特許第5831059号(P5831059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニー株式会社の特許一覧
特許5831059光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法
<>
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000002
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000003
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000004
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000005
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000006
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000007
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000008
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000009
  • 特許5831059-光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831059
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】光学的測定装置、フローサイトメーター及び光学的測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20151119BHJP
【FI】
   G01N15/14 Z
   G01N15/14 A
   G01N15/14 D
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-194897(P2011-194897)
(22)【出願日】2011年9月7日
(65)【公開番号】特開2013-57547(P2013-57547A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2014年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】村木 洋介
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−008038(JP,A)
【文献】 特開2006−227013(JP,A)
【文献】 特開昭64−012245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
G01N 21/00−21/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を通流中の試料に対して光を照射する光照射部と、
該光照射部による光照射によって、前記試料から発せられる光学的情報を検出する光検出部と、
前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するレート情報付加部と、
が少なくとも備えられ
前記レート情報付加部では、前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応して、前記波形データに所定の色情報を付加する光学的測定装置。
【請求項2】
前記レート情報付加部により付加されたレート情報に基づいて、光軸調整を行う光軸調整部が更に備えられた請求項1記載の光学的測定装置。
【請求項3】
前記レート情報付加部では、前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応して、所定のメーターバーを付加する請求項1又は2に記載の光学的測定装置。
【請求項4】
前記レート情報付加部では、前記メーターバーに前記色情報を付加する請求項1から3のいずれか一項に記載の光学的測定装置。
【請求項5】
前記光学的情報から得られた前記試料の種類に対応した所定の色情報を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加する種類情報付加部が更に備えられた請求項1から4のいずれか一項に記載の光学的測定装置。
【請求項6】
流路を通流中の試料に対して光を照射する光照射部と、
該光照射部による光照射によって、前記試料から発せられる光学的情報を検出する光検出部と、
前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するレート情報付加部と、
前記光検出部により検出された前記光学的情報に基づいて、前記試料を分取する分取部と、
が少なくとも備えられ
前記レート情報付加部では、前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応して、前記波形データに所定の色情報を付加するフローサイトメーター。
【請求項7】
流路に試料を通流させる通流工程と、
前記試料に対して光を照射する光照射工程と、
