちの一方のみが成立する場合、ノイズ対策を優先して、スイッチング素子S1の動作周波数を高くした。これに対し、システム効率を優先する立場からは、スイッチング素子S1が低温であって低車速(VC≦VC0)と低加速要求(Accp≦Accp0)との双方が成立する場合に、スイッチング素子S1の動作周波数を高くしてもよい。
【0060】
また、スイッチング素子S1が高温であって低車速(VC≦VC0)と低加速要求(Accp≦Accp0)との双方が成立する場合にのみ、FC昇圧コンバータ12の昇圧比を上昇させたり駆動相数を増加したりするようにしてもよい。
【0061】
スイッチング素子S1の温度Tcとしては、素子温度センサ193uの出力に基づく検出値と、素子温度センサ193vの出力に基づく検出値と、素子温度センサ193wの出力に基づく検出値と、を適宜処理したもの(平均、加重平均、あるいは最大値)を用いることが可能である。あるいは、素子温度センサ193u〜193wのうちのいずれか2つを省略することで、素子温度センサを1つのみとしてもよい。
【0062】
スイッチング素子S1の温度Tc(素子温度センサ193u〜193wの出力に基づく検出値)に代えて、あるいは、これとともに、EV冷却機構18における冷却媒体の温度Tw_ev(冷却水温:EV温度センサ195の出力に基づく検出値)又はFC冷却機構17における冷却媒体の温度Tw_fc(冷却水温:FC温度センサ194の出力に基づく検出値)が用いられてもよい。但し、FC冷却機構17における冷却媒体の温度Tw_fcが用いられるのは、FC冷却機構17とEV冷却機構18とが共通化(冷却媒体経路の連続化を含む)されている場合である。
【0063】
EV冷却機構18における冷却媒体の温度Tw_ev又はFC冷却機構17における冷却媒体の温度Tw_fcがスイッチング素子S1の温度Tcに代えて用いられる場合の変形例を、
図5に示す(
図5においては、Tw_ev又はTw_fcを総称した温度Twが示されているものとする。)。かかる変形例においては、素子温度センサ193u〜193wは省略され得る。
【0064】
さらには、FC昇圧コンバータ12側の温度(スイッチング素子S1の温度TcやEV冷却機構18における冷却媒体の温度Tw_ev)と、燃料電池11側の温度(FC冷却機構17における冷却媒体の温度Tw_fc)とが、併用されてもよい。2つ以上の温度が併用される場合、いずれか1つが所定温度を超えた場合に、ステップ410の判定がYesとなるように、上述の具体例が適宜変容され得る。具体的には、例えば、スイッチング素子S1の温度Tcが所定温度Tc0より高く、且つ、EV冷却機構18における冷却媒体の温度Tw_evが所定温度Tw_ev0より高い場合に、ステップ410の判定が「Yes」とされることで、素子温度センサ193u等とEV温度センサ195とのうちの一方が故障した際にも、良好な制御が行われる。
【0065】
図4のフローチャートにおけるステップ430及びステップ470が省略されることで、温度と加速要求とに応じたスイッチング周波数設定が行われ得る。あるいは、
図4のフローチャートにおけるステップ420及びステップ460が省略されることで、温度と車速とに応じたスイッチング周波数設定が行われ得る。
【0066】
ステップ440における判定内容は、単に「駆動相数を増加可能か否か」の判定に変更され得る。具体的には、例えば、一相駆動あるいは二相駆動時においても、U相コンバータ120u〜W相コンバータ120wのうちのいずれか1つの故障により、駆動相数を増加させることができない場合があり得る。このような場合においては、リアクトル電流を低減すべく、昇圧比の上昇処理が行われる(ステップ450)。
【0067】
また、スイッチング周波数を可聴域よりも高い周波数Fhighに設定することに代えて、あるいはこれとともに、昇圧比の上昇処理や相数増加処理が行われてもよい。
図6は、かかる変形例(スイッチング周波数を可聴域よりも高い周波数Fhighに設定することとともに、昇圧比の上昇処理や相数増加処理が行われる例)に対応するフローチャートである。
図6に示されているように、ステップ490の処理が終了した後、処理がステップ440に進行することで、かかる変形例の処理が実現される。
【0068】
なお、
図6のフローチャートにおいて、ステップ415、480及び490は省略可能である(
図7参照)。この場合(スイッチング周波数を可聴域よりも高い周波数Fhighに設定することに代えて、昇圧比の上昇処理や相数増加処理が行われる例)、スイッチング周波数は可聴域の通常の周波数Fnormとされ、ルーチン名は「スイッチング素子駆動制御」と変更される。
【0069】
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の範囲内に含まれることは当然である。また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。