該光照射工程における光照射によって、前記試料から発せられる光学的情報を検出する光検出工程と、
前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するレート情報付加工程と、
を少なくとも行い、
前記レート情報付加工程では、前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応して、前記波形データに所定の色情報を付加する光学的測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、流路を用いて試料を光学的に検出するための光学的測定装置に関する。より詳しくは、流路内を通流する試料を光学的に検出するための光学的測定装置、該光学的測定装置を用いたフローサイトメーターおよび光学的測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分析手法の発展に伴い、細胞や微生物等の生体微小粒子、マイクロビーズなどの微小粒子等を流路中に通流させ、通流させる工程において前記微小粒子を個々に測定したり、測定した微小粒子を解析し、分取したりする手法が開発されつつある。このような流路を用いた微小粒子の解析又は分取の手法の代表的な一例として、フローサイトメトリーと呼ばれる分析手法の技術改良が急速に進んでいる。
【0003】
フローサイトメトリーとは、解析の対象となる微小粒子を流体中に整列させた状態で流し込み、該微小粒子にレーザー光等を照射することにより、各微小粒子から発せられた蛍光や散乱光を検出することで微小粒子の解析、分取を行う分析手法である。フローサイトメトリーのプロセスは、以下の(1)水流系、(2)光学系、(3)電気・解析系、(4)分取系、に大別することができる。
【0004】
(1)水流系
水流系では、分析対象となる微小粒子をフローセル(流路)中で一列に整列させる。より具体的には、シース流を一定の流速でフローセル内に流入させ、その状態で微小粒子を含むサンプル流をフローセル中央部にゆっくりと注入する。この時、laminar flowの原理によりそれぞれの流れは互いに混合されず、層を成した流れ(層流)が形成される。そして、分析対象となる微小粒子の大きさ等に応じて、シース流とサンプル流の流入量を調節し、微小粒子を一つ一つが整列した状態で通流させる。
【0005】
(2)光学系
光学系では、分析対象となる微小粒子にレーザーなどの光を照射し、微小粒子から発せられる蛍光や散乱光を検出する。微小粒子を、前記水流系(1)において、一つ一つが整列した状態でレーザー照射部を通流させ、一つ一つの微小粒子が通過する毎に、微小粒子から発せられる蛍光や散乱光を、パラメータ毎に光学検出器を用いて検出し、微小粒子一つ一つの特性を分析する。
【0006】
(3)電気・解析系
電気・解析系では、光学系において検出した光学的情報を、電気的信号(電圧パルス)に変換する。変換された電気的信号はアナログ−デジタル変換され、このデータをもとに解析用コンピューターとソフトウェアでヒストグラムを抽出し、解析を行う。
【0007】
(4)分取系
分取系では、測定を終えた微小粒子を分離し、回収する。代表的な分取方法としては、測定を終えた微小粒子にプラス又はマイナスの電荷を加え、フローセルを、電位差を有する2つの偏向板で挟み込み、帯電された微小粒子はその電荷に応じていずれかの偏向板に引き寄せられることにより、分取する方法がある。
【0008】
このフローサイトメトリーのような流路中の微小粒子の解析及び分取技術は、医療分野、創薬分野、臨床検査分野、食品分野、農業分野、工学分野、法医学分野、犯罪鑑識分野等、様々な分野で広く利用されている。特に医療分野においては、病理学、腫瘍免疫学、移植学、遺伝学、再生医学、化学療法などで重要な役割を担っている。
【0009】
このように、非常に広い分野で流路中の微小粒子を解析及び分取する技術が必要とされており、前記(1)から(4)のプロセスに関わる技術も、日々、開発が進められている。例えば、前記(2)の光学系に関わる技術として、特許文献1には、試料に指向性光を照射して流路内における試料の位置情報を得た後、この位置情報に基づいて指向性光を照射することにより、照射むらや、照射位置やフォーカス位置のずれを防止する方法が提案されている。
【0010】
また、特許文献2では、検出用流路に流れる微生物から発生される蛍光を検出して電気信号に変換する第1の検出器によって検出された蛍光の光量に基づいて、微生物検査チップを搭載するステージを移動制御することにより、励起光の光軸方向に対する検出用流路の位置決めを行うことで光軸合わせを行う技術が提案されている。
【0011】
ところで、流路を通流中の試料を検出するためには、その精度を向上させるためにも、光軸合わせが重要である。特に最近では、チップに設けられたマイクロスケールの流路を用いて、細胞などの検出を行う技術開発や実用化が進められており、このようなラボ・オン・チップの技術においては、使い捨てチップが用いられることが多い。そのため、実験効率を上げるためにも、毎回の光軸合わせをいかに効率的に行えるかが非常に重要である。
【0012】
流路を通流中の試料を検出する際の光軸合わせは、従来、外付けのオシロスコープで観測することにより行ったり、デジタルの生波形の振幅やデータプロットを見て行ったりする方法で行っている。その際、波形の振幅などは、波形そのものを見れば直観的に判断することができるが、流路を流れてくる試料の頻度については、例えば、波形グラフ外の数値データ(event / sec)などを読み取り、その数値に応じて、光軸調整などを行う必要がある。
【0013】
また、流路を通流させる試料の濃度の程度によっては、うまく試料を一つ一つ整列した状態で通流させることができず、複数の2以上の試料が密集した状態で流れることにより、得られる波形データが二山以上になってしまう、いわゆるアボートレートが発生する場合がある。このアボートレートを防止するためにも、流路を流れてくる試料の頻度を読み取ることは非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−063305号公報
【特許文献2】特開2010−256278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のように、流路内を通流する試料を光学的に検出する技術において、流路を流れてくる試料の頻度を読み取ることは非常に重要である。しかし、実際の測定において、流路を流れてくる試料の頻度を認識するには、例えば、波形グラフ外の数値データ(event/sec)などを読み取る必要があり、その読み取った数値から、光軸調整、試料の濃度調整や通流速度の調整などを行っているのが実情である。このように、流路を流れてくる試料の頻度を直観的に認識することができないため、他の操作や測定の効率化に歯止めをかけているといった問題があった。
【0016】
そこで、本技術では、流路内を通流する試料を光学的に検出する技術において、流路を流れてくる試料の頻度を直観的に認識することが可能な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明者らは、前記の目的を解決するために鋭意研究を行った結果、検出された光情報から、流れてくる試料の頻度を数値化以外の別の表示に変換させることに着目することにより、本技術を完成させるに至った。
【0018】
即ち、本技術では、まず、流路を通流中の試料に対して光を照射する光照射部と、
該光照射部による光照射によって、前記試料から発せられる光学的情報を検出する光検出部と、
前記光学的情報から得られた前記試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するレート情報付加部と、
が少なくとも備えられた光学的測定装置を提供する。
本技術に係る光学的測定装置では、波形データグラフ上、即ち、波形データグラフ内に、流れてくる試料の頻度を表示することができる。
本技術に係る光学的測定装置には、前記レート情報付加部により付加されたレート情報に基づいて、光軸調整を行う光軸調整部を更に備えることも可能である。
本技術に係る光学的測定装置において、前記レート情報付加部が波形データグラフ上に付加する表示は、試料の頻度が直観的に認識できる表示であれば特に限定されないが、例えば、波形データグラフ上に所定のメーターバーを付加する方法、所定の色情報を付加する方法などが挙げられる。
所定の色情報を付加する場合、その具体的な方法も特に限定されないが、例えば、波形データ自体に色情報を付加する方法、前記メーターバーに色情報を付加する方法などが挙げられる。
本技術に係る光学的測定装置には、前記光学的情報から得られた前記試料の種類に対応した所定の色情報を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加する種類情報付加部を更に備えることも可能である。
【0019】
本技術に係る光学的測定装置は、フローサイトメーターおよび光学的測定方法に好適に用いることができる。
より具体的には、本技術に係る光学的測定装置に、前記光検出部により検出された前記光学的情報に基づいて、前記試料を分取する分取部を加えることで、フローサイトメーターとして用いることが可能である。
【0020】
ここで、本技術で用いる技術用語の定義付けを行う。本技術における「試料」とは、細胞や微生物、リポソーム、DNA、タンパク質などの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子など、流路内を通流可能な物質であれば、全て包含する。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、流路内を通流する試料を光学的に検出する技術において、流れてくる試料の頻度を直観的に認識することができるため、各種測定の効率化、かつ、解析精度の向上を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本技術に係る光学的測定装置1の第1実施形態を模式的に示す模式概念図である。
図2】本技術に係る光学的測定装置1の第2実施形態を模式的に示す模式概念図である。
図3】レート情報付加部13が行う試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、波形データグラフ上に付加する方法の一例を説明するための図面代用グラフである。
図4】レート情報付加部13が行う試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、波形データグラフ上に付加する方法の図3とは異なる一例を説明するための図面代用グラフである。
図5】レート情報付加部13が行う試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、波形データグラフ上に付加する方法の図3および図4とは異なる一例を説明するための図面代用グラフである。
図6】レート情報付加部13が行う試料の単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、波形データグラフ上に付加する方法の図3から図5とは異なる一例を説明するための図面代用グラフである。
図7】種類情報付加部15が行う試料の種類に対応した所定の色情報を、波形データグラフ上に付加する方法の一例を示す図面代用グラフである。
図8】本技術に係るフローサイトメーター10の一実施形態を模式的に示す模式概念図である。
図9】本技術に係る光学的測定方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.光学的測定装置1
(1)流路2
(2)光照射部11
(3)光検出部12
(4)レート情報付加部13
(5)光軸調整部14
(6)種類情報付加部15
2.フローサイトメーター10
(1)分取部16
3.光学的測定方法
(1)通流工程I
(2)光照射工程II
(3)光検出工程III
(4)レート情報付加工程IV
(5)光軸調整工程V
(6)種類情報付加工程VI
(7)分取工程VII
【0024】
<1.光学的測定装置>
図1は、本技術に係る光学的測定装置1の第1実施形態を模式的に示す模式概念図である。
本技術に係る光学的測定装置1は、流路2内を通流する試料Sを光学的に検出する装置であって、大別すると、光照射部11、光検出部12、レート情報付加部13、を少なくとも備える。また、必要に応じて、図示しないが、光軸調整部14、種類情報付加部15、などを備えることも可能である。以下、各部について、詳細に説明する。
【0025】
(1)流路2
本技術に係る光学的測定装置1は、流路2内を通流する試料Sを光学的に検出する装置である。流路2は、本技術に係る光学的測定装置1に予め備えていてもよいが、市販の流路2や流路2が設けられた使い捨てのチップなどを、光学的測定装置1に設置して測定を行うことも可能である。
【0026】
本技術に係る光学的測定装置1に用いることができる流路2の形態は特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図1に示すような2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板T内に形成した流路2に限らず、図2の第2実施形態に示すように、従来のフローサイトメーターで用いられているような流路2も、本技術に係る光学的測定装置1に用いることができる。
【0027】
また、前記流路2の流路幅、流路深さ、流路断面形状も、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、流路幅1mm以下のマイクロ流路においても、本技術に係る光学的測定装置1に用いることが可能である。特に、流路幅10μm以上1mm以下程度のマイクロ流路を用いれば、後述する本技術に係る光学的測定方法をより好適に行うことができる。
【0028】
なお、基板T上に形成した流路2を採用する場合には、流路2の底面を透視性のある材料で形成することが好ましい。図1に示すように、後述の光検出部12を、後述の光照射部11と基板Tを挟んで逆側に配置し、流路2の底面側からの光学的情報を検出できるようにするためである。
【0029】
(2)光照射部11
光照射部11は、流路2を通流中の試料Sに対して光Lを照射するために備える。
【0030】
光照射部11から照射される光の種類は特に限定されないが、試料Sから蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザー、LED等を挙げることができる。レーザーを用いる場合、その種類も特に限定されないが、アルゴンイオン(Ar)レーザー、ヘリウム−ネオン(He-Ne)レーザー、ダイ(dye)レーザー、クリプトン(Cr)レーザー、半導体レーザー、または、半導体レーザーと波長変換光学素子を組み合わせた固体レーザー等を、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。
【0031】
(3)光検出部12
光検出部12は、光照射部11による光照射によって、試料Sから発せられた光学的情報を検出するために備える。
【0032】
本技術に係る光学的測定装置1に用いることができる光検出部12は、光学的情報の検出ができれば、その種類は特に限定されず、公知の光検出器を自由に選択して採用することができる。例えば、蛍光測定器、散乱光測定器、透過光測定器、反射光測定器、回折光測定器、紫外分光測定器、赤外分光測定器、ラマン分光測定器、FRET測定器、FISH測定器その他各種スペクトラム測定器、複数の光検出器をアレイ状に並べた、いわゆるマルチチャンネル光検出器、などを1種又は2種以上自由に組み合わせて採用することができる。
【0033】
また、本技術に係る光学的測定装置1における光検出部12の設置箇所は、試料Sから発せられた光学的情報が検出できれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば試料Sによる散乱光であって散乱角度の小さい光を検出する場合は、図1および図2に示すように、流路2を挟んで光照射部11と逆側に配置することが好ましい。光検出部12を、流路2を挟んで光照射部11と逆側に配置することで、光照射部11や光検出部12をより自由な構成で配置させることができるからである。また例えば試料Sからの蛍光のように照射光の入射方向とは異なる方向にも放射される光の場合は、流路2を基準に光照射部11と同じ側や90度側面の側に配置してもかまわない。
【0034】
(4)レート情報付加部13
レート情報付加部13は、前記光学的情報から得られた前記試料Sの単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するために備える。即ち、レート情報付加部13は、流路2を流れてくる試料Sの頻度を、波形データグラフ上で直観的に認識することができるように、所定の表示を波形データグラフ上に付加するために機能する。
【0035】
試料Sの頻度の検出は、例えば、光軸調整や試料濃度の調整などに非常に重要である。具体的には、例えば、試料Sの頻度が試料濃度と比較して低い場合などには、光軸がずれている可能性が高く、試料濃度から推定される試料Sの頻度となるように前記光照射部1や前記流路2の位置を調整したり、前記光照射部1の光照射角度などを調整したりすることで、適切な光軸への調整が可能である。
【0036】
また、例えば、試料Sの頻度が高すぎる場合などには、試料Sの濃度が高すぎるかやサンプル流速度が速すぎる可能性が考えられる。その場合には、試料Sの濃度を薄めたり、シース流の量や速度を調整したりすることで、得られる波形データが二山以上になってしまう、いわゆるアボートレートの発生を防止することも可能である。
【0037】
このように、各測定の精度を向上させるために重要な試料Sの頻度を、本技術に係る光学的測定装置1では直観的に認識することが可能であるため、各測定の精度向上のみならず、その効率化にも高く貢献することが可能である。
【0038】
本技術に係る光学的測定装置1において、レート情報付加部13が波形データグラフ上に付加する表示は、試料Sの頻度が直観的に認識できる表示であれば特に限定されず、目的に応じて自由に設計することができる。図1および図2の第1実施形態および第2実施形態では、波形データグラフ上に○マークを付加し、試料Sの頻度が高くなるに従って○マークの数を増やす例(図1および2中破線円部分参照)を記載しているが、これに限定されない。
【0039】
例えば、図3に示すように、試料Sの頻度に従って、波形データ自体に色情報を付加する方法も可能である。図3に示す例は、100event / secを超えると波形データを緑色で示し、1k event / secを超えると波形データを赤色で示した例である。
【0040】
また、図4に示すように、試料Sの頻度に応じて、波形データグラフ上に所定のメーターバーを付加する方法も可能である。このメーターバーには、より認識し易くするために、図5に示すように、試料Sの頻度に従って、更に、色情報を付加することも可能である。図5に示す例は、試料Sの頻度が低い場合には青色、高くなるに従って赤色をメーターバーに付加した例である。
【0041】
また、図6に示すように、更に認識し易くするために、波形データおよびメーターバーの両方に色情報を付加する方法も可能である。
【0042】
このように、レート情報付加部13が波形データグラフ上に付加する表示方法は、目的に合わせて様々に設計することができ、また、様々な方法を自由に組み合わせて工夫することも可能である。
【0043】
(5)光軸調整部14
光軸調整部14は、前記レート情報付加部13により付加されたレート情報に基づいて、光軸調整を行うために備える。この光軸調整部14は、本技術に係る光学的測定装置1には、必須の部ではないが、各種測定の精度を更に向上させるためには、設けることが好ましい。
【0044】
光軸調整部14が行う具体的な光軸調整方法は、光軸調整ができれば特に限定されず、あらゆる方法を自由に選択して行うことができる。例えば、前記光照射部1や前記流路2に可動性を持たせ、これらの位置を調整したり、前記光照射部1の光照射方向や角度などを、レンズ、ミラーなどを用いて調整したりすることで、光軸を調整する方法が挙げられる。
【0045】
(6)種類情報付加部15
種類情報付加部15は、前記光学的情報から得られた前記試料Sの種類に対応した所定の色情報を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するために備える。即ち、種類情報付加部15は、流路2を流れてくる試料Sの種類を、波形データグラフ上で直観的に認識することができるように、所定の色情報を波形データグラフ上に付加するために機能する。この種類情報付加部15は、本技術に係る光学的測定装置1には、必須の部ではないが、各種測定の精度を更に向上させるため、また、各種測定の更なる効率化のために、設けることが好ましい。
【0046】
具体的には、例えば、予め試料Sの種類に応じて表示する色を設定しておき、前記光検出部12により検出された光学的情報から試料Sの種類を判断し、その種類に応じて波形データグラフ上に色情報を付加する方法が挙げられる。より具体的には、例えば、図7に示すように、ある強度領域をオレンジ、ある強度領域をピンクなどと設定し、前記光検出部12により検出された光学的情報から、その領域内に強度を示す試料Sの波形データに、それぞれ対応する色付けを行う方法が挙げられる。
【0047】
このように、本技術に係る光学的測定装置1に種類情報付加部15を更に備えることで、試料Sの頻度だけでなく、その種類までも直観的に認識することができ、各測定の精度向上のみならず、その効率化にも更に高く貢献することが可能である。例えば、従来、8ピークビーズなどを用いる場合には、生波形データで判断するのが難しく、予めデータにID等を付けておき、所望の細胞データから生波形データと紐付けができるようにいていた。しかし、種類情報付加部15を備えれば、8種類の色が波形データグラフ上に付加されるため、直観的に認識することができる。
【0048】
本技術に係る光学的測定装置1において、レート情報付加部13が波形データグラフ上に付加する色情報表示は、試料Sの頻度が直観的に認識できる色情報表示であれば特に限定されず、目的に応じて自由に設計することができる。図7に示す例では、波形データ自体に色情報を付加しているが、これに限定されない。例えば、図1および図2の頻度マーク(○マーク)や図4のメーターバーなどに色情報を付加することも自由である。
【0049】
<2.フローサイトメーター10>
本技術に係る光学的測定装置1は、その解析精度の高さおよび高効率性を利用してフローサイトメーター10に好適に用いることができる。図8は、本技術に係るフローサイトメーター10の一実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【0050】
本技術に係るフローサイトメーター10は、流路2内を通流する試料Sを光学的に検出し、その結果に応じて試料Sを分取可能な装置であって、大別すると、光照射部11、光検出部12、レート情報付加部13、分取部16を少なくとも備える。また、必要に応じて、図示しないが、光軸調整部14、種類情報付加部15、などを備えることも可能である。以下、各々について、詳細に説明する。なお、光照射部11、光検出部12、レート情報付加部13、光軸調整部14、種類情報付加部15については、前記光学的測定装置1と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0051】
(1)分取部16
分取部16は、前記光検出部12により検出された前記光学的情報に基づいて、前記試料を分取するために備える。例えば、分取部16では、光学的情報から解析された試料Sの大きさ、形態、内部構造等の解析結果に基づいて、流路2の下流において、試料Sの分取が行われる。
【0052】
より具体的には、図8に示すように、例えば、所定の振動数で振動する振動素子161などを用いて、流路2の全体若しくは一部に振動を加えることで、流路2の吐出口から液滴を発生させる。なお、この場合、用いる振動素子は特に限定されず、公知のものを自由に選択して用いることができる。一例としては、ピエゾ振動素子などを挙げることができる。また、流路2への送液量、吐出口の径、振動素子の振動数などを調整することにより、液滴の大きさを調整し、試料を一定量ずつ含む液滴を発生させることができる。
【0053】
次に、発生した液滴に、前記光学的情報から解析された試料Sの大きさ、形態、内部構造等の解析結果に基づいて、プラスまたはマイナスの電荷を荷電する(図12中符号162参照)。そして、荷電された液滴は、電圧が印加された対向電極163によって、その進路が所望の方向へ変更され、分取される。
【0054】
<3.光学的測定方法>
図9は、本技術に係る光学的測定方法のフロー図である。
本技術に係る光学的測定方法は、大別して、通流工程I、光照射工程II、光検出工程III、レート情報付加工程IV、を少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、光軸調整工程V、種類情報付加工程VI、分取工程VII、をそれぞれ行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0055】
(1)通流工程I
通流工程Iは、流路2に試料Sを通流させる工程である。
【0056】
試料Sの流路2中への通流方法は特に限定されないが、例えば、図8に示すように、整流を促す流体媒体(シース流F102)で、試料S含むサンプル流F101を挟み込みながら搬送する方法が挙げられる。このように搬送すれば、試料Sを含むサンプル流F101の層流を形成することができ、より好適である。前記流体媒体は試料Sを含むサンプル流の整流を促す機能を有すれば、その種類は特に限定されないが、例えば、試料Sが細胞である場合には、生理食塩水等を用いることができる。
【0057】
試料Sには、後述する光検出工程IIIにおいて、光学的情報が検出できるように、蛍光色素等の蛍光物質、放射性物質、インターカレーター、またはマイクロビーズなどの標識物質で修飾しておくことが好ましい。例えば、蛍光色素を用いる場合、その種類は特に限定されず、公知のあらゆる蛍光色素を用いることができる。例えば、Cascade Blue、Pacific Blue、Fluorescein isothiocyanate(FITC)、Phycoerythrin(PE)、Propidium iodide(PI)、Texas red(TR)、Peridinin chlorophyll protein(PerCP)、Allophycocyanin(APC)、4’,6-Diamidino-2-phenylindole(DAPI)、 Cy3、Cy5、Cy7等を、1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。
【0058】
なお、蛍光タンパク質のように、試料S自体が発光する場合には、標識物質で修飾する必要はない。また、流路2内で物質間相互作用を進行させることにより、FRETの原理のように、その物質の蛍光色等を変化させることができる物質等を試料Sとして用いる場合も、標識物質で試料Sを修飾する必要はない。
【0059】
(2)光照射工程II
光照射工程IIは、流路2を通流中の試料Sに対して、光を照射する工程である。
【0060】
光照射工程IIにおいて、照射する光の種類は特に限定されず、前記光学的測定装置1で例示した光を1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。
【0061】
(3)光検出工程III
光検出工程IIIは、光照射工程IIで光Lを照射することにより、流路2を通流中の試料Sから発せられる光学的情報を、光検出部12を用いて検出する工程である。
【0062】
光検出工程IIIでは、試料Sからの光学的情報が検出できれば、その取得方法は特に限定されず、前記光学的測定装置1で例示した方法を1種又は2種以上自由に組み合わせて採用することができる。
【0063】
(4)レート情報付加工程IV
レート情報付加工程IVは、前記光学的情報から得られた前記試料Sの単位時間当たりの通流量に対応した所定の表示を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するために行う。即ち、レート情報付加工程IVは、流路2を流れてくる試料Sの頻度を、波形データグラフ上で直観的に認識することができるように、所定の表示を波形データグラフ上に付加する工程である。なお、レート情報付加工程IVで行う具体的なレート情報付加方法およびその効果などは、前記光学的測定装置1と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0064】
(5)光軸調整工程V
光軸調整工程Vは、前記レート情報付加工程IVにより付加されたレート情報に基づいて、光軸調整を行うために行う。この光軸調整工程Vは、本技術に係る光学的測定方法では、必須の工程ではないが、各種測定の精度を更に向上させるためには、行うことが好ましい。なお、光軸調整工程Vで行う具体的な光軸調整方法およびその効果などは、前記光学的測定装置1と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0065】
(6)種類情報付加工程VI
種類情報付加工程VIは、前記光学的情報から得られた前記試料Sの種類に対応した所定の色情報を、前記光学的情報から得られた波形データグラフ上に付加するために行う。即ち、種類情報付加工程VIは、流路2を流れてくる試料Sの種類を、波形データグラフ上で直観的に認識することができるように、所定の色情報を波形データグラフ上に付加する工程である。この種類情報付加工程VIは、本技術に係る光学的測定方法では、必須の工程ではないが、各種測定の精度を更に向上させるため、また、各種測定の更なる効率化のためには、行うことが好ましい。なお、種類情報付加工程VIで行う具体的な種類情報付加方法およびその効果などは、前記光学的測定装置1と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0066】
(7)分取工程VII
分取工程VIIは、前記光検出工程IIIにおいて検出された前記光学的情報に基づいて、試料Sを分取する工程である。本技術では必須の工程ではないが、分取工程VIIIを行うことで、本技術に係る光学的測定方法をフローサイトメトリーの一工程として行うことが可能である。例えば、分取工程VIIIでは、前記光学的情報から解析された試料Sの大きさ、形態、内部構造等の解析結果に基づいて、流路2の下流において、試料Sの分取が行われる。なお、分取工程VIIIで行う具体的な分取方法は、前記光学的測定装置1と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本技術によれば、流路内を通流する試料を光学的に検出する技術において、試料から得られた光学的情報から流路内を流れてくる試料の頻度や種類を直観的に認識することができるため、解析精度の向上およびその効率化を実現することができる。この技術を用いることで、医療分野(病理学、腫瘍免疫学、移植学、遺伝学、再生医学、化学療法など)、創薬分野、臨床検査分野、食品分野、農業分野、工学分野、法医学分野、犯罪鑑識分野、など様々な分野における分析・解析技術の向上に貢献することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 光学的測定装置
2 流路
11 光照射部
12 光検出部
13 レート情報付加部
14 光軸調整部
15 種類情報付加部
10 フローサイトメーター
16 分取部
161 振動素子
162 荷電部
163 対向電極
L 光
S 試料
T 基板
F101 サンプル流
F102 シース流
I 通流工程
II 光照射工程
III 光検出工程
IV レート情報付加工程
V 光軸調整工程
VI 種類情報付加工程
VII 分取工程
図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8